説明

走行装置の制御方法

【課題】 低速度域では負荷に応じた微妙な制御を可能とし、高速域では走行系の負荷とは独立して速度制御に近い制御が可能な走行装置の制御方法を提供する。
【解決手段】 駆動源と、前記駆動源により駆動される可変容量式の流体圧ポンプと、車軸に接続された可変容量式の流体圧モータとを備え、前記ポンプと前記モータとを閉回路となるようにして構成された走行装置の制御方法であって、
前記モータの回転数(Nm)に対して、前記走行装置の馬力(W(Nm))を、
W(Nm)=α・Ne・Nm・(X0-Nm)n
(式中、Neは前記ポンプの回転数であり、α及びX0は正の定数、nは1以上の整数である。)
で表される関数に従って制御することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行装置の制御方法に関し、詳細には、可変容量の流体圧ポンプと可変容量の流体圧モータとにより閉回路を構成するようにして構成された油圧回路を備える走行装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン等の駆動源により駆動される可変容量の流体圧ポンプと、車軸に接続され、タイヤ等を回転させるための前記可変容量の流体圧モータとを閉回路となるように接続したハイドロスタティック・トランスミッションの走行装置が、例えば、特許文献1に開示されている。
この種の走行装置の場合、アクセルペダル等からの指令に基づき、駆動源の回転数が決定され、この回転数で流体圧ポンプが駆動される。流体圧ポンプと、流体圧モータとは、閉回路を構成するため、実質的に、流体圧モータは、前記回転数に比例した速度で駆動し、車速も前記回転数に比例することになる。その結果として、従来の走行装置は、車速に比例した馬力特性で走行することになる。
しかしながら、従来の走行装置のように、車速に比例した馬力特性の場合には、走り始めから低速域にかけての出力馬力が不足し、高速域においては、過剰の出力馬力を生じさせるため、走行フィーリングが悪いという問題点や駆動源からのエネルギーを有効に利用できないという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−240324号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、低速度域では負荷に応じた微妙な制御を可能とし、高速域では走行系の負荷とは独立して速度制御に近い制御が可能な走行装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべく、下記の通り解決手段を見いだした。
即ち、本発明の走行装置の制御方法は、請求項1に記載の通り、駆動源と、前記駆動源により駆動される可変容量式の流体圧ポンプと、車軸に接続された可変容量式の流体圧モータとを備え、前記ポンプと前記モータとを閉回路となるようにして構成された走行装置の制御方法であって、前記モータの回転数(Nm)に対して、前記走行装置の馬力(W(Nm))を、
W(Nm)=α・Ne・Nm・(X0-Nm)n
(式中、Neは前記ポンプの回転数であり、α及びX0は正の定数、nは1以上の整数である。)
で表される関数に従って制御することを特徴とする。
また、請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の発明において、前記ポンプの回転数(Ne)は、前記ポンプの圧力制御値に変換され、前記閉回路中の圧力を検知しつつ、前記圧力制御値となるように調整されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
以上のように本発明によるときは、走行装置の起動時は力による制御を行い、速度の中間域においては、比較的速度が遅い場合に馬力制御を行い、比較的速度が速い場合には負荷と独立して、速度を一定と保つための速度制御を主体として制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施の形態の馬力特性の関数の説明図
【図2】同実施の形態の走行装置の説明図
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
図1において、可変容量式の流体圧ポンプ1と可変容量式の流体圧モータ2とは、閉回路を構成するように流路3,4を通して接続されている。可変容量式の流体圧ポンプ1やモータ2は、これらの容量を変化させることができるものであれば特に制限するものではなく、一例を挙げると、斜軸式や斜板式のものを使用することができる。尚、以下の説明では、可変容量式の流体圧ポンプ1及びモータ2として斜板式のポンプとモータとを使用して説明する。
ポンプ1は、駆動軸5を介してエンジン等の駆動源6により駆動される。駆動源6は、アクセルペダルやレバー等の回転数を設定するための部材7により制御される。また、駆動源6とポンプ1とを接続する駆動軸5には、モータの回転数Neを検知するためのセンサ8が設けられている。また、流路3,4にそれぞれ圧力検知用のセンサ9,10が設けられている。これらのセンサ9,10からの信号は、ポンプ1の傾転角を制御するためのポンプ制御装置11に送られる。
モータ2には、駆動軸12を介して車輪等の走行系に接続されている。尚、必要に応じて走行系にはクラッチ等が含まれるものとする。また、駆動軸12には、モータ2の回転数Nmを検知するためのセンサ13が設けられている。このセンサ13からの信号は、モータ2の傾転角を制御するためのモータ制御装置14に送られる。
【0009】
ポンプ制御装置11は、ポンプ1の回転数Neに定数αを乗算することにより得られた値を、吐出圧力指令値として、ポンプ1を制御する。本実施の形態では、ポンプ1の傾転量が制御されることになる。尚、ポンプ制御装置11は、吐出圧指令値に基づいて、流路3側に吐出する場合には、流路3側圧力を、流路4側に吐出する場合には、流路4側の圧力を、センサ9,10により取得し、閉ループ制御することにより意図した圧力に制御するようにしている。
尚、定数αは、正の定数であれば特に制限するものではない。
【0010】
モータ制御装置14は、モータ2の回転数Nmに、(X0-Nm)を乗算することにより得られた値を、モータ2の吸収量指令値として、モータ2を制御する。本実施の形態では、モータ2の傾転量が制御されることになる。
尚、X0は正の定数、nは1以上の整数であれば特に制限するものではない。尚、本実施の形態では、Nm・(X0-Nm)として、Nm・(qmax−β・Nm)を使用した。ここにおいて、qmaxは、モータ2の最大吸収量であり、βは、0以上の定数としている。qmax−β・Nmは、qmaxの15%以下とすることが好ましい。
【0011】
上記制御をすることにより、走行装置の馬力(W(Nm))は、図1に示されるように、上に凸の曲線で、Nm軸(モータ2の速度に比例する軸)との交点がX0となる。
このような関数となるように馬力を制御することにより、走行装置を起動した際には、力制御を主体で制御し、速度(モータ2の回転数Nm)の中間域の低い側では馬力制御で、中間域の高い側ではモータ2の負荷に独立な速度制御に近い特性で制御できるようになる。
【符号の説明】
【0012】
1 流体圧ポンプ
2 流体圧モータ
3 流路
4 流路
5 駆動軸
6 駆動源
7 回転数を設定するための部材
8 回転数検知センサ
9 圧力検知センサ
10 圧力検知センサ
11 ポンプ制御装置
12 駆動軸
13 回転数検知センサ
14 モータ制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、前記駆動源により駆動される可変容量式の流体圧ポンプと、車軸に接続された可変容量式の流体圧モータとを備え、前記ポンプと前記モータとを閉回路となるようにして構成された走行装置の制御方法であって、
前記モータの回転数(Nm)に対して、前記走行装置の馬力(W(Nm))を、
W(Nm)=α・Ne・Nm・(X0-Nm)n
(式中、Neは前記ポンプの回転数であり、α及びX0は正の定数、nは1以上の整数である。)
で表される関数に従って制御することを特徴とする走行装置の制御方法。
【請求項2】
前記ポンプの回転数(Ne)は、前記ポンプの圧力制御値に変換され、前記閉回路中の圧力を検知しつつ、前記圧力制御値となるように調整されることを特徴とする請求項1記載の走行装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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