説明

走行台車

【課題】ラジエータファンの吸引により、ラジエータからの排風を、エンジンルーム内に確実に導入させ、エンジンを効率よく冷却してエンジンの性能を維持し、作業性および安全性を向上させた走行台車を提供する。
【解決手段】機体フレーム6下方に左右走行装置7を備え、左右走行装置7の間であって、機体前部にミッションケース8を配設し、ミッションケース8上方の機体フレーム6上に設けたエンジンルーム枠24内にエンジン9を搭載し、エンジン9の一側方に操縦部13を突設させるとともに、操縦部13と、エンジン9との間に、ラジエータ19を設置し、機体の前後方向に亘って機体フレーム6上に作業機3を載置させ、エンジン9と、ラジエータ19との間に設けたラジエータファン20の上方であって、排風通路Sを覆う位置に、エンジン9内に空気を取り込むための吸気ホース25を設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体の前後方向に亘って機体フレーム上に作業機を載置した自走式の走行台車に関し、より詳細には、エンジンと、ラジエータとの間に設けたラジエータファンの上方であって、排風通路を覆う位置に、エンジン内に空気を取り込むための吸気ホースを設置した走行台車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、玉葱や大蒜などの野菜類を収穫装置で収穫するとともに、選別装置で選別する、それら収穫装置および選別装置などからなる作業機を載置する自走式の走行台車には、走行装置を備える機体の前部に配設したエンジンの一側方に操縦部を突設させるとともに、エンジンの前方から後方にかけて、機体幅と略同幅の収穫装置と選別装置などを機体フレーム上に載置させたものがあり、エンジンを機体の左右幅方向の中央部に位置させ、走行装置駆動用のミッションケ−スをエンジンの前側に配設することで、エンジンとミッションケ−スの2つの重量物を機体中央部に配設させ、機体の左右バランスを改善し、作業の安全性を向上させる(例えば、特許文献1)ものや、葉茎切断装置によって切断された切断葉茎部を機体側方に搬送する葉茎コンベアを設け、排出作業の手間と労力を軽減したもの(特許文献2)もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−45820号公報
【特許文献2】特開2001−78528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような走行台車では、エンジンを冷却するために、ラジエータファンの吸引によりラジエータを介して取り込んだ空気が、ラジエータおよびラジエータファンから後方に拡散してしまい、これらエンジン冷却風の全てが、エンジンルーム内に導入されず、エンジンの冷却効率が悪く、エンジンの性能を低下させてしまう恐れがあった。
そこで、この発明の目的は、ラジエータファンの吸引により、ラジエータからの排風を、エンジンルーム内に確実に導入させ、エンジンを効率よく冷却してエンジンの性能を維持し、作業性および安全性を向上させた走行台車を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、請求項1に記載の発明は、機体フレーム下方に左右走行装置を備え、前記左右走行装置の間であって、前記機体前部にミッションケースを配設し、前記ミッションケース上方の前記機体フレーム上に設けたエンジンルーム枠内にエンジンを搭載し、前記エンジンの一側方に操縦部を突設させるとともに、前記操縦部と、前記エンジンとの間に、ラジエータを設置し、前記機体の前後方向に亘って前記機体フレーム上に作業機を載置させる自走式の走行車台において、前記エンジンと、前記ラジエータとの間に設けたラジエータファンの上方であって、排風通路を覆う位置に、前記エンジン内に空気を取り込むための吸気ホースを設置したことを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の走行台車において、前記ラジエータの底部に、前記ラジエータ内から前記エンジンへ向けて導出した、エンジンを冷却させる冷却水を通水するロアホースを、前記ラジエータの左右全幅に亘って延設することを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の走行台車において、前記吸気ホースおよび前記ロアホースには、前記エンジンの方向に向けて、複数の孔を形成したガイド部材を着脱自在に設置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、機体フレーム下方に左右走行装置を備え、左右走行装置の間であって、機体前部にミッションケースを配設し、ミッションケース上方の機体フレーム上に設けたエンジンルーム枠内にエンジンを搭載し、エンジンの一側方に操縦部を突設させるとともに、操縦部と、エンジンとの間に、ラジエータを設置し、機体の前後方向に亘って機体フレーム上に作業機を載置させる自走式の走行車台において、エンジンと、ラジエータとの間に設けたラジエータファンの上方であって、排風通路を覆う位置に、エンジン内にエアを取り込むための吸気ホースを設置したので、ラジエータからの排風を、吸気ホースによりエンジン上方に逃すことなく、エンジンルーム内に確実に誘導することで、エンジンを効率的に冷却させることができる。従って、作業性および安全性、生産性を向上させた走行台車を提供することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、ラジエータの底部に、ラジエータ内からエンジンへ向けて導出した、エンジンを冷却させる冷却水を通水するロアホースを、ラジエータの左右全幅に亘って延設するので、ラジエータからの排風を、ラジエータ底部のロアホースにより、エンジン下方にも逃すことなく、エンジンルーム内に確実に誘導することで、エンジンを効率的に冷却させることができる。従って、作業性および安全性、生産性を向上させた走行台車を提供することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、吸気ホースおよびロアホースには、エンジンの方向に向けて、複数の孔を形成したガイド部材を着脱自在に設置するので、ラジエータからの排風を、吸気ホースおよびロアホースに加えて、それぞれに設置したガイド部材により、確実にエンジンルーム内に誘導し、エンジンをより効率的に冷却させることができる。また、メンテナンスを容易にすることができるとともに、ガイド部材に設けられた複数の孔から、排風通路およびエンジンルーム内を放熱することもできる。従って、作業性および安全性を向上させた走行台車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の走行台車を含む一例としての玉葱収穫機の側面図である。
【図2】本発明の走行台車の左側面図である。
【図3】走行台車の斜視図である。
【図4】走行台車の平面図である。
【図5】エンジンルーム周辺の拡大斜視図である。
【図6】エンジンルームへの風向を示す模式図である。
【図7】ラジエータ底部周辺の斜視図である。
【図8】吸気ホースに取付けた例を示すガイド部材の斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。
図1は、本発明の走行台車を含む一例としての玉葱収穫機の右側面図を示す。この例の玉葱収穫機1は、走行台車2上に、作業機3として、掘取装置3aや搬送装置3b、選別装置3cなどを載置させた、乗用型の作業車両である。
【0013】
機体下部の走行台車2は、機体フレーム6の下方に、クローラ式の左右走行装置7を備え、この左右走行装置7間の機体前部にはミッションケース8を配設し、このミッションケース8上方の機体フレーム6上面にエンジン9が搭載される。そして、このエンジン9の一側方には、ステアリングハンドル10や運転席11、昇降ステップ12などを備える操縦部13が側方に突設される。
【0014】
また、走行台車2上であって、エンジン9の前方から上方にかけては、機体幅と略等しい掘取装置3aが配設され、この掘取装置3aで掘取った、玉葱などの農作物を上方に持上げる搬送装置3bが掘取装置3aの後部に連設されるとともに、搬送装置3bの後方には、この搬送装置3bにより持上げたものを受継いで機体後方に搬送する間に、サイズや品質などを選別する選別装置3cが設置される。
【0015】
なお、符号3dは、掘取装置3aと、搬送装置3bとの間に介装させた掻上装置である。また、符号15,16,17は、サイズまたは品種別などに選別した玉葱などを投入する受箱である。
【0016】
次に、本願発明の特徴である、走行台車におけるエンジンルーム内へのラジエータからの排風通路の確保について詳述する。図2は本発明の走行台車の左側面図、図3は走行台車の斜視図、図4は走行台車の平面図、図5はエンジンルーム周辺の拡大斜視図、図6はエンジンルームへの風向を示す模式図である。
【0017】
まず、図2〜4に示すように、エンジン9は、機体の左右幅方向の略中央であって、走行台車2前部で、ミッションケ−ス8上方の機体フレーム6上に載置された、エンジンルーム18のエンジンルーム枠24内に設置される。
【0018】
また、エンジン9と、操縦部13との間には、ラジエータ19が配設されるとともに、ラジエータ19のエンジン9側の側方には、ラジエータファン20が設置される、従って、ラジエータファン20によりラジエータ19に吸引し、このラジエータ19から排風された空気(ラジエータ19内の冷却水を冷却した空気)を、排風通路Sに沿ってエンジンルーム18内に導入することで、エンジン9が冷却される。
【0019】
そして、このエンジン9の上方に設置したマフラー21の適宜位置から突設された排気口22には、テールパイプ23の一端部23aが連係されるとともに、テールパイプ23の他端部23bを、操縦部13とは反対側の側面に位置させるまでテールパイプ23が延設される。従って、エンジン9の排気ガスは、マフラー21からテールパイプ23を介して、操縦部13の作業者から離れた位置で大気中に排出される。なお、テールパイプ23は、エンジンルーム枠24に取付具などを介して固定される。
【0020】
本願発明は、ラジエータ19から排風される空気の排風通路Sに特徴を有するものである。すなわち、図5に示すように、吸気ホース25がラジエータファン20の上面に沿って設置される。
【0021】
この吸気ホース25は、エンジン9に接続されるものであり、エンジン9内における図示しない内燃機関の燃焼補助のための空気を、外気から導入してエンジン9内に搬送する。なお、符号26は、吸気ホース25の外気取込口に取付けられたエアフィルタである。
【0022】
そして、操縦部13の底部に設置するエアフィルタ26に接続された吸気ホース25は、ラジエータ19の側方(機体後方側)を通過し、ラジエータファン20の側方(機体後方側)で設置方向を変え、ラジエータファン20の側方から上方であって、排風通路Sを覆う位置に沿って機体前方に向かい、エンジンルーム枠24に固定して設置されるとともに、ラジエータファン20の側方(機体前方側)からエンジン9に向かい、最終的にはエンジン9に接続される。
【0023】
従って、図6に示すように、ラジエータファン20の吸引力により、ラジエータ19に取り込まれた空気は、ラジエータ19内に有する、後述の通水ホース中を流れるエンジン冷却水を冷却後、ラジエータファン20下流側であるエンジンルーム18内へ向けてラジエータ19から排風される。
【0024】
このとき、ラジエータ19から排風される空気の排風通路Sの始端部にあたるラジエータファン20の上方には、吸気ホース25が設置されているため、ラジエータファン20上方に向けて拡散しようとするラジエータ19からの排風が、吸気ホース25に衝突し、下方の排風通路Sに下降する。
【0025】
この結果、ラジエータ19からの多くの排風が、排風通路Sに沿って、ラジエータファン20の排出力によりエンジンルーム18内に導入される。
【0026】
このような構成により、ラジエータ19からの排風を、吸気ホース25によりエンジン9の上方に逃すことなく、排風通路Sに沿って、エンジンルーム18内に確実に誘導することで、エンジン9を効率的に冷却させることができる。また、既存の吸気ホース25を用いることにより、簡単な構成で、安価にエンジン9を効率的に冷却させることができる。
【0027】
なお、さらにラジエータ19からの排風をエンジン9外方に逃すことなく、排風通路Sに集中誘導させることもできる。図7は、ラジエータ底部周辺の斜視図である。
【0028】
この図7に示すように、エンジン9に接続された冷却水の通水ホースであって、蛇行設置されたラジエータ19内からの出口部分に位置するロアホース27を、ラジエータ19の底部に沿って延設する。なお、ロアホース27は、ラジエータ19の底部に固定させてもよい。
【0029】
従って、上述同様に、ラジエータ19から排風される空気の排風通路Sの始端部にあたるラジエータ19の下方には、ロアホース27が設置されているため、ラジエータ19の下方に向けて拡散しようとするラジエータ19からの排風が、ロアホース27に衝突し、上方の排風通路Sに上昇する。
【0030】
この結果、ラジエータ19からの排風のほとんどが、排風通路Sに沿って、ラジエータファン20の排出力によりエンジンルーム18内に導入される。
【0031】
このような構成により、ラジエータ19からの排風を、ラジエータ19底部のロアホース27により、エンジン9の下方にも逃すことなく、排風通路Sに沿って、エンジンルーム18内に確実に誘導することで、エンジンを効率的に冷却させることができる。また、既存の吸気ホース25を用いることにより、簡単な構成で、安価にエンジン9を効率的に冷却させることができる。
【0032】
また、上記の各ホース25,27にガイド部材を取付けることもできる。図8は、吸気ホースに取付けた例を示すガイド部材の斜視図である。
【0033】
この図8に示すように、ラジエータファン20の上方に位置する吸気ホース25のエンジンルーム18側には、この吸気ホース25の直径に略等しい長さを有する厚みの薄い、金属製からなるガイド板などのガイド部材28が設置される。
【0034】
このガイド部材28の表面には、複数の通気するための孔hが形成されるとともに、ガイド部材28の端部に設けられた金属製の固定具29を、吸気ホース25に設けられた金属製の固定具30にボルト締結などして固定させる。
【0035】
従って、吸気ホース25のエンジンルーム18側にガイド部材28が備えられるため、エンジンルーム18内へ誘導されるラジエータ19からの排風が、ガイド部材28によって、排風通路Sから離脱することなく、確実にエンジンルーム18内に導入される。
【0036】
また、ガイド部材28は、吸気ホース25に対して着脱自在に設けられるため、エンジンルーム18内周辺のメンテナンスなどの際、ガイド部材28を取り外して作業を行うことができ、作業性を向上させることができる。
【0037】
さらには、ガイド部材28が、上述したような大きさであることから、吸気ホース25に取付けた際にも、エンジンルーム18の上方を覆い閉ざすことがなく、エンジン9およびエンジンルーム18内のエンジン9により加熱された高温空気を、円滑に放熱させることができる。
【0038】
そして、ガイド部材28の表面に形成された複数の孔hにより、ガイド部材28を吸気ホース25に取付けた際、エンジンルーム18内の高温空気を、上記複数の孔hから放熱させることができる。
【0039】
なお、上述したガイド部材28は、エンジンルーム18側のロアホース27に着脱自在に取付けることにより、上述同様の効果を得ることができる。
【0040】
このような構成により、ラジエータ19からの排風を、吸気ホース25およびロアホース27に加えて、それぞれに着脱自在に設置したガイド部材28により、排風通路Sに沿って確実にエンジンルーム18内に誘導し、エンジン9をより効率的に冷却させることができるとともに、メンテナンス性を向上させることができる。また、ガイド部材28に設けられた複数の孔hから、排風通路Sおよびエンジンルーム18内を放熱させ、エンジン9をより効率的に冷却させることができる。
【0041】
以上詳述したように、この例の走行台車2は、機体フレーム6下方に左右走行装置7を備え、左右走行装置7の間であって、機体前部にミッションケース8を配設し、ミッションケース8上方の機体フレーム6上に設けたエンジンルーム枠24内にエンジン9を搭載し、エンジン9の一側方に操縦部13を突設させるとともに、操縦部13と、エンジン9との間に、ラジエータ19を設置し、機体の前後方向に亘って機体フレーム6上に作業機3を載置させ、エンジン9と、ラジエータ19との間に設けたラジエータファン20の上方であって、排風通路Sを覆う位置に、エンジン9内に空気を取り込むための吸気ホース25を設置したものである。
【0042】
加えて、ラジエータ19の底部に、ラジエータ19内からエンジン9へ向けて導出した、エンジン9を冷却させる冷却水を通水するロアホース27を、ラジエータ19の左右全幅に亘って延設するとともに、吸気ホース25およびロアホース27には、エンジン9の方向に向けて、複数の孔hを形成したガイド部材28を設置する。
【産業上の利用可能性】
【0043】
なお、上述では、走行台車の一例として、玉葱収穫機を例に説明したが、この発明はこれに限定されるものではなく、鱗茎菜類などの野菜や果物の収穫機などを載置させ自走可能とするあらゆる乗用型の走行台車に適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
2 走行台車
6 機体フレーム
9 エンジン
18 エンジンルーム
19 ラジエータ
20 ラジエータファン
24 エンジンルーム枠
25 吸気ホース
27 ロアホース
28 ガイド部材
S 排風通路
h 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体フレーム下方に左右走行装置を備え、
前記左右走行装置の間であって、前記機体前部にミッションケースを配設し、
前記ミッションケース上方の前記機体フレーム上面に設けたエンジンルーム枠内にエンジンを搭載し、前記エンジンの一側方に操縦部を突設させるとともに、前記操縦部と、前記エンジンとの間に、ラジエータを設置し、前記機体の前後方向に亘って前記機体フレーム上に作業機を載置させる自走式の走行車台において、
前記エンジンと、前記ラジエータとの間に設けたラジエータファンの上方であって、排風通路を覆う位置に、前記エンジン内にエアを取り込むための吸気ホースを設置したことを特徴とする走行車台。
【請求項2】
前記ラジエータの底部に、前記ラジエータ内から前記エンジンへ向けて導出した、エンジンを冷却させる冷却水を通水するロアホースを、前記ラジエータの左右全幅に亘って延設することを特徴とする、請求項1に記載の走行車台。
【請求項3】
前記吸気ホースおよび前記ロアホースには、前記エンジンの方向に向けて、複数の孔を形成したガイド部材を、着脱自在に設置することを特徴とする、請求項1に記載の走行車台。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−51455(P2011−51455A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201662(P2009−201662)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】