説明

走査電子顕微鏡及び走査電子顕微鏡の対物レンズの用途切替方法

【課題】小型で、短時間で対物レンズの用途切替ができる走査電子顕微鏡及び走査電子顕微鏡の対物レンズの用途切替方法を提供することを課題とする。
【解決手段】対物レンズ59の外側磁極片101に、第1ねじ部123を設けし、内壁面に第1ねじ部123と螺合可能な第2ねじ部139が設け、外壁面に、第2ねじ部139と同軸で、ねじ切り方向が逆方向の第3ねじ部141が形成され、外側磁極片101に着脱可能な補助外側磁極片133と、補助外側磁極片133の第3ねじ部141と螺合可能な第4ねじ部117を有し、第4ねじ部117の軸が試料ステージの回転中心と一致するように試料ステージ上に設けられ、補助外側磁極片133が着脱可能な着脱ホルダ111とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子銃から発生した電子ビームを対物レンズによって集束し、試料ステージに配置された試料上に照射するとともに、前記試料上で走査し、試料からの2次的信号を検出して試料の走査像を得る走査電子顕微鏡及び走査電子顕微鏡の対物レンズの用途切替方法に関する。
【背景技術】
【0002】
走査電子顕微鏡において、対物レンズの形状は、装置の分解能を決める重要な要因をしめている。従って、分解能を向上するには、対物レンズの収差係数を小さくしなければならない。そこで、試料上の磁界を強くしたインレンズ型、あるいは、セミインレンズ型(強磁界対物レンズ)の対物レンズを採用することにより、収差係数を3mm以下としている。また、磁化しやすい試料やEBSD(後方散乱電子回折を利用して、結晶性試料の方位解析をする方法)による分析時については、試料上に磁界が漏れないようにしなければならない。従来は、各用途別に対物レンズの形状が異なる装置が製作されている。また、対物レンズの下面に検出器や真空度分離用のオリフィスを取り付けたい時も各用途別に対物レンズの形状を変更したりする必要がある場合もある。
【0003】
対物レンズの用途の変更を行う場合、通常、真空をリークして、対物レンズ全体を交換するか、或いは、取り付ける部品を組み込む等の作業を行なっている。このため、変更に時間がかかるという問題点がある。
【0004】
そこで、本願出願人は、図5に示すように、対物レンズ1の内側磁極片3と外側磁極片5とを駆動機構7を用いて相対的に光軸に沿って移動可能とすると共に、外側磁極片5の下部に補助磁極片9を駆動機構11を用いて選択的に配置できるように構成し、単一の対物レンズで用途に応じ異なった軸上磁場分布を短時間で形成できる装置を提案している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2000−156191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された装置では、内側磁極片と外側磁極片とを光軸に沿って駆動する機構と、補助磁極片を駆動する機構とが必要となり、装置が大型化する問題点がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、その課題は、小型で、短時間で対物レンズの用途切替ができる走査電子顕微鏡及び走査電子顕微鏡の対物レンズの用途切替方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する請求項1に係る発明は、電子銃から発生した電子ビームを対物レンズによって集束し、試料ステージに配置された試料上に照射するとともに、前記試料上で走査し、試料からの2次的信号を検出して試料の走査像を得る走査電子顕微鏡において、前記対物レンズの外側磁極片の前記試料ステージ側の端部に、前記対物レンズの光軸を軸とする第1ねじ部を設け、内壁面、外壁面のうちどちらか一方の面側に周方向に沿って前記第1ねじ部と螺合可能な第2ねじ部が形成され、内壁面、外壁面のうちの他方の面側に、前記第2ねじ部と同軸で、ねじ切り方向が逆方向の第3ねじ部が形成され、前記外側磁極片に着脱可能な補助外側磁極片と、前記補助外側磁極片の前記第3ねじ部と螺合可能な第4ねじ部を有し、該第4ねじ部の軸が前記試料ステージの回転中心と一致するように前記試料ステージ上に設けられ、前記補助外側磁極片が着脱可能な着脱ホルダと、を有することを特徴とする走査電子顕微鏡である。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記着脱ホルダの第4ねじ部に前記補助外側磁極片の前記第3ねじ部が螺合し、前記第3ねじ部の軸と前記第1ねじ部の軸とが一致した状態で、前記試料ステージを上昇させることにより前記試料ホルダを上昇させて、前記補助外側磁極片を前記対物レンズの外側磁極片に接触させ、前記試料ステージを回転させることにより前記試料ホルダを一方の方向に回転させて、前記補助外側磁極片の前記第2ねじ部を前記外側磁極片の第1ねじ部に螺合させ、更に、前記補助外側磁極片の前記第3ねじ部と着脱ホルダの第4ねじ部との螺合を解除する制御部を有することを特徴とする請求項1記載の走査電子顕微鏡である。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記制御部は、前記外側磁極片の第1ねじ部に前記補助外側磁極片の第2ねじ部が螺合し、前記第3ねじ部の軸と前記第4ねじ部の軸とが一致した状態で、前記試料ステージを上昇させることにより前記試料ホルダを上昇させて、前記着脱ホルダを前記補助外側磁極片に接触させ、前記試料ステージを回転させることにより前記試料ホルダを他方の方向に回転させて、前記補助外側磁極片の前記第3ねじ部と着脱ホルダの第4ねじ部とを螺合させ、更に、前記外側磁極片の第1ねじ部と前記補助外側磁極片の第2ねじ部との螺合を解除することを特徴とする請求項2記載の走査電子顕微鏡である。
【0011】
請求項4に係る発明は、前記着脱ホルダに、前記第4ねじ部の軸に位置する突部を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の走査電子顕微鏡である。
【0012】
請求項5に係る発明は、前記補助外側磁極片に、非磁性体を介して前記対物レンズの内側磁極片に当接可能な補助内側磁極片を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の走査電子顕微鏡である。
【0013】
請求項6に係る発明は、電子銃から発生した電子ビームを対物レンズによって集束し、試料ステージに配置された試料上に照射するとともに、前記試料上で走査し、試料からの2次的信号を検出して試料の走査像を得る走査電子顕微鏡の対物レンズの用途切替方法であって、前記対物レンズの外側磁極片の前記試料ステージ側の端部に、前記対物レンズの光軸を軸とする第1ねじ部が設けられ、内壁面、外壁面のうちどちらか一方の面側に周方向に沿って前記第1ねじ部と螺合可能な第2ねじ部が形成され、内壁面、外壁面のうちの他方の面側に、前記第2ねじ部と同軸で、ねじ切り方向が逆方向の第3ねじ部が形成され、前記外側磁極片に着脱可能な補助外側磁極片と、前記補助外側磁極片の前記第3ねじ部と螺合可能な第4ねじ部を有し、該第4ねじ部の軸が前記試料ステージの回転中心と一致するように前記試料ステージ上に設けられ、前記補助外側磁極片が着脱可能な着脱ホルダとを用い、前記着脱ホルダの第4ねじ部に前記補助外側磁極片の前記第3ねじ部が螺合し、前記第3ねじ部の軸と前記第1ねじ部の軸とが一致した状態で、前記試料ステージを上昇させることにより前記試料ホルダを上昇させて、前記補助外側磁極片を前記対物レンズの外側磁極片に接触させ、前記試料ステージを回転させることにより前記試料ホルダを一方の方向に回転させて、前記補助外側磁極片の前記第2ねじ部を前記外側磁極片の第1ねじ部に螺合させ、更に、前記補助外側磁極片の前記第3ねじ部と着脱ホルダの第4ねじ部との螺合を解除することを特徴とする走査電子顕微鏡の対物レンズ用途切替方法である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1−5に係る発明によれば、前記対物レンズの外側磁極片の前記試料ステージ側の端部に、前記対物レンズの光軸を軸とする第1ねじ部を設け、内壁面、外壁面のうちどちらか一方の面側に周方向に沿って前記第1ねじ部と螺合可能な第2ねじ部が形成され、内壁面、外壁面のうちの他方の面側に、前記第2ねじ部と同軸で、ねじ切り方向が逆方向の第3ねじ部が形成され、前記外側磁極片に着脱可能な補助外側磁極片と、前記補助外側磁極片の前記第3ねじ部と螺合可能な第4ねじ部を有し、該第4ねじ部の軸が前記試料ステージの回転中心と一致するように前記試料ステージ上に設けられ、前記補助外側磁極片が着脱可能な着脱ホルダとを有する。即ち、試料ステージ上に着脱ホルダを設け、既存の試料ステージの駆動機構を用いて、対物レンズの外側磁極片に補助外側磁極片を取り付けることができる。よって、対物レンズの用途切替を行う機構が小型化できる。また、着脱ホルダは、試料交換室を経由して試料室内に置くことが可能となるので、試料室内の真空リークが不要となり、短時間で対物レンズの用途切替ができる。
【0015】
また、補助外側磁極片の形状を任意に設定することにより、様々な特性の対物レンズへの切替(例えば、セミインレンズから通常のアウトレンズへの切替)を行なうことができる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、前記着脱ホルダの第4ねじ部に前記補助外側磁極片の前記第3ねじ部が螺合し、前記第3ねじ部の軸と前記第1ねじ部の軸とが一致した状態で、前記試料ステージを上昇させることにより前記試料ホルダを上昇させて、前記補助外側磁極片を前記対物レンズの外側磁極片に接触させ、前記試料ステージを回転させることにより前記試料ホルダを一方の方向に回転させて、前記補助外側磁極片の前記第2ねじ部を前記外側磁極片の第1ねじ部に螺合させ、更に、前記補助外側磁極片の前記第3ねじ部と着脱ホルダの第4ねじ部との螺合を解除する制御部を有することにより、自動で、補助外側磁極片を対物レンズの外側磁極片に取り付けることができる。
【0017】
請求項3に係る発明は、前記制御部は、前記外側磁極片の第1ねじ部に前記補助外側磁極片の第2ねじ部が螺合し、前記第3ねじ部の軸と前記第4ねじ部の軸とが一致した状態で、前記試料ステージを上昇させることにより前記試料ホルダを上昇させて、前記着脱ホルダを前記補助外側磁極片に接触させ、前記試料ステージを回転させることにより前記試料ホルダを他方の方向に回転させて、前記補助外側磁極片の前記第3ねじ部と着脱ホルダの第4ねじ部とを螺合させ、更に、前記外側磁極片の第1ねじ部と前記補助外側磁極片の第2ねじ部との螺合を解除することにより、対物レンズの外側磁極片からの補助外側磁極片の取り外しも可能である。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、前記着脱ホルダに、前記第4ねじ部の軸に位置する突部を設けたことにより、例えば、開き角制御レンズにより電子ビームを集束させて突部を走査像内で確認することにより、突部を対物レンズの光軸、即ち、第1ねじ部の軸に容易に一致させることができる。
【0019】
請求項5に係る発明によれば、前記補助外側磁極片に、非磁性体を介して前記対物レンズの内側磁極片に当接可能な補助内側磁極片を設けたことにより、補助内側磁極片の形状を任意に設定することにより、様々な特性の対物レンズへの用途切替(例えば、セミインレンズや通常のアウトレンズ)を行なうことができる。
【0020】
請求項6に係る発明によれば、電子銃から発生した電子ビームを対物レンズによって集束し、試料ステージに配置された試料上に照射するとともに、前記試料上で走査し、試料からの2次的信号を検出して試料の走査像を得る走査電子顕微鏡の対物レンズの用途切替方法であって、前記対物レンズの外側磁極片の前記試料ステージ側の端部に、前記対物レンズの光軸を軸とする第1ねじ部が設けられ、内壁面、外壁面のうちどちらか一方の面側に周方向に沿って前記第1ねじ部と螺合可能な第2ねじ部が形成され、内壁面、外壁面のうちの他方の面側に、前記第2ねじ部と同軸で、ねじ切り方向が逆方向の第3ねじ部が形成され、前記外側磁極片に着脱可能な補助外側磁極片と、前記補助外側磁極片の前記第3ねじ部と螺合可能な第4ねじ部を有し、該第4ねじ部の軸が前記試料ステージの回転中心と一致するように前記試料ステージ上に設けられ、前記補助外側磁極片が着脱可能な着脱ホルダとを用い、前記着脱ホルダの第4ねじ部に前記補助外側磁極片の前記第3ねじ部が螺合し、前記第3ねじ部の軸と前記第1ねじ部の軸とが一致した状態で、前記試料ステージを上昇させることにより前記試料ホルダを上昇させて、前記補助外側磁極片を前記対物レンズの外側磁極片に接触させ、前記試料ステージを回転させることにより前記試料ホルダを一方の方向に回転させて、前記補助外側磁極片の前記第2ねじ部を前記外側磁極片の第1ねじ部に螺合させ、更に、前記補助外側磁極片の前記第3ねじ部と着脱ホルダの第4ねじ部との螺合を解除する。即ち、試料ステージ上に着脱ホルダを設け、既存の試料ステージの駆動機構を用いて、対物レンズの外側磁極片に補助外側磁極片を取り付けることができる。よって、対物レンズの用途切替を行う機構が小型化できる。また、着脱ホルダは、試料交換室を経由して試料室内に置くことが可能となるので、試料室内の真空リークが不要となり、短時間で対物レンズの用途切替ができる。
【0021】
また、補助外側磁極片の形状を任意に設定することにより、様々な特性の対物レンズ(例えば、セミインレンズから通常のアウトレンズ)を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態の対物レンズ、着脱ホルダを説明する断面図である。
【図2】実施形態の走査電子顕微鏡の全体構成を説明する図である。
【図3】他の補助磁極片の断面図である。
【図4】他の補助磁極片の断面図である。
【図5】従来例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1−図2を用いて本発明の実施の形態を説明する。図1は対物レンズ、着脱ホルダを説明する断面図、図2は本実施形態の走査電子顕微鏡の全体構成を説明する図である。
【0024】
先ず図2を用いて、走査電子顕微鏡の説明を行う。図において、鏡体50内の上部には、電子線(電子ビーム)を放出する電子銃51が設けられている。
【0025】
鏡体50の内部には、上から集束レンズ53、開き角制御レンズ55、走査コイル57、対物レンズ59がそれぞれ設けられている。
【0026】
鏡体50の下部に設けられた試料室60内は真空状態に保持され、その内部には試料ステージ61が設けられている。この試料ステージ61は、Z方向(対物レンズ59の光軸方向),X方向(紙面上で対物レンズ59の光軸と直交する方向),Y方向(紙面に対して垂直方向)に移動可能となっている。また、試料室60には、試料からの2次電子(2次的信号)を検出する2次電子検出器63が設けられている。
【0027】
この試料室60に隣接して、試料交換室70が設けられている。
【0028】
制御部81は、電子銃駆動部83、集束レンズ駆動部85、開き角制御レンズ駆動部87、走査コイル駆動部89、対物レンズ駆動部91、試料ステージ駆動部93を介して、電子銃51、集束レンズ53、開き角制御レンズ55、走査コイル57、対物レンズ59、試料ステージ61を駆動するものである。
【0029】
また、2次電子検出器63で検出された2次電子の検出信号は、画像信号処理部95に送られ、これに基づく走査画像データが作成される。この画像データは、制御部81を介して、表示装置97に送られ、該データに基づく画像が2次電子像(走査像)として表示される。
【0030】
対物レンズ59は、外側磁極片101と、内側磁極片103と、励磁コイル105とからなっている。
【0031】
そして、本形態例では、対物レンズ59の外側磁極片101、内側磁極片103の試料ステージ61側の端部(下端)に、後述する補助外側磁極片、補助内側磁極片が取り付けられ、様々な特性の対物レンズ(例えば、セミインレンズから通常のアウトレンズへの用途の変更)を得られるようになっている。
【0032】
図において、試料ステージ61上には、補助磁極片を保持し、対物レンズ59に対して補助磁極片を着脱する着脱ホルダ111が設けられている。
【0033】
ここで、図1を用いて、着脱ホルダ111、補助磁極片の説明を行う。着脱ホルダ111は、試料ステージ61上に設けられるベース113と、ベース113に設けられ、補助磁極片を保持する保持部材115とからなっている。
【0034】
ベース113は、円柱状のベース本体113aと、ベース本体113aの上面に形成された円筒状の内筒部113bとからなっている。
【0035】
保持部材115は、円筒状で、ベース113の内筒部113bに外側から嵌合する外筒部115aと、外筒部115aの上側の端部から内側に折曲した天部115bとからなっている。天部115bの中央部には穴115cが形成され、穴115cの内壁には、第4ねじ部117が形成されている。
【0036】
また、ベース本体113aの中央部には、第4ねじ部117の軸と一致するように設けられ、保持部材115の天部115bに向かう突部115dが形成されている。
【0037】
更に、ベース113の内筒部113bの外周面には、スプリング119が巻回されている。このスプリング119の一端部はベース113のベース本体113aに当接し、他端部は保持部材115の外筒部115aの下端面に当接し、ベース113を対物レンズ59方向に付勢している。
【0038】
また、ベース113の内筒部113bの周部と、保持部材115の外筒部115aの周部とには、2次電子が通過する穴113cと、穴115eとが形成されている。
【0039】
対物レンズ59の外側磁極片101の下部の内壁面側には、非磁性材料でなり、下部が外側磁極片101の下面より突出する円環状の取付部材121が設けられている。この取付部材121の外側磁極片101の下面より突出した部分の外周面には、軸が対物レンズ59の光軸Oと一致する第1ねじ部123が形成されている。
【0040】
本実施形態の補助磁極片131は、磁性材料でなり一方の面が開放面とされた有底円筒状の補助外側磁極片133と、非磁性材料でなり補助外側磁極片133の内筒面に設けられた円環状のブラケット135と、ブラケット135の内側の穴135aの壁面に設けられ、磁性材料でなり内側磁極片103に当接可能な補助内側磁極片137とからなる。
【0041】
補助外側磁極片133の内筒面には、対物レンズ59側の第1ねじ部に螺合可能な第2ねじ部139が周方向に沿って形成されている。補助外側磁極片133の外筒面には、第2ねじ部139と同軸で、ねじ切り方向(ねじの巻き方向)が逆方向で、着脱ホルダ111の第4ねじ部117に螺合可能な第3ねじ部141が周方向に沿って形成されている。
【0042】
補助外側磁極片133の底部の中央には、穴133aが形成されている。
【0043】
本実施の形態では、図1に示すような形状の補助磁極片131の他に、図3に示すような補助磁極片131’も取り付け可能である。補助磁極片131と補助磁極片131’との相違点は、補助外側磁極片133の穴133aの径(φ)と補助外側磁極片133’の穴133a’の径(φ’)である。φ<φ’であるので、図1に示す補助磁極片131が取り付けられた対物レンズは、アウトレンズとして機能し、図3に示す補助磁極片131’が取り付けられた対物レンズは、セミインレンズとして機能する。
【0044】
また、図4に示すように、補助外側磁極片133の穴133aにオリフィス201や半導体検出器203を設けた補助磁極片131も取り付け可能である。
【0045】
ここで、上記構成の作動を説明する。
(補助磁極片の取り付け)
装置外(真空外)で、着脱ホルダ111の第4ねじ部117に、補助磁極片131の第3ねじ部141を螺合させることにより、着脱ホルダ111に補助磁極片131を取り付ける。
【0046】
試料交換と同様な方法で、補助磁極片131が取り付けられた着脱ホルダ111を試料交換室70を介して、試料室60内の試料ステージ61上に配置する。この時、着脱ホルダ111は、第4ねじ部141の軸(突部115d)が試料ステージ61の回転中心と一致するようにする。
【0047】
制御部81は、開き角制御レンズ55のレンズ作用によって電子線を着脱ホルダ111の突部115dの上面に集束させるとともに、走査コイル57の偏向作用により電子線の走査を行う。これにより、突部115dの走査像の取得及び表示を行う。
【0048】
次に、突部115dが対物レンズ59の光軸Oと一致するように試料ステージ61をX、Y軸方向に駆動する。この動作は、操作者が操作することもできる。この場合、操作者は、表示された上記走査像を目視にて確認しながら駆動走査を行う。
【0049】
ここで、操作者は、操作部80(図2参照)の補助磁極片選択ボタンと、補助磁極片取り付けボタンとを押下する。制御部81は、着脱ホルダ111の補助磁極片131の第2ねじ部139が対物レンズ59の第1ねじ部123に当接するまで、試料ステージ61をZ軸方向に沿って上方に駆動する。補助磁極片131の第2ねじ部139と、対物レンズ59の第1ねじ部123に第1ねじ部123との当接は、試料ステージ61に設けられている既存の接触検知手段94(図2参照)の信号を検出することで判別する。尚、第2ねじ部139と、第1ねじ部123との当接は、表示装置97にも表示される。
【0050】
第2ねじ部139と第1ねじ部123とが当接すると、制御部81は、試料ステージ61を一方の方向(反時計方向)に回転させる。すると、補助磁極片131の第2ねじ部139と、対物レンズ59の第1ねじ部123とが螺合する。第2ねじ部139と第1ねじ部123との螺合が終了すると、補助磁極片131の回転が止まり、次に、保持部材115が一方の方向(反時計方向)に回転を始める。尚、この時、補助磁極片131の補助内側磁極片137は対物レンズ59の内側磁極片103に当接する。保持部材115はスプリング119の付勢力に抗しながら下降し、保持部材115の第4ねじ部123と補助磁極片131の第3ねじ部141との螺合が解除される。保持部材115の第4ねじ部123と補助磁極片131の第3ねじ部141との螺合が解除され、補助磁極片131と着脱ホルダ111との分離は、接触検知手段94の信号により判別される。補助磁極片131と着脱ホルダ111とが分離されると、制御部81は試料ステージ61の一方の方向の回転を停止する。尚、補助磁極片131と着脱ホルダ111との分離は、表示装置97にも表示される。
【0051】
制御部81は、試料ステージ61を元位置まで下降させると共に、各補助磁極片131,131’の特性等が記録されたテーブル96(図2参照)から、選択した補助磁極片131に対応したデータを取り込み、試料観察時に用いられる制御テーブル、表示装置97の操作画面を変更する。
【0052】
操作者は、試料ステージ61上の着脱ホルダ111を試料交換と同様な方法で、試料室60から取り出し、試料の観察を行う。
(補助磁極片の取り外し)
試料交換と同様な方法で、着脱ホルダ111を試料交換室70を介して、試料室60内の試料ステージ61上に配置する。この時、着脱ホルダ111は、第4ねじ部141の軸(突部115d)が試料ステージ61の回転中心と一致するようにする。
【0053】
上記と同様に、制御部81は、着脱ホルダ111の突部115dの走査像の取得及び表示を行う。次に、突部115dが対物レンズ59の光軸Oと一致するように試料ステージ61のをX、Y軸方向での駆動が行われる(上記と同様)。
【0054】
ここで、操作者は、操作部80の補助磁極片取り外しボタンを押下する。制御部81は、着脱ホルダ111の第4ねじ部117が、補助磁極片131の第3ねじ部114に当接するまで、試料ステージ61をZ軸方向に沿って上方に駆動する。着脱ホルダ111の第4ねじ部117と、補助磁極片131の第3ねじ部114との当接は、試料ステージ61に設けられている接触検知手段94の信号を検出することで判別する。尚、第4ねじ部117と、第3ねじ部141との当接は、表示装置97にも表示される。
【0055】
第4ねじ部117と第3ねじ部141とが当接すると、制御部81は、試料ステージ61を他方の方向(時計方向)に回転させる。すると、着脱ホルダ111の第4ねじ部117と、補助磁極片131の第3ねじ部141とが螺合する。第4ねじ部117と第3ねじ部141との螺合が終了すると、次に、補助磁極片131が他方の方向(時計方向)に回転する。保持部材115はスプリング119の付勢力に抗しながら下降し、対物レンズ59の第1ねじ部123と補助磁極片131の第2ねじ部139との螺合が解除される。対物レンズ59の第1ねじ部123と補助磁極片131の第2ねじ部139との螺合が解除され、補助磁極片131と対物レンズ59との分離は、接触検知手段94の信号により判別される。補助磁極片131と対物レンズ59とが分離されると、制御部81は試料ステージ61の他方の方向の回転を停止する。尚、補助磁極片131と対物レンズ59との分離は、表示装置97にも表示される。
【0056】
そして、制御部81は、試料ステージ61を元位置まで下降させる。
【0057】
操作者は、試料ステージ61上の着脱ホルダ111を試料交換と同様な方法で、試料室60から取り出す。
【0058】
このような構成によれば、以下のような効果が得られる。
【0059】
(1) 試料ステージ61上に着脱ホルダ111を設け、既存の試料ステージ61の駆動機構を用いて、対物レンズ59に対して補助磁極片131を取り付け/取り外しができる。よって、対物レンズ59の用途変更を行う機構が小型化できる。また、着脱ホルダ111は、試料交換室70を経由して試料室60内に配置することが可能となるので、試料室60内の真空リークが不要となり、短時間で対物レンズ59の用途変更ができる。
【0060】
(2) 補助外側磁極片の形状を任意に設定することにより、対物レンズをアウトレンズとして機能させたり、セミインレンズとして機能させたりすることができる。
【0061】
(3) 着脱ホルダ111に、第4ねじ部117の軸に位置する突部115dを設けたことにより、開き角制御レンズ55により電子線を集束させて突部115dを走査像内で確認することにより、突部115dを対物レンズ59の光軸O、即ち、第1ねじ部123の軸に容易に一致させることができる。
【0062】
(4) 取り付けられる補助磁極片131,131’の特性等が記録されたテーブル96を有することで、交換後もメーカーの作業員による多くの調整が必要なく、すぐに画像観察が可能である。
【0063】
(5) ねじの螺合により補助磁極片を対物レンズ59に取り付けるので、精度よく取り付けられる。
【0064】
尚、本発明は、上記実施の形態例に限定するものではない。上記実施の形態例では、着脱ホルダ111の突部115dが対物レンズ59の光軸Oと一致するように試料ステージ61をX、Y軸方向に駆動した後は、制御部81が試料ステージ61の上昇、回転、下降の制御を行ったが、操作者がスイッチ操作で、試料ステージ61の上昇、回転、下降を行うようにしてもよい。
【0065】
また、自動で制御する場合には、画像認識を用いて、着脱ホルダ111の突部115dが対物レンズ59の光軸Oと一致するように、制御部81が試料ステージ61をX、Y軸方向に駆動するようにしてもよい。
【0066】
更に、補助磁極片131は、ブラケット135,補助内側磁極片137がなくてもよい。
【符号の説明】
【0067】
59 対物レンズ
61 試料ステージ
101 外側磁極片
111 着脱ホルダ
117 第4ねじ部
123 第1ねじ部
139 第2ねじ部
141 第3ねじ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子銃から発生した電子ビームを対物レンズによって集束し、試料ステージに配置された試料上に照射するとともに、前記試料上で走査し、試料からの2次的信号を検出して試料の走査像を得る走査電子顕微鏡において、
前記対物レンズの外側磁極片の前記試料ステージ側の端部に、前記対物レンズの光軸を軸とする第1ねじ部を設け、
内壁面、外壁面のうちどちらか一方の面側に周方向に沿って前記第1ねじ部と螺合可能な第2ねじ部が形成され、内壁面、外壁面のうちの他方の面側に、前記第2ねじ部と同軸で、ねじ切り方向が逆方向の第3ねじ部が形成され、前記外側磁極片に着脱可能な補助外側磁極片と、
前記補助外側磁極片の前記第3ねじ部と螺合可能な第4ねじ部を有し、該第4ねじ部の軸が前記試料ステージの回転中心と一致するように前記試料ステージ上に設けられ、前記補助外側磁極片が着脱可能な着脱ホルダと、
を有することを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項2】
前記着脱ホルダの第4ねじ部に前記補助外側磁極片の前記第3ねじ部が螺合し、前記第3ねじ部の軸と前記第1ねじ部の軸とが一致した状態で、前記試料ステージを上昇させることにより前記試料ホルダを上昇させて、前記補助外側磁極片を前記対物レンズの外側磁極片に接触させ、
前記試料ステージを回転させることにより前記試料ホルダを一方の方向に回転させて、前記補助外側磁極片の前記第2ねじ部を前記外側磁極片の第1ねじ部に螺合させ、更に、前記補助外側磁極片の前記第3ねじ部と着脱ホルダの第4ねじ部との螺合を解除する制御部
を有することを特徴とする請求項1記載の走査電子顕微鏡。
【請求項3】
前記制御部は、
前記外側磁極片の第1ねじ部に前記補助外側磁極片の第2ねじ部が螺合し、前記第3ねじ部の軸と前記第4ねじ部の軸とが一致した状態で、前記試料ステージを上昇させることにより前記試料ホルダを上昇させて、前記着脱ホルダを前記補助外側磁極片に接触させ、
前記試料ステージを回転させることにより前記試料ホルダを他方の方向に回転させて、前記補助外側磁極片の前記第3ねじ部と着脱ホルダの第4ねじ部とを螺合させ、更に、前記外側磁極片の第1ねじ部と前記補助外側磁極片の第2ねじ部との螺合を解除することを特徴とする請求項2記載の走査電子顕微鏡。
【請求項4】
前記着脱ホルダに、前記第4ねじ部の軸に位置する突部を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の走査電子顕微鏡。
【請求項5】
前記補助外側磁極片に、非磁性体を介して前記対物レンズの内側磁極片に当接可能な補助内側磁極片を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の走査電子顕微鏡。
【請求項6】
電子銃から発生した電子ビームを対物レンズによって集束し、試料ステージに配置された試料上に照射するとともに、前記試料上で走査し、試料からの2次的信号を検出して試料の走査像を得る走査電子顕微鏡の対物レンズの用途切替方法であって、
前記対物レンズの外側磁極片の前記試料ステージ側の端部に、前記対物レンズの光軸を軸とする第1ねじ部が設けられ、
内壁面、外壁面のうちどちらか一方の面側に周方向に沿って前記第1ねじ部と螺合可能な第2ねじ部が形成され、内壁面、外壁面のうちの他方の面側に、前記第2ねじ部と同軸で、ねじ切り方向が逆方向の第3ねじ部が形成され、前記外側磁極片に着脱可能な補助外側磁極片と、
前記補助外側磁極片の前記第3ねじ部と螺合可能な第4ねじ部を有し、該第4ねじ部の軸が前記試料ステージの回転中心と一致するように前記試料ステージ上に設けられ、前記補助外側磁極片が着脱可能な着脱ホルダとを用い、
前記着脱ホルダの第4ねじ部に前記補助外側磁極片の前記第3ねじ部が螺合し、前記第3ねじ部の軸と前記第1ねじ部の軸とが一致した状態で、前記試料ステージを上昇させることにより前記試料ホルダを上昇させて、前記補助外側磁極片を前記対物レンズの外側磁極片に接触させ、
前記試料ステージを回転させることにより前記試料ホルダを一方の方向に回転させて、前記補助外側磁極片の前記第2ねじ部を前記外側磁極片の第1ねじ部に螺合させ、更に、前記補助外側磁極片の前記第3ねじ部と着脱ホルダの第4ねじ部との螺合を解除することを特徴とする走査電子顕微鏡の対物レンズ用途切替方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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