説明

超低空頭掘削装置、それに使用するケリーロッド、その掘削反力取得方法及びその移動装置

【課題】駅プラットホーム下などの空頭が極度に制限された施工現場において、ホーム上のスペースに影響を与えることがなく杭穴施工をすることができる超低空頭掘削装置及びその掘削反力の取得方法を提供する。
【解決手段】スキッドベース1と、スキッドベース1に支持され、その前後方向に相対スライドするマストフレーム2と、マストフレーム2に立設されたマスト3と、マストに形成されたガイドに沿って昇降する昇降ビーム4と、昇降ビームに支持されて掘削のためのケリーロッドを吊り下げるスイベルヘッドと、スキッドベース1に支持され、ケリーロッドを回転させるターンテーブル30とを備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超低空頭掘削装置、それに使用するケリーロッド、その掘削反力取得方法及びその移動装置に関し、より詳細には駅プラットホーム下などの空頭が極度に制限された施工現場で杭穴を掘削するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
駅ビルを構築するなど駅の改良工事において、プラットホーム下方の地盤に基礎杭用の杭穴を施工する場合がある。この場合、ホームの一部を開口し、掘削装置をその上部が開口から突出した状態で杭施工位置の地盤上に設置し、掘削装置の上部を仮囲いによって覆う方法がある(例えば特許文献1参照)。あるいは、ホームの上空に設置した構台に掘削装置を搭載し、また構台とホームとの間に鋼管を設置し、ロッドやビットなどの掘削ツールスを鋼管内を通して移動させ、同時に鋼管によって掘削ツールスを覆うという方法もある。
【0003】
しかし、いずれの方法の場合も、乗客が多い駅、ホーム幅の狭い駅、階段付近での施工など、施工条件によっては仮囲いや鋼管の設置スペースを確保することが困難な場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−39921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は上記のような技術的背景に基づいてなされたものであって、次の目的を達成するものである。
この発明の目的は、駅プラットホーム下などの空頭が極度に制限された施工現場において、ホーム上のスペースに影響を与えることがなく杭穴施工をすることができる超低空頭掘削装置、その掘削反力の取得方法及びその移動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は上記課題を達成するために、次のような手段を採用している。
すなわち、この発明は、駅プラットホーム下などの空頭が制限された施工現場で穴を掘削するための掘削装置であって、
スキッドベースと、
このスキッドベースに支持され、その前後方向に相対スライドするマストフレームと、
このマストフレームに立設されたマストと、
このマストに形成されたガイドに沿って昇降する昇降ビームと、
この昇降ビームに支持されて掘削のためのケリーロッドを吊り下げるスイベルヘッドと、
前記スキッドベースに支持フレームを支持され、前記ケリーロッドを回転させるターンテーブルと
を備えてなることを特徴とする超低空頭掘削装置にある。
【0007】
上記掘削装置において、前記ターンテーブルの支持フレームの下面に、前記ケリーロッドの接続・切り離し時に該ターンテーブルよりも下方のケリーロッドを支持するための1対の仮受けバーが設けられ、
この仮受けバーは先端が前記支持フレームに水平方向に回動可能に取り付けられ、互いに略平行となって前記ケリーロッドの外周に係合する接近位置と、略ハの字状に拡開して前記ケリーロッドとの係合を解除する拡開位置との間を移動自在となっている構成を採用することができる。
【0008】
また、上記掘削装置において、前記ターンテーブルは、前記スキッドベースの前後方向とそれと直角な方向との水平2方向に移動自在であり、前記スイベルヘッドは前記ケリーロッドを介して前記ターンテーブルの移動に追従可能である構成を採用することができる。
【0009】
あるいは、前記スイベルヘッドは、前記スキッドベースの前後方向とそれと直角な方向との水平2方向に移動自在であり、前記ターンテーブルは前記ケリーロッドを介して前記スイベルヘッドの移動に追従可能である構成を採用することもできる。
【0010】
またこの発明は、上記掘削装置に使用するケリーロッドであって、
本体ロッド部と、この本体ロッド部の外周に軸方向に沿って180度の角度間隔を置いて形成され、ターンテーブルから回転力が伝達される1対の突起と、本体ロッドの上下端に前記突起間に位置するようにそれぞれ形成され、上下のケリーロッドを接続するための1対のフランジとを備え、
前記上フランジにはネジ部が該上フランジから上方に突出するボルトが固定されるとともに、前記下フランジには前記ネジ部が挿入される穴が形成され、
前記上フランジ直下の前記本体ロッド部外周に前記仮受けバーに係合させるための係合突起が設けられていることを特徴とするケリーロッドにある。
【0011】
またこの発明は、上記掘削装置の掘削反力取得方法であって、掘削装置上方の構造物を支持する杭から反力を得ることを特徴とする掘削反力取得方法にある。
【0012】
具体的には、前記構造物を支持する複数の杭のうち、互いに隣接する2つの杭を1組とする2組の杭の各杭間に第1反力受け部材を設置し、また前記スキッドベースの各スキッドにその前後端から突出して伸縮する第2反力受け部材を収容し、
前記第2反力受け部材を伸長してその端部を前記第1反力受け部材に押し付けることにより、前記第1及び第2反力受け部材を介して前記杭から反力を取得する。
【0013】
さらにこの発明は、上記掘削装置の移動装置であって、
掘削装置の上方の構造物における複数の桁に、これら桁を横切るように取り付けられたレールと、
このレールに沿って移動可能な走行体と、
上端が前記走行体に取り付けられ、下端が前記スキッドベースに取り付けられて前記掘削装置を吊り下げる吊り具と
を備えてなることを特徴とする超低空掘削装置の移動装置にある。
【発明の効果】
【0014】
この発明の掘削装置によれば、掘削ロッドの回転駆動方式をトップドライブ方式ではなく、ターンテーブル方式としたので、掘削装置の機高を極力低くすることができ、空頭が制限された現場での施工が可能となる。超低空頭空間では、マストの高さが制限される結果、昇降ビームの昇降ストロークも制限されるが、この発明の掘削装置によればマストを前後に移動可能としたので、ケリーロッドの継ぎ足しのためのスペースを得ることができる。
【0015】
また、ターンテーブルの支持フレームの下面に仮受けバーを組み込んだので、空頭が制限された施工現場の少ない空間を利用してケリーロッドを支持することができ、その接続・切り離しを円滑に遂行することができる。また、ケリーロッドは、上フランジに予めボルトが固定されているので、空頭が制限されて短尺のケリーロッドの使用によって接続回数が多くならざるを得ない施工現場で、その接続を迅速に行うことができる。
【0016】
また、ターンテーブルあるいはスイベルヘッドを水平2方向に移動自在とし、それに対応してスイベルヘッドあるいはターンテーブルをケリーロッドを介して追従可能とすることにより、穴曲がりが生じた場合であっても空頭が制限された施工現場で容易に修正することができる。
【0017】
また、この発明の反力取得方法によれば、掘削装置上方の構造物を支持する杭を利用して掘削反力を取得するので、反力取得のための専用の杭などを打設する必要がなく、空頭が制限された現場のスペースを有効に利用することができ、また施工の効率化を図ることができる。
【0018】
また、この発明の移動装置によれば、掘削装置上方の構造物の桁を利用してレールを取付け、このレールに掘削装置を吊り下げて移動するものであるので、低空頭空間においてクレーン等を使用しなくとも小さな力で効率よく移動作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明による超低空頭掘削装置の実施形態を示す平面図である。
【図2】同掘削装置の側面図である。
【図3】同掘削装置の正面図である。
【図4】ケリーロッドを示す平面図である。
【図5】ケリーロッドを示し、(a)は図4のA−A線矢視断面図、(b)は図4のB−B線矢視図である。
【図6】仮受けバーを示す平面図である。
【図7】同仮受けバーの正面図である。
【図8】同仮受けバーの側面図である。
【図9】仮受けバーによるケリーロッドの支持状態を示す正面図である。
【図10】同支持状態を示す側面図である。
【図11】ターンテーブルの別の実施形態を示す平面図である。
【図12】同ターンテーブルの正面図である。
【図13】同ターンテーブルに対応して設けられるスイベルヘッドの平面図である。
【図14】同スイベルヘッドの側面図である。
【図15】スイベルヘッドの別の実施形態を示す平面図である。
【図16】同スイベルヘッドの側面図である。
【図17】同スイベルヘッドに対応して設けられるターンテーブルの平面図である。
【図18】同ターンテーブルの正面図である。
【図19】この発明による掘削反力取得方法の実施形態を示す平面図である。
【図20】同方法を示す側面図である。
【図21】同方法を示す正面図である。
【図22】この発明による移動装置の実施形態を示す側面図である。
【図23】同装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1〜図3に示すように、この発明による掘削装置は駅プラットホーム50下などの空頭が極めて制限された施工現場において、杭穴を施工するために開発されたものである。因みに駅プラットホーム50と地盤との間は2m以下であり、したがって掘削装置の機高も1.8m程度に抑えられている。一方、基礎杭は杭径がφ3000mm程度の大径であり、したがって、その杭穴を掘削する装置も高トルクであることなど高い掘削能力が求められる。
【0021】
掘削装置は主たる構成として、スキッドベース1、マストフレーム2、マスト3、昇降ビーム4、スイベルヘッド5及びターンテーブル(ロータリーテーブル)30を備えている。スキッドベース1は1対のスキッド1a,1aを有し、スキッド1a,1a間は複数の連結部材1bで連結されている。マストフレーム2はスキッドベース1のスキッド1a,1a上にガイド6を介して、スキッドベース1の前後方向に相対スライド自在に搭載されている。スキッドベース1の後部の連結部材1bとマストフレーム2との間に油圧による駆動シリンダ7が配置され、その伸縮作動によりスキッドベース1とマストフレーム2とが前後方向に相対スライドする。
【0022】
マストフレーム2の前後方向に沿う両側部にはそれぞれ複数(2個)のレベリングジャッキ8が設けられている。このレベリングジャッキ8の接地状態でスキッドベース1を地面に対し移動させ、レベリングジャッキ8の非接地状態でマストフレーム2をスキッドベース1に対しスライドさせ、この動作を繰り返すことにより、掘削装置全体が走行移動可能である。
【0023】
マストフレーム2にはベースプレート9が設けられ、マスト3はこのベースプレート9上に立設されている。マスト3は略直方体枠状のもので、その前部に昇降ビーム4を案内するための縦方向に延びる1対のガイド10,10が設けられている(図3参照)。これらガイド10,10にはその長手方向に沿ってローラチェーン11が固定配置されている。昇降ビーム4にはローラチェーン11に対応して、1対のスプロケット12,12が収容され、これらスプロケット12,12はローラチェーン11,11にそれぞれ噛み合っている。
【0024】
昇降ビーム4の背面には油圧による駆動モータ13が設けられている。この駆動モータ13の作動によりスプロケット12,12が回転し、ローラチェーン11,11に沿って走行することにより、昇降ビーム4が昇降する。マスト3には昇降ビーム4の上昇限度位置及び下降限度位置を規定するストッパ20a,20bが設けられている。
【0025】
スイベルヘッド5は昇降ビーム4の前面にブラケット14を介して取り付けられている。スイベルヘッド5は図4,図5に示すケリーロッド15を吊り下げるもので、下端にケリーロッド15を固定するためのフランジ16が設けられている。また、このスイベルヘッド5には掘削泥水を排出するための排泥管17がスイベルヘッド5に対し相対回転自在に設けられている。
【0026】
図4,図5はケリーロッド15の詳細を示している。スイベルヘッド5に吊り下げられるケリーロッド15は、後述するターンテーブルから回転力が伝達される、トルク伝達用の突起18を有する掘削ロッドである。その長さは、1000mm程度で短尺のものである。突起18は本体ロッド部15aの軸線方向に沿って180度の角度間隔を置いて1対設けられている。
【0027】
このケリーロッド15の上下端には、突起18,18間に位置するようにそれぞれ1対のフランジ19a,19bが形成されている。上フランジ19aにはネジ部が該フランジから上方に突出する複数のボルト21が固定されている。これらのボルト21は、上下のケリーロッド15どうしを接続し固定するためのものである。また、上フランジ19aには該フランジから上方に突出するピン22が固定されている。これらのピン22は、上限のケリーロッド15の接続時にボルト穴の位置決めをするために設けられている。
【0028】
下フランジ19bにはボルト21及びピン22を挿入するための複数の穴80が設けられている。この穴80と同様の穴がスイベルヘッド5のフランジ16にも設けられ、その穴にボルト21及びピン22を挿入し、ボルト21のネジ部にナット81を螺着することによりケリーロッド15がスイベルヘッド5に固定される。同様に、上下のケリーロッド15どうしも穴80にボルト21及びピン22を挿入し、ナット81を螺着することにより互いに固定される。
【0029】
上フランジ19a,19aの直下には、それぞれ2つの係合突起82が設けられている。係合突起82はプレート状のものであり、本体ロッド部15aの軸線方向に沿ってその外周に固定されている。この係合突起82は、上下のケリーロッド15の接続(継ぎ足し)・切り離し時に、後述する仮受けバーに係合させてケリーロッド15を支持させるためのものである。
【0030】
マスト3の両側部にはケリーロッド15の接続・切り離し時に、ケリーロッド15を吊り下げるためのバー23,23が設けられている。このバー23,23はマスト3にヒンジ24を介して取り付けられ、水平面内を旋回自在である。バー23,23の後端にはウィンチ25が設けられている。バー23,23の先端にはプーリ26が設けられている。ウィンチ25から繰り出されて、プーリ26に掛けられて垂下するワイヤロープ27の先端にはフック27aが設けられている。ケリーロッド15はその接続・切り離し時にフック27aに掛け止めされて吊り下げられる。
【0031】
ターンテーブル(ロータリーテーブル)30は、スキッドベース1の前部に設置されている。ターンテーブル30はこれを回転自在に支持する支持フレーム31を有し、この支持フレーム31の両側部がスキッドベース1のスキッド1a,1aに支持されている。支持フレーム31の内部には、詳細は図示しないが、ターンテーブル30の駆動伝達機構が配置されている。すなわち、ターンテーブル30の外周に設けられたリングギヤと、このリングギヤに噛み合うアイドルギヤと、このアイドルギヤに噛み合うピニオンとが配置されている。ピニオンは支持フレーム31上に設置された油圧による駆動モータ32に取り付けられたギヤであり、この駆動モータ32の作動によりターンテーブル30が回転する。
【0032】
ターンテーブル30の内周にはブッシュが着脱自在に取り付けられ、このブッシュの内周面にはケリーロッド15の突起18が嵌まる溝29(ターンテーブルを模式的に示す図6参照)が設けられている。これにより、ターンテーブル30の回転がケリーロッド15に伝達され、ケリーロッド15の先端に取り付けられた大口径用のビット、例えばウィングビットが回転する。
【0033】
図1,図3に示すように、また図6〜図8に模式的に示すように、ターンテーブル30の支持フレーム31の下面には、ケリーロッド15の接続・切り離し時にケリーロッドを支持するための1対の仮受けバー83,83が設けられている。仮受けバー83,83は先端が支持フレーム31に水平方向に回動可能なように支持され、後端は支持フレーム31の下面に設けられたホルダ84に支持されている。
【0034】
仮受けバー83,83は互いに略平行となる接近位置と、略ハの字状に拡開する拡開位置との間を移動自在である。そして、仮受けバー83,83は接近位置においてケリーロッド15の係合突起82の下端に係合し、拡開位置において係合突起82との係合を解除する。
【0035】
杭穴の掘削は次のようにして行われる。杭穴施工位置においてはビットを収容するためのピットが先行して掘削されている。掘削装置を施工位置に移動し、ターンテーブル中心を設計杭穴芯に合わせ、ケリーロッド15の上端をスイベルヘッド5に接続するとともに、下端をビットに連結する。そして駆動モータ32の作動によりターンテーブル30を回転させ、また駆動モータ13の作動により昇降ビーム4を下降させる。すなわち、ケリーロッド15を回転させながら下降させ、これによりビットによる掘削がなされる。
【0036】
掘削時には先行掘削したピット及びそれに連続して形成される杭穴に掘削水が供給される。掘削によって生じたズリを伴った泥水は、ケリーロッド15の内部及び排泥管17を通して掘削穴外部に排出され、処理されて循環使用される。
【0037】
スイベルヘッド5が図2鎖線位置で示す下降位置に達したら、新たなケリーロッド15を継ぎ足す。継ぎ足しのために、まず図9,図10に示すように仮受けバー83,83を接近位置に回動させて、最上段のケリーロッド15の係合突起82に係合させ、ターンテーブル30よりも下方のケリーロッド15を仮受けバー83,83によって支持する。そして、スイベルヘッド5をケリーロッド15から切り離して上昇位置に上昇させた後、駆動シリンダ7の作動によりマスト3を後退させ(図2の鎖線位置、図10)、先行するケリーロッド15に新たなケリーロッド15を継ぎ足す。次いで、マスト3を前進させ、スイベルヘッド5に新たなケリーロッド15を接続する。以下、上記のようにしてケリーロッド15を順次継ぎ足しながら、所定深度まで杭穴を掘削する。なお、ケリロッド15を順次切り離しながらの引き上げ時にも、切り離すべきケリーロッド15よりも下方のケリーロッドを仮受けバー83,83によって支持する。
【0038】
超低空頭空間では、マスト3の高さが制限される結果、昇降ビーム4の昇降ストロークも制限されるが、この発明ではマスト3を前後に移動可能としたので、ケリーロッド15の継ぎ足しのためのスペースを得ることができる。また、ターンテーブル30の支持フレーム31の下面に組み込んだ仮受けバー83,83によりケリーロッド15を支持するので、空頭が制限された施工現場の少ない空間を利用してケリーロッド15を支持することができ、その接続・切り離しを円滑に遂行することができる。また、ケリーロッド15は、上フランジ19aに予めボルトが固定されているので、空頭が制限されて短尺のケリーロッドの使用によって接続回数が多くならざるを得ない施工現場で、その接続を迅速に行うことができる。
【0039】
図11〜図14は、別の実施形態を示している。掘削中に土質の変化などにより杭穴芯が設計杭穴芯からずれてしまう穴曲がりが生じることがある。このような場合に対処するために、掘進方向の修正機構を加えたのがこの実施形態である。図11,図12に示すように、ターンテーブル30の支持フレーム31は、それぞれ1対の第1ガイド33,33及び第2ガイド34,34の2つのガイドを介してスキッドベース1に支持されている。
【0040】
第1ガイド33,33は断面がL字形の部材であり、両端がスキッドベース1のスキッド1a,1aに支持されている。第2ガイド34,34も同様に断面がL字形の部材であり、両端が第1ガイド33,33にスライド自在に支持されている。すなわち、第2ガイド34,34はスキッドベース1の左右方向に移動自在である。この第2ガイド34,34にターンテーブル30の支持フレーム31がスライド自在に支持されている。すなわち、支持フレーム31は、スキッドベース1の前後方向に移動自在である。
【0041】
この結果、ターンテーブル30はスキッドベース1の前後方向及び左右方向の互いに直角な水平2方向に移動自在である。一方の第2ガイド34とスキッド1aとの間に油圧による駆動シリンダ35が配置されている。また、スキッドベース1の連結部材1bとターンテーブル30の下面との間にも油圧による駆動シリンダ36が配置されている。これら駆動シリンダ35,36の作動により、ターンテーブル30が水平2方向に移動する。これにより、穴曲がりを修正すべく、ケリーロッド15の鉛直度を変化させることができる。
【0042】
一方、スイベルヘッド5は、図13,図14に示すように、自在継手の1つである球継手37を介して昇降ビーム4に取り付けられている。具体的には、昇降ビーム4には球体38を有するアーム39が設けられ、球体38はスイベルヘッド5に設けられた球座40に受け入れられている。したがって、スイベルヘッド5は全方向に回転自在となり、スイベルヘッド5をケリーロッド15を介してターンテーブル30の動きに追従させることができる。
【0043】
図15〜図18は、さらに別の実施形態を示している。この実施形態は掘進方向の修正機構の別の例である。この実施形態は、図11〜図14に示した実施形態とは逆に、スイベルヘッド5を水平2方向に移動自在とし、この動きにターンテーブル30が追従できるようにしたものである。
【0044】
スイベルヘッド5は、第1ガイド41及び第2ガイド42の2つのガイドを介して昇降ビーム4に取り付けられている。第1ガイド41は昇降ビーム4に設けられ、この第1ガイド41にはスキッドベース1の左右方向に沿ったガイド溝(あり溝)43が形成されている。第2ガイド42には背面に突条(ほぞ)44が形成され、第2ガイド42は突条44がガイド溝43に嵌まることによって第1ガイド41にスライド自在に支持されている。したがって、第2ガイド42はスキッドベース1の左右方向に移動自在である。
【0045】
第2ガイド42にはまた、スキッドベース1の前後方向に沿った穴45が形成されている。スイベルヘッド5には背面に突起46が形成され、スイベルヘッド5は突起46が穴45に嵌まることによって第2ガイド42にスライド自在に支持されている。この結果、スイベルヘッド5はスキッドベース1の前後方向及びそれと直角な水平2方向に移動自在である。
【0046】
第1ガイド41には第2ガイド42をスライドさせる油圧による駆動シリンダ47が設けられている。また第2ガイド42は穴45に作動油が収容されて、突起46をピストンとするシリンダ構造であり、このシリンダ構造及び駆動シリンダ47の作動により、スイベルヘッド5が水平2方向に移動する。これにより、穴曲がりを修正すべく、ケリーロッド15の鉛直度を変化させることができる。
【0047】
一方、ターンテーブル30は、第1支持フレーム51及び第2支持フレーム52の2つの支持フレームを介してスキッドベース1に支持されている。第1支持フレーム51はスキッドベース1の左右方向に配置された1対の水平ピン53,53を介してスキッド1a,1aにそれぞれ支持されている。したがって、第1支持フレーム51はスキッドベース1の左右方向の水平軸を中心として鉛直方向に回転自在である。
【0048】
第2支持フレーム52は第1支持フレーム51の内側に配置され、この第2支持フレーム52にターンテーブル30が設けられている。第2支持フレーム52には図1〜図3に示した実施形態における支持フレーム31と同様に、ターンテーブル30の駆動伝達機構や駆動モータ32が配置されている。第2支持フレーム52はスキッドベース1の前後方向に配置された1対の水平ピン54,54を介して第1支持フレーム51に支持されている。したがって、第2支持フレーム52はスキッドベース1の前後方向の水平軸を中心として鉛直方向に回転自在である。この結果、ターンテーブル30はスキッドベース1の前後方向及び左右方向2つの互いに直角な水平軸を中心として鉛直方向に回転自在となり、ターンテーブル30をケリーロッド15を介してスイベルヘッド5の動きに追従させることができる。
【0049】
前述のように、この発明による掘削装置が使用されるのは、駅プラットホーム下などの極めて空頭が制限された施工現場であり、しかも大口径の杭穴を掘削するので回転トルクが大きく、掘削反力(主として回転反力)も大きくなる。このような条件下においても、図19〜図21に示す方法により掘削反力を得ることができる。
【0050】
駅プラットホーム50下にはその長さ方向に沿って2列の杭60a,60bが設置されている。プラットホーム50は、各列の杭60a,60bをそれぞれ連結する桁受け65a,65bと、桁受け65a,65b上に設置された複数の桁66と、桁66上に設置された簡易覆工版72によって構成されている。すなわち、プラットホーム50は杭60a,60bによって支持されているのであるが、これらの複数の杭60a,60bのうち、互いに隣接する2つの杭を1組とする2組の杭から掘削反力を得ることができる。具体的には、例えば各杭列の互いに隣接する2つの杭60a,60a及び2つの杭60b,60bを選択し、各杭列間で互いに対向する2つの杭60a,60b間に第1反力受け部材61,61をそれぞれ設置し、その両端を杭60a,60bにそれぞれ固定する。
【0051】
また、スキッドベース1のスキッド1a,1aには、それらの前後端から突出して伸縮自在なように第2反力受け部材62を収容する。スキッド1a,1b内には図示しない多段ジャッキが収容され、その作動により各第2反力受け部材62を伸長させ、端部を第1反力受け部材61に向けて押し付ける。これにより、掘削装置の回転反力を第1,第2反力受け部材61,62を介して杭60a,60bから得ることができる。
【0052】
また、上記のようにスキッド1a,1bに伸縮自在な反力受け部材62を設けることにより、掘削穴63の口元管64の口径よりもスキッドベース1の幅(スキッド1a,1b間の間隔)が狭い場合であっても、スキッドベース1の仮受け部材を設置しなくとも掘削装置を口元管上に設置することができる。
【0053】
杭穴は駅プラットホーム下に複数設けるのであるが、そのためには掘削装置を移動しなければならない。しかしながら、駅プラットホーム下などの空頭が制限された施工現場では、掘削装置の移動のために大型のクレーンを使用することができない。また小型のクレーンを使用する場合であっても、軌道上からホーム下へアクセスすることとなり、キ電停止時間内での作業に限られることから、作業可能な時間は制約を受ける。このような作業時間の制約は工期の長期化をもたらす。
【0054】
このようなことから、掘削装置は前述のようにスキッドベース1、マストフレーム2及びレベリングジャッキ8を備えることにより自走可能となっているのであるが、杭穴や大きな段差などの障害を越えることができない。また、これら障害を越えるために仮設桁などを設置することも考えられるが、この場合、空頭の制限から移動が困難となることが懸念される。このような問題を解決するのが、図22,図23に示す移動装置である。
【0055】
前述のように、駅プラットホーム50は、桁受け65a,65bを介して杭60a,60bの2つの杭列に支持される複数の桁66を有している。これら桁66の下部に、各桁を横切るように、H形鋼からなる1対のレール67,67が固定金具68によって固定されている。これらのレール67,67に各レールにつき前後2つの走行体69,69がそれぞれ支持されている。各走行体69はレール67を挟むように配置される複数のローラ70を有し、これらのローラ70を介してレール67に支持されている。これにより、走行体69はレール67に沿って走行移動可能である。
【0056】
各レール67,67に支持された2つの走行体69にはワイヤロープ71の上端がそれぞれ取り付けられている。掘削装置の移動の際に、これらワイヤロープ71の下端はスキッドベース1の前後にそれぞれ取り付けられる。以上の構造により、掘削装置はレール67から吊り下げられる。したがって、掘削装置は地面から浮上した状態となり、しかもワイヤロープ71の上端は走行体69を介して移動可能であるので、小さな力で掘削装置を移動させることができる。また、移動経路に杭穴や段差などの障害があっても、これを乗り越えることができる。また、列車の運転時間等の制約も受けずに、どの時間帯でも移動を可能とすることができ、効率よく作業を行うことができる。
【符号の説明】
【0057】
1:スキッドベース
2:マストフレーム
3:マスト
4:昇降ビーム
5:スイベルヘッド
7:駆動シリンダ
8:レベリングジャッキ
10:ガイド
11:ローラチェーン
12:スプロケット
13:駆動モータ
15:ケリーロッド
18:トルク伝達用の突起
25:ウィンチ
26:プーリ
27:ワイヤロープ
30:ターンテーブル
31:支持フレーム
32:駆動モータ
33:第1ガイド
34:第2ガイド
35:駆動シリンダ
36:駆動シリンダ
37:球継手
38:球体
40:球座
60a,60b:杭
61:第1反力受け部材
62:第2反力受け部材
66:桁
67:レール
69:走行体
70:ローラ
71:ワイヤロープ
82:係合突起
83:仮受けバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駅プラットホーム下などの空頭が制限された施工現場で穴を掘削するための掘削装置であって、
スキッドベースと、
このスキッドベースに支持され、その前後方向に相対スライドするマストフレームと、
このマストフレームに立設されたマストと、
このマストに形成されたガイドに沿って昇降する昇降ビームと、
この昇降ビームに支持されて掘削のためのケリーロッドを吊り下げるスイベルヘッドと、
前記スキッドベースに支持フレームを介して支持され、前記ケリーロッドを回転させるターンテーブルと
を備えてなることを特徴とする超低空頭掘削装置。
【請求項2】
前記ターンテーブルの支持フレームの下面に、前記ケリーロッドの接続・切り離し時に該ターンテーブルよりも下方のケリーロッドを支持するための1対の仮受けバーが設けられ、
この仮受けバーは先端が前記支持フレームに水平方向に回動可能に取り付けられ、互いに略平行となって前記ケリーロッドの外周に係合する接近位置と、略ハの字状に拡開して前記ケリーロッドとの係合を解除する拡開位置との間を移動自在となっていることを特徴とする請求項1記載の超低空頭掘削装置。
【請求項3】
前記ターンテーブルは、前記スキッドベースの前後方向とそれと直角な方向との水平2方向に移動自在であり、前記スイベルヘッドは前記ケリーロッドを介して前記ターンテーブルの移動に追従可能であることを特徴とする請求項1又は2記載の超低空頭掘削装置。
【請求項4】
前記スイベルヘッドは、前記スキッドベースの前後方向とそれと直角な方向との水平2方向に移動自在であり、前記ターンテーブルは前記ケリーロッドを介して前記スイベルヘッドの移動に追従可能であることを特徴とする請求項1又は2記載の超低空頭掘削装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1に記載の超低空掘削装置に使用するケリーロッドであって、 本体ロッド部と、この本体ロッド部の外周に軸方向に沿って180度の角度間隔を置いて形成され、ターンテーブルから回転力が伝達される1対の突起と、本体ロッドの上下端に前記突起間に位置するようにそれぞれ形成され、上下のケリーロッドを接続するための1対のフランジとを備え、
前記上フランジにはネジ部が該上フランジから上方に突出するボルトが固定されるとともに、前記下フランジには前記ネジ部が挿入される穴が形成され、
前記上フランジ直下の前記本体ロッド部外周に前記仮受けバーに係合させるための係合突起が設けられていることを特徴とするケリーロッド。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1に記載の超低空掘削装置の掘削反力取得方法であって、掘削装置上方の構造物を支持する杭から反力を得ることを特徴とする掘削反力取得方法。
【請求項7】
前記構造物を支持する複数の杭のうち、互いに隣接する2つの杭を1組とする2組の杭の各杭間に第1反力受け部材を設置し、また前記スキッドベースの各スキッドにその前後端から突出して伸縮する第2反力受け部材を設け、
前記第2反力受け部材を伸長してその端部を前記第1反力受け部材に押し付けることにより、前記第1及び第2反力受け部材を介して前記杭から反力を取得することを特徴とする請求項6記載の掘削反力取得方法。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1に記載の超低空掘削装置の移動装置であって、
掘削装置の上方の構造物における複数の桁に、これら桁を横切るように取り付けられたレールと、
このレールに沿って移動可能な走行体と、
上端が前記走行体に取り付けられ、下端が前記スキッドベースに取り付けられて前記掘削装置を吊り下げる吊り具と
を備えてなることを特徴とする超低空掘削装置の移動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−226255(P2011−226255A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73616(P2011−73616)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(000216025)鉄建建設株式会社 (109)
【出願人】(599112113)株式会社東亜利根ボーリング (25)
【Fターム(参考)】