説明

赤血球のヘマトクリットを制御する赤血球処理のシステムおよび方法

処理のシステムおよび方法は、分離デバイスを備え、このデバイスは、使用の際に、血液または赤血球含有懸濁液からの赤血球の分離を包含する分離プロセスを実施する。これらのシステムおよび方法は、分離プロセスが行われている間に少なくとも部分的に、赤血球を分離デバイスから除去するための、分離デバイスに結合された出口ライン(104)を備える。出口ライン(104)に付随するセンサ(148)は、分離デバイスから除去された赤血球のヘマトクリットを感知し、そして感知されたヘマトクリット出力を生成する。感知されたヘマトクリットに少なくとも部分的に基づいて、分離デバイスからの赤血球所除去を制御するための制御器が、分離デバイスに結合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2001年8月16日に出願された、発明の名称「Sensing Systems and Methods for Differentiating Between Different Cellular Blood Species During Extracorporeal Blood Separation or Processing」の、同時係属中の米国出願番号09/931,146の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、血液、血液成分、または細胞物質の他の懸濁液を処理および収集するための、システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
今日、人々は、慣用的に、全血を、通常は遠心分離によって、種々の治療成分(例えば、赤血球、血小板、および血漿)に分離している。
【0004】
従来の血液処理方法は、耐久性のある遠心分離装置を、単回使用の滅菌処理システム(代表的に、プラスチック製)と組み合わせて使用する。操作者は、使い捨てシステムを遠心分離器に装填し、その後、処理し、その後、これらを取り除く。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の血液遠心分離器は、収集部位の間での容易な移送を可能にしない大きさのものである。さらに、装填および取り外しの操作は、時々、時間を浪費し、そして退屈である。
【0006】
さらに、血液成分を、高容量のオンライン血液収集装置(ここで、非常に必要とされる細胞性血液成分(例えば、血漿、赤血球、および血小板)のより高い収率が合理的な短い処理時間で実現され得る)において使用するような様式で収集するための、さらに改善されたシステムおよび方法に対する必要性が存在する。
【0007】
このような流体処理システムに対する操作および性能の要件は、さらに複雑かつ成功になっているものの、より小さくかつより可搬性のあるシステムに対する要求が高まっている。従って、操作者が処理および分離の効率を最大にすることを補助する、より詳細な情報および制御信号を収集および生成し得る、自動化血液処理制御器に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明の1つの局面に従って、処理システムおよび方法は、使用の際に分離プロセスを実施する分離デバイスを備え、この分離プロセスは、血液または赤血球含有懸濁液からの赤血球の分離を包含する。これらのシステムおよび方法は、分離デバイスに結合された出口ラインを備え、この出口ラインは、少なくとも部分的に、この分離プロセスが行われている間に、赤血球を分離デバイスから除去するためのものである。本発明のこの局面に従って、センサが、出口ラインに付随しており、このセンサは、分離デバイスから除去される赤血球のヘマトクリットを感知し、そして感知されたヘマトクリット出力を生成するためのものである。制御器が、この分離デバイスに結合されて、少なくとも部分的に、感知されたヘマトクリット出力に基づいて、分離デバイスからの赤血球の除去を制御する。
【0009】
1つの実施形態において、この制御器は、例えば、感知されたヘマトクリット出力に少なくとも部分的に基づいて、出口ラインにおける赤血球の流量を調節することによって、赤血球の除去を制御する。
【0010】
1つの実施形態意おいて、この制御器は、制御されたヘマトクリット出力を、予め決定された赤血球ヘマトクリット値と比較し、そしてこの比較に少なくとも部分的に基づいて、赤血球の除去を制御する。
【0011】
1つの実施形態において、この制御器は、感知されたヘマトクリット出力と、予め決定された赤血球ヘマトクリット値との間の偏差をモニタリングし、そしてこの偏差に少なくとも部分的に基づいて、例えば、偏差の大きさまたは経時的な偏差の変化に基づいて、赤血球の除去を制御する。
【0012】
1つの実施形態において、このセンサは、分離デバイスから除去された赤血球のヘマトクリットを光学的に感知し、そして感知されたヘマトクリット出力を生成する。
【0013】
本発明の別の局面に従って、システムおよび方法は、使用の際に分離プロセスを実施する分離デバイスを使用し、このプロセスは、赤血球および血漿の、血液または赤血球または血漿を含有する懸濁液からの分離を包含する。入口ラインが、この分離デバイスに結合されて、血液または懸濁液を、少なくとも部分的に、分離プロセスが行われている間に、制御された血液流量Qbで、分離デバイス内に運ぶ。血漿出口ラインは、分離デバイスに結合されて、血漿を、少なくとも部分的に、分離プロセスが行われている間に、分離デバイスから、制御された血漿流量Qpで運ぶ。赤血球出口ラインは、分離デバイスに結合されて、分離プロセスが行われている間に、少なくとも部分的に、赤血球を分離デバイスから、赤血球流量Qrbcで除去し、ここで、Qrbc=Qb−Qpである。出口ラインに付随するセンサは、分離デバイスから除去された赤血球のヘマトクリットを感知し、そして感知されたヘマトクリット出力を生成する。分離デバイスに結合された制御器は、感知されたヘマトクリット出力に少なくとも部分的に基づいて、QbとQpとの間の比を制御する。
【0014】
全血の分離の間、決定可能な高い閾値の赤血球ヘマトクリットHCTRBCにおいて、血小板は、赤血球と一緒に分離デバイスを出ることをやめることが発見された。この所定の高い閾値のHCTRBCにおいて、血小板は、分離デバイス中に血漿と一緒に残る傾向があり、これによって、血漿との混合に供される。この発見に基づいて、赤血球ヘマトクリットについての血液処理設定点SET_HCTRBCは、この高い閾値の赤血球ヘマトクリット値に近付くが、この値を超えないように、設定され得る。所定の血漿収集手順の間に、比(QP)/(QWB)を調節して(SET_HCTRBC)を達成することによって、そのプロセスに対する血漿収集パラメータが最適化され、そして過剰の漏出状態を満たさないように媒介するか、またはこの状態を回避する。SET_HCTRBCをコントロールとして使用することによって、(QP)が最大化されて手順時間を最適化し、そして赤血球ヘマトクリットを最大化し、一方で、血小板を赤血球とともにチャンバから去らせ、過剰の漏出状態を回避することを可能にする。
【0015】
本発明の他の特徴および利点は、以下の説明および添付の図面に記載されている。
【0016】
本発明は、本発明の精神および本質的な特徴から逸脱することなく、いくつかの形式で実施され得る。本発明の範囲は、後にある具体的な説明においてよりむしろ、添付の特許請求の範囲によって規定される。従って、特許請求の範囲の均等物の意味および範囲内に入る全ての実施形態は、特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(好ましい実施形態の説明)
図1は、本発明の特徴を具現化してなる流体処理システム10を示している。このシステム10は、種々の流体の処理に使用することができる。
【0018】
システム10は、全血および他の生体細胞材料の懸濁液の処理に、とくによく適している。したがって、ここに説明する実施の形態は、この目的のために使用されるシステム10を示している。
【0019】
(I.システムの概要)
システム10は、2つの基本的な構成要素を含んでいる。それらは、(i)図1においては運搬および保管のための閉じた状態に示され、図2および3においては動作のために広げた状態に示されている血液処理装置14、および(ii)血液処理装置14と相互作用して1つ以上の血液成分の分離および採取を生じさせる液体および血液流通セット12であり、セット12は、図1および4においては、使用前の輸送および保管のためトレイ48内に収容されて示されており、図5および6においては、トレイ48から取り出され、使用のために血液処理装置14に取り付けられて示されている。
【0020】
(A.処理装置)
血液処理装置14は、長期間の使用が可能な耐久性のある物品であることが意図されている。図示されている好ましい実施の形態においては、血液処理装置14は、携行用ハウジングまたはケース36内に取り付けられている。ケース36は、テーブル上またはその他の比較的小さい表面への配置および稼動に適するよう、コンパクトな占有面積を呈している。さらに、ケース36は、採取のための場所へと容易に持ち運びできるよう意図されている。
【0021】
ケース36は、底部38およびヒンジ付けされた蓋40を備えており、運搬のため(図1に示すように)蓋40が閉じられ、使用のために(図2〜4に示すように)蓋40が開かれる。底部38は、使用の際、おおむね水平な支持面に置かれるように意図されている。ケース36は、例えば成型によって、所望の構成に形成することができる。ケース36は、好ましくは軽量でありながら耐久性に富んでいるプラスチック材料から作られる。
【0022】
装置14には、制御器16が搭載されている。制御器16は、操作者によって選択された血液の処理および採取の手順を実行するため、装置14の構成要素と流通セット12の構成要素との間の相互作用を管理する。図示の実施の形態において、制御器16は主処理ユニット(MPU)を備えており、主処理ユニットは、例えばIntel Corporationの製造するPentium(登録商標)型のマイクロプロセッサからなることができるが、他の種類の通常のマイクロプロセッサを使用することも可能である。MPUは、ケース36の蓋40の内側に取り付けできる。電源コード184を備える電源が、装置14のMPUおよび他の構成部品に電力を供給する。
【0023】
好ましくは、さらに制御器16が、操作者がシステム10の動作に関する情報を眺めて確認することができるよう、インタラクティブなユーザ・インターフェイス42を備えている。図示の実施の形態においては、インターフェイス42は、蓋40に保持されたインターフェイス画面にて実現されており、情報を操作者に提示すべく、アルファベットや数字の形式にて表示し、グラフィカルな画像として表示する。
【0024】
制御器16のさらなる詳細は、Nayakらの米国特許第6,261,065号に見つけることができ、この米国特許は、ここでの言及によって本明細書に組み込まれたものとする。インターフェイスのさらなる詳細は、Lyleらの米国特許第5,581,687号に見ることができ、この米国特許も、ここでの言及によって本明細書に組み込まれたものとする。
【0025】
図1に示すとおり、蓋40を、外部の他の装置を制御器16または装置14の他の構成部品に接続するため、他の入力/出力を支持するために使用することができる。例えば、イーサネット(登録商標)・ポート50、バーコード読み取り器など(情報をスキャンして制御器16に取り込むため)の入力52、診断ポート54、血液の処理の際に血液の流速を向上させるべくドナーが装着する加圧カフ60を接続するためのポート56(例えば、図23および24を参照)、またはシステムのトランスデューサの較正用ポート58を、すべてアクセスに好都合なように蓋40の外面に取り付けることができ、あるいは装置14のケース36のどこかに取り付けることができる。
【0026】
(B.流通セット)
流通セット12は、無菌の、1回限り使用の、使い捨ての品物であるよう意図されている。所与の血液処理および採取の手順を開始する前に、操作者が、流通セット12の種々の構成部品を装置14に組み合わせて取り付ける(図4および5に示すように)。制御器16が、操作者からの他の入力を考慮に入れつつ、所定のプロトコルにもとづいて手順を実行する。手順が完了すると、操作者は、流通セット12を装置14との組み合わせから取り外す。セット12のうち採取した血液成分を保持している部分が、装置14から取り外され、保管、輸液、またはさらなる処理のために保持される。セット12の残りの部分は、装置14から取り外されて破棄される。
【0027】
流通セットは、以下でより詳細に特定されるとおり、血液処理チャンバ18、流体動作ポンプおよびバルブ・カセット28、アレイに組み合わされた処理容器64、およびチャンバ18とカセット28とに接続された流通チューブを備えている。
【0028】
(1.血液処理チャンバ)
図示の実施の形態(図5参照)においては、流通セット12が、遠心分離機との組み合わせにて使用されるように設計された血液処理チャンバ18を備えている。処理装置14が、遠心分離機ステーション20(図2および3を参照)を備えており、使用のため処理チャンバ18を収容する(図5を参照)。
【0029】
図2および3に示すように、遠心分離機ステーション20は、個室24を底部38に形成して有している。遠心分離機ステーション20は、ドア22を備えている。ドア22は、処理チャンバ18を個室24内へと装填できるよう(図3および5に示すように)開く。動作時、ドア22は、処理チャンバ18を個室24内に封じるべく(図2および6に示すように)閉じる。
【0030】
遠心分離機ステーション20は、処理チャンバ18を回転させる。回転が加えられたとき、処理チャンバ18が、ドナーから受け取った全血を各構成部分へと遠心分離によって分離し、主として赤血球、血漿、および血小板と白血球とで密集しているバフィコートと呼ばれる中間層に分離する。以下で説明するとおり、チャンバ18の構成は、意図する血液分離の目的に合わせて変更することができる。
【0031】
(2.流体圧駆動のカセット)
図示の実施の形態において、さらにセット12は、流体圧駆動のカセット28(図5参照)を備えている。カセット28は、所与の血液処理手順において必要とされるすべてのポンプおよびバルブ機能について、中央集権化され、プログラム可能である、統合化されたプラットフォームをもたらしている。図示の実施の形態においては、流体圧が、正および負の空気圧からなるが、他の種類の流体圧を使用することも可能である。
【0032】
図5に示すように、カセット28は、使用のため、ケース36の蓋40に配置された空気圧動作のポンプおよびバルブ・ステーション30に取り付けられている。ポンプおよびバルブ・ステーション30は、カセット28の着脱のためポンプおよびバルブ・ステーション30を露出させる開放位置(図3参照)と、使用のためカセット28をポンプおよびバルブ・ステーション30内に収容する閉鎖位置(図6に示されている)との間を運動するようにヒンジ付けされたドア32を備えている。ポンプおよびバルブ・ステーション30は、バルブ面ガスケット318の背後に位置するマニホルドアセンブリ34(図4参照)を備えている。マニホルドアセンブリ34は、カセット28がポンプおよびバルブ・ステーション30に取り付けられているとき、カセット28にガスケット318を通じて正および負の空気圧を加える。空気圧が、カセット28を通る流体の流れを案内する。
【0033】
カセット28のさらなる詳細ならびにポンプおよびバルブ・ステーション30の動作については、後で説明する。さらに、さらなる詳細をNayakらの米国特許第6,261,065号に見つけることができ、この米国特許は、ここでの言及によって本明細書に組み込まれたものとする。
【0034】
(3.血液処理容器およびチューブ)
再び図5および6を参照すると、さらに流通セット16が、チューブおよび容器のアレイを、カセット28およびチャンバ18と流通可能に備えている。チューブおよび容器の配置構成は、処理の目的にあわせて変えることができる。代表的な血液処理手順、およびそのような手順に対応した関連する流通セットについては、後で説明する。
【0035】
臍帯100が、流通セット16の一部を構成している。取り付けされたとき、臍帯100は、回転する処理チャンバ18をカセット28に、回転シールを必要とすることなく結び付ける。臍帯100は、Hytrel(登録商標)共重合体エラストマ(DuPont)など、回転の応力に耐えるプラスチック材料から製作することができる。
【0036】
次に図7を参照すると、チューブ102、104、および106が、臍帯100の近位端から延びている。チューブ102が、全血を分離のために処理チャンバ18へと運ぶ。チューブ104および106はそれぞれ、遠心分離された赤血球および血漿を処理チャンバ18から運びだす。血漿は、処理の目的に応じ、血小板に富んでいてもよく、血小板に乏しくてもよい。
【0037】
図7に示すように、固定具108が、臍帯100に隣接したチューブ102、104、および106を、遠心分離機ステーション20の外部で、コンパクトであり整理された横並びのアレイに集合させている。固定具108は、チューブ102、104、および106を、チャンバ18の外部かつ遠心分離機ステーション20近傍に位置する光学検出ステーション46(図9、10、および11を参照)との組み合わせにおいて、グループとして配置および取り外しできるようにしている。
【0038】
光学検出ステーション46は、チューブ104および106によって運ばれる血液中に目的とする血液成分(例えば、赤血球および血小板)が存在するか否かを、光学的に監視する。検出ステーション46は、そのような血液成分の存在または非存在を反映する出力をもたらす。この出力が、制御器16へと伝えられる。制御器16が、この出力を処理し、光学的に検出した事象に部分的にもとづいて、処理の各事象を制御するための信号を生成する。光学的検出にもとづいて処理の各事象を制御するための制御器の動作について、詳細は後で説明する。さらなる詳細は、Nayakらの米国特許第6,261,065号にも見つけることができ、この米国特許は、ここでの言及によって本明細書に組み込まれたものとする。
【0039】
図示(図5および6を参照)のとおり、流通セット16は、静脈切開ニードル128を備えており、静脈切開ニードル128によって、血液を処理すべくドナーをシステム10に接続することができる。図5および6において、流通セット16は、血液採取アセンブリ110をさらに備えている。血液採取アセンブリ110によって、所与の血液処理手順の開始において、静脈切開ニードル128を通じてドナーの血液の1つ以上のサンプルを採取することができる。採取アセンブリ110への血流を制御するため、従来からの手動のクランプ114(例えばRobertsクランプ)が設けられている。
【0040】
やはり図5および6に示されているとおり、流通セット16は、直列注入サイト112を備えることができる。注入サイト112によって、技術者は、必要であれば、生理食塩水や他の生理的な液体あるいは薬剤を、静脈切開ニードル128を使用して追加のニードル棒を必要とすることなく、ドナーへと導入することができる。
【0041】
望ましくは、追加の直列手動クランプ116が、血液採取アセンブリ110および注入サイト112の上流に備えられている。このクランプ116によって、ドナーの安全または快適が求められる場合に、ドナーを流通セット16から迅速に絶縁することができる。あるいは、この目的のために、別個の止血装置(図示されていない)を適用することができる。
【0042】
さらに図1および2に示すとおり、装置14は、血液の処理を助けるため、他の構成部品をコンパクトに配置して備えることができる。すでに述べた遠心分離機ステーション20ならびにポンプおよびバルブ・ステーション30に加え、装置は、1つ以上の計量ステーション62、および容器のための他の形式の維持を備えている。これらの構成部品の装置14における構成配置は、当然ながら変化しうる。
【0043】
図示の実施の形態(図3参照)においては、計量ステーション62は、一連の容器ハンガー/重量センサを、蓋40の上部に沿って配置して有している。図示の実施の形態においては、さらに追加の振り出しハンガー/重量センサが、蓋40の側面および底部に設けられている。使用時(図5および6を参照)、容器が計量ステーション62に吊り下げられる。さらに図5および6に示されているとおり、計量ステーション62の近傍において、絵によるアイコン66が蓋40に付されており、容器に付された絵によるアイコン66と一致する。アイコン66を一致させることによって、操作者を、適切な容器を目標とする計量ステーション62に配置するよう、視覚によって案内することができる。
【0044】
さらに計量ステーション62は、容器を置くため、底部38に成型凹所を有している。組み立ての際に容器を正しく置くよう操作者を案内するため、ステーション62の近傍において底部38に付された絵によるアイコン66が、容器に付された絵によるアイコン66と一致する。
【0045】
処理の際に、血液または液体が容器へと収容され、さらに/または容器から放出されるとき、計量システム62は、重量の時間変化を反映した出力をもたらす。この出力が、制御器16へと伝えられる。制御器16は、流体処理体積を導出するため、増加する重量の変化を処理する。制御器は、導出した処理体積に部分的にもとづいて、処理の各事象を制御するための信号を生成する。処理の各事象を制御するための制御器16の動作について、さらなる詳細を後で説明する。追加の詳細は、Nayakらの米国特許第6,261,065号にも見つけることができ、この米国特許は、ここでの言及によって本明細書に組み込まれたものとする。
【0046】
(4.血液処理手順)
制御器16の制御のもとで、システム10を、種々の血液処理手順を実行するよう調整することができる。MPUが、アプリケーション制御マネージャを備えており、制御アプリケーションのライブラリの実行を管理する。各制御アプリケーションが、遠心分離機ステーション20ならびにポンプおよびバルブ・ステーション30を所定のやり方で使用する所与の機能のタスクを実行するための手順を規定している。アプリケーションは、例えばプロセス・ソフトウェアとしてMPUのEPROM内に置くことができる。
【0047】
後で説明するとおり、圧力をカセット28へと選択的に加えることによって、同じカセット28を、別の血液採取手順を実行するために使用することができる。
【0048】
実例を示す目的で、2つの臨床手順、すなわち(1)血漿採取手順、および(2)2単位の赤血球採取手順の実行について説明する。血漿採取手順においては、ドナーからの全血が遠心分離によって処理され、採取のために最大880mlの血漿がもたらされる。すべての赤血球は、ドナーへと戻される。2単位の赤血球採取手順においては、ドナーからの全血が遠心分離によって処理され、採取のために2単位(約500ml)の赤血球がもたらされる。すべての血漿成分は、ドナーへと戻される。
【0049】
詳しくは説明しないが、システム10によって他の臨床手順も実行することも可能である。例えば、ドナーからの全血を遠心分離によって処理して、最大約550mlの血漿と最大約250mlの赤血球とを採取する血漿/赤血球の採取手順を実行することができる。赤血球のうち採取のために保持されない部分は、血液の分離の際に周期的にドナーへと戻される。目標とする550mlを超えて集められた血漿、および目標の250mlを超えて集められた赤血球も、手順の終わりにドナーへと戻される。他の例としては、血漿採取および/または赤血球採取の手順の過程において、バフィコート境界をチャンバ18から取り出して集めることができる。引く続く白血球除去の手順によって、このバフィコートを血小板の源として利用することができる。
【0050】
システム10にて実現できるさまざまな血液採取手順のさらなる詳細は、米国特許第6,261,065号に記載されており、この米国特許は、ここでの言及によって本明細書に組み込まれたものとする。
【0051】
(II.本システムの血液分離のための構成部品の他の技術的特徴)
望ましくは、システム10の血液処理チャンバ18および遠心分離機ステーション20は、さまざまな血液処理プロトコルの実行を支援する他の技術的特徴を有している。
【0052】
(A.血液処理チャンバ)
図示の実施の形態(図7および8を参照)においては、処理チャンバ18が、医療用品質の硬質アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)などの剛である生体適合性プラスチック材料から、例えば射出成型によって、所望の形状および構成に前もって形成されている。この構成においては、チャンバ18は、基部部品200および蓋部品202という2つの主要な構成部品を備えている。
【0053】
基部部品200は、中心ハブ204を備えている。ハブ204は、円周状の血液分離チャネル210を規定している内側および外側の環状壁206および208によって囲まれている。1つ以上の半径方向の通路212が、ハブ204から延びてチャネル210と連通している。血液または他の流体が、これらの通路212を通ってハブ204からチャネル210へと案内され、チャネル210から案内される。成型による壁214が、分離チャネル210の軸方向の境界を形成している。さらに、蓋部品202が、分離チャネル210の軸方向のもう1つの境界を形成している。軸方向の境界が、両方ともおおむね平坦(すなわち、回転軸に直交)に示されているが、軸方向の境界が、先細り、丸、V字などでもよいことを、理解すべきである。
【0054】
基部部品200の下面は、臍帯100の遠方端の成型取り付け具218を収容する成型ソケット216を備えている。取り付け具218は、臍帯100をチャネル210と流体流通可能に接続するため、密な乾式圧入、溶剤による接着、または超音波溶着など、さまざまな方法でソケット216に固定することができる。臍帯100の遠方端と基部部品200とは、一体となって回転する。
【0055】
血液分離プロセスの力学に影響するすべての輪郭、ポート、チャネル、および壁面は、1つ以上の射出成型作業によって、基部部品200に前もって形成されている。基部部品200に前形成される輪郭、ポート、チャネル、および壁面は、所望する特定の分離の目的に応じて変えることができる。代表例について、後でさらに詳しく説明する。
【0056】
(B.遠心分離機ステーション)
遠心分離機ステーション20(図9参照)は、遠心分離機アセンブリ68を備えている。遠心分離機アセンブリ68は、使用のため、成形による処理チャンバ18および臍帯100を収容して支持するように構成されている。
【0057】
図9に示されているとおり、遠心分離機アセンブリ68は、底部、上部、および側部の壁72、74、76を有するフレームまたはヨーク70を備えている。ヨーク70は、底部壁72に取り付けられたベアリング素子78(図9)上で回転する。軸82を中心としてヨーク70を回転させるため、電動モータ80が、ヨーク70の底部壁72に接続されている。図示の実施の形態においては、軸82が基本的に水平(図3参照)であるが、他の角度の配置も使用可能である。モータ80は、制御器16によって出される指令に応じ、ヨーク70を時計方向または反時計方向に回転させることができる。
【0058】
キャリアまたはロータ・プレート84が、ヨーク70内で、ヨーク70の上部壁74に取り付けられた自身の固有のベアリング素子86を中心として回転する。回転プレート84は、ヨーク70の回転軸82におおむね一致する軸を中心として回転する。
【0059】
図7に示すとおり、処理チャンバ18の上部は、蓋部品202が取り付けられる環状のリップ220を備えている。図10に示すように、ロータ・プレート84は、処理チャンバ18を回転のためにロータ・プレート84に取り付けるため、リップ220を着脱可能に把持する係止用のアセンブリ88を備えている。
【0060】
係止用のアセンブリ88の詳細は、2001年10月13日に出願され本件出願と同時係属中である「Blood Separation Systems and Methods with Quick Attachment of a Blood Separation Chamber to a Centrifuge Rotor」という名称の米国特許出願第09/976,829号に見つけることができ、この米国特許出願は、ここでの言及によって本明細書に組み込まれたものとする。
【0061】
図10に最もよく示されているとおり、臍帯100の近位端の鞘144が、遠心分離機ステーション20の前形成の凹んだポケット90にはまり込んでいる。ポケット90は、臍帯100の近位端を、相互に整列したヨーク70およびロータ・プレート84の回転軸82に整列した回転しない静止位置に保持している。
【0062】
さらに、前成形のポケット90は、臍帯の鞘144が挿入されるのと同時に、固定具108の組み込みを収容するような形状とされている。これにより、チューブ102、104、および106は、図11に示すようにやはりポケット90内に配置される検出ステーション46と関連して、グループとして配置および取り外しされる。
【0063】
臍帯駆動または支持部材92および94(図9および10を参照)は、ヨーク70の側壁76によって保持されている。ロータ・プレート84が、所定の回転位置にあるとき、支持部材92および94は、臍帯100を収容するため、処理チャンバ18の左側に位置しており、同時に、鞘144および固定具108が、ポケット90へとはめ込まれるよう操作される。
【0064】
図10に示すように、1つの部材92が、臍帯100の中間部分を収容する。部材92は、臍帯100の中間部分が当接して位置する表面を備えている。この表面が、おおむねヨーク70へと向かうチャネル96を形成している。チャネル96は、臍帯100の中間部分の通過を収容し、臍帯の上部を他方の部材94に向かって導いている。チャネル96は、臍帯100の中間部分の移動を、回転軸82へと向かい回転軸82から離れる半径方向について規制する。一方で、チャネル96は、臍帯100の軸を中心とする臍帯100の回転またはねじれを許容する。使用前、チャネル96の表面はおおむね凸状である。この凸状の構成は、凸状の表面の材料が使用時に臍帯100との回転接触によって磨耗するように意図されている点で、犠牲的であるように意図されている。この凸状の構成は、使用時に臍帯との接触によって動的に変化し、使用時にチャネル96と臍帯100との間の機械的および摩擦による相互作用によって決定される最終的な接触構成を形成する。
【0065】
他方の部材94は、部材92によって部材94へと導かれた臍帯100の上部を収容する。部材94は、臍帯100の上部が当接して位置する表面を有している。この表面は、ヨーク70の上部壁72に向かって傾斜したチャネル98を形成している。チャネル98は、おおむねヨーク70から離れるように向いており、したがって、チャネル96とは反対向きの関係にある。2つの反対向きのチャネル96および98の間に臍帯のための移行経路をもたらすため、チャネル96は、チャネル98からわずかに外側にずれている。チャネル98が、臍帯100の上部を、ヨーク70の上部壁72の上方に軸方向に位置する凹んだポケット90に向かって案内し、臍帯の鞘144および固定具108が、ポケットにはめ込まれる。チャネル96と同様、チャネル98は、臍帯100の上部の移動を、回転軸82へと向かい回転軸82から離れる半径方向について規制する。一方で、チャネル98は、チャネル96と同様、臍帯100の軸を中心とする臍帯100の回転またはねじれを許容する。
【0066】
支持チャネル96および98が、反対向きの関係で配置されているため、チャネル96および98が、ヨーク70の回転方向にかかわらず、相補的な「逆向き把持」の様相で臍帯の中間部分に相互に係合する。
【0067】
チャネル96の内向き配置によって、ヨーク70が反時計回り(ロータ・プレート84の上部から見たとき)に回転する際に臍帯が最も良好に捉えられる。これにより、この方向への回転の際に、臍帯の残りの部分が、チャネル98と係合するよう固定される。処理チャンバ18は、血液処理の操作において、反時計回りに回転するように意図されている。
【0068】
部材94は、外向きのチャネル98に向かって内向きに先細りになっている対向する側縁99および101を備えている。先細りの側縁101が、臍帯の中間部分を、ヨーク70の反時計回りの回転に応答して外向きのチャネル98と係合するよう、さらに案内している。
【0069】
チャネル98の外向きの案内縁99が、回転軸82に向かって延びる大きく曲がった表面または傾斜を規定している。傾斜99は、ヨークが通常の血液処理のために意図された方向(すなわち、反時計方向)と反対の方向であるこの時計方向(ロータ・プレート84の上部から見たとき)に回転するとき、臍帯のチャネル98内への自動装填が実現されるような寸法および構成とされている。その後、さらに傾斜99は、ヨーク70が反時計方向に回転するとき、臍帯100の上部をチャネル98から滑り出ないように保つ。これにより、臍帯の残りの部分が、この方向への回転の際にチャネル96と係合するように固定される。
【0070】
このように、チャネル96および98の構成が、ヨーク70の回転に応じ、かつヨーク70の回転の方向にかかわらず、臍帯の中間部分をチャネル96および98と係合した状態に保つため、お互いを補完する。
【0071】
図示の実施の形態においては、支持部材92および94のチャネルの表面96および98が、外部からの潤滑を不要にし、あるいは臍帯100そのものに回転ベアリングを設ける必要をなくすため、好ましくは摩擦の小さい材料から製造されている。使用される材料は、例えば、テフロン(登録商標)ポリテトラフルオロエチレン材料(DuPont)または超高分子量ポリエチレンからなることができる。そのような材料から作られることで、チャネル表面96および98が、臍帯の駆動における摩擦を最小にし、臍帯の磨耗による粒子状物質の存在を最小にする。
【0072】
支持部材92および94のさらなる詳細は、2001年10月13日に出願され本件出願と同時係属中である「Blood Separation Systems and Methods with Umbilicus Driven Blood Separation Chambers」という名称の米国特許出願第09/976,830号に見つけることができ、この米国特許出願は、ここでの言及によって本明細書に組み込まれたものとする。
【0073】
遠心分離機ステーションのドア20を閉じることによって、ドア20の下面の保持ブラケット21(図5参照)が、鞘144を押さえるように位置する。ドア20が閉じられたとき、ドア20の下面のもう1つの保持ブラケット23(図5に示すとおり)が、固定具108を押さえるように位置する。好ましくは解除可能なラッチ25が、遠心分離機アセンブリ68の動作時、(図6に示すように)ドア20を閉じた状態に保つ。
【0074】
遠心分離機アセンブリ68の動作時、支持部材92および94が、ヨーク70の回転が臍帯100を軸82を中心として同調して回転させるよう、臍帯100を保持する。近位端において(すなわち、鞘144において)ポケット90内に拘束され、遠方端において(すなわち、取り付け具218によって)チャンバ16に接続されているため、臍帯100は、軸82を中心として回転するとき、チャネル表面96および98が回転軸82に対する臍帯の半径方向の移動を規制するときでも、チャネル表面96および98上で自身の軸を中心としてねじれる。チャネル表面96および98上をヨーク70に対し1オメガ(通常は、約2250rpmの速度)で回転するとき、自身の軸を中心とする臍帯100の回転は、回転のためにロータ・プレート84に固定された処理チャンバ18に、2オメガの回転を与える。
【0075】
1オメガの回転速度にあるヨーク70と2オメガの回転速度にあるロータ・プレート84の相対回転によって、臍帯100がねじれないように保たれ、回転シールの必要をなくしている。さらに図示の構成は、相互に回転するヨーク70およびロータ・プレート84に保持された処理チャンバ18に、臍帯100を通じて、ただ1つの駆動モータ80によって回転を与えることを可能にしている。この構成のさらなる詳細は、Brownらの米国特許第4,120,449号に開示されており、この米国特許は、ここでの言及によって本明細書に組み込まれたものとする。
【0076】
すでに述べたように、チャネル表面96および98は、時計方向または反時計方向のいずれかについて臍帯100の回転および処理チャンバ18の駆動に対応するため、望ましくは相補的なやり方で構成および配置されている。したがって、チャンバ18を、例えば血液処理に先立つ呼び水および空気の排出に対応するため、所望の1つの処理目的につながる1つの方向に回転させることができ、例えば血液の分離など、別の処理目的につながる反対の方向へと回転させることができる。さらに、ロータ・プレート84が処理チャンバ18の取り付けに対応すべく所定の回転位置にあるときの臍帯支持具92および94の臍帯100への近接配置、および臍帯の近位端を支持ポケット90に向かって導く支持具92および94に形成されたチャネル96および98の相補的な配置が、使用のための処理チャンバ18の取り付けおよび使用後の処理チャンバ18の取り外しについて、大部分を協調して実行することができる直感的ステップからなる「容易な取り付け」手順を可能にする。チャネル96および98の輪郭および配置は、ヨーク70のいずれかの方向の回転の結果としての臍帯100の「捕捉」を助け、たとえ操作者が最初に臍帯100を完全に正しく取り付けることができなかった場合でさえも、臍帯100をチャネル表面96および98上に適切に位置させる。
【0077】
さらに詳しくは、チャネル96および98の相補的な特徴を、使用のための臍帯100の自動取り付けに好都合に使用できる。望ましくは、ひとたび処理チャンバ18がロータ・プレート84に取り付けられ、最初に臍帯100の中間領域をチャネル96および98内に置きつつ、臍帯の鞘114がポケット90内に配置されると、次いでヨーク70を、まず緩やかな速度(例えば、300rpm)で、血液処理の作業の際にヨーク70が回転する方向である時計方向に回転させることができる。この方向への回転が、細長い傾斜99を利用して、臍帯100が確実にチャネル98へと完全に装填されるようにする。その後、臍帯100の位置が、使用のため両方のチャネル96および98内で確実に固定されるよう、ヨーク70を反対(反時計回り)方向へと緩やかな速度で回転させることができる。次いで、ヨーク70を、反時計回り方向に、血液処理をもたらす回転速度まで完全に立ち上げることができる。
【0078】
(C.光学検出による境界制御)
前記血液処理手順のいずれにおいても、処理チャンバ18内に存在する遠心力が、全血を(図12に模式的に示すように)パックされた赤血球の領域および血漿の領域に分離する。遠心力が、パックされた赤血球の領域を、チャンバの外側の壁すなわち高Gの壁に沿って集まるようにする一方で、血漿の領域は、チャンバの内側の壁すなわち低Gの壁へと運ばれる。
【0079】
中間の領域が、赤血球領域と血漿領域の間の境界を形成する。血小板および白血球などの中間密度の細胞血液種が、この境界の多くを占め、密度に応じて配置されて、血小板が白血球よりも血漿層の近くに位置する。この境界は、血漿領域の淡い黄色および赤血球領域の赤色と比べ、その濁った色合いゆえに「バフィコート」とも称される。
【0080】
手順に応じてバフィコート材料を血漿から締め出し、あるいは赤血球から締め出すため、あるいはバフィコートの細胞成分を採取するため、バフィコートの位置を監視することが望ましい。この目的のため、本システムは、2つの光学検出アセンブリ146および148を収容してなる光学検出ステーション46(図11A〜11Dにも示されている)を備えている。この構成は、図12、13、および14にも模式的に示されている。
【0081】
ステーション46の第1の検出アセンブリ146は、血漿採取チューブ106を通じての血液成分の通過を光学的に監視する。ステーション46の第2の検出アセンブリ148は、赤血球採取チューブ104を通じての血液成分の通過を光学的に監視する。
【0082】
チューブ104および106は、少なくともチューブ104および106が検出ステーション46と組み合わされて配置される領域において、検出に使用される光学的エネルギに対して透過性であるプラスチック(例えば、ポリ塩化ビニル)材料から作られている。固定具108が、チューブ104および106を、それぞれの検出アセンブリ148および146に、眺めることができるように整列させている。さらに固定具108は、とくに関連のセンサは設けられていないが、全血を遠心分離機ステーション20へと運ぶチューブ102を保持している。固定具108は、臍帯100へと接続されるすべてのチューブ102、104、および106を集めて、コンパクトかつ容易に扱える束として保持するように機能している。
【0083】
第1の検出アセンブリ146は、血漿採取チューブ106において、光学的に目標とする細胞種または成分の存在を検出することができる。検出のための光学的目標とされる成分は、手順に応じて変化する。
【0084】
血漿採取手順においては、第1の検出アセンブリ146が、血漿採取チューブ106内の血小板の存在を検出し、これにより制御手段を、血漿と血小板細胞層の間の境界を動かして処理チャンバ内へと戻すべく動作させることができる。これにより、基本的に血小板の存在しない血漿製品をもたらすことができ、あるいは少なくとも血漿製品中の血小板の数を顕著に最小化することができる。
【0085】
赤血球のみの採取手順においては、第1の検出アセンブリ146が、バフィコートと赤血球層との間の境界を検出し、これにより制御手段を、この境界を動かして処理チャンバ内へと戻すべく動作させることができる。これにより、赤血球の収量が最大化される。
【0086】
血漿中のこれら細胞成分の存在は、第1の検出アセンブリ146によって検出されたとき、これら成分のすべてまたは一部を血漿採取ラインへと押し流すことができるよう、境界が処理チャンバの低G側の壁に充分近接していることを示している(図13参照)。この状況は、「オーバ・スピル」とも称される。
【0087】
第2の検出アセンブリ148は、赤血球採取チューブ104における赤血球のヘマトクリットを検出することができる。処理において赤血球ヘマトクリットが所定の最小レベルを下回って低下するとき、血漿が赤血球採取チューブ104に進入することができるよう、境界が処理チャンバの高G側の壁に充分近接していることを示している(図14参照)。この状況は、「アンダー・スピル」とも称される。
【0088】
検出ステーション46ならびに第1および第2の検出アセンブリ146および148の構成は、変えることが可能である。望ましい実施例においては、第1の検出アセンブリ146が、赤または緑の光を選択的に発することができる発光ダイオード(LED)400を備え、さらに血漿チューブ106を透過するLED400による光の強さを測定するため、対向して面するフォトダイオード402を備えている。LED400の異なる波長(緑および赤)は、血小板についておおむね同じ減衰を有するが、赤血球については大きく異なる減衰を有するように選択されている。これにより、第1の検出アセンブリ146は、血漿流中の血小板の存在(血漿採取手順においてオーバ・スピルを検出するため)と血漿流中の赤血球の存在(バフィコート採取手順においてバフィコートの赤血球との境界を検出するため)とを見分けることができる。
【0089】
望ましい実施例においては、第2の検出アセンブリ148が、赤外LED404ならびに2つのフォトダイオード406および408を備えており、一方のフォトダイオード406が赤外LED404に近接し、他方のフォトダイオード408が赤外LED404に対向している。フォトダイオード408が、赤血球チューブ104を透過するLED404による光の強さを測定する。フォトダイオード406は、反射光の強度を測定する。
【0090】
検出ステーション46および固定具108は、赤血球チューブ104を、赤外LED404およびフォトダイオード406に対して、測定された反射光強度と赤血球ヘマトクリットとの間に線形相関がもたらされることが観測される望ましい距離関係に配置する。一例として、NIRスペクトル(例えば、805nm)に波長を有する入射光源(すなわち、LED404)から所定の半径方向の距離(例えば、7.5mm)にて測定された反射光の強度は、少なくとも10および90のヘマトクリット範囲について、ヘマトクリットの線形関数として変化する。したがって、赤血球ヘマトクリットを、赤外LED404およびフォトダイオード406を使用して、反射光の強度を監視することによって確認することができる。
【0091】
検出ステーション46は、さまざまな方法で構成することができる。一実施例においては、図11A〜11Dに示すとおり、ステーション46が、2枚の対向プレート502および504を有する成型による本体500を備えている。プレート502および504は、固定具108を収容し、赤血球チューブ104および血漿チューブ106を第1および第2の検出アセンブリ146および148に正確に整列させて保持するため、間隔を開けて位置している。
【0092】
プレート502および504は、それぞれ、望ましくは本体500の一体成型の部品からなるが、光パイプ506A/B/Cおよび508A/B/Cの配列を備えている。光パイプ506A/B/Cおよび508A/B/Cは、第1および第2の検出アセンブリ146および148を構成しているLEDおよびフォトダイオードと、正確に光学的に整列している。これらのLEDおよびフォトダイオードは、回路基板510上に保持されており、これら回路基板510が、光パイプに面するように本体500の外側に、例えば締め具を使用して取り付けられている。
【0093】
さらに詳しくは、プレート502の光パイプ506Aが、第1の検出アセンブリ146のフォトダイオード402と光学的に整列している。これに対応し、反対側に面しているプレート504の光パイプ508Aが、第1の検出アセンブリ146の赤/緑のLED400と光学的に整列している。
【0094】
プレート502の光パイプ506Bは、第2の検出アセンブリ148の赤外LED404と光学的に整列している。これに対応し、反対側に面しているプレート504の光パイプ508Bが、第2の検出アセンブリ148の透過光検出フォトダイオード408と光学的に整列している。プレート502の光パイプ506Cは、第2の検出アセンブリ148の反射光検出フォトダイオード406と光学的に整列している。この構成においては、プレート504の光パイプ508Cは空である。
【0095】
第1および第2の検出アセンブリ146および148を支持する制御回路も、変えることができる。代表的な実施の形態(図11Eおよび11Fに概略が示されている)においては、CPLD制御器410(図11Fを参照)が、フォトダイオード402、406、および408のうちの選択された1つから、当該選択されたフォトダイオードによって検出された検出光強度(場合に応じ、透過光または反射光である)を表わしているシリアル・データ・ストリーム(図11Eおよび11Fでは、データ・ストリームB)を受け取る。CPLD制御器410は、データ・ストリームの受信のためにフォトダイオード402、406、または408を選択すべく、フォトダイオード選択信号(図11Eおよび11Fでは、選択信号C)を生成する。
【0096】
CPLD制御器410は、各フォトダイオード402、406、および408に個々に組み合わされているゲイン増幅器412(図11Eを参照)の利得を、制御器410内に収容されているシリアル出力ポートによって生成されるデジタル・データ・ストリーム(図11Eおよび11Fにおけるデータ・ストリームC)を介して制御する。ゲイン増幅器412のそれぞれは、各フォトダイオード402、406、および408に個々に組み合わされて各フォトダイオード404、406、および408の電流出力を電圧に変換する電流‐電圧コンバータ414から、電圧信号を受け取る。各ゲイン増幅器412の増幅済みのアナログ電圧出力が、このアナログ電圧を選択されたフォトダイオードについてのシリアル・データ・ストリーム(データ・ストリームB)へと変換する個々のアナログ‐デジタル・コンバータに加えられ、CPLD制御器410が、さらなる処理のためにこのシリアル・データ・ストリーム(データ・ストリームB)を受信する。
【0097】
CPDL制御器410によって受信されたシリアル・データ・ストリームBは、パラレル・データ・ストリームを生成するため、シリアル‐パラレル・ポート418に印加される。選択されたゲイン増幅器412からの元々のアナログ電圧が、デジタル‐アナログ・コンバータ420によって再構成され、帯域通過フィルタ422に印加される。帯域通過フィルタ422は、変調光源光の搬送周波数(すなわち、図示の実施の形態では2KHz)に中心周波数を有している。帯域通過フィルタ422の出力(正弦波状である)が、全波整流器に送られ、正弦波状の出力が、検出した光の強度に比例したDC出力電圧に変換される。
【0098】
電流源428が、LED400および404に接続されている。電流源428は、LED400および404のそれぞれに、温度および電源電圧水準と無関係に均一な電流を供給する。変調器430が、定電流を所定の周波数で変調する。変調430は、光学的検出による読み取りから、環境光および電磁妨害(EMI)の影響を取り除く。均一な電流源428と組み合わされ、さらにCPLD制御器410は、均一電流の大きさを調整し、したがって各LED400および404の強さを調節する。LED電流制御データは、制御器410によってシリアル形式で生成される(図11Eおよび11Fのシリアル・データ・ストリームA)。このシリアル・データが、各LED400および404のための各電流源428にそれぞれ接続されたデジタル‐アナログ・コンバータ426へと印加される。
【0099】
検出アセンブリ146および148は、制御器16によって駆動され、制御器16が、検出アセンブリ146および148を周期的に動作させて、検出された強度の出力をサンプリングする。望ましくは、制御の目的で使用される所与のセンサ出力が、所定のサンプリング期間において採取された複数のサンプルの平均からなる。例えば、所与のサンプリング期間(例えば、100μsecごと)において、複数のサンプル(例えば、64)が採取される。これら複数のサンプルの平均が導出される。望ましくは、サンプル平均の変動も従来からの方法によって割り出され、変動が所定の最大値よりも小さい場合、サンプル平均が有効とされる。サンプル平均の変動が所定の最大値以上である場合、そのサンプル平均は、制御の目的のために使用されない。望ましくは、より信頼できる出力をもたらすため、最後の5つの有効なサンプル平均の移動平均が、制御値として使用される。後でさらに詳しく説明するように、サンプル変動の大きさは、所与の血液処理手順の最後において実行される空気パージの際に、気泡の存在を検出するための手段としても使用できる。
【0100】
光学的検出の構成について、さらなる詳細が米国特許第6,261,065号に開示されており、この米国特許は、ここでの言及によって本明細書に組み込まれたものとする。
【0101】
(III.本システムの空気圧動作の流通制御部品の技術的特徴)
望ましくは、システム10のカセット28ならびにポンプおよびバルブ・ステーション30が、多種多様な血液処理プロトコルを支援する他の技術的特徴を、さらに有している。
【0102】
(A.カセット)
好ましい実施の形態(図15参照)においては、カセット28が、剛な医療品質のプラスチック材料で作られた射出成型による本体300からなる。可撓性のダイアフラム302および304が、好ましくは医療品質のプラスチックからなる可撓性シートで作られており、それぞれカセット28の前側および後ろ側に重ねられている。ダイアフラム302および304は、それぞれの周囲でカセット28の前側および後ろ側の周縁に密着している。
【0103】
図15に示すように、カセット28は、内部空洞の配列を、前側および後ろ側の両者に形成して有している。内部空洞は、直列の空気バルブ・ステーションの配列(図15に符号VSで概略的に示されている)を通過する流体流通経路のパターン(図15に符号FPで概略的に示されている)によって相互接続された空気ポンプ・ステーション(図15に符号PSで概略的に示されている)を規定している。
【0104】
内部空洞のレイアウトは、種々の血液処理手順の種々の目的に合わせて変えることができる。望ましくは、カセット28の内部空洞が、プログラム可能な血液処理回路306(図16および17を参照)を規定する。プログラム可能な回路306を、制御器16によって、例えば赤血球の採取、血漿の採取、血漿および赤血球の両者の採取、あるいはバフィコートの採取など、種々の異なる血液処理手順を実行するように調整することができる。
【0105】
図16は、図15に示した種類の射出成型による空気圧制御のカセット28として実施可能なプログラム可能な流体回路306を、模式的に示している。図17は、カセット本体300内の流体回路306の特定の実施例を示している。以下に説明するとおり、カセット28は、空気圧ポンプおよびバルブ・ステーション30と相互作用し、種々の血液処理機能を実行できる中央集中型のプログラム可能な統合化されたプラットフォームをもたらしている。
【0106】
流体回路306は、2つの空気圧ポンプ・チャンバDP1およびDP2を備えている(図16および23を参照)。ポンプ・チャンバDP1およびDP2は、汎用目的のドナー・インターフェイス・ポンプとして機能するよう、望ましくは制御器16によって協調運転される。2つのドナー・インターフェイス・ポンプ・チャンバDP1およびDP2は、並列に動作する。一方のポンプ・チャンバが流体を引き込む一方で、他方のポンプ・チャンバが流体を吐き出す。したがって、2つのポンプ・チャンバDP1およびDP2が、均一な出口流をもたらすため、引き込みおよび吐出の機能を交互に行なう。静脈切開ニードル128が取り付けられてなるドナー・チューブ126が、ポンプ・チャンバDP1およびDP2に接続されている。
【0107】
さらに流体回路306は、望ましくは、外部の容器150から抗凝血剤を引き込んで、ドナーから引き取った血液中へと、ドナー・チューブ126に接続された抗凝血剤チューブ152を通じて抗凝血剤を測り取るため、専用の抗凝血ポンプとして機能する空気圧ポンプ・チャンバACPを備えている。
【0108】
流体回路306の外部のドナー・クランプ154(図4および5も参照)が、血液処理の際にドナーの快適または安全に影響する特定の状況が生じたとき、ドナー・チューブ126および抗凝血剤チューブ152を閉じるべく、制御器16によって運転される。そのような状況が生じたとき、ドナー・クランプ154が、ドナーを流体回路306から隔離するように機能する。望ましくは、ドナーの安全を向上させるため、ドナー・チューブ‐抗凝血剤チューブ152の接点の下流に、手動操作のクランプ116または止血具が配置される。
【0109】
さらに、図16に示した流体回路306は、望ましくは、全血をリザーバ158から処理チャンバ18へと運ぶため、専用のプロセス中全血ポンプとして機能する空気圧ポンプ・チャンバIPPを備えている。ポンプ・チャンバIPPの専用の機能ゆえ、ドナー・インターフェイス・ポンプ・チャンバDP1およびDP2が、全血を処理チャンバ18へと供給するという追加の機能から自由になる。このように、プロセス中全血ポンプ・チャンバIPPによって、処理チャンバ18への血液の連続的供給を維持することができるとともに、ドナー・インターフェイス・ポンプ・チャンバDP1およびDP2を、同時にただ1つの静脈切開ニードルを通じて血液をドナーから引き込み、かつドナーへと戻すため、協調動作させることができる。これにより、処理時間が最小化される。
【0110】
さらに流体回路306は、望ましくは、処理チャンバ18から採取容器160へと血漿を運ぶため、血漿ポンプとして機能する空気圧ポンプ・チャンバPPを備えている。別個のポンプ機能を専用とすることができるため、処理チャンバ18への血液の連続流および処理チャンバ18からの血液の連続流、ならびにドナーへの血液の連続流およびドナーからの血液の連続流がもたらされる。
【0111】
流体回路306は、図16において符号V1〜V26で示されているバルブの配列を備えており、これらバルブの配列が、ポンプ・チャンバDP1、DP2、IPP、PP、およびACPを、血液および血液成分をドナーへと輸送し、ドナーから輸送し、処理チャンバへと輸送し、処理チャンバから輸送する流通経路の配列へと接続している。バルブV1〜V26の機能は、以下の表にまとめられている。
【0112】
【表1−1】

【0113】
【表1−2】

カセット本体300の前側および後ろ側を覆っている可撓性ダイアフラム302および304は、ポンプ・チャンバDP1、DP2、IPP、PP、およびACP、バルブV1〜V26、ならびにこれらを接続している流通経路の配列を囲んでいる直立した周囲の縁に当接している。前成形のポートP1〜P13(図16および17を参照)が、カセット本体300内の流体回路306を前記外部の容器およびドナーへと接続するため、カセット本体300の2つの側縁に沿って突き出している。
【0114】
カセット28は、図5に示すように、使用のためポンプおよびバルブ・ステーション30内に垂直に取り付けられる。この配置(さらに図15を参照)において、ダイアフラム302が、バルブ・ステーション30のドア32に向かって外側に面し、ポートP8〜P13が下方を向き、ポートP1〜P7が垂直方向に順に重ねられるとともに、内部を向いている。
【0115】
以下に説明するとおり、ポンプおよびバルブ・ステーション30による正および負の流体圧力の背中側ダイアフラム304への局所的印加が、バルブ・ステーションV1〜V26を開閉し、かつ/またはポンプ・チャンバDP1、DP2、IPP、PP、およびACPへと液体を出し入れするため、ダイアフラム304をたわませるように機能する。
【0116】
前記表に記載したとおり、追加の内部空洞308が、カセット本体300に設けられる。空洞308が、血液処理の際に形成されうる凝血塊および細胞の凝縮を取り除くための血液フィルタ材料174(図17参照)を保持するステーションを形成する。図16に概略的に示されているとおり、回路306において空洞308は、ポートP8とドナー・インターフェイス・ポンプ・ステーションDP1およびDP2の間に配置され、ドナーへと戻る血液がフィルタ174を通過する。さらに空洞308は、ドナーへの流通通路およびドナーからの流通通路において、空気を捕捉するよう機能する。
【0117】
さらに、他の内部の空洞310(図16参照)が、カセット本体300に設けられている。回路306において空洞310は、ポートP5とプロセス中ポンプ・ステーションIPPのバルブV16との間に配置されている。空洞310は、分離チャンバ18に仕える全血流通経路において、カセット本体300内のもう1つの空気トラップとして機能する。さらに空洞310は、分離チャンバ18に仕えるプロセス中ポンプIPPの脈動ポンプ行程を緩和するための容量としても機能する。
【0118】
(B.ポンプおよびバルブ・ステーション)
カセット28は、ケース36の蓋40に取り付けられた空気動作のポンプおよびバルブ・ステーション30と相互作用する(図15参照)。
【0119】
ポンプおよびバルブ・ステーション30のドア32の内面324(以下で説明するとおり、好ましくは金属である)は、弾性ガスケット312を保持している。ドア32が閉じられたとき、ガスケット312が、カセット本体300の前側と接触する。膨張可能な袋314が、ガスケット312とドアの内面324との間に位置している。ドア32が開かれた状態(図3参照)で、操作者は、カセット28をポンプおよびバルブ・ステーション30内に配置することができる。ドア32を閉じ、掛け金316(図3〜5に示されている)を固定することによって、ガスケット312が、カセット本体300の前側のダイアフラム302に面して接触する。袋314を膨張させることによって、ガスケット312がダイアフラム302に向かって押し付けられて密な密封係合に至る。これにより、カセット本体300が、ポンプおよびバルブ・ステーション30内に密接な密封のはまり込みで固定される。
【0120】
ポンプおよびバルブ・ステーション30は、図15に最もよく示されているが、空気圧マニホルドアセンブリ34を備えている。使用時、ポンプ・ステーション20のドア32が閉じられ、袋314が膨らまされたとき、袋314によってダイアフラム304が、マニホルドアセンブリ34と密に当接するように保持される。望ましくは、漏れを遮るため、バルブ面ガスケット318が、空気圧マニホルドアセンブリ34を覆っている。図3には、バルブ面ガスケット318の存在が示されているが、図4および15においては、マニホルドアセンブリ34をよりよく示すため、バルブ面ガスケット318の一部が除かれている。
【0121】
マニホルドアセンブリ34は、アクチュエータ・ポート320の配列を、カセット28のポンプ・チャンバおよびバルブの配列の鏡像となるように配置して備えている。制御器16の制御のもと、マニホルドアセンブリ34が、種々の圧力および真空レベルをアクチュエータ・ポート320に選択的に配分し、これらアクチュエータ・ポート320が、当該レベルの圧力および真空を、ダイアフラム304を通じて体系的にカセット28のポンプ・チャンバおよびバルブへと印加し、流体回路306を通る血液および処理液の経路を意図するとおりに設定する。さらに、マニホルドアセンブリ34は、制御器16の制御のもとで、圧力レベルをドア袋314(すでに説明した)およびドナー圧力カフ60(図23参照)ならびにドナー・クランプ154(すでに説明した)に配分する。
【0122】
マニホルドアセンブリ34は、Phardまたはハード圧力、およびPinprまたはプロセス中圧力を生成し、これらは、カセット・バルブV1〜V26を閉じ、プロセス中ポンプIPPおよび血漿ポンプPPから液体を押し出すために印加される高い正の圧力(例えば、+500mmHg)である。Pinprの大きさは、処理チャンバ18内に通常存在する約300mmHgの最小圧力に打ち勝つために充分である。PinprおよびPhardは、ポンプと組み合わせて使用される上流および下流のバルブが、ポンプを動作させるために加えられる圧力によって押し開かれることがないよう、最も高い圧力に操作される。
【0123】
さらにマニホルドアセンブリ34は、ドナー・インターフェイス・ポンプDP1およびDP2ならびに抗凝血剤ポンプACPから液体を押し出すために印加されるPgenまたは一般圧力(+300mmHg)を生成する。
【0124】
さらにマニホルドアセンブリ34は、カセット・バルブV1〜V26を開くべくマニホルドアセンブリ34において加えられる最も深い真空であるVhardまたはハード真空(−350mmHg)を生成する。さらにマニホルドアセンブリ34は、ポンプDP1、DP2、IPP、PP、およびACPのそれぞれの吸い込み機能を機能させるために加えられるVgenまたは一般真空(−300mmHg)を生成する。Vgenは、ポンプDP1、DP2、IPP、PP、およびACPが上流および下流のカセット・バルブV1〜V26を圧倒することがないよう、Vhardよりも極端でない必要がある。
【0125】
ポンプおよびバルブ・ステーション30の動作のさらなる詳細は、米国特許第6,261,065号に見つけることができ、この米国特許は、ここでの言及によって本明細書に組み込まれたものとする。
【0126】
(C.容量による流通検出)
制御器16は、望ましくは、カセット28のポンプ・チャンバを通過する流体流通を監視するための手段を備えている。図示の実施の形態においては、ポンプおよびバルブ・ステーション30が、小さなプリント回路基板アセンブリ(PCBA)332を有している。1つのPCBA322が、カセットのポンプ・チャンバDP1、DP2、IPP、PP、およびACPへと流体を引き込み、流体を吐き出すため、負および正の圧力をダイアフラム304に印加する空気圧アクチュエータ・ポート320のそれぞれに組み合わされている。PCBA332は、それぞれ電力源に接続されるとともに、それらのそれぞれのポンプ・チャンバ内の流体と電気導電性の相互作用にあり、あるいは接触している容量性回路の各部分である。容量性回路は、各ポンプ・チャンバを挟んでいるキャパシタからなる。PCBA332のそれぞれが、一方のキャパシタ・プレートを構成し、ポンプおよびバルブ・ステーション30のドア32の金属製の内面324が、もう一方のキャパシタ・プレートを構成する。プレートとプレートの間が、ポンプ・チャンバそのものである。ポンプ・チャンバ内の流体は、カセットのダイアフラム302および304、空気圧マニホルドアセンブリ34を覆っているバルブ面ガスケット318、ならびにドア32の内面324を覆っているガスケット312によって、回路との実際の物理的接触から遮蔽されている。各PCBA332を通る電気エネルギの通過が、それぞれのポンプ・チャンバに電界を生成する。所与のポンプ・チャンバへと流体を引き込み、所与のポンプ・チャンバから流体を吐き出すため、当該ポンプ・チャンバに関係するダイアフラム304が周期的に変形すると、電界が変化して、PCBA332を通る回路の全容量に変化が生じる。ポンプ・チャンバに流体が引き込まれるとき、容量が大きくなり、ポンプ・チャンバから流体が吐き出されるとき、容量が小さくなる。
【0127】
この構成において、PCBA332のそれぞれは、容量センサ(例えば、Qprox E2S)を備えている。容量センサは、各ポンプ・チャンバの回路332について容量の変化を記録する。所与の回路332についての容量信号は、ポンプ・チャンバが液体で満たされたときに信号の大きさが大になり、ポンプ・チャンバの流体が空であるときに信号の大きさが小さくなり、ダイアフラムが中間的な位置を占めているとき、中間的な信号の大きさの範囲となる。
【0128】
血液処理手順の手始めにおいて、制御器16は、各センサについて信号の大きさの高低間の差を、各ポンプ・チャンバの最大行程容積に合わせて較正することができる。次いで、制御器16は、検出した最大および最小信号値の間の差を、引き続く引き込みおよび吐き出しのサイクルにおいて、ポンプ・チャンバへと引き込まれポンプ・チャンバから吐き出された流体の体積に関連付けることができる。制御器16は、サンプル時間期間にわたってポンプされた流体の体積を合算し、実際の流量を得ることができる。
【0129】
制御器16は、実際の流量を所望の流量と比較することができる。乖離が存在する場合、制御器16が、乖離を最小化すべくカセットのポンプ・チャンバのアクチュエータへと届けられる空気圧力パルスを変化させることができる。
【0130】
図15においては、PCBA332が、関連するアクチュエータ・ポート320内に表面実装され、完全にカセット28の外に配置されて示されている。代案となる一実施の形態においては、回路332の部品(例えば、キャパシタ・プレートの1つ)を、回路の残りの部分への電気的接続をポンプ・チャンバの外へと引き回しつつ、カセット28のポンプ・チャンバ内に配置することができる。代案となる他の実施の形態においては、回路332および電気的接続を、マニホルドアセンブリ34に表面実装された可撓性電極回路上に実現することができ、あるいはマニホルドアセンブリ34の本体と一体化された成型回路基板部品として実現することができる。後者の実施の形態において、電気的回路または引き回しは、例えば写真製版によるパターン形成、上乗せ成型、あるいは可撓性回路を構成部品へと密閉することによって、熱可塑性部品上に成型される。電気的機能を実行する熱可塑性部品は、例えば超音波溶着によって、マニホルドアセンブリ34の空気圧関連の機能を実行する他の部品に一体化され、コンパクトであって多層であり、多機能であるアセンブリを構成する。この構成において、外部の制御器16および他の外部のセンサとの電気的接続は、例えば制御器16および関連のセンサからの電気ピンを収容すべく所定の位置にはんだ付けされたメスの電気コネクタによって実現でき、さらに/あるいは統合されたリボン・ケーブルを使用することによって実現できる。
【0131】
(IV.血漿採取手順を実行するための本システムの使用)
典型的な血漿採取手順を実行するための装置14および制御器16の組み合わされた血液流通セット12の使用を、次に説明する。
【0132】
血漿採取手順は、採取前サイクル、採取サイクル、および採取後サイクルを含んでいる。採取前サイクルにおいて、流通セット16は、静脈切開に先立って空気を排気するために、生理食塩水で水通しされる。採取サイクルにおいて、血漿を採取するため、ドナーから引き出された全血を処理しつつ、赤血球をドナーに戻す。採取後サイクルにおいて、後でさらに詳しく説明するとおり、余分な血漿がドナーへと戻され、セット16が空気で洗浄される。
【0133】
(A.血液処理チャンバ)
図18は、血漿採取手順を実施して血小板、赤血球、および白血球が存在せず、あるいは基本的に存在しない血漿を得るため、図1に示したシステム10と組み合わせて使用できる遠心分離処理チャンバ18の実施の形態を示している。図18に示したチャンバ18は、血漿/赤血球採取手順を実行するためにも使用可能である。
【0134】
図8に示したチャンバの実施の形態(同様の部品には同様の参照番号が付されている)に関してすでに説明したとおり、処理チャンバ18は、望ましくは、別個に成型された基部部品200および蓋部品202として製造される。成型によるハブ204が、周囲の血液分離チャネル210を規定する内側および外側の環状壁206および208に径方向に周囲を囲まれている。成型による壁214(図19参照)が、チャネル210の軸方向の境界を形成している。蓋部品202が、チャネル210の軸方向のもう1つの境界を形成している。軸方向の境界が、両方ともおおむね平坦(すなわち、回転軸に直交)に示されているが、軸方向の境界が、先細り、丸、V字などでもよいことを、理解すべきである。組み立てのとき、蓋部品202がチャンバ18の上部に、例えば円筒形の音波溶接ホーンを使用することによって固定される。
【0135】
図18に示したチャンバ18においては、内側の環状壁206が、一対の補強壁の間で開いている。対向する補強壁が、チャネル210と連通するハブ204の開放内部領域222を形成している。血液および流体が、この領域222を通って臍帯100から分離チャネル210に導入され、分離チャネル210から導出される。
【0136】
図18に示した実施の形態においては、成型による内部壁224が、領域222の内側に形成され、チャネル210を完全に横切って延びて外側の環状壁208に接続している。壁224は、分離チャネル210内に、分離の際のチャネル210に沿った円周方向の流れを中断する境界を形成している。
【0137】
成型によるさらなる内壁が、領域222を3つの通路226、228、および230に分割している。通路226、228、および230は、ハブ204から延びて、境界壁224の両側でチャネル210に連通している。血液および他の流体は、これらの通路226、228、および230を通ってハブ204からチャネル210へと案内され、チャネル210から案内される。
【0138】
処理チャンバ18が回転(図18の矢印R)するとき、臍帯100(図示されていない)が、通路226を通して全血をチャネル210内へと運ぶ。全血は、チャネル210内を回転と同じ方向(図18においては反時計回り)に流れる。あるいは、チャンバ18を、全血の円周方向の流れと反対の方向、すなわち時計方向に回転させてもよいが、最適な血液分離のためには、全血の流れの方向が回転の方向と同じであることが望ましい。
【0139】
全血は、遠心力の結果として、図12に示したようにしてチャンバ18内で分離する。赤血球が、高G側の壁208に向かって追いやられる一方で、より軽い血漿成分は、低G側の壁206に向かって変位する。バフィコート層は、壁206および208の間に位置する。
【0140】
円周方向において境界壁224の近傍かつ全血導入通路226からほぼ360°離間し、血漿採取通路228および赤血球採取通路230が位置している。これらの採取通路228および230から上流の流れの方向において、バリア232が高G側の壁208からチャネル210内へと突き出している。バリア232は、分離チャネル210内に低G側の壁206に沿った規制を形成している。血液の円周方向の流れの方向において、この規制が血漿採取通路228へとつながっている。
【0141】
図20および21に示すとおり、バリア232の前縁234は、チャネル210の環状の境界(図示の実施の形態では、環状壁214)に向かって境界壁224に向かう方向に斜めにされている。バリア232の斜めの縁234は、分離チャネル210の環状の境界に面する開口236へとつながっている。開口236は、高G側の壁208に密に隣接する環状の境界に面するが、軸方向においては、この環状の境界から離間している。開口236は、赤血球採取通路230と連通している。
【0142】
棚238が、或る軸方向の距離だけ、開口236内で低G側の壁206から半径方向に延びている。棚238は、高G側の壁208に沿った開口236の半径方向の寸法を規制している。棚238ゆえ、高G側の壁208の付近の赤血球および他の高密度の成分のみが、開口236と連通する。棚238は、高G側の壁208に近接しない血漿を、開口236と連通しないように保つ。高G側の壁208に沿った半径方向に規制された開口236ゆえ、血漿は、血漿採取通路228に向かう以外に流れる場所がない。したがって、分離チャネル210を出る血漿は、規制された高G開口236を通って分離チャネル210から出る高密度の物質をまったく含まず、あるいは基本的に含まない。
【0143】
棚238は、ほぼ低G側の壁206に整列した軸表面240とつながっている。軸表面240は、赤血球採取通路230へと回転軸に沿って軸方向に延びている。バリア232、棚238、および他の内壁によって、赤血球採取通路230は、血漿採取通路228から分離されている(図22に示すように)。
【0144】
さらに、図22に最もよく示されているとおり、低G側の壁206に沿って位置する血漿は、バリア232および棚238によって血漿採取通路228へと円周方向に導かれ、臍帯100へと導かれる。赤血球およびバフィコート成分(血小板および白血球)を含んでいる高密度の流体は、高G側の壁208に近く位置しており、バリア232の斜めの縁234に沿って、環状の境界および規制された高G開口236に向かって軸方向に導かれる。高G開口236から、高密度の流体を構成している赤血球およびバフィコート成分が、半径方向の棚238を越えて低G側の壁206に向かって導かれ、さらに赤血球採取通路230へと軸方向に導かれ、臍帯100へと導かれる。
【0145】
採取のため高密度材料を分離チャネル210の環状の境界に向かって軸方向に導く斜めの縁234が、流れの方向の急激な変化を緩和するとともに、高密度および低密度の物質が、それぞれの採取通路230および228に向かって導かれる。流れの方向が急激に変化すると、バフィコート物質を血漿へと混ぜ合わせる望ましくない渦が生じうる。さらに、開口236における半径方向の棚238の存在も、血漿からの高密度流体の分離を促進し、所望の高い赤血球ヘマトクリットを維持する。
【0146】
斜めの縁234が、血液を高G側の壁208に沿って、底部の環状の境界壁から上方の環状の境界壁に向かって軸方向上向きの流れ方向で導くよう、バリア232を、血液の流れの方向に対して反対に構成することができることも、理解すべきである。この構成においては、高G開口236が、上方の環状の境界壁の近傍に、この境界壁から軸方向に離間して設けられ、血液の取り出しは、処理チャンバの反対側、すなわち底部の環状壁の側において行なわれるであろう。高Gおよび低Gの表面間に確立される半径方向の分離場において、血液が環状の境界に向かい高Gの表面に沿ってとる軸方向の流れの方向(回転軸に沿った「上方」または「下方」)は、分離の目的を達成する上で重要ではなく、重要なのはむしろ半径方向の場において分離された高密度および低密度の物質をそれぞれの採取通路に向かって導きつつ、流れの方向の急激な変化を緩和することである。
【0147】
血液分離プロセスに影響するすべての輪郭、ポート、チャネル、および壁面は、基部部品200の開放端を通して成型マンドレルの挿入および取り外しを行なってただ1回の射出成型作業によって、基部部品200に前もって形成することができる。蓋部品202は、簡単な平坦な部品で構成でき、成型後に基部部品200の開放端を閉じるべく、基部部品200の開放端に容易に溶着させることができる。分離プロセスに影響を及ぼすすべての特徴が、射出成型による1つの部品に盛り込まれているため、基部200と蓋202の間のいかなる許容公差も、チャンバ18の分離の効率に影響を及ぼすことがない。
【0148】
基部200に前形成される輪郭、ポート、チャネル、および壁面が、基部200の1つの端部を通じてでは、成型マンドレルの挿入および取り外しが容易には行なえないような表面を生じさせる場合、基部200を、入れ子のカップ状の部分アセンブリ、あるいは2つの対称的な半分によって、別個の成型部品によって構成することも可能である。
【0149】
あるいは、成型マンドレルを、基部200の両端から挿入し、取り外すことも可能である。この構成(図19参照)においては、チャンバ18を、3つの部分、すなわち基部200、蓋202(上側成型マンドレルが挿入され、取り外される基部200の一端を閉じる)、および別個に成型された挿入具242(下側成型マンドレルが挿入され、取り外される基部200の他端を、図19に示すように閉じる)で成型することができる。
【0150】
チャンバ18は、回転のため、さまざまな方法で釣り合いをとることができる。チャンバ18の一方の側に、チャンバ18の反対側の内部構造との釣り合いを取るため、内部構造を成型することができる。釣り合いを達成するため、チャンバ18の周囲において、壁の厚さを変化させることも可能である。あるいは、図18に示すように、適切な釣り合いおもりを保持するための成型ポケット248を、チャンバ18に備えてもよい。
【0151】
(B.カセットおよび流通セット)
図23は、すでに説明したカセット28を、血漿採取手順のために使用できる構成について外部の処理容器と組み合わせて示している。血漿採取手順においては、容器には、血漿採取容器160、赤血球採取容器またはリザーバ162、全血プロセス中容器158、抗凝血剤容器150、および処理液(例えば、生理食塩水)容器164が含まれる。
【0152】
(1.血漿採取サイクル)
血漿採取手順の典型的な採取サイクルにおいては、血漿を採取すべくドナーから取り出した全血を処理しつつ、赤血球をドナーへと戻す。カセット内のドナー・インターフェイス・ポンプDP1/DP2、カセット内の抗凝血剤ポンプACP、カセット内のプロセス中ポンプIPP、およびカセット内の血漿ポンプPPが、制御器16によって、関連する空気圧バルブV1〜V26に関連して、空気圧によって駆動され、抗凝血処理された血液をプロセス中容器158に引き込みつつ、血液をプロセス中容器158から処理チャンバ18へと、分離のため制御された速度QWBで運搬する。さらにこの構成は、処理チャンバ18から血漿容器160へと、制御された速度QPで血漿を取り出しつつ、処理チャンバ18から赤血球容器162へと(速度QRBC=QWB−QPで)赤血球を取り出す。この段階が、目標とする体積の血漿が血漿採取容器160に集められる(重量センサによって監視される)まで続けられ、あるいは目標とする体積の赤血球が赤血球採取容器162に集められる(やはり、重量センサによって監視される)まで続けられる。
【0153】
目標とする体積の血漿または赤血球が集められるよりも前に、プロセス中容器158の全血の体積が所定の最大しきい値に達した場合、制御器16が、血液の分離は継続させつつ、ドナー・インターフェイス・ポンプDP1/DP2の動作を終了させて、プロセス中容器158への全血の採取を停止させる。血液の分離の際に、プロセス中容器158の全血の体積が所定の最小しきい値に達したが、まだ目標とする体積の血漿または赤血球が集められていない場合、制御器16が、全血を引き出すように復帰し、プロセス中容器158へと全血が進入できるようにする。制御器は、目標とする体積の血漿の採取または目標とする体積の赤血球の採取のいずれか早いほうが達成されるまで、プロセス中容器158の高低の体積しきい値に従って、これら2つの状態の間を切り替わる。
【0154】
(2.赤血球の戻しサイクル)
典型的な戻しサイクル(目標とする体積の血漿が未だ集められていないとき)において、制御器16が、カセット28内のドナー・インターフェイス・ポンプDP1/DP2、カセット内のプロセス中ポンプIPP、およびカセット内の血漿ポンプPPを、関連の空気圧バルブと協働して動作させ、抗凝血処理された全血をプロセス中容器158から分離のために処理チャンバ18へと運びつつ、血漿を血漿容器160へと取り去り、赤血球を赤血球採取容器162へと取り去る。さらにこの構成は、赤血球容器162からドナーへと赤血球を運ぶと同時に、容器164からの生理食塩水を戻される赤血球に同期して混合する。赤血球に生理食塩水を同期して混合することによって、生理食塩水の温度が上昇し、ドナーの快適さが向上する。この段階が、赤血球容器162が空になったことが重量センサによって確認されるまで続けられる。
【0155】
赤血球容器162が空になるよりも前に、プロセス中容器158の全血の体積が指定の低いしきい値に達した場合、制御器16がプロセス中ポンプIPPの動作を停止させ、血液の分離を停止させる。この段階は、赤血球容器162が空になるまで続けられる。
【0156】
赤血球容器162が空になると、制御器16がドナー・インターフェイス・ポンプ・ステーションDP1を動作させて、ドナー・チューブ126を満たすべくプロセス中容器158から全血を引き出し、さらなる全血引き込みサイクルの準備として、赤血球(生理食塩水と混ざっている)をパージする。次いで、制御器16は、さらなる採取サイクルを実行する。制御器16は、血漿採取容器160に所望の体積の血漿が集められたことを重量センサが示すまで、採取サイクルと戻しサイクルの連続で動作する。制御器16が、赤血球容器162に残っている赤血球をドナーへと運ぶため、カセット28のドナー・インターフェイス・ポンプDP1/DP2を動作させつつ、処理チャンバへの血液の供給および処理チャンバからの血液の取り去りを終了させる。次に、制御器16は、空気パージのサイクルに入るが、その詳細は後で説明する。
【0157】
(D.境界の制御)
所与の血漿採取サイクルにおいて、望ましくは制御器16が、血漿採取チューブ106に目標とする細胞血液種成分(とくに、血小板または白血球、あるいは両者)が存在することを監視するため、検出ステーション46を動作させる。血漿中におけるこれらの細胞成分の存在は、第1のセンサ146によって検出されるが、オーバ・スピル状態を表わしており、すなわち、これら血液種成分のすべてまたは一部が血漿採取チューブ106内へと入ってしまうほど、境界が処理チャンバの低G側の壁に充分に近い(図13を参照)ことを表わしている。細胞血液成分を含まない血漿、または事実上含まない血漿(すなわち、血小板の少ない血漿製品)を採取することが目的であるため、これは望ましくない。
【0158】
オーバ・スピル状態(図13に示されている)に応じて、制御器16は、プロセス中容器158から処理チャンバ18へと所定の流量で全血を引き込むようにプロセス中ポンプIPPを動作させる。赤血球は、採取容器162へと集められるべくチューブ104を通じてチャンバ18から流出し続ける。一方で、制御器16は、予め設定した時間期間(例えば、20秒)だけ血漿ポンプPPの動作を中断させる。この動作によって、チャンバ18内の血漿の体積が赤血球の体積に対して増加し、境界を低G側の壁から離れて分離チャンバの中央に向かって戻るように押し戻す(図12に示すとおり)。予め設定した時間期間が過ぎた後、制御器16は、ドナーへと戻すため血漿を赤血球採取容器162へと経路変更させつつ、短い時間期間(例えば、10秒)にわたって血漿ポンプPPの動作を再開させる。この時間期間の後、スピルが修正されている場合には、綺麗な血漿が第1のセンサ146によって検出され、通常の血漿採取を再開できる。綺麗な血漿が検出されない場合、オーバ・スピルが未だ修正されていないことを示しており、制御器16は、前記の手順を繰り返す。
【0159】
前記の手順は、分離チャンバ内の境界の実際の物理的位置の確認によってはおらず、代わりに、細胞成分の存在をそれらが高G側の壁に近づきすぎてチャンバを出たに相違ないと判断するセンサ146の測定の分解能に依存している。所定の許容可能な最大の血小板混入が、所望の低いしきい値に設定されたとき、この血小板混入のしきい値が、センサ146の測定分解能を下回って位置する可能性がある。したがって、オーバ・スピル状態の検出にのみ専ら依存する制御の仕組みは、最適でないかもしれない。
【0160】
分離チャンバに入る全血の流量(QWB)と分離チャンバ18を出る血漿の流量(QP)との間の差が、チャンバを出る赤血球の流量(QRBC)を決定する(すなわち、(QRBC)=(QWB)−(QP))。(QWB)は、通常は、処理時間を最適にするため、血漿採取手順については一般に約70ml/minである固定された所望の流量に保たれる。したがって、比(QP)/(QWB)が、分離チャンバ18内における境界の物理的位置に相関する。所与の固定の(QWB)において、(QP)の増加が、比の増大をもたらし、より多くの体積の血漿を取り出し、したがって境界を(図13に示すように)低G側の壁に向かって移動させる。対照的に、所与の固定の(QWB)において、(QP)の減少が、比の減少をもたらし、取り除かれる血漿の体積がより少なくなり、したがって境界を(図14に示すように)高G側の壁に向かって移動させる。
【0161】
「理想的」な比(QP)/(QWB)は、まず第1に、オーバ・スピル状態を防止すべく境界を(図12に示すように)チャンバ内の所望の位置に保つような比である。しかしながら、「理想的」な比(QP)/(QWB)は、ドナーの全血のヘマトクリットの関数であり、血液処理手順の過程において容易に制御または測定することができない。
【0162】
チャンバ18から出てくる赤血球のヘマトクリット(HCTRBC)の大きさを、分離チャンバ18内の境界の物理的位置の制御に使用でき、これによりオーバ・スピル状態を最小化または回避できることが発見された。さらに詳しくは、チャンバ18から出てくる赤血球のヘマトクリット(HCTRBC)が、境界と高G側の壁との間の距離が増加する(すなわち、比(QP)/(QWB)が大きくなる)とともに増加する。対照的に、チャンバ18から出てくる赤血球のヘマトクリット(HCTRBC)が、境界と高G側の壁との間の距離が短くなる(すなわち、比(QP)/(QWB)が小さくなる)とともに減少する。比(QP)/(QWB)を、チャンバ18から出てくる赤血球のヘマトクリット(HCTRBC)が目標値となるように調節することによって、アンダー・スピルまたはオーバ・スピルの状態を生じることなく、高G側の壁に対する境界の物理的位置を目標とする位置にすることができる。
【0163】
すでに述べたとおり、赤血球採取チューブ104のためのセンサ148は、望ましくは、ヘマトクリットHCTRBCおよび処理チャンバ18から出てくる赤血球のヘマトクリットの時間的変化を、光学的に検出するように調節および構成されている。代案として、赤血球ヘマトクリットを検出するための従来からのさまざまな手段を使用することも可能である。
【0164】
HCTRBCについての最適な設定点(SET_HCTRBC)は、測定された最適な血漿製品品質(血小板、赤血球、および白血球の混入、ならびにとくにはそれらの非存在という観点から)および測定された最適採取時間と相関するシステムの運転の際に生成される経験的臨床データの分析にもとづいて選択することができる。データは、決定できる高いしきい値HCTRBCにおいて、血小板が赤血球とともに、チャンバ58から出てこなくなることを示している。この所与の高いしきい値HCTRBCにおいて、血小板は、血漿とともにチャンバ18内に残る傾向にあり、血漿との混合にさらされる。この発見にもとづき、SET_HCTRBCが、この高いしきい値赤血球ヘマトクリットに近づくが超えないように設定される。代表的な実施例においては、SET_HCTRBCは、約80±5に等しい。
【0165】
所与の血漿採取手順において(SET_HCTRBC)を達成すべく比(QP)/(QWB)を調節することは、当該手順についての血漿採取パラメータを最適にするよう機能すると同時に、オーバ・スピル状態を調節または回避するよう機能する。制御としてSET_HCTRBCを使用することにより、オーバ・スピル状態を避けるべく血小板が赤血球とともにチャンバを出るようにしつつ、手順の時間を最適化し赤血球ヘマトクリットを最大化するため、(QP)を最大化することが可能になる。
【0166】
この構成において、制御器16は、検出したHCTRBC(センサ148によって検出される)を定期的にSET_HCTRBCと比較し、検出したHCTRBCとSET_HCTRBCとの間の差を最小にするよう比(QP)/(QWB)を調節する。SET_HCTRBCにもとづく制御が、境界を、分離チャンバ内において、オーバ・スピル状態を回避または最小化しつつ、血漿の純度および採取時間を最適化すると経験的に判断される位置に維持する。
【0167】
代表的な実施例においては、比(QP)/(QWB)が、望ましくは、所与の血漿採取手順の始まりにおいて、「理想」の(QP)/(QWB)よりもいくらか小さい値に設定される。代表的な実施例においては、「理想」の(QP)/(QWB)に、約95%の減少係数が乗算されて、初期の比(QP)/(QWB)が設定される。この実施例においては、「理想」の(QP)/(QWB)が(1−Hi/Ho)に等しく設定され、ここでHiは、分離チャンバ18に入る抗凝血処理された全血のヘマトクリットであり、Hoは、SET_HCTRBCである。Hiは、ドナーの実際または推定のヘマトクリット(Donor_HCT)および抗凝血剤の添加による全血の希釈にもとづいて導出される。Hiは、例えばDonor_HCTに(1−(抗凝血剤と全血の比)/100)を乗算することによって導出可能である。
【0168】
手順が進行するとき、検出されたHCTRBCが定期的にSET_HCTRBCと比較され、その差を最小化すべく初期の比(QP)/(QWB)が、増減される。好ましくは、オーバ・スピル状態を避けるため、比(QP)/(QWB)の増分は、検出されたHCTRBCとSET_HCTRBCとの差、ならびに差の変化の速度を考慮に入れて決定される。通常のPID制御技法を使用することができる。望ましくは、比(QP)/(QWB)が、「理想」の比(QP)/(QWB)にもとづく値の所定の最小および最大範囲内で増減される。
【0169】
万一にもオーバ・スピルが生じた場合には、上述のとおりのやり方で修正がなされ、次いで処理が続行される。
【0170】
すでに述べたように、「理想」の(QP)/(QWB)は、少なくとも部分的に、ドナーの抗凝血処理された全血ヘマトクリット(Hi)の関数である。ドナーの全血ヘマトクリットは、処理手順の始めにおいて物理的に測定可能であり、あるいは経験的に割り出したデフォルト値(例えば、女性のドナーについて0.41で、男性のドナーについて0.43)にもとづくことができる。
【0171】
システム10は、最大容量が既知である血液処理チャンバ18を備えているため、制御器16は、ドナーの抗凝血処理された全血ヘマトクリットを、所与の血液処理手順の始めにおいてオンラインで経験的に導出することができる。
【0172】
静脈穿刺が実行され、血液の導入および戻しの経路が全血で水通しされた後、制御器16は、立ち上げ段階を実行するよう遠心分離機ステーション20を調節する。立ち上げ段階において、処理チャンバ18が、血液採取速度まで加速される。全血が、分離チャンバ18へとポンプで送られる。赤血球出口チューブが閉じられる一方で、血漿出口チューブは開放される。制御器16は、血漿チューブのセンサが赤血球の存在を検知するまで、この状態を維持する。赤血球が検知されたとき、それは処理チャンバ18が抗凝血処理された全血で満たされたことを示している。これが生じたとき、制御器16は、処理チャンバ18へと運ばれた全血の体積を記録する。処理チャンバ18を満たすために必要とされる全血の体積は、ドナーの抗凝血処理された全血ヘマトクリットに反比例して変化する。成型による処理チャンバ18の容積は固定であって既知であるため、ドナーの抗凝血処理された全血ヘマトクリット値を、所与の血液処理手順の始めにおいて、処理チャンバ18を満たすために必要とされる抗凝血処理された全血の体積の測定値から、直接導出することができる。
【0173】
(V.2倍赤血球採取手順の実行のためのシステムの使用)
典型的な2単位赤血球採取手順を実行するための装置14および制御器16の組み合わされたセット12の使用を、あくまで例示を目的として次に説明する。
【0174】
(A.血液処理チャンバ)
図8は、意図する赤血球採取手順を実施するために図1に示したシステム10と組み合わせて使用できる遠心分離処理チャンバ18の実施の形態を示している。このチャンバ18は、図18に示してすでに説明したチャンバと多くの技術的特徴を共有しており、この理由のため共通の参照番号が使用される。すでに説明したとおり、処理チャンバ18は別個に成型された2つの部品、すなわち基部200および蓋202として製造される。ハブ204が、周囲の血液分離チャネル210を規定する内側および外側の環状壁206および208に径方向に周囲を囲まれている。成型による環状の壁214(図7参照)が、チャネル210の底部を閉じている。蓋202が、チャネル210の上部を閉じている。組み立てられたとき、蓋202がチャンバ18の上部に、例えば円筒形の音波溶接ホーンを使用することによって固定される。
【0175】
すでに述べたとおり、内側の環状壁206が、一対の補強壁の間で開いている。対向する補強壁が、チャネル210と連通するハブ204の開放内部領域222を形成している。血液および流体が、この領域222を通って臍帯100から分離チャネル210に導入され、分離チャネル210から導出される。成型による内部壁224が、領域222の内側に形成され、チャネル210を完全に横切って延びて外側の環状壁208に接続している。壁224は、分離チャネル210内に、分離の際のチャネル210に沿った円周方向の流れを中断する境界を形成している。
【0176】
成型によるさらなる内壁が、領域222を3つの通路226、228、および230に分割している。通路226、228、および230は、ハブ204から延びて、境界壁224の両側でチャネル210に連通している。血液および他の流体は、これらの通路226、228、および230を通ってハブ204からチャネル210へと案内され、チャネル210から案内される。
【0177】
すでに述べたように、チャンバ18は、回転のため、さまざまな方法で釣り合いをとることができる。
【0178】
図8に示した処理チャンバ18が回転する(図8の矢印R)とき、臍帯100が、通路226を通して全血をチャネル210内へと運ぶ。全血は、チャネル210内を回転と同じ方向(図8においては反時計回り)に流れる。あるいは、チャンバ18を、全血の円周方向の流れと反対の方向、すなわち時計方向に回転させてもよいが、血液分離効率のためには、全血の流れの方向が回転の方向と同じであることが望ましいと考えられる。
【0179】
全血は、遠心力の結果として、図12に示したようにして分離する。赤血球が、高G側の壁208に向かって追いやられる一方で、より軽い血漿成分は、低G側の壁206に向かって変位する。
【0180】
図8に示すとおり、ダム244が、高G側の壁208に向かってチャネル210内へと突き出している。ダム244は、高G側の壁208に凹まされたチャネル246への血漿の通過を阻止する一方で、赤血球の通過は許容する。チャネル246は、赤血球を、半径方向の通路230を通って臍帯100へと導く。血漿成分は、チャネル210から半径方向の通路228を通って臍帯100へと運ばれる。
【0181】
赤血球出口チャネル246が、高G側の壁208よりもさらに回転軸から離間して高G側の壁208の外へと延びているため、この赤血球出口チャネル246によって、血液処理の際に赤血球とバフィコートとの間の境界の位置を、バフィコートを赤血球採取通路230にこぼす(オーバ・スピル状態を生じさせる)ことなく、高G側の壁208にきわめて接近させることができる。したがって、この凹まされた出口チャネル246が、(赤血球採取手順において)赤血球の収量の最大化を可能にし、あるいは(血漿採取手順において)血小板を基本的に含んでいない血漿の採取を可能にする。
【0182】
すでに述べたように、血液分離プロセスに影響するすべての輪郭、ポート、チャネル、および壁面は、基部200の開放端を通して成型マンドレルの挿入および取り外しが行なわれるただ1回の射出成型作業によって、基部200に前もって形成することができる。基部200に前形成される輪郭、ポート、チャネル、および壁面が、基部200の1つの端部を通じてでは、成型マンドレルの挿入および取り外しが容易には行なえないような表面を生じさせる場合、基部200を、入れ子のカップ状の部分アセンブリ、あるいは2つの対称的な半分によって、別個の成型部品によって構成することができ、あるいは基部200の両端を通じて成型資材を取り除き、図19に示すように挿入具242を使用することによって、構成することができる。
【0183】
(B.カセット)
2単位赤血球手順に使用されるカセット28について、ポンプ・チャンバ、バルブ、および流体通路の内部構成は、血漿手順において使用されるカセット28と同じであり、この理由のため共通の参照番号が使用される。図24は、すでに説明したカセット28を、2単位赤血球採取手順に使用できる構成で外部の処理容器に接続して示している。2単位赤血球採取手順においては、容器には、血漿採取手順において使用されるものと同じ配列の容器が含まれ、すなわち血漿採取容器160、赤血球採取容器またはリザーバ162、全血プロセス中容器158、抗凝血剤容器150、および処理液(例えば、生理食塩水)容器164が含まれる。2単位赤血球採取手順においては、追加の容器が使用され、すなわち赤血球添加溶液容器168、ならびに白血球除去フィルタ170、1つ以上の赤血球貯蔵容器172、および付随のチューブ178からなる白血球低減採取アセンブリ176が使用される。図5および6は、2単位赤血球採取手順について、図24に示したカセット28および採取容器の装置への取り付けを示している。
【0184】
(1.採取サイクル)
2単位赤血球採取手順の典型的な採取サイクルにおいては、2単位の赤血球を採取すべくドナーから取り出した全血を処理しつつ、血漿をドナーへと戻す。カセット内のドナー・インターフェイス・ポンプDP1/DP2、カセット内の抗凝血剤ポンプACP、カセット内のプロセス中ポンプIPP、およびカセット内の血漿ポンプPPが、制御器16によって、関連する空気圧バルブに関連して空気圧によって駆動され、抗凝血処理された血液をプロセス中容器158に引き込みつつ、分離のため血液をプロセス中容器158から処理チャンバ18へと運搬する。さらにこの構成は、処理チャンバから血漿容器160へと血漿を取り出しつつ、処理チャンバから赤血球容器162へと赤血球を取り出す。この段階が、或る増分の体積の血漿が血漿採取容器160に集められる(重量センサによって監視される)まで続けられ、あるいは目標とする体積の赤血球が赤血球採取容器162に集められる(重量センサによって監視される)まで続けられる。
【0185】
目標とする体積の血漿または赤血球が集められるよりも前に、プロセス中容器158の全血の体積が所定の最大しきい値に達した場合、制御器16が、血液の分離は継続させつつ、ドナー・インターフェイス・ポンプDP1/DP2の動作を終了させて、プロセス中容器158への全血の採取を停止させる。血液の分離の際に、プロセス中容器158の全血の体積が所定の最小しきい値に達したが、まだ目標とする体積の血漿または赤血球が集められていない場合、制御器16が、全血を引き出すように復帰し、プロセス中容器158へと全血が進入できるようにする。制御器は、必要な体積の血漿の採取または目標とする体積の赤血球の採取のいずれか早いほうが達成されるまで、プロセス中容器158の高低の体積しきい値に従って、これら2つの状態の間を切り替わる。
【0186】
(2.戻しサイクル)
典型的な戻しサイクル(目標とする体積の赤血球が未だ集められていないとき)において、制御器16が、カセット28内のドナー・インターフェイス・ポンプDP1/DP2、カセット内のプロセス中ポンプIPP、およびカセット内の血漿ポンプPPを、関連の空気圧バルブと協働して動作させ、抗凝血処理された全血をプロセス中容器158から分離のために処理チャンバ18へと運びつつ、血漿を血漿容器160へと取り去り、赤血球を赤血球採取容器162へと取り去る。さらにこの構成は、血漿容器160からドナーへと血漿を運ぶと同時に、容器164からの生理食塩水を戻される血漿に同期して混合する。血漿に生理食塩水を同期して混合することによって、生理食塩水の温度が上昇し、ドナーの快適さが向上する。この段階が、血漿容器160が空になったことが重量センサによって確認されるまで続けられる。
【0187】
血漿容器160が空になるよりも前に、プロセス中容器158の全血の体積が指定の低いしきい値に達した場合、制御器16がプロセス中ポンプIPPの動作を停止させ、血液の分離を停止させる。この段階は、血漿容器160が空になるまで続けられる。
【0188】
血漿容器160が空になると、制御器16は、さらなる採取サイクルを実行する。制御器16は、赤血球採取容器162に所望の体積の赤血球が集められたことを重量センサが示すまで、採取サイクルと戻しサイクルの連続で動作する。制御器16は、血漿容器160に残っている血漿をドナーへと運ぶため、カセット28のドナー・インターフェイス・ポンプDP1/DP2を動作させつつ、処理チャンバへの血液の供給および処理チャンバからの血液の取り去りを終了させる。次に、制御器16は、プロセス中容器158に残る血液成分ならびに生理食塩水をドナーへと運ぶため、重量センサで監視される所定の置換体積量が注入されるまで、カセットのドナー・インターフェイス・ポンプDP1/DP2を動作させる。
【0189】
(3.強制アンダー・スピル(最終の赤血球パージ))
別の実施の形態においては、制御器16が、手順の終わりの近くにおいて、分離チャンバから赤血球採取容器へと赤血球の強制アンダー・スピルを生じさせることによって、全体の手順の時間を短縮する。故意による強制アンダー・スピルが、手順の終わりにおいて残留する赤血球の体積を分離チャンバからパージし、採取および最終の戻しサイクルを簡単にして時間を短縮する。
【0190】
この実施の形態においては、制御器16が、所与の手順において採取すべき残りの赤血球の体積を定期的に監視し、あるいは常時監視する。制御器16は、採取すべき残りの赤血球の体積が分離チャンバ18を占めている赤血球の体積と等しくなり、あるいは近くなったとき、強制アンダー・スピルの状態を開始させる。分離チャンバを占めている赤血球の体積は、(i)分離チャンバ18の面積(KA)(チャンバの形状にもとづく既知の量である)、(ii)赤血球パージにおける境界の位置の変化(KI)(これも、チャンバの形状にもとづく既知の量である)、(iii)注入された抗凝血処理された全血のヘマトクリット(Hi)(これの導出はすでに説明したとおりであり、あるいは性別によって決まるデフォルト値であってもよい)、(iv)流出する赤血球のヘマトクリットHCTRBC(これの導出もすでに説明した)、および(v)赤血球パージ手順の開始時にチャンバ18内に存在する赤血球の絶対体積(KRBC)(分離チャンバ18の形状にもとづき一定である)にもとづいて導出することができる。上記の係数にもとづいて分離チャンバを占めている赤血球の体積(Forced Under SpillRBC)を導出するための代表的なアルゴリズムは、
Forced Under SpillRBC=(KRBC)+ΔIP*HCTRBC
であり、ここで、ΔIPは、アンダー・スピルを実現するために必要なプロセス中血液の体積であり、(KI)/[(1−(Hi))/HCTRBC/(KA)]である。
【0191】
強制アンダー・スピルにおいて、赤血球採取チューブ104は閉じられ、血漿採取チューブ106は開かれる。この状態において、境界の血小板および白血球層は、ドナーへと戻るため血漿と一緒にチャンバ18から運ばれる。これにより、赤血球について白血球の混入が低減される。制御器16は、赤血球が血漿採取チューブ106に進入したことを検知(センサ146が検知するであろう)したとき、血漿採取チューブを閉じて、赤血球採取チューブを開く。この状態において、分離チャンバ内に蓄積されている赤血球を、赤血球採取容器へと運ぶことが可能である。通常は、この状態の間に血球の採取目標が達成される。目標に到達しない場合、制御器16は、通常の赤血球採取状態へと復帰する。
【0192】
赤血球採取手順が完了すると、制御器16は、空気パージのサイクルに入るが、その詳細については後で説明する。
【0193】
(4.白血球濾過)
赤血球の採取ならびに血漿および残りの血液成分の戻しが完了したとき、制御器16は、自動的または操作者を促した後に、インラインの白血球濾過サイクルに切り替わることができる。このサイクルにおいて、赤血球が赤血球採取リザーバ162から取り出され、白血球除去フィルタ170を通して赤血球貯蔵容器172へと運ばれる。同時に、容器168からの所望の量の赤血球貯蔵溶液が、赤血球に混合される。
【0194】
白血球フィルタ170は、さまざまに構成することが可能である。フィルタは、例えば濾過用媒体を収容してなるハウジングで構成でき、濾過用媒体は、膜からなることができ、あるいは溶融吹き付けまたは不織の合成繊維(例えば、ナイロン、ポリエステル、又はポリプロピレン)、半合成繊維、再生繊維、または無機繊維などの繊維材料から作ることができる。繊維質である場合、媒体は、深層濾過によって白血球を取り除く。膜である場合、媒体は、ふるい分けによって白血球を取り除く。ハウジングは、周囲において密封された剛なプラスチック・プレートで構成できる。あるいは、ハウジングが、ジ‐2‐エチルヘキシル‐フタレートで可塑化させたポリ塩化ビニル(PCV‐DEHP)などの医療用品質のプラスチック材料からなる可撓性のシートで構成されてもよい。使用時、フィルタ170を、装置の基部の保持用固定具182に保持することができる。
【0195】
白血球濾過サイクルの最初の段階において、制御器16は、赤血球貯蔵容器172、フィルタ170、およびチューブ178から空気を引き、この空気を赤血球採取リザーバ162へと移動させるため、カセット内のドナー・インターフェイス・ポンプDP1/DP2を動作させる。この段階は、白血球除去プロセスの開始に先立って、赤血球貯蔵容器172内に残る空気の量を最小にする。さらにこの段階は、或る量の空気を赤血球採取容器162内に提供し、これを、白血球除去プロセスが完了したのちに、赤血球をフィルタ170から赤血球採取容器172へとパージするために使用することができる。
【0196】
次の段階において、制御器16は、水通しの量の貯蔵溶液を溶液容器168から赤血球採取リザーバ162へと引き込むため、カセット28内のドナー・インターフェイス・ポンプDP1/DP2を動作させる。この段階は、容器168とカセット28との間のチューブ180を水通しし、最終の赤血球貯蔵容器172へと送り込まれる空気の量を最小にする。
【0197】
次の段階において、制御器16は、赤血球採取リザーバ162から赤血球採取容器172への赤血球の送り込み(フィルタ170を介する)と、容器168から赤血球採取容器172への赤血球貯蔵溶液の送り込み(やはり、フィルタ170を介する)とを交互に行なうため、カセット28内のドナー・インターフェイス・ポンプDP1/DP2を動作させる。この交互のプロセスが、貯蔵溶液を赤血球に混合させる。制御器16は、赤血球および貯蔵溶液について、空気圧ポンプの行程をカウントし、貯蔵溶液の体積に対する赤血球の体積の所望の比を得る(例えば、赤血球についてポンプが5回行程し、続いて貯蔵溶液についてポンプが2回行程し、この交互の手順を繰り返す)。この赤血球および貯蔵溶液の交互の供給は、赤血球採取リザーバ162についての重量計が、リザーバ162が空であることを示すまで続けられる。
【0198】
赤血球採取リザーバ162が空であるとき、制御器16は、所定の量の空気を赤血球採取リザーバ162からフィルタ170を通して送るため、ドナー・インターフェイス・ポンプDP1/DP2を動作させる。空気の量は、白血球除去プロセスの開始に先立って赤血球採取リザーバ308に引き込まれた空気の量にもとづいて予め決められている。この空気は、フィルタ170から赤血球をパージして、チューブ、カセット28、およびフィルタ170における残留赤血球の存在を最小にする。さらに、このステップは、赤血球採取リザーバ162が完全に空であることを確実にする。
【0199】
次に制御器16は、貯蔵溶液の体積と赤血球の体積との間に所望の比が存在することを確実にするために必要であるとおり、追加の貯蔵溶液をフィルタ170を通して赤血球貯蔵容器172へと送出する。次いで、最後のステップとして、制御器16は、依然として残っているあらゆる赤血球をフィルタ170から貯蔵容器172へと洗い流すため、最後の所定の量の貯蔵溶液をフィルタ170を通して送出する。この最終ステップは、濾過後の赤血球回収の割合を最大にする。望ましくは、制御器16が、フィルタ170が完全に水切りされるよう所定の時間期間(例えば、20秒)の間待機する。
【0200】
白血球濾過サイクルおよび白血球濾過フィルタ170のさらなる詳細は、2001年10月13日に出願されて本件出願と同時係属中である「Blood Separation Systems and Methods that Alternate Flow of Blood Component and Additive Solution through an In‐Line Leukofilter」という名称の米国特許出願第09/976,832号に見つけることができ、この特許出願は、ここでの言及によって本明細書に組み込まれたものとする。
【0201】
(VI.空気パージ)
所与の血液採取手順の終わりにおいて、チャンバ18は、残余量の赤血球および血漿を含むであろう。これら残余量の血液成分をドナーへと戻すことが望まれる。これは、赤血球の場合にとくに当てはまる。できるだけ多くの赤血球を戻すことができる能力は、ドナーの赤血球の喪失を極力少なくし、引き続く延期期間、すなわち当該ドナーからの赤血球の採取が許されない期間を短くする。
【0202】
ドナーへと戻すべく分離チャンバから赤血球を洗い流すための最も効果的なやり方は、分離チャンバを通過する無菌空気の送出であることが見出された。血液処理後に分離チャンバから赤血球を洗い流すため、液体の代わりに無菌空気を使用することで、血液処理後に廃棄しなければならない潜在的バイオハザード廃棄物の重量を少なくすることができる。
【0203】
所与の血液処理手順に先立ち、最初の呼び水サイクルにおいて、システムから無菌空気がパージされ、プロセス中全血リザーバに留まる。これが、後に、血液処理手順の完了後に赤血球を分離チャンバから洗い流すための無菌空気の源となる。
【0204】
空気による洗い流しの最初の段階において、赤血球採取チューブ104が閉じられる。空気が、全血注入チューブ102を通って分離チャンバ18へと送出される一方で、残余の赤血球が、血漿ポンプPPの動作によって、血漿排出チューブ106を通ってチャンバ18から引き取られる。この段階が、血漿チューブ106にて空気が検出されるまで続けられる。次いで、空気による洗い流しの第2の段階が開始される。
【0205】
第2の段階において、血漿排出チューブ106が閉じられ、赤血球チューブ104が開かれる。分離チャンバ18が、赤血球を除去のためにチャンバ18の高G側の壁に向かって変位させるに充分であり、分離チャンバ18内に残る空気を分離チャンバ18の低G側の壁に向かって変位させるに充分である、比較的穏やかな回転速度(例えば、300rpm)を達成すべく回転するよう加速される。この第2の段階は、赤血球チューブ104にて空気が検出されるまで続けられる。この時点で、空気による洗い流しが終了する。
【0206】
赤血球チューブ104および血漿チューブ106内の空気の検出は、通常の超音波空気検出器を使用して実現できる。しかしながら、血漿チューブ106および赤血球チューブ104内の細胞成分を光学的に検出するために使用されるセンサ146および148そのものを、これらチューブ106および104内の空気の存在の検出にも利用できることが見出された。
【0207】
すでに述べたように、血漿チューブ106のセンサ146は、チャンバ18から出る血漿中の血小板および/または赤血球の濃度を割り出すため、赤および緑の光の透過を使用している。赤血球チューブ104のセンサ148は、分離チャンバ18から出る赤血球のヘマトクリットを割り出すため、赤外(805nm)の反射および透過を利用している。センサ146および148は、センサ146および148を定期的に動作させて出力をサンプリングする制御器16によって運転される。所与のセンサ出力は、複数のサンプルの平均である。
【0208】
気泡の通過の存在は、センサ146または148のいずれかにおいて、センサによって得られた測定サンプル間に明らかな変動が生じることによって判断され、そのような変動は、通常動作においてサンプル平均を有効とするために使用される変動を大きく超える変動である。或るサンプル期間において採取されたサンプル間の所定のしきい値変動を、空気による洗い流しサイクルの際の空気の存在に相関させることができる。所与のサンプリング期間の間に採取された複数のサンプルの変動は、例えば各サンプルおよびサンプル平均間の差を合計し、差の合計を二乗し、この量をサンプル数から1を引いた数で除算することによって、割り出すことができる。
【0209】
血漿ラインのセンサ146の場合には、赤または緑の透過測定値のいずれかについての変動が、約4000であるしきい値変動(通常の境界検出の目的においてサンプルが有効であると判断される変動よりも大きい)を超えた場合、制御器16が、血漿チューブ106について気泡検出信号を生成する。制御器16が、空気による洗い流しプロトコルの第1段階から第2段階へと移行する。
【0210】
赤血球ラインのセンサ148の場合には、赤外透過または赤外反射の測定値のいずれかについての変動が、約2000であるしきい値変動(やはり、通常の境界検出の目的においてサンプルが有効であると判断される変動よりも大きい)を超えた場合、制御器16が、赤血球チューブ104について気泡検出信号を生成する。制御器16が、空気による洗い流しプロトコルの第2段階を終了させる。
【0211】
(VII.カセットの完全性確認)
血液流通セット12の取り付けには、ポンプおよびバルブ・ステーション30へのカセット28の正確な配置、ドナー・クランプ154を通じてのドナー・チューブ126および抗凝血チューブ152の正確な取り回し、ならびにドナー・チューブ‐抗凝血チューブ152の接点の下流のクランプ116または止血具の正確な配置が含まれる。カセットの正確な配置、ドナー・クランプ154を通じてのこれらチューブ126および152の正確な取り回し、ならびにクランプ116または止血具の存在は、望ましくは、ドナーを流通セットに接続するのに先立って、手順のたびに確認される。
【0212】
カセットのダイアフラム304と空気圧マニホルドアセンブリ34の間の空気の密封は、流体圧力駆動のバルブおよびポンプを適切に機能するようにするとともに、カセット内の流体流通チャネルの完全性を確保するために必要である。空気の密封の他に、カセットのダイアフラム304と空気圧マニホルドアセンブリ34のバルブ面ガスケット318との間に捉えられる空気の量も、流体バルブおよびポンプの効果的な動作のため、極力少なくしなければならない。マニホルドアセンブリ34に対してカセット28を完全に取り付ける前に、ドア袋314を膨張させると、密封を危うくする可能性がある。さらに、切れ目や凹みなどのカセットの密封面における欠陥、ならびにカセット・ホルダ26へのカセット28の不適切な装填も、密封を危うくする可能性がある。これらの状態も、ドナーを流通セット12へと接続する前に検出することが望ましい。
【0213】
これらの理由から、望ましくは、制御器16が、カセットの取り付けおよび完全性に関する一連の確認を行なう。代表的な実施例においては、これら取り付けおよび完全性に関する確認が、(1)ドア袋314の膨張に先立ち、ポンプおよびバルブ・ステーション30にカセット28が存在することを確認するカセット存在チェック、(2)カセットのダイアフラム304とバルブ面ガスケット318との間に捉えられた空気を最小にする空気抜きルーチン、(3)マニホルドアセンブリ34に対するカセット28の適切な着座を確認し、バルブ面ガスケット318に漏れがないことを確認するバルブ・クロストーク・チェック、(4)ドナー・クランプ154を通じてドナー・チューブ126および抗凝血チューブ152が正しく取り回されていることを、空気を使用して確認する乾式カセット完全性テスト、および(5)バルブの密封および流体チャネルの完全性を損ないかねないカセットの欠陥が存在しないことを、液体(例えば、生理食塩水)を使用して確認する湿式カセット完全性テストを含んでいる。
【0214】
(A.カセット存在チェック)
このテストは、ドナーを接続して所望の血液処理セッションを開始する前に、カセット28が取り付けられており、ポンプおよびバルブ・ステーション30のドア32が閉じられていることを確認する。
【0215】
図15を参照すると、操作者が、ポンプおよびバルブ・ステーション30にカセット28を取り付け、ステーションのドア32を閉じる。カセット28が存在する場合、ドア袋314の膨張に利用できる体積が少なくなる。したがって、所与の圧力レベルに達するために要する時間が短くなる。この特性が、カセット存在チェックにおいて、ポンプおよびバルブ・ステーション30内のカセット28の存在を確認するために使用される。
【0216】
制御器16が、真空を加えてカセットのすべてのバルブおよびポンプを開くよう、マニホルドアセンブリ34を制御する。次いで、制御器16は、ドア袋314に空気の圧力を加えるよう、マニホルドアセンブリ34を制御する。制御器16が、袋314内の圧力の蓄積を記録しつつ、さらに経過時間を記録する。袋314の圧力が、所定の時間期間(例えば、30秒)内に所定のしきい値圧力(PBLAD)(例えば、800mmHg)に達し、あるいは超えた場合、制御器18は、ステーション内にカセット28が存在すると判断する。そうでない場合、制御器16は、警報を発して操作者にカセット28を装填するように促す。
【0217】
ひとたびカセット28の存在が確認されると、制御器18は、次の完全性テストである空気抜きルーチンへと進む。
【0218】
(B.空気抜きルーチン)
空気抜きルーチンは、ドア32が閉じられた(一般に図15を参照)後に、バルブ面ガスケット318とカセットのダイアフラム304との間に捉えられた空気の量を最小にする。捉えられた空気は、カセット28のバルブおよびポンプの性能に不都合な影響を及ぼしうる。
【0219】
制御器16は、カセット28の存在が確認された後に、空気抜きルーチンを発動する。空気抜きルーチンにおいては、ドア袋314が所定のより低い圧力レベル(例えば、約800mmHgよりも低い)まで膨らまされ、これによって、カセット28がマニホルドアセンブリ34に当接して着座するが、バルブ面ガスケット318との空気の密封は生じない。続いて、ドア袋314がこの低い圧力にある状態で、制御器16がマニホルドアセンブリ34を制御して、所定の時間期間の間PHARDを規定し、次いでPGENを規定する。バルブ面ガスケット318に対して異なる圧力をこのように規定することで、バルブ面ガスケット318が短く膨らむ。この動作が、カセットのダイアフラム304とバルブ面ガスケット318との間に捉えられた残留空気を吐き出す。この動作が、所定の時間期間にわたって続けられ、その後にドア袋の圧力が、指定の完全な密封圧力(例えば、約900mmHg)へと調整される。制御器18は、次の完全性テストであるバルブ・クロストーク・テストへと進む。
【0220】
(C.バルブ・クロストーク・テスト)
バルブ・クロストーク・テストの目的は、生理食塩水による流通セット12の水通しの開始に先立って、バルブ面ガスケット318の漏れを検出することにある。制御器16がマニホルドアセンブリ34を制御し、ドア袋314を密封のための圧力に設定する。制御器16によって、隣り合うバルブおよびポンプ・チャンバが、例えば以下のとおり圧力カテゴリおよび真空カテゴリにグループ分けされる(これらバルブの配置の模式概略図については、図25Aを参照されたい)。
【0221】
【表2】

制御器16が、圧力領域へとPHARD、PGENを順次印加し、真空領域にVHARDおよぶVGENを印加するよう、マニホルドアセンブリ34を制御する。それぞれの圧力/真空レベルにおいて各領域の圧力漏れの速度が割り出され、受忍可能な指定レベル(例えば、約2〜3mmHg/秒よりも小さい)と比較される。制御器は、いずれかの領域において前記指定の受忍可能レベル以上の漏れ速度に直面した場合に、バルブ面ガスケット318の漏れを示す警報を生成する。
【0222】
すべての領域において漏れ速度が前記指定の受忍可能レベルを下回る場合、制御器18は、次の完全性テストである乾式カセット完全性テストへと進む。
【0223】
(D.乾式カセット完全性テスト)
乾式によるカセットの完全性テストは、生理食塩水による流通セットの水通しの実行に先立って、ドナー・チューブ126および抗凝血チューブ152に関する誤装着状態を検出する。誤装着状態は、(1)ドナー・チューブ126および/または抗凝血チューブ152が、ドナー・クランプ154を迂回している、(2)ドナー・チューブ126および/または抗凝血チューブ152が、挟み込まれている、(3)ドナー・チューブ126/抗凝血チューブ152の接点において、クランプ116または止血具が設けられていない、のいずれか1つ、または組み合わせでありうる。誤装着状態のほかにも、このテストは、例えば輸送時や使用前の取り扱い時など、製造直後の品質管理テストの後で生じうるドナー・チューブ126、抗凝血チューブ152、あるいは抗凝血容器150におけるピンホールまたはポートの破損など、流通セットの欠陥を検出することができる。
【0224】
乾式カセット完全性テストは、カセット28の選択された領域を、空気を使用して加圧する。乾式カセット完全性テストは、液体の代わりに空気を使用するため、カセットが適切に取り付けられていることを、カセット28に流体を導入する前に確認することができる。したがって、誤装着が検出された場合、カセット28を、未使用の無菌の状態で容易に再装着することができる。
【0225】
乾式カセット完全性テスト(図25A/25Bおよび26A/26Bに図式的に描かれている)において、制御器16がマニホルドアセンブリ34を制御し、カセット28の指定のポンプ・チャンバを駆動して選択された領域へと臍帯100から空気を引き込み、指定のバルブを閉鎖して当該領域の圧力を保持する。初期の圧力が、当該領域と連通しているポンプ・チャンバにて検出される。ポンプ・チャンバは、閉状態に設定されているドナー・クランプ154を通じて、目標とするチューブに接続されている。マニホルドアセンブリ34が、ポンプ・チャンバから空気を吐出させようと試みるため、前記領域に仕えるポンプ・チャンバへと正の圧力を加えるように制御される。指定の時間期間の後、最終の圧力が検出される。目標としたドナー・チューブ126または抗凝血チューブ152が、ドナー・クランプ154に適切に装着されている場合、ドナー・クランプ154が空気の流れを防止するに相違なく、したがって圧力低下の発生が防止される。所定のしきい値よりも大きい圧力低下比(最終の圧力/初期の圧力)に直面した場合、ドナー・クランプ154が空気の流れを防止しておらず、語装着があるものと判断される。
【0226】
代表的な実施例においては、乾式カセット完全性テストは、2つの段階からなる。第1の段階においては、ドナー・チューブ126に関する誤装着状態が検出される。第2の段階においては、抗凝血チューブ152の誤装着状態が検出される。
【0227】
(1.段階1(ドナー・チューブの誤装着状態))
段階1の開始時の流体回路306の状態が、図25Aに示されている。
【0228】
段階1において、制御器16が、PGEN、PHARD、VGEN、およびVHARDをシステムによる圧力レベルに調節する。ドナー・クランプ154が開放され、カセット28全体が、血液処理チャンバ18へと通気される。次いで、カセットのバルブが、血漿ポンプPPの動作によって空気を臍帯からドナー・ポンプ・チャンバDP1へと引き込むことができるようにする経路にあるバルブを除いて、すべて閉じられる。流体回路306において、この経路は、例えばV2/V21を開き(臍帯100から赤血球容器162までの赤血球チューブ104を開く)、V1/V16を開き(臍帯100へプロセス中ポンプPPPを通ってプロセス中容器158までの全血チューブ102を開く)、さらにV5/V6/V10/V11/V17を開く(臍帯100から血漿ポンプPPを通ってドナー・ポンプDP1までの血漿チューブ106を開く)ことによって、生成することができる。ドナー・クランプ154が、流体回路306内の他のバルブと同様に閉じられる。
【0229】
制御器16が、マニホルドアセンブリ34を制御し、指定された数のポンプ行程だけ、血漿ポンプPPを動作させる。これにより、(図25Aに矢印AIRの経路で示されるとおり)臍帯100からドナー・ポンプDP1へと空気が引き込まれる。
【0230】
次いで、制御器16が、バルブV6を閉じるようにマニホルドアセンブリ34を制御し、臍帯100からの空気の経路を閉鎖する。次いで、制御器16は、バルブV12/V13/V18を開くようにマニホルドアセンブリ34を制御して、ドナー・ポンプPP1からドナー・チューブ126への経路を開き、この経路は、依然閉じたままであるドナー・クランプ154によってのみ規制されている。段階1のこの段階における流体回路306の状態が、図25Bに示されている。
【0231】
続いて制御器16は、マニホルドアセンブリ34を制御してPGENおよびVHARDを保持し、VGENを通気し、所定の遅延時間の後に、ドナー・ポンプDP1の初期のPGEN1を記録する。
【0232】
次いで制御器16は、マニホルドアセンブリ34を制御して所定の時間期間にわたってDP1に圧力を加える。これにより、図25Bに矢印AIRの経路で示されるとおり、空気がドナー・ポンプDP1からドナー・クランプ154に向かって導かれる。制御器16が、現在のPGEN2を記録する。
【0233】
比PGEN2/PGEN1が指定の値よりも小さい場合、制御器16は、ドナー・クランプ154を通じて空気の漏れが生じたと判断し、ドナー・チューブ126がドナー・クランプ154に適切に取り付けられていないと判断する。制御器16が、操作者に、カセット28を取り付け直すように促す。比PGEN2/PGEN1が指定の値以上である場合、制御器16は、ドナー・クランプ154を通じての空気の漏れは生じていないと判断し、ドナー・チューブ126がドナー・クランプ154に適切に取り付けられていると判断する。この場合、制御器16は、乾式カセット完全性テストの段階2へと移行する。
【0234】
(2.段階2(抗凝血チューブの誤装着状態))
段階2の開始時の流体回路306の状態が、図26Aに示されている。
【0235】
段階2の最初において、制御器が、PGEN、PHARD、VGEN、およびVHARDをシステムによる圧力レベルに調節する。ドナー・クランプ154が開放され、カセット28全体が、血液処理チャンバ18へと通気される。次いで、カセットのバルブが、空気を臍帯100から血漿ポンプPP、ドナー・ポンプPP1、およびドナー・クランプ154を通って抗凝血ポンプ・チャンバACPへと引き込むことができるようにする経路にあるバルブを除いて、すべて閉じられる。流体回路306において、この経路は、例えばV2/V21を開き(臍帯100から赤血球容器162までの赤血球チューブ104を開く)、V1/V16を開き(プロセス中容器158からプロセス中ポンプPPPを通って臍帯100へと入る全血チューブ102を開く)、V5/V6/V10/V11/V17を開き(臍帯100から血漿ポンプPPを通ってドナー・ポンプDP1までの血漿チューブ106を開く)、さらにV12/V13/V22を開く(ドナー・ポンプPP1からドナー・チューブ126および抗凝血チューブ152を通って抗凝血ポンプ・チャンバACPへと入るドナー・チューブ126を開く)ことによって、生成することができる。さらに、クランプ116または止血具が、閉じた状態に固定される。制御器16が、マニホルドアセンブリ34を制御し、指定された数のポンプ行程だけ、血漿ポンプPPを動作させる。これにより、(図26Aに矢印AIRの経路で示されるとおり)臍帯100から抗凝血ポンプACPへと、ドナー・チューブ126と抗凝血チューブ152との接点を通過して空気が引き込まれる。次いで、制御器16が、マニホルドアセンブリ34を制御してバルブV22およびドナー・クランプ154を閉じる一方で、臍帯100への経路の残りの部分を開いた状態に保つ。
【0236】
続いて制御器16は、マニホルドアセンブリ34を制御してPGENおよびVHARDを保持し、VGENを通気し、所定の遅延時間の後に初期のPGEN1を記録する。次いで制御器16は、マニホルドアセンブリ34を制御して、V22を開きつつ所定の時間期間にわたってACPに圧力を加える。V22を越えて抗凝血チューブ152を通過する空気の流れは、閉じた状態に保たれているドナー・クランプ154によってのみ規制されている。制御器16が、現在のPGEN2を記録する。段階2のこの段階における流体回路306の状態が、図26Bに示されており、ACPからドナー・クランプ154までの経路が、矢印AIRで示されている。
【0237】
比PGEN2/PGEN1が指定の値よりも小さい場合、制御器は、ドナー・クランプ154を通じて空気の漏れが生じたと判断し、抗凝血チューブ152がドナー・クランプ154に適切に取り付けられていないと判断する。制御器が、操作者に、カセット28を取り付け直すように促す。比PGEN2/PGEN1が指定の値以上である場合、制御器は、ドナー・クランプ154を通じての空気の漏れは生じていないと判断し、抗凝血チューブ152がドナー・クランプ154に適切に取り付けられていると判断する。この場合、制御器は、最後の完全性チェックである湿式カセット完全性チェックへと移行する。
【0238】
(E.湿式カセット完全性テスト)
湿式によるカセットの完全性テストは、カセット28そのものにおいて生じうる製品の品質およびドナーの安全に関する欠陥を検出するよう設計されている。このチェックは、流体回路が、例えば生理食塩水などの水通し用の流体で完全に水通しされた後に実行される。このチェックは、流体通路が水通し用流体で満たされたときに、流体回路が選択されたテスト領域において空気密封を維持する能力を有するかどうかを判断するため、容量検出を使用する。
【0239】
湿式カセット完全性テストにおいては、ポンプ・チャンバを少なくとも1つ含むようにテスト領域が生成され、選択される。テスト領域は、当該テスト領域の境界に位置するバルブを閉鎖することによって、流体回路306の残りの部分から気密にされる。テストの際、ポンプ・チャンバは、水通し用の流体で満たされている。制御器16がマニホルドアセンブリ34を調節し、水通し用流体をポンプ・チャンバから閉じられているテスト領域へと移してポンプ・チャンバを空にしようと試みる。制御器16が、容量検出を使用して、空にしようとする試みの後にチャンバ内に残る流体の量を評価する。試みの後にポンプ・チャンバ内に残っている流体の量が、所定の最低量よりも多い場合、制御器16は、テスト領域が、テスト領域からの流体の漏れに抗するために充分に気密に密封されていると判断する。試みの後にポンプ・チャンバ内に残っている流体の量が、所定の最低量以下である場合、制御器16は、テスト領域から流体の漏れが生じたと判断し、欠陥警報を生成する。望ましくは、このテストにおいては、一連のテスト領域が生成されて順次テストされる。
【0240】
種々のテスト領域の境界は、回路が直面しうる考えられるさまざまな密封不良の態様を評価することによって、定めることができる。
【0241】
代表的な実施例においては、制御器16が、対象とする第1のテスト領域を生成するため以下のバルブ、すなわちバルブV3、V5、V6、V7、V15、V20、V25を開く。図27は、このテスト領域を太い実線で示している。このテスト領域は、ドナー・ポンプDP1およびDP2を含んでおり、さらに血液および血液成分がドナーへと運ばれドナーから運ばれる経路を含んでいる。
【0242】
制御器16は、生理食塩水容器164からテスト領域へと生理食塩水を引き込み、テスト領域を生理食塩水で所定の検出圧力まで加圧するため、ドナー・ポンプDP1/DP2を動作させるとともに、適切なバルブを駆動する。このプロセスにおいて、ポンプ・チャンバDP1/DP2が生理食塩水で満たされる。
【0243】
図27において、テスト領域は、境界のバルブV2、V4、V10、V8、V13、およびV14によって気密に封じられている。制御器16は、望ましくは、テスト領域を出る流体が境界のバルブを通過して流れることができる漏れの経路をもたらすため、境界のバルブの下流にある他のバルブを開放し、特定の境界バルブそのものについてのテストをより敏感にする。図27において、境界のバルブの下流に続く以下のバルブ、すなわちバルブV1、V11、V17、V22、V23、抗凝血ポンプACP、血漿ポンプPP、プロセス中ポンプIPP、およびドナー・クランプ154を、漏れ経路をもたらすべく開放することができる。考えられる流体漏れ経路は、図27に想像線で示されており、漏れ経路において境界のバルブの外側にあって開放することができるバルブには、アスタリスク(*)が印されている。
【0244】
制御器16は、バルブV6/V7/V13/V14を閉じることによってポンプ・チャンバDP1/DP2を隔離し、容量検出によって、各チャンバのポンプ満容積を記録する。制御器16は、バルブV6およびV7を開くことによってテスト対象の領域をドナー・ポンプに対して開き、流体をテスト領域へと移動させるため、ドナー・ポンプ・チャンバDP1およびDP2を所定の短縮された押し時間にわたって閉じる。次に制御器16は、バルブV6およびV7を閉じてサンプル遅延期間にわたって待機する。次いで制御器16は、容量センサの読み取り値を取得する。いずれかのポンプ・チャンバにおいて最終の値がしきい値最小値(例えば、完全に空のチャンバの上方の基準体積を代表することができる)よりも小さい場合、テスト領域からの流体の漏れが生じており、警報が生成される。両方のポンプ・チャンバについて、最終の値が最小しきい値以上である場合、流体の漏れは生じておらず、テストが続行される。
【0245】
他のテスト領域の完全性は、次のバルブ、すなわちV5、V6、V7、V15、V20、V25を開くことによって、テストすることができる。図28は、このテスト領域を太い実線で示している。制御器16は、流体の漏れ経路をもたらしてテストをより敏感にするため、境界のバルブの下流に続く以下のバルブ、すなわちV11、V17、V21、V22、V23、抗凝血ポンプACP、血漿ポンプPP、プロセス中ポンプIPP、およびドナー・クランプ154を開放することができる。流体漏れ経路は、図28に想像線で示されており、漏れ経路において境界のバルブの外側にあって開放することができるバルブには、アスタリスク(*)が印されている。
【0246】
テスト対象の領域を外部の生理食塩水容器164からの生理食塩水で加圧するため、ドナー・ポンプDP1/DP2が、所定数のポンプ行程だけ運転される。このときにおいて、ドナー・ポンプ・チャンバDP1およびDP2が、生理食塩水容器164からの生理食塩水で満たされる。制御器16は、バルブV6/V7/V13/V14を閉じることによってポンプ・チャンバDP1/DP2を隔離し、容量検出によって、各チャンバのポンプ満容積を記録する。制御器16は、バルブV6およびV7を開くことによってテスト対象の領域をドナー・ポンプDP1/DP2に対して開き、流体をテスト領域へと移動させるため、ドナー・ポンプ・チャンバDP1およびDP2を所定の短縮された押し時間にわたって閉じる。次に制御器16は、バルブV6およびV7を閉じてサンプル遅延期間にわたって待機する。次いで制御器16は、容量センサの読み取り値を取得する。いずれかのポンプ・チャンバにおいて最終の値がしきい値(空のチャンバの上方の基準体積を代表することができる)よりも小さい場合、テスト領域への流体の漏れが生じており、警報が生成される。両方のポンプ・チャンバについて、最終の値がしきい値(空のチャンバの上方の基準体積を代表することができる)以上である場合、流体の漏れは生じておらず、テストが続行される。
【0247】
他のテスト領域の完全性を、次のバルブ、すなわちV4、V13、V14、V15、およびV20を開くことによってテストすることができ、これらのバルブが、さらに他のテスト領域を生成するために開かれる。図29は、このテスト領域を太い実線で示している。先のテスト領域におけるのと同様、境界のバルブの下流に続く以下のバルブ、すなわちV3、V5、V10、V11、V21、V22、V23、抗凝血ポンプACP、血漿ポンプPP、プロセス中ポンプIPP、およびドナー・クランプ154を、漏れ経路を生成するために開放することができる。流体漏れ経路は、図29に太い想像線で示されており、漏れ経路において境界のバルブの外側にあって開放することができるバルブには、アスタリスク(*)が印されている。
【0248】
臍帯100を通過させることによって、テスト対象の領域をプロセス中容器158からの生理食塩水で加圧するため、ドナー・ポンプDP1/DP2が、所定数のポンプ行程だけ運転される。このときにおいて、ドナー・ポンプ・チャンバDP1およびDP2が、生理食塩水で満たされる。制御器16は、バルブV6/V7/V13/V14を閉じることによってポンプ・チャンバDP1/DP2を隔離し、容量検出によって、各チャンバのポンプ満容積を記録する。制御器16は、バルブV13およびV14を開くことによってテスト対象の領域をドナー・ポンプに対して開き、流体をテスト領域へと移動させるため、ドナー・ポンプ・チャンバDP1およびDP2を所定の短縮された押し時間にわたって閉じる。次に制御器16は、バルブV13およびV14を閉じてサンプル遅延期間にわたって待機する。次いで制御器16は、容量センサの読み取り値を取得する。いずれかのポンプ・チャンバにおいて最終の値がしきい値(空のチャンバの上方の基準体積を代表することができる)よりも小さい場合、テスト領域への流体の漏れが生じており、警報が生成される。両方のポンプ・チャンバについて、最終の値がしきい値(空のチャンバの上方の基準体積を代表することができる)以上である場合、流体の漏れは生じておらず、この代表的な実施例の3段階テストが完結する。
【0249】
当然ながら、他のテスト領域を、上記理論的説明に従って設定し、テストしてもよい。
【0250】
一式のカセット完全性テストに続き、静脈穿刺およびシステム10を使用した血液処理を進めることができる。
【0251】
(VIII.結論)
本発明の多数の特徴を、それらの保存および血液成分治療のための全血の構成部分への分離における使用を説明することによって示した。これは、本発明が、これらの血液処理手順の実行における使用に、よく適合しているためである。しかしながら、本発明の特徴が他の処理手順における使用についても等しく役に立つことを、理解すべきである。
【0252】
例えば、プログラム可能なカセットを血液処理チャンバと組み合わせて利用する前記システムおよび方法は、手術の際の血球の洗浄または回収の目的に使用することができ、治療上の血漿交換の実施の目的に使用することができ、あるいは血液が処理のために体外の経路を循環する他の任意の手順に使用することができる。さらに、前記システムおよび方法は、血管循環系から引き出した人間または動物の血液の処理には限られず、血管循環系外で生成され、細胞血液成分または天然の発生源から遺伝子技術によって生成されあるいは採取された物質を含んでいる懸濁液を処理または分離するためにも使用することができる。
【0253】
本発明の特徴は、以下の特許請求の範囲に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0254】
【図1】図1は、血液処理のために理想的に適合された、流体処理システムの斜視図であり、このシステムは、血液処理デバイス(輸送および貯蔵のための閉じた状態で示される)ならびに使い捨て液体および血液流れセットを備え、これは、血液処理デバイスと相互作用して、1つ以上の血液成分の分離および制御を引き起こす(使用前の輸送および貯蔵のためのトレイ内にパッケージされて示される)。
【図2】図2は、作動のための開状態で示される、図1に示される血液処理デバイスの斜視図である。
【図3】図3は、図2に示される血液処理デバイスの斜視図であり、遠心ステーションが、血液処理チャンバを受容するために開いており、そしてポンプおよびバルブステーションが開いて、流体圧作動式カセットを受容する。
【図4】図4は、図3に示される血液処理デバイスの斜視図であり、トレイが、デバイス上の流れセットを装填するために配置された、使い捨て液体および血液流れセットを収容する。
【図5】図5は、液体および血液流れセットが使用のためにデバイスに装填された後の、図2に示される血液処理デバイスの右側斜視図である。
【図6】図6は、液体および血液流れセットが使用のためにデバイスに装填された後の、図2に示される血液処理デバイスの左側斜視図である。
【図7】図7は、図5および6に示される液体および血液流れセットの一部分を形成する臍に取り付けられた、血液処理チャンバの斜視図である。
【図8】図8は、図7に示される型の血液処理チャンバの例示的な実施形態の内部の斜視図であり、このチャンバの内部は、図5および6に示されるデバイスを使用する、赤血球分離および収集手順を実施するように構成されている。
【図9】図9は、図5および6に示されるデバイスの遠心分離ステーションの内部の斜視図であり、このステーションのドアは、図7に示される型の血液処理チャンバを受容するように、開いている。
【図10】図10は、図7に示される型の血液処理チャンバが、使用のために装填された後の、図9に示される円深部Rにステーションの内部の斜視図である。
【図11A】図11Aは、図7に示される臍によって備えられる備品の拡大斜視図であり、図5および6に示されるデバイスの一部分を形成する光学感知ステーションとの素の意図される付随を示す。
【図11B】図11Bは、図11Aに示される光学感知ステーションの側断面図である。
【図11C】図11Cは、図11Aに示される光学感知ステーションの分解斜視図である。
【図11D】図11Dは、図11Aに示される光学感知ステーションの上面図である。
【図11E】図11Eは、図11Aに示される光学感知ステーションに付随して使用され得る回路の概略図である。
【図11F】図11Fは、図11Aに示される光学感知ステーションに付随して使用され得る回路の概略図である。
【図12】図12は、図7に示される型の血液処理チャンバの内部の模式図であり、赤血球層、血漿層、および中間のバフィコート層への全血の分離を示し、これらの層の分離は、所望の関係で示される。
【図13】図13は、バフィコート層が低G壁の非常に近くに移動しており、収集されている血漿内にバフィコート成分を吐き出す、望ましくない過剰漏出状態を生じている、図7に示される型の血液処理チャンバの内部の模式図である。
【図14】図14は、バフィコート層が、高G壁の非常に近くに移動しており、収集されている赤血球のヘマトクリットの減少を導く、望ましくないか過少漏出状態を生じている、図7に示される型の血液処理チャンバの内部の模式図である。
【図15】図15は、図5および6に示される液体および血液流れセットの一部分を形成する、流体圧作動式カセットの分解斜視図であり、図5および6に同様に示されるデバイス上のポンプおよびバルブステーションに作動可能に付随しており、これは、正および負の空気圧をカセットに付与して、このカセットを通して液体および血液を循環させる。
【図16】図16は、図15に示されるカセットにおいて実施され得る流体回路の概略図であり、異なる血液処理および収集手順の実施を可能にする。
【図17】図17は、図17に示される流体回路が実施されるカセットの平面図である。
【図18】図18は、図7に示される型の血液処理チャンバの例示的な実施形態の内部の上面斜視図であり、このチャンバの内部は、図5および6に示されるデバイスを使用して、血漿の分離および収集手順を実施するように構成されている。
【図19】図19は、図18に示される血液処理チャンバの底面斜視図である。
【図20】図20は、図18に示される血液処理チャンバにおける内部領域の拡大側面斜視図であり、血漿からの分離経路内の分離ゾーンから赤血球を方向付ける、テーパ状の表面を有する障壁を示す。
【図21】図21は、図20に示される領域の拡大底面斜視図であり、障壁によって分離ゾーンから方向付けられる際に赤血球がとる経路を示す。
【図22】図22は、図20に示される領域の拡大上面斜視図であり、障壁によって分離ゾーンから方向付けられる際に赤血球および血漿がとる分離経路を示す。
【図23】図23は、血漿収集手順のために使用され得る遠心分離器内の、液体および血液流れセットに結合された、図16および17に示される型のカセットの概略図である。
【図24】図24は、図16および17に示される型のカセットの概略図であり、二重ユニット赤血球収集手順のために使用され得る遠心分離機において、液体および血液流れセットに結合されており、この血液流れセットはまた、図5および6に示されており、血液処理デバイスに装填された後である。
【図25A】図25Aは、空気を制御された様式で移送するための、正および負の空気圧の適用によって条件付けられる、図16に示される流体回路の概略図であり、この様式は、ドナーへおよびドナーから血液および液体を運ぶために挿入されたチュービングが、図5および6に示されるように、デバイスに適切に設置されたことを検証する。
【図25B】図25Bは、空気を制御された様式で移送するための、正および負の空気圧の適用によって条件付けられる、図16に示される流体回路の概略図であり、この様式は、ドナーへおよびドナーから血液および液体を運ぶために挿入されたチュービングが、図5および6に示されるように、デバイスに適切に設置されたことを検証する。
【図26A】図26Aは、空気を制御された様式で移送するための、正および負の空気圧の適用によって条件付けられる、図16に示される流体回路の概略図であり、この様式は、ドナーから引き抜かれた血液中に抗凝固剤を運ぶために挿入されたチュービングが、図5および6に示されるように、デバイスに適切に設置されたことを検証する。
【図26B】図26Bは、空気を制御された様式で移送するための、正および負の空気圧の適用によって条件付けられる、図16に示される流体回路の概略図であり、この様式は、ドナーから引き抜かれた血液中に抗凝固剤を運ぶために挿入されたチュービングが、図5および6に示されるように、デバイスに適切に設置されたことを検証する。
【図27】図27は、液体を制御された様式で移送するための、正および負の空気圧の適用によって条件付けられる、図16に示される流体回路の概略図であり、この様式は、使用前のカセットの物理的一体性を検証する。
【図28】図28は、液体を制御された様式で移送するための、正および負の空気圧の適用によって条件付けられる、図16に示される流体回路の概略図であり、この様式は、使用前のカセットの物理的一体性を検証する。
【図29】図29は、液体を制御された様式で移送するための、正および負の空気圧の適用によって条件付けられる、図16に示される流体回路の概略図であり、この様式は、使用前のカセットの物理的一体性を検証する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理システムであって、以下:
分離デバイスであって、該分離デバイスは、使用の際に、血液または赤血球含有懸濁液からの赤血球の分離を包含する分離プロセスを実施する、分離デバイス、
該分離デバイスに結合された出口ラインであって、該出口ラインは、該分離プロセスが行われている間に、少なくとも部分的に、赤血球を該分離デバイスから除去するためのものである、出口ライン、
該出口ラインに付随するセンサであって、該センサは、該分離デバイスから除去される赤血球のヘマトクリットを感知し、そして感知されたヘマトクリット出力を生成する、センサ、および
該分離デバイスに結合された制御器であって、該分離デバイスからの赤血球の除去を、少なくとも部分的に、該感知されたヘマトクリット出力に基づいて制御する、制御器、
を備える、処理システム。
【請求項2】
前記分離デバイスが、遠心分離場を発生させることによって、前記分離プロセスを実施する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記制御器が、前記出口ラインにおける赤血球の流量を、少なくとも部分的に、前記感知されたヘマトクリット出力に基づいて調節することによって、赤血球の除去を制御する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記制御器が、前記感知されたヘマトクリット出力を、予め決定された赤血球ヘマトクリット値と比較し、そして少なくとも部分的に、該比較に基づいて、赤血球の除去を制御する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記制御器が、前記感知されたヘマトクリット出力と、予め決定された赤血球ヘマトクリット値との間の偏差をモニタリングし、そして該偏差に少なくとも部分的に基づいて、赤血球の除去を制御する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記制御器が、前記赤血球の除去を、少なくとも部分的に、前記偏差の大きさに基づいて制御する、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記制御器が、赤血球の除去を、少なくとも部分的に、経時的な前記偏差の変化に基づいて制御する、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記センサが、前記分離デバイスから除去される赤血球のヘマトクリットを光学的に感知して、前記感知されたヘマトクリット出力を生成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
処理システムであって、以下:
分離デバイスであって、該分離デバイスは、使用の際に、血液または赤血球および血漿を含有する懸濁液からの、赤血球および血漿の分離を包含する分離プロセスを実施する、分離デバイス、
該分離デバイスに結合された入口ラインであって、該分離プロセスが行われている間に、少なくとも部分的に、該血液または懸濁液を該分離デバイスに、制御された流量Qbで運ぶための、入口ライン、
該分離デバイスに結合された血漿出口ラインであって、該分離プロセスが行われている間に、少なくとも部分的に、制御された血漿流量Qpで、該分離デバイスから血漿を運ぶための、血漿出口ライン、
該分離デバイスに結合された赤血球出口ラインであって、該分離プロセスが行われている間に、少なくとも部分的に、赤血球流量Qrbcにて、赤血球を該分離デバイスから除去するためのものであり、ここで、Qrbc=Qb−Qpである、赤血球出口ライン、
該出口ラインに付随するセンサであって、該デバイスから除去される赤血球のヘマトクリットを感知し、そして感知されたヘマトクリット出力を生成するための、センサ、ならびに
該分離デバイスに結合された制御器であって、該感知されたヘマトクリット出力に少なくとも部分的に基づいて、QbとQpとの間の比を制御するための、制御器、
を備える、処理システム。
【請求項10】
前記分離デバイスが、遠心分離場を発生させることによって、前記分離プロセスを実施する、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記制御器が、Qbを、選択された大きさに設定し、そしてQpを、前記比を制御するように変動させる、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記制御基が、前記比を、前記感知されたヘマトクリット出力と、予め決定された赤血球ヘマトクリット値との間の偏差に少なくとも部分的に基づいて制御する、請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
前記制御器が、前記比を、前記偏差の大きさに少なくとも部分的に基づいて制御する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記制御器が、前記比を、経時的な前記偏差の変化に少なくとも部分的に基づいて制御する、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記センサが、前記分離デバイスから除去される赤血球の前記ヘマトクリットを光学的に感知し、そして前記感知されたヘマトクリット出力を生成する、請求項9に記載のシステム。
【請求項16】
処理方法であって、以下の工程:
血液または赤血球含有懸濁液からの、赤血球の分離を包含する、分離プロセスを実施する工程、
該分離プロセスが行われている間に、少なくとも部分的に、該分離デバイスから赤血球を除去する工程、
該分離デバイスから除去される赤血球のヘマトクリットを感知して、感知されたヘマトクリット出力を生成する工程、ならびに
該分離デバイスからの赤血球の除去を、該感知されたヘマトクリット出力に少なくとも部分的に基づいて制御する工程、
を包含する、方法。
【請求項17】
前記分離プロセスが、遠心分離場を発生させる工程を包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記制御する工程が、前記分離デバイスから除去される赤血球の流量を、前記感知されたヘマトクリット出力に少なくとも部分的に基づいて調節する工程を包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記制御する工程が、前記感知されたヘマトクリット出力を、予め決定された赤血球ヘマトクリット値と比較する工程、および該比較に少なくとも部分的に基づいて、赤血球の除去を制御する工程を包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記制御する工程が、前記感知されたヘマトクリット出力と、予め決定された赤血球ヘマトクリット値との間の偏差をモニタリングし、そして該偏差に少なくとも部分的に基づいて、赤血球の除去を制御する工程を包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記制御する工程が、前記偏差の大きさに少なくとも部分的に基づいて、赤血球の除去を制御する工程を包含する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記制御する工程が、経時的な前記偏差の変化に少なくとも部分的に基づいて、赤血球の除去を制御する工程を包含する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記感知する工程が、前記分離デバイスから除去される赤血球のヘマトクリットを光学的に感知して、前記感知されたヘマトクリット出力を生成する工程を包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
処理方法であって、以下の工程:
分離でデバイスを用いて分離プロセスを実施する工程であって、赤血球および血漿の、血液または赤血球および血漿を含有する懸濁液からの分離を包含する、工程、
該分離プロセスが行われている間に、少なくとも部分的に、血液または懸濁液を、該分離デバイスに、制御された血液流量Qbで運ぶ工程、
該分離プロセスが行われている間に、少なくとも部分的に、血漿を、該分離デバイスから、制御された血漿流量Qpで運ぶ工程、
該分離プロセスが行われている間に、少なくとも部分的に、赤血球を、該分離デバイスから、赤血球流量Qrbcで除去する工程、であって、ここで、Qrbc=Qb−Qpである、工程、
該分離デバイスから除去された赤血球のヘマトクリットを感知して、感知されたヘマトクリット出力を生成する工程、ならびに
QbとQpとの間の比を、前記感知されたヘマトクリット出力に少なくとも部分的に基づいて、制御する工程、
を包含する、方法。
【請求項25】
前記分離プロセスが、遠心分離場を発生させる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記制御する工程が、Qbを選択された大きさに設定し、そしてQpを変動させて、前記比を制御する工程を包含する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記制御する工程が、前記比を、前記感知されたヘマトクリット出力と予め決定された赤血球のヘマトクリット値との間の偏差に少なくとも部分的に基づいて制御する工程を包含する、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記制御する工程が、前記比を、前記偏差の大きさに少なくとも部分的に基づいて制御する工程を包含する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記制御する工程が、前記比を、経時的な前記偏差の変化に少なくとも部分的に基づいて制御する工程を包含する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記感知する工程が、前記分離デバイスから除去される赤血球のヘマトクリットを光学的に感知し、前記感知されたヘマトクリット出力を生成する工程を包含する、請求項24に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11E】
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【図11F】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25A】
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【図25B】
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【図26A】
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【図26B】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公表番号】特表2006−517805(P2006−517805A)
【公表日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−546960(P2004−546960)
【出願日】平成15年10月21日(2003.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2003/033311
【国際公開番号】WO2004/037377
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【Fターム(参考)】