説明

走行支援装置および走行支援方法

【課題】 自車両の合流(横断)が完全に行われたときに、適切なタイミングで「お礼」のメッセージを発信できるようにして、車両間のコミュニケーションに無用の混乱を来たすような虞のない走行支援装置および走行支援方法を提供する。
【解決手段】 進路への進入可否打診のための譲歩依頼メッセージと、譲歩依頼メッセージ応諾に対するお礼メッセージと、を含む複数メッセージのうちの一のメッセージ信号を含む信号を他車両に送信し、且つ、他車両からメッセージ信号を受信するようにし、自車両から他車両へのお礼メッセージ信号の送信に関し、自車両が他車両の進路への進入を完了したことに相応する許容条件を充足している場合にその送信を許容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差点での安全かつスムーズな進入を可能にするための車両の走行支援装置および走行支援方法、特に、合流や横断などのための譲歩の打診と譲歩して貰ったことに対する「お礼」メッセージの発信のタイミングを適切なものとする走行支援装置および走行支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自車輌の走行に影響を与えることが予想される他車輌を特定し、当該他車輌との間で運転者の意志情報を双方向で通信する車車間通信装置が従来より提案されている(例えば、特許文献1)。この提案では、交通状況を判断した運転者の発した音声に応答して車車間通信が起動し開設される。この車車間通信によって、自車両の走行に影響を及ぼすと思われる他車両の運転者と音声(認識)に基づく双方向通信を行い、該当する車両相互間での意思疎通を可能にし、円滑な交通を実現しようとするものであるとされている。
【特許文献1】特開2002−183889(段落0004〜段落0005、図2、図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上掲の従来の技術によれば、自車両の走行に影響を及ぼすと考えられる他車両との間で、時間的および距離的に前もってコミュニケーションを行い、円滑な交通の実現を試みるものである。一方、このような技術が功を奏すると期待される一つの状況は、信号の無い交差点等において、非優先道路上の自車両が優先道路上の他車両の進路への進入、または優先道路の横断を試みているといった場面である。
【0004】
このような場面では、自車両から他車両に対して、進入や横断等の許可を打診するメッセージを送信し、この他車両から自車両に進入や横断等の譲歩に関するメッセージの返答が行われ、更には、上述のような打診に応諾して呉れた他車両側に、お礼のメッセージを送るといったことが滞りなく的確に行われることが望ましい。
しかしながら、特許文献1では、自車両から他車両への合流後のお礼ができる条件やタイミングについて別段の調整を図ろうとする思想がない。このため、不適切なタイミング、例えば、自車両の合流完了以前にお礼を発信してしまうようなことがあると、このお礼を受信した他車両は、その時点で既に自車両が合流完了したものと誤解するケースが予測される。このような誤解が生じると、場合によっては、他車両の運転者の混乱を招来してしまう虞れもある。
【0005】
本発明は上述のような問題点に鑑みてなされたものであり、自車両の合流(横断)が完全に行われたときに、所定の適切なタイミングで「お礼」などのメッセージを発信することを許容するようにして、車両間のコミュニケーションに無用の混乱を来たすような虞のない走行支援装置および走行支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するべく、本願では次のような技術を提案する。
自車両から他車両の進路への進入の可否を打診するための譲歩依頼メッセージと、当該他車両が譲歩依頼メッセージに応諾したことに対するお礼であるお礼メッセージと、を含む複数種類のメッセージのうちから、自車両側で選択した特定のメッセージを担うメッセージ信号を含む信号を前記他車両に送信し、且つ、他車両からのメッセージ信号を含む信号を受信することが可能な通信手段と、前記通信手段による、前記自車両から前記他車両への前記お礼メッセージを担うお礼メッセージ信号の送信に関して、前記自車両が前記他車両の進路への進入を完了したことに相応する許容条件を充足している場合に当該お礼メッセージ信号の送信を許容する送信規制手段と、前記通信手段で受信された信号に対応する情報を運転者に提供する情報提供手段と、を備えたことを特徴とする走行支援装置。
ようにするというものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、自車両が優先道路への合流が完了していない時点での「お礼」の送信を防止することができ、他車両から自車両の合流状況が路肩停止車両や交差点等の手前のカーブ等により、確認困難な場合に、自車両が合流以前に「お礼」を送信した際に他車両の運転者が自車両の合流状況に関する誤解を生じてしまう虞を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。尚、以下に参照する図においては、便宜上、説明の主題となる要部は適宜誇張し、要部以外については適宜簡略化し乃至省略されている。
図1は、本発明の実施の形態としての走行支援装置の要部のブロック図である。この走行支援装置(その要部)100は、車両の所定部位に適切な使用環境が維持され得る形態で装備され、自己に接続されるデバイスを含んで構成される系全体を統括的に制御するシステムコントローラとして機能し得るようにマイクロプロセッサを主体に構成された処理装置101には、この処理装置101と各種のデータおよび命令を授受し車両の状況や制御に係る各種のデータを読み出し可能に保持する記憶装置102が接続されている。
【0009】
また、処理装置101には、車車間通信装置103が接続されており、この車車間通信装置103によって他車両と車車間通信を通して各種の情報(データ)の授受を行い得る。
後述するように、この車車間通信装置103は、自車両から他車両に対してその進路への侵入の可否を確認(打診)するための譲歩依頼メッセージを発信するための手段としても機能し、他車両からこのような打診のメッセージが発信されたときには通信可能領域にあるときに当該メッセージを受信してその打診に対する応答メッセージを発信するように機能し得る。
【0010】
更に、路側装置との通信を行う路車間通信装置104、カーナビゲーションシ装置105(自車両の現在位置を認識する機能、目的地への経路を案内する機能を備える)、カーナビゲーションシ装置105の表示部と車車間通信および路車間通信の通信内容等の表示部並びに自車両での監視対象各部位の状態に係る表示部等を兼ね、インストルメントパネルの中央部位等の適所に設置されて、運転者その他の乗員に対して、画像および音声で情報を提供する情報提供装置として機能する表示装置106も、この処理装置101に接続されている。
【0011】
また、車車間通信装置103を通して他車両とメッセージの授受を行うに際して、発信を意図する定型の(或いは、予め設定した)複数種類のメッセージの選択・決定操作を行うメッセージ選択決定操作部107、自車両の方向指示器の操作および作動状態、ステアリングの舵角やアクセルペダルやブレーキペダルの操作ストローク等の運転操作量を感知する運転操作量感知装置108の出力端、自車両の車速および加減速度ならびに走行距離を認識するための車両状態認識装置109の各出力端も、この処理装置101に接続されている。
尚、その他、自車両に装備された装置を用いるための操作等を行うべく車両の適所に配された操作器110も、この処理装置101に接続され、この操作器110から処理装置101を通して該当する各装置との所要のマンマシンインターフェースが計られる。
【0012】
上述の構成において、処理装置101に接続された各装置のうち、一の装置の機能は他の装置の機能と、別異の物象の状態の量に依拠しつつ類似の機能を果たし、或いはまた、相補的に作用するが、何れの場合も処理装置101によって系全体が統括的に制御されて調和的に作動し得る。例えば、自車両の位置情報、駐車場周りの運転操作に関する補助的情報、地図情報、有料道路に関する情報、給油所その他の施設や店舗に関する案内情報等々の車両の運行の便宜に係る種々の情報が、路車間通信装置104および/またはカーナビゲーションシ装置105を所要に応じて相補的に活用して、処理装置101で収集されるように構成されている。
【0013】
尚、図1の走行支援装置は、自車両に設けられ検出乃至認識を行う各装置によって各種のデータを収集する他に、別途、車車間通信装置103による車車間通信を通して、他車両から、例えば、その車両の位置情報、車両の速度および加減速度に関するデータ(自車両に装備されたものと同様に当該他車両に設けられた車両状態認識装置によって認識され、その車両の処理装置から車車間通信装置を通して送信されたデータ)の供給を受けられように構成されている。
【0014】
図1の構成において、カーナビゲーションシ装置105(或いは、更に、所定の路側装置との通信を行う路車間通信装置104、および、処理装置101の該当する機能部をも含む構成)によって自車両の位置を認識する自車両位置認識手段が構成される。
また、車車間通信装置103、および、処理装置101の該当する機能部によって、他車両の位置を認識する他車両位置認識手段が構成される。
【0015】
更に、車車間通信装置103、および、処理装置101の該当する機能部(或いは、更に、カーナビゲーションシ装置105、および、表示装置106をも含む構成)によって、所定時点で当該所定時点以降の前記自車両および他車両の各移動軌跡を予測して当該予測による移動軌跡の交差位置を推定する移動軌跡予測手段が構成される。
更に、車車間通信装置103、および、表示装置106、ならびに、メッセージ選択決定操作部107によって、前記自車両から前記他車両に対して自車両側で選択したメッセージを担うメッセージ信号を含み得る信号を送信し、且つ、他車両からのメッセージ信号を含み得る信号を受信することが可能な通信手段が構成される。
【0016】
この通信手段は、後に図4を参照して例示するように、自車両から他車両の進路への進入の可否を打診するための「入れてください」等の譲歩依頼メッセージと、当該他車両が譲歩依頼メッセージに応諾したことに対するお礼である「ありがとう」等のお礼メッセージと、を含む複数種類のメッセージのうちから、自車両側で選択した特定のメッセージを担うメッセージ信号を含む信号を他車両に送信し、且つ、他車両からの「お先にどうぞ」等のメッセージに相応するメッセージ信号を含む信号を受信することが可能なように構成されている。
【0017】
本例の装置では、更に、上述の通信手段によって、自車両から他車両へのお礼メッセージを担うお礼メッセージ信号の送信に関して、自車両が他車両の進路への進入を完了したことに相応する許容条件を充足している場合に当該お礼メッセージ信号の送信を許容する送信規制手段が設けられている。この送信規制手段は、上述の処理装置101の該当機能部によって構成され、それが、車車間通信装置103、および、表示装置106、ならびに、メッセージ選択決定操作部107等が連携する形で構成される通信手段を制御するように機能する。
【0018】
この送信規制手段がそれによるお礼メッセージ信号の送信を許容するか否かの判断を行うに依拠する「許容条件」は、自車両の進行方向に関連して規定した第1の許容条件と、前記自車両の走行距離に関連して規定した第2の許容条件と、前記自車両の方向指示器の状態に関連して規定した第3の許容条件と、の何れもが充足されることを以って規定される。これら許容条件に係る、自車両の進行方向、自車両の走行距離、および、自車両の方向指示器の状態は、既述の、カーナビゲーションシ装置105、車両状態認識装置109、および、運転操作量感知装置108の各出力を、処理装置101が認識することによって検知される。
【0019】
図2は、本発明の実施の形態としての走行支援装置を適用する状況の一例を説明するための図である。図示の状況において、自車両Aが交差点CRSの非優先道230側で優先道路260へ左折での進入を試みている。このとき、優先道路260上を自車両Aの右方向から他車両Bが交差点CRSに向かって走行している。また、このとき、交差点CRS手前には、路肩に他車両Cが停車している。
【0020】
従って、他車両Bからは自車両Aの合流状況が他車両Cの陰になって確認困難な状況となっている。図2では、各車両について、上述の移動軌跡予測手段によって予測される移動軌跡(部分)が矢線で示され、移動軌跡の交差位置が参照符号INTで示されている。尚、本明細書において、一方の移動軌跡が他方を横断する場合のみならず、一方の移動軌跡の延長上に他方が合流するときの当初の重複位置も、この「交差位置」に該当するものとする。
【0021】
図3は、図1中の処理装置における処理手順の一例を表すフローチャートである。図3において、ステップS301では、自車両が車車間通信装置103を介して自車両周辺に存在する他車両の情報を受信する。処理装置101は、車車間通信装置103が他車両の情報を受信した場合、即時に受信内容を参照し、項目毎に情報を分割して記憶装置102へ格納する。本例では、車車間通信装置103を通して、他車両情報としての、各他車両の位置、車速および運転者が伝達したいメッセージコード等が入手可能である。また、通信可能な他車両の台数は特に制限せず、車々間通信装置103の通信範囲内で自車両周辺に存在する車々間通信装置装備車両全車からの情報を収集可能なものとする。
【0022】
次いで、ステップS301で取得した他車両情報から当該他車両が自車両の通行に影響がある車両であるかどうかを判断する(ステップS302)。具体的には、当該他車両に関して上述の移動軌跡予測手段によって予測される移動軌跡が自車両の移動軌跡と交差する関係にあるかどうかを自車両と当該他車両の位置関係および進行方向とから判断する。
自車両と当該他車両の移動軌跡が交差すると予測される場合は、当該他車両が自車両の通行に影響がある車両であると判断し、ステップS303へ進む。
一方、自車両の通行に影響のある車両が無い場合には、ステップS301へ戻り、処理を繰り返す。既述の図2の状況では、他車両Bが自車両Aの通行に影響がある接近車両と認識される。
【0023】
次いで、ステップS303では、自車両Aおよび他車両の移動軌跡の交差位置INTを算出する。交差位置INTの算出は、例えば、2つの移動軌跡たる直線の交点を求めるための次の式(1),(2)に各該当する車両の座標位置と進行方向とを当てはめて実行する。即ち:
X=(tAnθ1・X1−tAnθ2・X2+Y2−Y1)/(tAnθ1−tAnθ2)……(1)
Y=tAnθ2(X−X2)+Y2……(2)
(但し、 X:交差位置INTのx座標 Y:交差位置INTのy座標 X1:自車両のx座標 Y1:自車両のy座標 θ1:自車両の向き X2:該当する他車両のx座標 Y2:該当する他車両のy座標 θ2:該当する他車両の向き)
【0024】
次いで、ステップS304で、自車両の交差位置INTまでの距離D1、該当する他車両の交差位置INTまでの距離D2を算出する。距離D1、D2の算出は、例えば、次の式(3),(4)に交差位置Cの座標位置と各該当する車両の座標位置とを当てはめて実行する。
即ち:
1={(X−X12+(Y−Y121/2……(3)
2={(X−X22+(Y−Y221/2……(4)
【0025】
次いで、ステップS305で、ステップS304で求めた自車両Aから交差位置INTまでの距離D1が所定値よりも小さいかどうかを判定する。ステップS305での判定の結果、自車両Aから交差位置までの距離D1が所定値よりも小さい場合には、ステップS306に移行する。一方、自車両Aから交差位置INTまでの距離D1が所定値よりも大きい場合には、ステップS301へ戻り、処理を繰り返す。
ここに、所定値とは自車両Aが交差点CRS手前の停止線付近にいるかどうかを判断する値であり、例えば5[m]とする。
【0026】
ステップS306では、接近車両Bが自車両Aとの交差位置INTに到達するまでの所要時間TTC2を算出する。所要時間TTC2の算出には、接近車両Bの交差位置INTまでの距離D2と車速V2および加減速度α2を用いる。ここで、加速度α2は、車速V2の微分値として算出する。なお、これ以外にも他車両Bから車車間通信装置103を通して直接加速度のデータを送信して貰っても良い。
【0027】
次いで、ステップS307では、接近車両Bの交差位置INTまでの所要時間TTC2が所定値よりも小さいかどうかを判定する。判定の結果、所要時間TTC2が所定値よりも小さい場合には、次のステップS308に移行する。一方、所要時間TTC2が所定値よりも大きいと判定された場合には、自車両Aが優先道路260に「余裕を持って」進入可能であると判断し、接近車両Bに対する譲歩メッセージの送信は許可せず、ステップS301へ戻り、処理を繰り返す。ここでの所定値とは自車両Aが優先道路に余裕を持って進入する事が可能な時間であり、例えば10秒とする。
【0028】
即ち、所要時間TTC2が所定値よりも大きい場合には、他車両(車両B)は未だ自車両の挙動を感知する必要がない程度に交差位置INTから遠く離隔した領域を走行しており、自車両は未だこの領域を走行している他車両の進路に、何等別段の意向打診等を伴わずとも「余裕をもって」進入することが可能である。従って、この判定がなされたときには、自車両および他車両とも何等別段の処置乃至操作を俟つ必要はないためステップS301へ戻り、処理を繰り返す。
【0029】
ステップS308では、他車両Bが実施すると想定される減速度の設定を行う。通常、想定減速度は、例えば0.2Gを基準値に設定する。これは、通常運転者が赤信号で停止する際に発生する減速度である。
次いで、ステップS309では、接近車両Bが現在の車両運動状態からステップS308で設定した想定減速度で減速を行った場合に、接近車両Bが停止するのに掛かる距離の算出を行う。停止までに掛かる距離の算出は、接近車両Bの車速と想定する所定の減速度を用いる。算出して得られた接近車両Bの停止距離をSD2とする。
【0030】
更に、次のステップS310では、ステップS309で求めた接近車両Bの停止距離SD2と、接近車両Bから交差位置INTまでの距離D2を比較する。接近車両Bが停止するのに要する距離SD2よりも接近車両Bから交差位置INTまでの距離D2が大きい場合には、自車両Aの進入に対して、接近車両Bが進路譲歩を行える可能性が高いと判断し、次のステップS311に移行する。
【0031】
一方、接近車両Bが停止するのに要する距離SD2よりも接近車両Bから交差位置INTまでの距離D2が小さい場合には、自車両Aの進入に対して、接近車両Bが進路譲歩を行える可能性が低いと判断し、ステップS301に戻り、処理を繰り返す。
ステップS311では、自車両Aから接近車両Bに対して、進路譲歩の依頼を行うためのメッセージ送信の許可を行う。この処理によって、自車両Aの運転者は、接近車両Bの運転者に対して「入れてください」のように進路の譲歩を意味するメッセージコードを運転者の意思によって選択し送信することができる。メッセージの送信のための操作部の例とその操作については、図4を参照して後述する。
【0032】
次いで、ステップS312では、自車両Aが接近車両Bから合流の譲歩に関するメッセージを受信したかどうかの判断を行う。譲歩に関するメッセージとしては、「お先にどうぞ」などのような内容が考えられる。自車両Aが接近車両Bから譲歩を受けた場合には、ステップS313へ進む。また、その場合、自車両Aの運転者は周囲の安全を確認しながら非優先道路230から優先道路260への合流を実施する。
【0033】
一方、接近車両Bから譲歩に関するメッセージを受けていない場合には、ステップS301に戻り、処理を繰り返す。
ステップS313では、自車両Aが非優先道路から優先道路へ合流を完了したかどうかを判断するための準備処理を実行する。
本例では、自車両Aが優先道路への合流を完了したことを認識するためのパラメータとして、自車両Aの進行方向と自車両Aの走行距離および自車両Aの方向指示器の作動状態という3種類のパラメータを利用する。
【0034】
まず、自車両Aの進行方向(第1の許容条件)については、自車両Aが非優先道路から優先道路へ合流することによって、自車両Aの進行方向は、接近車両Bの進行方向と同じような値となるはずである。したがって、自車両Aの進行方向と接近車両Bの進行方向との差が所定値以下となった場合には、自車両Aが非優先道路から優先道路への合流を完了した可能性が高いと判断する。
【0035】
次に、自車両Aの走行距離(第2の許容条件)については、自車両Aが非優先道路から優先道路へ合流することによって必然的に積算されることになる。したがって、非優先道路上の他車両との交差位置INT付近を基点として、自車両Aが所定値以上の距離を走行した場合には、自車両Aによる非優先道路230から優先道路260への合流が完了した可能性が高いと判断する。自車両Aが非優先道路から優先道路に合流したことを判断する基点からの距離として、例えば10[m]程度の距離が考えられる。
【0036】
最後に、自車両Aの方向指示器の作動状態(第3の許容条件)については、自車両Aが非優先道路230から優先道路260へ合流した際には、方向指示器の作動状態がONからOFFに切り替わるはずである。したがって、自車両Aの方向指示器の作動がONからOFFに切り替わった場合は、自車車両Aによる非優先道路230から優先道路260への合流が完了した可能性が高いと判断する。
次いで、ステップS314では、各パラメータの状態からそれぞれ判断した自車両Aが合流を完了したか否かについて、総合的な判断を行い、自車両Aが非優先道路から優先道路へ合流を完了したかどうかを判断する。
【0037】
具体的には、3種類全てのパラメータ(第1〜第3の許容条件)が自車両Aの合流完了を示していれば、自車両Aが確実に非優先道路から優先道路への合流を完了したものと判断してステップS315に移行する。一方、3種類のパラメータのなかで一つでも自車両Aが合流未完了であることを示していれば、自車両Aは、まだ非優先道路230から優先道路260への合流が完了していないと判断し、ステップS313に戻り、既述の判断処理を繰り返して3種類のパラメータの全てが、夫々、合流を完了したときの状態に転じるのを待機する。
【0038】
ステップS315では、自車両Aから接近車両Bに対して、合流を譲歩してくれたことに対するお礼を行うためのメッセージ送信の許可を行う。この処理によって、自車両Aの運転者は、接近車両Bの運転者に対して「ありがとう」のように譲歩に対するお礼を意味するメッセージコードを運転者の意思によって選択し送信することができる。メッセージの送信のための操作部の例とその操作については、図4を参照して後述する。
【0039】
以上に説明したように、自車両から他車両へ進入や横断の可否を確認する走行支援装置において、自車両が他車両から合流譲歩に関するメッセージを受信した場合に、自車両が優先道路への合流を完了する以前の段階で、他車両に対して「お礼」に関するメッセージの送信をしてしまうことを防止することがでる。
また、図2に表された状況のように、他車両Bから自車両Aの合流状況が路肩停止車両Cや、交差点等の手前のカーブ等により、確認困難な場合に、自車両が合流以前に早計にも「お礼」を送信してしまったような場合における他車両運転者の誤解を防止することができる。
尚、上述の例では、自車両と接近車両が交差する交差位置INTを各車両の位置関係と進行方向とから算出していたが、この他にもカーナビゲーションシ装置105内に格納されている地図情報に交差位置INTをあらかじめ記憶しておき、その情報をもとに交差位置INTを取得する方法も考えられる。
【0040】
次に、このメッセージを選択して発信するための操作部(表示部)とその操作について図面を参照して説明する。
図4は、車車間通信を通して送信するメッセージの選択と決定の操作を行うための機構部について説明するための図である。図4の機構部はカーナビゲーションシステムNVSの操作・表示部と兼用するようにして車両のインストルメントパネルに装備される。カーナビゲーションシステムNVS(図1のカーナビゲーション装置105)の操作スイッチボードSWBに配された適宜のモード選択スイッチの操作に応じて、表示画面MS上に送信の候補となる複数のメッセージがメッセージリストMLとして表示画面MS(図1の表示装置106の画面)の中央部を避けた位置に共通の枠内に列記される如くして表示される。
【0041】
図示の例では、説明の便宜上、第1メッセージM1たる「ありがとう」、第2メッセージM2たる「入れてください」、第3メッセージM3たる「お先にどうぞ」の3種類のメッセージのみが表示されるように描かれているが、これより多くのメッセージを列記可能に構成してもよい。操作スイッチボードSWBの一隅にロータリ・プッシュ式のスイッチRPSが配され、このスイッチRPSの回転操作によって、メッセージリストML中の何れか一つのメッセージが選択的に枠線で特定されるように表示される。
【0042】
スイッチRPSの回転操作でメッセージの種別を選択し、次いで、スイッチRPSをその回転位置を固定させた状態で押し込むように決定操作すると、当該メッセージの選択が決定しそのメッセージに対応するメッセージコードが車車間通信を通して通信相手に発信される。受信側では、このようにして発信されたメッセージコードに対応するメッセージが認識されて、例えば、自車両における図4におけるものと同様の所定の表示画面に文字表示されることになる。
尚、上述の例では、メッセージの種別の選択と決定(発信)は回転およびプッシュ型のスイッチRPSによって行う構成であったが、これに替えて所謂ジョイスティック型のスイッチを適用可能なことは勿論である。
【0043】
図5は、本発明の装置において、他車両からの譲歩メッセージ受信時に、本装置から運転者へ情報提供する場合の表示画面の一例を表す図である。図5において、図2および図4との対応部については同一の参照符号を用いて示してある。尚、一つの図面で技術思想の要点を説明する便宜上、図における各表示対象の大きさや位置の相対関係は必ずしも現実におけるものとは一致していない。
【0044】
この図5の状況では、既に自車両A側から送信した、他車両Bへその進路への合流を打診するメッセージM2たる「入れてください」に対して、車車間通信の相手方たる当該他車両Bからの返答のメッセージM2Rたる「>お先にどうぞ」という文字表示がなされている。
表示画面MSには、非優先道路230と優先道路260との交差点CRS近傍の様子が示され、非優先道路230上に自車両Bの位置が示され、優先道路260上に図2を参照して説明した他車両Bの位置が示されている。尚、各車両を表すパターンの尖端側がそれらの車両の走行方向である。
【0045】
図4を参照して説明したところと同様に、メッセージリストMLには第1メッセージM1たる「ありがとう」、第2メッセージM2たる「入れてください」、第3メッセージM3たる「お先にどうぞ」の3種類のメッセージが表示されている。
図6は、本発明の装置において、他車両からの譲歩メッセージを受信後、自車両が優先道路に合流完了した場合に表示される画面の一例である。図6の状態において、図4中のロータリ・プッシュ式のスイッチRPSの回転位置を固定させた状態で押し込むように決定操作すると、第2メッセージM2たる「ありがとう」の選択が決定し、そのメッセージに対応するメッセージコードが車車間通信を通して通信相手(該当する他車両B)に発信される。
尚、カーナビゲーション装置105に備えられた音声発音装置を利用する等して、音声によって擬似的な双方向の通話を行い得るようにシステムを構成してもよい。
【0046】
図7は、図1中の処理装置における処理手順の他の例を表すフローチャートである。図7において、ステップS701〜ステップS712までは、図3のフローチャートにおけるステップS301〜ステップS312と全く同様であるため、ステップS301をステップS701と、ステップS302をステップS702と、…、以下、同様にして、ステップS312をステップS712と読み替えるものとして、図3における説明を援用し、それら各ステップの説明は省略する
ステップS712に次ぐステップS713では、自車両Aが接近車両Bから合流に対する譲歩応諾(図5の「お先にどうぞ」)のメッセージを受信した場合に、自車両Aの運転者が接近車両Bへお礼に関するメッセージ(「ありがとう」)を送信するためのメッセージ選択操作を許可する。
【0047】
具体的には、自車両Aの情報提供画面上に運転者が送信可能なメッセージとして「ありがとう」という接近車両Bへのお礼を意味するメッセージが表示される。図4の装置に対して、自車両Aの運転者は、ボタン操作により「ありがとう」を選択する(図6)ことでメッセージの選択・送信操作を実行する。
ただし、ステップS713では、自車両Aの運転者が「ありがとう」のメッセージを選択していても、この時点では、接近車両Bへ「ありがとう」のメッセージは、直ちには、送信されていないものとする。
【0048】
次いで、ステップS714では、自車両Aの運転者が接近車両Bに対して「ありがとう」のメッセージ選択・送信を実施したかどうかを判断する。自車両Aの運転者が「ありがとう」を選択・送信している場合は、ステップS715に移行する。一方、自車両Aの運転者が「ありがとう」を選択・送信していない場合は、ステップS718へ移行する。
ステップS715では、自車両Aが非優先道路から優先道路へ合流を完了したかどうかを判断するための準備処理を実行する。
本実施例では、自車両Aが優先道路への合流を完了したことを認識するためのパラメータとして、自車両Aの進行方向と自車両Aの走行距離および自車両Aの方向指示器の作動状態という3種類のパラメータを利用する。
【0049】
まず、自車両Aの進行方向(第1の許容条件)については、自車両Aが非優先道路から優先道路へ合流することによって、自車両Aの進行方向は、接近車両Bの進行方向と同じような値となるはずである。したがって、自車両Aの進行方向と接近車両Bの進行方向との差が所定値以下となった場合には、自車両Aが非優先道路から優先道路への合流を完了した可能性が高いと判断する。
【0050】
次に、自車両Aの走行距離(第2の許容条件)については、自車両Aが非優先道路から優先道路へ合流することによって必然的に積算されることになる。したがって、非優先道路上の他車両との交差位置INT付近を基点として、自車両Aが所定値以上の距離を走行した場合には、自車両Aによる非優先道路230から優先道路260への合流が完了した可能性が高いと判断する。自車両Aが非優先道路から優先道路に合流したことを判断する基点からの距離として、例えば10[m]程度の距離が考えられる。
【0051】
最後に、自車両Aの方向指示器の作動状態(第3の許容条件)については、自車両Aが非優先道路230から優先道路260へ合流した際には、方向指示器の作動状態がONからOFFに切り替わるはずである。したがって、自車両Aの方向指示器の作動がONからOFFに切り替わった場合は、自車車両Aによる非優先道路230から優先道路260への合流が完了した可能性が高いと判断する。
次いで、ステップS715では、各パラメータの状態からそれぞれ判断した自車両Aが合流を完了したか否かについて、総合的な判断を行い、自車両Aが非優先道路から優先道路へ合流を完了したかどうかを判断する。
【0052】
具体的には、3種類全てのパラメータ(第1〜第3の許容条件)が自車両Aの合流完了を示していれば、自車両Aが確実に非優先道路から優先道路への合流を完了したものと判断してステップS717に移行する。一方、3種類のパラメータのなかで一つでも自車両Aが合流未完了であることを示していれば、自車両Aは、まだ非優先道路230から優先道路260への合流が完了していないと判断し、ステップS715に戻り、既述の判断処理を繰り返して3種類のパラメータの全てが、夫々、合流を完了したときの状態に転じるのを待機する。
【0053】
ステップS717では、自車両Aから接近車両Bに対して、合流を譲歩してくれたことに対するお礼を行うためのメッセージ送信の許可を行う。この処理によって、自車両Aの運転者は、接近車両Bの運転者に対して「ありがとう」のように譲歩に対するお礼を意味するメッセージコードを運転者の意思によって選択し送信することができる。メッセージの送信のための操作部の例とその操作については、図4を参照して既述の通りである。
【0054】
他方、ステップS714で運転者が「ありがとう」のメッセージの送信のための操作をしていなかったときに移行するステップS718でも、自車両Aが非優先道路から優先道路へ合流を完了したかどうかを判断するための準備処理を実行する。即ち、ステップS715におけると同様に、自車両Aが優先道路への合流を完了したことを認識するためのパラメータとして、自車両Aの進行方向と自車両Aの走行距離および自車両Aの方向指示器の作動状態という3種類のパラメータを利用する。
【0055】
次いで、ステップS719では、ステップS718での各パラメータの状態からそれぞれ判断した自車両Aの合流が完了したか否かについて、総合的な判断を行い、自車両Aが非優先道路から優先道路へ合流を完了したかどうかを判断する。この判断も、既述のステップS716におけると同様に、3種類全てのパラメータが自車両Aの合流完了を示していれば、自車両Aが確実に非優先道路から優先道路への合流を完了したものと判断してステップS720へ進む。
一方で、3種類のパラメータのなかで一つでも自車両Aが合流未完了であることを示していれば、自車両Aは、まだ非優先道路から優先道路へ合流が完了していないと判断し、ステップS718へ戻り、処理を繰り返す。
【0056】
ステップS720では、自車両Aが合流を完了した時点から所定の距離を走行したかどうかを判断する。ここでの所定の距離とは、具体的には、自車両Aが合流完了後、接近車両Bへのお礼を実行するべき範囲の限界距離を意味し、例えば100[m]程度の距離である。自車両Aが合流完了時点から未だ上記所定の距離を走行していないうちは(即ち、ステップS720でNoと判断されているうちは)、ステップS720へ戻り、処理を繰り返して待機する。即ち、運転者が自発的に「ありがとう」のメッセージの送信のための操作を行うのを待機している。尚、接近車両Bへのお礼を実行するべき範囲について、限界距離で規定するに替えて、経過時間で規定してもよい。
【0057】
これ以上の距離(時間)を走行しても自車両Aの運転者が接近車両Bへのお礼を実行していない場合には、自車両Aの運転者がお礼の送信を忘れているものと判断し、ステップS721へ移行する。ステップS721では、自車両Aから接近車両Bに対して、合流を譲歩してくれたことに対するお礼を行うためのメッセージを、自車両A(その処理装置101と車車間通信装置103等)が運転者に代わって自動で送信する。
【0058】
この処理によって、他車両へは「ありがとう」のメッセージが自動送信され、自車両の運転者へは「ありがとう」のメッセージを送信したことが情報提供される。以上のように構成することによって、自車両から他車両へ進入や横断の可否を確認する走行支援装置において、自車両が他車両から合流譲歩に関するメッセージを受信した場合に、自車両が優先道路への合流を完了する以前に、他車両に対して「お礼」に関するメッセージの送信をしてしまうといったことを防止することができ、他車両から自車両の合流状況が路肩停止車両や交差点等の手前のカーブ等により確認困難な場合に、自車両が合流を完了する以前に「お礼」を送信してしまうことに起因して、既に合流を完了しているものと思い込んでしまうような他車両運転者の誤解を防止することができる。
【0059】
また、本例では、自車両の運転者が合流以前でも送信するメッセージをあらかじめ選択しておくことができる構成としたので、自車両が合流実施後に運転者が慌ててメッセージを送信することを防止でき、安定した運転を行うことができる。
更に、自車両の運転者が他車両へのお礼の実行を忘れた場合には、自車両側から自動的にお礼を他車両に対して送信する構成としたので、他車両が道を譲ったのにも関わらず、対象車両からお礼を貰えず、不快感を覚えてしまうようなことを、効果的に防止することができる。
【0060】
図8は、図1の装置における情報提供装置の特定の動作を表すフローチャートである。この動作は、処理装置101と表示装置106を含んで構成される情報提供規制手段の関与によって、つぎのような形態を以って実行される。
外部の車両から合流のための譲歩要求をうけて、これに応諾し、「お先にどうぞ」のメッセージを送信したときに立つ(ONになる)フラグを監視する(ステップS801)。ステップS801で「お先にどうぞ」の送信フラグが立ったと判断されたときには、次いで、ステップS802で、この送信フラグが立った時点以降の経過時間について計時動作を行う計時カウンタの計数が行われる。
【0061】
この計時カウンタの計数値が監視され(ステップS803)、この計数値(送信フラグが立った時点以降の経過時間)が所定値未満であるか否かが判断される。このステップS803で監視される送信フラグが立った時点以降の経過時間が、所定時間未満であるときに、外部の車両からの受信情報を、表示装置106の画面上に表示して、その情報を運転者に提供することを許可する(ステップS804)。
一方、送信フラグが立った時点以降の経過時間が、所定時間以上になったときには、外部の車両からの受信情報を、表示装置106の画面上に表示しない、即ち、その情報を運転者に提供することを禁止する(ステップS805)。
【0062】
本例の装置では、外部の車両から合流のための譲歩要求を受けて、これに応諾し、「お先にどうぞ」のメッセージを送信したときに、このメッセージとの関連が意識されない程に遅延してお礼のメッセージが届くようなときには、図8のように動作することによって、このように大幅に遅延したお礼の情報までも運転者に表示して提供するようなことは禁止して、不適切なタイミングで運転者に「お礼」のメッセージ情報が提供されてしまうことを防止できるので、運転者が煩わしさを感じてしまう虞を低減することができる。
【0063】
図9は、図1の装置における車車間通信装置103の特定の動作を表すフローチャートである。この動作は、処理装置101と車車間通信装置103を含んで構成される通信規制手段によって営まれる。既述のような判断動作によって、自車両の合流が完了したときに立つ(ONになる)フラグを監視する(ステップS901)。ステップS901で合流完了のフラグが立ったと判断されたときには、次いで、ステップS902で、このフラグが立った時点以降の経過時間について計時動作を行う計時カウンタの計数が行われる。
【0064】
この計時カウンタの計数値が監視され(ステップS903)、この計数値(送信フラグが立った時点以降の経過時間)が所定値未満であるか否かが判断される。このステップS903で監視されるフラグが立った時点以降の経過時間が所定時間未満であるときには、車車間通信装置103を通しての外部の車両との通信を禁止する(ステップS904)。
一方、送信フラグが立った時点以降の経過時間が、所定時間以上になったときには、車車間通信装置103を通しての外部の車両との通信を許可する(ステップS905)。
【0065】
本例の装置では、図9のように機能することによって、自車両の優先道路への合流が完了したときには、他車両からのメッセージを、所定時間の間、受信不可能とする等の規制を行うようにしたので、自車両が優先道路への合流を完了して後、自車両の運転者が周囲の状況を把握する過程における運転行動への、不要な割り込みを防止し、自車両運転者の混乱を防止することができる。
【0066】
以上、本願にて提案の技術思想の構成とその作用について、その実施の形態との対応関係を表わすための参照符合乃至図面番号(代表的なもの)を伴って、次に列記する。
(1) 自車両(A)から他車両(B)の進路への進入の可否を打診するための譲歩依頼メッセージと、当該他車両が譲歩依頼メッセージに応諾したことに対するお礼であるお礼メッセージと、を含む複数種類のメッセージのうちから、自車両側で選択した特定のメッセージを担うメッセージ信号を含む信号を前記他車両に送信し、且つ、他車両からのメッセージ信号を含む信号を受信することが可能な通信手段(103)と、前記通信手段による、前記自車両から前記他車両への前記お礼メッセージを担うお礼メッセージ信号の送信に関して、前記自車両が前記他車両の進路への進入を完了したことに相応する許容条件を充足している場合(図3:ステップS314でYesのとき、 図7:ステップS716でYesのとき)に当該お礼メッセージ信号の送信を許容する送信規制手段(101,103)と、前記通信手段で受信された信号に対応する情報を運転者に提供する情報提供手段(106)と、を備えたことを特徴とする走行支援装置。
【0067】
上記(1)の走行支援装置によれば、自車両が優先道路への合流を完了する以前に、他車両へ「お礼」に関するメッセージを送信できない構成としたので、自車両が優先道路への合流が完了していない時点で早々と「お礼」のメッセージを送信してしまうことを防止することができ、他車両側で、路肩停止車両や交差点等の手前のカーブ等により、自車両の合流状況の確認が、視認では困難な場合に、自車両が合流以前に「お礼」を送信してしまうことに起因して、他車両の運転者が自車両の合流状況に関する誤認をしてしまうことを、未然に防止することができる。
【0068】
(2)前記送信規制手段は、前記他車両(B)からその進路への合流に関する応諾の旨のメッセージを受信しており(図3:ステップS312でYesのとき、 図7:ステップS712でYesのとき)、且つ、自車両(A)が当該進路への合流を完了していることを前記許容条件として(図3:ステップS314でYesのとき、 図7:ステップS716でYesのとき)、当該お礼メッセージ信号の送信を許容するものであることを特徴とする(1)の走行支援装置。
【0069】
上記(2)の走行支援装置によれば、自車両から他車両への「お礼」に関するメッセージの送信は、他車両から合流のための譲歩の要請に応諾する旨のメッセージを受信し、且つ、自車両が優先道路への合流を完了しているという条件が整った場合に実行できる構成としたので、他車両から譲歩を受けていない場合に、自車両運転者が間違って「お礼」のメッセージを他車両に送信してしまい、他車両の運転者に混乱を生じさせてしまうといったことを防止することができる。更に、自車両が優先道路への合流が完了していない時点で「お礼」のメッセージを送信してしまうことを防止することができ、他車両側で、路肩停止車両や交差点等の手前のカーブ等により、自車両の合流状況の確認が、視認では困難な場合に、自車両が合流以前に「お礼」を送信してしまうことに起因して、他車両の運転者が自車両の合流状況に関する誤認をしてしまうといったことを、未然に防止することができる。
【0070】
(3)前記情報提供手段による運転者への情報提供を、所定の許可条件に該当する場合に許可する情報提供規制手段(101)を更に備え、前記通信手段(103)を通してお礼メッセージ信号が受信されたときには、前記情報提供規制手段は、合流の譲歩要求に応諾する旨の譲歩メッセージを既に送信しており(図8、ステップS801でYesのとき)、且つ、該譲歩メッセージの送信後所定の時間が経過していないこと(図8、ステップS803でYesのとき)を前記許可条件として、前記お礼メッセージ信号に対応する情報を運転者に情報提供する(図8、ステップS804)ことを特徴とする(1)の走行支援装置。
上記(3)の走行支援装置によれば、不適切なタイミングで運転者に「お礼」のメッセージ情報が提供されてしまうことを防止できるので、運転者が煩わしさを感じてしまう虞を低減することができる。
【0071】
(4)前記通信手段(103)による通信を所定の規制条件に該当するときには規制する通信規制手段(101)を更に備え(図9)、前記通信規制手段は、自車両が優先道路への合流を完了し、且つ、当該合流完了後所定時間が経過していないことを前記規制条件(図9:ステップS904でYesのとき)とすることを特徴とする(1)の走行支援装置。
上記(4)の走行支援装置によれば、自車両の優先道路への合流が完了したときには、他車両からのメッセージを、所定時間の間、受信不可能とする等の規制を行う構成としたので、自車両が優先道路への合流を完了して後、自車両の運転者が周囲の状況を把握する過程における運転行動への、不要な割り込みを防止し、自車両運転者の混乱を防止することができる。
【0072】
(5)送信規制手段は、前記自車両の進行方向に関連して前記許容条件を規定(図3:ステップS313、 図7:ステップS715)していることを特徴とする(1)の走行支援装置。
上記(5)の走行支援装置によれば、自車両の合流完了の判断に、自車両の進行方向を利用する構成としたので、例えば自車両が非優先道路から優先道路に合流した際に、自車両の進行方向が優先道路を走行する他車両の進行方向とほぼ等しくなる特性を利用して、自車両の合流の完了を簡便に判断することができる。
【0073】
(6)送信規制手段は、前記自車両の走行距離に関連して前記許容条件を規定(図3:ステップS313、 図7:ステップS715)していることを特徴とする(1)の走行支援装置。
上記(6)の走行支援装置によれば、自車両の合流完了の判断に、自車両の走行距離を利用する構成としたので、例えば自車両が非優先道路から優先道路に合流した際に、非優先道路上の所定の位置を基点として、自車両の走行距離が所定値以上となる特性を利用して、自車両の合流の完了を簡便に判断することができる。ここで、基点として設定する非優先道路上の所定の位置とは、非優先道路と優先道路の交差位置CRTから所定の距離離れた位置とする。
【0074】
(7)送信規制手段は、前記自車両の方向指示器の状態に関連して前記許容条件を規定(図3:ステップS313、 図7:ステップS715)していることを特徴とする(1)の走行支援装置。
上記(7)の走行支援装置によれば、自車両の合流完了の判断に、自車両の方向指示器の作動状態を利用する構成としたので、例えば自車両が非優先道路から優先道路へ合流した際に、自車両の方向指示器がON状態からOFF状態になる特性を利用して、自車両の合流を簡便に判断することができる。
【0075】
(8)送信規制手段は、前記自車両の進行方向に関連して規定した第1の許容条件と、前記自車両の走行距離に関連して規定した第2の許容条件と、前記自車両の方向指示器の状態に関連して規定した第3の許容条件と、の何れか一の条件が充足さないときには前記許容条件を充足しないものとする(図3:ステップS314、 図7:ステップS716)ことを特徴とする(1)の走行支援装置。
上記(8)の走行支援装置によれば、自車両の進行方向と、自車両の走行距離と、自車両の方向指示器の状態と、のいずれか1つでも自車両の合流完了を示していない場合には、自車両の合流が完了していないと判断する構成としたので、自車両が合流を完了していないことを確実に判断することができる。
【0076】
(9)送信規制手段は、前記自車両の進行方向に関連して規定した第1の許容条件と、前記自車両の走行距離に関連して規定した第2の許容条件と、前記自車両の方向指示器の状態に関連して規定した第3の許容条件と、の何れもが充足されることを以って(図3:ステップS314でYesのとき、 図7:ステップS716でYesのとき)前記許容条件を規定していることを特徴とする(1)の走行支援装置。
上記(9)の走行支援装置によれば、自車両の進行方向と、自車両の走行距離と、自車両の方向指示器の状態と、の3つ全てが自車両の合流完了を示している場合には、自車両の合流が完了していると判断する構成としたので、自車両が合流を完了したことを確実に判断することができる。
【0077】
(10)前記送信規制手段は、前記許容条件が充足されない状態においても、前記お礼メッセージの送信操作を行うことを許容し(図7:ステップS713)、その後、前記許容条件が充足された状態に到ったときに、当該お礼メッセージ信号の送信を許容する(図7:ステップS717)ことを特徴とする(1)の走行支援装置。
上記(10)の走行支援装置によれば、自車両が他車両から合流の譲歩を受けた場合に、自車両が合流を完了していない状態にあっても、自車両の運転者が他車両への「お礼」に関するメッセージの送信操作を実施することができ、その後、自車両が合流を完了した時点で、自車両から他車両に対してメッセージ信号の実際の送信を車両が実行する構成としたので、自車両の運転者は、運転操作に余裕のある状況で他車両への「お礼」に関するメッセージの送信操作を実行でき、また、他車両運転者の誤解の無いタイミングで実際の送信を行うことができる。
【0078】
(11)前記許容条件が充足された状態に到った後(図7:ステップS719でYesのとき)、所定の時間を経過した以降においても自車両の運転者が当該他車両へお礼メッセージを送信する操作を行わない場合には、前記お礼メッセージ信号を自動的に送信する(図7:ステップS721)お礼メッセージ自動送信手段を更に備えたことを特徴とする(1)の走行支援装置。
【0079】
上記(11)の走行支援装置によれば、自車両が他車両からの譲歩を受けて合流完了後、所定の時間を経過した(従って、この時間に相応する距離を走行した)以降においても自車両運転者が当該他車両への「お礼」に関するメッセージを送信していない場合には、車両が自動的に「お礼」に関するメッセージを送信する構成としたので、自車両運転者が他車両への「お礼」に関するメッセージの送信を忘れていた場合にも、車両が自動的に「お礼」に関するメッセージを送信できるので、他車両が道を譲ったのにも関わらず、対象車両からお礼を貰えず、不快感を覚えてしまうようなことを、効果的に防止することができる。
【0080】
(12)自車両から他車両の進路への進入の可否を打診するための譲歩依頼メッセージと、当該他車両が譲歩依頼メッセージに応諾したことに対するお礼であるお礼メッセージと、を含む複数種類のメッセージのうちから、自車両側で選択した特定のメッセージを担うメッセージ信号を含む信号を前記他車両に送信し、且つ、他車両からのメッセージ信号を含む信号を受信するようにし、前記自車両から前記他車両への前記お礼メッセージを担うお礼メッセージ信号の送信に関して、前記自車両が前記他車両の進路への進入を完了したことに相応する許容条件を充足している場合に当該お礼メッセージ信号の送信を許容する走行支援方法。
【0081】
上記(12)の走行支援装置によれば、自車両が優先道路への合流を完了する以前に、他車両へ「お礼」に関するメッセージを送信できない構成としたので、自車両が優先道路への合流が完了していない時点で早々と「お礼」のメッセージを送信してしまうことを防止することができ、他車両側で、路肩停止車両や交差点等の手前のカーブ等により、自車両の合流状況の確認が、視認では困難な場合に、自車両が合流以前に「お礼」を送信してしまうことに起因して、他車両の運転者が自車両の合流状況に関する誤認をしてしまうことを、未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施の形態としての走行支援装置の要部のブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態としての走行支援装置を適用する状況の一例を説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態としての走行支援装置を適用する状況の他の例を説明するための図である。
【図4】車車間通信を通して送信するメッセージの選択と決定の操作を行うための機構部について説明するための図である。
【図5】本発明の装置において、他車両からの譲歩メッセージ受信時に、本装置から運転者へ情報提供する場合の表示画面の一例を表す図である。
【図6】本発明の装置において、他車両からの譲歩メッセージを受信後、自車両が優先道路に合流完了した場合に表示される画面の一例である。
【図7】図1中の処理装置における処理手順の他の例を表すフローチャートである。
【図8】図1の装置における情報提供装置の特定の動作を表すフローチャートである。
【図9】図1の装置における車車間通信装置103の特定の動作を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0083】
100…走行支援装置(その要部) 101…処理装置 102…記憶装置 103…車車間通信装置 104…路車間通信装置 105…カーナビゲーション装置 106…表示装置(情報提供装置) 107…メッセージ選択決定操作部 108…運転操作量感知装置 109…車両運動状態認識装置 110…操作器 230…非優先道路 260…優先道路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両から他車両の進路への進入の可否を打診するための譲歩依頼メッセージと、当該他車両が譲歩依頼メッセージに応諾したことに対するお礼であるお礼メッセージと、を含む複数種類のメッセージのうちから、自車両側で選択した特定のメッセージを担うメッセージ信号を前記他車両に送信し、且つ、他車両からのメッセージ信号を受信することが可能な通信手段と、前記通信手段による、前記自車両から前記他車両への前記お礼メッセージを担うお礼メッセージ信号の送信に関して、前記自車両が前記他車両の進路への進入を完了したことに相応する許容条件を充足している場合に当該お礼メッセージ信号の送信を許容する送信規制手段と、前記通信手段で受信された信号に対応する情報を運転者に提供する情報提供手段と、を備えたことを特徴とする走行支援装置。
【請求項2】
前記送信規制手段は、前記他車両からその進路への合流に関する応諾の旨のメッセージを受信しており、且つ、自車両が当該進路への合流を完了していることを前記許容条件として、当該お礼メッセージ信号の送信を許容するものであることを特徴とする請求項1に記載の走行支援装置。
【請求項3】
前記情報提供手段による運転者への情報提供を、所定の許可条件に該当する場合に許可する情報提供規制手段を更に備え、前記通信手段を通してお礼メッセージ信号が受信されたときには、前記情報提供規制手段は、合流の譲歩要求に応諾する旨の譲歩メッセージを既に送信しており、且つ、該譲歩メッセージの送信後所定の時間が経過していないことを前記許可条件として、前記お礼メッセージ信号に対応する情報を運転者に情報提供することを特徴とする請求項1に記載の走行支援装置。
走行支援装置。
【請求項4】
前記通信手段による通信を所定の規制条件に該当するときには規制する通信規制手段を更に備え、前記通信規制手段は、自車両が優先道路への合流を完了し、且つ、当該合流完了後所定時間が経過していないことを前記規制条件とすることを特徴とする請求項1に記載の走行支援装置。
【請求項5】
送信規制手段は、前記自車両の進行方向に関連して前記許容条件を規定していることを特徴とする請求項1に記載の走行支援装置。
【請求項6】
送信規制手段は、前記自車両の走行距離に関連して前記許容条件を規定していることを特徴とする請求項1に記載の走行支援装置。
【請求項7】
送信規制手段は、前記自車両の方向指示器の状態に関連して前記許容条件を規定していることを特徴とする請求項1に記載の走行支援装置。
【請求項8】
送信規制手段は、前記自車両の進行方向に関連して規定した第1の許容条件と、前記自車両の走行距離に関連して規定した第2の許容条件と、前記自車両の方向指示器の状態に関連して規定した第3の許容条件と、の何れか一の条件が充足さないときには前記許容条件を充足しないものとすることを特徴とする請求項1に記載の走行支援装置。
【請求項9】
送信規制手段は、前記自車両の進行方向に関連して規定した第1の許容条件と、前記自車両の走行距離に関連して規定した第2の許容条件と、前記自車両の方向指示器の状態に関連して規定した第3の許容条件と、の何れもが充足されることを以って前記許容条件を規定していることを特徴とする請求項1に記載の走行支援装置。
【請求項10】
前記送信規制手段は、前記許容条件が充足されない状態においても、前記お礼メッセージの送信操作を行うことを許容し、その後、前記許容条件が充足された状態に到ったときに、当該お礼メッセージ信号の送信を許容することを特徴とする請求項1に記載の走行支援装置。
【請求項11】
前記許容条件が充足された状態に到った後、所定の時間を経過した以降においても自車両の運転者が当該他車両へお礼メッセージを送信する操作を行わない場合には、前記お礼メッセージ信号を自動的に送信するお礼メッセージ自動送信手段を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の走行支援装置。
【請求項12】
自車両から他車両の進路への進入の可否を打診するための譲歩依頼メッセージと、当該他車両が譲歩依頼メッセージに応諾したことに対するお礼であるお礼メッセージと、を含む複数種類のメッセージのうちから、自車両側で選択した特定のメッセージを担うメッセージ信号を含む信号を前記他車両に送信し、且つ、他車両からのメッセージ信号を含む信号を受信するようにし、前記自車両から前記他車両への前記お礼メッセージを担うお礼メッセージ信号の送信に関して、前記自車両が前記他車両の進路への進入を完了したことに相応する許容条件を充足している場合に当該お礼メッセージ信号の送信を許容する走行支援方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−48042(P2007−48042A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−231965(P2005−231965)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】