説明

超伝導体物品、及びそれを製造および使用する方法

超伝導テープが開示され、該テープは基板、前記基板の上に横たわるバッファ層、該バッファ層の上に横たわる超伝導層、及び該超伝導層の上に横たわる電気メッキされた安定化層を含む。また超伝導テープを組み込んだ構成要素、該構成要素を製造する方法、該構成要素を使用する方法が開示される。該テープは、低AC損失を与え、特に回転機械におけるなど、AC損失の減退が重要である構成要素における使用に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に超伝導体物品、及びそれを製造する方法に関するものである。本発明は特に、被覆された導体の形の超伝導体物品、及びそれを組み込んでいるデバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
超伝導材料は、技術社会により長きに渡って知られ、理解されてきた。液体ヘリウムの使用を必要とする温度(4.2K)で超伝導特性を示す低温(low−TC)超伝導体は、1911年頃から知られている。しかしながら、酸化物ベースの高温(high−TC)超電導体が発見されたのは比較的最近のことである。1986年頃、液体窒素の温度(77K)より高い温度で超伝導特性を有する最初の高温超電導体(HTS)、すなわちYBa2Cu37-x(YBCO)が発見され、その後、過去15年間に、Bi2Sr2Ca2Cu310+y(BSCCO)及び、その他のもの、を含むさらなる材料の開発が続いた。高Tc超伝導体の開発は、そのような超伝導体を組み込んだ超伝導素子の経済的に実現可能な開発の可能性を、部分的には、そのような超伝導体を、比較してより高価な液体ヘリウムに基づく極低音機械設備ではなく、液体窒素により動作させるコストにより、生み出してきた。
【0003】
可能性の応用を求めて、産業は、このような材料の、発電、送電、配電、及び貯蔵の応用を含む電力産業における使用を開発することを追及してきた。この点に関し、銅ベースの商用電力部品の生来の電気抵抗は、毎年数10億ドル相当の電力の損失をもたらしていると推定され、従って、電力産業は、送電及び配電ケーブル、発電機、変圧器、漏電遮断機等の電力部品において高温超伝導体を用いることで利益を得ることができる。さらに、電力産業における高温超電導体の他の利点は、従来技術に対する電力処理容量の3−10倍の増加、電気機器のサイズ(すなわち、設置面積)の大幅な削減、環境に対する影響の削減、安全性の拡大、及び増大した容量を含む。このような高温超電導体の可能性のある利点は、非常に魅力的であり続けているが、高温超電導体の大規模な製造及び商業化には数々の技術的困難が引き続き存在する。
【0004】
高温超電導体の商用化に関連する困難の中で、多くは、様々な電力部品の形成のために利用することのできる超伝導テープの製造の周辺に存在する。超伝導テープの第1世代は、上述したBSCCO高温超電導体の使用を含む。この材料は、一般に、貴金属、代表的には銀のマトリクス内に埋め込まれた離散的なフィラメントの形状で提供される。そのような導体は、材料、および製造コストのために、電力産業における実施化に必要な延長された長さ(例えばキロメートルのオーダー)で製造され得るが、そのようなテープは、商業的に実現可能な物品を提供するものではない。
【0005】
従って、優れた商業的な実現可能性を有した、いわゆる第2世代のHTSテープに対し大きな関心が起こっている。これらのテープは、一般的に機構的支持を提供するフレキシブル基板、該基板の上に横たわる少なくとも1つのバッファ層、該バッファ層は任意に複数膜を含む、該バッファ層の上に横たわるHTS層、及び通常少なくとも貴金属から形成される、該超伝導層の上に横たわる電気的安定化層を一般に含む層構造に、通常依存する。しかしながら、今日まで、そのような第2世代テープの完全な商用化に先立ち、多くの工学上及び製造上の困難が残っている。
【0006】
したがって、上記に鑑み、様々なニーズが、超伝導体の技術において、なかでも特に、商業的に実現可能な超伝導体テープ、これらを形成する方法、及びこのような超伝導体テープを利用する電力部品を抵抗することおいて存在し続けている。
【0007】
上述したような一般的な技術上のニーズに加え、交流電流の損失が特に重要性をもつ応用の文脈において、望ましい動作特性を有する超伝導材を提供することも、また有益である。この点に関し、今日利用される電力の最も一般的な形態は、交流電流(AC)の形態である。コイル状の、または巻線状の導体を含む超伝導物品は、特にACの損失を受けるものであり、商業的な実現可能性を阻害している。
【特許文献1】米国特許第6,190,752号明細書
【発明の開示】
【0008】
本発明の第1の特徴によれば、超伝導体物品が提供され、これは、基板、該基板の上に横たわる複数の超伝導体ストリップ、該超伝導体ストリップは互いに近接した第1と第2の超伝導体ストリップを有すること、及び少なくとも該第1と第2の超伝導体ストリップを相互に電気的に連結する少なくとも1つの導体ブリッジを含む。通常、前記基板は約10以上の寸法比を有する。
【0009】
本発明の別の特徴によれば、超伝導体テープを形成する方法が提供され、これは、基板を提供すること、該基板の上に横たわる超伝導層を堆積すること、前記基板が102以上の寸法比を有すること、および、前記超伝導層をフォトリソグラフィーによりパターニングすることを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1に戻って、本発明の一実施形態による超伝導体物品の一般的な層構造が図示される。該超伝導体物品は、基板10、基板10の上に横たわるバッファ層12、超伝導層14、それに続く、代表的には貴金属層である、キャップ層(任意)、及び代表的には貴金属でない金属よりなる、安定化層18(任意)を含む。
【0011】
基板10は通常、金属ベースのものであり、一般に、少なくとも2つの金属元素の合金である。特に適切な基板材料は、公知のInconel(登録商標)グループ合金などの、ニッケルベースの金属合金を含む。Inconel(登録商標)合金は、伸張係数、引っ張り強度、降伏強度、及び展延性を含む、望ましいクリープ、化学的、及び機械的特性を有する傾向がある。これらの金属は、一般に、特に超伝導テープの製造に適しており、一般にオープンリール式のテープ処理を利用する、巻かれたテープの形状で商業的に利用可能である。
【0012】
基板10は一般にテープ状の形状をしており、高い寸法比を有する。例えば、テープの幅は通常、約0.4から10cmのオーダーであり、テープの長さは、一般に少なくとも約100mであり、最も一般的には、約500mより長い。実際、本発明の実施形態は、1kmまたはそれ以上のオーダーの長さを有する基板10を含む超伝導テープを提供する。従って、該基板は、かなり高い、即ち、10以上の、102以上、あるいは103以上のオーダーの寸法比を有する。特定の実施形態は、さらに長いものであり、104及びそれ以上の寸法比を有する。ここで使われているように、“寸法比”という用語は、基板又はテープの長さの、該基板又はテープの、次に最も長い寸法である、幅に対する比を示すために使われている。
【0013】
ある実施形態において、基板は、該超伝導テープの構成層の次の堆積のために望ましい表面特性を持つように処理される。例えば、該表面は、所望の平面性、及び表面粗さにまで軽く研磨してもよい。また該表面は、公知のRABiTS(ロール補助2軸テクスチャ基板:roll assisted biaxially textured substrate)技術などにより、技術において理解されるように2軸テクスチャー処理をおこなってもよい。
【0014】
バッファ層12に戻って、該バッファ層は単一の層であってもよいが、あるいはより一般的には、いくつかの膜からなってもよい。最も一般的な場合、該バッファ層は、一般に該膜の面内、及び面外の両方における結晶軸に沿って整列した結晶性テクスチャを有する、2軸テクスチャ膜を含む。このような2軸テクスチャリングは、IBADによって達成できる。技術において理解されているように、IBADは、イオンビーム補助堆積(Ion beam assisted deposition)の頭文字を取った頭字語であり、優れた超伝導特性に対して、望ましい結晶学的方位性を有する超伝導層の、その後の形成のために適切にテキスチャーされたバッファ層を形成するのに有利に用いることのできる技術である。酸化マグネシウムは、IBAD薄膜用に選択される代表的な材料であり、50から500オングストロームのオーダーのものであり、たとえば、50から200オングストロームである。通常、IBAD薄膜は、米国特許第6190752号で定義及び記述されているように、岩塩のような結晶構造を有し、その内容は、参照により、ここに組み込まれる。
【0015】
該バッファ層は、IBAD薄膜と基板に直接接触し、それらの間に配置されるバリアフィルムなどの付加的な薄膜を含む。この点に関し、該バリアフィルムは、イットリアなどの酸化物から有利に形成され、基板をIBAD薄膜から隔離する機能を果たす。バリアフィルムはまた、窒化ケイ素などの非酸化物から形成されてもよい。バリア膜の堆積に適した技術は、化学気相堆積法、及びスパッタ法を含む物理気相堆積法を含む。バリア膜の一般的な厚みは、約100から200オングストロームの範囲内であってもよい。さらに、緩衝層はまた、IBAD薄膜上に形成されたエピタキシャル成長された薄膜を含んでもよい。この場合、エピタキシャル成長された膜は、IBAD膜の厚みを増すのに有効であり、主に、MgOなどの、IBAD層に利用されるのと同じ材料から形成されることが望ましい。
【0016】
MgOベースのIBAD膜、及び/又はエピタキシャル膜を利用する実施形態においては、MgO材料と超伝導層の材料との間で格子不整合が存在する。従って、バッファ層はさらに別のバッファ膜を含んでいてもよく、これは特に、超伝導層とその下のIBAD薄膜及び/又はエピタキシャル膜との間の格子定数の不整合を削減するために実施される。このバッファ膜は、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)ストロンチウムルテニウム、ランタンマンガン酸塩、及び一般に、ペロブスカイト構造のセラミック材料などの材料から形成される。該バッファ膜は、様々な物理気相堆積技術により堆積される。
【0017】
上記は主に、IBADなどのテキスチャープロセスによるバッファスタック(層)における2軸テクスチャ膜の実現に焦点を当ててきたが、その代替として、基板表面それ自体を2軸テクスチャしてもよい。この場合、バッファ層は、通常該バッファ層内に2軸テクスチャを維持するようテクスチャされた基板上にエピタキシャル成長される。2軸テクスチャされた基板を形成するための1つのプロセスは、技術においてRABiTS(ロール補助2軸テキスチャー基板)として知られ、通常、技術において理解されている。
【0018】
超伝導層14は通常、高温超電導(HTS)層の形態にある。HTS材料は通常、液体窒素の温度である77K以上で、高温超伝導特性を示す高温超伝導材のいずれかから選択される。そのような材料は、例えばYBa2Cu37-x、Bi2Sr2Ca2Cu310+y、Ti2Ba2Ca3CuO10+y及びHgBa2Ca2Cu38+yを含む。材料の一つのクラスは、REが希土類元素である、REBa2Cu37-xを含む。上記のうち、YBa2Cu37-xは、通常YBCOと言及されるが、有利に利用できる。超伝導層14は、厚膜、及び薄膜形成技術を含む、様々な技術のうちの任意の1つにより形成される。望ましくは、パルスレーザー堆積法(PLD)などの薄膜物理気相堆積技術は、高堆積率のために使用でき、あるいは化学気相堆積技術は、低コスト及びより大きい表面領域処理のために使用できる。代表的に、超伝導層は約1から約30ミクロンのオーダーの厚みを有し、最も代表的には、超伝導層14に関連して望ましい定格電流を得るために、約2から約10ミクロンなどの、約2から約20ミクロンである。
【0019】
キャッピング層16、及び安定化層18は、通常、実際の使用における超伝導体の焼損の防止を助けるために、低抵抗接触面、及び電気的安定化を与えるように用いられる。より具体的には、層16と18は、冷却が失敗し、あるいは電流密度が超過して、超伝導層が超伝導状態から遷移し、抵抗性を持つようになったときにも、電荷の超伝導体に沿っての連続した流れがあることを助ける。代表的に、安定化層と超伝導層14との間の、不要な相互作用を防ぐために、貴金属がキャッピング層16に利用される。代表的な貴金属は、金、銀、プラチナ、及びパラジウムを含む。銀が、そのコストと容易な入手性から、代表的に使用される。キャッピング層16は、一般的に、構成要素の安定化層18から超伝導層14内への不要な拡散を防止するのに十分厚く作られるが、コスト上の理由(原材料、及び製造コスト)から通常薄く作られる。キャッピング層16の代表的な厚みは、0.5から約5.0ミクロンなど約0.1から約10.0ミクロンの範囲内である。キャッピング層16の堆積には、DCマグネトロンスパッタリングなどの物理気相堆積を含む、様々な技術が使用される。
【0020】
安定化層18は通常、超伝導層14の上に横たわるように組み込まれ、特に、図1に示される特定の実施形態においては、キャッピング層16の上に横たわり、これに直接接触する。安定化層18は、厳しい環境及び超伝導性の急停止に対する安定性を高めるための保護/分流層として機能する。該層は通常、濃密で、温度及び電気において伝導性があり、超伝導層の失敗の場合に電流をバイパスするよう機能する。該層は、ハンダまたはフラックスなどの媒介となるボンディング材を使用することによって、超伝導テープ上に予め形成される銅ストリップを積層する、などの、様々な厚膜、及び薄膜形成技術のいずれか1つにより形成される。他の技術は、物理気相堆積法、代表的には蒸着またはスパッタリングばかりでなく、無電解プレーティング、及び電解プレーティングなどの湿式化学処理に焦点が置かれてきた。この点に関し、キャッピング層16は、銅をその上に堆積するためのシード層として機能する。
【0021】
図1に関連して超伝導テープの一般化された構造が記述されてきたが、本発明の実施形態の付加的でさらに詳細な特徴を、本発明の一実施形態による長い長さの超伝導テープのパターニングプロセスを示す、図2から5に示されるプロセスを参照して明らかにする。示される該プロセスによれば、可視光のスペクトルまたは紫外線のスペクトルにおける波長のような、パターニングに適したエネルギー源に露出されたフォトレジストを用いて、テープ上に3次元パターンを形成するためにフォトリソグラフィープロセスが用いられる。該プロセスは通常、プライミングプリセスで始まり、該プロセスにおいては、パターニングを受ける表面がクリーニングされ、プライムミングされる。この場合、該テープは、テープを、代表的にリールツーリールプロセスにより処理されて、吸収された湿気を除去するよう、除湿(脱水)ベーキングプロセスにさらすことにより、蒸気プライミングされる。さらに、堆積されたフォトレジストの超伝導テープに対する接着性を促進するために、HMDSなどにより、ケミカルプライミングが行われる。ケミカルプライミングは、様々な応用方法を用いて行うことができる。追加的なプライミング方法は、コロナ放電処理、及びプラズマ処理を含む。
【0022】
いずれかのプライミングステップの後には、通常は、フォトレジストが超伝導テープに適用される。この点に関し、フォトレジスト層40が図2に示され、基板10、バッファ層12、超伝導層14、キャッピング層16及び安定化層18を含む層構造に形成された超伝導テープの上に横たわっている。該フォトレジストは、乾燥膜積層ディップ及び噴霧コーティング法、及びおそらくドクターブレーディングによるなど、薄膜、及び厚膜形成技術を含む様々な技術の任意の1つにより堆積される。該フォトレジストの実際の組成は、半導体産業において一般的に使われるものなど、様々な商業的に利用可能なフォトレジストの任意の1つから選ぶことができる。一例は、標準UV Iラインフォトレジストを含むアクリレートベースのフォトレジストを含む。該フォトレジストは、陰性または陽性レジストであってよい。この点において、陰性レジストは、レジストにおける像が、パターニングに使用されるレチクル上に見られるパターンのネガであるもので、一方、陽性レジストは、レチクルにおいて形成されるパターンと同じパターンを有するイメージを形成する。代表的に、進歩しているリソグラフィー技術は、陽性レジストの利点を有する。
【0023】
レジストを塗布した後、代表的に、該レジストは、ソフトベーク工程を受け、これにおいては、レジスト内の剰余の溶剤が除去され、レジストとその下にある超伝導層との間の接着性が改善される。ソフトベーキングプロセスは、該超伝導テープを、加熱板上でステッピング(ストップアンドゴー移送工程)させることにより、あるいは、加熱板上での、または加熱された環境内での、移送プロセスにより行われる。移送は、リールツーリール装置により行われる。ある実施形態において、ソフトベーキングは真空内で行われる。
【0024】
いずれかのベーク工程の後に、代表的には、該フォトレジストは、整列及び露光プロセスによりパターニングされる。この場合、一般的に、レチクルが、上記した陰性の、又は陽性のフォトリソグラフィー技術のいずれかにより、所望の周波数の光源が、それを通って該フォトレジストの選択された部分を照射するように用いられる。この点において、図2の矢印200が注視されるべきであり、ここにおいて、紫外線光源は、レチクル200を照射し、選択された部分202のみを通過し、フォトレジスト層40を照射することを許している。図示された実施形態は、陽性リソグラフィーアプローチを利用しており、フォトレジスト層40に最後に形成されるパターンは、図3に示されるように、レシチル200において形成されるパターンと同じパターンである。
【0025】
整列、及び露出を行う実際の機構に関して、該テープは、連続的なプロセスを介して移送され、該プロセスでは、レクチルと光源は、移送プロセスの間の一般的に連続的な放射のために、固定的に保たれる。あるいは、該レクチル200は、伸張した長さを有するような大きさにされ、そこで、超伝導テープは、ここでステップアンドリピートプロセスと言及されるように、移送され、停止され、露光され、かつ再び、移送される。例えば、レクチルと光源は、例えば一度の露光ステップで露光される超伝導テープの実際の長さを参照して、1から50cmの露光窓を提供するように配置される。上述のプロセスを行うことにより、超伝導テープの全長が、一般的に、下記に述べるフォトレジスト現像およびエッチングを続けるのに先立ち、露出される。
【0026】
露出の後に、レジストは現像される。陽性フォトレジストの場合、該レジストの光に露出された部分は、現像液中に溶解される。現像溶液の1つの例は、1%Na2CO3 水溶液を含む。商業的に利用可能なIラインレジストの場合、一般的に、最も普及している現像剤は、フォトリソグラフィー産業における様々な共通の製剤設計(formulations)を有するTMAHである。完全に現像されたレジストが図3に示され、レジスト40は、超伝導テープの下にある層を露出する複数のチャンネル42を有する。
【0027】
現像の後に、該レジストは、ハードベーク、すなわち、熱処理に晒され、これにおいて、現像プロセスからの残留溶剤が蒸発され、これによりレジストを硬化させる。
【0028】
超伝導テープは、一般に、図3で示されるように、エッチング液210によりエッチングされる。エッチング液は、一般にここでは、適切な選択性、エッチレート、及び示される本実施形態においては、安定化層18、キャッピング層16、及び超伝導層14の材料を含む超伝導体テープの様々な材料の完全なエッチング、のために用いられる異なるエッチング種のグループを含むよう用いられる。エッチングは、化学及び/または物理手段によるものを含む、様々な技術のうちの1つにより実行される。例えば、乾燥エッチングは、通常、超伝導テープを、プラズマに晒し、該プラズマは、物理的及び/または化学的に相互作用して、該テープの露出された材料を除去する。潤湿エッチングは、液体薬品を用いて、超伝導テープから材料を化学的に除去する。ある実施形態は、潤湿エッチング、さらに正確には、通常10%のCuCl2の水性溶剤を含む銅塩酸溶剤(CuCl2)を用いる。上述したように、異なる化学反応が超伝導テープの異なる材料に対して用いられる。
【0029】
エッチング動作の後に、該エッチング動作に続いて、超伝導ストリップ、またはフィラメント14a、14b、及び14cが残される、図4に示される構造が与えられる。図示されるように、ストリップはギャップgだけ、相互に隔たっており、図示されるように、ストリップまたはフィラメント幅Wを有する。本発明の実施形態によれば、ストリップは、通常、テープの長さ方向に平行であり、通常、相互に平行であり、また通常、少なくとも1ミクロン、代表的には、例えば約10ミクロンより大きい、約5ミクロンよりも大きい、平均ギャップgだけ、相互に隔たれて配置されている。実質的に一定のギャップが、図4に示される超伝導ストリップの間に配置されているが、超伝導テープの様々な近接するストリップの間では、一定でないギャップを用いることもできることが理解される。
【0030】
さらに、超伝導ストリップは、約5ミクロンよりも大きい平均幅を持つことができ、ある実施形態においては、約8ミクロンより大きい、あるいは約10ミクロンより大きい平均幅を持つことができる。該超伝導ストリップは、実質的に同じ幅あるいは変化する幅を持つことができる。また、実施形態で示されているものは、コプレーナ(同一平面)なものであるが、超伝導材料の様々なレベルまたはレイヤーを用いることができ、これにより、超伝導ストリップが互いにコプレーナでない構造を与えることができる、ことが理解される。
【0031】
エッチングの後に、例えば、適切な水溶液にレジストをさらすことなどで、レジストを除去する。ある実施形態において、超伝導テープは、2−3重量/重量%の水溶液の状態のNaOHに晒され、その後、DIリンスされる。レジストの露出と、リンスに続いて、通常、超伝導テープは、O2プラズマ処理などによって洗浄される。
【0032】
フォトリソグラフィックパターニングプロセスの完了の後に、超伝導テープは、さらなる堆積動作を受け、追加的な層を形成する。図5に示されるように、超伝導テープは、パッシべーション層の堆積により完了し、該パッシべーション層は、超伝導層の望ましくない汚染を防ぐため、汚染物質に対し保護障壁層を提供することを含む、様々な機能を果たす適切なパッシべーション材料からなる。該パッシべーション層はまた、該超伝導テープに対して構造的な一体性を与える。該パッシべーション層に用いられる材料の例は、SiO2、YSZ、ダイアモンド様の炭素、有機ポリマーを含む。
【0033】
図2から5に示されるプロセスフローに関連して開示された上記実施形態においては、フォトリソグラフィー技術によるパターニングは、キャッピング層16および安定化層18の形成の後に実行されるが、パターニングは、これらの層の堆積の前に行ってもよいことにも留意すべきである。この場合、キャッピング層16と安定化層18の形成の前に、超伝導層14がパターニングされる図6に注意されたい。図示されるように、キャッピング層16は、比較的正角であり、安定化層は正角でない構造で提供される。
【0034】
本発明の実施形態の様々な特徴が、様々なプロセス特徴に関する具体的な詳細とともに、上記において開示されたが、本発明の一実施形態による超伝導フィラメントの構造の上面図を示す図7に注意されたい。ここでは、複数のフィラメント14a、14b、14c、及び14dが設けられており、そこで、複数のブリッジ20が設けられている。ある実施形態において、図2から図5に示されたプロセスフローに関連して上記で述べたように、ブリッジ20は、同じ超伝導層14からなる。従って、伝導性ブリッジは、通常、層14のバランスと同じ超伝導材料により形成され、すなわち超伝導ストリップである。これらのブリッジ、または架橋するフィラメント20は、超伝導テープの製造プロセス歩留りを改善するために与えられる。より具体的には、伝導性フィラメントにおける開口またはギャップは、歩留りに負の影響を与える。図7に示されるように、隣接する超伝導ストリップの間に周期的に配置される架橋するフィラメント20を用いることにより、開口を含む分離した長さの超伝導ストリップが、分路される。一般に、超伝導テープは、基板の100m毎に2つの隣接するフィラメント間に少なくとも1つのブリッジを有し、より代表的には、基板の50mに少なくとも1つの、そして様々な実施形態においては、基板の10m毎に少なくとも1つのブリッジを含む。別の実施形態では、基板の1m毎に少なくとも1つのブリッジを含む。一般に、伝導ブリッジは、基板の長さに沿って周期的に離れて配置されているが、超伝導ブリッジは、不規則な方向を向いて、あるいは、周期的でなく配置されていてもよい。伝導性ブリッジの形成の集積に関して、それらのブリッジは上記したパターニングプロセスにより容易に同時に形成される。
【0035】
上述したような超伝導性導体、またはテープに関する特定の構造、及びプロセス技術の域を越えて、実施形態は、さらに、これらの伝導体を組み込んだ産業用または商用電力要素などの部品要素にも関連する。ある実施形態は、電力発電機、及びモータを広範囲に含む「回転機械」として公知の電力部品要素のクラスにも向けられる。
【0036】
図8は、その周りに1次巻線72及び2次巻線74が巻かれる中央コア76を有する電力変圧器を図示している。図8は本質的に概略図であって、該変圧器の実際の幾何学的配置形状は、技術において知られているように種々変化する。しかしながら、該トランスは、少なくとも基本的な1次及び2次巻線を含む。この点に関し、図8に示される実施形態においては、1次巻線は、2次巻線74より多くの数のコイルを有し、入力される電力信号の電圧を低減する降圧変圧器を示している。その逆に、1次巻線において2次巻線に比較し少ない数のコイルを設けると、電圧の昇圧を生ずる。これに関し、代表的に、昇圧トランスは、長距離にわたての電力損失を低減するために、電圧を高電圧に増加させる電力送信中継所において用いられ、降圧トランスは、電力の末端ユーザーへの最終段階配電のために配電所内において集積される。1次巻線、及び2次巻線の少なくとも1つ、及び望ましくはその両方は、上述に従って超伝導性テープよりなることが望ましい。
【0037】
図9に戻って、発電機の基本的な構造が提供される。該発電機は、技術において知られているように、タービンなどにより駆動されるロータ86を含む。該ロータ86は、電力の発生にとって望ましい電磁界を形成するロータコイル87で形成された高強度電磁石を含む。電磁界の生成は、少なくとも1つの伝導性巻線89を有するステータ88において電力を生成する。本実施形態の特定の特徴によれば、ロータコイル、及び/又はステータ巻線は、上述の実施形態に従った超伝導テープよりなる。ステータ巻線において使用される低損失超伝導対は、通常、ヒステリシスロスを実質的に低減する。
【0038】
本発明の具体的な特徴がここで詳細に記述されたが、当業者は、依然本発明の請求項の範囲内に止まる変更をすることができることは、よく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は本発明の一実施形態による超伝導テープの一般化された構造を示す斜視図を示す。
【図2】図2は本発明の一実施形態を形成するためのプロセスフローを示す。
【図3】図3は本発明の一実施形態を形成するためのプロセスフローを示す。
【図4】図4は本発明の一実施形態を形成するためのプロセスフローを示す。
【図5】図5は本発明の一実施形態を形成するためのプロセスフローを示す。
【図6】図6は本発明のもう1つの実施形態を示す。
【図7】図7は本発明の一側面による超伝導テープのレイアウトを示す上面図を示す。
【図8】図8は変圧器の概略図を示す。
【図9】図9は発電機の概略図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超伝導体物品であって、該超伝導体物品は、
基板と、
該基板の上に横たわる複数の超伝導ストリップであって、該超伝導ストリップは、相互に近接した第1および第2の超伝導ストリップからなることと、
少なくとも第1および第2の伝導性ストリップを相互に電気的に結合する、少なくとも1つの伝導性ブリッジとからなり、前記基板は、約10より大きい寸法比を有する、
ことを特徴とする超伝導体物品。
【請求項2】
請求項1に記載の超伝導体物品において、前記超伝導ストリップは、通常互いに平行である、
ことを特徴とする超伝導体物品。
【請求項3】
請求項1に記載の超伝導体物品において、前記超伝導ストリップは、少なくとも1μmの平均ギャップ幅だけ相互に隔たっている、
ことを特徴とする超伝導体物品。
【請求項4】
請求項3に記載の超伝導体物品において、前記平均ギャップ幅は、約5μmよりも大きい、
ことを特徴とする超伝導体物品。
【請求項5】
請求項3に記載の超伝導体物品において、前記超伝導ストリップは、実質的に一定のギャップだけ相互に隔たっている、
ことを特徴とする超伝導体物品。
【請求項6】
請求項1に記載の超伝導体物品において、前記第1および第2の超伝導ストリップは、少なくとも5μmの平均幅を有する、
ことを特徴とする超伝導体物品。
【請求項7】
請求項5に記載の超伝導体物品において、前記第1および第2の超伝導ストリップは、実質的に同じ幅を有する、
ことを特徴とする超伝導体物品。
【請求項8】
請求項1に記載の超伝導体物品において、前記伝導ストリップは、通常、相互にコプレーナであって、超伝導層を形成する、
ことを特徴とする超伝導体物品。
【請求項9】
請求項8に記載の超伝導体物品において、前記超伝導層は、前記基板の上に横たわるよう堆積により形成される、
ことを特徴とする超伝導体物品。
【請求項10】
請求項8に記載の超伝導体物品において、前記超伝導層は、フォトリソグラフィープロセスを受けて、前記超伝導性ストリップを形成する、
ことを特徴とする超伝導体物品。
【請求項11】
請求項10に記載の超伝導体物品において、前記フォトリソグラフィープロセスは、前記超伝導層の部分を除去して、前記超伝導体ストリップを後に残すのに有効である、
ことを特徴とする超伝導体物品。
【請求項12】
請求項1に記載の超伝導体物品において、前記少なくとも1つの伝導性ブリッジは、超伝導材料からなる、複数の伝導性ブリッジを備える、
ことを特徴とする超伝導体物品。
【請求項13】
請求項12に記載の超伝導体物品において、前記超伝導ストリップと、前記複数の伝導性ブリッジは、実質的にコプレーナであり、前記超伝導材料のパターン化された層から形成される、
ことを特徴とする超伝導体物品。
【請求項14】
請求項12に記載の超伝導体物品において、前記伝導ブリッジは、通常、前記基板の長さに沿って周期的に相互に隔っている、
ことを特徴とする超伝導体物品。
【請求項15】
請求項1に記載の超伝導体物品において、該物品は、基板の100m毎に少なくとも1つのブリッジを備える、
ことを特徴とする超伝導体物品。
【請求項16】
請求項1に記載の超伝導体物品において、該物品は、基板の50m毎に少なくとも1つのブリッジを備える、
ことを特徴とする超伝導体物品。
【請求項17】
請求項1に記載の超伝導体物品において、該物品は、基板の10m毎に少なくとも1つのブリッジを備える、
ことを特徴とする超伝導体物品。
【請求項18】
請求項1に記載の超伝導体物品において、該物品は、基板の1m毎に少なくとも1つのブリッジを備える、
ことを特徴とする超伝導体物品。
【請求項19】
請求項12に記載の超伝導体物品において、前記伝導性ブリッジは、通常、前記基板の長さに沿って周期的に相互に隔っている、
ことを特徴とする超伝導体物品。
【請求項20】
請求項1に記載の超伝導体物品であって、さらに、前記超伝導層の上に横たわる少なくとも1つの伝導性分路層を、備える、
ことを特徴とする超伝導体物品。
【請求項21】
請求項1に記載の超伝導体物品であって、さらに、その上に前記超伝導層が設けられている、2軸的にテクスチャ加工された層を備える、
ことを特徴とする超伝導体物品。
【請求項22】
請求項21に記載の超伝導体物品において、前記2軸的にテクスチャ加工された層は、IBAD層よりなる、
ことを特徴とする超伝導体物品。
【請求項23】
請求項1に記載の超伝導体物品において、前記超伝導ストリップは高温超伝導体からなる、
ことを特徴とする超伝導体物品。
【請求項24】
請求項23に記載の超伝導体物品において、前記高温超伝導体は、REが希土類元素であるREBa2Cu37-xを含む、
ことを特徴とする超伝導体物品。
【請求項25】
請求項24に記載の超伝導体物品において、前記超伝導材料が、YBa2Cu37よりなる、
ことを特徴とする超伝導体物品。
【請求項26】
請求項1に記載の超伝導体物品において、前記基板は、102より大きい寸法比を有する、
ことを特徴とする超伝導体物品。
【請求項27】
請求項1に記載の超伝導体物品において、前記基板は、103より大きい寸法比を有する、
ことを特徴とする超伝導体物品。
【請求項28】
請求項1に記載の超伝導体物品において、該物品は、超伝導テープの形状である、
ことを特徴とする超伝導体物品。
【請求項29】
請求項1に記載の超伝導体物品において、前記基板、前記超伝導ストリップ、及び前記伝導ブリッジは、超伝導テープを形成し、該物品は、複数の超伝導テープを有するコイルを備える、
ことを特徴とする超伝導体物品。
【請求項30】
請求項1に記載の超伝導体物品において、該物品は電力変圧器であり、該電力変圧器は少なくとも1次巻線と2次巻線を備え、少なくとも前記1次巻線と2次巻線のいずれかは、超伝導テープの巻きコイルを備え、該超伝導テープは、前記基板、前記超伝導ストリップ、及び前記伝導ブリッジよりなる、
ことを特徴とする超伝導体物品。
【請求項31】
請求項1に記載の超伝導体物品において、前記物品は、回転機械であり、該回転機械は、少なくとも1つの巻線を備え、該少なくとも1つの巻線は、前記基板、前記超伝導ストリップ、及び伝導ブリッジにより形成された超伝導性テープよりなる、
ことを特徴とする超伝導体物品。
【請求項32】
請求項1に記載の超伝導体物品において、前記回転機械は、発電機またはモータである、
ことを特徴とする超伝導体物品。
【請求項33】
超伝導テープを形成する方法であって、該方法は、
102以上の寸法比を有する基板の上に横たわる超伝導層を堆積することと、
フォトリソグラフィーにより前記超伝導層をパターニングすることとからなる、
ことを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法において、前記パターニングは、リールツーリールプロセスにより行われる、
ことを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項33に記載の方法において、パターニングは、フォトリソグラフ層を堆積すること、および、該フォトリソグラフィー層をパターニングするよう、該フォトリソグラフィー層を露出することによって行われ、ここで該露出は、該フォトリソグラフィー層が離散した断面において露出するよう、ステップアンドリピートプロセスにより行われる、
ことを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項33に記載の方法において、パターニングは、フォトリソグラフィー層を堆積すること、および該フォトリソグラフィー層をパターニングするよう、該フォトリソグラフィー層を露出することによって行われ、ここで該露出は、前記基板が露出の間に移送されるように連続的なプロセスにより行われる、
ことを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項33に記載の方法において、前記基板は、約103より大きい寸法比を有する、
ことを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項33に記載の方法において、前記基板は、約104より大きい寸法比を有する、
ことを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項33に記載の方法であって、該方法は、さらに、前記基板の上に横たわるバッファ層を堆積することよりなり、前記超伝導層は、前記バッファ層の上に横たわる、
ことを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項33に記載の方法であって、該方法はさらに、前記超伝導層の上に横たわる電気的分路層を堆積すること、よりなる、
ことを特徴とする方法。
【請求項41】
請求項40に記載の方法において、前記電気的分路層は、パターニングの前に堆積される、
ことを特徴とする方法。
【請求項42】
請求項40に記載の方法において、前記電気的分路層は、パターニングの後に堆積される、
ことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−524198(P2007−524198A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547111(P2006−547111)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/041824
【国際公開番号】WO2005/089095
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(505448796)スーパーパワー インコーポレイテッド (18)
【Fターム(参考)】