説明

赤外線センサモジュール

【課題】熱ノイズを低減し、高精度で信頼性の高い赤外線検出を行うことが可能な赤外線センサモジュールを提供する。
【解決手段】赤外線センサモジュールは、基板上に配置され、赤外線信号を受信する赤外線センサ素子と、前記赤外線センサ素子の出力を処理する信号処理回路素子と、前記赤外線センサ素子から所定の距離を隔てて設けられ、外部の赤外線信号を前記赤外線センサ素子に結像するための光学系を備えた入射窓を有し、前記赤外線センサ素子および前記信号処理回路素子を収容する金属製のケースと、前記赤外線センサ素子と、前記ケースおよび前記信号処理回路素子との間に、前記光学系を介して入射する前記赤外線信号を前記赤外線センサ素子に導く透光部を有するセンサカバーとを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線センサモジュールに係り、特に、その熱ノイズ低減のための実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、赤外線センサは、非接触で温度検出を図ることができることから、人の存在を検出し、人の動きに追随して、点灯制御を行うようにした自動点灯システムや、電子レンジの庫内温度の検出、被調理物の温度分布の検出などに、広く用いられている。赤外線センサは、内蔵のセンサチップに受光した赤外線量に応じた電圧を出力するデバイスである。
【0003】
この赤外線センサの検知視野角は仕様で定められているが、実際は視野角外からの不要な赤外線もデバイス内に入光し、その赤外線がパッケージ内部での反射内よりセンサチップに入射した場合は、熱ノイズとなり、検知精度の劣化を招いてしまうという問題があった。
【0004】
このような赤外線センサの一例としては、例えば、多数個の抵抗(単素子)をマトリクス状に平面配置し赤外線が投射されたときに生じる温度上昇に伴う抵抗値の変化を信号として取り出し、この信号に基づいて画像信号を作成し出力するものがある。このような赤外線センサでは、抵抗変化を信号として取り出すために所定バイアス電流を供給する必要があり、このバイアス電流によるジュール熱によって赤外線センサの温度上昇が発生することがある。このため、このジュール熱による温度上昇によって赤外線センサから新たな信号が発生され、この信号が赤外線センサにおける雑音として出力されることになる。
【0005】
このようなバイアス電流による雑音を防止するために、図8に示すように、ケース220内にリング状のインナー250を固定し、ケース220内に外乱ノイズが入射してしまった場合であっても、外乱ノイズは、回路基板210上に搭載されたセンサチップ230に届かずに、放射され、レンズにより集光された赤外線エネルギーのみをセンサチップ230に導くようにした構造が提案されている(特許文献1)。
【0006】
また、特許文献2では、図9に示すように、パッケージ120上に回路基板110、電子冷却装置140、赤外線検知素子130を順次搭載し、かつ赤外線検知素子130を覆うようにシールド筒150を設け、このシールド筒150が電子冷却装置140により冷却されるように配設する。赤外線検知素子130を電子冷却装置140で冷却することで、バイアス電流による赤外線検知素子130の温度上昇を防ぎ、かつシールド筒150を冷却することでシールド筒150を通しての輻射熱による赤外線検知素子130の温度上昇を防ぎ、雑音を低減する。また、シールド筒150に開口する入射窓150aを適切な開口径に形成することで、入射される赤外線が赤外線検知素子130の各単素子外に洩光されることがなく、雑音の発生を防止する。
【0007】
さらにまた、図10に示すように、サーモパイル素子(赤外線センサ素子)330をシールドするのではなく、ステム310と熱的に接続されたインナーキャップ350で、サーモパイル素子330を覆うことにより、ステム310の温度変動に対するサーモパイル素子330の冷接点の温度追随性を向上させるようにした赤外線センサモジュールも提案されている(特許文献3)。この構成では、サーモパイル素子とサーミスタを、インナーキャップで覆い、内部雰囲気がステムと熱的に接続されるようにし、ケース320やインナーキャップ350からの二次輻射がサーモパイル素子330に照射されないようにしている。
【0008】
ところで、近年、信号の増幅処理のためにASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのICチップを内蔵した実装構造が提案されている。この構成によれば、配線の引き回しを低減することができ、理論的には、検出精度のさらなる向上をはかることができる。しかしながら、このようにICチップをハウジング内に内蔵する場合は、電気ノイズ対策として金属ハウジングを用いる必要がある。この場合は特に、金属の光反射率が高いために内部反射が起こりやすくなり、熱ノイズがさらに発生しやすい構造となっている。また、信号の増幅処理のためのICチップへの熱ノイズの影響も無視できない大きさとなることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−101513号公報
【特許文献2】特開平08−101062号公報
【特許文献3】特開2003−344156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように信号処理回路素子を内蔵した赤外線センサモジュールにおいては、電気ノイズ対策として金属ハウジングを用いる必要があり、この場合は特に、金属の光反射率が高いために内部反射が起こりやすくなるという問題があった。さらに、信号処理回路素子の発熱による熱ノイズの問題もあり、熱ノイズがさらに発生しやすい構造となっている。
本発明は、前記実情に鑑みてなされたもので、熱ノイズを低減し、高精度で信頼性の高い赤外線検出を行うことが可能な赤外線センサモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで本発明の赤外線センサモジュールは、基板上に配置され、赤外線信号を受信する赤外線センサ素子と、前記赤外線センサ素子の出力を処理する信号処理回路素子と、前記赤外線センサ素子から所定の距離を隔てて設けられ、外部の赤外線信号を前記赤外線センサ素子に結像するための光学系を備えた入射窓を有し、前記赤外線センサ素子および前記信号処理回路素子を収容する金属製のケースと、前記赤外線センサ素子と、前記ケースおよび前記信号処理回路素子との間に、前記光学系を介して入射する前記赤外線信号を前記赤外線センサ素子に導く透光部を有するセンサカバーとを具備したことを特徴とする。
この構成によれば、赤外線センサ素子をセンサカバーで覆うだけでなく、信号処理回路素子と赤外線センサ素子との間にもセンサカバーを設けるようにしているため、信号処理回路素子への赤外線センサ素子からの輻射による熱ノイズを防ぐことができ、ノイズとなる赤外線信号が除去され、対象物だけの赤外線信号を検知することができるので、測定精度が向上する。
【0012】
そこで本発明は、上記赤外線センサモジュールにおいて、前記赤外線センサ素子が面実装によって前記基板に搭載されたことを特徴とする。
特に赤外線センサ素子自体の熱変化も信号処理回路素子に大きな影響を与えることになる。このような構成の場合にも、本発明によれば、信号処理回路素子への赤外線センサ素子からの輻射による熱ノイズを防ぐことができる。
【0013】
また本発明は、上記赤外線センサモジュールにおいて、前記センサカバーが、前記赤外線センサ素子の周囲を囲むように前記基板に当接せしめられた側壁部と、前記側壁部から前記赤外線センサ素子と前記光学系との間に形成され、前記透光部が開口部を構成する天面とを有することを特徴とする。
この構成によれば、センサカバーが前記赤外線センサ素子の周囲を囲むように前記基板に当接せしめられた側壁部を有しているため、センサカバーを赤外線センサ素子の周囲を可能な限り囲うように配置することで、上面だけでなく側面方向からのノイズに対しても除去が可能となる。
【0014】
また本発明は、上記赤外線センサモジュールにおいて、センサカバーは金属材料で構成されたことを特徴とする。
この構成によれば、センサに向かって入射してくるノイズを金属材料からなるセンサカバーで反射して、ノイズがセンサに入るのを防ぐことができる。
【0015】
また本発明は、上記赤外線センサモジュールにおいて、前記センサカバーは、熱伝導性材料で前記基板に接合されたことを特徴とする。
この構成によれば、センサカバーが基板との間で熱のやり取りをし易くなり、センサ周囲で熱が部分的にこもることがないようにすることができる。
【0016】
また本発明は、上記赤外線センサモジュールにおいて、前記センサカバーは導電性材料で前記基板に接合されたことを特徴とする。
この構成によれば、センサカバーをシールド面と電気的に接続することができ、電磁シールド性を持たせることができる。
【0017】
また本発明は、上記赤外線センサモジュールにおいて、前記基板の前記赤外線センサ素子搭載領域および信号処理回路素子領域を囲む領域に帯状の金属リングが載置され、前記金属リングは前記ケースの前記基板側端部に設けられた鍔部と当接し、シール部を構成したことを特徴とする。
この構成によれば、基板周縁部のシール性を高めるとともに、電気的なシールド性を高めることが可能となる。
【0018】
また本発明は、上記赤外線センサモジュールにおいて、前記ケースの内側には樹脂成形体からなる内装ケースを具備したことを特徴とする。
この構成によれば、ケース内に入射してくる熱ノイズを樹脂の内装ケースで吸収して、ノイズがセンサに入るのを防ぐことができる。
【0019】
また本発明は、上記赤外線センサモジュールにおいて、前記ケースの内壁に黒色めっき層を形成してなることを特徴とする。
この構成によれば、ケース内に入射してくる熱ノイズを黒色めっき層で吸収して、ノイズがセンサに入るのを防ぐことができる。
【0020】
また本発明は、上記赤外線センサモジュールにおいて、前記赤外線センサ素子は、前記基板にワイヤを介して接続されており、前記センサカバーは、前記ワイヤの導出領域を除く、前記赤外線センサ素子の周縁を覆うように形成されたことを特徴とする。
この構成によれば、赤外線センサ素子への熱ノイズの回避をより高めることができる。
【0021】
また本発明は、上記赤外線センサモジュールにおいて、前記赤外線センサ素子のワイヤは、前記赤外線センサ素子の相対向する2辺から導出され、前記センサカバーは前記ワイヤの配置されない相対向する2辺で、前記基板に接合されたことを特徴とする。
この構成によれば、センサカバー固定側の辺とワイヤボンド側の辺が分離でき、赤外線センサモジュールのサイズを小さくすることができる。
【0022】
また本発明は、上記赤外線センサモジュールにおいて、前記赤外線センサ素子は、前記基板にバンプを介して接続してなることを特徴とする。
この構成によれば、ワイヤを導出することなく、赤外線センサ素子を実装することができるため、赤外線センサ素子の周囲をセンサカバーで完全に囲むことができる。
【0023】
また本発明は、上記赤外線センサモジュールにおいて、前記センサカバーは、赤外線センサ素子の周囲全体で、前記基板に当接されたことを特徴とする。
【0024】
また本発明は、上記赤外線センサモジュールにおいて、前記赤外線センサ素子と前記信号処理回路素子との間の接続は、前記基板に形成された内部配線を介して実現されたことを特徴とする。
【0025】
また本発明は、上記赤外線センサモジュールにおいて、前記赤外線センサ素子と前記センサカバーとの間の、前記基板上に熱遮断部を形成したことを特徴とする。
【0026】
また本発明は、上記赤外線センサモジュールにおいて、前記熱遮断部は、リング状の溝部であることを特徴とする。
【0027】
また本発明は、上記赤外線センサモジュールにおいて、前記基板は、前記信号処理回路素子の搭載領域で、肉薄領域を構成したことを特徴とする。
【0028】
また本発明は、上記赤外線センサモジュールにおいて、前記基板はセラミック基板であり、前記センサカバーの当接する領域に配線導体層が形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る赤外線センサモジュールによれば、センサカバーによって、ケースで反射されて入射する、視野角外からの赤外線ノイズを防止するとともに、ケースの加熱による輻射熱発生による赤外線ノイズの影響を低減し、検出精度の向上をはかることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態1の赤外線センサモジュールを示す図であり、(a)は断面図、(b)はケースとセンサカバーを外した状態を示す上面図、(c)は側断面図
【図2】同赤外線センサモジュールを示す分解斜視図
【図3】本発明の実施の形態2の赤外線センサモジュールを示す図であり、(a)は断面図、(b)は要部拡大断面図
【図4】本発明の実施の形態3の赤外線センサモジュールを示す図
【図5】本発明の実施の形態4の赤外線センサモジュールを示す図であり、(a)は断面図、(b)はケースとセンサカバーを外した状態を示す上面図、(c)は側断面図
【図6】同赤外線センサモジュールを示す分解斜視図
【図7】本発明の実施の形態4の赤外線センサモジュールの変形例を示す図であり,(a)は断面図、(b)はケースとセンサカバーを外した状態を示す上面図、(c)は側断面図
【図8】従来例の赤外線センサモジュールを示す図
【図9】従来例の赤外線センサモジュールを示す図
【図10】従来例の赤外線センサモジュールを示す図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態の赤外線センサモジュールについて図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0032】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1の赤外線センサモジュールを示す図であり,(a)は断面図、(b)はケースとセンサカバーを外した状態を示す上面図、(c)は側断面図である。また図2はこの赤外線センサモジュールを示す分解斜視図である。
本発明の実施の形態1の赤外線センサモジュールは、基板10上に配置され、赤外線信号を受信する赤外線センサ素子30と、前記赤外線センサ素子30の出力を処理する信号処理回路素子40と、前記赤外線センサ素子30から所定の距離を隔てて設けられ、外部の赤外線信号を前記赤外線センサ素子30に結像するための光学系としてのレンズ22を備えた入射窓を有し、前記赤外線センサ素子30および前記信号処理回路素子40を収容する金属製のケース20と、前記赤外線センサ素子30と、前記ケース20および前記信号処理回路素子40との間に、前記光学系を介して入射する前記赤外線信号を前記赤外線センサ素子30に導く透光部51を有するコバールで構成されたセンサカバー50とを具備したことを特徴とする。基板10は表面に図示しない配線パターンを有する
【0033】
なおここで用いられる赤外線センサ素子は、面実装によって基板10に搭載されたサーモパイル型センサである。そしてワイヤボンディングによって基板10に電気的に接続されている。32はボンディングワイヤである。サーモパイル型センサは、ここでは図示しないが、ポリシリコンのマイクロマシニングによって形成した熱電対において、赤外線による熱によりこれら接点間に温度差を生じさせ、この温度差により接点間に電位差を発生させる熱起電力効果(ゼーベック効果)を利用して、赤外線を電圧として検知するように構成したものである。このサーモパイル型赤外線センサは、受光した赤外線を赤外線吸収膜で熱に変換し、この熱を、直列に多数個接続された熱電対に加え、発生した温接点部の温度変化を、熱電対により電圧として出力する。このサーモパイルにおいて、赤外線を吸収する赤外線吸収膜の材料としては、赤外線吸収率の高い金黒膜やカーボン膜などが用いられている。
【0034】
そしてセンサカバー50は、銀ペースト52などの熱伝導性材料で前記基板10に接合されており、この銀ペーストによって、センサカバー50が基板10との間での熱のやり取りをし易くしており、センサ周囲で熱が部分的にこもることがないようにすることができる。
【0035】
また、基板10の赤外線センサ素子搭載領域Rtおよび信号処理回路素子搭載領域Rsを囲む領域に帯状の金属リング13が載置され、この金属リング13はケース20の基板側端部に設けられた鍔部23と当接し、シール部24を構成している。
【0036】
ここで11は基板表面に形成された配線導体層であり、ボンディングワイヤ32を介して赤外線センサ素子30と電気的に接続されている。また赤外線センサ素子30と信号処理回路素子40との間の電気的接続もボンディングワイヤ32を介してなされている。
【0037】
また、センサカバー50は、赤外線センサ素子30の周囲を囲むように基板10に当接せしめられた側壁部50Sと、側壁部50Sから前記赤外線センサ素子30と前記光学系としてのレンズ22の間に形成され、前記透光部51が開口部を構成する天面50Uとを有する。
【0038】
この構成によれば、赤外線センサ素子30をセンサカバー50で覆うだけでなく、信号処理回路素子40と赤外線センサ素子30との間にもセンサカバー50を設けるようにしているため、信号処理回路素子から赤外線センサ素子および赤外線センサ素子から信号処理回路素子への輻射による熱ノイズを防ぐことができ、非対象物体からの赤外線信号IR0が金属ケースを経て入射する輻射線IR2、金属ケースからの反射による輻射線IR3による赤外線信号が除去され、対象物だけの赤外線信号IR1を検知することができるので、測定精度が向上する。
また、この側壁部50Sを有しているため、センサカバー50を赤外線センサ素子30の周囲を可能な限り囲うように配置することで、上面だけでなく側面方向からのノイズに対しても確実な除去が可能となる。
【0039】
また、ここで赤外線センサ素子30のボンディングワイヤ32は、赤外線センサ素子の相対向する2辺から導出され、センサカバー50はボンディングワイヤ32の配置されない相対向する2辺で、基板10に接合されている。このため、センサカバー固定側の辺とワイヤボンド側の辺が分離でき、赤外線センサモジュールのサイズを小さくすることができる。
【0040】
前記実施の形態では、センサカバー50はコバールで構成したが、銅、ステンレスなど他の金属を用いるようにしてもよい。また、センサカバー50を導電性材料で基板に接続することにより、シールド面と電気的に接続することができ、電磁シールド性を持たせることができる。
【0041】
また基板10の赤外線センサ素子搭載領域Rtおよび信号処理回路素子搭載領域Rsを囲む領域に形成された帯状の金属リング13がケースの基板側端部に設けられた鍔部23と当接し、シール部を構成しているため、気密シール性を高めるとともに、電気的なシールド性を高めることが可能となる。またこの帯状の金属リングは、熱遮断部としての役割も有する。さらにまた熱遮断部としては、リング状の溝部を構成してもよい。
【0042】
さらに、基板10として窒化アルミニウムなどの放熱性の高いセラミック基板を用いるとともに、センサカバーの当接する領域に配線導体層が形成されるようにすることで、より放熱性を高めることができる。
また、信号処理回路素子40の搭載領域Rsで、肉薄領域を構成しているため、放熱性が良好で、赤外線センサ素子30への熱ノイズを低減することができる。
【0043】
(実施の形態2)
なお、前記実施の形態では、赤外線センサ素子30と信号処理回路素子40とをボンディングワイヤ32を介して電気的に接続したが、図3(a)および(b)に示すように、基板として多層配線基板10Sを用いることで、内層でスルーホールhおよび内層10cを介して電気的に接続することができる。多層配線基板10Sはセラミックなどの絶縁層10iと内層10cとしての導体層との積層体で構成される。この多層配線基板10Sはグリーンシート積層体を焼成することにより、容易に所望の配線が形成可能である。信号処理回路素子40と赤外線センサ素子30との接続はボンディングワイヤ32およびスルーホールh、内層10cを介して得られる。図3(a)は断面図、図3(b)は図3(a)の要部拡大断面図である。
これにより、センサカバー50の側壁部50Sを、多層配線基板10Sに当接するように配置することが可能となる。従って、センサカバーを赤外線センサ素子の周囲を確実に囲むことで、側面方向からのノイズに対しても確実な除去が可能となる。
【0044】
さらに、基板として窒化アルミニウムなどの放熱性の高いセラミック基板を用いるとともに、センサカバー50の当接する領域に配線導体層21が形成されるようにすることで、より放熱性を高めることができる。
【0045】
(実施の形態3)
次に本発明の実施の形態3について説明する。
前記実施の形態1では、赤外線センサ素子30はワイヤボンディングによりボンディングワイヤ32を介して基板10に接続したが、本実施の形態では、図4に示すように、赤外線センサ素子30をバンプ31を介して直接基板に接続したことを特徴とするものである。赤外線センサ素子30と信号処理回路素子40との間は、前記実施の形態2と同様に、スルーホールhを介して基板10S内で接続される。従って、センサカバー50は、赤外線センサ素子30の周囲を、赤外線センサ素子30に極めて近い位置で、確実に囲むように配置されている。また、赤外線センサ素子30と信号処理回路素子40との接続は、基板10上に形成された配線導体層11によって接続される。他の部分については前記実施の形態1および2と同様に形成されているため、ここでは説明を省略する。
従って、この場合も、赤外線センサ素子30はより効率的に熱シールドおよび電気的シールドがなされているため、輻射熱発生による熱ノイズの発生も抑制することができる。また、近接してセンサカバーを配置することで、さらに小型化を図ることができる。
なお、前記実施の形態2と同様、この場合も、実施の形態2と同様、基板として多層配線基板10Sを用いるようにすれば、内層(図示せず)でスルーホールを介して赤外線センサ素子30と信号処理回路素子40とを、電気的に接続することができ、センサカバーをより確実に基板に密着させることができる。
【0046】
(実施の形態4)
次に本発明の実施の形態4について説明する。
図5は本発明の実施の形態4の赤外線センサモジュールを示す図であり,(a)は断面図、(b)はケースとセンサカバーを外した状態を示す上面図、(c)は側断面図である。また図6はこの赤外線センサモジュールを示す分解斜視図である。
本発明の実施の形態4の赤外線センサモジュールは、前記実施の形態1の赤外線センサモジュールの構成に加え、ケース20の内側に絶縁性樹脂からなる内装ケース60を形成したことを特徴とするものである。他は前記実施の形態1で示した赤外線センサモジュールと同様に形成されている。ここでは同一部位には同一符号を付し、説明を省略する。
この構成により、前記実施の形態1の効果に加え、さらなる熱ノイズの抑制を達成することが可能となる。
【0047】
なお、内装ケースに限定されることなく、内側に反射防止部材を配することで同様の効果を得ることができる。
例えば、この反射防止部材としては、図7(a)乃至(c)に示すように、前記金属製のケース20の内側に設けられた黒色の金属めっき層26を用いるようにしてもよい。なおここでも実施の形態1と同一部位には同一符号を付した。
【符号の説明】
【0048】
10 基板
10i 絶縁層
10c 内層
10S 多層配線基板
11 配線導体層
13 金属リング
20 ケース
21 配線導体層
22 レンズ
23 鍔部
24 シール部
26 黒色めっき層
30 赤外線センサ素子
31 バンプ
32 ボンディングワイヤ
40 信号処理回路素子
50 センサカバー
50U 天面
50S 側壁部
51S 透光部
60 内装ケース
IR0 非対象物からの赤外線信号
IR1 対象物からの赤外線信号
IR2 非対象物からの輻射線
IR3 非対象物からの輻射線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配置され、赤外線信号を受信する赤外線センサ素子と、
前記赤外線センサ素子の出力を処理する信号処理回路素子と、
前記赤外線センサ素子から所定の距離を隔てて設けられ、外部の赤外線信号を前記赤外線センサ素子に結像するための光学系を備えた入射窓を有し、前記赤外線センサ素子および前記信号処理回路素子を収容する金属製のケースと、
前記赤外線センサ素子と、前記ケースおよび前記信号処理回路素子との間に、前記光学系を介して入射する前記赤外線信号を前記赤外線センサ素子に導く透光部を有するセンサカバーとを具備した赤外線センサモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の赤外線センサモジュールであって、
前記赤外線センサ素子は面実装によって前記基板に搭載された赤外線センサモジュール。
【請求項3】
請求項1または2に記載の赤外線センサモジュールであって、
前記センサカバーは、
前記赤外線センサ素子の周囲を囲むように前記基板に当接せしめられた側壁部と、
前記側壁部から前記赤外線センサ素子と前記光学系との間に形成され、前記透光部が開口部を構成する天面とを有する赤外線センサモジュール。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の赤外線センサモジュールであって、
センサカバーは金属材料で構成された赤外線センサモジュール。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の赤外線センサモジュールであって、
前記センサカバーは、熱伝導性材料で前記基板に接合された赤外線センサモジュール。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の赤外線センサモジュールであって、
前記センサカバーは、導電性材料で前記基板に接合された赤外線センサモジュール。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の赤外線センサモジュールであって、
前記基板の前記赤外線センサ搭載領域および信号処理回路素子搭載領域を囲む領域に帯状の金属リングが載置され、前記金属リングは、前記ケースの開口端部に設けられた鍔部と当接し、シール部を構成した赤外線センサモジュール。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の赤外線センサモジュールであって、
前記ケースの内側には樹脂成形体からなる内装ケースを具備した赤外線センサモジュール。
【請求項9】
請求項8に記載の赤外線センサモジュールであって、
前記ケースの内壁に黒色めっき層を形成してなる赤外線センサモジュール。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の赤外線センサモジュールであって、
前記赤外線センサ素子は、前記基板もしくは前記信号処理回路素子の少なくとも一方に、ワイヤを介して接続されており、
前記センサカバーは、前記ワイヤの導出領域を除く、前記赤外線センサ素子の周縁を覆うように形成された赤外線センサモジュール。
【請求項11】
請求項10に記載の赤外線センサモジュールであって、
前記赤外線センサ素子のワイヤは、前記赤外線センサ素子の相対向する2辺から導出され、
前記センサカバーは前記ワイヤの配置されない相対向する2辺で、前記基板に接合された赤外線センサモジュール。
【請求項12】
請求項1乃至9のいずれかに記載の赤外線センサモジュールであって、
前記赤外線センサ素子は、前記基板にバンプを介して接続してなる赤外線センサモジュール。
【請求項13】
請求項12に記載の赤外線センサモジュールであって、
前記センサカバーは、赤外線センサ素子の周囲全体で、前記基板に当接された赤外線センサモジュール。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれかに記載の赤外線センサモジュールであって、
前記赤外線センサ素子と前記信号処理回路素子との間の接続は、前記基板に形成された内部配線を介して実現された赤外線センサモジュール。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれかに記載の赤外線センサモジュールであって、
前記赤外線センサ素子と前記センサカバーとの間の、前記基板上に熱遮断部を形成した赤外線センサモジュール。
【請求項16】
請求項15に記載の赤外線センサモジュールであって、
前記熱遮断部は、リング状の溝部である赤外線センサモジュール。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれかに記載の赤外線センサモジュールであって、
前記基板は、前記信号処理回路素子の搭載領域で、肉薄領域を構成した赤外線センサモジュール。
【請求項18】
請求項1乃至17のいずれかに記載の赤外線センサモジュールであって、
前記基板はセラミック基板であり、前記センサカバーの当接する領域に配線導体層が形成された赤外線センサモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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