説明

赤外線照明装置

【課題】 均一な明るさの赤外線を照射しうる赤外線照明装置を提供する。
【解決手段】複数の赤外線LED11を基板13に装着してなるLEDユニット15と、赤外線LED11を駆動するためのLED駆動回路16と、LED駆動回路16に赤外線LED11を駆動するための電力を供給する電源17とを備え、複数の赤外線LED11の全部又は一部を、各赤外線LEDの発光面を基板面に対してそれぞれ傾斜させて配置した。基板13の赤外線LED配置面に、複数の突起18を設け、複数の赤外線LED11の各発光部の底面を、複数の突起18のいずれかに当接させて赤外線LED11の各発光面を、基板面に対してそれぞれ傾斜させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、防犯カメラ、夜間観察カメラ、交通監視カメラ、駐車場監視カメラ等の赤外線カメラと組み合わせて使うのに好適な赤外線照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、赤外線カメラと組み合わせて使う赤外線照明装置で、複数の赤外線LED(発光ダイオード;Light Emitting Diode)を光源とするものは知られている。特に多数のLEDを例えば、マトリクス状に配置したパネル状の光源は全体として大きな光量となることから、様々な照明として利用されている。高速道路において、図8に示すように走行中の自動車20を照明し、必要に応じてナンバープレートなどを撮影するために利用される光源10も、複数のLEDを、取付装置を用いて基板に縦横に整然と配列したものを使用している。
【0003】
LEDは、LED素子を包覆した透光部材の球面あるいは非球面レンズ(頂部)が砲弾型をなしており、図7(a)にその配光特性を示している。図7(b)は、図7(a)の平面図である。図7(a)、(b)に示されるように、透光部材のLED11から放射された赤外光は、照射面12においてLDEチップの像を写すリング状の凹み12Aを持った配光特性を示す場合がある。このLEDの複数を、所定の基板に整然と集積してなるLEDユニットも、図7(c)に示したように、合成されて放射された赤外光は、照射面12において波形の配光特性を示す。
【0004】
従って、このような従来のLEDユニットを、例えば、撮影用照明装置として使用した場合、配光特性が波の形状になっていることから、輝度むらが生じ所望の画質が得られないことがあるので好ましくない。輝度むらが生じないようにするには、複数のLEDから放射された光がなるべくフラットな形状の配光特性になることが望まれる。
複数のLEDを所定の基板に整然と並べたLEDユニットは、フラットな照明とすることができない。
また、光源から被写体までの距離が大きくなる程、照射光が拡散してしまい、光の強度が弱くなってしまうため、LED自体の発光強度を大きくしなければならない。しかし、LED自体の発光強度を大きくすると、LEDの発熱が大きくなり、LEDの寿命が短くなり、照明の消費電力が多くなる。
【0005】
ところで、複数のLEDを基板に配置しフラットな配光特性を得るようにしたLED赤外線照明装置は公知である(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
特許文献1の照明装置は、反射形LEDを使用し、これらを基板に集積してなるLEDユニットの照射角度を、基板の直角軸に対してそれぞれ傾斜させたものである。また、特許文献2の照明装置は、複数のLEDユニットの内、内側のLEDユニットに、外側のLEDユニットより小さい値の定電流を供給するようにしたものである。
【0006】
【特許文献1】特開平11―195307号公報
【特許文献2】特開平11―195317号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の従来の技術には次のような解決すべき課題がある。
特許文献1の照明装置は、反射形LEDを使用しているために、光の指向性が大きく中心輝度が大きくなる。このため、反射形LEDを集合し面発光のLEDユニットを形成した場合、光の干渉によりLEDユニット自体も中心輝度が大きくなる。
このことから、LEDユニットを平面に並べて面発光体を形成し、フラットな形状の配光特性を得ようとした場合、LEDユニットを集光方向に向けることができず、LEDユニットを分散方向に傾ける必要があり、光の集光効率が悪くなるものと考える。
【0008】
特許文献2の照明装置は、LEDユニット毎に流す電流値と時間を調整しフラットな配光特性を得るものであるが、次の問題があると考える。すなわち、
・LED自体が持つ仕様特性を充分に発揮できない。
・外側のLEDユニットほど、流す電流、時間が大きくなる傾向がある。
・電気回路が複雑になる。
【0009】
本発明は、上記の点に着目してなされたもので、簡易な構造でフラットな形状の配光特性を得ることができる赤外線照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以上の点を解決するため次の構成を採用する。
〈構成1〉
複数の赤外線LEDを基板に装着してなるLEDユニットと、上記赤外線LEDを駆動するためのLED駆動回路と、上記LED駆動回路に上記赤外線LEDを駆動するための電力を供給する電源とを備え、上記複数の赤外線LEDの全部又は一部を、各赤外線LEDの発光面を上記基板面に対してそれぞれ傾斜させて配置したことを特徴とする赤外線照明装置。
【0011】
個々の赤外線LEDの発光面の向きをそれぞれ異ならせることにより、赤外線LED単体から発射される不均一な照射面が合成されて全体的に均一な明るさの照射面、さらには拡張された照射面が得られる。
【0012】
〈構成2〉
構成1記載の赤外線照明装置において、上記基板の、上記赤外線LEDを配置した面に、複数の突起を設け、上記複数の赤外線LEDの各発光部の底面を、上記複数の突起のいずれかに当接させて上記赤外線LEDの各発光面を、上記基板面に対してそれぞれ傾斜させたことを特徴とする赤外線照明装置。
【0013】
1つの赤外線LEDに対して1つの突起を使用して、各赤外線LEDの発光面を所定の角度で傾斜させるものである。
各突起は、その位置と大きさが予め使用する各赤外線LEDの発光性能等に応じてコンピュータ等を利用し計算して決定され、基板の所定面に設計どおりに設けられる。
【0014】
〈構成3〉
構成1又は2記載の赤外線照明装置において、上記複数の赤外線LEDは、複数のグループに分けられ、各グループ毎に異なる角度で傾斜されて上記基板上に配置されたことを特徴とする赤外線照明装置。
【0015】
各グループは一纏まりになっていなくともよく、ばらばらに位置していてもよい。なお、照明装置から所定の照射面までの距離が5〜10mもあるので、照明装置の赤外線LED単体どうしの位置関係は実質上、無視できる。
【0016】
〈構成4〉
構成2記載の赤外線照明装置において、上記突起を、硬化性樹脂により上記基板上に形成したことを特徴とする赤外線照明装置。
【0017】
突起を、エポキシ樹脂のような絶縁性、接着性を有する硬化性樹脂により基板上にランダムに高さが0.2mm程度になるように形成したものである。多数のLEDを、自動機を用いて基板に自動実装しても、基板表面が多数の突起により凹凸しているので、各LEDをばらばらに傾いた状態で実装できる。
【0018】
〈構成5〉
構成2ないし4のいずれかに記載の赤外線照明装置において、上記突起を、印刷により前記基板上に形成したことを特徴とする赤外線照明装置。
【0019】
突起を、例えば、基板にシルク印刷により50〜100μm程度の厚さで印刷することにより形成したものである。赤外線LEDの外径が約5mmなので、50〜100μm程度の厚さの突起で、LEDの軸を基板に対して1度程度傾けることができる。印刷により、任意の位置に所定形状の突起を容易に形成できる。また、基板の傾きを調整することなく照明エリアを広げることができる。上記シルク印刷では、傾きが不足する場合には、基板へのエポキシ樹脂等の印刷が有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について具体例を用いて説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は、実施例1の赤外線照明装置の構成を示す説明図である。
図1において、この赤外線照明装置は、基板13に複数の赤外線LED11を装着してなるLEDユニット15を備えている。このLEDユニット15の赤外線LED11の全部又は一部は、各赤外線LEDの発光面を基板上面に対してそれぞれ傾斜させて配置されている。またLEDユニット15には、図2に示すように、複数の赤外線LED11を点灯駆動させる回路が接続されている。この回路は、LEDユニット15とLED駆動回路16と電源17と備えている。基板13に装着された全ての赤外線LED11に対して、LED駆動回路16から所定の電流が供給される。これによって、それぞれ赤外線LED11が赤外線を照射する。
【0022】
なお、LED駆動回路16の駆動電流は、例えば、赤外線LED11の状態によって、発光強度が安定するように制御される。このために、LED駆動回路16に制御回路が設けられている。また必要に応じて冷却ファンが設けられ、LEDユニット15に搭載された全ての赤外線LED11を風によって冷却する。電源17は、LED駆動回路16や制御回路等を動作させるための電源である。
【0023】
図3は、上記LEDユニット15の具体例を示す正面図である。
図3に示すように、基板13の、赤外線LED11を配置した面13Aに、複数の突起18が設けられ、赤外線LED11の各発光部の底面を当接させて赤外線LED11の発光面が基板面13Aに対して傾斜するようにされている。各突起18は、エポキシ樹脂のような絶縁性、接着性を有する硬化性樹脂により、高さが0.2〜0.5mm程度の山形に形成したものである。赤外線LED11は、2本のリードフレーム14を、基板13に穿ったスルーホール19に挿通し半田付けされて基板13に固定されている。
赤外線LED11に持たせる傾きに応じ、樹脂印刷の厚さ(高さ)をメタルマスク厚により、容易に制御できる。また、印刷する位置により、縦方向あるいは横方向の配光性能をある程度独立に制御することも可能である。
【0024】
図4は基板13の一部を示す平面図である。
図4において、基板13には、予め所定の配線パターンを形成する電路と、数百個の赤外線LED11を縦横に配列するために2本のリードフレーム14を挿通させる多数のスルーホール19と、多数の突起18とが設けられている。突起18は1個の赤外線LED11に対して1つずつ、各スルーホール19の周辺に設けられ、各赤外線LEDの発光面を所定の角度で傾斜させている。各突起は、位置と大きさが各赤外線LED11の発光性能等に応じてコンピュータ等で計算して決定され、基板の所定面にマスク印刷等の製造技術を利用して設計どおりに設けられる。
【0025】
複数の赤外線LED11は、複数のグループに分けられ、各グループ毎に異なる角度で傾斜されて基板13上に配置されてもよい。
例えば、LEDユニットを構成する100個の赤外線LEDを20個ずつの5グループに分けるとする。この内の第1グループは0度の傾斜角、すなわち傾斜しないものとする。そして、第2のグループは2度の傾斜角、第3のグループは3度の傾斜角、第4のグループは4度の傾斜角、第5のグループは5度の傾斜角でそれぞれ基板上に配置する。各グループは一纏まりになっていなくともよく、ばらばらに位置していてもよい。照明装置から所定の照射面までの距離が5〜10mもあるので、照明装置の赤外線LED単体どうしの位置関係は実質上、無視できる。
【0026】
図5は、上記赤外線照明装置の配光特性を示している。図5に示されるように、LEDユニット15から放射された赤外光は、照射面16においてフラット形の配光特性を示す。複数のLEDを所定の基板に整然と並べたLEDユニットは、図7(b)に示すようにフラットな照明とすることができないが、複数のLEDをそれぞれ傾斜させて並べたことにより、赤外線LED単体から発射される不均一な照射面が合成されて全体的に均一な明るさの照射面、すなわちフラットな照明となる。従って、このようなLEDユニット15を、例えば、撮影用照明装置として使用した場合、配光特性がフラット形状になっていることから、輝度むらが生じることがなく、所望の画質が得られる。
【0027】
また、図5に示すように、個々の赤外線LEDの発光面の向きをそれぞれ異ならせると共に、発光面の向きを加減することにより、全体的に均一な明るさの照射面で、かつ両側に所望の幅Hに拡張された照射面が得られる。すなわち、基板の傾きを調整することなく照明エリアを広げることができる。
【実施例2】
【0028】
図6は、実施例2の赤外線照明装置の構成を示す図である。
図6に示されるように、この実施例では基板13に設けられた突起18Aが基板13の上面に、印刷、例えばシルク印刷により形成され、赤外線LED11に対応したものである。この突起18Aは、50〜100μm程度の厚さに形成される。赤外線LEDの外径が5mm程度なので、50〜100μmの高さの突起で、LED11の軸を基板13に対して1度程度傾けることができる。
突起18Aを印刷により構成したことを除いた他の構成は、実施例1と同一であるので、重複説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例1の赤外線照明装置の構成を示す斜視図である。
【図2】実施例1の赤外線LEDを点灯駆動させる回路のブロック図である。
【図3】実施例1のLEDユニットの具体例を示す正面図である。
【図4】実施例1の基板の一部を示す平面図である。
【図5】実施例1の赤外線照明装置の配光特性を示す説明図である。
【図6】実施例2の赤外線照明装置の具体例を示す図で、(a)はLEDユニットの正面図、(b)は同平面図である。
【図7】従来の赤外線照明装置の配光特性を示す説明図である。
【図8】赤外線カメラと組み合わせて使う赤外線照明装置の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0030】
11 赤外線LED
13 基板
14 リードフレーム
15 LEDユニット
16 LED駆動回路
17 電源
18 突起
19 スルーホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の赤外線LEDを基板に装着してなるLEDユニットと、
前記赤外線LEDを駆動するためのLED駆動回路と、
前記LED駆動回路に前記赤外線LEDを駆動するための電力を供給する電源とを備え、
前記複数の赤外線LEDの全部又は一部を、各赤外線LEDの発光面を前記基板面に対してそれぞれ傾斜させて配置したことを特徴とする赤外線照明装置。
【請求項2】
請求項1記載の赤外線照明装置において、
前記基板の、前記赤外線LEDを配置した面に、複数の突起を設け、
前記複数の赤外線LEDの各発光部の底面を、前記複数の突起のいずれかに当接させて前記赤外線LEDの各発光面を、前記基板面に対してそれぞれ傾斜させたことを特徴とする赤外線照明装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の赤外線照明装置において、
前記複数の赤外線LEDは、複数のグループに分けられ、各グループ毎に異なる角度で傾斜されて前記基板上に配置されたことを特徴とする赤外線照明装置。
【請求項4】
請求項2記載の赤外線照明装置において、
前記突起を、硬化性樹脂により前記基板上に形成したことを特徴とする赤外線照明装置。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれかに記載の赤外線照明装置において、
前記突起を、印刷により前記基板上に形成したことを特徴とする赤外線照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−19331(P2006−19331A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−192820(P2004−192820)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000002255)昭和電線電纜株式会社 (71)
【Fターム(参考)】