説明

走査型画像表示装置

【課題】画像非表示状態において、共振型偏向素子の共振周波数追従制御や駆動電圧による振幅制御にかかる消費電力を抑えることができる走査型画像表示装置を提供する。
【解決手段】光束を出射する光源部と、共振型偏向素子を備えた走査部と、共振型偏向素子の偏向面の揺動状態を検出する揺動状態検出部と、駆動信号の周波数を制御する駆動周波数制御部と、駆動信号の電圧を制御する振幅制御部と、を備え、画像信号の出力が停止した画像非表示状態では、駆動周波数制御部を機能させた状態で振幅制御部の機能を停止し、偏向面の揺動振幅が所定の振れ角になるまで、駆動信号の電圧を小さくすることを特徴とする走査型画像表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型画像表示装置に関し、詳しくは、入射する光束を偏向する偏向面を有し、偏向面が共振により軸周りに揺動する共振型偏向素子によって光束を走査する走査型画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の走査型画像表示装置として、光源部から出射された光束を2次元走査する走査部と、この走査部で走査された光束を被投射対象に投射する投射部とを備え、被投射対象であるスクリーンや眼の網膜に画像を形成させるようにしたものが知られている。
【0003】
上記走査部の構成としては、入射する光束を偏向する偏向面を有し、共振により偏向面を軸周りに揺動させることで、光源部から出射された光束を高速に走査する共振型偏向素子を具備している。つまり、共振型偏向素子固有の共振周波数で共振型偏向素子を駆動することで、共振型偏向素子の偏向面を所定の振れ角で揺動させて、光源部から出射された光束を所定走査範囲に高速走査している。また、このような共振型偏向素子を備えた走査型画像表示装置では、安定した画像を形成するために最適な共振周波数で共振型偏向素子を駆動する必要がある。
【0004】
そこで、本願出願人は、光走査素子を位相同期制御することにより、光走査素子の共振周波数を高精度で調整(以下、共振周波数追従制御という)するとともに、光走査素子の駆動電圧による振幅制御を行う画像表示装置を提案している(例えば、特許文献1参照)。また、共振型の振動ミラーの経時変化や温度変化などによる環境変化に応じた共振周波数の急激な変化を想定して、振動ミラーの共振周波数をずらしておく技術も提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−089932号公報
【特許文献2】特開2009−003459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した共振型偏向素子を有する走査型画像表示装置では、起動時に共振型偏向素子の偏向面が所定の振れ角で揺動するように駆動周波数や駆動電圧を調整(以下、共振周波数のサーチ制御という)している。そして、一旦起動した後は、上述した共振型偏向素子の共振周波数追従制御や駆動電圧による振幅制御を行い、共振型偏向素子の偏向面が所定の振れ角で揺動するように調整している。
【0007】
ところが、上記引用文献1及び2のような従来の走査型画像表示装置では、光源部から画像信号が出射されない状態(以下、画像非表示状態、スタンバイモードという)でも、共振型偏向素子の共振周波数追従制御や駆動電圧による振幅制御を行っている。つまり、画像非表示状態では、画像信号が出射されない分省電力は図れるものの、画像信号が出射されている時(以下。画像表示状態という)と同じ共振型偏向素子の共振周波数追従制御や駆動電圧による振幅制御を行っているので電力を消費してしまう。
【0008】
そこで、画像非表示状態時に共振型偏向素子の共振周波数追従制御や駆動電圧による振幅制御を停止すると、その分の消費電力を削減することはできる。しかしながら、振型偏向素子の共振周波数追従制御を停止してしまうと、画像表示状態に復帰した場合に、再度起動時と同様の共振周波数のサーチ制御を行わなければならず、画像表示状態への復帰に時間がかかってしまう。
【0009】
本発明は、画像非表示状態において、共振型偏向素子の共振周波数追従制御や駆動電圧による振幅制御にかかる消費電力を抑えるとともに、画像非表示状態から画像表示状態への復帰が短時間で行える走査型画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、画像信号に応じた強度の光束を出射する光源部と、前記光源部から入射する光束を偏向する偏向面を有し、共振により前記偏向面が揺動する共振型偏向素子を備えた走査部と、前記偏向面の揺動状態を検出する揺動状態検出部と、前記共振型偏向素子の前記偏向面が共振により揺動するように駆動信号にて駆動した後、前記偏向面の揺動状態を示す信号と、前記駆動信号との位相差が所定範囲内になるように前記駆動信号の周波数を制御する駆動周波数制御部と、前記偏向面の揺動振幅を所定範囲内に維持するように、前記駆動信号の電圧を制御する振幅制御部と、を備え、前記画像信号の出力が停止した画像非表示状態では、前記駆動周波数制御部を機能させた状態で前記振幅制御部の機能を停止し、前記偏向面の揺動振幅が所定の振れ角になるまで、前記駆動信号の電圧を小さくすることを特徴とする走査型画像表示装置とした。
【0011】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の走査型画像表示装置において、前記画像非表示状態で前記駆動信号の電圧を小さくする場合は、前記駆動周波数制御部において、前記偏向面の揺動状態を示す信号と、前記駆動信号との位相差が所定範囲内になったことを確認した後に、前記駆動信号の電圧を小さくすることを特徴とする。
【0012】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の走査型画像表示装置において、前記共振型偏向素子の特性に応じて、前記画像非表示状態の前記偏向面の揺動振幅の所定の振れ角を変更することを特徴とする。
【0013】
また、請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の走査型画像表示装置において、前記画像非表示状態では、前記駆動周波数制御部を機能させた状態で前記振幅制御部の機能を停止し、前記偏向面の揺動振幅が所定の振れ角になるまで、前記駆動信号の電圧を段階的に小さくすることを特徴とする。
【0014】
また、請求項5に係る発明は、請求項4に記載の走査型画像表示装置において、前記共振型偏向素子の特性に応じて、前記画像非表示状態での前記駆動信号の電圧を段階的に小さくする電圧の幅を変更することを特徴とする。
【0015】
また、請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の走査型画像表示装置において、前記画像非表示状態から前記画像信号が出力される画像表示状態に復帰させる場合には、前記振幅制御部を機能させて、前記偏向面の揺動状態を所定範囲内に復帰させるための前記駆動信号の電圧を、前記画像表示状態とするのに必要な電圧にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、走査型画像表示装置の画像非表示状態における共振型偏向素子の共振周波数追従制御を行いながら消費電力の省電力化を図ることができ、なおかつ、画像非表示状態から画像表示状態へ短時間で復帰することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る走査型画像表示装置の構成の一部を示す図である。
【図2】共振型偏向素子の構成を示す図である。
【図3】共振型偏向素子の特性を示す図である。
【図4】共振型偏向素子の特性を示す図である。
【図5】共振型偏向素子の特性を示す図である。
【図6】共振型偏向素子の特性を示す図である。
【図7】偏向面の揺動振幅(振れ角)と偏向面との位相差との関係を示す図である。
【図8】共振型偏向素子の消費電力の変化を示す図である。
【図9】駆動制御部の処理の流れを示す図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る走査型画像表示装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る走査型画像表示装置について図面を参照して具体的に説明する。
【0019】
本実施形態に係る走査型画像表示装置1は、図1に示すように、駆動制御部10、直流電圧重畳部40、共振型偏向素子50、光源60、BDセンサ70と、さらには図示しない投影部を有している。なお、BDセンサ70は、共振型偏向素子50の偏向面52の揺動状態を検出する揺動状態検出部として機能する。
【0020】
図1に示すように、駆動制御部10は、共振型偏向素子50を駆動する駆動信号Sig1を生成する駆動手段であり、周波数決定部11と、振幅決定部12と、駆動信号生成部13とを有している。駆動信号生成部13は、周波数決定部11及び振幅決定部12により決定された周波数Fo及び駆動電圧Vpの駆動信号Sig1を生成して出力する。
【0021】
直流電圧重畳部40は、直流電圧印加部41と、信号重畳回路42とを有している。そして、駆動制御部10から出力された駆動信号Sig1に、信号重畳回路42により、直流電圧印加部41で生成された直流電圧が重畳されて、共振型偏向素子50の駆動部51に印加される。共振型偏向素子50の偏向面52は、直流電圧に重畳された駆動信号Sig1に基づいて揺動する。なお、駆動部51は、例えば圧電素子などにより構成される。
【0022】
ここで、図2を用いて共振型偏向素子50の具体的な構成の一例を示す。共振型偏向素子50は、薄板状のメタル基板上に形成されたMEMSである。また、メタル基板として、アルミ基板、銅基板、鉄基板などがある。図2に示す例では、共振型偏向素子50は、駆動部51と、偏向面(反射ミラー)52と、枠体53と、梁部54,54とを有して構成されている。そして、駆動部51に直流電圧に重畳された駆動信号Sig1が印加され、この駆動部51の変位により、駆動信号Sig1に応じた周波数で、枠体53と梁部54,54と偏向面52とが振動し、揺動軸Lcを中心として、偏向面52が軸周りに揺動する。なお、以下においては、偏向面52の揺動振幅とは、偏向面52の回転角度範囲であり、偏向面52の振れ角である。
【0023】
なお、本実施形態においては、共振型偏向素子50を薄板状のメタル基板上に形成されたMEMSとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、シリコンなどの素材を共振型偏向素子50に用いてもよい。すなわち、所定の電圧で駆動信号Sig1を印加することにより、共振による揺動が発生して所定範囲の振れ角を得られるものであれば、共振型偏向素子50として用いることができる。
【0024】
図3に、ある温度で所定振幅の駆動信号Sig1をその周波数を変化させながら入力したときの共振型偏向素子50の偏向面52の揺動振幅特性を示す。共振型偏向素子50では、駆動信号Sig1の周波数を上昇(以下、アップスイープという)させていったときの振幅特性と、駆動信号Sig1の周波数を下降(以下、ダウンスイープという)させていったときの振幅特性が異なっている。図3においては、駆動信号Sig1の周波数をダウンスイープさせたときの特性を実線で示し、駆動信号Sig1の周波数をアップスイープさせたときの特性を破線で示す。
【0025】
そして、図3に示すように、アップスイープ及びダウンスイープともに、少しの周波数の変化に応じて、急激に偏向面52の揺動振幅が変化する跳躍現象が発生する箇所が存在する。つまり、ダウンスイープにおける駆動信号Sig1の共振周波数Fsは、その周波数を小さくしたところに急激に偏向面52の揺動振幅が変化する跳躍現象が発生する箇所が存在する。そのため、周囲温度等の変化により共振型偏向素子50の共振周波数Fsが変化した場合には、共振型偏向素子50を駆動する駆動信号Sig1の周波数も追従して変更しなければ、偏向面52の揺動振幅が急激に小さくなる恐れがある。
【0026】
そこで、本実施形態に係る走査型画像表示装置1では、所定振幅の駆動信号Sig1の周波数を変化させながら共振型偏向素子50固有の共振周波数Fsを判定し、図4に示すように、共振周波数Fsから所定周波数ΔFだけ高い周波数Foの駆動信号Sig1で共振型偏向素子50を駆動するようにしている。
【0027】
このようにすることで、図5に示すように、温度変化等により共振型偏向素子50の特性が、実線で示す特性から波線で示す特性に変化したときでも、跳躍現象による偏向面52の揺動振幅が小さくなることを抑えることができる。すなわち、駆動信号Sig1の周波数Foを、共振型偏向素子50固有の共振周波数Fsから所定周波数ΔFだけ高い周波数とすることで、温度変化などによる特性変化に対してマージンをとることができる。
【0028】
また、共振型偏向素子50の特性は、駆動信号Sig1の駆動電圧Vpによっても変化する。図6は、共振型偏向素子50の特性を、駆動信号Sig1の駆動電圧Vp毎(5V,7V,11.5V,13V)に示した図である。同図からわかるように、駆動信号Sig1の駆動電圧Vpによって揺動振幅も異なるが、共振型偏向素子50の共振周波数Fsも異なるものとなる。つまり、駆動信号Sig1の駆動電圧Vpを小さくすると、揺動振幅の振れ角は小さくなり、共振型偏向素子50の共振周波数Fsは高くなる。
【0029】
従って、駆動信号Sig1の周波数を決定した後に、駆動信号Sig1の駆動電圧Vpを変化させると、偏向面52の揺動振幅が変化する。特に、駆動信号Sig1の駆動電圧Vpを大きく変化させると、偏向面52の揺動振幅の変化が大きくなり、駆動信号Sig1の周波数が共振周波数Fsから外れて偏向面52の揺動振幅が急激に小さくなる恐れがある。
【0030】
そこで、本実施形態に係る走査型画像表示装置1では、画像信号Sが出力されていない状態(以下、画像非表示状態という)では、駆動信号Sig1の駆動電圧Vpを所定の幅(例えば、1V)で段階的に小さくして省電力化を図っている。そして、段階的に小さくした駆動電圧Vpに応じた偏向面52の揺動振幅が、所定範囲内に維持するように共振周波数追従を行っている。このようにすることで、駆動信号Sig1の駆動電圧Vpの変化によって、偏向面52の揺動振幅が急激に小さくなる跳躍現象が発生することを抑制することができる。
【0031】
本実施形態に係る走査型画像表示装置1では、画像信号Sが出力されている状態(以下、画像表示状態という)では、図7に示すように、駆動信号Sig1の信号波形と偏向面52の揺動状態を示す信号波形との位相差が所定範囲内になるように、駆動信号Sig1の周波数を調整する共振周波数追従を行い、さらに精度よく偏向面52を揺動するようにしている。すなわち、上述のように駆動信号Sig1の周波数Foを決定(図7(a)参照)し、偏向面52の揺動振幅を所定振幅に調整した後に、位相差が所定範囲Z内(図7(b)参照)から外れたときには、位相差が所定範囲Z内になるように駆動信号Sig1の周波数を調整する。
【0032】
偏向面52の揺動振幅を一定に保つために駆動信号Sig1の駆動電圧Vpを変更する振幅制御は、位相差が所定範囲Z内であることを確認してから行うようにしている。すなわち、共振周波数追従を、振幅制御よりも優先して行うようにしている。このようにすることでさらに精度よく偏向面52を揺動することができる。
【0033】
このように走査型画像表示装置1が構成されているため、画像表示状態においては、跳躍現象により偏向面52の揺動振幅が急激に小さくなることを抑制しながら走査型画像表示装置1の環境変化に合わせた共振型偏向素子50の駆動を行うことが可能となる。また、本実施形態においては、画像非表示状態においては、振幅制御の機能を停止して、駆動信号Sig1の駆動電圧Vpを所定の幅で段階的に小さくすることで省電力化を図っている。
【0034】
上述した動作を行うために、図1に示す周波数決定部11、振幅決定部12、駆動信号生成部13、直流電圧重畳部40は以下のように構成されている。
【0035】
周波数決定部11は、走査型画像表示装置1の起動時には、共振型偏向素子50固有の共振周波数Fsを検出し、この共振周波数Fsに対して所定周波数ΔFだけ高い周波数を駆動信号Sig1の周波数Foとして決定する。その後、起動中には、周波数決定部11は、駆動信号Sig1と共振型偏向素子50の揺動状態を示すBDセンサ70の信号との位相差を検出し、その位相差が所定範囲Z内になるように駆動信号Sig1の周波数Foを増減する。
【0036】
本実施形態における周波数決定部11は、共振型偏向素子50固有の共振周波数Fsを検出し、駆動信号Sig1と共振型偏向素子50の揺動状態との位相差が所定範囲Z内になるようにする駆動周波数制御部として機能する。
【0037】
この周波数決定部11は、位相差判定部21と、目標位相差記憶部22と、位相差比較部23と、周波数変更制御部24とを有している。
【0038】
位相差判定部21は、駆動信号Sig1の信号波形と偏向面52の揺動波形との位相差を判定する。BDセンサ70は偏向面52が所定の傾き角にあるときに光源60から出射された光束を入射して検出信号(以下、BD信号という)を出力している。このBDセンサ70は、共振型偏向素子50の偏向面52の揺動状態を検出する揺動状態検出部として機能する。
【0039】
位相差判定部21は、BDセンサ70からのBD信号の出力タイミングに基づき、偏向面52の傾き角の状態を検出し、駆動信号Sig1の波形と偏向面52の揺動波形との位相差を判定する。なお、位相差判定部21において、例えば、偏向面52の傾き角が+Xから−Xへ向かうときに傾き角が0になるタイミングと、駆動信号Sig1が正電圧から負電圧に向かうときに電圧が0Vとなるタイミングとを検出し、これらのタイミングの関係から、位相差を判定するようにしてもよい。なお、正電圧の駆動信号を駆動部51に印加したときに、偏向面52の傾き角が+X方向になるものとする。
【0040】
目標位相差記憶部22は、起動許容できる位相差の範囲である所定範囲Zの情報が記憶されている。位相差比較部23は、位相差判定部21から位相差を取得すると共に、目標位相差記憶部22から所定範囲Zの情報を取得し、位相差が所定範囲Z内にあるか否かを判定する。なお、目標位相差記憶部22に記憶されている所定範囲Zは、その所定範囲Zが極めて狭い場合があり、この場合は、所定範囲ではなく所定の値つまり位相差の目標値であってもよい。
【0041】
周波数変更制御部24は、位相差が所定範囲Z内にないときに、位相差判定部21から出力される位相差が所定範囲Zの上限値より大きければ、位相差判定部21から出力される位相差が所定範囲Zの下限値より小さくなるまで、駆動信号生成部13を制御して駆動信号Sig1の周波数を上げる。その後、周波数変更制御部24は、位相差判定部21から出力される位相差が90[deg]になるまで、駆動信号生成部13を制御して駆動信号Sig1の周波数を下げる。位相差判定部21から出力される位相差が90[deg]になったときの駆動信号Sig1の周波数が共振周波数Fsである。従って、周波数変更制御部24は、位相差判定部21から出力される位相差が90[deg]になったときの駆動信号Sig1の周波数を共振周波数Fsとして判定する。
【0042】
また、周波数変更制御部24は、位相差が所定範囲Z内にないときに、位相差判定部21から出力される位相差が所定範囲Zの下限値より小さければ、位相差判定部21から出力される位相差が90[deg]となるまで、駆動信号生成部13を制御して駆動信号Sig1の周波数を下げる。そして、周波数変更制御部24は、位相差判定部21から出力される位相差が90[deg]になったときの駆動信号Sig1の周波数を共振周波数Fsとして判定する。
【0043】
このように、周波数変更制御部24は、位相差が所定範囲Z内にないとき、駆動信号Sig1の周波数を増減させて共振周波数Fsを判定するようにしている。そして、周波数変更制御部24は、駆動信号生成部13を制御して、共振周波数Fsよりも所定周波数ΔFだけ高い周波数Foの駆動信号Sig1を駆動信号生成部13から出力させるようにしている。
【0044】
振幅決定部12は、共振型偏向素子50の偏向面52の揺動振幅が目標とする揺動振幅となるように、駆動信号生成部13から出力される駆動信号Sig1の駆動電圧Vpを制御するものであり、位相差が所定範囲Z内となったときに動作する。
なお、上述したように、位相差の所定範囲Zが極めて狭い場合は、目標位相差記憶部22の記憶する位相差の所定範囲Zは位相差の目標値となる。この場合は、位相差比較部21から位相差は取得せず、位相差比較部23の位相差の出力と目標位相差記憶部22の記憶する位相差の目標値に応じて周波数変更部24の周波数を変更することで、位相差が目標値に近づくよう制御してもよい。
【0045】
振幅決定部12は、振幅制御実行切換部31と、振幅判定部32と、目標振幅記憶部33と、振幅比較部34と、振幅変更制御部35とを有している。なお、この振幅決定部12は、画像表示状態において、上述した共振型偏向素子50を駆動する駆動信号Sig1の駆動電圧Vpを変化させる制御を行う振幅制御部として機能する。
【0046】
振幅制御実行切換部31は、位相差比較部23からの出力に基づき、振幅判定部32の動作を制御する。すなわち、振幅制御実行切換部31は、位相差が所定範囲Z内にあるときに出力される信号を位相差比較部23から受信すると、振幅判定部32を動作状態にし、位相差が所定範囲Z内にないときに出力される信号を位相差比較部23から受信すると、振幅判定部32を非動作状態にする。
【0047】
振幅判定部32は、振幅制御実行切換部31から動作状態にされたとき、BDセンサ70からのBD信号の有無やタイミングに基づき、偏向面52の揺動振幅を検出する。具体的には、振幅判定部32は、BDセンサ70からBD信号が出力されないときには、偏向面52の揺動振幅が所定範囲Z以下であると判断する。また、BDセンサ70からBD信号が出力されているとき、BDセンサ70から出力されるBD信号の間隔に基づき、偏向面52の揺動振幅を判断する。
【0048】
目標振幅記憶部33は、制御モード切換部33aと、画像表示状態時目標振幅記憶部33bと、画像非表示状態時目標振幅記憶部33cとを有している。画像表示状態時目標振幅記憶部33bは、画像表示状態における目標とする偏向面52の揺動振幅(以下、揺動振幅Xaとする)の情報を記憶している。画像非表示状態時目標振幅記憶部33cは、画像非表示状態における目標とする偏向面52の揺動振幅(以下、揺動振幅Xbとする)の情報を記憶している。
【0049】
制御モード切換部33aは、画像信号Sの出力状態に応じて、画像表示状態又は画像非表示状態における目標とする偏向面52の揺動振幅の情報を切り換える制御を行う。つまり、制御モード切換部33aは、画像信号Sが出力されている場合は、画像表示状態であるとして揺動振幅Xaを振幅比較部34へ出力する。一方、画像信号Sの出力が停止されている場合は、画像非表示状態であるとして揺動振幅Xbを振幅比較部34へ出力する。
【0050】
画像表示状態では、振幅比較部34は、振幅判定部32から偏向面52の揺動振幅(以下、揺動振幅Xrとする)の情報と、目標振幅記憶部33の画像表示状態時目標振幅記憶部33bから揺動振幅Xaの情報を取得する。そして、振幅比較部34は、揺動振幅Xrと揺動振幅Xaとの振幅差(以下、振幅差Xsとする)を求める。なお、振幅比較部34は、振幅判定部32が動作していないときには、揺動振幅Xrと揺動振幅Xaとの差がない旨の情報(Xs=0)を出力する。
【0051】
振幅変更制御部35は、振幅差Xsが所定範囲Z内となるように、駆動信号生成部13を制御して駆動信号Sig1の駆動電圧Vpを変更する。なお、振幅変更制御部35は、振幅差Xsが所定範囲Z内にあるときには、駆動信号Sig1の駆動電圧Vpの変更は行わない。
【0052】
画像非表示状態では、上述した駆動信号Sig1の駆動電圧Vpを変更する振幅制御は行わない。振幅比較部34は、制御モード切換部33aから出力された揺動振幅Xbを取得し振幅変更制御部35に出力する。
【0053】
振幅変更制御部35は、画像非表示状態時の目標の揺動振幅Xbとなるように、駆動信号生成部13を制御して駆動信号Sig1の駆動電圧Vpを変更する。なお、詳細は後述するが、振幅変更制御部35は、画像表示状態における駆動信号Sig1の駆動電圧Vpから、所定値(例えば、1V)の幅で駆動信号Sig1の駆動電圧Vpを段階的に小さくする。そして、最終的に画像非表示状態時目標振幅記憶部33cに記憶された目標の揺動振幅となる駆動信号Sig1の駆動電圧Vpまで電圧を小さくする。このように駆動信号Sig1の駆動電圧Vpを段階的に小さくする制御を行うことで、画像非表示状態における省電力化を図っている。
【0054】
ここで、図8を用いて、駆動信号Sig1の駆動電圧Vpによる消費電力の変化を説明する。なお、図8においては、駆動電圧Vpが「15V」の場合を基準として、消費電力の変化を示している。
【0055】
つまり、駆動電圧Vpが「15V」の場合が、画像表示状態における駆動電圧Vpであるとすると、駆動電圧Vpを半分の「7.4V」にすることで、消費電力を75%小さくすることができる。さらに、駆動電圧Vpを1/3の「5V」にすることで、消費電力を88.9%小さくすることができる。
【0056】
当然のことながら、駆動電圧Vpを小さくすればするほど消費電力を抑えることができる。しかし、本実施形態においては、駆動電圧Vpの変更後に、駆動信号Sig1の信号波形と偏向面52の揺動波形との位相差を所定範囲Z内に維持するための共振周波数追従を行っている。このため、駆動電圧Vpの変更は、揺動状態検出部としてのBDセンサ70が、共振型偏向素子50の偏向面52の揺動状態を検出できる範囲の駆動電圧Vpに限定される。つまり、BDセンサ70が共振型偏向素子50の偏向面52の揺動状態を確実に検出できる駆動電圧Vpまでしか駆動電圧Vpを小さくできない。
【0057】
さらに、上述したように、駆動電圧Vpを1/3の「5V」にすることで、消費電力を約90%小さくすることができ、これ以上駆動電圧Vpを小さくしても、効果的な省電力化は望めない。従って、本実施形態においては、画像非表示状態においては、画像表示状態(15V)の1/3(5V)まで、駆動電圧Vpを所定の幅(例えば、1V)で段階的に小さくする。すなわち、上述した画像非表示状態時目標振幅記憶部33cに記憶された目標の揺動振幅Xbは、駆動信号Sig1の駆動電圧Vpが5V時の揺動振幅が記憶されることになる。
【0058】
また、図8に示す消費電力は、共振型偏向素子50の振幅特性や、制御回路の構成などにより変化する。そのため、画像非表示状態時目標振幅記憶部33cには、共振型偏向素子50の振幅特性や、制御回路の構成などに応じた最適な目標の揺動振幅の情報が、走査型画像表示装置1毎に記憶されている。
【0059】
また、駆動電圧Vpを小さくする所定の幅(例えば、1V)も、主に共振型偏向素子50の揺動振幅の特性に応じて、偏向面52の揺動振幅が急激に小さくなる跳躍現象を抑えることができる幅が設定される。
【0060】
以上のように構成された走査型画像表示装置1における駆動制御部10の処理において、画像信号Sの出力状態に応じた、共振型偏向素子50の偏向面52を揺動振幅させるための制御処理を、図9を参照して説明する。なお、図9は、理解を容易にするために、処理の流れを簡略化した説明図としている。
【0061】
駆動制御部10において、共振型偏向素子50の駆動を開始すると、まず、周波数決定部11において、位相差判定部21と位相差比較部23とがその動作を開始する。位相差判定部21は、駆動信号Sig1の信号波形と偏向面52の揺動波形との位相差を計測する(ステップS11)。この位相差は、位相差比較部23において、目標位相差記憶部22から取得した所定範囲Zと比較され、位相差が所定範囲Z内にあるか否かを判定される(ステップS12)。
【0062】
位相差が所定範囲Z内にないときは(ステップS12:No)、駆動制御部10において駆動周波数変更処理が実行される(ステップS13)。この駆動周波数変更処理では、周波数変更制御部24は、駆動信号Sig1の周波数を増減させて共振周波数Fsを検出する。すなわち、周波数変更制御部24は、駆動信号Sig1の周波数を増減させていき、位相差判定部21から出力される位相差が90[deg]になったときの駆動信号Sig1の周波数を共振周波数Fsとして判定する。そして、周波数変更制御部24は、駆動信号生成部13を制御して、共振周波数Fsよりも所定周波数ΔFだけ高い周波数Foの駆動信号Sig1を駆動信号生成部13から出力させる。この駆動周波数変更処理は、上述した共振周波数追従を行うための処理である。そして、この処理が終了するとステップS11へ処理を移す。
【0063】
一方、位相差が所定範囲Z内にあるとき(ステップS12:Yes)、周波数変更制御部24から出力される信号に基づき、振幅制御実行切換部31は振幅判定部32を動作状態にし、振幅判定部32により偏向面52の揺動振幅を計測する(ステップS14)。そして、目標振幅記憶部33の制御モード切換部33aが画像非表示状態か否かを判定する(ステップS15)。ここで判定される画像非表示状態は、上述したように制御モード切換部33aが画像信号Sの出力状態に応じて画像表示状態の揺動振幅Xa又は画像非表示状態の揺動振幅Xbの何れの揺動振幅を目標値として出力しているかを判定する。
【0064】
画像非表示状態ではないとき(ステップS15:No)、つまり、画像表示状態であるときは、画像非表示状態からの復帰直後であるか否かを判定する(ステップS16)。このステップS16の処理では、現在の駆動信号Sig1の駆動電圧Vpを取得し、画像表示状態の揺動振幅Xaに応じた駆動電圧Vpと比較して、電圧に差があった場合は、画像非表示状態から画像表示状態への復帰直後であると判定する。そして、画像非表示状態からの復帰直後であるとき(ステップS16:Yes)、振幅変更制御部35は、画像表示状態の揺動振幅Xaに応じた駆動電圧Vpとなるように、駆動信号生成部13を制御して駆動信号Sig1の駆動電圧Vpを変更する(ステップS17)。
【0065】
一方、画像非表示状態からの復帰直後ではないとき(ステップS16:No)、振幅比較部34は、振幅判定部32から偏向面52の揺動振幅Xrと目標とする偏向面52の揺動振幅Xaとを比較して振幅差Xsを求める。そして、振幅差Xsが所定範囲Z内であるか否かを判定する(ステップS18)。そして、振幅変更制御部35は、振幅差Xsが所定範囲内ではないときには(ステップS18:No)、振幅制御処理を行う(ステップS19)。この振幅制御処理では、振幅差Xsが所定範囲内になるように、駆動信号生成部13を制御して駆動信号Sig1の駆動電圧Vpを変更する。ステップS19の処理が終了したとき、又は、振幅差Xsが所定範囲内であるときには(ステップS18:Yes)、ステップS11へ処理を戻し、ステップS11からの処理を繰り返す。
【0066】
駆動制御部10は、画像非表示状態であるときは(ステップS15:Yes)、現在の偏向面52の揺動振幅が、画像非表示状態の揺動振幅Xbであるか否かを判定する(ステップS20)。そして、画像非表示状態の揺動振幅Xbであるときには(ステップS20:Yes)、ステップS11へ処理を戻す。
【0067】
一方、画像非表示状態の揺動振幅Xbではないときには(ステップS20:No)、駆動信号生成部13を制御して、駆動信号Sig1の駆動電圧Vpを段階的に所定の幅(例えば、1V)で小さく変更する(ステップS21)。この処理が終了すると、ステップS11へ処理を戻し、ステップS11からの処理を繰り返す。
【0068】
以上のように、走査型画像表示装置1が構成されているため、画像表示状態においては、跳躍現象により偏向面52の揺動振幅が急激に小さくなることを抑制しながら最適な周波数Foの駆動信号Sig1で共振型偏向素子50を駆動することができる。しかも、最適な周波数の駆動信号Sig1で共振型偏向素子50を駆動したあと、駆動信号Sig1の駆動電圧Vpを変更して偏向面52の揺動振幅を所定値にする。これにより、最適な駆動信号Sig1の共振周波数や駆動電圧Vpで、共振型偏向素子50の偏向面52を一定の揺動振幅に維持している。
【0069】
また、画像非表示状態においては、上述した振幅制御は行わず、共振周波数追従を行いながら、駆動信号Sig1の駆動電圧Vpを小さくしている。しかも、所定の数値(例えば、1V)で段階的に小さくすることで、跳躍現象により偏向面52の揺動振幅が急激に小さくなることを抑制しながら画像非表示状態における省電力化を図っている。
【0070】
さらに、画像非表示状態から画像表示状態に戻す場合でも、画像非表示状態において共振周波数追従を行っているため、画像表示状態の駆動信号Sig1の駆動電圧Vpに戻すだけで、画像表示状態に復帰させることができる。つまり、駆動信号Sig1の駆動電圧Vpを小さくしても駆動周波数制御である共振周波数追従を行っているため、画像表示状態に復帰させるときに、起動時の共振周波数のサーチを行う必要がなく、早く画像表示状態へ復帰させることができる。
【0071】
なお、揺動状態検出部としては、BDセンサ70に代えて、共振型偏向素子50により走査された光束が入射する位置に複数の光電変換素子をアレイ状に設けたラインイメージセンサを設け、ラインイメージセンサの各光電変換素子から出力される信号に基づいて偏向面52の揺動状態を検出するようにしてもよい。また、共振型偏向素子50において、枠体53に新たに圧電素子を設け、偏向面52の揺動に応じて圧電素子から出力される電気信号に基づき、偏向面52の揺動状態を検出するようにしてもよい。
【0072】
また、画像表示状態又は画像非表示状態の判定を、制御モード切換部33aが画像信号Sの出力状態に応じて判定しているが、画像表示状態又は画像非表示状態の切り換えスイッチを駆動制御部10に設けることもできる。そして、制御モード切換部33aは、切り換えスイッチの状態を監視することで、画像表示状態又は画像非表示状態を判定するようにしてもよい。
【0073】
また、画像非表示状態においては、共振型偏向素子50の共振周波数追従を行いながら、駆動信号Sig1の駆動電圧Vpを所定の数値(例えば、1V)で段階的に小さくしているが、必ずしも共振周波数追従を行う必要はない。例えば、駆動信号Sig1の駆動電圧Vpを所定の数値(例えば、1V)で段階的に小さくした後に、所定時間が経過すると共振型偏向素子50の偏向面52は、駆動電圧Vpに応じた揺動振幅になる。このため、駆動電圧Vpを段階的に小さくする場合に、所定時間毎に段階的に小さくすることもできる。
【0074】
次に、上述してきた走査型画像表示装置1の具体例として、網膜走査型の画像表示装置(以下、RSDという)100とした場合について、図10を参照しながら説明する。RSD100は、画像信号に応じて強度変調したレーザ光をレーザから出射し、このレーザ光を走査部により2次元方向に走査し、投射対象である網膜に投射して画像を表示するようにしたものである。
【0075】
本実施形態に係るRSD100は、外部入力端子109から入力された画像信号Sに応じた強度の光束を出射する光源部300と、光源部300から入射する光束を利用者の網膜に走査して画像を形成する走査部400とで構成されている。光源部300は、外部入力端子109から入力された画像信号Sに基づいて、画像を形成するための要素となるR(赤色)駆動信号120r,G(緑色)駆動信号120g,B(青色)駆動信号120bを画素単位で生成する制御部110を備えている。また、制御部110は、高速走査部150で使用される高速駆動信号111と、低速走査部160で使用される低速駆動信号112とをそれぞれ出力する。
【0076】
Rレーザドライバ126,Gレーザドライバ127,Bレーザドライバ128は、それぞれ制御部110から出力されるR駆動信号120r,G駆動信号120g,B駆動信号120bをもとに、Rレーザ123,Gレーザ124,Bレーザ125へそれぞれ駆動電流を供給する。各レーザ123,124,125は、各レーザドライバ126,127,128から供給される駆動電流に応じて強度変調されたレーザ光を出射する。各レーザ123,124,125から出射したR(赤色)レーザ光Lr,G(緑色)レーザ光Lg、B(青色)レーザ光Lbは、コリメート光学系131,132,133によってそれぞれ平行光化された後に、ダイクロイックミラー134,135,136に入射される。その後、これらのダイクロイックミラー134,135,136により、3原色の各レーザ光Lr,Lg,Lbが波長選択的に反射・透過して結合光学系137に達し、合波されて光ファイバケーブル140へ出射される。
【0077】
光ファイバケーブル140を介して出射されるレーザ光は、コリメート光学系141により平行光化されて走査部400の高速走査部150へ入射される。高速走査部150は、レーザ光を水平方向に走査するための偏向面(反射ミラー)152を有する共振型偏向素子151を備えており、高速走査駆動回路153により高速駆動信号111に基づいて共振型偏向素子151を駆動し、偏向面152によりレーザ光を偏向して走査する。高速走査部150と低速走査部160との間には、第1リレー光学系155が設けられており、高速走査部150により操作されたレーザ光が、低速走査部160に入射する。
【0078】
低速走査部160は、レーザ光を垂直方向に走査するための偏向面(反射ミラー)162を有する非共振型偏向素子161を有しており、低速走査駆動回路163により低速駆動信号112に基づいて非共振型偏向素子161を駆動する。この低速走査部160は、表示すべき画像の1フレームごとに、画像を形成するためのレーザ光を最初の走査線から最後の走査線に向かって垂直方向に走査する。ここで「走査線」とは、高速走査部150による水平方向への片側1走査を意味する。非共振型偏向素子161によって走査されたレーザ光は、正の屈折力を持つ2つのレンズ170a,170bが直列配置された第2リレー光学系170を介して、眼201の前方に位置させたハーフミラー180で反射されてユーザの瞳孔201aに入射する。これにより、網膜201b上に画像信号Sに応じた画像が投影され、ユーザは瞳孔201aに入射するレーザ光を画像として認識する。また、ハーフミラー180は外光Laを透過してユーザの瞳孔201aに入射させるようにしており、これによりユーザは外光Laに基づく外景にレーザ光に基づく画像を重ねた画像を視認することができる。
【0079】
以上のように構成されたRSD100では、制御部110が上記走査型画像表示装置1の駆動制御部10と同様の回路構成を有して動作し、高速走査駆動回路153が直流電圧重畳部40と同様の回路構成を有して動作する。すなわち、RSD100では、画像表示状態において共振型偏向素子151を駆動する高速駆動信号111の周波数を変化させ、BDセンサ154から出力されるBD信号に基づき偏向面152の揺動振幅を検出して、共振型偏向素子151固有の共振周波数Fsを判定する。そして、RSD100は、この共振周波数Fsから所定周波数ΔFだけずれた周波数の高速駆動信号111で共振型偏向素子151を駆動した後、高速駆動信号111の振幅を変更して偏向面152の揺動振幅を所定範囲内に維持する(共振周波数追従)。
【0080】
また、画像非表示状態においては、共振型偏向素子151の共振周波数追従を行いながら、高速駆動信号111の駆動電圧を所定の数値(例えば、1V)で段階的に小さくすることで省電力化を図っている。さらに、画像非表示状態から画像表示状態に戻す場合でも、画像非表示状態において共振型偏向素子151の共振周波数追従を行っているため、画像表示状態の高速駆動信号111の駆動電圧Vpに戻すだけで、画像表示状態に早く復帰させることができる。
【0081】
本発明を、上述してきた実施形態を通して説明したが、本実施形態の走査型画像表示装置1によれば、以下の効果が期待できる。
【0082】
(1)本実施形態の走査型画像表示装置1は、画像信号Sに応じた強度の光束を出射する光源部300と、光源部から入射する光束を偏向する偏向面52、152を有し、共振により偏向面が揺動する共振型偏向素子50、151を備えた走査部400と、偏向面52の揺動状態を検出する揺動状態検出部(BDセンサ70、154)と、共振型偏向素子50の偏向面52が共振により揺動するように駆動信号Sig1にて駆動した後、偏向面52の揺動状態を示す信号と、駆動信号Sig1との位相差が所定範囲内になるように駆動信号Sig1の周波数を制御する駆動周波数制御部(周波数決定部11)と、偏向面52の揺動振幅を所定範囲内に維持するように、駆動信号Sig1の駆動電圧Vpを制御する振幅制御部(振幅決定部12)と、を備え、画像信号Sの出力が停止した画像非表示状態では、駆動周波数制御部を機能させた状態で振幅制御部の機能を停止し、偏向面52の揺動振幅が所定の振れ角になるまで、駆動信号Sig1の駆動電圧Vpを小さくすることとした。このため、画像信号Sの出力が停止した画像非表示状態では、駆動信号Sig1の駆動電圧Vpを小さくすることで省電力化を図ることができる。
【0083】
(2)画像非表示状態で駆動信号Sig1の駆動電圧Vpを小さくする場合は、駆動周波数制御部(周波数決定部11)において、偏向面52の揺動状態を示す信号と、駆動信号Sig1との位相差が所定範囲内になったことを確認した後に、駆動信号Sig1の駆動電圧Vpを小さくするので、共振型偏向素子50の共振周波数追従を維持しながら、跳躍現象を避けて駆動信号Sig1の駆動電圧Vpを小さくすることができる。
【0084】
(3)共振型偏向素子50の特性に応じて、画像非表示状態の偏向面52の揺動振幅の所定の振れ角を変更するので、省電力化を図るために共振型偏向素子50の特性に応じた最適な駆動信号Sig1の駆動電圧Vpを設定することができる。
【0085】
(4)画像非表示状態では、駆動周波数制御部(周波数決定部11)を機能させた状態で振幅制御部(振幅決定部12)の機能を停止し、偏向面52の揺動振幅が所定の振れ角になるまで、駆動信号Sig1の駆動電圧Vpを段階的に小さくするので、共振型偏向素子50の共振周波数の追従を維持しながら段階的に駆動信号Sig1の駆動電圧Vpを小さくして省電力化を図ることができる。
【0086】
(5)共振型偏向素子50の特性に応じて、画像非表示状態での駆動信号Sig1の駆動電圧Vpを段階的に小さくする駆動電圧Vpの幅を変更するので、共振型偏向素子50の素材の特性に応じて、跳躍現象を避けながら速やかに駆動信号Sig1の駆動電圧Vpを小さくすることができる。
【0087】
(6)画像非表示状態から画像信号Sが出力される画像表示状態に復帰させる場合には、振幅制御部(振幅決定部12)を機能させて、偏向面52の揺動状態を所定範囲内に復帰させるための駆動信号Sig1の駆動電圧Vpを、画像表示状態とするのに必要な駆動電圧Vpにするので、画像非表示状態から画像表示状態に切り換えられた場合でも、速やかに画像表示に必要な、共振型偏向素子50の共振周波数又は駆動信号Sig1の駆動電圧Vpに復帰させることができる。
【0088】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0089】
1 走査型画像表示装置
10 駆動制御部
40 直流電圧重畳部
50,151 共振型偏向素子
52,152 偏向面
70,154 BDセンサ(揺動状態検出部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像信号に応じた強度の光束を出射する光源部と、
前記光源部から入射する光束を偏向する偏向面を有し、共振により前記偏向面が揺動する共振型偏向素子を備えた走査部と、
前記偏向面の揺動状態を検出する揺動状態検出部と、
前記共振型偏向素子の前記偏向面が共振により揺動するように駆動信号にて駆動した後、前記偏向面の揺動状態を示す信号と、前記駆動信号との位相差が所定範囲内になるように前記駆動信号の周波数を制御する駆動周波数制御部と、
前記偏向面の揺動振幅を所定範囲内に維持するように、前記駆動信号の電圧を制御する振幅制御部と、を備え、
前記画像信号の出力が停止した画像非表示状態では、前記駆動周波数制御部を機能させた状態で前記振幅制御部の機能を停止し、前記偏向面の揺動振幅が所定の振れ角になるまで、前記駆動信号の電圧を小さくすることを特徴とする走査型画像表示装置。
【請求項2】
前記画像非表示状態で前記駆動信号の電圧を小さくする場合は、前記駆動周波数制御部において、前記偏向面の揺動状態を示す信号と、前記駆動信号との位相差が所定範囲内になったことを確認した後に、前記駆動信号の電圧を小さくすることを特徴とする請求項1に記載の走査型画像表示装置。
【請求項3】
前記共振型偏向素子の特性に応じて、前記画像非表示状態の前記偏向面の揺動振幅の所定の振れ角を変更することを特徴とする請求項1又は2に記載の走査型画像表示装置。
【請求項4】
前記画像非表示状態では、前記駆動周波数制御部を機能させた状態で前記振幅制御部の機能を停止し、前記偏向面の揺動振幅が所定の振れ角になるまで、前記駆動信号の電圧を段階的に小さくすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の走査型画像表示装置。
【請求項5】
前記共振型偏向素子の特性に応じて、前記画像非表示状態での前記駆動信号の電圧を段階的に小さくする電圧の幅を変更することを特徴とする請求項4に記載の走査型画像表示装置。
【請求項6】
前記画像非表示状態から前記画像信号が出力される画像表示状態に復帰させる場合には、前記振幅制御部を機能させて、前記偏向面の揺動状態を所定範囲内に復帰させるための前記駆動信号の電圧を、前記画像表示状態とするのに必要な電圧にすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の走査型画像表示装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate