説明

走行支援装置

【課題】タイヤ温度を考慮して燃費を向上させることができる走行支援装置を提供する。
【解決手段】走行支援装置1は、車両2の車速を検出する車速検出手段と、車両2のタイヤ4の温度を検出するタイヤ温度検出手段と、車速およびタイヤ温度に基づいて、タイヤ4の転がり抵抗を算出する転がり抵抗算出手段と、出発地から目的地までの経路を探索する経路探索手段と、経路の走行距離を算出する走行距離算出手段と、転がり抵抗および走行距離に基づいて、経路の走行で消費する消費エネルギーを算出する消費エネルギー算出手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤの表面温度を最適化して、燃費やグリップ感を良くする技術が提案されている。例えば、特許文献1には、転がり抵抗が低いタイヤ温度に維持されるように、タイヤ温度を制御する技術が開示されている。また、特許文献2には、車両用車輪のタイヤを暖めることで、車両の燃費向上を図る技術が開示されている。
【0003】
また、特許文献3には、転がり抵抗に基づいて、走行予定経路を走行する際におけるキャンバー角の制御スケジュールを生成して、燃費のよいルートを検索するナビゲーション技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−290916号公報
【特許文献2】特開平5−16623号公報
【特許文献3】特開2010−115100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、タイヤ温度を制御して車両の燃費を改善することについて、なお改善の余地が残されている。
【0006】
特に、特許文献1および2の技術では、走行パターンや季節などタイヤ温度を増減させる要因について考慮されておらず、タイヤ表面温度を最適化する余地がある。
【0007】
また、特許文献3のナビゲーション技術においては、燃費改善に繋がる転がり抵抗をキャンバー角から推定しているため、正確な転がり抵抗を用いたルート探索には改良の余地がある。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、タイヤ温度を考慮して燃費を向上させることができる走行支援装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の走行支援装置は、車両の車速を検出する車速検出手段と、前記車両の前記タイヤのタイヤ温度を検出するタイヤ温度検出手段と、前記車速および前記タイヤ温度に基づいて、前記タイヤの転がり抵抗を算出する転がり抵抗算出手段と、出発地から目的地までの経路を探索する経路探索手段と、前記経路の走行距離を算出する走行距離算出手段と、前記転がり抵抗および前記走行距離に基づいて、前記経路の走行で消費する消費エネルギーを算出する消費エネルギー算出手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記走行支援装置において、前記タイヤ温度は、前記タイヤのトレッド内部の温度であることを特徴とする。
【0011】
上記走行支援装置において、前記消費エネルギー算出手段は、前記経路毎に前記消費エネルギーを算出して、当該消費エネルギーの情報を提供することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる走行支援装置は、タイヤ温度を考慮しているため、精度よくルートごとの燃費を算出することができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明にかかる走行支援装置は、タイヤ温度としてタイヤのトレッド内部の温度を検出するので、タイヤ温度を精度よく求めることができることに伴って、転がり抵抗(つまり燃費)を精度よく算出することができるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明にかかる走行支援装置は、経路毎に消費エネルギーを算出して、消費エネルギーの情報を提供するので、利用者は、消費エネルギーを考慮して目的地までの経路を選択することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本実施形態にかかる走行支援装置1が搭載された車両2の概略構成を示す図である。
【図2】図2は、タイヤ温度とRRCとの関係を示す図である。
【図3】図3は、本実施形態の走行支援装置におけるECU8の構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、本実施形態におけるタイヤ4の温度制御の一例を示すフローチャートである。
【図5】図5は、第1変形例のタイヤ温度制御の動作を示すフローチャートである。
【図6】図6は、第2変形例のタイヤ温度制御の動作を示すフローチャートである。
【図7】図7は、本実施形態の燃費算出処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】図8は、車速とタイヤ温度とRRCとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施形態にかかる走行支援装置につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0017】
(第1実施形態)
図1から図6を参照して、第1実施形態について説明する。本実施形態は、走行支援装置に関する。
【0018】
本実施形態では、タイヤ温度に応じて転がり抵抗が変化することに着目したタイヤ温度制御がなされる。本実施形態の走行支援装置1は、タイヤの転がり抵抗における温度依存性に基づき、車両の燃費を向上させるタイヤ温度のマネージメントを行う。
【0019】
[1.構成]
まず、本実施形態の走行支援装置の構成について図1〜図3を参照しながら説明する。なお、本実施形態は、基本的に以下の構成を有することを前提としている。
(A)4輪のタイヤトレッド温度を実測あるいは推定できる機構。
(B)「4輪のタイヤを冷却あるいは加熱できる機構」または「駆動力配分、制動力配分等の制御によりタイヤ発生力を変えられる機構」(タイヤ発生力が変化すれば結果的にタイヤ温度が変化する)。
(C)「冷却(加熱)機構を4輪独立で制御でき、タイヤ温度に応じて制御を変えられる機構」または「タイヤ発生力を4輪独立(あるいは前輪、後輪で独立)で変化させることができ、タイヤ温度に応じて制御を変えられる機構」。
【0020】
ここで、図1は、本実施形態にかかる走行支援装置1が搭載された車両2の概略構成を示す図である。図1に示すように、走行支援装置1は、車両2に搭載されており、温度センサ7と、車速センサ9と、ECU8と、温度制御手段6を備え、ナビゲーション装置10に接続される。
【0021】
車両2は、左前輪3FL、右前輪3FR、左後輪3RL、右後輪3RRの4本の車輪3を備える。以下の説明において、添字FLは左前輪にかかる構成要素、FRは右前輪にかかる構成要素、RLは左後輪にかかる構成要素、RRは右後輪にかかる構成要素をそれぞれ示すものとする。各車輪3(3FL,3FR,3RL,3RR)は、それぞれタイヤ4(4FL,4FR,4RL,4RR)を有している。以下の説明において、特に区別する必要がない場合、左前輪3FLおよび右前輪3FRを合わせて「前輪3F」と記載し、左後輪3RLおよび右後輪3RRを合わせて「後輪3R」と記載する。また、特に区別する必要がない場合、左前タイヤ4FLおよび右前タイヤ4FRを合わせて「フロントタイヤ4F」とも記載し、左後タイヤ4RLおよび右後タイヤ4RRを合わせて「リヤタイヤ4R」とも記載する。
【0022】
車両2は、車体2A内にエンジンや電動機等の動力源を備えている。動力源から駆動輪(例えば、左前輪3FLおよび右前輪3FR)に伝達される動力が、駆動輪と路面との接地面における駆動力となり、車両2を走行させることができる。車両2は、ステアリングホイール5を備えている。運転者によってステアリングホイール5が回転操作されることで操舵輪(例えば、左前輪3FLおよび右前輪3FR)が転舵され、車両2が旋回する。
【0023】
ここで、車輪3に装着されるタイヤ4の転がり抵抗(RRC)等のタイヤ特性は、温度依存性および車速依存性を有する。そのため、タイヤ4の転がり抵抗(RRC)は、同じタイヤ4であっても、タイヤ4の温度および車速に応じて変化する。なお、転がり抵抗係数(RRC)に車重(車両2の重量(荷重))を乗じたものが転がり抵抗(RR)であるが、車重は一定と考えれば、転がり抵抗(RR)も転がり抵抗係数(RRC)も同等に扱うことができるので、以下の説明では特に両者を区別しないことがある。転がり抵抗は、燃費に影響のある項目であり、RRCを低下させると燃費良化に繋がる。そのため、タイヤ温度をコントロールすることによって、燃費を良くすることが可能となる。なお、季節や走行パターンなどのタイヤ温度を変化させる要因でRRCは増減するため、これらの項目を考慮することが好ましい。
【0024】
ここで、図2は、タイヤ温度とRRCとの関係を示す図である。図2に示すように、タイヤ温度が上昇するにつれて、RRCは低下し、タイヤ温度により定量的にRRCが求められる。これは、温度が上昇するほどヒステリシス・ロスが低減することによる。ここで、RRCは、タイヤ4の温度が所定温度Tcとなるまでは温度が増加するにつれて低下し、タイヤ4の温度が所定温度Tcを超えると温度の変化に対してほとんど変化しなくなる。所定温度Tcは、タイヤ4の特性に基づくタイヤ臨界温度であり、タイヤ臨界温度Tc以上では、温度を変化させることによるRRCの低下が殆ど期待できなくなる。そのため、RRCを低減させるという観点からは、温度は高ければ高い方がよいが、それではタイヤ温度の最適値は100℃以上となり、現実的ではなくなってしまうため、本実施形態ではタイヤ臨界温度Tcを基準の温度としてタイヤ温度を制御する。
【0025】
このことは、燃費以外のグリップ等の車両性能との両立の観点からも望ましい。すなわち、車両性能には、燃費以外にも、操縦性や安定性などの項目があるが、これらの項目間には、一方の車両性能を向上させると他方の車両性能が抑制するなど、他の車両性能と背反するものがある。例えば、グリップ力等の車両特性については、タイヤ温度が高くなるほど、タイヤ3による車両2の左右方向の摩擦力が低下するため、燃費特性に関するタイヤ温度加熱制御と背反する。その観点からも、本実施形態では、RRCに着目した理想的な最適温度(100℃以上)で制御するのではなく、温度変化によるRRC低下が見込めなくなるタイヤ臨界温度Tcを基準にして制御を行う。なお、上述のように、RRCは、温度依存性のみならず車速依存性も有するので、タイヤ臨界温度Tcは、固定値ではなく、車速により変化させることが望ましい。このように、タイヤ4の燃費特性は、タイヤ4の温度および車速によって変化する。
【0026】
再び図1に戻り、温度センサ7は、タイヤ4の温度を検出するものであり、例えば熱電対、サーミスタ等を用いることができる。より詳細には、温度センサ7は、タイヤ4のトレッド内部の温度、例えば、トレッド内部の構造部材であるカーカス層、ベルト層、あるいは、トレッドゴムなどの温度を検出する。好ましくは、温度センサ7は、タイヤ4のトレッド表面とベルト層上面との間のトレッドゴム内部の温度を検出するとよい。
【0027】
本実施形態では、温度センサ7は、各タイヤ4に設けられている。すなわち、図1に示すように、左前タイヤ4FLには左前輪用温度センサ7FLが、右前タイヤ4FRには右前輪用温度センサ7FRが、左後タイヤ4RLには左後輪用温度センサ7RLが、右後タイヤ4RRには右後輪用温度センサ7RRがそれぞれ設けられている。各温度センサ7FL,7FR,7RL,7RRは、ECU8に接続されており、各温度センサ7FL,7FR,7RL,7RRの検出結果を示す信号はECU8に出力される。以下の説明では、特に区別する必要がない場合、左前輪用温度センサ7FLおよび右前輪用温度センサ7FRをまとめて「前輪用温度センサ7F」と記載し、左後輪用温度センサ7RLおよび右後輪用温度センサ7RRをまとめて「後輪用温度センサ7R」と記載する。
【0028】
なお、温度センサ7は、赤外線等を利用した非接触式の温度センサを用いることもできる。また、温度センサ7は、例えば、タイヤ4が装着されたホイールの温度を検出し、これに基づいてタイヤ4のトレッド内部の温度を検出、推定するようにしてもよい。
【0029】
温度制御手段6は、タイヤ4の温度を制御するものである。温度制御手段6は、例えば、エアコンからの冷風や温風、排気ガス等をタイヤ4のタイヤハウスへ吐出してタイヤ温度を調節するものである。冷風や温風、排気ガスは、タイヤ4に直接吹き付けられてもよい。温度制御手段6は、冷風や温風、排気ガスの吐出・停止や、吐出量を調節することにより、タイヤ4の温度を制御することができる。例えば、温度制御手段6は、タイヤ4を冷却してタイヤ4の温度を低下させること、およびタイヤ4を加熱してタイヤ4の温度を上昇させることが可能であり、更に、タイヤ4の温度を所望の温度に維持することも可能である。
【0030】
温度制御手段6は、左前輪3FLに対して設けられる左前輪温度制御手段6FLと、右前輪3FRに対して設けられる右前輪温度制御手段6FRと、左後輪3RLに対して設けられる左後輪温度制御手段6RLと、右後輪3RRに対して設けられる右後輪温度制御手段6RRとを有する。各温度制御手段6FL,6FR,6RL,6RRは、個別に独立して動作させてもよく、前輪用温度制御手段6F(左前輪温度制御手段6FLおよび右前輪温度制御手段6FR)と後輪用温度制御手段6R(左後輪温度制御手段6RLおよび右後輪温度制御手段6RR)とをそれぞれ独立に動作させてもよく、あるいは、全ての温度制御手段6を一体として動作させてもよい。車輪3毎に個別に制御する場合、各車輪3の温度制御手段6は、他の車輪3の温度制御手段6とは独立してタイヤ4を冷却あるいは加熱することが可能である。これにより、例えば、左右のタイヤ4の温度が異なり、かつ所望の温度が左右のタイヤ4の温度の中間温度である場合に、相対的に低温のタイヤ4を加熱し、かつ相対的に高温のタイヤ4を冷却して左右のタイヤ4の温度を所望の温度に制御することが可能となる。温度制御手段6は、ECU8に接続されており、ECU8によって制御される。
【0031】
なお、温度制御手段6は、タイヤ4を直接、冷却あるいは加熱することに限らず、タイヤ4の間で駆動力配分または制動力配分を変化させることによって間接的にタイヤ4を冷却あるいは加熱させてもよい。
【0032】
また、車速センサ9は、ECU8に接続されており、車両2の車速を検出する車速検出手段である。例えば、車速センサ9は、出力軸等の出力側の回転体の回転速度を検出することを介して車速を検出する。
【0033】
また、ナビゲーション装置10は、ECU8に接続されており、出発地から目的地までのルート(経路)を検索する経路探索手段であるとともに、ルートの走行距離を算出する走行距離算出手段である。また、ナビゲーション装置10は、車両10を所定の目的地に誘導することを基本的な機能としている。なお、図示しないが、ナビゲーション装置10は、行き先や到着先などの目的地を入力する操作部と、表示部と、制御部、スピーカと、位置検出部と、地図データベースとを備えている。ナビゲーション装置10の制御部は、ECU8と双方向の通信が可能であり、例えば、検索結果のルートの走行距離をECU8に送信し、ECU8からルート毎の消費エネルギー(エネルギー消費量)を受信して表示部に表示させる。これにより、行き先や到着先が判明しているときに最もタイヤ4のエネルギー消費量が少ないルートを検出して、(タイヤから見た)燃費優先ルートとして提示することができる。なお、本実施形態においては、ナビゲーション装置10をECU8とは別筐体として構成したが、これに限られず、ECU8がナビゲーション機能を担うよう構成してもよい。
【0034】
また、ECU8は、コンピュータを有する電子制御ユニットである。ECU8は、車両2の各部を制御することができると共に、タイヤ4の温度を制御し、エネルギー消費量を算出する等の制御部としての機能を有している。ここで、図3は、本実施形態の走行支援装置におけるECU8の構成を示すブロック図である。
【0035】
図3に示すように、本実施形態の走行支援装置1にかかるECU8は、機能的に、RRC算出部8aと、消費量算出部8bと、温度制御指令部8cを備える。
【0036】
ここで、ECU8は、記憶部を備えており、予め車輪3に装着されたタイヤ4の温度特性が記憶されている。ここで、記憶する温度特性とは、例えば、図2に示したタイヤ温度とRRCとの対応関係であってもよく、車速ごとのタイヤ温度とRRCとの対応関係であってもよく、また、これら対応関係に基づくタイヤ臨界温度Tcであってもよく、その他の温度特性を示す値であってもよい。つまり、ECU8は、燃費等に関するタイヤ4の温度特性を示す数値であって、タイヤ温度制御において必要とされるものを予め記憶しておくようにすればよい。ここで、上述のように、グリップ等の安定性や操作性を維持するために最低限必要なタイヤ温度の閾値等を記憶してもよい。
【0037】
このようなECU8の構成のうち、RRC算出部8aは、少なくとも車両2の車速とタイヤ温度から転がり抵抗(RRC)を求める転がり抵抗算出手段である。実測値に基づいて計算する場合、RRC算出部8aは、車速センサ9により検出された車速、および、タイヤ4の温度センサ7により検出されたタイヤ温度からRRCを算出することが好ましい。一方、推定値に基づいて計算する場合、RRC算出部8aは、ナビゲーション装置10から受信した探索結果のルートに基づいて、車速とタイヤ温度を推定し、RRCを求める。より具体的には、RRC算出部8aは、タイヤ温度推定モデルに基づいて、RRCを算出することが好ましい。タイヤ温度推定モデルは、車速と外気温からタイヤ温度を推定するモデルである。予測に使用する車速は、ルート上の各道路における平均車速を用いてもよい。また、予測に使用する外気温は、ECU8の記憶部に記憶された、季節ごとに時間ごとに地域ごとに変動する平均気温の表テーブルに基づいて、推定する現在日時における平均気温を用いてもよい。RRC算出部8aは、各ルートにおけるタイヤ温度と車速を求められれば、ECU8の記憶部に記憶されたタイヤ温度と車速とRRCとの対応関係テーブル等に基づいて、RCCを求めることができる。
【0038】
また、消費量算出部8bは、RRC算出部8aにより算出されたRRC、および、ナビゲーション装置10で探索されたルート(経路)の走行距離に基づいて、ルートの走行で消費する消費エネルギー(エネルギー消費量)を算出する消費エネルギー算出手段である。ここで、消費量算出部8bは、ルート毎に消費エネルギーを算出して、例えばナビゲーション装置10で出力されるように当該消費エネルギーの情報を提供してもよい。なお、走行距離は、各ルートの距離であってもよく、車速センサ9による車速に基づいて算出された値であってもよい。一例として、消費量算出部8bは、以下の式に基づいて、タイヤ4によるエネルギー消費量を算出する。
(エネルギー消費量)=(転がり抵抗:RR)×(移動距離)
すなわち、(エネルギー消費量)=(転がり抵抗係数:RRC)×(車量)×(移動距離)
【0039】
また、温度制御指令部8cは、温度制御手段6に温度制御指令(加熱指令または冷却指令等)を出力する。例えば、温度制御指令部8cは、ECU8の記憶部に記憶された、タイヤ4の温度特性に基づいて温度制御指令を温度制御手段6に出力することによりタイヤ温度制御を実行する。
【0040】
以上で、本実施形態における走行支援装置1の構成の説明を終える。
【0041】
[2.処理]
図4を参照して、本実施形態におけるタイヤ4の温度制御について説明する。図4は、本実施形態におけるタイヤ4の温度制御の一例を示すフローチャートである。図4の制御フローは、車両2の走行時に繰り返し実行される。なお、車両2の停止時に本制御フローが実行されてもよい。本制御フローは、例えば、所定の間隔で繰り返し実行される。
【0042】
まず、ステップS1では、ECU8の温度制御指令部8cにより、フロントタイヤ温度Tfがタイヤ臨界温度Tc以上であるか否かが判定される。すなわち、ステップS1では、制御介入するか否かの判定が行われる。車両2の燃費は、フロントタイヤ4FのRRCを低下させることで良化させることができる。つまり、燃費を改善させる観点からは、フロントタイヤ温度Tfが高温であることが好ましい。本実施形態では、フロントタイヤ温度Tfがタイヤ臨界温度Tc未満であると、フロントタイヤ4Fの加熱が行われる。
【0043】
ECU8の温度制御指令部8cは、温度センサ7によって検出されたタイヤ4の温度に基づいてステップS1の判定を行う。フロントタイヤ4Fの温度は、前輪用温度センサ7Fから取得する。ECU8の温度制御指令部8cは、例えば、左前輪用温度センサ7FLによって検出された左前タイヤ4FLの温度と、右前輪用温度センサ7FRによって検出された右前タイヤ4FRの温度との平均温度をフロントタイヤ温度Tfとする。
【0044】
ステップS1の判定の結果、フロントタイヤ温度Tfがタイヤ臨界温度Tc未満であると判定された場合(ステップS1−N)にはステップS2に進み、そうでない場合(ステップS1−Y)にはステップS1の判定が繰り返される。
【0045】
ステップS2では、ECU8の温度制御指令部8cにより、フロントタイヤ4Fが加熱される。すなわち、温度制御指令部8cは、前輪温度制御手段6Fによってフロントタイヤ4Fを加熱する。そのため、ECU8の温度制御指令部8cは、前輪温度制御手段6Fに対して加熱指令を出力する。前輪温度制御手段6Fは、加熱指令に基づいてフロントタイヤ4Fを加熱する。
【0046】
なお、フロントタイヤ4Fを加熱する際に、左前タイヤ4FLの温度と右前タイヤ4FRの温度とが異なる場合、左前輪温度制御手段6FLによる左前タイヤ4FLに対する加熱度合いと右前輪温度制御手段6FRによる右前タイヤ4FRに対する加熱度合いとを異ならせるようにしてもよい。例えば、左前タイヤ4FLが右前タイヤ4FRよりも高温である場合、左前タイヤ4FLに対する加熱度合いを右前タイヤ4FRに対する加熱度合いよりも低めるようにしてもよい。フロントタイヤ4Fが加熱されることで、図2に示すように、フロントタイヤ4FのRRCが低下する。
【0047】
ステップS3では、ECU8の温度制御指令部8cにより、フロントタイヤ温度Tfがタイヤ臨界温度Tc以上であるか否かが再び判定される。すなわち、ステップS1では、制御介入するか否かの判定が行われたが、ステップS3では、加熱が十分で制御介入を終了するか否かの判定が行われる。ECU8の温度制御指令部8cは、温度センサ7によって検出されたタイヤ4の温度に基づいてステップS3の判定を行う。
【0048】
ステップS3の判定の結果、フロントタイヤ温度Tfがタイヤ臨界温度Tc未満であると判定された場合(ステップS3−N)にはステップS2に戻り、そうでない場合(ステップS3−Y)にはステップS4に進む。
【0049】
ステップS4では、ECU8の温度制御指令部8cにより、加熱が終了される。ECU8の温度制御指令部8cは、前輪温度制御手段6Fに対して加熱を終了する指令を出力する。この指令信号により、左前輪温度制御手段6FLおよび右前輪温度制御手段6FRは加熱を終了する。ステップS4が実行されると、本制御フローは終了する。
【0050】
本実施形態のタイヤ温度制御によってフロントタイヤ4Fが加熱されることで、加熱後のフロントタイヤ4FのRRCは、タイヤ温度制御がなされない場合のフロントタイヤ4FのRRCよりも低下する。これにより、タイヤ温度制御後の燃費特性は、タイヤ温度制御がなされない場合よりも改善する。
【0051】
以上説明したように、本実施形態では、フロントタイヤ温度Tfがタイヤ臨界温度Tcよりも低温となっている場合、フロントタイヤ4Fを加熱して最適化することでフロントタイヤ4FのRRCを低下させる。これにより、車両2の燃費を良化することができる。また、タイヤ温度がタイヤ臨界温度Tc以上では温度を変化させることによるRRCの低下が期待できないので、制御しないことにより、他の走行性能との両立を図り、かつ、燃費の良化に貢献することができる。
【0052】
本実施形態の走行支援装置1は、タイヤ温度を制御することにより、車両2の性能をある程度任意にコントロールすることができる。同じ車両2で燃費を変更するためには、これまで、タイヤ等を交換したりキャンバー角を変更する必要があったが、本実施形態の走行支援装置1によれば、タイヤ温度をコントロールすることで部品の交換やキャンバー角変更を要することなく燃費等の車両性能を手軽に変えることが可能となる。その結果、温度上昇が少ないタイヤ或いは温度上昇し難いタイヤであっても燃費を改善することができ、また、寒冷地での仕様が多い車両等でも燃費を稼ぐことができる。
【0053】
なお、図4に示す制御フローにおいて、ステップS1における判定式の不等号あるいはステップS3における判定式の不等号が等号を含まないものとされてもよい。すなわち、ステップS1およびステップS3でフロントタイヤ温度Tfがタイヤ臨界温度Tcよりも大である場合にのみ肯定判定がなされるようにしてもよい。
【0054】
本実施形態では、温度センサ7が、タイヤ4のRRCを含むタイヤ特性に影響を与え易く、また、タイヤ4の表面より温度が変りにくいトレッド内部の温度、典型的には、トレッドゴム内部の温度を検出する。こうして検出されるタイヤ温度に基づいてタイヤ温度の制御がなされることで、車両2の燃費良化を精度よくコントロールすることができる。
【0055】
本実施形態では、タイヤ臨界温度TcがRRCに基づいて定められたが、これには限定されない。タイヤ臨界温度Tcは、RRC等の燃費に関するタイヤ4の他の温度特性に基づいて定められてもよい。また、RRCは車速依存性も有していることから、車速センサ9によって検出された車速に基づいてタイヤ臨界温度Tcの値を変更してもよい。
【0056】
なお、本実施形態では温度センサ7が4輪のタイヤ4にそれぞれ設けられていたが、これには限定されない。前輪用温度センサ7Fは、左前タイヤ4FLあるいは右前タイヤ4FRの少なくとも何れか一方に設けられていればよい。前輪用温度センサ7Fが左右の前タイヤ4FL,4FRのいずれかに設けられている場合、ECU8の温度制御指令部8cは、前輪用温度センサ7Fの検出結果をフロントタイヤ温度Tfとする。
【0057】
なお、本実施形態では、タイヤ4の温度特性が予め記憶されている場合を例に説明したが、これには限定されない。タイヤ4の温度特性は、走行中に推定されたものであってもよい。例えば、車両2の走行中の挙動と、タイヤ4の温度とに基づいて、タイヤ4の温度特性が推測されてもよい。一例として、温度制御手段6によってタイヤ4の温度(例えばフロントタイヤ温度Tf)を複数の異なる温度に適宜制御し、それぞれのタイヤ温度における車両2の燃費に基づいてタイヤ4の温度特性を推測してもよい。
【0058】
本実施形態では、温度制御手段6は温風等を吐出することでタイヤ4を加熱するものであったが、これには限定されない。温度制御手段6は、タイヤ4の外部や内部からタイヤ4に熱を与える他の手段であってもよい。また、温度制御手段6は、タイヤ4における発熱量を制御するものであってもよい。例えば、温度制御手段6は、タイヤ4の制動力配分や駆動力配分を制御することによってタイヤ4の負荷を増減させることにより、タイヤ4を加熱するものであってもよい。
【0059】
なお、図4に示す制御フローにおいて、ステップS1で肯定判定がなされた場合に、上記第1実施形態(図1)のフロントタイヤ4Fを冷却するタイヤ温度制御に移行するようにしてもよい。すなわち、フロントタイヤ4Fの温度がタイヤ臨界温度Tcを超えて高い場合に、フロントタイヤ4Fを冷却して適性値に戻してもよい。このように、タイヤ4の温度をタイヤ臨界温度Tcに対して過剰に加熱させないように制御することにより、グリップ等のようにRRCと背反する走行性能との両立を図ることができる。
【0060】
(第1実施形態の第1変形例)
第1実施形態の第1変形例について説明する。上記第1実施形態では、フロントタイヤ4Fを加熱することでRRCを低下させたが、本変形例では、リヤタイヤ4Rを加熱することでRRCを低下させることにより燃費を良化する点で上記第1実施形態と異なる。図5は、本変形例のタイヤ温度制御の動作を示すフローチャートである。
【0061】
図5に示すように、本変形例では、リヤタイヤ4Rを加熱してリヤタイヤ温度Trを増加させることでリヤタイヤ4RのRRCを低下させる。これにより、燃費を良化することができる。なお、図5の制御フローは、車両2の走行時に繰り返し実行される。また、本制御フローは、車両2の停止時に実行されてもよい。本制御フローは、例えば、所定の間隔で繰り返し実行される。
【0062】
まず、ステップS11では、ECU8の温度制御指令部8cにより、リヤタイヤ温度Trがタイヤ臨界温度Tc以上であるか否かが判定される。すなわち、ステップS11では、制御介入するか否かの判定が行われる。車両2の燃費は、リヤタイヤ4RのRRCを低下させることで良化させることができる。つまり、燃費を改善させる観点からは、リヤタイヤ温度Trが高温であることが好ましい。本実施形態では、リヤタイヤ温度Trがタイヤ臨界温度Tc未満であると、リヤタイヤ4Rの加熱が行われる。
【0063】
ECU8の温度制御指令部8cは、温度センサ7によって検出されたタイヤ4の温度に基づいてステップS11の判定を行う。リヤタイヤ4Rの温度は、後輪用温度センサ7Rから取得する。ECU8の温度制御指令部8cは、例えば、左後輪用温度センサ7RLによって検出された左後タイヤ4RLの温度と、右後輪用温度センサ7RRによって検出された右後タイヤ4RRの温度との平均温度をリヤタイヤ温度Trとする。
【0064】
ステップS11の判定の結果、リヤタイヤ温度Trがタイヤ臨界温度Tc未満であると判定された場合(ステップS11−N)にはステップS12に進み、そうでない場合(ステップ11−Y)にはステップS11の判定が繰り返される。
【0065】
ステップS12では、ECU8の温度制御指令部8cにより、リヤタイヤ4Rが加熱される。すなわち、温度制御指令部8cは、後輪温度制御手段6Rによってリヤタイヤ4Rを加熱する。そのため、ECU8の温度制御指令部8cは、後輪温度制御手段6Rに対して加熱指令を出力する。後輪温度制御手段6Rは、加熱指令に基づいてリヤタイヤ4Rを加熱する。
【0066】
なお、リヤタイヤ4Rを加熱する際に、左後タイヤ4RLの温度と右後タイヤ4RRの温度とが異なる場合、左後輪温度制御手段6RLによる左後タイヤ4RLに対する加熱度合いと右後輪温度制御手段6RRによる右後タイヤ4RRに対する加熱度合いとを異ならせるようにしてもよい。例えば、左後タイヤ4RLが右後タイヤ4RRよりも高温である場合、左後タイヤ4RLに対する加熱度合いを右後タイヤ4RRに対する加熱度合いよりも低めるようにしてもよい。リヤタイヤ4Rが加熱されることで、図2に示すように、リヤタイヤ4RのRRCが低下する。
【0067】
ステップS13では、ECU8の温度制御指令部8cにより、リヤタイヤ温度Trがタイヤ臨界温度Tc以上であるか否かが再び判定される。すなわち、ステップS11では、制御介入するか否かの判定が行われたが、ステップS13では、加熱が十分で制御介入を終了するか否かの判定が行われる。ECU8の温度制御指令部8cは、温度センサ7によって検出されたタイヤ4の温度に基づいてステップS13の判定を行う。
【0068】
ステップS13の判定の結果、リヤタイヤ温度Trがタイヤ臨界温度Tc未満であると判定された場合(ステップS13−N)にはステップS12に戻り、そうでない場合(ステップS13−Y)にはステップS14に進む。
【0069】
ステップS14では、ECU8の温度制御指令部8cにより、加熱が終了される。ECU8の温度制御指令部8cは、後輪温度制御手段6Rに対して加熱を終了する指令を出力する。この指令信号により、左後輪温度制御手段6RLおよび右後輪温度制御手段6RRは加熱を終了する。ステップS14が実行されると、本制御フローは終了する。
【0070】
本実施形態のタイヤ温度制御によってリヤタイヤ4Rが加熱されることで、加熱後のリヤタイヤ4RのRRCは、タイヤ温度制御がなされない場合のリヤタイヤ4RのRRCよりも低下する。これにより、タイヤ温度制御後の燃費特性は、タイヤ温度制御がなされない場合よりも改善する。
【0071】
以上説明したように、本実施形態では、リヤタイヤ温度Trがタイヤ臨界温度Tcよりも低温となっている場合、リヤタイヤ4Rを加熱して最適化することでリヤタイヤ4RのRRCを低下させる。これにより、車両2の燃費を良化することができる。また、タイヤ温度がタイヤ臨界温度Tc以上では温度を変化させることによるRRCの低下が期待できないので、加熱制御を行わないことにより、他の走行性能との両立を図りつつ、燃費の良化に貢献することができる。
【0072】
本実施形態の走行支援装置1は、タイヤ温度を制御することにより、車両2の性能をある程度任意にコントロールすることができる。同じ車両2で燃費を変更するためには、これまで、タイヤ等を交換したりキャンバー角を変更する必要があったが、本実施形態の走行支援装置1によれば、タイヤ温度をコントロールすることで部品の交換やキャンバー角変更を要することなく燃費等の車両性能を手軽に変えることが可能となる。その結果、温度上昇が少ない或いはし難いタイヤであっても燃費を改善することができ、また、寒冷地での仕様が多い車両等でも燃費を稼ぐことができる。
【0073】
なお、図5に示す制御フローにおいて、ステップS11における判定式の不等号あるいはステップS13における判定式の不等号が等号を含まないものとされてもよい。すなわち、ステップS11およびステップS13でリヤタイヤ温度Trがタイヤ臨界温度Tcよりも大である場合にのみ肯定判定がなされるようにしてもよい。
【0074】
なお、本実施形態では温度センサ7が4輪のタイヤ4にそれぞれ設けられていたが、これには限定されない。後輪用温度センサ7Rは、左後タイヤ4RLあるいは右後タイヤ4RRの少なくとも何れか一方に設けられていればよい。後輪用温度センサ7Rが左右の前タイヤ4RL,4RRのいずれかに設けられている場合、ECU8の温度制御指令部8cは、後輪用温度センサ7Rの検出結果をリヤタイヤ温度Trとする。
【0075】
なお、図5に示す制御フローにおいて、ステップS11で肯定判定がなされた場合に、上記第1実施形態(図1)のリヤタイヤ4Rを冷却するタイヤ温度制御に移行するようにしてもよい。すなわち、リヤタイヤ4Rの温度がタイヤ臨界温度Tcを超えて高い場合に、リヤタイヤ4Rを冷却して適性値に戻してもよい。このように、タイヤ4の温度をタイヤ臨界温度Tcに対して過剰に加熱させないように制御することにより、グリップ等のようにRRCと背反する走行性能との両立を図ることができる。
【0076】
(第1実施形態の第2変形例)
第1実施形態の第2変形例について説明する。上述した実施形態においては、フロントタイヤ4Fとリヤタイヤ4Rとのいずれか一方のみタイヤ温度制御を行うことについて説明したが、本変形例では、フロントタイヤ4Fとリヤタイヤ4Rの両方の温度制御を行うことを想定して説明する。このとき、フロントタイヤ4Fとリヤタイヤ4Rの両方を同時に独立に並行して温度制御できる場合と一方のみしか温度制御できない場合があるので、これらの場合の制御フローについて図6を参照して説明する。図6は、本変形例のタイヤ温度制御の動作を示すフローチャートである。
【0077】
図6を参照して、本変形例のタイヤ温度制御について説明する。図6に示す制御フローは、車両2の走行時に繰り返し実行される。なお、本制御フローは、車両2の停止時に実行されてもよい。本制御フローは、例えば、所定の間隔で繰り返し実行される。
【0078】
まず、ステップS21では、ECU8の温度制御指令部8cにより、フロントタイヤ4Fとリヤタイヤ4Rの両方を同時に独立に並行して温度制御できるか否かが判定される。その判定の結果、両方を同時に並行して温度制御できると判定された場合(ステップS21−Y)にはステップS22に進み、そうでない場合(ステップS21−N)にはステップS31に進む。なお、フロントタイヤ4Fとリヤタイヤ4Rの両方を同時に並行して温度制御できるか否かは、ECU8の処理能力に依存する場合や温度制御手段6の構成に依存する場合等がある。
【0079】
ステップS22では、ECU8の温度制御指令部8cにより、フロントタイヤ4Fおよびリヤタイヤ4Rの温度制御が同時に並行して行われる。すなわち、以下の制御フローは、フロントタイヤ4Fの温度制御側(ステップS23〜S26)とリヤタイヤ4Rの温度制御側(ステップS27〜S30)に分岐し、両者が同時に並行して制御される。なお、フロントタイヤ4Fの温度制御側(ステップS23〜S26)の処理は、図4を用いて説明したステップS1〜S4の制御フローと同様であり、リヤタイヤ4Rの温度制御側(ステップS27〜S30)の処理は、図5を用いて説明したステップS11〜S14の制御フローと同様であるので、説明を省略する。
【0080】
フロントタイヤ4Fとリヤタイヤ4Rの両方を同時に並行して温度制御できない場合(S21−N)、ステップS31では、ECU8の温度制御指令部8cにより、フロントタイヤ4Fとリヤタイヤ4Rの両方を同時に温度制御(加熱)する必要があるか否かが判定される。例えば、フロントタイヤ温度Tfとリヤタイヤ温度Trが共にタイヤ臨界温度Tc未満である場合には、温度制御指令部8cは、両方を同時に温度制御する必要があると判定する。
【0081】
ステップS31の判定の結果、フロントタイヤ4Fとリヤタイヤ4Rの両方を同時に温度制御する必要があると判定された場合(ステップS31−Y)にはステップS34に進み、そうでない場合(ステップS31−N)にはステップS32に進む。
【0082】
ステップS32では、ステップS31でフロントタイヤ4Fとリヤタイヤ4Rの両方を同時に温度制御する必要がないと判定されたので、いずれか一方のみの個別制御が行われる。なお、フロントタイヤ4Fの温度制御を個別に行う場合は、図4を用いて説明したステップS1〜S4の制御フローと同様であり、リヤタイヤ4Rの温度制御を個別に行う場合は、図5を用いて説明したステップS11〜S14の制御フローと同様であるので、説明を省略する。
【0083】
ステップS33では、ECU8の温度制御指令部8cにより、フロントタイヤ4Fとリヤタイヤ4Rの両方を同時に温度制御する必要があるか否かが判定される。すなわち、ステップS32において、フロントタイヤ4Fとリヤタイヤ4Rのいずれか一方の個別制御が行われる毎に、両方の同時温度制御が必要でないかがチェックされる。例えば、フロントタイヤ温度Tfとリヤタイヤ温度Trが共にタイヤ臨界温度Tc未満である場合には、温度制御指令部8cは、両方を同時に温度制御する必要があると判定する。ステップS33の判定の結果、フロントタイヤ4Fとリヤタイヤ4Rの両方を同時に温度制御する必要があると判定された場合(ステップS33−Y)にはステップS34に進み、そうでない場合(ステップS33−N)にはステップS32に戻り個別の温度制御が行われる。
【0084】
ステップS34では、ECU8の温度制御指令部8cにより、リヤタイヤ4Rにかかる荷重に比べて、フロントタイヤ4Fにかかる荷重が大きいか否かが判定される。すなわち、ステップS34では、フロントタイヤ4Fとリヤタイヤ4Rの両方を同時に並行して温度制御できない(S21−N)にもかかわらず、両方を同時に温度制御しなければならない状況(S31−Y,S33−Y)であるので、フロントタイヤ4Fとリヤタイヤ4Rのいずれの温度制御を優先するかが判定される。転がり抵抗はRRCに荷重を乗じたものであり、RRCが同程度であれば荷重が大きいタイヤの方がより燃費に影響するため、どちらか一方しか温度制御できない場合には、荷重が大きい方を優先的に制御する。
【0085】
ステップS34の判定の結果、フロントタイヤ4Fにかかる荷重がリヤタイヤ4Rの荷重より大きいと判定された場合(ステップS34−Y)にはステップS35に進み、そうでない場合、すなわちリヤタイヤ4Rにかかる荷重がフロントタイヤ4Fのそれ以上である場合(ステップS34−N)にはステップS38に進む。
【0086】
ステップS35〜S37では、フロントタイヤ4Fの温度制御が優先して行われる。なお、フロントタイヤ4Fの温度制御を優先的に行う場合は、図4を用いて説明したステップS2〜S4の制御フローと同様であるので、説明を省略する。
【0087】
ステップS38〜S40では、リヤタイヤ4Rの温度制御が優先して行われる。なお、リヤタイヤ4Rの温度制御を優先的に行う場合は、図5を用いて説明したステップS12〜S14の制御フローと同様であるので、説明を省略する。
【0088】
以上で、フロントタイヤ4Fとリヤタイヤ4Rの両方の温度制御を行う場合の処理が終了する。
【0089】
このように、本変形例によれば、フロントタイヤ4Fとリヤタイヤ4Rの両方を同時に並行して温度制御できる場合は、一方のみを温度制御する場合に比べて、全てのタイヤ4のRRCが低下するので、燃費の良化を一層図ることができる。また、両方を同時に並行して温度制御できない場合であっても、フロントタイヤ4Fとリヤタイヤ4Rのうち荷重が大きい方を優先して温度制御するので、燃費により影響を与える方のRRCを低下させて低燃費化に繋げることができる。また、本変形例によれば、フロントタイヤ4Fに対する加熱およびリヤタイヤ4Rに対する加熱が同時に行われることで、タイヤ温度の調節が速やかに進行し、応答性よく車両2の燃費を向上させることが可能となる。
【0090】
(第2実施形態)
図7および図8を参照して、第2実施形態について説明する。第2実施形態については、上記実施形態で説明したものと同様の機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。図7は、本実施形態の燃費算出処理の一例を示すフローチャートであり、図8は、車速とタイヤ温度とRRCとの関係を示す図である。図8において、Vは車両2の車速を表しており、V1<V2<V3<V4である。
【0091】
図8に示すように、タイヤ4のRRCは、タイヤ温度と車速に依存して変化する。車速が低ければ、燃費に対するRRCの影響は少ないが、高車速になるにつれRRCが増加し燃費への影響が直結しやすくなる。
【0092】
本実施形態では、少なくとも車速とタイヤ温度からRRCを求め、RRCと移動距離からエネルギー消費量を算出することで、燃費優先ルートを提示することができる走行支援装置1について説明する。
【0093】
図7を参照して、第2実施形態の燃費算出処理について説明する。図7に示す制御フローは、車両2の走行時に繰り返し実行されてもよい。なお、本制御フローは車両2の停止時に実行されてもよい。本制御フローは、例えば、所定の間隔で繰り返し実行されてもよい。
【0094】
まず、ステップS101では、ナビゲーション装置10により、ルートが検出される。例えば、利用者が、ナビゲーション装置10の操作部を操作して、行き先や到着先等の目的地を入力あるいは選択すると、ナビゲーション装置10の制御部は、記憶部に記憶した地図データに基づいて、現在地等の出発地から当該目的地までのルートを探索する。ここで、地図データには、道路網を、距離情報を含むリンクとノードで表現したデータが含まれていてもよい。なお、検出された一または複数のルートは、ルート毎に走行距離が算出され、ナビゲーション装置10からECU8に送信される。
【0095】
ステップS102では、ECU8のRRC算出部8aにより、ナビゲーション装置10から取得したルートについて、車速およびタイヤ温度からRRCが算出される。例えば、RRC算出部8aは、ナビゲーション装置10から受信した探索結果のルートに基づいて、車速とタイヤ温度を推定し、RRCを求める。より具体的には、RRC算出部8aは、車速と外気温からタイヤ温度を推定するタイヤ温度推定モデルに基づいて、RRCを算出することが好ましい。ここで、RRC算出部8aは、ルート上の各道路における平均車速を車速として推定してもよい。また、RRC算出部8aは、ECU8の記憶部に記憶された、季節ごと時間ごとに地域ごとに変動する平均気温の表テーブルに基づいて、推定する現在日時における平均気温を外気温として取得してもよい。そして、RRC算出部8aは、各ルートについて推定したタイヤ温度と車速に基づいて、ECU8の記憶部に記憶されたタイヤ温度と車速とRRCとの対応関係(図8のグラフ等)に基づいて、RCCを求めることができる。なお、上記実施形態において上述したように、ECU8の温度制御指令部8cにより温度制御が行われる場合、タイヤ温度は各車速におけるタイヤ臨界温度Tcまで加熱されるので、タイヤ臨界温度Tcをタイヤ温度としてもよい。
【0096】
ステップS103では、ECU8の消費量算出部8bにより、RRC算出部8aで算出されたRRCと、ナビゲーション装置10で探索されたルートの走行距離に基づいて、ルート走行で消費するエネルギー消費量がルート毎に算出される。本実施形態においては、消費量算出部8bは、以下の式を基本として、タイヤ4によるエネルギー消費量を算出する。なお、RRCに荷重を乗じたものが転がり係数である。
(エネルギー消費量)=(転がり抵抗:RR)×(移動距離)
【0097】
上述の式を基本として、秒(分)単位で積算する関数とすると一例として以下の式となる。
【数1】

(ここで、Qtyreは、タイヤの熱量である。また、nは、秒数(分数)である。また、RRは、n秒後の(分後)のタイヤ転がり抵抗(RR)を算出する関数である。また、Tは、n秒後(分後)のタイヤ温度であり、Vは、n秒後(分後)の車速である。また、dは、(n+1)−n秒(分)間の移動距離である。)
【0098】
ステップS104では、ECU8の消費量算出部8bにより、ルートごとに算出したエネルギー消費量(タイヤの熱量)を対応付けて、ナビゲーション装置10に送信する。ナビゲーション装置10は、受信したエネルギー消費量を各ルートに対応付けて表示部に表示させることにより、利用者に燃費優先ルートを提示することができる。
【0099】
以上が、本実施形態の燃費算出処理の一例である。本実施形態によれば、走行支援装置1は、走行パターンや季節などタイヤ温度を増減させる要因を考慮してRRCを算出するので、そのルートによって、エネルギー消費量を定量的に且つ正確に利用者に提示することができる。また、RRC算出部8aによるRRCの算出において、温度制御指令部8cによる温度制御が行われる場合と行われない場合の2通りでRRCを算出すれば、タイヤ4の温度制御により、どの程度エネルギー消費量を抑えることができるかを定量的に利用者に提示することができる。
【0100】
また、上述した実施形態では、ルート走行前に推定の車速とタイヤ温度に基づいて、エネルギー消費量を算出する場合について説明を行ったが、RRC算出部8aは、実測の車速とタイヤ温度に基づいて、エネルギー消費量を算出してもよい。すなわち、RRC算出部8aは、車速センサ9により検出された車速、および、タイヤ4の温度センサ7により検出されたタイヤ温度からRRCを算出してもよい。また、消費量算出部8bは、車速センサ9により検出された車速に時間を乗じて積算した実測の移動距離に基づいて、エネルギー消費量を算出してもよい。これにより、ルート走行を実際に行った後に、実際にどのくらいのエネルギー消費量があったかを正確に利用者に提示することができる。特に、ルート走行前の推定値によるエネルギー消費量と、ルート走行後の実測値によるエネルギー消費量とを比べることによって、利用者に燃費を改善する余地があることを知らせるとともに(例えば、急発進等の抑制喚起など)、図8に示したようにECU8に記憶するデータテーブルやパラメータを修正することも可能となる。
【0101】
なお、上記の各実施形態に開示された内容は、適宜組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
以上のように、本発明にかかる走行支援装置は、車両の燃費等の走行性能を向上させるのに適している。
【符号の説明】
【0103】
1 走行支援装置
2 車両
3 車輪
4 タイヤ
6 温度制御手段
7 温度センサ
8 ECU
8a RRC算出部
8b 消費量算出部
8c 温度制御指令部
9 車速センサ
10 ナビゲーション装置
Tf フロントタイヤ温度
Tr リヤタイヤ温度
Tc タイヤ臨界温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車速を検出する車速検出手段と、
前記車両の前記タイヤのタイヤ温度を検出するタイヤ温度検出手段と、
前記車速および前記タイヤ温度に基づいて、前記タイヤの転がり抵抗を算出する転がり抵抗算出手段と、
出発地から目的地までの経路を探索する経路探索手段と、
前記経路の走行距離を算出する走行距離算出手段と、
前記転がり抵抗および前記走行距離に基づいて、前記経路の走行で消費する消費エネルギーを算出する消費エネルギー算出手段と、
を備えることを特徴とする走行支援装置。
【請求項2】
前記タイヤ温度は、前記タイヤのトレッド内部の温度であることを特徴とする請求項1に記載の走行支援装置。
【請求項3】
前記消費エネルギー算出手段は、前記経路毎に前記消費エネルギーを算出して、当該消費エネルギーの情報を提供することを特徴とする請求項1または2に記載の走行支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−101762(P2012−101762A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254196(P2010−254196)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】