説明

走行試験装置のベルト蛇行防止装置及び蛇行防止方法

【課題】 ベルトを目標位置に速やかに補正できるようにして、ベルトの蛇行や振動を確実に防止する。
【解決手段】
本発明の走行試験装置のベルト6蛇行防止装置1は、一対のドラムの間に架け渡されたベルト6の上に転動体を接地させて転動体の走行特性を評価する走行試験装置に設けられており、一方のドラムに対して他方のドラムを揺動させ且つその揺動量に応じてベルト6の位置を可変とするドラム揺動手段9によりベルト6の蛇行を修正するものである。
ベルト6蛇行防止装置1には、ベルト6の位置を検出し、検出されたベルト6の位置が目標位置となるようにドラム揺動手段9を制御する第1制御手段10と、ドラム揺動手段9により揺動された他方のドラムの揺動量を検出し、検出されたドラムの揺動量が目標の揺動量となるようにドラム揺動手段9を制御する第2制御手段11とが備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行試験装置のベルト蛇行防止装置及び蛇行防止方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤ又は車両などの転動体の走行特性を評価する走行試験装置には金属製のベルトを用いたものが知られている。走行試験装置には従動ドラムと駆動ドラムが設けられており、従動ドラムと駆動ドラムの間には無端のベルトが架け渡されている。ベルトの上側の平坦面が試験路面を構成しており、この試験路面に転動体を接地させてベルトを走行させることで転動体の走行特性が評価される。
ところで、従動ドラムや駆動ドラムは断面が真円になるように形成されているが、微視的に見ればこれらのドラムは真円ではない。また、2つのドラムを厳密に平行に配備することも難しく、ベルトにも微小な凹凸がある。そのため、2つのドラム間に架け渡されたベルトには蛇行やずれが避けられない。
【0003】
そこで、例えば特許文献1〜特許文献3には、ベルトの端部位置を検出し、検出されたベルト位置をフィードバックし、フィードバックされたベルト位置に基づいて従動ドラムを傾動させたりテンションを調整したりして、蛇行を修正する装置が開示されている。
【特許文献1】特開2004−359379号公報
【特許文献2】特開2005−351302号公報
【特許文献3】特開2005−326638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般にドラムの傾動に用いられるサーボモータや油圧シリンダの時定数に比べて、ドラム上を回転するベルトの時定数は非常に大きい。それゆえ、上述のような機構では、従動ドラムを揺動させたとしてもベルトがすぐに目標位置に移動することはなく、制御の応答性が悪いという問題がある。
また、上述のような機構では蛇行を防止すべく制御周期を短くする方が好ましい。ところが、制御周期を短くすると、1回の制御周期でベルトが目標位置に補正されることはない。そして、実際にベルトが移動した位置と目標位置との差分が制御周期ごとに発生することになる。当然、制御周期を繰り返せば繰り返すほどこのような差分は蓄積される。その結果、ベルトの位置がかえって蛇行したり振動したりする虞もある。
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、ベルトを目標位置に速やかに補正できるようにして、ベルトの蛇行や振動を確実に防止することができる走行試験装置のベルト蛇行防止装置及び蛇行防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は次の技術的手段を講じている。
即ち、本発明の走行試験装置のベルト蛇行防止装置は、一対のドラムの間に架け渡されたベルトの上に転動体を接地させて当該転動体の走行特性を評価する走行試験装置に設けられて、一方のドラムに対して他方のドラムを揺動させ且つその揺動量に応じてベルトの位置を可変とするドラム揺動手段によりベルトの蛇行を修正する蛇行防止装置であって、
前記ベルトの位置を検出し、検出されたベルトの位置が目標位置となるように、前記ドラム揺動手段を制御する第1制御手段と、前記ドラム揺動手段により揺動された他方のドラムの揺動量を検出し、検出されたドラムの揺動量が目標の揺動量となるように、前記ドラム揺動手段を制御する第2制御手段と、を備えていることを特徴とするものである。
【0007】
発明者らは、ドラム揺動手段の時定数に比べてベルトの時定数が非常に大きいのであれば、時定数の小さいドラム揺動手段の応答性をさらに良くすればよいのではないかと考えた。そして、ドラムの揺動量に基づいてドラム揺動手段を制御する第2制御手段を設けることで、ベルトが目標位置に速やかに補正できることを知見して、本発明を完成するに至ったのである。
それゆえ、本発明の走行試験装置のベルト蛇行防止装置では、ベルトを目標位置に速やかに補正できるようにして、ベルトの蛇行や振動を確実に防止することができる。
【0008】
なお、前記第2制御手段は、他方のドラムの揺動量を検出すると共に、検出された揺動量と目標の揺動量との差を算出し、前記揺動量の差をドラム揺動手段の入力側へフィードバックするものであるのが好ましい。
また、前記第1制御手段は、前記ベルトの端部の位置を検出すると共に、検出されたベルトの位置とベルトの目標位置とのズレ量を算出し、前記ベルトのズレ量をドラム揺動手段の入力側へフィードバックするものであるのが好ましく、前記ベルトのズレ量からドラム揺動手段の目標の揺動量を算出するPID制御手段を備えているのが好ましい。
【0009】
さらに、前記揺動量としては、他方のドラムの揺動角又は揺動角速度を用いることができる。
本発明の走行試験装置の蛇行防止方法は、一対のドラムの間に架け渡されたベルトの上に転動体を接地させて当該転動体の走行特性を評価する走行試験装置に設けられていて、一方のドラムに対して他方のドラムを揺動させ且つその揺動量に応じてベルトの位置を可変とするドラム揺動手段を用い、ベルトの蛇行を修正する方法であって、
前記ベルトの位置を検出し、検出されたベルトの位置が目標位置となるように、前記ドラム揺動手段を制御すると共に、前記ドラム揺動手段により揺動された他方のドラムの揺動量を検出し、検出されたドラムの揺動量が目標の揺動量となるように、前記ドラム揺動手段を制御することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の走行試験装置のベルト蛇行防止装置及び蛇行防止方法では、ベルトを目標位置に速やかに補正できるようにして、ベルトの蛇行や振動を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る走行試験装置の蛇行防止装置及び蛇行防止方法の実施形態を、図面に基づき詳しく説明する。
図1は、本発明の蛇行防止装置1が設けられたタイヤ試験機2(走行試験装置)を示している。
タイヤ試験機2は、駆動モータ3に連結されて正逆に回転自在とされた駆動ドラム4と、駆動ドラム4に対して距離をあけて軸心同士が互いに平行となるように設けられる従動ドラム5と、駆動ドラム4と従動ドラム5との間に架け渡された無端の金属板のベルト6とを有している。ベルト6には駆動ドラム4と従動ドラム5との間に上下2つの平坦面7、8が形成され、上側の平坦面7に形成された路面(試験路面)にタイヤT(転動体)が接地している。タイヤ試験機2は、ベルト6上の路面に転動体Tを接地させて転動体Tの走行特性を評価できるように構成されている。
【0012】
なお、以下の説明において、図1の紙面の上下をタイヤ試験機2の上下とする。また、駆動ドラム4の上側を通って従動ドラム5に向かうベルト6の左端側をタイヤ試験機2及び蛇行防止装置1を説明する際の左側とし、ベルト6の右端側を及び蛇行防止装置1を説明する際の右側とする。また、図1における駆動ドラム4からのベルト6の送り出し方向を前方向と呼び、前方向の反対の方向を後方向と呼ぶ。
駆動ドラム4は、ベルト6を巻き回せるように円筒状に形成されている。駆動ドラム4は、左右方向に沿った回転軸R1周りに回転可能となっており、この回転軸にギアボックス(図示せず)を介して接続された駆動モータ3により正逆双方に切り替え自在に回転駆動できるようになっている。
【0013】
従動ドラム5は、駆動ドラム4に対して距離をあけて軸心同士が互いに平行となるように配置されている。従動ドラム5は、駆動ドラム4と同様に左右方向に沿った回転軸R2回りに自由に回転できるように配置されている。
ベルト6は、無端の金属帯板やクローラなどで形成されており、駆動ドラム4と従動ドラム5との双方に巻き回されている。ベルト6は、外周側を向く表面がアスファルトやコンクリートなどの材料で形成されている。ベルト6は、駆動ドラム4と従動ドラム5との間に上側の平坦面7と下側の平坦面8を有している。本実施形態では、上側の平坦面7に対してこの平坦面7のさらに上方からタイヤTが接地させられている。なお、ベルト6は、外周側を向く表面が実路面と同様な環境になるように、外周側を向く表面の上に雪、氷、又は水の層を設けても良い。
【0014】
タイヤTは、上側の平坦面7に形成された路面に対して上方から接地されている。タイヤTには6分力計など(図示略)が設けられており、路面を走行させた場合に発生する力を計測することによりタイヤTの走行特性が評価可能となっている。
本発明の蛇行防止装置1は、タイヤ試験機2に設けられた駆動ドラム4と従動ドラム5と(一対のドラム)のうち、いずれか一方のドラムを他方のドラムに対して揺動させることでベルト6の蛇行を修正している。本実施形態の蛇行防止装置1は、駆動ドラム4に対して従動ドラム5を上下方向に沿った揺動軸R3回りに揺動させ且つその揺動量に応じてベルト6の位置を可変とするドラム揺動手段9と、このドラム揺動手段9を制御する制御部21と、を備えている。
【0015】
ドラム揺動手段9は、従動ドラム5を上下方向に沿った軸(揺動軸R3)回りに揺動させるものであり、従動ドラム5を両端側から支持する枠部材12と、枠部材12を揺動させるサーボモータ13と、を備えている。
枠部材12は、左右方向に伸びる横枠部材14と、この横枠部材14の両端から下方に向かって突出する一対のアーム部15、15と、横枠部材14の左右方向の中途部から上方に向かって突出する揺動軸部16と、を有している。横枠部材14は、従動ドラム5より左右方向に長く形成されており、横枠部材14の両端には一対のアーム部15、15が下方に向かって形成されている。一対のアーム部15、15は、互いに平行に形成されており、その下端側には従動ドラム5が回転自在に取り付けられている。揺動軸部16は上下方向に沿った揺動軸R3と同軸状に設けられており、揺動軸部16の上端にはサーボモータ13が設けられている。揺動軸部16の上下方向の中途部には揺動量検出手段17が設けられており、サーボモータ13と揺動軸部16との揺動軸R3回りの相対回動を検出可能となっている。
【0016】
サーボモータ13は、枠部材12の揺動軸部16の上端側に取り付けられており、枠部材12を介して従動ドラム5を揺動軸R3回りに揺動している。サーボモータ13は、外部から信号を入力することで回動変位量を調整できるようになっており、本実施形態では制御部21からの入力信号に基づいて回転する構成となっている。
制御部21は、コンピュータ又はシーケンサから構成されており、第1制御部18と第2制御部19とを有している。制御部21の第1制御部18は、後述する位置検出手段20やPID制御手段22と共に、ベルト6の位置を検出し、検出されたベルトの位置が目標位置となるように、ドラム揺動手段9を制御する第1制御手段10を構成している。また、第2制御部19は、後述する揺動量検出手段17と共に、ドラム揺動手段をさらに制御する第2制御手段11を構成している。
【0017】
第1制御手段10は、ベルト6の位置を検出する位置検出手段20と、位置検出手段20により検出されたベルト6の位置が目標位置となるようにドラム揺動手段9を制御する第1制御部18とを備えている。第1制御部18には、検出されたベルト6の実際の位置と目標の位置とのズレ量から目標の揺動量を算出し、算出した目標の揺動量をドラム揺動手段9に出力するPID制御手段22がさらに設けられている。
位置検出手段20は、ベルト6の下側の平坦面8における左端と右端とに、平坦面8から一定の距離をあけてそれぞれ設けられている。位置検出手段20は、ベルト6の下側の平坦面8における従動ドラム5に近い位置に取り付けられており、従動ドラム5が揺動した際のベルト6の位置の変化を短時間で検出できるようになっている。
【0018】
位置検出手段20は、ベルト6の左右の端部を光の透過で検知する光学センサで構成されており、ベルト6の端部が左右方向にどの程度移動したかを光の透過量の変動で計測している。位置検出手段20で検出されたベルト6の実際の位置y(s)は、制御部21の第1制御部18に出力される。
第1制御部18には、位置検出手段20で検出されたベルト6の実際の位置y(s)とベルト6の目標位置r(s)とが入力されている。ベルト6の目標位置r(s)は、蛇行を起こしていない状態でのベルト6の基準位置であり、予め第1制御部18に与えられている。第1制御部18では、検出されたベルト6の実際の位置y(s)からベルト6の目標位置r(s)を引いてベルト6のずれ量e(s)が計算される。計算されたベルト6のずれ量e(s)はPID制御手段22に出力される。
【0019】
PID制御手段22は、ベルト6のズレ量e(s)からドラム揺動手段9の目標の揺動量u1(s)を計算している。詳しくは、所定のサンプリング周期にて取り込まれたベルト6のズレ量e(s)を蓄積し、蓄積されたズレ量e(s)から得られる比例ゲイン、積分ゲイン、微分ゲインに基づいてドラム揺動手段9の目標の揺動量u1(s)を計算している。
サンプリング周期は、ベルト6や従動ドラム5のサイズ、運転条件等で様々に変化するため一概にその範囲を定めることはできないが、10ms〜200ms、好ましくは10ms〜50msとされている。
【0020】
PID制御手段22で計算された揺動角速度u1(s)はドラム揺動手段9のサーボモータ13と第2制御部19とにそれぞれ出力される。
ドラム揺動手段9では、入力された揺動角速度u1(s)になるようにサーボモータ13が回転し、枠部材12を介して従動ドラム5がベルト6のずれを解消する方向に回転する。
ところが、サーボモータ13を所定の揺動角速度で揺動する際の時定数に比べて、ベルト6の走行位置を所定の位置まで移動させる際の時定数は非常に大きい。つまり、従動ドラム5が揺動してもその影響がベルト6全体に及ぶには少なくとも半回転から1回転を必要とする。それゆえ、上述したサンプリング周期ではベルト6の実際の位置がベルト6の目標値にまで達することは困難である。そこで、本発明のベルト蛇行防止装置1では、上述の第1制御手段10に加えて、さらに第2制御手段11を備えている。
【0021】
第2制御手段11は、ドラム揺動手段9により揺動された従動ドラム5の実際の揺動量を検出する揺動量検出手段17と、揺動量検出手段17で検出されたドラムの揺動量が目標の揺動量となるようにドラム揺動手段9を制御する第2制御部19とを備えている。第1実施形態では、揺動量として従動ドラム5の揺動角速度θ’が用いられている。
揺動量検出手段17は、揺動軸部16の上下方向の中途部に設けられている。揺動量検出手段17は、サーボモータ13の回転変位量を測定するエンコーダで構成されており、サーボモータ13の回転変位量から従動ドラム5の実際の揺動角速度θ’を検出している。揺動量検出手段17で検出された従動ドラム5の実際の揺動角速度θ’は制御部21の第2制御部19に出力される。
【0022】
第2制御部19は、揺動量検出手段17で検出された従動ドラム5の実際の揺動角速度θ’をフィードバックしてドラム揺動手段9の入力側に入力している。第2制御部19には、第1制御部18で計算された揺動角速度u1(s)が入力されている。そして、第2制御部19では、揺動角速度u1(s)と揺動量検出手段17で検出されたドラムの揺動角速度θ’とに基づいて揺動角速度u2(s)を計算している。
次に、第2制御部19では、計算した揺動角速度u2(s)はドラム揺動手段9のサーボモータ13に出力し、サーボモータ13を揺動角速度u1(s)に加えて揺動角速度u2(s)で揺動しベルト6のずれを補正する。
【0023】
次に、制御部21で行われる処理、すなわち本発明の走行試験装置のベルト蛇行防止方法について説明する。
タイヤ試験機2でタイヤの走行試験を行う際は、まず駆動モータ3を駆動させ、駆動ドラム4を回転させる。駆動ドラム4が回転すると、駆動ドラム4と従動ドラム5との間に架け渡されたベルト6も回転する。そして、ベルト6の上側の平坦面にタイヤTを接地することで、タイヤの走行試験が行われる。
このとき、ベルト6はその位置がr(s)になるように調整されている。ところが、ベルト6にはタイヤ横力やその他の外乱が加わっており、これらに起因して蛇行やずれが発生する。その結果、ベルト6は目標位置r(s)から実際の位置y(s)にずれる。
【0024】
本発明のベルト蛇行防止方法は、まずベルト6の実際の位置y(s)を位置検出手段20により検出する。検出されたベルト6の実際の位置y(s)は第1制御部18の入力側にフィードバックされ、第1制御部18に出力される。
第1制御部18には、ベルト6の目標位置r(s)が初期設定として入力され(予め与えられ)ている。第1制御部18では、ベルト6の目標位置r(s)に対する位置検出手段20から入力されたベルト6の実際の位置y(s)の差をとり、ベルト6のずれ量e(s)が計算される。計算されたベルト6のずれ量e(s)は、第1制御部18のPID制御手段22に出力される。
【0025】
PID制御手段22は、入力されたベルト6のずれ量e(s)に基づいて、ドラム揺動手段9の目標の揺動角速度u1(s)を計算する。PID制御手段22には、ベルト6のズレ量e(s)の変化の仕方が蓄積されている。PID制御手段22は、蓄積されたベルト6のズレ量e(s)の変化の仕方に基づいて各ゲイン(比例ゲイン、積分ゲイン及び微分ゲイン)を定めており、各ゲインに基づいて揺動角速度u1(s)を計算する。計算された揺動角速度u1(s)はドラム揺動手段9と第2制御部19とにそれぞれ出力される。
【0026】
ドラム揺動手段9では、入力された揺動角速度u1(s)になるようにサーボモータ13が回転し、枠部材12を介して従動ドラム5がベルト6のずれを解消する方向に回転する。
ところが、サーボモータ13を所定の揺動角速度で揺動する際の時定数に比べて、ベルト6の走行位置を所定の位置まで移動させる際の時定数は非常に大きい。つまり、従動ドラム5が揺動してもその影響がベルト6全体に及ぶには少なくとも半回転から1回転を必要とする。それゆえ、上述したサンプリング周期ではベルト6の実際の位置がベルト6の目標値に達することは困難である。そこで、本発明のベルト6蛇行防止方法では、従動ドラム5の実際の揺動量(揺動角速度)をドラム揺動手段9の入力側にフィードバックし、従動ドラム5の揺動角速度が目標の揺動角速度となるようにドラム揺動手段9を第2制御部19で制御している。
【0027】
ベルト6蛇行防止方法の第2制御部19では、以下のように制御が行われる。
まず、枠部材12の揺動軸部16に設けられたエンコーダ(揺動量検出手段17)が、サーボモータ13の回動変位量を計測し、この回動変位量から従動ドラム5の実際の揺動角速度θ’を測定する。測定された従動ドラム5の実際の揺動角速度θ’は、第2制御部19に出力される。
第2制御部19では、従動ドラム5の実際の揺動角速度θ’を揺動角速度u1(s)から引いて、揺動角速度u2(s)が計算される。そして、第2制御部19では、計算で求められた揺動角速度u2(s)をドラム揺動手段9に出力している。
【0028】
その結果、ドラム揺動手段9は、第1制御部18から入力された揺動角速度u1(s)に加えて、さらに第2制御部19から入力された揺動角速度u2(s)で揺動する。つまり、第1制御手段10だけでベルト6のずれが十分に修正できない場合は、第2制御手段11が従動ドラム5の揺動を補正し、従動ドラム5がより大きく揺動してベルト6のずれが短時間で収束できるようになる。
【実施例】
【0029】
次に、実施例と比較例とを用いて、本発明のベルト蛇行防止装置1及びベルト蛇行防止方法について説明する。
実施例と比較例とで用いられるタイヤ試験機2は、互いに平行に配置された駆動ドラム4(外径120mmφ、ドラム幅200mm)と従動ドラム5(外径120mmφ、ドラム幅200mm)との間に架け渡されたベルト6(ベルト幅100mm、ベルト長977mm、ベルト厚0.1mm)の上側の平坦面にタイヤ(外径120mmφ、タイヤ幅50mm)が接地する構造となっている。
【0030】
蛇行防止装置1は、従動ドラム5を上下方向の軸周りに揺動させるサーボモータ13を備えており、サーボモータ13で枠部材12を介して従動ドラム5を揺動可能となっている。蛇行防止装置1の制御部21にはサンプリング周期15Hz(6.7ms)でベルト6の位置を検出する光透過式のセンサが位置検出手段20として取り付けられている。
実施例及び比較例では、効果の差違を明らかにするために、制御開始後から60s経過するまでのベルト6の位置の変位を計測した。なお、ベルト6位置の計測は、ずれがない状態でベルト6が通過する位置から制御開始時のベルト6の位置を意図的に2mmずらしてから計測を開始した。計測の結果を図4に示す。
【0031】
図4(a)に示されるように、第2制御手段11を用いずに第1制御手段10だけで蛇行を防止した比較例では、制御開始後15sまでは制御開始時のベルト6の位置の影響が残っており、ベルト6の位置の変位も大きくなっている。また、制御開始後15s以降も±0.3mm程度の振動が観察され、この振動は消えずに残ったままである。
ところが、図4(b)に示すように、第1制御手段10と第2制御手段11とを双方用いて蛇行を防止した実施例では、制御開始後5sで制御開始時のベルト6の位置の影響が無くなり、ベルト6の蛇行やずれが比較例より短時間で収束している。また、制御開始後15s以降も±0.1mm程度の微小な振動は観察されるものの、その振幅は小さくなっており、振動も確実に抑制されている。
【0032】
実施例と比較例との比較から、位置検出手段20で検出されたベルト6の位置が目標位置となるようにドラム揺動手段9を制御する第1制御手段10に加えて、ドラム揺動手段9により実際に揺動された従動ドラム5の揺動量が目標の揺動量となるようにドラム揺動手段9を制御する第2制御手段11を設けることで、ベルト6の位置が速やかに補正され、ベルト6の蛇行や振動が確実に防止されることがわかる。
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、発明の本質を変更しない範囲で各部材の形状、構造、材質、組み合わせなどを適宜変更可能である。
【0033】
上記実施形態では、ドラム揺動手段9にサーボモータ13が用いられていた。しかし、ドラム揺動手段9はサーボモータ13だけに限定されない。例えば、従動ドラム5の両側に前後方向にアームを設け、このアームを前後方向に油圧シリンダなどで伸縮させて、従動ドラム5を揺動することもできる。その場合、サーボモータの揺動角速度に代えて油圧シリンダの伸縮量を制御すると良い。
また、上記実施形態では、ドラム揺動手段9は揺動軸部16回りに従動ドラム5を揺動させる構成となっていた。しかし、従動ドラム5の揺動方向は揺動軸部16回りに限定されない。例えば、従動ドラム5のいずれかの端部を上下方向に動かすことで、前後方向に沿った軸周りに従動ドラム5を揺動させる構成とすることもできる。
【0034】
なお、上記実施形態では、ドラム揺動手段9は駆動ドラム4に対して従動ドラム5を揺動する構成となっていた。しかし、ドラム揺動手段9は従動ドラム5に対して駆動ドラム4を揺動する構成とすることもできる。
なお、上記実施形態では、第2制御手段11は、エンコーダで計測された従動ドラム5の揺動角速度をドラム揺動手段9の入力側にフィードバックする構成となっていた。しかし、第2制御手段11を従動ドラム5の揺動角や揺動角加速度をドラム揺動手段9の入力側にフィードバックする構成とすることもできる。
【0035】
なお、上記実施形態では、位置検出手段20にベルト6の下側の平坦面に設けられる光学センサが用いられていた。しかし、位置検出手段20に用いられるセンサは光学式でなくても良く、また設置場所はベルト6の端部の位置を検出できる場所であればどこでも良い。例えば、上側の平坦面に設けたり、従動ドラム5の上方に配備することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明のタイヤ試験機の斜視図である。
【図2】蛇行防止装置の信号の流れを示すブロック図である。
【図3】制御部の信号の流れを示すブロック図である。
【図4】(a)は比較例のベルト位置の変位を示す図である。(b)は実施例のベルト位置の変位を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1 蛇行防止装置
2 タイヤ試験機
3 駆動モータ
4 駆動ドラム
5 従動ドラム
6 ベルト
7 上側の平坦面
8 下側の平坦面
9 ドラム揺動手段
10 第1制御手段
11 第2制御手段
12 枠部材
13 サーボモータ
14 横枠部材
15 アーム部
16 揺動軸
17 揺動量検出手段
18 第1制御部
19 第2制御部
20 位置検出手段
21 制御部
22 PID制御手段
R1 駆動ドラムの回転軸
R2 従動ドラムの回転軸
R3 ドラム揺動手段の揺動軸
θ’ 揺動角速度
T タイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のドラムの間に架け渡されたベルトの上に転動体を接地させて当該転動体の走行特性を評価する走行試験装置に設けられて、一方のドラムに対して他方のドラムを揺動させ且つその揺動量に応じてベルトの位置を可変とするドラム揺動手段によりベルトの蛇行を修正する蛇行防止装置であって、
前記ベルトの位置を検出し、検出されたベルトの位置が目標位置となるように、前記ドラム揺動手段を制御する第1制御手段と、
前記ドラム揺動手段により揺動された他方のドラムの揺動量を検出し、検出されたドラムの揺動量が目標の揺動量となるように、前記ドラム揺動手段を制御する第2制御手段と、
を備えていることを特徴とする走行試験装置のベルト蛇行防止装置。
【請求項2】
前記第2制御手段は、他方のドラムの揺動量を検出すると共に、検出された揺動量と目標の揺動量との差を算出し、前記揺動量の差をドラム揺動手段の入力側へフィードバックすることを特徴とする請求項1に記載の走行試験装置のベルト蛇行防止装置。
【請求項3】
前記第1制御手段は、前記ベルトの端部の位置を検出すると共に、検出されたベルトの位置とベルトの目標位置とのズレ量を算出し、前記ベルトのズレ量をドラム揺動手段の入力側へフィードバックすることを特徴とする請求項2に記載の走行試験装置のベルト蛇行防止装置。
【請求項4】
前記第1制御手段は、前記ベルトのズレ量からドラム揺動手段の目標の揺動量を算出するPID制御手段を備えていることを特徴とする請求項3に記載の走行試験装置のベルト蛇行防止装置。
【請求項5】
前記揺動量は、他方のドラムの揺動角又は揺動角速度であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の走行試験装置のベルト蛇行防止装置。
【請求項6】
一対のドラムの間に架け渡されたベルトの上に転動体を接地させて当該転動体の走行特性を評価する走行試験装置に設けられていて、一方のドラムに対して他方のドラムを揺動させ且つその揺動量に応じてベルトの位置を可変とするドラム揺動手段を用い、ベルトの蛇行を修正する方法であって、
前記ベルトの位置を検出し、検出されたベルトの位置が目標位置となるように、前記ドラム揺動手段を制御すると共に、
前記ドラム揺動手段により揺動された他方のドラムの揺動量を検出し、検出されたドラムの揺動量が目標の揺動量となるように、前記ドラム揺動手段を制御することを特徴とする走行試験装置のベルト蛇行防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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