説明

超原子価ヨウ素反応剤を用いる芳香族化合物および複素環式芳香族化合物のポリマーの製造方法

【課題】金属イオンの含有量が少ない芳香族化合物および複素環式芳香族化合物のポリマーの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の芳香族化合物および複素環式芳香族化合物のポリマーの製造方法は、超原子価ヨウ素反応剤を用いて、芳香族化合物および複素環式芳香族化合物を酸化重合させる工程を包含する。超原子価ヨウ素反応剤がアダマンタン構造および/またはテトラフェニルメタン構造を有する場合は、重合反応後に回収でき、再利用できる。また、前記酸化重合させる工程において、さらに、その他の金属を含まない酸化剤が用いられ、このような共酸化剤が存在する場合は、前記超原子価ヨウ素反応剤は触媒量で用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不純物である金属イオンの含有量が少ない芳香族化合物および複素環式芳香族化合物のポリマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族化合物および複素環式芳香族化合物のポリマーは、通常、化学酸化重合法または電解酸化重合法によって製造される。特に、化学酸化重合法は、簡便であり、かつ大量生産が可能である。このような芳香族化合物および複素環式芳香族化合物のポリマーは、例えば、電子部品の帯電防止剤、有機エレクトロルミネッセンス素子の正孔注入材料、発光材料などとして用いられる。
【0003】
特許文献1には、ポリピロール類の製造方法として、スルホン酸化合物をアニオンとし、高価類の遷移金属をカチオンとする酸化剤を用いた方法が記載されている。この酸化剤を構成する高価類の遷移金属イオンとして、Ag、Cu2+、Fe3+、Al3+、Ce4+、W6+、Mo6+、Cr6+、Mn7+、およびSn4+が挙げられ、特に、Fe3+およびCu2+が好ましいと記載されている。この方法は簡便であり、大量合成にも対応可能であることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)が記載されており、3,4−ジアルコキシチオフェンの酸化重合における触媒として、FeCl、Fe(ClO、H、KCrO、過硫酸アルカリまたはアンモニウム、過ホウ酸アルカリ、過マンガン酸カリウム、および四フッ化ホウ酸銅が記載されている。さらに、酸化剤として触媒量の金属イオン(鉄、コバルト、ニッケル、モリブデン、およびバナジウムイオン)が存在すると、空気および酸素を有利に使用し得ることが記載されている。
【0005】
特許文献1および2に記載のように、通常の化学酸化重合法では、金属イオンが用いられる。したがって、これらの方法によって得られるポリピロール類およびポリチオフェン類は、再沈殿などの精製を行っても相当量の金属イオンが残存する。
【0006】
特許文献2に記載の方法では、Hおよび過硫酸アンモニウムのように金属イオンを含まない酸化剤も記載されている。しかし、このような酸化剤でも、反応時間短縮の目的で、触媒量の金属イオンを併用することが好ましく、結局、得られるポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)は、相当量の金属イオンが残存する。
【0007】
金属イオンが含まれる芳香族化合物および複素環式芳香族化合物のポリマーを、電子部品の帯電防止剤として用いる場合、金属イオンが電子部品を汚染する危険性がある。有機エレクトロルミネッセンス素子の正孔注入材料または発光材料として用いる場合、金属イオンが発光特性のおよび素子寿命の低下の原因となる。
【特許文献1】特開平7−70294号公報
【特許文献2】特許第2636968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、金属イオンの含有量が少ない芳香族化合物および複素環式芳香族化合物のポリマーの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題につき鋭意検討した結果、化学酸化重合触媒として超原子価ヨウ素反応剤を用いることにより、不純物である金属イオンをほとんど含まない芳香族化合物および複素環式芳香族化合物のポリマーが得られることを見出して、本発明を完成した。
【0010】
本発明の芳香族合物のポリマーの製造方法は、超原子価ヨウ素反応剤を用いて、芳香族化合物を酸化重合させる工程を包含する。
【0011】
さらに、本発明の複素環式芳香族化合物のポリマーの製造方法は、超原子価ヨウ素反応剤を用いて、複素環式芳香族化合物を酸化重合させる工程を包含する。
【0012】
ひとつの実施態様では、上記超原子価ヨウ素反応剤は、アダマンタン構造を有する。
【0013】
ひとつの実施態様では、上記超原子価ヨウ素反応剤は、テトラフェニルメタン構造を有する。
【0014】
ある実施態様では、上記酸化重合させる工程において、さらに、金属を含まない酸化剤が用いられる。
【0015】
さらに、ある実施態様では、上記超原子価ヨウ素反応剤の使用量は、芳香族化合物または複素環式芳香族化合物1モルに対して0.001〜0.3モルであり、前記金属を含まない酸化剤の使用量が芳香族化合物または複素環式芳香族化合物1モルに対して1〜4モル当量である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、(1)金属イオンの含有量が少ない芳香族化合物および複素環式芳香族化合物のポリマーの製造方法を提供することができる。(2)アダマンタン構造を有する超原子価ヨウ素反応剤を用いた場合、それらの超原子価ヨウ素反応剤は回収再利用できる。(3)テトラフェニルメタン構造を有する超原子価ヨウ素反応剤を用いた場合、それらの超原子価ヨウ素反応剤は回収再利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
超原子価ヨウ素反応剤とは、3価または5価の超原子価状態にあるヨウ素原子を含む反応剤のことをいう。超原子価ヨウ素反応剤は、より安定なオクテット状態(1価のヨウ素)に戻ろうとする性質を有しているため、鉛(IV)、タリウム(III)、水銀(II)などの重金属酸化剤と類似の反応性を有する。さらに、超原子価ヨウ素反応剤は、このような重金属酸化剤に比べて低毒性であり、安全性に優れている。
【0018】
本発明の製造方法に用いられ得る超原子価ヨウ素反応剤は、特に限定されない。3価の超原子価ヨウ素反応剤としては、例えば、フェニルイオジンビス(トリフルオロアセタート)(ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨードベンゼン(以下、PIFAという場合がある))、フェニルイオジンジアセタート(ヨードソベンゼンジアセテート(以下、PIDAという場合がある))、ヒドロキシ(トシロキシ)ヨードベンゼン、ヨードシルベンゼンなどが挙げられる。これらの反応剤の構造式を以下に示す。
【0019】
【化1】

【0020】
5価の超原子価ヨウ素反応剤としては、例えば、デスマーチンペルヨージナン(Dess-Martin periodinane(DMP))、o−ヨードキシ安息香酸(o-iodoxybenzoic acid(IBX))などが挙げられる。これらの反応剤の構造式を以下に示す。
【0021】
【化2】

【0022】
これらの超原子価ヨウ素反応剤の中でも、3価の超原子価ヨウ素反応剤が好ましく、PIFAが、安定で取り扱いやすく、十分に高い酸化能を有する点で、より好ましい。
【0023】
また超原子価ヨウ素反応剤の中でも、アダマンタン構造を有する超原子価ヨウ素反応剤、テトラフェニルメタン構造を有する超原子価ヨウ素反応剤を選択すると回収再利用できることから好ましい。より具体的には、1,3,5,7−テトラキス−(4−(ジアセトキシヨード)フェニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス−((4−(ヒドロキシ)トシロキシヨード)フェニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス−(4−ビス(トリフルオロアセトキシヨード)フェニル)アダマンタンなどの3価のアダマンタン構造を有する超原子価ヨウ素反応剤、またテトラキス−4−(ジアセトキシヨード)フェニルメタン、テトラキス−4−ビス(トリフルオロアセトキシヨード)フェニルメタンなどの3価のテトラフェニルメタン構造を有する超原子価ヨウ素反応剤は、安定で取り扱いやすく、十分に高い酸化能を有する上に、脂溶性が高く回収再利用可能なので、さらに好ましい。5価の超原子価ヨウ素反応剤を用いる場合は、デスマーチンペルヨージナン(DMP)が好ましい。
【0024】
このような超原子価ヨウ素反応剤は、合成により得られたものを用いてもよく、あるいは市販品を用いてもよい。例えば、PIFAは、PIDAにトリフルオロ酢酸を加えて反応させ、その結果、PIFAを反応生成物として析出させることにより得られる(J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1, 1985, 757を参照のこと)。PIDAは、ヨードベンゼンを酢酸中、ペルオキソほう酸ナトリウム(4水和物)(NaBO・4HO)を用い酸化することにより得られる(Tetrahedron, 1989, 45, 3299およびChem. Rev., 1996, 96, 1123を参照のこと)。さらに、PIDAは、m−クロロ過安息香酸(mCPBA)を酸化剤としてヨードベンゼンから得られる(Angew. Chem. Int. Ed., 2004, 43, 3595を参照のこと)。1,3,5,7−テトラキス−(4−(ジアセトキシヨード)フェニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス−((4−(ヒドロキシ)トシロキシヨード)フェニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス−(4−ビス(トリフルオロアセトキシヨード)フェニル)アダマンタンおよびテトラキス−4−(ジアセトキシヨード)フェニルメタン、テトラキス−4−ビス(トリフルオロアセトキシヨード)フェニルメタンは、例えば特開2005−220122に記載の方法で合成できる。
【0025】
本発明の製造方法で用いられ得る芳香族化合物は、ベンゼン、トルエン、p−ジメトキシベンゼンおよびクレゾール等のベンゼン系芳香族化合物、ビフェニルおよびトリフェニルメタンなどの多環式芳香族化合物、ナフタレンおよびアントラセン等の芳香族縮合環化合物などを用いることができる。なかでも、ベンゼン系芳香族化合物が好ましく、特にベンゼンまたは1,4−置換ベンゼンが好ましい。
【0026】
本発明の製造方法で用いられ得る複素環式化合物は、その複素原子が窒素、硫黄、及び酸素のいずれかであるものが好ましく、例えば、ピロール類、チオフェン類およびフラン類、ならびにこれらの2量体および3量体などを用いることができる。
【0027】
本発明の製造方法で用いられ得るピロール類としては、例えば、ピロール、3位置換ピロール、3,4位置換ピロール、N置換ピロール、ビピロール、およびビピロール誘導体が挙げられる。具体的には、ピロール、3−メチルピロール、3−ヘキシルピロール、3−フェニルピロール、N−エチルスルホン酸塩ピロール、ビピロール、3,4−シクロヘキシルピロールなどが挙げられる。これらの中でも、置換ピロール類を用いる場合、置換基の種類およびその置換位置は特に限定されないが、3位にアルキル基またはアリール基を有する置換ピロール類を用いることが好ましい。
【0028】
本発明の製造方法で用いられ得るチオフェン類としては、例えば、チオフェン、3位置換チオフェン、3,4位置換チオフェン、ビチオフェン、およびビチオフェン誘導体が挙げられる。具体的には、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−フェニルチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、ビチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−ブトキシチオフェンなどが挙げられる。これらの中でも、置換チオフェン類を用いる場合、置換基の種類およびその置換位置は特に限定されないが、3位にアルキル基またはアルコキシ基を有する置換チオフェン類を用いることが好ましい。
【0029】
本発明の製造方法で用いられ得るフラン類としては、例えば、フラン、3位置換フラン、3,4位置換フラン、ビフラン、およびビフラン誘導体が挙げられる。具体的には、フラン、3−メチルフラン、3−ヘキシルフラン、3−フェニルフラン、3,4−エチレンジオキシフラン、ビフラン、3−メトキシフラン、3−ブトキシフランなどが挙げられる。これらの中でも、置換チオフェン類を用いる場合、置換基の種類およびその置換位置は特に限定されないが、3位にアルキル基またはアルコキシ基を有する置換フラン類を用いることが好ましい。
【0030】
本発明の製造方法において、超原子価ヨウ素反応剤の使用量は特に限定されず、芳香族化合物または複素環式芳香族化合物1モルに対して、好ましくは1〜4モル、更に好ましくは1.5〜4モルの割合で用いられ、より好ましくは2〜2.5モルの割合で用いられる。
【0031】
超原子価ヨウ素反応剤の量が少ない場合、酸化重合反応が進みにくくなることがある。一方、超原子価ヨウ素反応剤の量が多い場合、過剰酸化が起こり溶媒に全く不溶な生成物が得られることがあり、芳香族化合物および複素環式芳香族化合物のポリマーなどの収率が低下することがある。
【0032】
本発明の製造方法では、超原子価ヨウ素反応剤と金属を含まない酸化剤とを併用してもよい。超原子価ヨウ素反応剤と金属を含まない酸化剤とを併用することで、超原子価ヨウ素反応剤の使用量を減らすことができる。金属を含まない酸化剤としては、例えば、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、過酸化水素、メタクロロ過安息香酸などが挙げられる。
【0033】
本発明の製造方法において、超原子価ヨウ素反応剤と金属を含まない酸化剤とを併用する場合、超原子価ヨウ素反応剤は酸化触媒として作用し、芳香族化合物または複素環式芳香族化合物1モルに対して、好ましくは0.001〜0.3モル、より好ましくは0.01〜0.1モルの割合で用いられる。一方、金属を含まない酸化剤は、芳香族化合物または複素環式芳香族化合物1モルに対して、好ましくは1〜4モル当量、より好ましくは1.5〜2.5モル当量の割合で用いられる。
【0034】
金属を含まない酸化剤と超原子価ヨウ素反応剤とを併用する場合、超原子価ヨウ素反応剤の量が少なすぎると、重合反応が十分に進行しないことがある。一方、超原子価ヨウ素反応剤の量が多すぎても、重合度は、ある一定の重合度より大きくならず、超原子価ヨウ素反応剤が無駄になる。
【0035】
なお、超原子価ヨウ素反応剤と金属を含まない酸化剤とを併用する場合は、重合反応を始める際は、超原子価ヨウ素反応剤の前駆体を用いても良い。例えば、1,3,5,7−テトラキス−(4−(ジアセトキシヨード)フェニル)アダマンタンの前駆体である1,3,5,7−テトラキス−(4−ヨードフェニル)アダマンタンを触媒量と化学量論量のメタクロロ過安息香酸、酢酸およびピロール類またはチオフェン類等の反応基質を加えれば良い。
【0036】
本発明の製造方法によって得られる芳香族化合物または複素環式芳香族化合物のポリマーなどは、ドーパントがドープされていてもよい。ドーパントをドープすることによって、得られる芳香族化合物または複素環式芳香族化合物のポリマーに導電性が付与され得る。ドーパントは、反応前に原料として仕込んでもよく、重合反応中に添加してもよく、あるいは反応後に得られる芳香族化合物または複素環式芳香族化合物のポリマーに添加してもよい。
【0037】
ドーパントとしては、特に限定されないが、Cl、Br、I、IClなどのハロゲン;PF、BF、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルなどのルイス酸;HF、HCl、HNO、HSOなどのプロトン酸;p−トルエンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸などの有機酸などが挙げられる。
【0038】
導電性の付与を目的として用いられるドーパントは、芳香族化合物または複素環式芳香族化合物100モルに対して、好ましくは5〜600モルの割合で用いられ、より好ましくは20〜400モルの割合で用いられる。
【0039】
ドーパントの量が5モルよりも少ない場合、得られる芳香族化合物または複素環式芳香族化合物のポリマーに、十分な導電性を付与し得ないおそれがある。一方、ドーパントの量が600モルよりも多い場合、得られる芳香族化合物または複素環式芳香族化合物のポリマーに添加したすべてのドーパントがドープされず、添加量に比例した効果は望めない。また、余剰のドーパントも無駄になる。
【0040】
なお、ルイス酸は、ドーパントとして作用するだけではなく、酸化重合反応を促進させる作用も有する。酸化重合反応を促進させる目的でルイス酸を用いる場合、特に、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルが好ましく用いられる。
【0041】
本発明の製造方法で用いられる溶媒としては、芳香族化合物または複素環式芳香族化合物、超原子価ヨウ素反応剤、およびドーパントを溶解または分散させる溶媒であればよい。このような溶媒としては、水、有機溶媒(メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、n−ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのエチレングリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート類;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどのプロピレングリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどのプロピレングリコールエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールエーテルアセテート類;N−メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、アセトニトリル、およびトルエン、キシレン(o-、m-、あるいはp-キシレン)、ベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、ヘキサン、ヘプタン、クロロメタン(塩化メチル)、ジクロロメタン(塩化メチレン)、トリクロロメタン(クロロホルム)、 テトラクロロメタン(四塩化炭素)など)、水とこれらの有機溶媒との混合溶媒(含水有機溶媒)、および2種以上の有機溶媒の混合溶媒が挙げられる。
【0042】
超原子価ヨウ素反応剤を用いる酸化重合反応の温度は、−100℃〜100℃が好ましい。本発明の酸化重合反応の反応温度は、溶媒として有機溶媒を用いる場合および水を用いる場合のいずれの場合も、より好ましくは0℃〜40℃である。
【0043】
本発明の酸化重合反応において、反応温度が−100℃よりも低い場合、反応速度が遅くなったり、溶媒によっては凍結したりし、芳香族化合物または複素環式芳香族化合物のポリマーの収率が低下するおそれがある。一方、反応温度が100℃よりも高い場合、副反応や過剰酸化が起こり、芳香族化合物または複素環式芳香族化合物のポリマーの収率が低下するおそれがある。
【0044】
なお、本発明の製造方法において、酸化重合反応の反応時間は、特に制限されない。酸化重合反応を促進させるためにルイス酸を用いた場合、12時間程度が好ましく、ルイス酸を用いない場合は、20時間程度が好ましい。
【0045】
このようにして得られた芳香族化合物または複素環式芳香族化合物のポリマーは、さらに精製される。精製方法(精製工程)は特に限定されないが、例えば、反応後、溶媒をグラスフィルターでろ過し、得られたポリマーを、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ヘキサン、ジエチルエーテル、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエンなどで洗浄する方法が挙げられる。その他の精製方法としては、ソックスレー抽出などによる精製が挙げられる。
【0046】
洗浄後、得られた芳香族化合物または複素環式芳香族化合物のポリマーは、必要に応じて、通常の手段により乾燥される(乾燥工程)。乾燥方法は、ポリピロール類およびポリチオフェン類の重合度、置換基、含まれるドーパントによって適宜決定され得、例えば、室温下(約25℃)での減圧(約0.5mmHg)乾燥、常圧下での加熱送風(約60℃)乾燥などが挙げられる。乾燥温度は、100℃以下が好ましく、200℃を超えると、芳香族化合物のポリマーまたは複素環式芳香族化合物が分解する危険性が高くなる。
【0047】
また、アダマンタン構造およびテトラフェニルメタン構造の超原子価ヨウ素反応剤を用いた場合、下記のような方法で回収される。例えば、反応を終えた溶液を減圧濃縮し、残渣(ポリマー、アダマンタン構造もしくはテトラフェニルメタン構造の超原子価ヨウ素反応剤、金属を含まない酸化剤、未反応のモノマー)にメタノールを加えて混合し、グラスフィルターを用いてろ過する事により、金属を含まない酸化剤及び未反応のモノマーはメタノール溶液として除去できる。残渣として残ったポリマーおよびアダマンタン構造もしくはテトラフェニルメタン構造の超原子価ヨウ素反応剤は、ジエチルエーテルを加えて混合しグラスフィルター用いてろ過する事により、残渣のポリマーとジエチルエーテル溶液のアダマンタン構造およびテトラフェニルメタン構造の超原子価ヨウ素反応剤とに分離する事が出来る。そのジエチルエーテルを濃縮する事で、アダマンタン構造およびテトラフェニルメタン構造の超原子価ヨウ素反応剤を回収する事が出来る。アダマンタン構造およびテトラフェニルメタン構造の超原子価ヨウ素反応剤の回収方法は、上記の例に限定されないが、ポリマー、アダマンタン構造もしくはテトラフェニルメタン構造の超原子価ヨウ素反応剤、金属を含まない酸化剤および未反応のモノマーの、溶媒種による溶解性の違いを利用し、適当な溶媒を選択することで、各々の成分を分離する事が出来る。
【実施例】
【0048】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されない。
【0049】
(実施例1)
50mLのナスフラスコに、168mg(1mmol)の3−ヘキシルチオフェンおよび10mLの塩化メチレンを加えて、窒素雰囲気下で−78℃に冷却した(寒剤として、ドライアイスおよびメタノールを使用)。次いで、889mgのトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルを加え、その後、860mg(2mmol)のPIFAを加えた。
【0050】
PIFA添加8時間後に、寒剤を外し、反応温度を徐々に室温まで上昇させた。さらに、4時間撹拌を行い、PIFA添加後の反応時間を合計で12時間とした。
【0051】
この反応溶液を50mLのメタノール中に滴下した。次いで、グラスフィルターによって、黒色の不溶物をろ取した。次いで、不溶物をn−ヘキサンで洗浄し、60mgのポリ(3−ヘキシルチオフェン)を得た。得られたポリ(3−ヘキシルチオフェン)の分子量を測定すると、重量平均分子量(Mw)は13930、数平均分子量(Mn)は6930、そして重量平均分子量と数平均分子量との比Mw/Mnは2.010であった。
【0052】
得られたポリ(3−ヘキシルチオフェン)を灰化して、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS法)(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製ICP質量分析装置(SPQ9500)を使用)によって含まれる鉄元素の割合を測定すると23ppmであった。検出された鉄元素は、原料、溶媒などに含まれる不純物に由来する鉄元素であると考えられる。
【0053】
(比較例1)
上記実施例1で用いた860mgのPIFAの代わりに、324mg(2mmol)の塩化鉄(III)を用いたこと以外は、上記実施例1と同様の手順で、90mgのポリ(3−ヘキシルチオフェン)を得た。得られたポリ(3−ヘキシルチオフェン)の分子量を測定すると、重量平均分子量(Mw)は25984、数平均分子量(Mn)は17632、そして重量平均分子量と数平均分子量との比Mw/Mnは1.474であった。
【0054】
得られたポリ(3−ヘキシルチオフェン)を灰化して、ICP−MS法によって含まれる鉄元素の割合を測定すると3600ppmであった。
【0055】
(比較例2)
50mLのナスフラスコに、168mg(1mmol)の3−ヘキシルチオフェンおよび10mLのクロロホルムを加えて、窒素雰囲気下で氷浴を用いて0℃に冷却した。次いで、648mg(4mmol)の塩化鉄(III)を加えた。
【0056】
塩化鉄(III)添加5時間後に、氷浴を外した。次いで、反応温度を徐々に上昇させて、塩化鉄(III)を添加して6時間後に室温となるようにした。さらに18時間撹拌を行い、塩化鉄(III)添加後の反応時間を24時間とした。
【0057】
この反応溶液を50mLのメタノール中に滴下した。次いで、グラスフィルターによって、黒色の不溶物をろ取した。次いで、不溶物をn−ヘキサンで洗浄後、さらにイオン交換水で洗浄し、103mgのポリ(3−ヘキシルチオフェン)を得た。
【0058】
得られたポリ(3−ヘキシルチオフェン)を灰化して、ICP−MS法によって含まれる鉄元素の割合を測定すると8600ppmであった。重量平均分子量(Mw)は8502、数平均分子量(Mn)は3995、そして重量平均分子量と数平均分子量との比Mw/Mnは2.128であった。
【0059】
実施例1、比較例1、および比較例2の結果から明らかなように、本発明の製造方法によって得られるポリチオフェン類に含まれる鉄元素の割合は、金属触媒を用いて製造したポリチオフェン類に含まれる鉄元素の割合よりも、はるかに低いことがわかった。
【0060】
(実施例2)
50mLのナスフラスコに、143mg(1mmol)の3−フェニルピロールおよび10mLの塩化メチレンを加えて、窒素雰囲気下で氷浴を用いて0℃に冷却した。次いで、889mgのトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルを加え、その後、860mg(2mmol)のPIFAを加えた。
【0061】
PIFA添加8時間後に、氷浴を外し、反応温度を徐々に室温まで上昇させた。さらに、4時間撹拌を行い、PIFA添加後の反応時間を合計で12時間とした。
【0062】
この反応溶液を濃縮し、グラスフィルターによって、残渣をろ取した。次いで、残渣をメタノールで洗浄後、さらにn−ヘキサンで洗浄し、50mgのポリ(3−フェニルピロール)を得た。得られたポリ(3−フェニルピロール)の分子量を測定すると、重量平均分子量(Mw)は609、数平均分子量(Mn)は419、そして重量平均分子量と数平均分子量との比Mw/Mnは1.453であった。
【0063】
得られたポリ(3−フェニルピロール)を灰化して、ICP−MS法によって含まれる鉄元素の割合を測定すると34ppmであった。検出された鉄元素は、原料、溶媒などに含まれる不純物に由来する鉄元素であると考えられる。
【0064】
さらに、得られたポリ(3−フェニルピロール)を用いて、以下の手順で薄膜を形成した。まず、20mgのポリ(3−フェニルピロール)を1mLのクロロホルムに溶解し、塗料を調製した。次いで、調製した塗料を、No.8のワイヤーバー(塗布量:湿潤状態で18μmの厚み)を用いてガラス板(JIS R3202)に塗布した。次いで、100℃で2分間、送風乾燥して薄膜を得た。得られた薄膜の厚みは、0.25μmであった。
【0065】
次いで、得られた薄膜の表面抵抗率を、ハイレスタ−UP(MCP−HT450)(三菱化学株式会社製)を用いて、JIS K6911に準じて測定した。得られた薄膜の表面抵抗率を測定した結果、5.6E+11Ω/□であった。この結果から、得られた薄膜は、帯電防止性能を有していることがわかった。
【0066】
(比較例3)
上記実施例2で用いた860mgのPIFAの代わりに、324mg(2mmol)の塩化鉄(III)を用いたこと以外は、上記実施例2と同様の手順で、80mgのポリ(3−フェニルピロール)を得た。得られたポリ(3−フェニルピロール)の分子量を測定すると、重量平均分子量(Mw)は362、数平均分子量(Mn)は357、そして重量平均分子量と数平均分子量との比Mw/Mnは1.014であった。
【0067】
得られたポリ(3−フェニルピロール)を灰化して、ICP−MS法によって含まれる鉄元素の割合を測定すると900ppmであった。
【0068】
実施例2および比較例3の結果から明らかなように、本発明の製造方法によって得られるポリピロール類に含まれる鉄元素の割合は、金属触媒を用いて製造したポリピロール類に含まれる鉄元素の割合よりも、はるかに低いことがわかった。
【0069】
さらに、上記実施例2で得られたポリ(3−フェニルピロール)の代わりに、比較例3で得られたポリ(3−フェニルピロール)を用いたこと以外は、上記実施例2と同様の手順で薄膜を形成し、この薄膜の表面抵抗率を測定した。得られた薄膜の表面抵抗率を測定した結果、2.0E+10Ω/□であった。この結果から、得られた薄膜は、帯電防止性能を有していることがわかった。
【0070】
(実施例3)
50mLのナスフラスコに、143mg(1mmol)の3−フェニルピロールおよび10mLの水を加えた。次いで、860mg(2mmol)のPIFAを加えて、室温で20時間撹拌した。
【0071】
この反応溶液の不溶物を、グラスフィルターによってろ取した。次いで、不溶物をメタノールで洗浄後、さらにn−ヘキサンで洗浄し、120mgのポリ(3−フェニルピロール)を得た。得られたポリ(3−フェニルピロール)の分子量を測定すると、重量平均分子量(Mw)は1192、数平均分子量(Mn)は789、そして重量平均分子量と数平均分子量との比Mw/Mnは1.511であった。
【0072】
得られたポリ(3−フェニルピロール)を灰化して、ICP−MS法によって含まれる銅元素の割合を測定すると28ppmであった。検出された銅元素は、原料、溶媒などに含まれる不純物に由来する銅元素であると考えられる。
【0073】
さらに、上記実施例2で得られたポリ(3−フェニルピロール)の代わりに、実施例3で得られたポリ(3−フェニルピロール)を用いたこと以外は、上記実施例2と同様の手順で薄膜(膜厚:0.21μm)を形成し、この薄膜の表面抵抗率を測定した。得られた薄膜の表面抵抗率を測定した結果、6.7E+9Ω/□であった。この結果から、得られた薄膜は、帯電防止性能を有していることがわかった。
【0074】
(実施例4)
50mLのナスフラスコに、143mg(1mmol)の3−フェニルピロールおよび10mLの水を加えた。次いで、644mg(2mmol)のPIDAを加えて、室温で20時間撹拌した。
【0075】
この反応溶液の不溶物を、グラスフィルターによってろ取した。次いで、不溶物をメタノールで洗浄後、さらにn−ヘキサンで洗浄し、140mgのポリ(3−フェニルピロール)を得た。得られたポリ(3−フェニルピロール)の分子量を測定すると、重量平均分子量(Mw)は1697、数平均分子量(Mn)は1163、そして重量平均分子量と数平均分子量との比Mw/Mnは1.459であった。
【0076】
得られたポリ(3−フェニルピロール)を灰化して、ICP−MS法によって含まれる銅元素の割合を測定すると2ppmであった。検出された銅元素は、原料、溶媒などに含まれる不純物に由来する銅元素であると考えられる。
【0077】
さらに、上記実施例2で得られたポリ(3−フェニルピロール)の代わりに、実施例4で得られたポリ(3−フェニルピロール)を用いたこと以外は、上記実施例2と同様の手順で薄膜(膜厚:0.14μm)を形成し、この薄膜の表面抵抗率を測定した。得られた薄膜の表面抵抗率を測定した結果、2.9E+12Ω/□であった。この結果から、得られた薄膜は、帯電防止性能を有していることがわかった。
【0078】
(実施例5)
50mLのナスフラスコに、143mg(1mmol)の3−フェニルピロールおよび10mLのアセトニトリルを加えた。次いで、860mg(2mmol)のPIFAを加えて、窒素雰囲気下、室温で20時間撹拌した。
【0079】
この反応溶液の不溶物を、グラスフィルターによってろ取した。次いで、不溶物をメタノールで洗浄後、さらにn−ヘキサンで洗浄し、68mgのポリ(3−フェニルピロール)を得た。得られたポリ(3−フェニルピロール)の分子量を測定すると、重量平均分子量(Mw)は346、数平均分子量(Mn)は226、そして重量平均分子量と数平均分子量との比Mw/Mnは1.531であった。
【0080】
得られたポリ(3−フェニルピロール)を灰化して、ICP−MS法によって含まれる銅元素の割合を測定すると3ppmであった。検出された銅元素は、原料、溶媒などに含まれる不純物に由来する銅元素であると考えられる。
【0081】
さらに、上記実施例2で得られたポリ(3−フェニルピロール)の代わりに、実施例5で得られたポリ(3−フェニルピロール)を用いたこと以外は、上記実施例2と同様の手順で薄膜(膜厚:0.14μm)を形成し、この薄膜の表面抵抗率を測定した。得られた薄膜の表面抵抗率を測定した結果、1.2E+12Ω/□であった。この結果から、得られた薄膜は、帯電防止性能を有していることがわかった。
【0082】
(比較例4)
50mLのナスフラスコに、143mg(1mmol)の3−フェニルピロールおよび10mLの水を加えた。次いで、474mg(3.3mmol)の臭化銅を加えて、窒素雰囲気下、室温で20時間撹拌した。
【0083】
この反応溶液の不溶物を、グラスフィルターによってろ取した。次いで、不溶物をメタノールで洗浄後、さらにn−ヘキサンで洗浄し、70mgのポリ(3−フェニルピロール)を得た。得られたポリ(3−フェニルピロール)の分子量を測定すると、重量平均分子量(Mw)は397、数平均分子量(Mn)は374、そして重量平均分子量と数平均分子量との比Mw/Mnは1.061であった。
【0084】
得られたポリ(3−フェニルピロール)を灰化して、ICP−MS法によって含まれる銅元素の割合を測定すると53400ppmであった。
【0085】
さらに、上記実施例2で得られたポリ(3−フェニルピロール)の代わりに、比較例4で得られたポリ(3−フェニルピロール)を用いたこと以外は、上記実施例2と同様の手順で薄膜(膜厚:0.18μm)を形成し、この薄膜の表面抵抗率を測定した。得られた薄膜の表面抵抗率を測定した結果、9.0E+9Ω/□であった。この結果から、得られた薄膜は、帯電防止性能を有していることがわかった。
【0086】
実施例3〜5および比較例4の結果から明らかなように、本発明の製造方法によって得られるポリピロール類に含まれる銅元素の割合は、金属触媒を用いて製造したポリピロール類に含まれる銅元素の割合よりも、はるかに低いことがわかった。
【0087】
次に、超原子価ヨウ素反応剤と金属を含まない酸化剤とを併用して、ポリピロール類およびポリチオフェン類を製造した。
【0088】
(実施例6)
200mLのナスフラスコに、82gのイオン交換水、8.2gの17.6質量%ポリスチレンスルホン酸水溶液、200mg(2.9mmol)のピロール、および5.77gの10.9質量%ペルオキソ二硫酸水溶液(3.23mmol)を加えた。次いで、21.5mg(0.05mmol)のPIFAを1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(5ml)に溶解して加えた。その後、18℃で6時間撹拌し、ポリスチレンスルホン酸ドープのポリピロール水分散体を得た。
【0089】
得られたポリスチレンスルホン酸ドープのポリピロール水分散体について、原子吸光光度計によって含まれる鉄元素の割合を測定すると2ppmであった。
【0090】
さらに、得られたポリスチレンスルホン酸ドープのポリピロール水分散体をそのまま、No.8のワイヤーバー(塗布量:湿潤状態で18μmの厚み)を用いてガラス板(JIS R3202)に塗布した。次いで、100℃で2分間、送風乾燥して薄膜を得た。得られた薄膜の厚みは、0.25μmであった。
【0091】
次いで、上記実施例2で得られたポリ(3−フェニルピロール)の薄膜の代わりに、実施例6で得られたポリスチレンスルホン酸ドープのポリピロールの薄膜を用いたこと以外は、上記実施例2と同様の方法で表面抵抗率を測定した。得られた薄膜の表面抵抗率を測定した結果、1.4E+8Ω/□であった。この結果から、得られた薄膜は、帯電防止性能を有していることがわかった。
【0092】
(比較例5)
200mLのナスフラスコに、82gのイオン交換水、8.2gの17.6質量%ポリスチレンスルホン酸水溶液、200mg(2.9mmol)のピロール、および5.77gの10.9質量%ペルオキソ二硫酸水溶液(3.23mmol)を加えた。次いで、2.0gの1質量%硫酸鉄(III)水溶液(0.05mmol)を加えた。その後、窒素雰囲気下、18℃で6時間撹拌して、ポリスチレンスルホン酸ドープのポリピロール水分散体を得た。
【0093】
得られたポリスチレンスルホン酸ドープのポリピロール水分散体について、原子吸光光度計によって含まれる鉄元素の割合を測定すると55ppmであった。
【0094】
さらに、上記実施例6で得られたポリスチレンスルホン酸ドープのポリピロール水分散体の代わりに、比較例5で得られたポリスチレンスルホン酸ドープのポリピロール水分散体を用いたこと以外は、上記実施例6と同様の手順で薄膜(膜厚:0.27μm)を形成し、この薄膜の表面抵抗率を測定した。得られた薄膜の表面抵抗率を測定した結果、4.7E+7Ω/□であった。この結果から、得られた薄膜は、帯電防止性能を有していることがわかった。
【0095】
(実施例7)
300mLのナスフラスコに、182gのイオン交換水、27.9gの17.6質量%ポリスチレンスルホン酸水溶液、0.8g(5.63mmol)の3,4−エチレンジオキシチオフェン、および11.5gの10.9質量%ペルオキソ二硫酸水溶液(6.46mmol)を加えた。次いで、0.044g(0.10mmol)のPIFAを加えた。その後、18℃で24時間撹拌して、ポリスチレンスルホン酸ドープのポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)水分散体を得た。
【0096】
得られたポリスチレンスルホン酸ドープのポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)水分散体について、原子吸光光度計によって含まれる鉄元素の割合を測定すると1ppmであった。
【0097】
さらに、上記実施例7で得られたポリスチレンスルホン酸ドープのポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)水分散体100gに、3gのN−メチル−2−ピロリドンを加えて混合した。次いで、No.8のワイヤーバー(塗布量:湿潤状態で18μmの厚み)を用いてガラス板(JIS R3202)に塗布した。次いで、100℃で2分間、送風乾燥して薄膜を得た。得られた薄膜の厚みは、0.12μmであった。
【0098】
次いで、上記実施例2で得られたポリ(3−フェニルピロール)の薄膜の代わりに、実施例7で得られたポリスチレンスルホン酸ドープのポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)の薄膜を用いたこと以外は、上記実施例2と同様の方法で表面抵抗率を測定した。得られた薄膜の表面抵抗率を測定した結果、3.6E+4Ω/□であった。この結果から、得られた薄膜は、帯電防止性能を有していることがわかった。
【0099】
(比較例6)
300mLのナスフラスコに、178gのイオン交換水、27.9gの17.6質量%ポリスチレンスルホン酸水溶液、0.8g(5.63mmol)の3,4−エチレンジオキシチオフェン、および11.5gの10.9質量%ペルオキソ二硫酸水溶液(6.46mmol)を加えた。次いで、4.0gの1質量%硫酸鉄(III)水溶液(0.10mmol)を加えた。その後、18℃で24時間撹拌して、ポリスチレンスルホン酸ドープのポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)水分散体を得た。
【0100】
得られたポリスチレンスルホン酸ドープのポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)水分散体について、原子吸光光度計によって含まれる鉄元素の割合を測定すると63ppmであった。
【0101】
さらに、上記実施例7で得られたポリスチレンスルホン酸ドープのポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)水分散体の代わりに、比較例6で得られたポリスチレンスルホン酸ドープのポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)水分散体を用いたこと以外は、上記実施例7と同様の手順で薄膜(膜厚:0.12μm)を形成し、この薄膜の表面抵抗率を測定した。得られた薄膜の表面抵抗率を測定した結果、4.9E+3Ω/□であった。この結果から、得られた薄膜は、帯電防止性能を有していることがわかった。
【0102】
実施例6および7ならびに比較例5および6の結果から明らかなように、本発明の製造方法によって得られるポリピロール類およびポリチオフェン類に含まれる鉄元素の割合は、金属触媒を用いて製造したポリピロール類およびポリチオフェン類に含まれる鉄元素の割合よりも、はるかに低いことがわかった。
【0103】
(実施例8)
50mLのナスフラスコに、154mg(1mmol)の3−ブトキシチオフェンおよび10mLの塩化メチレンを加えて、窒素雰囲気下、室温下(約25℃)で攪拌し、次いで、889mgのトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルを加え、その後、46mg(0.025mmol)の1,3,5,7−テトラキス−(4−ビス(トリフルオロアセトキシヨード)フェニル)アダマンタン、メタクロロ過安息香酸516mg(3mmol)、およびトリフルオロ酢酸0.15ml(2mmol)を加えた。
【0104】
1,3,5,7−テトラキス−(4−ビス(トリフルオロアセトキシヨード)フェニル)アダマンタン添加後、さらに20時間撹拌を行った。その後この反応溶液を減圧濃縮し、残渣に20mLのメタノールを加えた。次いで、グラスフィルターによって、黒色の不溶物をろ取し、メタノール30mlを用いて洗浄した。さらに不溶物を30mlのジエチルエーテルを用いて洗浄し、精製されたポリ(3−ブトキシチオフェン)45mgを得た。一方、洗浄したジエチルエーテルを濃縮することで、1,3,5,7−テトラキス−(4−ヨードフェニル)アダマンタンの反応剤(16mg、回収率;67%)を回収した。
得られたポリ(3−ブトキシチオフェン)の分子量を測定すると、重量平均分子量(Mw)は2313、数平均分子量(Mn)は1812、そして重量平均分子量と数平均分子量との比Mw/Mnは1.28であった。
【0105】
得られたポリ(3−ブトキシチオフェン)を灰化して、ICP−MS法によって含まれる鉄元素の割合を測定すると6ppmであった。検出された鉄元素は、原料、溶媒などに含まれる不純物に由来する鉄元素であると考えられる。
【0106】
さらに、得られたポリ(3−ブトキシチオフェン)を用いて、以下の手順で薄膜を形成した。まず、20mgのポリ(3−ブトキシチオフェン)を1mLのクロロホルムに溶解し、塗料を調製した。次いで、調製した塗料を、No.8のワイヤーバー(塗布量:湿潤状態で18μmの厚み)を用いてガラス板(JIS R3202)に塗布した。次いで、100℃で2分間、送風乾燥して薄膜を得た。得られた薄膜の厚みは、0.10μmであった。
【0107】
(実施例9)
50mLのナスフラスコに、154mg(1mmol)の3−ブトキシチオフェンおよび10mLの塩化メチレンを加えて、窒素雰囲気下、室温下(約25℃)で攪拌し、次いで、889mgのトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルを加え、その後、44mg(0.025mmol)のテトラキス−4−ビス(トリフルオロアセトキシヨード)フェニルメタン、メタクロロ過安息香酸516mg(3mmol)、およびトリフルオロ酢酸0.15ml(2mmol)を加えた。
【0108】
テトラキス−4−ビス(トリフルオロアセトキシヨード)フェニルメタン添加後、さらに20時間撹拌を行った。その後この反応溶液を減圧濃縮し、残渣に20mLのメタノールを加えた。次いで、グラスフィルターによって、黒色の不溶物をろ取し、メタノール30mlを用いて洗浄した。さらに30mlのアセトンを用いてポリ(ブトキシチオフェン)を溶解し、得られた溶液を濃縮することにより、43mgのポリ(3−ブトキシチオフェン)を得た。また、グラスフィルター上にはテトラキス−(4−ヨードフェニル)メタンの反応剤が残存しており、これを塩化メチレン20mlに溶解し、この得られた塩化メチレン溶液を再度減圧濃縮し、テトラキス−(4−ヨードフェニル)メタンの反応剤の(9mg、回収率;43%)回収を行った。
【0109】
得られたポリ(3−ブトキシチオフェン)の分子量を測定すると、重量平均分子量(Mw)は1545、数平均分子量(Mn)は1498、そして重量平均分子量と数平均分子量との比Mw/Mnは1.03であった。
【0110】
得られたポリ(3−ブトキシチオフェン)を灰化して、ICP−MS法によって含まれる鉄元素の割合を測定すると7ppmであった。検出された鉄元素は、原料、溶媒などに含まれる不純物に由来する鉄元素であると考えられる。
【0111】
さらに、得られたポリ(3−ブトキシチオフェン)を用いて、以下の手順で薄膜を形成した。まず、20mgのポリ(3−ブトキシチオフェン)を1mLのクロロホルムに溶解し、塗料を調製した。次いで、調製した塗料を、No.8のワイヤーバー(塗布量:湿潤状態で18μmの厚み)を用いてガラス板(JIS R3202)に塗布した。次いで、100℃で2分間、送風乾燥して薄膜を得た。得られた薄膜の厚みは、0.08μmであった。
【0112】
(実施例10)
50mLのナスフラスコに、143mg(1mmol)の3−フェニルピロールおよび10mLの塩化メチレンを加えて、窒素雰囲気下、室温下(約25℃)で攪拌し、次いで、889mgのトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルを加え、その後、46mg(0.025mmol)の1,3,5,7−テトラキス−(4−ビス(トリフルオロアセトキシヨード)フェニル)アダマンタン、メタクロロ過安息香酸516mg(3mmol)、およびトリフルオロ酢酸0.15ml(2mmol)を加えた。
【0113】
1,3,5,7−テトラキス−(4−ビス(トリフルオロアセトキシヨード)フェニル)アダマンタン添加後、さらに20時間撹拌を行った。その後この反応溶液を減圧濃縮し、残渣に20mLのメタノールを加えた。次いで、グラスフィルターによって、黒色の不溶物をろ取し、メタノール30mlを用いて洗浄した。さらに不溶物を30mlのジエチルエーテルを用いて洗浄し、精製されたポリ(3−フェニルピロール)68mgを得た。一方、洗浄したジエチルエーテルを濃縮することで、1,3,5,7−テトラキス−(4−ヨードフェニル)アダマンタンの反応剤(11mg、回収率;47%)を回収した。
得られたポリ(3−フェニルピロール)の分子量を測定すると、重量平均分子量(Mw)は1355、数平均分子量(Mn)は1338、そして重量平均分子量と数平均分子量との比Mw/Mnは1.01であった。
【0114】
得られたポリ(3−フェニルピロール)を灰化して、ICP−MS法によって含まれる鉄元素の割合を測定すると12ppmであった。検出された鉄元素は、原料、溶媒などに含まれる不純物に由来する鉄元素であると考えられる。
【0115】
さらに、得られたポリ(3−フェニルピロール)を用いて、以下の手順で薄膜を形成した。まず、20mgのポリ(3−フェニルピロール)を1mLのクロロホルムに溶解し、塗料を調製した。次いで、調製した塗料を、No.8のワイヤーバー(塗布量:湿潤状態で18μmの厚み)を用いてガラス板(JIS R3202)に塗布した。次いで、100℃で2分間、送風乾燥して薄膜を得た。得られた薄膜の厚みは、0.12μmであった。
【0116】
次いで、上記実施例2で得られたポリ(3−フェニルピロール)の薄膜の代わりに、実施例10で得られたポリ(3−フェニルピロール)の薄膜を用いたこと以外は、上記実施例2と同様の方法で表面抵抗率を測定した。得られた薄膜の表面抵抗率を測定した結果、4.7E+9Ω/□であった。この結果から、得られた薄膜は、帯電防止性能を有していることがわかった。
【0117】
(実施例11)
50mLのナスフラスコに、143mg(1mmol)の3−フェニルピロールおよび10mLの塩化メチレンを加えて、窒素雰囲気下、室温下(約25℃)で攪拌し、次いで、889mgのトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルを加え、その後、44mg(0.025mmol)のテトラキス−4−ビス(トリフルオロアセトキシヨード)フェニルメタン、メタクロロ過安息香酸516mg(3mmol)、およびトリフルオロ酢酸0.15ml(2mmol)を加えた。
【0118】
テトラキス−4−ビス(トリフルオロアセトキシヨード)フェニルメタン添加後、さらに20時間撹拌を行った。その後この反応溶液を減圧濃縮し、残渣に20mLのメタノールを加えた。次いで、グラスフィルターによって、黒色の不溶物をろ取し、メタノール30mlを用いて洗浄した。さらに30mlのアセトンを用いてポリ(ブトキシチオフェン)を溶解し、得られた溶液を濃縮することにより、60mgのポリ(3−フェニルピロール)を得た。また、グラスフィルター上にはテトラキス−(4−ヨードフェニル)メタンの反応剤が残存しており、これを塩化メチレン20mlに溶解し、この得られた塩化メチレン溶液を再度減圧濃縮し、テトラキス−(4−ヨードフェニル)メタンの反応剤の(10mg、回収率;48%)回収を行った。
【0119】
得られたポリ(3−フェニルピロール)の分子量を測定すると、重量平均分子量(Mw)は1337、数平均分子量(Mn)は1315、そして重量平均分子量と数平均分子量との比Mw/Mnは1.02であった。
【0120】
得られたポリ(3−フェニルピロール)を灰化して、ICP−MS法によって含まれる鉄元素の割合を測定すると8ppmであった。検出された鉄元素は、原料、溶媒などに含まれる不純物に由来する鉄元素であると考えられる。
【0121】
さらに、得られたポリ(3−フェニルピロール)を用いて、以下の手順で薄膜を形成した。まず、20mgのポリ(3−フェニルピロール)を1mLのクロロホルムに溶解し、塗料を調製した。次いで、調製した塗料を、No.8のワイヤーバー(塗布量:湿潤状態で18μmの厚み)を用いてガラス板(JIS R3202)に塗布した。次いで、100℃で2分間、送風乾燥して薄膜を得た。得られた薄膜の厚みは、0.15μmであった。
【0122】
次いで、上記実施例2で得られたポリ(3−フェニルピロール)の薄膜の代わりに、実施例11で得られたポリ(3−フェニルピロール)の薄膜を用いたこと以外は、上記実施例2と同様の方法で表面抵抗率を測定した。得られた薄膜の表面抵抗率を測定した結果、1.0E+9Ω/□であった。この結果から、得られた薄膜は、帯電防止性能を有していることがわかった。
【0123】
(実施例12)
50mLのナスフラスコに、78mg(0.5mmol)の3−ブトキシチオフェンおよび10mLの塩化メチレンを加えて、窒素雰囲気下、室温下(約25℃)で攪拌し、次いで、666mgのトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルを加え、その後、346mg(0.187mmol)の1,3,5,7−テトラキス−(4−ビス(トリフルオロアセトキシヨード)フェニル)アダマンタンを加えた。
【0124】
1,3,5,7−テトラキス−(4−ビス(トリフルオロアセトキシヨード)フェニル)アダマンタン添加後、さらに10時間撹拌を行った。その後この反応溶液を減圧濃縮し、残渣に20mLのメタノールを加えた。次いで、グラスフィルターを用いてろ過し、ろ液のメタノール溶液を濃縮することでポリ(3−ブトキシチオフェン)53mg、を得た。また、グラスフィルターに残った残渣を塩化メチレン40mlに溶解し、再度減圧濃縮を行い、1,3,5,7−テトラキス−(4−ヨードフェニル)アダマンタン(112mg、回収率;63%)を回収した。
得られたポリ(3−ブトキシチオフェン)の分子量を測定すると、重量平均分子量(Mw)は1867、数平均分子量(Mn)は1322、そして重量平均分子量と数平均分子量との比Mw/Mnは1.41であった。
【0125】
得られたポリ(3−ブトキシチオフェン)を灰化して、ICP−MS法によって含まれる鉄元素の割合を測定すると5ppmであった。検出された鉄元素は、原料、溶媒などに含まれる不純物に由来する鉄元素であると考えられる。
【0126】
さらに、得られたポリ(3−ブトキシチオフェン)を用いて、以下の手順で薄膜を形成した。まず、20mgのポリ(3−ブトキシチオフェン)を1mLのクロロホルムに溶解し、塗料を調製した。次いで、調製した塗料を、No.8のワイヤーバー(塗布量:湿潤状態で18μmの厚み)を用いてガラス板(JIS R3202)に塗布した。次いで、100℃で2分間、送風乾燥して薄膜を得た。得られた薄膜の厚みは、0.07μmであった。
【0127】
(実施例13)
50mLのナスフラスコに、522mg(4mmol)の1,4−ジメトキシベンゼンおよび20mLの塩化メチレンを加えて、窒素雰囲気下で−78℃に冷却した(寒剤として、ドライアイスおよびメタノールを使用)。次いで、3.2g(16mmol)のボロントリフロリド−エチルエーテルコンプレックスを加え、その後、3.44g(8mmol)のPIFAを加えた。
【0128】
PIFA添加8時間後に、寒剤を外し、反応温度を徐々に室温まで上昇させた。さらに、8時間撹拌を行い、PIFA添加後の反応時間を合計で16時間とした。
【0129】
この反応溶液を濃縮し、50mlのメタノールを加え、この反応溶液の不溶物を、グラスフィルターによってろ取した。次いで、不溶物をメタノールで洗浄後、さらにn−ヘキサンで洗浄し、415mgのポリ(2,5−ジメトキシ−p−フェニレン)を得た。
【0130】
得られたポリ(2,5−ジメトキシ−p−フェニレン)の分子量を測定すると、重量平均分子量(Mw)は15213、数平均分子量(Mn)は10865、そして重量平均分子量と数平均分子量との比Mw/Mnは1.40であった。
【0131】
得られたポリ(2,5−ジメトキシ−p−フェニレン)を灰化して、ICP−MS法によって含まれる鉄元素の割合を測定すると4ppmであった。検出された鉄元素は、原料、溶媒などに含まれる不純物に由来する鉄元素であると考えられる。
【0132】
さらに、得られたポリ(2,5−ジメトキシ−p−フェニレン)を用いて、以下の手順で薄膜を形成した。まず、20mgのポリ(2,5−ジメトキシ−p−フェニレン)を1mLのクロロホルムに溶解し、塗料を調製した。次いで、調製した塗料を、No.8のワイヤーバー(塗布量:湿潤状態で18μmの厚み)を用いてガラス板(JIS R3202)に塗布した。次いで、100℃で2分間、送風乾燥して薄膜を得た。得られた薄膜の厚みは、0.15μmであった。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明によれば、金属イオンの含有量が少ない芳香族化合物および複素環式芳香族化合物のポリマーの製造方法を提供することができる。したがって、本発明の製造方法によって得られた芳香族化合物および複素環式芳香族化合物のポリマーは、エレクトロニクス関連のフィルム、シート、成形品、部品などの帯電防止剤、有機エレクトロルミネッセンスの正孔注入材料、発光材料、エレクトロルミネッセンスパネルの表面電極、液晶ディスプレイの画素電極、コンデンサーの電極、タッチパネルの透明電極、メンブレンスイッチの透明電極、電子ペーパーの透明電極などの各種透明電極、ブラウン管ディスプレイの電磁遮蔽、液晶ディスプレイ、パチンコ台などのノイズカットのための電磁波シールド、調光ガラス、有機TFTの電極などとして利用し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超原子価ヨウ素反応剤を用いて、芳香族化合物を酸化重合させる工程を包含する、ポリマーの製造方法。
【請求項2】
超原子価ヨウ素反応剤を用いて、複素環式芳香族化合物を酸化重合させる工程を包含する、ポリマーの製造方法。
【請求項3】
芳香族化合物が、ベンゼン系芳香族化合物である請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
複素環式芳香族化合物の複素原子が、窒素、硫黄、及び酸素のいずれかである請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
ベンゼン系芳香族化合物がベンゼンまたは1,4−置換ベンゼンである請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
複素環式芳香族化合物が、ピロール類であり、ポリマーがポリピロール類である請求項2に記載の製造方法。
【請求項7】
複素環式芳香族化合物が、チオフェン類であり、ポリマーがポリチオフェン類である請求項2に記載の製造方法。
【請求項8】
超原子価ヨウ素反応剤がアダマンタン構造を有する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
超原子価ヨウ素反応剤がテトラフェニルメタン構造を有する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記酸化重合させる工程において、さらに、金属を含まない酸化剤が用いられる、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記超原子価ヨウ素反応剤の使用量が、芳香族化合物または複素環式芳香族化合物1モルに対して0.001〜0.3モルであり、前記金属を含まない酸化剤の使用量が芳香族化合物または複素環式芳香族化合物1モルに対して1〜4モル当量である、請求項10に記載の製造方法。

【公開番号】特開2009−46653(P2009−46653A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336179(P2007−336179)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000214250)ナガセケムテックス株式会社 (173)
【Fターム(参考)】