説明

赤外線検出装置

【課題】より小型化が可能な赤外線検出装置を提供する。
【解決手段】赤外線を検知する赤外線センサ1と、赤外線センサ1を配置させるパッケージ基体2と、赤外線センサ1を覆い赤外線センサ1に赤外線を集光させるレンズ3を備えた覆部4とを有する赤外線検出装置10である。赤外線センサ1は、開口部1fが一表面1aa側に設けられるベース基板1bと、ベース基板1bにおける他表面1ab側でベース基板1bに支持される薄膜部1aとを備えている。また、赤外線検出装置10は、薄膜部1aに少なくとも設けられ赤外線を吸収する赤外線吸収部1c,1dを有する赤外線検知部1eを備えている。赤外線センサ1は、厚み方向において、赤外線吸収部1c,1dの少なくとも一部がレンズ3からの赤外線を吸収できるように開口部1fに臨む薄膜部1aに配され、ベース基板1bにおける他表面1ab側をパッケージ基体2側としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線センサを備えた赤外線検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種電子機器の人感センサなどとして、赤外線検出装置が利用されている。赤外線検出装置は、たとえば、赤外線センサがパッケージの内部に配置され、パッケージに設けられた窓を介して、赤外線を赤外線センサに照射させる構成となっている。
【0003】
赤外線検出装置に用いられる赤外線センサとしては、図16に示すように、絶縁基板118の表面および裏面に赤外線吸収体120a,120bと熱電対パターン114a,114bとを形成した赤外線検知用サーモパイルが知られている(たとえば、特許文献1)。
【0004】
特許文献1の赤外線検知用サーモパイルは、図17に示すように、絶縁基板118の表面において、熱電対パターン114aが第1の熱電パターン110と第2の熱電パターン112からなる熱電対114を複数直列に接続して形成している。
【0005】
また、赤外線検知用サーモパイルは、図18に示すように、絶縁基板118の裏面において、熱電対パターン114bが熱電対パターン114aと同様に、第1の熱電パターン110と第2の熱電パターン112からなる熱電対114を直列接続している。赤外線検知用サーモパイルは、絶縁基板118の表裏両面に赤外線吸収体120a,120bと熱電対パターン114a,114bが形成され、表裏両面の赤外線吸収体120a,120bは互いに重なり合う位置に設けられている。なお、赤外線検知用サーモパイルは、赤外線吸収体120a,120bに近い側を温接合部113とし、遠い側を冷接合部115として構成している。
【0006】
赤外線検知用サーモパイルは、絶縁基板118の表面の熱電対パターン114aの一端Aが、絶縁基板118に設けた第1のスルーホール17aを通して裏面の熱電対パターン114bの一端Bと接続されている。赤外線検知用サーモパイルは、絶縁基板118の裏面の熱電対パターン114bの他端Cが、第2のスルーホール17bを通して、表面の熱電対パターン114aの他端Dと接続されている。赤外線検知用サーモパイルは、絶縁基板118の表裏両面の全ての熱電対114を直列接続し、表面の信号取り出し電極128からパッケージの外部に検出信号を取り出している。
【0007】
特許文献1の赤外線検知用サーモパイルは、絶縁基板118の裏面にも表面側と同様に直列接続された複数の熱電対パターン114a,114bを形成し、熱電対114の接続本数を増加させることにより、高感度化することができる、としている。なお、赤外線検知用サーモパイルは、図示していないパッケージの内部に収容され、上面に絶縁基板118が形成されたシリコン基板116をパッケージの下端側の基体に設けて赤外線検出装置が構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平5−43037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、赤外線検出装置は、たとえば、特許文献1のごとき構成の赤外線センサに効率よく赤外線を照射させるため、赤外線センサに赤外線を集光するレンズをパッケージの窓に備えた構成とすることが考えられる。これにより、赤外線検出装置は、より高感度化させることが可能となる。
【0010】
しかしながら、赤外線検出装置は、レンズを用いて赤外線を集光させる場合、レンズの焦点距離だけレンズと赤外線センサとを離さざるを得えない。そのため、レンズを備えた赤外線検出装置では、赤外線検出装置全体を小型化することが難しいという問題がある。特に、赤外線検出装置は、利用される電子機器の小型化などに伴い、より小型なものが求められており、上述の赤外線検出装置の構造だけでは十分ではなく、更なる特性の向上が求められている。
【0011】
本発明は上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、より小型化が可能な赤外線検出装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の赤外線検出装置は、赤外線を検知する赤外線センサと、該赤外線センサを配置させるパッケージ基体と、上記赤外線センサを覆い該赤外線センサに赤外線を集光させるレンズを備えた覆部とを有する赤外線検出装置であって、上記赤外線センサは、開口部が一表面側に設けられるベース基板と、該ベース基板における他表面側で上記ベース基板に支持される薄膜部と、該薄膜部に少なくとも設けられ赤外線を吸収する赤外線吸収部を有する赤外線検知部とを備え、厚み方向において、上記赤外線吸収部の少なくとも一部が上記レンズからの赤外線を吸収できるように上記開口部に臨む上記薄膜部に配され、上記ベース基板における上記他表面側を上記パッケージ基体側としていることを特徴とする。
【0013】
この赤外線検出装置において、上記赤外線吸収部で吸収されず該赤外線吸収部を透過する上記レンズ側からの赤外線を上記赤外線吸収部側に反射する赤外線反射膜が上記パッケージ基体側に備えられていることが好ましい。
【0014】
この赤外線検出装置において、上記赤外線検知部は、上記薄膜部における上記他表面側に設けられた第1電極部と該第1電極部の上記薄膜部側と反対側に設けられた焦電体層と該焦電体層の上記第1電極部側と反対側に設けられた第2電極部とを有することが好ましい。
【0015】
この赤外線検出装置において、上記赤外線センサは、上記開口部に臨む上記薄膜部における上記一表面側に赤外線を透過させる赤外線透過膜を備えており、該赤外線透過膜と上記第1電極部との間で光を閉じ込めて共振させる光学的な共振構造とすることで、上記赤外線透過膜が上記薄膜部における上記一表面側の上記赤外線吸収部を構成する構成要素として機能することが好ましい。
【0016】
この赤外線検出装置において、上記赤外線センサは、上記ベース基板の上記開口部における内周壁に、赤外線を上記赤外線吸収部側に反射する赤外線反射層が備えられていることが好ましい。
【0017】
この赤外線検出装置において、上記赤外線センサは、複数個の上記赤外線検知部を備えてなることが好ましい。
【0018】
この赤外線検出装置において、上記赤外線センサは、複数個の上記赤外線検知部の各々に対応して、上記開口部を上記赤外線検知部ごとに仕切る壁部を上記ベース基板に備えたことが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の赤外線検出装置は、より小型化が可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態1の赤外線検出装置を示す略断面図である。
【図2】同上の赤外線検出装置における赤外線の吸収を説明する説明図である。
【図3】実施形態2の赤外線検出装置を示す略断面図である。
【図4】同上の赤外線検出装置に用いられる赤外線センサの略平面図である。
【図5】同上の赤外線検出装置の要部を示す図4のXXを示す略断面図である。
【図6】同上の別の赤外線検出装置の要部を説明する説明図である。
【図7】同上の別の赤外線検出装置を示す略断面図である。
【図8】実施形態3の赤外線検出装置を示す略断面図である。
【図9】実施形態4の赤外線検出装置を示す略断面図である。
【図10】実施形態5の赤外線検出装置を示す略断面図である。
【図11】実施形態6の赤外線検出装置を示す略断面図である。
【図12】実施形態7の赤外線検出装置を示す略断面図である。
【図13】同上の別の赤外線検出装置を示す略断面図である。
【図14】同上の他の赤外線検出装置を示す略断面図である。
【図15】実施形態8の赤外線検出装置を示す略断面図である。
【図16】従来の赤外線検知用サーモパイルにおける要部構成の断面図である。
【図17】同上の赤外線検知用サーモパイルにおける要部構成の平面図である。
【図18】同上の赤外線検知用サーモパイルにおける要部構成の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施形態1)
以下、本実施形態の赤外線検出装置10を図1および図2に基づいて説明する。なお、図中において同じ部材に対しては、同じ番号を付している。
【0022】
本実施形態の赤外線検出装置10は、図1に示すように、赤外線を検知する赤外線センサ1と、赤外線センサ1を配置させるパッケージ基体2とを有している。赤外線検出装置10は、赤外線センサ1を覆い赤外線センサ1に赤外線(図1の破線の矢印を参照)を集光させるレンズ3を備えた覆部4を有している。
【0023】
赤外線検出装置10の赤外線センサ1は、開口部1fが一表面1aa側に設けられるベース基板1bと、ベース基板1bにおける他表面1ab側でベース基板1bに支持される薄膜部1aとを備えている。また、赤外線センサ1は、薄膜部1aに少なくとも設けられ赤外線を吸収する赤外線吸収部1c,1dを有する赤外線検知部1eを備えている。
【0024】
赤外線センサ1は、厚み方向において、赤外線吸収部1c,1dの少なくとも一部がレンズ3からの赤外線を吸収できるように開口部1fに臨む薄膜部1aに配されている。赤外線センサ1は、ベース基板1bにおける他表面1ab側をパッケージ基体2側としている。
【0025】
本実施形態の赤外線検出装置10は、赤外線センサ1の開口部1fにおける厚み方向をレンズ3の焦点距離の確保に利用している。言い換えれば、赤外線検出装置10は、赤外線センサ1の開口部1fを利用してレンズ3の焦点距離を稼ぐことにより、ベース基板1bにおける一表面1aa側をパッケージ基体2側にした赤外線検出装置と比較して、レンズ3と赤外線センサ1との距離をより近づけて配置できる。
【0026】
赤外線検出装置10は、赤外線センサ1に赤外線を集光させるレンズ3を備えることにより、高感度化が可能となる。また、赤外線検出装置10は、赤外線センサ1がベース基板1bにおける他表面1ab側をパッケージ基体2側とすることで、レンズ3と赤外線センサ1との距離をより近づけて、赤外線検出装置10全体を低背化することにより小型化が可能となる。すなわち、本実施形態の赤外線検出装置10は、より小型化が可能となる。
【0027】
以下、本実施形態の赤外線検出装置10の各構成について、より具体的に詳述する。
【0028】
赤外線センサ1は、温度変化によって電荷を生じる焦電効果を利用した焦電型の赤外線センサ1を利用している。赤外線センサ1は、たとえば、シリコン基板を用いたベース基板1bと、ベース基板1b上に酸化ケイ素膜(図示していない)と窒化ケイ素膜(図示していない)との積層膜で構成する薄膜部1aとを備えている。赤外線センサ1は、ベース基板1bの一表面1aa側が開口する開口部1fにより空間が設けられている。赤外線センサ1は、ベース基板1bにおける他表面1ab側でベース基板1bに支持される薄膜部1aを有したダイアフラム構造としている。
【0029】
赤外線センサ1は、薄膜部1aにおけるレンズ3側に焦電体薄膜からなる赤外線吸収部1cを設けている。また、赤外線センサ1は、赤外線吸収部1cのレンズ3側に赤外線吸収部1cと電気的に接続させる第1の電極8aを設けている。赤外線センサ1は、薄膜部1aにおけるパッケージ基体2側に焦電体薄膜からなる赤外線吸収部1dを設けている。赤外線センサ1は、赤外線吸収部1dのパッケージ基体2側に赤外線吸収部1dと電気的に接続させる第2の電極8bを設けている。なお、赤外線センサ1は、赤外線吸収部1c,1dとして、焦電効果特性を示す複合金属塩を用いることができる。複合金属塩は、たとえば、PTO(PbTiO)、PbNbO、PLZT((Pb、La)(Zr、Tr)O))やPZT(Pb(Zr,Ti)O)などが挙げられる。
【0030】
赤外線センサ1は、レンズ3からの赤外線を吸収できるように、薄膜部1aにおけるレンズ3側の赤外線吸収部1cと、薄膜部1aにおけるパッケージ基体2側の赤外線吸収部1dとが平面視で重なる位置に配置している。言い換えれば、赤外線センサ1は、赤外線吸収部1c,1dの少なくとも一部がレンズ3からの赤外線を吸収できるように開口部1fに臨む薄膜部1aの両面側に平面視で重なる位置に配置している。赤外線センサ1は、薄膜部1aと、薄膜部1aの厚み方向の両面側で重なる位置で配置した赤外線吸収部1c,1dと、第1の電極8aと、第2の電極8bとで、赤外線検知部1eを構成している。赤外線センサ1は、薄膜部1aのレンズ3側となる薄膜部1aにおける一表面1aa側に接続配線8aaを設けている。また、赤外線センサ1は、薄膜部1aのパッケージ基体2側となる薄膜部1aにおける他表面1ab側に第一端子部8acを設けている。
【0031】
赤外線センサ1は、第1の電極8aと電気的に接続された接続配線8aaが、薄膜部1aに貫設された貫通孔配線8abを介して第1端子部8acと電気的に接続させている。また、赤外線センサ1は、第2の電極8bと電気的に接続された接続配線8baが、第2端子部8bcと電気的に接続させている。赤外線センサ1は、パッケージ基体2の表面2aa上に実装させた後述する半導体素子6にバンプ7を介して搭載している。赤外線センサ1は、レンズ3で集光された赤外線を薄膜部1aを介して一対に設けられた赤外線吸収部1c,1dで吸収する。赤外線センサ1は、吸収した赤外線により絶縁体からなる薄膜部1aを介して対向配置させた赤外線吸収部1c,1dの温度変化に基づいて電荷が生ずる。赤外線センサ1は、赤外線吸収部1c,1dの電荷を各別に第1端子部8acおよび第2端子部8bcからバンプ7,7を介して信号処理用の半導体素子6側に出力することができる。
【0032】
このような赤外線センサ1は、図示していないが、たとえば、以下の方法で形成することができる。
【0033】
赤外線センサ1は、たとえば、ベース基板1bとなるSOI基板の一表面側および他表面側それぞれにシリコン酸化膜からなる絶縁膜を熱酸化法などにより形成する。これにより、ベース基板1bは、一表面1aa側および他表面1ab側に絶縁膜を備えることができる。なお、ベース基板1bとなるSOI基板は、単結晶シリコン基板と、単結晶のシリコン層との間にシリコン酸化膜からなる埋込酸化膜を挟んだ構造としている。その後、SOI基板は、ベース基板1bの他表面1ab側となるSOI基板の他表面側の全面に焦電材料(たとえば、PZTなど)からなる赤外線吸収部1dとなる赤外線吸収膜を形成する。赤外線吸収膜は、たとえば、スパッタ法、CVD法、ゾルゲル法や転写法などにより形成することができる。
【0034】
次に、赤外線センサ1は、リソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して赤外線吸収膜を所定の形状にパターニングすることで赤外線吸収部1dを形成することができる。赤外線吸収部1dは、たとえば、平面視において、矩形状に形成することができるが、矩形状だけに限られず円形など種々の形状とすることができる。続いて、SOI基板は、他表面側の全面に第2の電極8b、接続配線8baおよび第2端子部8bcの基礎となる第2の金属膜(たとえば、NiCr膜)を形成する。第2の金属膜は、たとえば、スパッタ法やCVD法などにより形成することができる。第2の金属膜は、NiCr膜に限らず、たとえば、Al膜やAl−Si膜でもよいし、Au膜と該Au膜と絶縁膜との間に介在させる密着性改善用の密着膜としてTi膜を備えた構成してもよい。なお、密着膜の材料は、Tiに限らず、たとえば、Cr、Nb、Zr、TiNやTaNなどを用いてもよい。
【0035】
なお、赤外線センサ1は、ベース基板1bの他表面1ab側の絶縁膜に赤外線吸収部1dを直接形成しているが、ベース基板1bの他表面1ab側の絶縁膜と赤外線吸収部1dとの間に、赤外線吸収部1dの成膜時の下地となるシード層(図示していない)を介在させたものでもよい。赤外線センサ1は、シード層を形成させることにより、赤外線吸収部1dの結晶性を向上させることができる。シード層の材料としては、たとえば、導電性酸化物材料の一種であるPLT((Pb,La)TiO)、PTOやSRO(SrRuO)などが挙げられる。
【0036】
次に、赤外線センサ1を形成するSOI基板は、リソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して、第2の金属膜が所定の形状にパターニングされる。これにより、赤外線センサ1は、第2の金属膜の一部からなる第2の電極8b、接続配線8ba、第1端子部8acおよび第2端子部8bcを備えることができる。赤外線センサ1は、第2の電極8bと併せて接続配線8ba、第1端子部8acおよび第2端子部8bcが同時に形成されている。なお、第2の電極8b、接続配線8ba、第1端子部8acおよび第2端子部8bcは、第2の金属膜をパターニングすることで、全てを同時に形成するものだけでなく、接続配線8ba、第1端子部8acや第2端子部8bcを別途に形成してもよい。なお、第2の金属膜のエッチングにあたっては、たとえば、RIE法やイオンミリング法などを適宜に採用することができる。
【0037】
続いて、SOI基板は、リソグラフィ技術およびDeep−RIE法などのエッチング技術を利用して、ベース基板1bの一表面1aaが開口する開口部1fを形成する。さらに、SOI基板は、RIE法によるエッチングにより、薄膜部1aに貫通孔配線8ab用の貫通孔を貫設させる。
【0038】
次に、SOI基板は、ベース基板1bの開口部1f内の薄膜部1aの全面となるSOI基板の一表面側に、焦電材料(たとえば、PZTなど)からなる赤外線吸収部1cとなる赤外線吸収膜を、ベース基板1bの他表面1ab側と同様にして形成する。続いて、赤外線センサ1は、リソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して赤外線吸収膜を所定の形状にパターニングすることで、赤外線吸収部1cを形成する。赤外線吸収部1cは、平面視において、赤外線吸収部1dと重なるように薄膜部1aを介して矩形状に形成している。赤外線吸収部1cの形状は、矩形状だけに限られず、円形状など種々の形状とすることができる。また、SOI基板は、薄膜部1aにおけるレンズ3側となる全面に第1の電極8a、接続配線8aaおよび貫通孔配線8abを、ベース基板1bの他表面1ab側と同様にして、たとえば、スパッタ法やCVD法などによりNiCr膜を成膜することにより形成する。
【0039】
赤外線センサ1は、ウェハレベルで各構成の形成を行ってから、個々の赤外線センサ1に分割するダイシングを行うことで、複数個の赤外線センサ1を量産性よく形成することができる。
【0040】
パッケージ基体2は、種々の材料から形成することができ金属材料でもよいし、半導体材料で構成してもよい。パッケージ基体2は、たとえば、パッケージ基体2の表面2aa側に赤外線センサ1と電気的に接続させる回路パターンを備えたセラミック基板を用いることができる。パッケージ基体2は、赤外線センサ1を配置することが可能なものであり、赤外線センサ1に加えて赤外線センサ1からの検出信号を増幅などする信号処理用の半導体素子6を実装させてもよい。パッケージ基体2は、種々の形状のものを用いることができ、板状であっても有底筒状であってもよい。
【0041】
レンズ3は、赤外線検出装置10の外部からの赤外線を赤外線センサ1に集光可能なものである。レンズ3は、赤外線センサ1の大きさ、位置など応じて種々の形状とすることができる。レンズ3は、たとえば、両凸レンズの形状でもよいし、平凸状のレンズ形状でもよい。また、レンズ3は、フレネルレンズ形状などとすることもできる。レンズ3の材料は、赤外線を透過可能なものとして、たとえば、ポリエチレン樹脂材料で形成させてもよいし、シリコン、ゲルマニウムや硫化亜鉛などの半導体材料を用いて形成させてもよい。
【0042】
覆部4は、赤外線センサ1を覆い赤外線センサ1に赤外線センサ1に赤外線を集光させるレンズ3を備えたものである。覆部4は、たとえば、レンズ3を保持する貫設孔が設けられた金属パッケージにより形成することができる。覆部4は、金属パッケージに限られるものではなく、セラミック材料、半導体材料や樹脂材料などで形成することができる。また、赤外線検出装置10は、必ずしも覆部4とレンズ3とを別体に形成させる必要もなく、覆部4とレンズ3とが一体に形成されているものでもよい。
【0043】
また、本実施形態の赤外線検出装置10は、赤外線吸収部1c,1dで吸収されず赤外線吸収部1c,1dを透過するレンズ3側からの赤外線を赤外線吸収部1c,1d側に反射する赤外線反射膜5がパッケージ基体2側に備えている。赤外線検出装置10は、図2に示すように、赤外線センサ1の薄膜部1aにおけるレンズ3側に配された赤外線吸収部1cがレンズ3側からの赤外線IR1を吸収する。赤外線検出装置10は、赤外線センサ1の薄膜部1aにおけるレンズ3側に配された赤外線吸収部1cで吸収されず透過した赤外線IR2を、薄膜部1aにおけるパッケージ基体2側の赤外線吸収部1dで吸収させることができる。
【0044】
さらに、本実施形態の赤外線検出装置10は、赤外線反射膜5がパッケージ基体2側に備えられていることにより、赤外線吸収部1c,1dを透過した赤外線IR3を再び赤外線吸収部1c,1d側に反射させることができる。赤外線検出装置10は、赤外線反射膜5により反射させた赤外線を赤外線吸収部1c,1dに吸収させることで、さらに高感度化を図ることが可能となる。
【0045】
特に、本実施形態の赤外線検出装置10は、赤外線センサ1がベース基板1bの他表面1ab側をパッケージ基体2側として配置していることにより、赤外線吸収部1c,1dと赤外線反射膜5との間を狭間隙にすることができる。赤外線検出装置10は、赤外線吸収部1c,1dと赤外線反射膜5との距離を、検出する赤外線の波長の1/4とする共振構造に設定することで、更なる高感度化を図ることが可能となる。
【0046】
半導体素子6は、赤外線センサ1と協働して赤外線センサ1からの検出信号を増幅処理などを行う。半導体素子6は、たとえば、信号処理用ICチップにより構成することができる。赤外線検出装置10は、赤外線センサ1からの検出信号を半導体素子6の増幅回路(AMP)にて増幅して外部に出力することができる。なお、本実施形態の赤外線検出装置10は、赤外線センサ1と半導体素子6とを別体に形成させているが、赤外線センサ1と半導体素子6とを一体に形成させてもよい。赤外線検出装置10は、半導体素子6をステムたるパッケージ基体2上に接着剤(図示していない)により接着してある。赤外線検出装置10は、半田からなるバンプ7を用いて、赤外線センサ1を半導体素子6上に実装してある。赤外線検出装置10は、半導体素子6の接続端子部6a,6b上に予め形成させた半田からなるバンプ7と、赤外線センサ1とを接合させる。
【0047】
赤外線検出装置10は、赤外線センサ1の第1端子部8acおよび第2端子部8bcを半導体素子6の接続端子部6a,6b上に形成されたバンプ7,7と接合させることにより電気的に接続している。なお、赤外線検出装置10は、パッケージ基体2の外側に外部接続端子2a,2bを備えている。赤外線検出装置10は、赤外線センサ1が検出した検出信号を出力できるように、パッケージ基体2に貫設された貫通配線(図示していない)を通して、半導体素子6と、外部接続端子2a,2bとを電気的に接続させている。赤外線検出装置10は、赤外線センサ1からの検出信号を、外部接続端子2a,2bから外部に出力することができる。
【0048】
本実施形態の赤外線検出装置10は、パッケージ基体2を覆部4で封止している。赤外線検出装置10は、パッケージ基体2の淵に、ガラスからなる封止接着層(図示していない)を用いて覆部4を接着硬化することができる。赤外線検出装置10は、封止に用いられる封止接着層として、ガラスの代わりに、AuSi、半田や有機系のエポキシ樹脂などを利用することもできる。
【0049】
赤外線検出装置10は、レンズ3を備えた覆部4とパッケージ基体2とで、赤外線検出装置10の内部が汚染されないように真空密封或いは、各赤外線センサ1などに曝しても実質的に影響のないガス等を加圧状態で気密封止している。赤外線検出装置10は、赤外線センサ1などに実質的に影響のないガスとして、たとえば、Arガスなどの不活性ガスや窒素ガス(N)が挙げられる。赤外線検出装置10は、パッケージ基体2と覆部4とを加圧状態で気密封止することにより、赤外線検出装置10の内部を揚圧(大気圧より高く)させてもよい。赤外線検出装置10は、赤外線検出装置10の内部を揚圧することにより、気密封止された赤外線検出装置10の内部に、大気からガスが流入することを抑制することができる。これにより、赤外線検出装置10は、より信頼性の高いものとすることができる。
【0050】
(実施形態2)
図3に示す本実施形態の赤外線検出装置10は、図1に示す実施形態1の焦電効果を利用する赤外線センサ1を用いる代わりに、熱起電力効果を利用する赤外線センサ1を用いた点が主として相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略している。
【0051】
本実施形態の赤外線検出装置10は、図3で示すように、赤外線を検知する赤外線センサ1と、赤外線センサ1を配置させるパッケージ基体2とを有している。赤外線検出装置10は、赤外線センサ1を覆い赤外線センサ1に赤外線(図3の破線の矢印を参照)を集光させるレンズ3を備えた覆部4を有している。
【0052】
赤外線検出装置10の赤外線センサ1は、図3ないし図5で示すように、開口部1fが一表面1aa側に設けられるベース基板1bと、ベース基板1bにおける他表面1ab側でベース基板1bに支持される薄膜部1aとを備えている。また、赤外線センサ1は、薄膜部1aに少なくとも設けられ赤外線を吸収する赤外線吸収部1j,1kを有する赤外線検知部1hを備えている。
【0053】
赤外線センサ1は、厚み方向において、赤外線吸収部1j,1kの少なくとも一部がレンズ3からの赤外線を吸収できるように開口部1fに臨む薄膜部1aの両面側に平面視で重なる位置で配されている。赤外線センサ1は、ベース基板1bにおける他表面1ab側をパッケージ基体2側としている。
【0054】
本実施形態の赤外線検出装置10は、実施形態1の赤外線検出装置10と同様に、より小型化が可能となる。
【0055】
赤外線センサ1は、より詳細には、たとえば、薄膜部1aを薄膜部1a自体でシリコン基板を用いたベース基板1bに支持されるダイアフラム構造としている。赤外線センサ1は、シリコン基板を用いたベース基板1bの他表面1ab側に形成されたシリコン酸化膜1a1を備えている。赤外線センサ1は、シリコン酸化膜1a1のベース基板1bと反対側にシリコン窒化膜1a2を備えている。赤外線センサ1は、シリコン酸化膜1a1とシリコン窒化膜1a2とで薄膜部1aを構成している。赤外線センサ1は、薄膜部1aのシリコン窒化膜1a2に熱電対9を備えている。
【0056】
赤外線センサ1は、平面視において、ベース基板1b側の薄膜部1aと、開口部1f側の薄膜部1aとに亘って設けられ赤外線の吸収による温度変化を検知する熱電対9を有している(図4を参照)。本実施形態の赤外線検出装置10は、複数個の熱電対9を電気的に直列に接続して、サーモパイルを構成している。本実施形態の赤外線検出装置10は、熱電対9と、熱電対9を覆う赤外線吸収部1kと、薄膜部1aのレンズ3側に設けられた赤外線吸収部1jとで赤外線検知部1hを構成している(図3および図5を参照)。
【0057】
なお、赤外線センサ1は、ダイアフラム構造だけに限られるものではない。赤外線センサ1は、図示していないがベース基板1b側と熱断熱する支持部により、開口部1f側で薄膜台座部を支持する断熱ブリッジ構造としてもよい。この場合、赤外線センサ1は、支持部を介して、ベース基板1b側から薄膜台座部にかけて熱電対9を設けてもよい。また、赤外線センサ1は、薄膜部1aに1個の赤外線検知部1hを備えた構成だけでなく、複数個の赤外線検知部1hを備えた構成としてもよい。赤外線センサ1は、平面視において、複数個の赤外線検知部1hをマトリックス状に配置することで赤外線画像センサとして機能させることが可能となる。
【0058】
赤外線センサ1は、異なる材料からなる一対の熱電対素線9a,9bを、熱電対9として備えている。赤外線センサ1は、一対の熱電対素線9a,9bを、薄膜部1aのパッケージ基体2側に並んで配置させてもよいし、薄膜部1aの厚み方向において絶縁膜(図示していない)を介して配置させてもよい。本実施形態の赤外線検出装置10は、赤外線センサ1の開口部1f内における薄膜部1aのレンズ3側に赤外線吸収部1jを設けている。これにより、赤外線検出装置10は、レンズ3で集光された赤外線を赤外線吸収部1jで効率よく吸収させることが可能となる。そのため、赤外線センサ1は、薄膜部1aを介して他表面1ab側に赤外線検知部1hを構成していても、赤外線を感度よく検出することが可能となる。
【0059】
赤外線センサ1は、薄膜部1aにおいて熱電対素線9aと熱電対素線9bとが並んで配置されたものを、絶縁材料からなる赤外線吸収部1kにより被覆して構成している。赤外線センサ1は、たとえば、シリコン酸化膜1a1とシリコン窒化膜1a2との積層膜からなる薄膜部1aにおけるパッケージ基体2側に熱電対9を形成させている。赤外線センサ1は、赤外線吸収部1kを構成する材料として、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜やシリコン酸窒化膜などの絶縁材料を好適に用いることができる。
【0060】
また、赤外線センサ1は、図示していないが、赤外線吸収部1kを構成するシリコン酸化膜、シリコン窒化膜やシリコン酸窒化膜などの絶縁膜上に、TiNなどの金属膜を形成させてもよい。赤外線検出装置10は、たとえば、上記金属膜と、赤外線反射膜5との間隔を、赤外線センサ1で検出する赤外線の波長の1/4に設定することができる。また、赤外線検出装置10は、上記金属膜を、たとえば、シート抵抗が377Ω/□のTiN膜を用いることができる。これにより、赤外線検出装置10は、上記金属膜と、赤外線反射膜5との光学的な共振構造とし、より高感度化を図ることも可能となる。
【0061】
より詳細には、赤外線検出装置10は、図6に示すように、赤外線吸収部1kが、赤外線吸収部1kを構成する上記絶縁材料の絶縁膜1a4に加え、絶縁膜1a4における他表面1ab側に金属膜11を備えている。言い換えれば、金属膜11は、赤外線吸収部1kを構成する構成要素として機能させている。また、赤外線検出装置10は、金属膜11と対向して半導体素子6に赤外線反射膜5を備えている。これにより赤外線検出装置10では、赤外線IR4が赤外線反射膜5で反射され、赤外線IR5が金属膜11側に向かう。また、赤外線検出装置10では、赤外線IR5が金属膜11で反射され、赤外線IR6が赤外線反射膜5側に向かう。
【0062】
赤外線検出装置10は、たとえば、金属膜11として、シート抵抗が377Ω/□のTiN膜やTi膜などを用いる。また、赤外線検出装置10は、たとえば、赤外線反射膜5として、シート抵抗が10Ω/□よりも小さい金属(たとえば、金やアルミニウムなど)の膜を用いる。これにより赤外線検出装置10は、金属膜11と、赤外線反射膜5との光学的な共振構造とし、中心波長が11.5μmの赤外線を金属膜11側で理論上100%近く吸収させることができる。そのため、赤外線検出装置10は、たとえば、波長が10〜13μmの赤外線IR4を金属膜11側で効率よく吸収させ、より高感度化を図ることも可能となる。
【0063】
赤外線センサ1は、平面視において、熱電対9の一対の熱電対素線9a,9b同士がコンタクトホール1a3を介して薄膜部1aの中央部において金属材料(たとえば、Al−Siなど)からなる接続部12により電気的に接続されて温接点T1を形成している。また、赤外線センサ1は、平面視において、熱電対9が薄膜部1aのベース基板1b側で金属材料(たとえば、Al−Siなど)からなる接続部13により電気的に接続されて冷接点T2を形成している。赤外線センサ1は、接続部12がベース基板1bの他表面1ab側において、赤外線吸収部1kとして機能する層間絶縁膜によって電気的に絶縁分離されている。これにより、赤外線センサ1は、10個の熱電対9を直列に電気的に接続させて構成している。
【0064】
また、赤外線センサ1は、外部への出力端子となる第1端子部8acを熱電対素線9aと接続させて備えている。同様に、赤外線センサ1は、外部への出力端子となる第2端子部8bcを熱電対素線9bに接続させて備えている。熱電対9は、一方がp形多結晶シリコンにより形成させた第1の熱電対素線9aであり、他方がn形多結晶シリコンにより形成させた第2の熱電対素線9bとしている。なお、熱電対9は、第1の熱電対素線9aの材料をn形多結晶シリコンとし、第2の熱電対素線9bの材料をp形多結晶シリコンとしてもよい。また、第1および第2の熱電対素線9a,9bの材料は、多結晶シリコンだけに限られるものではなく、多結晶シリコンゲルマニウム、多孔質シリコン、ビスマステルライド(BiTe)、アンチモンテルライド(SbTe)でもよい。第1および第2の熱電対素線9a,9bの材料は、一方を半導体材料とし、他方を金属材料であるAlまたはAuとしてもよい。
【0065】
赤外線センサ1は、薄膜部1aにおけるパッケージ基体2側のシリコン窒化膜1a2に設けられた熱電対9を覆うように絶縁膜を形成している。赤外線センサ1は、熱電対9を覆う絶縁材料としてBPSG(Boron Phosphor Silicate Glass)を用いている。薄膜部1aは、熱電対9を覆うBPSG膜で層間絶縁膜を構成している。薄膜部1aは、層間絶縁膜上にパッシベーション膜を形成している。パッシベーション膜は、PSG(Phosphor Silicate Glass)膜とPSG膜上に形成されたNSG(Nondoped Silicate Glass)膜との積層膜により構成してあるが、これに限らず、たとえば、シリコン窒化膜により構成してもよい。赤外線センサ1は、熱電対9を覆う層間絶縁膜とパッシベーション膜とで赤外線吸収部1kを構成している。赤外線センサ1は、赤外線吸収部1kを構成する層間絶縁膜およびパッシベーション膜の屈折率および膜厚を調整することにより、赤外線検知部1hに赤外線を効率よく吸収させることができる。
【0066】
赤外線検出装置10は、赤外線センサ1と別途形成され赤外線センサ1と協働する信号処理用の半導体素子6を備えている。赤外線検出装置10は、半導体素子6をパッケージ基体2上に予め形成させた配線パターン(図示していない)に導電性ペーストたる接着剤14を用いて接着してある。赤外線検出装置10は、半田からなるバンプ7を用いて、赤外線センサ1を半導体素子6上に実装してある。赤外線センサ1は、複数個のバンプ7により、赤外線センサ1の第1端子部8acや第2端子部8bcを、半導体素子6の接続端子部6a,6bと電気的に接続させている。
【0067】
赤外線検出装置10は、赤外線センサ1が実装された半導体素子6と、パッケージ基体2の配線パターンとをワイヤ15によりワイヤボンディングしている。赤外線検出装置10は、ワイヤ15などを介して、赤外線検出装置10の外部と赤外線センサ1とを電気的に接続させることができる。赤外線検出装置10は、ワイヤ15として、たとえば、金線やアルミニウム線を用いることができる。
【0068】
なお、赤外線検出装置10は、必ずしも半導体素子6を備える必要はない。また、赤外線検出装置10は、赤外線反射膜5をパッケージ基体2上に設けてもよいし、赤外線反射膜5を設けなくともよい。したがって、赤外線検出装置10は、たとえば、図7に示すように、赤外線センサ1をパッケージ基体2上に設けられた配線パターンの端子部6c上にバンプ7を用いて実装してもよい。赤外線検出装置10は、パッケージ基体2に貫設された貫通配線(図示していない)を介して配線パターンと、外部接続端子2a,2bとを電気的に接続させている。
【0069】
本実施形態の赤外線検出装置10は、赤外線センサ1として、赤外線による熱起電力を利用した赤外線センサ1を例示したが、この他、ボロメータ型赤外線センサや赤外線による光起電力を利用した量子型赤外線センサなどを用いてもよい。
【0070】
(実施形態3)
図8に示す本実施形態の赤外線検出装置10は、図3に示す赤外線検出装置10のごとく、パッケージ基体2と、レンズ3を備えた覆部4とで赤外線センサ1を気密封止する代わりに、赤外線センサ1の一部を利用して気密封止する点が主として相違する。なお、実施形態1および実施形態2と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略している。
【0071】
本実施形態の赤外線検出装置10は、図8に示すように、たとえば、赤外線センサ1と、レンズ3を一体に形成した覆部4とを気密封止している。赤外線検出装置10は、たとえば、開口部1fにより矩形枠状とするベース基板1bの一表面1aa側に金属パターン層1gを形成させている。赤外線検出装置10は、覆部4において金属パターン層1gと対応する部位に、枠状の金属パターン層4aを形成させている。赤外線検出装置10は、たとえば、ベース基板1bの一表面1aa側に形成された金属パターン層1gと、覆部4の金属パターン層4aとをAu−Auの常温接合により接合させている。同様に、赤外線検出装置10は、赤外線センサ1と半導体素子6とを気密封止している。赤外線検出装置10は、赤外線センサ1における薄膜部1a側と半導体素子6とを半田16を介して気密封止させている。赤外線検出装置10は、シリコン基板を用いたベース基板1bの他表面1ab側の外周部に沿って枠状に形成された金属パターン部8ccを形成させている。赤外線検出装置10は、半導体素子6の金属パターン部8ccに対応する部位に、枠状の金属パターン部6dを形成させている。赤外線検出装置10は、ベース基板1bの他表面1ab側に形成された金属パターン部8bcと、半導体素子6の対応する部位に形成された金属パターン部6dとをバンプ7により接合させている。赤外線検出装置10は、赤外線センサ1と、半導体素子6とをAu−Auの常温接合などにより接合して気密封止してもよい。
【0072】
なお、赤外線検出装置10は、シリコン材料により覆部4を形成させている。赤外線検出装置10は、シリコン基板の陽極酸化技術を利用して、赤外線検出装置10の外部に突出するように、覆部4にレンズ3を構成する凸部3aを形成している。より具体的には、陽極酸化技術を応用してレンズ3となる半導体レンズを形成するために、所望のレンズ形状に応じてパターン設計した陽極を半導体基板(たとえば、シリコン基板)の一表面側に半導体基板とオーミック接触をなすように形成する。たとえば、レンズ3の凸部3aを形成するために、半導体基板は、半導体基板の一表面上に陽極の基礎となる導電性層を形成した後、導電性層に円形状に開口した部位を設け半導体基板の一表面の一部が円形状に露出するようにパターニングを行う。次に、半導体基板の構成元素の酸化物をエッチング除去可能な電解液中に、半導体基板の他表面における多孔質部の形成予定領域全域を浸す。その後、半導体基板の他表面側に対向配置される陰極と陽極との間に通電させ、半導体基板の他表面側に所望形状の多孔質部を酸化により形成する。続いて、半導体基板に形成された多孔質部をエッチングなどにより除去することで、レンズ3の凸部3aを形成することができる。同様に、赤外線検出装置10は、シリコン基板の陽極酸化技術を利用して、赤外線検出装置10の内部に突出するように、覆部4にレンズ3を構成する凸部3bを形成している。
【0073】
また、赤外線検出装置10は、半導体素子6と、赤外線センサ1と、覆部4とで気密封止された内部が汚染されないように真空密封或いは、各赤外線センサ1等に曝しても実質的に影響のないガス等を加圧状態で封止してもよい。これにより、赤外線検出装置10は、温度上昇した赤外線検知部1hでの熱が逃げにくくなり、より感度を高めることが可能となる。また、本実施形態の赤外線検出装置10は、モールド成形などにより、半導体素子6上において赤外線センサ1と、レンズ3を備えた覆部4との側面側を樹脂で覆うことで、赤外線検出装置10の機械的強度を高めている。
【0074】
なお、レンズ3を備えた覆部4と赤外線センサ1とは、ウェハレベルで接合された後で分離させるウェハレベルパッケージ技術を利用して、チップサイズパッケージの構造としたものでもよい。これにより、レンズ3を備えた覆部4と赤外線センサ1とは、アライメント精度を高めることが可能となる。
【0075】
(実施形態4)
図9に示す本実施形態の赤外線検出装置10は、図8に示す赤外線検出装置10のパッケージ基体2と別体の半導体素子6上に赤外線センサ1を配置させる代わりに、半導体素子6自体を赤外線センサ1の配置に利用する点が主として相違する。なお、実施形態3と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略している。
【0076】
本実施形態の赤外線検出装置10は、図9に示すように、赤外線センサ1と別途に形成された赤外線センサ1と協働する信号処理用の半導体素子6を備えている。赤外線検出装置10は、赤外線センサ1における薄膜部1a側と半導体素子6とを半田16を介して気密封止させている。赤外線検出装置10は、シリコン基板を用いたベース基板1bの他表面1ab側の外周部に沿って枠状に形成された金属パターン部8ccを形成させている。赤外線検出装置10は、半導体素子6の金属パターン部8ccに対応する部位に、枠状の金属パターン部6dを形成させている。赤外線検出装置10は、ベース基板1bの他表面1ab側に形成された金属パターン部8bcと、半導体素子6の対応する部位に形成された金属パターン部6dとをバンプ7により接合させている。
【0077】
なお、赤外線検出装置10は、赤外線センサ1の赤外線吸収部1j,1kにレンズ3からの赤外線を反射させる赤外線反射膜5を半導体素子6に設けている。また、赤外線検出装置10は、半導体素子6の金属パターン部6dと電気的に接続させた貫通孔配線6caを介して、赤外線センサ1や半導体素子6と、赤外線センサ1や半導体素子6を電気的に接地させる半田ボールからなる接地端子2cとを電気的に接続させている。赤外線検出装置10は、図示していない貫通配線を介して、赤外線センサ1からの検出信号を外部に出力させるように半田ボールからなる外部接続端子2a,2bと電気的に接続させた構成としてもよい。
【0078】
赤外線検出装置10は、半導体素子6自体をパッケージ基体2として、半導体素子6と赤外線センサ1とを気密封止している。また、赤外線検出装置10は、赤外線センサ1と、レンズ3を一体に形成した覆部4とを気密封止している。赤外線検出装置10は、モールド成形などにより、半導体素子6上において赤外線センサ1と、レンズ3を備えた覆部4との側面側を樹脂で覆うことで、赤外線検出装置10の機械的強度を高めている。
【0079】
本実施形態の赤外線検出装置10は、半導体素子6自体をパッケージ基体2として赤外線センサ1の配置に利用している。言い換えれば、本実施形態の赤外線検出装置10は、チップサイズパッケージの構造としている。これにより、赤外線検出装置10は、主として、レンズ3を備えた覆部4と、赤外線センサ1と、赤外線センサ1を実装するパッケージ基体2とを合わせた厚み程度にまで、赤外線検出装置10全体の厚みを薄くさせることが可能なる。すなわち、本実施形態の赤外線検出装置10は、より小型化が可能となる。
【0080】
(実施形態5)
図10に示す本実施形態の赤外線検出装置10は、図1に示す実施形態1における赤外線センサ1と赤外線検知部1nの構造が主として相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略している。
【0081】
本実施形態の赤外線検出装置10は、図10に示すように、赤外線を検知する赤外線センサ1と、赤外線センサ1を配置させるパッケージ基体2とを有している。赤外線検出装置10は、赤外線センサ1を覆い赤外線センサ1に赤外線(図10の破線の矢印を参照)を集光させるレンズ3を備えた覆部4を有している。
【0082】
赤外線検出装置10の赤外線センサ1は、開口部1fが一表面1aa側に設けられるベース基板1bと、ベース基板1bにおける他表面1ab側でベース基板1bに支持される薄膜部1aとを備えている。また、赤外線センサ1は、薄膜部1aに少なくとも設けられ赤外線を吸収する赤外線吸収部1m,1rを有する赤外線検知部1nを備えている。
【0083】
赤外線センサ1は、厚み方向において、赤外線吸収部1m,1rの少なくとも一部がレンズ3からの赤外線を吸収できるように開口部1fに臨む薄膜部1aの両面側に平面視で重なる位置で配されている。赤外線センサ1は、ベース基板1bにおける他表面1ab側をパッケージ基体2側としている。
【0084】
ここで、本実施形態の赤外線検出装置10における赤外線検知部1nは、薄膜部1aにおける他表面1ab側に設けられた第1電極部8dを有している。赤外線検知部1nは、第1電極部8dの薄膜部1a側と反対側に設けられた焦電体層21を有している。赤外線検知部1nは、焦電体層21の第1電極部8d側と反対側に設けられた第2電極部8eを有している。本実施形態の赤外線検出装置10における赤外線検知部1nは、焦電体層21が薄膜部1aにおける他表面1ab側に設けられた赤外線吸収部1rとして機能する。
【0085】
本実施形態の赤外線検出装置10は、赤外線センサ1が、第1電極部8dと第2電極部8eとの間で焦電体層21を挟む構成の赤外線検知部1nを備えている。また、赤外線センサ1は、赤外線の入射により温度が上昇する赤外線吸収部1mを開口部1fに臨む薄膜部1aの全面に設けている。すなわち、赤外線センサ1は、赤外線吸収部1m、赤外線吸収部1rとしても機能する焦電体層21が赤外線を吸収することによる温度上昇により赤外線検知部1nで焦電流が発生する構造としている。
【0086】
これにより、本実施形態の赤外線検出装置10は、比較的簡単な構成でよりセンサ感度を高めることが可能となる。
【0087】
赤外線吸収部1mは、薄膜部1aにおける一表面1aa側に設けられ、赤外線を吸収することで赤外線検知部1n側で温度の上昇に寄与することが可能なものであればよい。赤外線センサ1は、たとえば、金黒膜などにより赤外線吸収部1mを形成することができる。これにより赤外線センサ1は、赤外線吸収部1m自体が温度の上昇を生ずる構造とすることができる。赤外線吸収部1mは、赤外線吸収部1mの材料として、金黒を用いた場合、赤外線の波長に依存することなく、比較的に高い赤外線吸収率を得ることが可能となる。
【0088】
また、赤外線吸収部1mは、赤外線を吸収できれば金黒だけに限られず、カーボンブラックを樹脂材料に含有させたものやPZTなどを用いてもよい。さらに、赤外線吸収部1mは、図示していないが、たとえば、赤外線透過性の金属薄膜と、赤外線反射膜として機能可能な第1電極部8dとを光学的な共振構造に利用したものでもよい。これにより、赤外線吸収部1mは、実施形態2における図6で示した光学的な共振構造と同様にして、赤外線を吸収することもできる。
【0089】
本実施形態の赤外線検出装置10では、薄膜部1aにおける他表面1ab側だけに赤外線検知部1nを備えている。これにより、本実施形態の赤外線検出装置10では、実施形態1における赤外線センサ1と比較して、薄膜部1aにおける一表面1aa側において、赤外線吸収部1mの端部と内周壁1faとの間の隙間を小さくすることが可能となる。本実施形態の赤外線検出装置10では、実施形態1の赤外線検出装置10と比較して、赤外線吸収部1mを大きくし、より感度を高めることが可能になるという効果もある。なお、図10に示す赤外線検出装置10では、赤外線吸収部1mの端部と内周壁1faとを密着させた状態で図示しているが、必ずしも赤外線吸収部1mの端部と内周壁1faとを密着させる必要はない。
【0090】
以下、本実施形態の赤外線検出装置10における赤外線センサ1について説明する。
【0091】
赤外線センサ1は、たとえば、ベース基板1bとなるSOI基板の一表面側および他表面側それぞれにシリコン酸化膜からなる絶縁膜を熱酸化法などにより形成する。これにより、ベース基板1bは、一表面1aa側および他表面1ab側に絶縁膜を備えることができる。その後、SOI基板は、ベース基板1bの他表面1ab側となるSOI基板の他表面側の全面に、たとえば、第1電極部8d、接続配線8aaおよび第1端子部8acの基礎となる金属膜(たとえば、Au膜)を形成する。金属膜は、たとえば、蒸着法、スパッタ法やめっき法などにより形成することができる。赤外線センサ1は、リソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して金属膜を所定の形状にパターニングすることで、第1電極部8d、接続配線8aaおよび第1端子部8acを形成することができる。なお、ベース基板1bは、SOI基板だけに限られず、Si基板を用いて形成することもできる。
【0092】
次に、赤外線センサ1は、焦電材料(たとえば、PZTなど)からなる焦電体層21となる赤外線吸収膜を形成する。赤外線吸収膜は、たとえば、スパッタ法、CVD法、ゾルゲル法や転写法などにより形成することができる。赤外線センサ1は、リソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して、赤外線吸収膜を所定の形状にパターニングすることで焦電体層21を形成することができる。
【0093】
続いて、赤外線センサ1は、第1電極部8dと電気的に接続された接続配線8aaおよび第1端子部8acに絶縁層1a5の基礎となるシリコン酸化膜に形成する。絶縁層1a5は、CVD法などにより形成することができる。また、赤外線センサ1は、リソグラフィ技術およびエッチング技術を利用してシリコン酸化膜を所定の形状にパターニングすることで絶縁層1a5を形成することができる。赤外線センサ1では、絶縁層1a5により、第1電極部8d側と第2電極部8e側との電気的な絶縁を行っている。
【0094】
次に、赤外線センサ1は、第2電極部8e、接続配線8baおよび第2端子部8bcの基礎となる金属膜(たとえば、Au膜)を形成する。金属膜は、たとえば、蒸着法、スパッタ法やめっき法などにより形成することができる。赤外線センサ1は、リソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して金属膜を所定の形状にパターニングすることで、第2電極部8e、接続配線8baおよび第2端子部8bcを形成することができる。
【0095】
次に、SOI基板は、ベース基板1bの開口部1f内の薄膜部1aの全面となるSOI基板の一表面側に、たとえば、金黒などからなる赤外線吸収膜を蒸着法などを利用して形成する。続いて、赤外線センサ1は、リソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して金黒などからなる赤外線吸収膜を所定の形状にパターニングすることで、赤外線吸収部1mを形成する。これにより本実施形態の赤外線検出装置10に用いられる赤外線センサ1の赤外線検知部1nを形成することができる。なお、本実施形態の赤外線検出装置10における赤外線センサ1では、レンズ3側の赤外線吸収部1mの温度上昇がパッケージ基体2側の赤外線検知部1nに伝われば良い。
【0096】
(実施形態6)
図11に示す本実施形態の赤外線検出装置10は、図10に示す実施形態5のベース基板1の開口部1fの内周壁1faに、赤外線反射層25を備えた点が相違する。なお、実施形態5と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略している。
【0097】
本実施形態の赤外線検出装置10における赤外線センサ1には、ベース基板1bの開口部1fにおける内周壁1faに、赤外線を赤外線吸収部1m,1r側に反射する赤外線反射層25が備えられている。
【0098】
本実施形態の赤外線検出装置10では、開口部1fの内周壁1faに赤外線反射層25を形成することにより、開口部1fの内周壁1fa側で反射した赤外線を赤外線吸収部1m,1r側へ入射し易くさせ、よりセンサ感度を高めることが可能となる。
【0099】
本実施形態の赤外線検出装置10の赤外線センサ1では、開口部1fの内周壁1faに、厚さ数百nmの金属膜(たとえば、Au膜)を蒸着法、スパッタ法やめっき法などにより成膜することで赤外線反射層25を形成することができる。
【0100】
(実施形態7)
図12に示す本実施形態の赤外線検出装置10は、図10に示す実施形態5の赤外線センサ1における赤外線検出部1nの代わりに、複数個の赤外線検出部1pを備えた構成とする点が相違する。なお、実施形態5と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略している。
【0101】
本実施形態の赤外線検出装置10における赤外線センサ1は、複数個の赤外線検知部1pを備えている。赤外線センサ1は、複数の赤外線検知部1pを備えることにより、赤外線を放射する物体(たとえば、人)の動きベクトルを検知するベクトル検知を行うことが可能となる。また、赤外線センサ1は、平面視において、複数個の赤外線検出部1pを、たとえば、マトリックス状に配置することで、赤外線画像センサとして機能させることもできる。なお、各赤外線検出部1pは、第1電極部8dを共通にした共通電極として構成している。また、各赤外線検出部1pは、図示していないが、赤外線検出部1pの各々で赤外線を検出して出力ができるように、第2電極部8eを赤外線検出部1pごとに形成した個別電極として構成している。赤外線検出部1pは、第1電極部8dを共通にした共通電極を用いる場合だけでなく、赤外線検出部1pごとに電極を設けてもよい。
【0102】
ところで、赤外線センサ1は、複数個の赤外線検知部1pを一画素などとして各別に利用する場合、複数個の赤外線検知部1pの各々で独立して赤外線吸収部により温度を上昇できることが好ましい。
【0103】
しかしながら、図12に示す赤外線センサ1では、薄膜部1aにおける一表面1aa側の全面に赤外線吸収部1mを設けているため、薄膜部1a全体の温度が上昇する傾向にある。そのため、赤外線検出装置10は、複数個の赤外線検知部1pの各々の温度を精度良く検出することが難しくなる恐れがある。
【0104】
そのため、図13に示す赤外線センサ1では、平面視において、薄膜部1aにおける他表面1ab側の赤外線検知部1pの赤外線吸収部1rに対応して、薄膜部1aにおける一表面1aa側に複数個の赤外線吸収部1qを形成することもできる。これにより、図13に示す本実施形態の別の赤外線検出装置10では、複数個の赤外線検知部1pの各々の温度を、より精度良く検出することが可能となる。
【0105】
また、図13に示す赤外線検出装置10では、平面視において、薄膜部1aにおける他表面1ab側の赤外線検知部1pの赤外線吸収部1rに対応して、薄膜部1aにおける一表面1aa側に赤外線吸収部1qを形成する必要がある。
【0106】
そのため、図13に示す赤外線検出装置10では、開口部1f内において、リソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して、赤外線吸収部の基礎となる膜をパターニングする必要がある。
【0107】
これに対して、図14に示す本実施形態の他の赤外線検出装置10の赤外線センサ1は、開口部1fに臨む薄膜部1aにおける一表面1aa側に赤外線を透過させる赤外線透過膜22を備えている。赤外線センサ1は、赤外線透過膜22と第1電極部8dとの間で光を閉じ込めて共振させる光学的な共振構造としている。赤外線センサ1は、赤外線透過膜22が薄膜部1aにおける一表面1aa側の赤外線吸収部1sを構成する構成要素として機能している。
【0108】
図14に示すように赤外線吸収部1sは、赤外線センサ1が赤外線透過膜22と第1電極部8dとの間で光を閉じ込めて共振させる光学的な共振構造を有する場合、第1電極部8dに対応する選択的した位置で赤外線を吸収させ温度を上昇させることが可能となる。そのため、赤外線センサ1は、図13に示すように、薄膜部1aの開口部1fの全面に赤外線吸収部の基礎となる膜を形成して複数個の赤外線検知部1pの各々ごとに複数個の赤外線吸収部1qを形成する必要もない。これにより、図14に示す赤外線検出装置10では、複数個の赤外線検知部1nに対して共通の赤外線吸収部1sを構成する赤外線透過膜22を形成させても、図12の赤外線検出装置10と比較して、各赤外線検出部1pごとに精度よく赤外線を検出することができる。また、図14に示す赤外線検出装置10では、複数個の赤外線検知部1nに対して共通の赤外線吸収部1sを構成する赤外線透過膜22を形成させても、図13の赤外線検出装置10と比較して、比較的簡単な構成とすることができる。
【0109】
言い換えれば、図14に示す赤外線検出装置10の赤外線センサ1は、開口部1fに臨む薄膜部1aにおける一表面1aa側に赤外線を透過させる赤外線透過膜22を備えている。赤外線センサ1は、赤外線透過膜22と第1電極部8dとの間で光を閉じ込めて共振させる光学的な共振構造とすることで、赤外線透過膜22が薄膜部1aにおける一表面1aa側の赤外線吸収部1mを構成する構成要素として機能している。赤外線センサ1は、厚さ数nmの金属薄膜(たとえば、Au薄膜)などからなる赤外線透過膜22と、赤外線検知部1nの光反射膜としても機能する第二電極部8dとの間となるSiOなどの薄膜部1aで、光を閉じ込めて共振させる光学的な共振構造としている。光学的な共振構造では、赤外線透過膜22と第二電極部8dとの間にある薄膜部1aで温度の上昇が生ずる。
【0110】
なお、本実施形態の赤外線検出装置10では、複数個の赤外線検知部1pに対応してレンズ3が1つしか設けられていないが、複数個の赤外線検知部1pごとにレンズ3を設けてもよい。
【0111】
(実施形態8)
図15に示す本実施形態の赤外線検出装置10は、図13に示す実施形態7の赤外線センサ1において、開口部1fを仕切る壁部1baを備えた点が相違する。なお、実施形態7と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略している。
【0112】
本実施形態の赤外線検出装置10の赤外線センサ1は、複数個の赤外線検知部1pの各々に対応して、開口部1fを赤外線検知部1pごとに仕切る壁部1baをベース基板1bに備えている。これにより、本実施形態の赤外線検出装置10では、隣接する赤外線検知部1p,1p間でのクロストークを抑制することが可能となり、より感度を高めることが可能となる。
【0113】
なお、壁部1baは、リソグラフィ技術およびDeep−RIE法などのエッチング技術を利用して、ベース基板1bの一表面1aaが開口する開口部1fを形成する際に、ベース基板1bの一部を残すことで形成することができる。
【符号の説明】
【0114】
1 赤外線センサ
1a 薄膜部
1aa 一表面
1ab 他表面
1b ベース基板
1ba 壁部
1c,1d,1j,1k,1m,1q,1r,1s 赤外線吸収部
1e,1h,1n,1p 赤外線検知部
1f 開口部
1fa 内周壁
2 パッケージ基体
3 レンズ
4 覆部
5 赤外線反射膜
8d 第1電極部
8e 第2電極部
10 赤外線検出装置
21 焦電体層
22 赤外線透過膜
25 赤外線反射層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線を検知する赤外線センサと、該赤外線センサを配置させるパッケージ基体と、前記赤外線センサを覆い該赤外線センサに赤外線を集光させるレンズを備えた覆部とを有する赤外線検出装置であって、
前記赤外線センサは、開口部が一表面側に設けられるベース基板と、該ベース基板における他表面側で前記ベース基板に支持される薄膜部と、該薄膜部に少なくとも設けられ赤外線を吸収する赤外線吸収部を有する赤外線検知部とを備え、厚み方向において、前記赤外線吸収部の少なくとも一部が前記レンズからの赤外線を吸収できるように前記開口部に臨む前記薄膜部に配され、前記ベース基板における前記他表面側を前記パッケージ基体側としていることを特徴とする赤外線検出装置。
【請求項2】
前記赤外線吸収部で吸収されず該赤外線吸収部を透過する前記レンズ側からの赤外線を前記赤外線吸収部側に反射する赤外線反射膜が前記パッケージ基体側に備えられていることを特徴とする請求項1に記載の赤外線検出装置。
【請求項3】
前記赤外線検知部は、前記薄膜部における前記他表面側に設けられた第1電極部と該第1電極部の前記薄膜部側と反対側に設けられた焦電体層と該焦電体層の前記第1電極部側と反対側に設けられた第2電極部とを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の赤外線検出装置。
【請求項4】
前記赤外線センサは、前記開口部に臨む前記薄膜部における前記一表面側に赤外線の一部を透過させる赤外線透過膜を備えており、該赤外線透過膜と前記第1電極部との間で光を閉じ込めて共振させる光学的な共振構造とすることで、前記赤外線透過膜が前記薄膜部における前記一表面側の前記赤外線吸収部を構成する構成要素として機能することを特徴とする請求項3に記載の赤外線検出装置。
【請求項5】
前記赤外線センサは、前記ベース基板の前記開口部における内周壁に、赤外線を前記赤外線吸収部側に反射する赤外線反射層が備えられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の赤外線検出装置。
【請求項6】
前記赤外線センサは、複数個の前記赤外線検知部を備えてなることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の赤外線検出装置。
【請求項7】
前記赤外線センサは、複数個の前記赤外線検知部の各々に対応して、前記開口部を前記赤外線検知部ごとに仕切る壁部を前記ベース基板に備えたことを特徴とする請求項6に記載の赤外線検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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