説明

超吸収ポリマーとセルロース系ナノフィブリルとを含む超吸収ポリマー複合材

本発明は、超吸収ポリマーと、100nm以下の直径を有するセルロース系ナノフィブリルとを含む超吸収ポリマー複合材を提供する。複合材は、粒子または発泡体の形態であってもよい。複合材および超吸収ポリマー複合材を備える吸収性物品を生成するための方法もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超吸収ポリマーとセルロース系ナノフィブリルとを含む超吸収ポリマー複合材に関する。本発明はさらに、本発明による超吸収ポリマー複合材および超吸収ポリマー複合材を備える吸収性物品を生成する方法に言及する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品の技術における進歩は、高い吸収性、高い貯蔵能力、ならびに高いゲル強度および機械的強度等の所望の特性を有する吸収(しばしば超吸収)材料の探求を活性化している。
【0003】
吸収材料は、液体捕集層(liquid acquisition layer)、貯蔵層(storage layer)および分布層(distribution layer)等の2つ以上の層を備えることができる。
【0004】
良好な液体捕集能力を得るためには、吸収材料が高い瞬間的液体捕捉能力を有することが重要である。大きい毛細管を有する開放型の嵩張った構造は、高い瞬間的液体捕集能力を有し、そのような材料の例は、熱機械的または化学熱機械的(CTMP)な種類のセルロース系綿毛状パルプ(fluff pulp)、化学的に強化されたセルロース系繊維、合成繊維の詰め物、および多孔質発泡材料である。
【0005】
良好な液体貯蔵能力を得るために、吸収構造が超吸収材料を含有することが一般的である。超吸収材料は、それ自体の重量の何倍もの液体を吸収する能力を有する、架橋ポリマーである。超吸収材料としての使用に好適な有機材料は、多糖類(特に、例えばCMC:カルボキシメチルセルロース等の改質多糖類)、ポリペプチド等の天然材料、および合成ヒドロゲルポリマー等の合成材料を含み得る。そのようなヒドロゲルポリマーは、例えば、ポリアクリレート(特に、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩)、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピリジン等を含む。他の好適なポリマーは、ポリビニルアミン、加水分解アクリロニトリルグラフトデンプン、アクリル酸グラフトデンプン、およびイソブチレン無水マレイン酸コポリマー、ならびにそれらの混合物を含む。そのような超吸収体の吸収機構は、ポリマー鎖が、浸透力によりポリマーネットワークが水性液体を吸収することを可能にする、複数の荷電基を含有することに基づくと考えられる。
【0006】
吸収構造、すなわちおむつのコア内の超吸収材料は、多くの場合、繊維状マトリックス内に配置および含有される小粒子の形態である。繊維状マトリックスは、通常、熱機械的、化学的または化学熱機械的な種類のセルロース系綿毛状パルプからなるが、ある特定量の合成繊維もまた一般的である。
【0007】
超吸収材料を含有する吸収構造における1つの問題は、物品の保管中および使用中に、吸収構造の所望の場所に超吸収材料を分布させ維持することが困難であるという点である。超吸収材料を含有する吸収材料における別の問題は、いわゆるゲルブロッキングである。この問題は、液体を含有する超吸収粒子が膨潤し、ゲルを形成することにより生じる。ゲルは、液体輸送をブロックし、吸収構造のある特定の部分に液体の蓄積を生じさせ、一方その構造の他の部分は事実上利用されなくなる。
【0008】
高い機械的強度を有する超吸収材料を得るためには、ポリマーの架橋度が重要である。ポリマー構造内の架橋が多い程、機械的強度がより増加する。しかしながら、構造内の高い架橋度は、材料の膨潤能力を制限し、高度に架橋した超吸収材料は脆く、崩壊しやすい。異なる用途における超吸収材料の性能は、他の特性の中でも、弾性係数、耐破壊性および吸水能力に極めて依存する。これらの特性は、架橋度に大きく影響される。ポリアクリル酸(PAA)の場合、理論により推測されるように、架橋度の増加に伴い、膨潤の平衡度が減少し、弾性係数が増加することが示されている。
【0009】
超吸収ポリマー成分とセルロース繊維等の繊維性材料とを含む吸収ウェブ複合材、およびその生成のためのプロセスが知られている。
【0010】
この種の材料の例は、特許文献1(米国特許出願公開第2003/0111163号明細書)に記載されており、安定で制御可能な超吸収ポリマーの分散体を含む吸収性繊維ウェブ複合材を作製するための方法が記載されている。2種のポリマー前駆体、例えばアクリル酸またはメタクリル酸が別個の段階で添加され、複数の親水性繊維、例えばマイクロフィブリル状セルロースまたは微結晶性セルロースを含む事前に形成された繊維ウェブの上またはその中に、超吸収ポリマーが形成される。
【0011】
同様に、特許文献2(米国特許出願公開第2003/0111774号明細書)は、例えば超吸収ポリマーおよび複数の親水性繊維を含む吸収性繊維複合材不織ウェブを作製するための方法を記載している。超吸収ポリマーの重合が、吸収性複合材不織ウェブを形成する方法に統合されている。
【0012】
特許文献3(欧州特許第1207914号明細書)は、さらに、開放気泡発泡構造を備える吸収構造を開示しており、この構造の孔壁は、液体貯蔵材料、例えばポリアクリレートを備える。吸収構造は、発泡構造の細孔が親水性繊維、例えばセルロース繊維を含有し、親水性繊維の少なくとも主要部分が発泡構造の孔壁内に強固に係止されていること、および、繊維の量が乾燥状態の開放気泡発泡体の総重量の少なくとも10重量%であることを特徴とする。
【0013】
従来の超吸収ポリマー(例えばポリアクリル酸/ポリアクリレートポリマー)で作製された発泡材料は、通常、乾燥時には硬質および剛性、また湿潤時には非弾性であり、圧力下で崩壊する傾向がある。これらの理由により、超吸収材料は、通常、顆粒形態で吸収性物品内に含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0111163号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0111774号明細書
【特許文献3】欧州特許第1207914号明細書
【特許文献4】国際公開第2009/069641号パンフレット
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】G. Smets、A.M. Hesbain、J. Polymer Science、第11巻、217〜226頁(1959)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、膨潤した状態での機械的特性およびゲル特性が改善された、超吸収ポリマーとセルロース系繊維とを含む新たな吸収材料を設計し、同時に吸収、拡散および貯蔵特性を維持することが有利である。特に、改善された強度を有しながらも、同時に可撓性の欠如および脆性の問題がない吸収材料を提供することが有用である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
したがって、本発明は、超吸収ポリマーとセルロース系フィブリルとを含む超吸収ポリマー複合材を提供する。セルロース系フィブリルは、100nm以下の直径を有するナノフィブリルである。
【0018】
好適には、複合材は、100μmを超える平均直径を有するセルロース系繊維を含有しない。
【0019】
超吸収ポリマー複合材は、100nmを超えるが100μm以下の直径、好ましくは100nmを超えるが10μm以下の直径を有するセルロース系マイクロ繊維をさらに含んでもよい。
【0020】
好適には、超吸収ポリマー複合材は、超吸収ポリマーの0.1〜20wt%、好ましくは0.5〜15wt%、より好ましくは0.5〜5wt%のナノフィブリル含量を有する。さらに、複合材は、超吸収ポリマーの0.1〜20wt%、好ましくは0.5〜15wt%のマイクロ繊維含量を有してもよい。
【0021】
超吸収ポリマーは、アクリル酸およびその塩、メタクリル酸およびその塩、ならびにそれらの組合せからなる群から得られる反復単位を含んでもよい。
【0022】
超吸収ポリマー複合材は、有機架橋剤を含んでもよい。有機架橋剤含量は、超吸収ポリマーの0.1〜20wt%、好ましくは0.5〜15wt%、より好ましくは0.5〜5wt%であってもよい。
【0023】
複合材は、粒子または発泡体の形態であってもよい。発泡体の形態である場合、ナノフィブリルは、発泡体の孔壁内に組み込まれてもよい。発泡体は、細孔サイズ勾配を有してもよい。さらに、発泡体は、可塑剤、界面活性剤および発泡剤からなる群から選択される1種または複数種の物質を含んでもよい。
【0024】
本発明はまた、本発明の超吸収ポリマー複合材を備える吸収構造を有する吸収性物品を提供する。吸収性物品は、おむつ、パンツ型おむつ、失禁ガード、生理用ナプキン等、ならびに、液体透過性トップシート、液体不透過性バックシート、その間に配置された前記吸収構造を備える同様のものであってもよい。
【0025】
本発明はまた、本発明による超吸収ポリマー複合材を作製するための方法であって、
a)溶媒中に懸濁された、100nm以下の直径を有するセルロース系ナノフィブリルを提供するステップと、
b)任意選択で、溶媒中に懸濁された、100nmを超えるが100μm以下の直径を有するマイクロ繊維を添加するステップと、
c)1種または複数種のモノマーを添加するステップと、
d)中和剤を添加するステップと、
e)架橋剤を添加するステップと、
f)開始剤を添加するステップと、
h)モノマーと架橋剤とを重合させて、超吸収ポリマー、セルロース系ナノフィブリルおよび任意選択でマイクロ繊維を含む超吸収ポリマー複合材を形成するステップとを含み、
ステップa)、b)、c)、d)、e)およびf)は、任意の順番で行うことができる方法に関する。
【0026】
開始剤は、酸化開始剤、アゾ開始剤、光開始剤および/または熱開始剤からなる群から選択され得る。
【0027】
粒子が形成される場合、上記方法は、(i)複合材を粒子として形成するステップをさらに含んでもよい。発泡体が形成される場合、上記方法は、(g)複合材を発泡体として形成するステップをさらに含んでもよく、ステップ(g)は、上記方法のステップ(a)〜(f)の後であるがステップ(h)の前に行われる。
【0028】
発泡体を作製するための方法は、可塑剤、界面活性剤および発泡剤からなる群から選択される1種または複数種の物質を添加するステップをさらに含んでもよい。追加のステップは、粘度調整剤を添加することであってもよい。
【0029】
本発明は、吸収構造を作製するための方法であって、上述の方法を実行するステップと、得られた超吸収ポリマー複合材、発泡体または粒子を、前記吸収構造内に組み込むステップとを含む方法を提供する。
【0030】
本発明はまた、超吸収ポリマーのゲル強度を増加させるための、セルロース系ナノフィブリルの使用を提供する。
【0031】
定義
「ナノフィブリル」という用語は、ナノフィブリルに沿った全ての点において100nm以下の直径を有する個々のフィブリルを意味する。直径は、その長さに沿って変動し得る。ナノフィブリルは、個々の繊維として、および/またはナノフィブリルのクラスタとして存在し得る。「ナノフィブリル化セルロース(NFC)」という用語は、「ナノフィブリル」という用語と交換可能に使用される。
【0032】
「マイクロ繊維」という用語は、マイクロ繊維に沿った全ての点において、100nmを超えるが100μm以下の直径を有する個々の繊維を意味する。より具体的には、マイクロ繊維は、100nmを超えるが10μm以下の直径、または100nmを超えるが1μm以下の直径を有し得る。直径は、その長さに沿って変動し得る。マイクロ繊維は、複合材中、個々のマイクロ繊維として、および/またはマイクロ繊維のクラスタとして存在し得る。「MFC(マイクロフィブリル化セルロース)」という用語は、「マイクロ繊維」という用語と交換可能に使用される。
【0033】
「セルロース系」という用語は、木質および非木質植物等の自然源からのフィブリルまたは繊維、化学的、機械的、熱的処理による再生セルロースおよびこれらの繊維からの誘導体、またはこれらの任意の組合せを指す。さらに、「セルロース系」はまた、微生物により生成されたセルロース系またはセルロース含有繊維を指す。
【0034】
「多孔質」という用語は、本明細書において、細孔を有し、これらの細孔を通した気体または液体の通過を許容する材料を表すように使用される。
【0035】
「超吸収ポリマー複合材」(本明細書においては単に「複合材」とも呼ばれる)という用語は、超吸収ポリマーおよびセルロース系フィブリルという少なくとも2つの異なる成分で構成される構造を意味する。これらの成分は、複合材中、微視的レベルで別個で異なる状態を維持する。他の成分もまた、複合材中に存在してもよい。
【0036】
「ポリマー」という用語は、ホモポリマー、例えばブロック、グラフト、ランダムおよび交互コポリマー等のコポリマー、ターポリマー等、ならびにそれらのブレンドおよび改質物を含むが、それらに限定されない。さらに、別段に具体的に限定されない限り、「ポリマー」という用語は、材料の全ての可能な立体配置異性体を含むものとする。これらの立体配置は、アイソタクチック、シンジオタクチックおよびアタクチック対称を含むが、それらに限定されない。
【0037】
「超吸収ポリマー」は、0.9重量パーセント(wt%)の塩化ナトリウムを含有する水溶液中でそれ自体の重量の少なくとも約20倍を吸収することができる、水膨潤性、水不溶性有機または無機材料である。超吸収材料としての使用に好適な有機材料は、多糖類(CMC:カルボキシメチルセルロース等の改質多糖類を含む)、ポリペプチド等の天然材料、および合成ヒドロゲルポリマー等の合成材料を含み得る。そのようなヒドロゲルポリマーは、例えば、ポリアクリル酸(pAA)のアルカリ金属塩、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート、ポリビニルピリジン等を含む。他の好適なポリマーは、加水分解アクリロニトリルグラフトデンプン、アクリル酸グラフトデンプン、およびイソブチレン無水マレイン酸コポリマー、ならびにそれらの混合物を含む。ヒドロゲルポリマーは、好ましくは、材料を実質的に水不溶性とするようにやや架橋されている。好ましい超吸収材料は、超吸収体粒子、繊維、フレーク、球等の外側表面またはシェルが超吸収体の内部よりも高い架橋密度を有するように、さらに表面架橋されていてもよい。
【0038】
「荷重下吸収(absorption under load、AUL)」という用語は、本明細書において、0.9% NaCl水溶液または脱線維素ヒツジ血液中での、粒子または発泡体の形態の超吸収ポリマー複合材の荷重下吸収を測定するために使用される方法を指す。
【0039】
「架橋」という用語は、本明細書において、材料の第1の成分の粒子または領域が、第2の成分により連結されている材料を表すように使用される。一般に、第1の成分と第2の成分との間には共有化学結合が形成される。材料中の架橋が増加すると、増加した強度および増加した剛性(ひいてはより低い可撓性)を有する材料が提供される。
【0040】
「粒子」という用語は、例えば、粉末、顆粒、フレーク、球等の形態の複合材を含む。
【0041】
「発泡体」という用語は、本明細書において、複合材が気泡を備える、複合材の一形態を表すように使用される。発泡体は、液体または固体中に気泡を捕捉することにより形成される材料である。固体発泡体は、軽量気泡材料の重要なクラスを形成する。発泡体は、その細孔構造に基づき、2種類に分類することができる。発泡体の第1の種類は、開放気泡発泡体と呼ばれる。これらの発泡体は、互いに接続されて相互連結されたネットワークを形成する細孔を含有する。発泡体の第2の種類は、相互連結された細孔を有さず、独立気泡発泡体と呼ばれる。
【0042】
「界面活性剤」は、少量で存在する場合、発泡体の形成を促進する、または気泡の合体を阻害することによりそのコロイド安定性を向上させる成分である。
【0043】
「発泡剤」は、硬化または相転移する様々な材料(例えば、ポリマー、プラスチック、金属)中に気泡構造を生成することができる物質である。発泡剤は、発泡される材料が液体段階にある時に適用される。
【0044】
「吸収性物品」という用語は、おむつ、失禁ガード、生理用ナプキン、創傷包帯材、ベッド保護材(bed protector)等を含む。
【0045】
「脱線維素ヒツジ血液」という用語は、実質的に全ての線維素が除去されているヒツジ血液を含む。少なくとも2週間の保管中に血液の凝固が回避されるように十分な線維素が除去されている。
【0046】
「z方向」という用語は、本明細書において、吸収構造の略平面構成と比較して略面外の方向、すなわち吸収構造の厚さにわたる方向として使用される。
【0047】
ここで、同封の図を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】ナノフィブリル化(NFC)およびマイクロフィブリル化(MFC)セルロースの懸濁液の光学顕微鏡画像である。(a)10倍対物を使用した、湿潤した2倍希釈懸濁液の画像である。図1a中の目盛線は、50μmに対応する。挿入図は、100倍対物を使用した25倍希釈である。図1a中の挿入図における目盛線は、5μmに対応する。(b)10倍対物を使用した、濾過して乾燥させた懸濁液の画像である。挿入図は、50倍対物を使用して撮像されている。図1b中の目盛線は、50μmに対応し、一方図1b中の挿入図における目盛線は、10μmに対応する。
【図2】ナノフィブリル化(NFC)およびマイクロフィブリル化(MFC)セルロースの懸濁液のAFM画像である。(a)10倍希釈、続いて乾燥させ、光学顕微鏡を使用して巨視的な凝集体が観察されなかった領域で記録した。z方向変位(範囲20nm)が左側、位相画像が右側である。(b)および(c)は、濾過、続いて乾燥させたナノフィブリル化セルロースのz変位画像(範囲30nm)である。画像は、明確性のためにデジタル処理されている。図2中の目盛線は、全て100nmに対応する。
【図3】試料F2の細孔勾配が視認できるESEM写真である。図3中の目盛線は、500μmに対応する。
【図4A】開放気泡複合発泡体(試料F3)のESEM写真である。図4A中の目盛線は、1mmに対応する。
【図4B】ナノフィブリルおよびマイクロ繊維を含有する気泡壁(試料F3)のESEM写真および概略的な写真である。図4B中の目盛線は、200μmに対応する。
【図5】0.5mol%架橋剤(CL)を含有する複合材の膨潤後の弾性係数G(G=P/(α-α-2))が、前記複合材中のNFCおよびMFCの総量(乾燥重量当たりの%)に従い変動する様子を示す図である。
【図6】乾燥重量当たりのNFCおよびMFCの総量(%)に対する、0.5mol%架橋剤を含有する複合材の膨潤度(Q(g/g))を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
超吸収ポリマー複合材
本発明は、ある特定の材料の超吸収ポリマー複合材を提供する。複合材は、超吸収ポリマーと、ナノフィブリルであるセルロース系フィブリルという2つの主成分を含む。ナノフィブリルは、100nm以下の直径を有する。
【0050】
本発明のための好適な超吸収ポリマーは、多糖類(CMC:カルボキシメチルセルロース等の改質多糖類を含む)、ポリペプチド等の天然材料を含み得る。他の好適なポリマーは、加水分解アクリロニトリルグラフトデンプン、アクリル酸グラフトデンプン、およびイソブチレン無水マレイン酸コポリマー、ならびにそれらの混合物を含む。SAPはCMCであってもよい。
【0051】
本発明による超吸収ポリマーとして、合成材料もまた使用することができる。特に、アクリル酸(AA)モノマーおよびその塩、メタクリル酸およびその塩、ならびにそれらの組合せからなる群から得られる反復単位を含む、超吸収ポリマーを使用することができる。アクリロニトリル、アクリロイルクロリド、アクリル酸エステル(例えば、tert-ブチル-またはメチルアクリル酸エステル)、不飽和ラクトン、無水物、アクリルアミドモノマー、第2級もしくは第3級アクリルアミド、または他のアルケン、少なくとも1つのアルケン(オレフィン)基および少なくとも1つのスルホネートもしくはスルホン酸基を有するモノマー、エチレンスルホネートエステル、エチレンスルホン酸ハライド、ならびにスルホンアミド連結を含有するヘテロ環式モノマーが、好適なモノマーである。本発明によるポリマーを形成する場合は、これらのモノマー同士の組合せ、および他のモノマーとの組合せが可能である。他の超吸収ポリマーは、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウムおよび/または同様の化合物等のポリマースルホン酸であってもよい。中性モノマーが使用される場合、これらのモノマーは、荷電ポリマーを達成するために加水分解されなければならない。
【0052】
ポリアクリルアミドゲルのポリアクリル酸ゲルへの加水分解は、酸性水溶液を使用して行うことができるが、G. Smets、A.M. Hesbain、J. Polymer Science、第11巻、217〜226頁(1959)を参照されたい。
【0053】
超吸収ポリマーの酸性モノマーは、その浸透圧を増加させるために中和する必要がある。好適な中和剤は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸リチウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、およびアンモニアを含む。酸性モノマーのカルボン酸基は、部分的に、リチウム、ナトリウム、カリウム、もしくはアンモニウム塩、またはそれらの2種以上の混合物に中和され得る。酸性基の中和度は、10〜95%、好ましくは30〜80%、より好ましくは55〜75%である。
【0054】
本発明の超吸収ポリマー複合材は、有機架橋剤を含んでもよい。超吸収ポリマー複合材は、超吸収ポリマーの0.1〜20wt%、好ましくは0.5〜15wt%、より好ましくは0.5〜5wt%の有機架橋剤含量を有し得る。有機架橋剤は、重合反応において成長するポリマー中に組み込まれ得る、2つ以上(例えば2つ)の重合性官能基を有し得る。それらは、ポリマー鎖を架橋し、得られるゲルに強度を提供するように作用する。既知の架橋剤は、例えば、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、N,N'-ビスアクリリルシスタミン、N,N'-ジアリル酒石酸ジアミド、1,3-ジアクリロイルエチレン尿素、エチレンジアクリレート、N,N'-メチレンビスアクリルアミド(MBA)、N,N'-プロピレンビスアクリルアミド、ジ(アクリルアミドメチル)-エーテル、N,N'-ジメチロール(メチレンビス(アクリルアミド))、1,2-ジアクリルアミドエチレングリコールおよび1,3-ジアクリロイルエチレン尿素である。
【0055】
他の架橋剤は、その形成後にポリマーを架橋し得る。これらの架橋剤の例は、ホルムアルデヒド、メチロール化窒素化合物、例えばジメチロール尿素、ジメチロールエチレン尿素およびジメチロールイミダゾリドン、ジカルボン酸、例えばマレイン酸、ジアルデヒド、例えばグリオキサール、ジエポキシド、ジイソシアネート、ジビニル化合物、例えばジビニルスルホン、ジハロゲン含有化合物、例えばジクロロアセトンおよび1,3-ジクロロプロパン-2-オール、ハロヒドリン、例えばエピクロルヒドリン、ビス(エポキシプロピル)エーテル、ジクロロエタン、ジビニルスルホン、エピクロルヒドリン、エチレングリコール-ビス(エポキシプロピル)エーテル、ビニルシクロヘキセンジオキシド、1,3-ジクロロ-2-プロパノール、1,3-ビス(β-ヒドロキシ-1-クロロプロポキシ)-2-プロパノール、1,3-ビス(β-ヒドロキシ-1-クロロプロポキシ)エタン、1,2:3,4-ジエポキシブタン、1,2:5,6-ジエポキシヘキサン、2,3-ジブロモ-1-プロパノール、2,3-ジクロロ-1-プロパノール、2,2-ジクロロエチルエーテル、メチレンビス(アクリルアミド)、トリスアクリロールヘキサヒドロトリアジン、アクリルアミドメチレンクロロ-アセトアミド、2,4,6-トリクロロピリミジン、2,4,5,6-テトラクロロピリミジン、塩化シアヌル、トリアリルシアヌレート、ジクロロ酢酸ならびにオキシ塩化リンである。
【0056】
本発明によれば、個々のナノフィブリルおよび/またはナノフィブリルのクラスタは、セルロース繊維から完全に分離されて使用される。個々のナノフィブリルは、典型的には、ナノフィブリルに沿った全ての点において100nm以下の直径を有する。直径は、その長さに沿って変動し得る。さらに、ナノフィブリルの長さは、複合材に所望の効果を与えるためには短すぎるべきではない。好ましくは、ナノフィブリルは、1μmを超える長さを有する。
【0057】
複合材中のナノフィブリル(NFC)の存在は、向上した機械的強度、ならびに良好な吸収、液体拡散および液体貯蔵特性を得るために重要である。ナノフィブリルは、超吸収ポリマー複合材のポリマーネットワークを安定化し、吸収に干渉しない。向上したゲル強度のために、高度の架橋は必ずしも必要ない。これにより、ゲルブロッキングのリスクも軽減される。これらの特性は、より良好に制御された膨潤を提供し、これは吸収構造の設計に利用することができる。理論に束縛されることを望まないが、ナノフィブリルは架橋剤として作用するものの、複合材中に強固な化学結合を形成しない可能性がある。したがって、複合材は強度を得るが、膨張の点ではより可撓性であり、したがってそれほど脆くなることはない。一方、複合材の可撓性により、複合材はより自由に膨張し、より多くの液体を吸収し得る。
【0058】
超吸収ポリマー複合材中の超吸収モノマーの量と比較したナノフィブリルの好ましいwt%は、0.1〜20wt%、好ましくは0.5〜15wt%、より好ましくは0.5〜5wt%の範囲内にある。
【0059】
さらに、ナノフィブリルおよび超吸収ポリマーだけでなく、本発明の超吸収ポリマー複合材は、複合材の吸収能力を調節するために、マイクロ繊維(MFC)を含んでもよい。例えば、ナノフィブリルに加えてマイクロ繊維を添加することにより、より高い液体分布能力を有する試料を形成することができる。
【0060】
本発明によるマイクロ繊維は、セルロース繊維から完全に分離された個々のマイクロ繊維および/またはマイクロ繊維のクラスタを意味する。セルロース系マイクロ繊維の好適な直径は、100nmを超えるが100μm以下、好ましくは100nmを超えるが10μm以下である。直径は、その長さに沿って変動する可能性がある。
【0061】
超吸収ポリマー複合材中の超吸収モノマーの量と比較したマイクロ繊維の好ましいwt%は、0.1〜20wt%、好ましくは0.5〜15wt%の範囲内にある。
【0062】
複合材は、ナノフィブリルおよびマイクロ繊維を含み得る。超吸収モノマーと比較したマイクロ繊維の好ましいwt%は、0.1〜20wt%、好ましくは0.5〜15wt%の範囲内にあり、超吸収モノマーと比較したナノフィブリルの好ましいwt%は、0.1〜20wt%、好ましくは0.5〜15wt%の範囲内にある。
【0063】
好適には、複合材は、100μmを超える平均直径を有するセルロース系繊維を含有しない。
【0064】
本発明の超吸収ポリマー複合材は、任意選択で可塑剤を含む。可塑化剤/可塑剤とは、その機械的特性を硬質および剛性から軟質および可撓性に変化させるために、ポリマー材料とともに使用される化学物質を意味する。可塑化剤/可塑剤は、ポリマー鎖の間に組み込まれ、それらを離間させ、それにより自由体積を増加させ、したがってポリマーのガラス転移温度を著しく低下させてより軟化させる。
【0065】
本発明における使用に選択される可塑化剤は、一連の特性を有する。一般に、可塑化剤は、液体または固体であってもよく、ある範囲の分子量および構造を有し、超吸収ポリマー複合材に適合する。可塑化剤は、低分子量物質またはポリマーであってもよく、また不揮発性および非反応性である。一般に、重合において使用されるモノマーと混和性となるように、液体可塑化剤が選択される。典型的には、低分子量可塑化剤は、低分子量の酸またはアルコールから得られ、その例はグリセロールおよびクエン酸である。低分子量の酸またはアルコールはまた、それぞれ、単官能アルコールまたは単官能酸とエステル化され得る。そのような可塑化剤の例は、一塩基酸および多塩基酸のエステル、例えばミリスチン酸イソプロピル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソオクチル、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジブチル等である。典型的には、ポリマー可塑化剤は、約150から約1500の重量平均分子量を有するポリアルキレンオキシド、例えばポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレングリコールおよびそれらのコポリマーを含む。
【0066】
水は、本発明の複合材と一緒になると、可塑化剤/可塑剤として作用する。しかしながら、吸収性製品の機能は、水を吸収することであるため、本出願においては、水は可塑化剤/可塑剤とみなされない。可塑化剤/可塑剤として水に依存すると、製品の機能を損なうことになる。可塑化剤/可塑剤としての水の使用を妨げる他のパラメータには、潜在的な微生物増殖が含まれる。吸収性物品において超吸収ポリマー複合材を使用する前に、合成により存在するいかなる水も乾燥される(例えば炉内で一定重量となるまで)。
【0067】
本発明はまた、上述のような超吸収ポリマー複合材を作製するための方法を提供する。この方法は、
a)溶媒中に懸濁された、100nm以下の直径を有するセルロース系ナノフィブリルを提供するステップと、
b)任意選択で、溶媒中に懸濁された、100nmを超えるが100μm以下の直径を有するマイクロ繊維を添加するステップと、
c)1種または複数種のモノマーを添加するステップと、
d)中和剤を添加するステップと、
e)架橋剤を添加するステップと、
f)開始剤を添加するステップと、
h)モノマーと架橋剤とを重合させて、超吸収ポリマー、セルロース系ナノフィブリルおよび任意選択でマイクロ繊維を含む超吸収ポリマー複合材を形成するステップとを含む。
【0068】
ステップa)、b)、c)、d)、e)およびf)は、任意の順番で行うことができる。
【0069】
したがって、本発明の超吸収ポリマー複合材を調製する方法は、1種または複数種のモノマー(超吸収ポリマーの前駆体)をセルロース系ナノフィブリルの懸濁液に添加するステップ、またはその逆のステップを含み得る。任意選択で、100nmを超えるが100μm以下の直径を有する懸濁されたマイクロ繊維が添加される。
【0070】
中和剤、架橋剤および開始剤が、反応混合物に添加される。中和剤および架橋剤は、上述されている。この方法は、ポリマー鎖および架橋剤が3次元ネットワークの形態をとるために、架橋剤を含む。
【0071】
重合には、通常、開始剤が反応を開始し伝播する必要がある。当技術分野において知られる任意の一般的重合開始剤および/または重合触媒を使用することができる。酸化開始剤(例えば過酸化物または過硫酸塩)およびアゾ開始剤(例えば2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(VA-044)を使用することができる。他の開始剤には、熱開始剤および光開始剤が含まれる。
【0072】
重合反応に好ましい溶媒は、水である。しかしながら、アルコール、エーテルまたはアミド溶媒(例えばDMF)等の他の溶媒が、単独または水と組み合わせて使用されてもよい。重合反応は、-40℃から100℃の間の温度で生じ得、反応温度は、反応速度を制御するために使用され得る(重合反応は一般に発熱性である)。
【0073】
得られた超吸収ポリマー複合材は、吸収性物品内で使用される場合、乾燥されるべきである。
【0074】
本発明の複合材は、ゲル、繊維、粒子および発泡体を含む様々な形態で使用され得る。粒子または発泡体が特に適切である。一般に、複合材が発泡体または粒子の形態である場合に明らかな1つの特徴は、表面構造の不規則性であり、したがってより広い表面積が形成される。
【0075】
粒子
本発明は、上述のような超吸収ポリマー複合材を提供し、複合材は粒子の形態である。
【0076】
粒子は、好適には表面架橋されている。複合材粒子の性能は、通常の(バルク)架橋に加えた表面架橋により改善することができ、したがって粒子の表面でより高い架橋密度が形成され、結果的に粒子の吸収特性が増加する。好適な表面架橋剤は、例えば、金属塩、ポリオール、例えばグリセロール、ソルビトール、アルキレンカーボネート、および第4級アンモニウム化合物である。
【0077】
複合材が粒子の形態である場合、ナノフィブリルは、完全に粒子内に組み込まれてもよい。
【0078】
したがって、超吸収ポリマー複合材を作製するための上述の方法は、(i)複合材を粒子として形成するステップをさらに含んでもよい。このステップは、上記方法におけるステップ(h)の後に行われるべきである。複合材は、ゲル化により粒子として作製され得る。超吸収ポリマー複合材のゲル化は、ゲル化が生じるまで、例えば少なくとも10分間、複合材を高温に暴露することにより生じる。次いで、超吸収ポリマー複合材ゲルを含有する容器を閉じ、熱源をオフにし、容器をある時間放置する。その後、ある期間(例えば3日間)ゲルを水中で洗浄し、水を定期的に(例えば毎日)交換して、抽出可能な材料を除去する。次いで、一定重量に達するまでゲルを乾燥させる。その後、乾燥されたゲルを粉砕し、篩い分けして、ある特定のサイズの粒子を形成する。粒子の粉砕および篩い分けの前に、複合材を乾燥させる他の方法(例えばフリーズドライ)が使用されてもよい。
【0079】
発泡体
本発明はまた、超吸収ポリマー複合材を提供し、複合材は発泡体の形態である。発泡複合材の典型的な平均細孔サイズは、1000μm未満である。
【0080】
好適には、発泡体は、可塑剤、界面活性剤および発泡剤からなる群から選択される1種または複数種の物質を含む。超吸収ポリマー複合材自体に関連して上述したいずれの可塑剤も、本発明の発泡複合材における使用に好適である。例えばSDSまたはTween 80等の界面活性剤を使用することができる。発泡剤は、圧力が開放されると膨張する圧縮気体、浸出されると細孔から出て行く可溶性固体、気体に変化すると気泡を生じる液体、および熱の影響下で分解または反応して気体を形成する化学薬品を含む。化学発泡剤は、単純な塩から複雑な窒素放出剤まで多岐にわたる。発泡剤/ポロゲンの例は、酸性条件に曝されると二酸化炭素ガスを生成する、重炭酸ナトリウムおよび重炭酸アンモニウムである。他の例は、水に曝されると二酸化炭素を生成するイソシアネート基、または熱に曝されると窒素ガスを生成するアゾ基である。発泡体の他の可能な成分は、粘度調整剤である。
【0081】
本発明による発泡体を作製するために、(g)複合材を発泡体として形成するステップを含む、超吸収ポリマー複合材を作製するための上述の方法を行ってもよく、ステップ(g)は、上述の方法のステップ(a)〜(f)の後であるがステップ(h)の前に行われる。重合した混合物は発泡体として形成することが困難となり得るため、このステップ(g)は、重合ステップ(h)の前に行われるべきである。
【0082】
発泡体を形成するための方法は、可塑剤、界面活性剤および発泡剤からなる群から選択される1種または複数種の物質を添加するステップをさらに含んでもよい。さらに、方法は、粘度調整剤を添加するステップをさらに含んでもよい。
【0083】
事実上、本発明による発泡体は、
-ナノフィブリルおよび/またはマイクロ繊維と、1種または複数種のモノマーと、任意選択で可塑剤との混合物を形成すること、および
-モノマーと架橋剤とを重合させて、超吸収ポリマー、セルロース系ナノフィブリルおよび任意選択でマイクロ繊維を含む発泡複合材を形成することにより、作製され得る。
【0084】
固体発泡体は、一般に、1.気泡生成および成長、ならびに2.固化という2つの主要なステップに分けられる、様々な方法により調製することができる。
【0085】
1.気泡生成および成長
例えば以下のようないくつかの選択肢が可能である。
a)液体中に気体を泡立てる。
b)気体を液体中に注入する。
c)また、気泡は、気体の蒸気圧が周囲圧力より高くなると液体中に自然発生的に形成し得る。
d)化学的方法または物理的方法のいずれかによる、気泡の核生成。
e)また、固体/液体系において二相系が達成され得る。次いで、固化プロセス後に固相が除去される。
【0086】
化学的方法は、多くの場合、発泡剤またはポロゲンの使用と関連する。発泡剤は、上述のように、明確な化学反応により気体を発生し、ポリマー材料中に気泡構造を生成することができる添加剤である。「発泡剤」および「ポロゲン」という用語は、同じものを意味するように使用されることが多いが、ポロゲンは、明確な化学反応により分解しないが、非常に高い温度において、全ての種類の分子断片に無作為に崩壊する発泡剤として定義される場合がある。
【0087】
気泡はまた、気泡構造を確実とするために物理的条件を変化させることを含むエマルジョンおよびマイクロエマルジョンにより生成され得る。例は、低い蒸発温度を有する炭化水素(例えばヘプタンまたはアセトン)でエマルジョンまたはマイクロエマルジョンを作製することである。超臨界二酸化炭素等の超臨界流体もまた、気泡構造を生成するために使用することができる。
【0088】
気泡生成および成長段階において、このプロセスを促進するために使用され得るいくつかの成分がある。例は、表面活性成分、いわゆる界面活性剤である。タンパク質もまた、表面活性材料として使用され得る。いくつかの粒子または繊維もまた、気泡の核生成部位として使用され得る。気泡構造は、液相または気液界面において粘度調整剤を使用して安定化され得る。
【0089】
2.固化プロセス
固体発泡体は、多くの場合液相でのモノマーの重合である固化プロセスにおいて生成される。重合は、ラジカル機構によるものであってもよい。逐次重合もまた妥当である。重合温度は、周囲温度、または室温より上もしくは下であってもよい。その凝固点を下回る温度の水が相のうちの1つである二相系において生じる重合は、いわゆる冷却ゲルを生成する。水が除去されると、発泡体が生成される。
【0090】
また、固化プロセスが、液相の物理的変化、例えばゲル化および/または乾燥により生じ得ることも考えられる。
【0091】
超吸収ポリマー複合材の発泡体を作製する方法は、99.95%エタノールで水を抽出するステップを含み得る。本発明による発泡体を形成するための最も好ましい方法は、泡立てによるものである。
【0092】
細孔勾配を有する発泡体
気泡生成および成長プロセスの性質を制御することにより、異なる細孔サイズ、細孔構造および/または細孔勾配を有する気泡構造を生成することが可能である。したがって、発泡体は、細孔サイズ勾配を有し得るが、図3を参照されたい。発泡体は、その異なる領域に、異なる細孔サイズおよび細孔勾配を備えることができる。
【0093】
細孔勾配は、z方向にあってもよく、上部に最大細孔を有し、下部に到達するにつれて次第により小さい細孔となってもよい。吸収性物品においてそのような構造を使用する1つの利点は、装着者に最も近くに位置する吸収構造の上部に、吸収構造の下部の液体貯蔵部よりも高い液体分布能力を提供することができる点である。さらに、発泡体の下部は、より高い毛細管圧を有し、それにより上部を空にして、さらなる湿潤を許容し、乾燥した上部表面を提供する。
【0094】
そのような細孔サイズ勾配を得るためには、異なる層の発泡体が製造され、互いの上に設置される。乾燥する前に互いの上に異なる層を適用することにより、層が部分的に互いに貫入した一体化構造が得られる。別個の層からなる吸収構造と比較したそのような一体化構造の1つの利点は、その後の接合ステップが排除される点である。したがって、そのような構造は、層を接合するための接着剤および/またはエネルギー供給の必要性が排除されるため、製造するのにより安価である。一体化構造に関する別の利点は、液体輸送において、層間の不十分な接触による第1の層から第2の層への遷移の低減のリスクがないように、構造の機能が改善される点である。
【0095】
複合材が発泡体の形態である場合、本発明のナノフィブリルは、複合材の孔壁内に完全に組み込まれ得るが、図4Aおよび4Bを参照されたい。この現象は、主にナノフィブリルの微小なサイズに起因して生じる。ナノフィブリルは、互いに平行に並んでいるとともに、複合材の孔壁内に絡まっているのが観察され得る。ナノフィブリルは、均一に分布するか、またはいくつかの別個の群に集合し得る。より短い、およびより長いナノフィブリルが、複合材全体に分布している。
【0096】
ナノフィブリルを組み込むことにより、引張応力およびせん断応力に耐える発泡複合材の能力が改善される。さらに、発泡体は、従来技術の発泡体に関連した脆性をほぼ示すことなく、より容易に圧縮される、すなわちより高い密度に圧縮されながらも、湿潤すると膨張することができる。
【0097】
吸収性物品
本発明による超吸収ポリマー複合材は、その有益な吸収、貯蔵およびゲル強度特性により、吸収性物品において有利に使用される。したがって、本発明は、本明細書に開示される超吸収ポリマー複合材を備える吸収構造を有する吸収性物品を提供する。
【0098】
本発明による吸収性物品は、生理用ナプキンおよびパンティライナー等の女性用製品だけでなく、幼児用おむつおよび失禁ガードであってもよい。換言すると、本発明は、吸収性物品を提供し、前記吸収性物品は、おむつ、パンツ型おむつ、失禁ガード、生理用ナプキン等、ならびに、液体透過性トップシート、液体不透過性バックシートおよびその間に配置された前記吸収構造を備える同様のものである。最も好適には、吸収構造は、本発明の超吸収ポリマー複合材を備える。吸収構造は、超吸収ポリマー複合材と組み合わせて、繊維性材料、例えばセルロース繊維、ティッシュ層または不織材料等の追加的材料をさらに備えてもよい。
【0099】
液体捕集部分(液体が最初に吸収構造に接触する部分)における吸収構造は、液体貯蔵部分(液体が最終的に貯蔵される部分)より架橋されていてもよい。非常に高度に架橋された超吸収材料は、より低い架橋度を有する超吸収材料ほど多くの液体を受容できない。高い架橋度を有する超吸収材料は、ゲルブロッキングのリスクがより低い。そのような吸収構造は、液体捕集層を形成することになるポリマー溶液により多量の架橋剤が添加された、および液体捕集部分を形成することになるポリマー溶液により少量の架橋剤が添加された、2つ以上の複合材層を調製することにより作製することができる。粒子または発泡体の形成および架橋の後であるが乾燥の前に、異なる層が互いの上に設置され、そこで層は互いに部分的に一体化し、連続的構造が達成される。
【0100】
本発明の超吸収ポリマー複合材の1つの利点は、架橋度を変更する代わりに、ポリマー複合材中のナノフィブリルの量を変更することができる点である。付随する実施例に示されるように、本発明の超吸収ポリマー複合材のゲル強度は、ナノフィブリルおよびマイクロ繊維の量を変更することにより、吸収能力に大きく影響することなく変更することができる。最大膨潤は、架橋剤の添加と同様に複合材に添加されるNFCおよびMFCの量により影響されるが、ゲルがより脆性とならないという利点がある(以下のTable 1(表4)を参照されたい)。
【0101】
吸収性物品、例えばおむつ、パンティライナー、失禁ガード、生理用ナプキン等は、上述のような粒子または発泡体の形態の超吸収ポリマー複合材を備えることができる。特に、吸収性物品の吸収構造は、発泡体の形態の本発明の超吸収ポリマー複合材を備えることができ、発泡体は、上述のように細孔勾配を有する。発泡体は、上部(すなわち装着者に最も近く)に最大細孔が配され、下部(すなわち装着者から最も遠く)に到達するにつれて次第により小さい細孔となる。
【0102】
吸収性物品の吸収構造はまた、構造の装着者側表面により近い粒子が、構造の衣服側表面により近い粒子よりも大きくなるように層内に配置された、本発明の超吸収ポリマー複合材の粒子を備えてもよい。
【0103】
本発明はまた、吸収構造を作製するための方法を提供する。この方法は、好適には発泡体または粒子の形態の上述の超吸収ポリマー複合材を作製するステップと、得られた超吸収ポリマー複合材を前記吸収構造に組み込むステップとを含む。
【0104】
本発明はまた、超吸収ポリマーのゲル強度を増加させるための、セルロース系ナノフィブリルの使用を提供する。上述の超吸収ポリマーおよびセルロース系ナノフィブリルに関する全ての詳細はまた、本発明のこの態様にも関連する。
【0105】
本発明は、上記実施形態および図により限定されるものと解釈されるべきではなく、むしろ保護の範囲は、同封の特許請求の範囲により決定されるべきである。様々な実施形態に対して上述したような特徴および要素の組合せもまた、本発明の範囲内に包含されるべきである。
【0106】
(実施例)
2種の試験を行った。
【0107】
第1の試験(セクションI)では、ナノフィブリルおよびマイクロ繊維を調製した(セクションI-a)。粒子および発泡体の形態の超吸収ポリマー複合材を形成し(セクションI-bおよびI-c)、複合材を特性決定し(セクションI-d)、発泡体の液体吸収特性を試験し(セクションI-e)、発泡体の機械的特性を試験した(セクションI-f)。
【0108】
第2の試験(セクションII)では、ナノフィブリル化セルロース(NFC)およびマイクロフィブリル化セルロース(MFC)の混合物を含有する懸濁液を特性決定し(セクションII-a)、ヒドロゲルを合成し(セクションII-b)、機械的測定および膨潤分析を行った(セクションII-c)。
【0109】
セクションI
I-a) ナノフィブリルおよびマイクロ繊維の調製
ナノフィブリルの調製
ナノフィブリルを調製する1つの手法は、特許文献4(国際公開第2009/069641号パンフレット)に記載されている。セルロース系パルプ/繊維を水に懸濁させ、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)およびNaBrを添加する。500rpmで撹拌しながらpH 10の12% NaClO溶液をセルロース系繊維懸濁液に添加することにより、TEMPO酸化を開始させる。撹拌中NaOHを添加することにより、pHを10に維持する。TEMO酸化セルロースを濾過により水で洗浄し、さらなる処理まで4℃で保存する。密閉容器内で、磁気撹拌棒を使用して6時間から10日間、4℃で1500rpmで酸化セルロースを撹拌する。結果として、個々のナノフィブリルおよび/またはナノフィブリルのクラスタが調製される。
【0110】
マイクロ繊維の調製
マイクロ繊維は、異なる機械的および化学的処理により生成することができる。以下の実施例において使用されるマイクロ繊維は、SCAのCMCミル(Nyhamn、Sweden)で生成された。これらの繊維は、0.28の置換度を有し、Aquasorbの商品名で販売された。カルボキシメチル化繊維は、5%の濃度まで蒸留水中に分散させた。繊維を完全に膨潤させるために、分散液を一晩保持した。次いでこれをHobartミキサー、モデルN50で、最大強度で2時間機械的に処理した。次いで分散液を超音波バス、モデルElma transonic 700内で30分間処理した。
【0111】
試料
試料S1: 0 wt%ナノフィブリル、参照(高架橋度)
試料S2: アクリル酸モノマー重量に対し12 wt%ナノフィブリル(低架橋度)
試料S3: アクリル酸モノマー重量に対し0 wt%ナノフィブリル、参照(低架橋度)
試料F1: アクリル酸モノマー重量に対し14.6 wt%マイクロ繊維
試料F2: アクリル酸モノマー重量に対し2.16 wt%ナノフィブリルおよび6.6 wt%マイクロ繊維
試料F3: アクリル酸モノマー重量に対し5.1 wt%ナノフィブリルおよび5 wt%マイクロ繊維
【0112】
試料の調製 − ポリアクリル酸セルロースマイクロ繊維およびナノフィブリルをベースとした超吸収ポリマー複合材粒子および発泡体
原材料
全ての化学物質は、供給されたものをそのまま使用した。全ての合成は、Ultra Pure Elga水(抵抗率=18MΩ)、Elga Maxima HPLCで行った。
アクリル酸モノマー(AA)、Tween 80およびNaOHは、Merck社から購入した。
N,N'-メチレンビス(アクリルアミド)(MBA)および2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(VA-044)およびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)は、Sigma-Aldrich社から購入した。
脱イオン水中5%マイクロ繊維溶液および1.5%ナノフィブリル溶液としてのセルロース繊維を使用した。
【0113】
I-b) SAP粒子の合成
試料は全て、内径29mmのガラスバイアル内で調製した。
純粋なSAPおよびナノフィブリル含有SAPを、熱開始フリーラジカル重合により合成し、MBAを架橋剤として使用し、VA-044を開始剤として使用した。
【0114】
以下の実施例における全てのステップ中に、反応槽の内容物をN2でパージし、溶液から酸素を排除した。開始剤の添加前にN2源を除去した。
【0115】
(実施例1)
試料S1: 0 wt%ナノフィブリル、参照(高架橋度)
冷却浴(冷水+氷)を磁気撹拌器上に設置した。5.24gのNaOH(酸性基の67%の中和)を、17.009gのUltra Pure Elga水に溶解した。バイアルに13.255gのUltra Pure Elga水、13 8gのアクリル酸モノマー(0.192mol)を投入し、冷却浴内に設置した。10分間の混合後、NaOH溶液を滴下によりバイアルに添加した。42℃に事前設定された水浴内にバイアルを設置し、0.242gの架橋剤MBA(モノマーのモルに対し0.85mol%)を添加し、撹拌速度を上昇させて、溶液に粉末が確実に導入されるようにした。10分後、開始剤VA-044(モノマーに対し0.1mol%、0.059g)を、Ultra Pure Elga水中10%溶液としてシリンジで添加した。浴の温度を50℃に上昇させ、反応を50℃で進行させた。ネットワークの形成から10分後、バイアルを封止し、熱源をオフにし、バイアルを水浴内で22℃で一晩冷却および放置すると、ゴム状ゲルが得られた。
【0116】
(実施例2)
試料S2: アクリル酸モノマー重量に対し12 wt%ナノフィブリル(低架橋度)
溶液のナノフィブリル濃度を増加させるために、ある特定の量のナノフィブリル溶液(脱イオン水中1.5%)を濾過して水の一部を除去した。このステップの後もナノフィブリルはまだ湿潤しており、水を含有していた。
【0117】
Eフラスコに、17.863gのナノフィブリル溶液(0.62gのナノフィブリル)を投入し、次いでフラスコを冷水浴に導入した。3.705gのNaOH(酸性基の67%の中和)をEフラスコに少しずつ添加し、全てのNaOHペレットが溶解するまで溶液を十分混合した。
【0118】
冷却浴(冷水+氷)を磁気撹拌器上に設置した。ナノフィブリル-NaOH溶液をバイアルに移し、次いで19.5gのナノフィブリル溶液(0.60gのナノフィブリル)を添加し、バイアルを冷却浴内に設置した。溶液の混合を約15分間行い、その後10gのアクリル酸モノマー(0.139 mol)を滴下によりバイアルに添加した。次いで、0.089gの架橋剤MBA(モノマーのモルに対し0.42 mol%)をバイアルに添加し、撹拌速度を上昇させて、溶液に粉末が確実に導入されるようにした。42℃に事前設定された水浴内にバイアルを設置した。10分後、バイアルを封止し、開始剤VA-044(モノマーのモルに対し0.1 mol%、0.047g)を、Ultra Pure Elga水中10%溶液としてシリンジで添加した。バイアルを数回傾倒させ、振盪して溶液を十分混合し、浴の温度を50℃に上昇させ、反応を50℃で進行させた。ネットワークの形成から10分後、熱源をオフにし、バイアルを水浴内で22度で一晩冷却および放置した。ゴム状ゲルが得られた。
ナノフィブリルの総量=1.2g (モノマーの重量に対し12 wt%)。
【0119】
(実施例3)
試料S3: 0 wt%ナノフィブリル、参照(低架橋度)
冷却浴(冷水+氷)を磁気撹拌器上に設置した。バイアルに25.53gのUltra Pure Elga水、10gのアクリル酸モノマー(0.139mol)を投入し、冷却浴内に設置した。14.98gのNaOH溶液(Ultra Pure Elga水中25%溶液として、酸性基の67%の中和)を滴下によりバイアルに添加した。
【0120】
42℃に事前設定された水浴内にバイアルを設置し、0.089gの架橋剤MBA(モノマーのモルに対し0.42mol%)をバイアルに添加し、撹拌速度を上昇させて、溶液に粉末が確実に導入されるようにした。10分後、開始剤VA-044(モノマーのモルに対し0.1 mol%、0.045g)を、Ultra Pure Elga水中10%溶液としてシリンジで添加した。浴の温度を50℃に上昇させ、反応を50℃で進行させた。ネットワークの形成から10分後、バイアルを封止し、熱源をオフにし、バイアルを水浴内で22度で一晩冷却および放置した。ゴム状ゲルが得られた。
【0121】
I-c) SAP発泡体の調製
SAP発泡体を、熱開始フリーラジカル重合により調製し、MBAを架橋剤として使用し、VA-044を開始剤として使用した。
【0122】
(実施例4)
試料F1: アクリル酸モノマー重量に対し14.6 wt%マイクロ繊維
全てのステップ中、N2ガスを不活性ガスとして使用した。手持ち式ブレンダ型Bosch MSM6600(2008)を、混合物の混合および泡立てに使用した。ブレンダの泡立て速度には2つのポジションがあり、1つはターボ速度で1つはより低速に規定されていた。反応槽の蓋は、CO2ガス用に1つ、N2および溶液添加用に1つ、ならびに泡立て器(balloon whip)用に1つの入口を有していた。反応槽を冷却浴(冷水+氷)内に設置し、N2ガスで数分間パージした。槽に37.04gのマイクロ繊維溶液(脱イオン水中5%、1.85gのマイクロ繊維)を投入し、ブレンダを低速で始動した。7.3gのNaOH(酸性基の51.7%の中和)を槽に少しずつ添加し、全てのNaOHペレットが溶解するまで溶液を混合した。19.05gのアクリル酸モノマーを滴下により2段階で混合物に添加した。第1の添加後、3.4gの界面活性剤(SDS)を添加し、2分間の混合時間後、アクリル酸の添加を継続した。
【0123】
0.1976gの架橋剤MBA(モノマーの総モルに対して0.36mol%)を6.35gのアクリル酸モノマーに溶解した。溶液を2段階で槽に添加した。泡立てをターボ速度で15分間行い、その後開始剤VA-044(0.13g、モノマーのモルに対して0.11mol%)を、Ultra Pure Elga水中3.8 wt%溶液として添加し、より低速での混合を5分間行った。その後、37.04gのマイクロ繊維溶液(脱イオン水中5%、1.85gのマイクロ繊維)を添加し、泡立てを5分間継続すると、モノマー発泡構造が得られた。反応槽を冷却浴から取り外し、モノマー発泡体を角型プラスチック瓶(10×10cm)に慎重に移した。蓋を使用して瓶を閉じ、加熱炉内で55℃の温度で1.5時間、重合を行った。次いで蓋を開けたが、瓶から取り外さず、反応を30℃の温度で一晩進行させた。
【0124】
(実施例5)
試料F2: アクリル酸モノマー重量に対し2.16 wt%ナノフィブリルおよび6.6 wt%マイクロ繊維
すべてのステップ中、N2ガスを不活性ガスとして使用した。手持ち式ブレンダ型Bosch MSM6600(2008)を、混合物の混合および泡立てに使用した。ブレンダの泡立て速度には2つのポジションがあり、1つはターボ速度で1つはより低速に規定されていた。反応槽の蓋は、CO2ガス用に1つ、N2および溶液添加用に1つ、ならびに泡立て器用に1つの入口を有していた。
【0125】
Eフラスコに、36.095gのナノフィブリル溶液(脱イオン水中1.5%、0.541gのナノフィブリル)を投入し、7.3gのNaOH(酸性基の51.7%の中和)をEフラスコに少しずつ添加し、全てのNaOHペレットが溶解するまで機械的撹拌を行った。
【0126】
反応槽を冷却浴(冷水+氷)内に設置し、N2ガスで数分間パージした。槽に16.8gのアクリル酸モノマーを投入し、ナノフィブリル-NaOH溶液を滴下により添加し、磁気撹拌器を使用して溶液を混合した。その後、棒磁石を取り除き、泡立て器を使用して混合および泡立てを行った。3.3gの界面活性剤、SDSを混合物に添加し、数分後にMBA-アクリル酸モノマー溶液、0.198gのMBA(アクリル酸モノマーの総モルに対して0.4mol%)/8.2gのアクリル酸を、2段階で添加した。泡立てをターボ速度で10分間行い、その後15.04gのマイクロ繊維溶液(脱イオン水中5%、0.752gの繊維)を添加した。5分間の泡立て後、開始剤VA-044(0.125g、モノマーのモルに対して0.11mol%)を、Ultra Pure Elga水中3.8 wt%溶液として添加し、より低速での混合を5分間行った。次いで、18.0gのマイクロ繊維溶液(脱イオン水中5%、0.9gのマイクロ繊維)を添加し、泡立てをターボ速度で5分間継続した。槽を冷却浴から取り外し、モノマー発泡体を角型プラスチック瓶(10×10cm)に慎重に移した。蓋を使用して瓶を閉じ、加熱炉内で65℃の温度で1時間、重合を行った。その後、蓋を開けたが瓶からは取り外さずに、反応を65℃の温度で4時間進行させた。
【0127】
(実施例6)
試料F3: アクリル酸モノマー重量に対し5.1 wt%ナノフィブリルおよび5 wt%マイクロ繊維
この合成においては、CO2およびN2の両方を使用した。CO2は、物理的起泡剤として使用し、反応混合物の底部の入口から導入して混合物中に下からガスをフローさせ、一方N2を使用して、起泡プロセス中に混合物の上部からガスが抜けるのを回避した。
【0128】
水の量を増加させることなくナノフィブリルの量を増加させることができるように、ある特定の量のナノフィブリル溶液(脱イオン水中1.5%)を濾過した。この目的のため、Eフラスコ、漏斗および濾紙を使用した。濾過後もナノフィブリルはまだ湿潤しており、水を含有していた。この実施例において、混合物の効率的な混合/泡立てのために、ちょうど泡立て器の自由回転が可能となるのに十分な大きさの反応槽を使用した。反応槽の蓋は、CO2ガス用に1つ、N2および溶液添加用に1つ、ならびに泡立て器用に1つの入口を有していた。泡立て器は、電気モータに直接取り付けることができる金属棒に永久的に固定された。
【0129】
Eフラスコに、25.354gのナノフィブリル溶液(0.683gのナノフィブリル)を投入し、9.07gのNaOH(酸性基の65.3%の中和)をEフラスコに少しずつ添加し、全てのNaOHペレットが溶解するまで磁気撹拌を行った。Eフラスコを冷却浴に導入し、16.25gのアクリル酸モノマーを滴下により添加した。
【0130】
反応槽を冷却浴(冷水+氷)内に設置し、CO2ガス(6B)で数分間パージして空気を排除した。槽に19.05gのナノフィブリル溶液(0.594gのナノフィブリル)および0.25gのPEG 200(アクリル酸モノマーの総量に対し1 wt%)を投入した。300rpmで3分間混合を行い、次いでナノフィブリル-NaOH溶液を添加した。このステップにおいて、N2ガスもまた系内に導入したが、混合物の表面上だけであった。その後、MBA-アクリル酸モノマー溶液、0.196gのMBA(アクリル酸モノマーの総モルに対し0.4mol%)/8.8gのアクリル酸を、2段階で添加した。次いで、2.25gの界面活性剤、Tween 80を添加し、モータの速度を500rpmに15分間上昇させ、次いで25.01gのマイクロ繊維溶液(脱イオン水中5%、1.25gのマイクロ繊維)および0.66gのTween 80を添加し、泡立てを500rpmで5分間継続した。開始剤VA-044(0.127g、アクリル酸モノマーのモルに対して0.11mol%)を、Ultra Pure Elga水中3.8 wt%溶液として添加し、240rpmでの混合を3分間行った。モノマー発泡体を角型プラスチック瓶(20×12cm)に慎重に移した。槽を蓋で覆い (閉じない)、加熱炉内で65℃の温度で2時間、重合を行った。
ナノフィブリルの総量は2.527(モノマーの重量に対し10 wt%)であった。
【0131】
I-d) 超吸収ポリマー複合材の特性決定
ナノフィブリルおよびマイクロ繊維の直径の測定
ナノフィブリルおよびマイクロ繊維の直径を測定する際、フリーズドライした試料を使用した。電界放射電子銃(FEG)を備えたFEI Quanta 200環境制御型走査電子顕微鏡(ESEM)を使用して、フリーズドライした試料を特性決定した。試料の小片をメスで切断し、標準的なアルミニウムスタブ上のカーボンテープ片上に設置した。画像化中の帯電効果を回避するために、低真空モードで、10kVの加速電圧および0.98トルの圧力でESEMを操作した。ナノフィブリルおよびナノ繊維の直径は、40000倍以上の倍率で撮影した画像から測定した。
【0132】
次いで、ESEM写真を使用して、ナノフィブリルおよびマイクロ繊維の直径を推定した。手順は以下の通りであった。
Optimas 6.51で画像を開く。
空間較正を行って有効な較正を得る。
ナノフィブリルおよびマイクロ繊維を視覚的に測定する。
【0133】
Optimas 6.51ソフトウェアは、PARAMETER社Box 27186、102 52 Stockholmから得た。我々の画像は、個々のナノフィブリル/マイクロ繊維および/またはナノフィブリル/マイクロ繊維のクラスタの組合せであることに留意されたい。
【0134】
ESEM画像を使用した。直径の推定を改善するために、原子間力顕微鏡(AFM)を使用することができる。AFMまたは走査型力顕微鏡(SFM)は、非常に高解像度型の走査プローブ顕微鏡であり、コンマ数ナノメートルの解像度を示す。
【0135】
SAP粒子およびSAP発泡体の形態の特性決定
調製した材料の表面および断面の形態を、Environmental Scanning Electron Microscopy、Philips ESEM XL-30 TPMで試験した。
【0136】
I-e) 吸収特性の測定
0.9% NaCl水溶液および脱線維素ヒツジ血液を、試験液として使用した。脱線維素ヒツジ血液は、National Veterinary Institute (Statens Veterinarmedicinska Anstalt、751 89 Uppsala、Sweden)から購入した。
【0137】
吸収特性の測定前に、3日間脱イオン水中でゲルを洗浄し、水を毎日交換して、抽出可能な材料を除去した。次いで、一定重量に達するまで試料を加熱炉内で40℃で乾燥させた。その後、衛生吸収性物品に使用される一般的サイズ間隔である140〜850μmを網羅するように、試料を粉砕および篩い分けした。
【0138】
1) 0.9% NaCl水溶液中の荷重下吸収(AUL)
標準試験WSP 242.2(05)、圧力下での吸収の重量測定に従い、試験を行った。ガラスフィルタプレートをペトリ皿内に設置し、液体の表面がガラスフィルタの表面と同じレベルに達するまで、NaCl溶液を添加する。ガラスフィルタと同じ寸法の濾紙をその上に設置し、完全に湿潤させた。
【0139】
140〜850μmのサイズのSAP粒子0.9gを、Plexiglasシリンダのフィルタスクリーン上に分布させる。Plexiglasピストンをシリンダ内に設置し、アセンブリ全体を秤量する。シリンダアセンブリを濾紙上に設置し、同時に重り(2.5kPa)をピストン内に設置した。60分後、シリンダアセンブリを濾紙から引き上げ、重りを取り除き、シリンダアセンブリを再び秤量する。この試験において、試料のいくつかを60分後に分析した。
【0140】
乾燥ポリアクリル酸のグラム当たりのAULは、以下の式に従い計算した。
【0141】
【数1】

【0142】
式中、
mw=吸収後の試料を含むシリンダアセンブリの重量
md=乾燥試料を含むシリンダアセンブリの重量
ms=乾燥試料の重量
【0143】
以下に示す結果のそれぞれは、3回測定の平均値である。
【0144】
以下の表は、0.9% NaCl水溶液中で測定された粒子のAUL値(乾燥ポリアクリル酸のグラム当たりの吸収された液体のグラム)を示す。
【0145】
【表1】

【0146】
試料S2は、0.9% NaCl水溶液中で測定され、試料S1よりも若干低いAUL値を示し、且つ試料S3よりも実質的に高い値を示す。試料S2中のナノフィブリルの存在は、試料S3と比較してAUL値を増加させる。試料S2中のナノフィブリルの存在は、AULの点で、試料S1と比較してより低い架橋度を補うことができる。
【0147】
2) 脱線維素ヒツジ血液中の荷重下吸収(AUL)
結晶化ボウル(crystallization bowl)(内径75mm)に、40mlの脱線維素ヒツジ血液を投入する。140〜850μmのサイズのSAP粒子0.15gを、Plexiglasシリンダ(内径25mm)のフィルタスクリーン上に分布させる。重り(2kPa)をシリンダ内に設置し、アセンブリ全体を秤量し、穴の開いた金属シリンダホルダ上に設置し、次いでヒツジ血液中に含浸する。20分間の吸収後、装置を血液から引き上げ、10分間血液を切り、次いでアセンブリを再び秤量した。
【0148】
乾燥ポリアクリル酸のグラム当たりのAULを、式1に従い計算した。以下に示す結果のそれぞれは、3回測定の平均値である。
【0149】
以下の表は、脱線維素ヒツジ血液中で測定された粒子のAUL値(乾燥ポリアクリル酸のグラム当たりの吸収された液体のグラム)を示す。
【0150】
【表2】

【0151】
表に見ることができるように、試料S2は、試料S1およびS3と比較して、最も高い脱線維素ヒツジ血液中で測定されたAUL値を示す。ナノフィブリルの存在は、試料S2に、架橋度に関わらず最も有利な荷重下吸収値を提供する。
【0152】
I-f) 機械的特性の測定
発泡体の機械的強度の決定のための乾燥発泡体試料の膨潤
乾燥試料を秤量した。次いで、試料の乾燥重量に同じ係数を乗じ、同じ膨潤度を有する試料を得た。
【0153】
例:
M乾燥発泡体=0.230g
VH2O=0.230*71=16.33g
乾燥試料を小型の槽内に設置し、16.33gの脱イオン水を添加し、液体の蒸発を回避するために槽に覆いをした。試料を室温で8時間放置し、次いで一軸機械圧縮分析に供した。全ての試料は、乾燥重量の71倍まで膨潤した。それぞれの膨潤した試料の断面積は、22.1±0.9cm2と測定された。
【0154】
膨潤した状態での発泡体の機械的特性は、Lloyd LRX引張試験機で評価した。引張試験機を、機械の自動制御、試験設定のプログラミング、および荷重-変形曲線(荷重、伸長/圧縮)の記録のために、Ondio V4.0ソフトウェアを装備したコンピュータに接続する。
【0155】
プローブは、それぞれ19.7cm2の表面積を有する、1つの固定Plexiglasプレートおよび1つの可動Plexiglasプレートを備えていた。
圧縮試験は、ロードセル(50N; 101.1%精度)を使用して、23±1℃およびR.H. 50±10%で行った。測定は、50mm/分の一定のクロスヘッド速度で行った。
【0156】
膨潤した発泡体を、機器の平行なPlexiglasプレート間に慎重に位置付けた。膨潤した発泡体の初期高さの自動測定に0.05Nの前負荷力を使用し、試料の初期高さの50%圧縮を、一定のクロスヘッド速度で行った。圧縮を力(N)対伸長として監視した。
【0157】
膨潤発泡体の初期高さの50%圧縮での以下の力の値が判明した。全ての試料が、試料の乾燥重量の71倍の含水量まで膨潤した。
【0158】
【表3】

【0159】
試料F3は、他の発泡体試料と比較して、最も高い圧縮後荷重値を示している。したがって、試料中のナノフィブリルの含量が高いほど、50%圧縮後の荷重の値がより高い。
【0160】
セクションII
II-a) ナノフィブリル化(NFC)およびマイクロフィブリル化(MFC)セルロースの懸濁液の特性決定
材料
以下の化学物質は、分析グレードであり、供給されたものをそのまま使用した;アクリル酸[AA](Fluka社製、Belgium)、N,N'-メチレンビスアクリルアミド[MBA](Sigma-Aldrich社製、Germany)、塩化ナトリウム(Sigma-Aldrich社製、Germany)、水酸化ナトリウム(Sigma-Aldrich社製、Germany)、過硫酸カリウム[KPS](Sigma-Aldrich社製、Germany)。ナノフィブリル化セルロース[NFC]およびマイクロフィブリル化セルロース(MFC)は、Paper and Fibre Research Institute PFI社、Norwayから購入した。使用したH2Oは、Milli-Qグレードであった。
【0161】
未処理および濾過後のNFC+MFC懸濁液は、両方とも、光学顕微鏡およびAFMを使用して特性決定した。濾過後の懸濁液は、透過率分析によりさらに特性決定した。
【0162】
濾過後のNFCおよびMFCの懸濁液は、30mlのH2Oで事前に洗浄した0.2μmナイロン膜を備える25mmシリンジフィルタ(VWR社製)を使用して調製した。
【0163】
光学顕微鏡分析には、顕微鏡デジタルカメラシステムDP12を備えるOlympus BH2リサーチ顕微鏡(Olympus社製)を透過モードで使用した。未処理NFC+MFC懸濁液に対しては、0.03%w/vおよび0.8%w/vの濃度で、標準顕微鏡スライドガラスおよびカバースリップの間に設置して画像を記録した。濾過後の懸濁液に対しては、濾過および乾燥後のH2Oを対照として使用し、標準顕微鏡スライドガラス上で室温で乾燥させた試料に対し画像を記録した。
【0164】
AFMにおいて分析されるべき未処理NFC+MFC懸濁液試料は、0.16%w/v、0.016%w/vおよび0.0016%w/vの繊維濃度まで懸濁液を希釈することにより調製した。未処理および濾過後のNFC+MFCの両方において、新しく劈開した雲母チップに1滴の試料を加え、室温で乾燥させ、濾過後試料に対しては濾過後の水を対照として使用した。AFM分析は、G型スキャナを備えるDigital Instrument Nanoscope IIIa(Digital Instrument Inc.製)を使用して行った。使用したカンチレバーは、Mikro Maschケイ素カンチレバーNSC 15であった。AFMは、タッピングモードで約330kHzの共振周波数で操作し、走査周波数は1Hzであり、測定は空気中で行った。
【0165】
濾過後のNFC+MFC懸濁液の透過率分析においては、Cintra 40分光光度計(GBC社製)を使用して、石英キュベット内の試料を透過した光の消光を200〜800nmの間隔内の波長の関数として記録し、濾過後のH2Oを対照として使用した。
【0166】
未処理懸濁液の目視検査の間、少量の繊維構造を肉眼で検出することができ、懸濁液は不透明に見えることが分かった。濾過後の懸濁液は、完全に透明に見えた。
【0167】
NFCおよびMFCの湿潤懸濁液の光学顕微鏡検査では、図1a中の例示的画像において観察され得るように、検出可能な長さのスケールで極めて不均質な懸濁液であることが明らかとなった。濾過、続いて乾燥させたNFCおよびMFCの懸濁液は、乾燥前に液滴に覆われた領域全体にフィルム状凝集体を残留させた。凝集領域において、様々なサイズの構造を観察することができ、多くは明確な方向性および均一なフラクタル状構造を有していた。構造の範囲、サイズおよび形状は、試料ごとに異なることが判明した。これは、おそらく、濾過後の試料中のMFCおよびNFCの異なる濃度およびサイズ分布、ならびに試料ごとの乾燥のばらつきに起因するものであった。例示的画像は、図1bに見ることができる。濾過後の水による対照は、観察可能ないかなる構造も示さず、無視できる凝集体のみを示したが、これはおそらく濾過または乾燥からのアーチファクトである。0.2μmフィルタを通して濾過されたNFC+MFC懸濁液からの大きな凝集体の形成および形成された構造は、ナノスケールのサイズを有する構造の存在を明確に示している。
【0168】
NFCおよびMFCの湿潤した懸濁液のAFM分析では、それらが、セルロースナノ結晶ではあるが、大量のナノ粒子とともにより大きな繊維および繊維構造を含有していることが明らかとなった。個々のナノ粒子、繊維およびより大きな繊維構造を示す例示的画像を、図2aに示す。z方向における典型的な寸法は、ナノ粒子および個々の繊維では約2〜5nm、繊維バンドルでは約30〜60nmであることが判明した。しかしながら、観察される構造は、場所および調製手順ごとに大きく変動し、したがって上述の間隔に含まれない構造が存在する。観察されるナノ粒子は、xy面内で数十ナノメートルの直径を有していたが、これは、球状セルロースナノ結晶に関して他の研究者により報告された直径と類似している。ナノ粒子の厳密な直径は推定されていない。これは、AFMチップが、xy面内でアーチファクトを生成することが知られているためである。しかしながら、AFMは、z方向においては極めて高い精度を有しており、推測されるセルロースナノ結晶の構造は、幾分扁平であると結論付けることができる。
【0169】
濾過後のNFCおよびMFCの懸濁液、ならびに濾過後の水対照のAFM分析では、濾過後のNFCおよびMFCの懸濁液が、ナノ粒子および繊維を含有することが明らかとなった(図2bおよびc)。z方向の寸法は、ナノ粒子では約1〜20nm、および繊維では1〜2nmの範囲であった。前述したように、上述の間隔に含まれない構造もまた存在し得る。水対照のAFM分析では、試料の乾燥後、細孔を備える薄いフィルムが形成されたことが明らかとなった(結果は示されていない)。したがって、図2bおよびc中の空洞に対応する暗い領域は、このフィルムから得られたものであり、濾過後の懸濁液の影響ではない。
【0170】
濾過後の懸濁液の透過率分析は、波長の低下とともに増加する消光を示した。粒子を含有する媒体を通した透過率は、ランベルト-ベールの法則により、消光係数を散乱係数と置き換え、以下の表記で説明することができる:
A=αscal (3)
式中、Aは吸光度であり、lは媒体を通る距離であり、αscaは散乱係数であり、散乱係数は、微小サイズ粒子からのレイリー散乱においては波長の4乗に反比例する。
【0171】
濾過後の懸濁液の光学顕微鏡検査、AFMおよび透過率試験からの結果を考慮すると、NFCおよびMFCの懸濁液は、ナノスケールのサイズを有する構造を幾分多量に含有すると結論付けられる。10倍、100倍および1000倍希釈試料のAFM分析において観察される構造、ならびに光学顕微鏡を使用して濾過および乾燥後のNFC+MFCに対して観察される構造の差は、乾燥後、ナノ粒子が、濃度依存的により大きな構造に凝集することを示している。特性決定に基づき、NFC/MFC混合物は極めて不均質であり、ナノメートルから数百マイクロメートルの範囲の構造を含有することが認識される。
【0172】
II-b) ヒドロゲルの合成
AAに対し0mol%から5mol%の範囲の架橋度、および0%w/vから0.75%w/vの範囲のMFC+NFCの濃度を有する、25%w/vのAAを含有するヒドロゲルを、以下のようなフリーラジカル共重合により合成した:AAをNaOHで滴下により60mol%まで中和した。中和したAAを、MBA、KPS、H2OおよびNFC懸濁液(1.6%w/v)と混合した。21mMの濃度でKPSを使用し、所望の最終濃度に従うMBAおよびNFC+MFC懸濁液の量を添加し、最終体積に達するまでH2Oを添加した。混合は全て、撹拌しながら氷上で行った。混合後、撹拌下で氷上に維持しながら、30分間試料にN2ガスを吹き込み、試料からO2を除去した。次いで試料を速やかに7×40mmオートサンプラバイアル(NTK KEMI社製)に移し、これを70℃の水浴内に6時間設置して合成溶液を重合させた。最後に、試料を室温で一晩静置してから、バイアルを破壊してさらに分析を行った。
【0173】
II-c) 機械的測定および膨潤分析
ヒドロゲルの機械的特性および膨潤特性に対するNFC+MFCの効果を評価するために、一連の試料を試験した。固定された周囲のマトリックス中における特性に対するNFC+MFCの量の効果を評価するために、この一連の試料は、アクリル酸(AA)に対し0.5mol% N,N'-メチレンビスアクリルアミド(MBA)架橋剤の架橋度、および試料の乾燥重量当たり0%から2.5%の範囲のNFC+MFC濃度でヒドロゲルを含有した。
【0174】
平衡膨潤および弾性係数
平衡膨潤ゲルに対するNFC+MFCの効果を確定するために、試料を0.9%NaCl溶液中に浸漬した。生物学的関連性のため、また脱イオン水中で膨潤した超吸収体は、一般に膨潤の間に破断するため、指定のイオン強度を選択した。
【0175】
膨潤試験により、NFC+MFCの総含量の増加に伴い平衡膨潤が減少することが明らかとなった(図5)。
【0176】
試料の膨潤後の弾性係数は、図6に示されるように、NFC+MFCの質量の増加に伴い増加を示した。
【0177】
また、試験により、NFC+MFCを含有する試料においては、NFC+MFCを含まない対応する試料と比較して、破断時歪みが減少することなく破断時応力(圧縮強度)σfが増加することが示された(以下のTable 1(表4)を参照)。
【0178】
機械的測定
アスペクト比>1.5となるようにゲルを円筒状に切断した。しかしながら、稀に、粗い試料端部の除去に起因してより小さいアスペクト比が得られた。異なる試料の弾性係数Gを決定するために、一軸圧縮試験を行った。試料を0.1mm・s-1で圧縮し、得られた力を5kgのロードセル容量を有するTA-HDi(登録商標)(Stable Microsystems社製)を使用して記録した。使用した圧縮プローブは、25mm円筒状アルミニウムプローブ(Stable Microsystems社製)であった。20±0.5℃で測定を行った。ガウス鎖の一軸圧縮においては、以下の式が妥当する:
P=G(α-α-2) (5)
式中、Pは圧力であり、Gは弾性係数であり、αは初期長さに対する変形長さの比である。
【0179】
20%までの変形率において、弾性係数は、P対(α-α-2)のグラフの線形領域の傾きとして決定した。低歪みにおける非線形データは、試料端部の不完全な構造から生じるものとして無視した。
【0180】
試料の圧縮強度は、以下のように計算した:
σ=F/A (6)
式中、Fは破断時の力であり、Aは、一定体積の仮定に基づき計算される破断時の面積であり、以下の通りである:
【0181】
【数2】

【0182】
式中、A0は初期面積であり、αfは破断時の変形率である。
【0183】
合成後および平衡膨潤後のゲルの破断特性のデータを、Table 1(表4)に示す。
【0184】
【表4】

【0185】
膨潤分析
円筒の最上部を切断して切り捨て、円筒の重量w0を記録することにより、試料を膨潤用に調製した。膨潤実験は、900mlの0.90%w/v NaCl中、20±0.5℃で行った。1週間後、それ以上の全体的吸収が検出することができなかったため、試料が平衡膨潤に達したものとみなした。平衡重量weqを記録した。他の研究者により行われたように、合成からの100%の収率を仮定して、合成混合物中の成分の質量、ならびに試料および合成混合物の初期重量w0の間の重量比から、以下のように試料の乾燥重量を計算した。
m乾燥=mAA+mNaA+mMBA+mMFC (8)
式中、m乾燥は試料の理論上の乾燥重量であり、mAAはAAの質量であり、mNaAはアクリル酸ナトリウムの質量であり、mMBAはMBAの質量であり、mNFCは試料中のセルロースフィブリル(NFC+MFC)の質量である。次いで、膨潤度Qを以下のように計算した:
【0186】
【数3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
超吸収ポリマーとセルロース系フィブリルとを含む超吸収ポリマー複合材であって、セルロース系フィブリルは、100nm以下の直径を有するナノフィブリルであることを特徴とする、超吸収ポリマー複合材。
【請求項2】
100μmを超える平均直径を有するセルロース系繊維を含有しない、請求項1に記載の超吸収ポリマー複合材。
【請求項3】
100nmを超えるが100μm以下の直径、好ましくは100nmを超えるが10μm以下の直径を有するセルロース系マイクロ繊維をさらに含む、請求項1または2に記載の超吸収ポリマー複合材。
【請求項4】
超吸収ポリマーの0.1〜20wt%、好ましくは0.5〜15wt%、より好ましくは0.5〜5wt%のナノフィブリル含量を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の超吸収ポリマー複合材。
【請求項5】
超吸収ポリマーの0.1〜20wt%、好ましくは0.5〜15wt%のマイクロ繊維含量を有する、請求項3または4に記載の超吸収ポリマー複合材。
【請求項6】
超吸収ポリマーが、CMC(カルボキシメチルセルロース)、またはアクリル酸およびその塩、メタクリル酸およびその塩、ならびにそれらの組合せからなる群から得られる反復単位を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の超吸収ポリマー複合材。
【請求項7】
有機架橋剤を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の超吸収ポリマー複合材。
【請求項8】
超吸収ポリマーの0.1〜20wt%、好ましくは0.5〜15wt%、より好ましくは0.5〜5wt%の有機架橋剤含量を有する、請求項7に記載の超吸収ポリマー複合材。
【請求項9】
粒子の形態である、請求項1から8のいずれか一項に記載の超吸収ポリマー複合材。
【請求項10】
発泡体の形態である、請求項1から9のいずれか一項に記載の超吸収ポリマー複合材。
【請求項11】
ナノフィブリルが、発泡体の孔壁内に組み込まれている、請求項10に記載の超吸収ポリマー複合材。
【請求項12】
発泡体が、細孔サイズ勾配を有する、請求項10または11に記載の超吸収ポリマー複合材。
【請求項13】
発泡体が、可塑剤、界面活性剤および発泡剤からなる群から選択される1種または複数種の物質を含む、請求項10から12のいずれか一項に記載の超吸収ポリマー複合材。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の超吸収ポリマー複合材を備える吸収構造を有する、吸収性物品。
【請求項15】
おむつ、パンツ型おむつ、失禁ガード、生理用ナプキン等、ならびに、液体透過性トップシート、液体不透過性バックシートおよびその間に配置された前記吸収構造を備える同様のものである、請求項14に記載の吸収性物品。
【請求項16】
請求項1から13のいずれか一項に記載の超吸収ポリマー複合材を作製するための方法であって、
a)溶媒中に懸濁された、100nm以下の直径を有するセルロース系ナノフィブリルを提供するステップと、
b)任意選択で、溶媒中に懸濁された、100nmを超えるが100μm以下の直径を有するマイクロ繊維を添加するステップと、
c)1種または複数種のモノマーを添加するステップと、
d)中和剤を添加するステップと、
e)架橋剤を添加するステップと、
f)開始剤を添加するステップと、
h)モノマーと架橋剤とを重合させて、超吸収ポリマー、セルロース系ナノフィブリルおよび任意選択でマイクロ繊維を含む超吸収ポリマー複合材を形成するステップとを含み、
ステップ(a)、(b)、(c)、(d)、(e)および(f)は、任意の順番で行うことができる、方法。
【請求項17】
開始剤が、酸化開始剤、アゾ開始剤、光開始剤および/または熱開始剤からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
(i)複合材を粒子として形成するステップをさらに含む、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
請求項16のステップ(a)〜(f)の後であるがステップ(h)の前に、(g)1種または複数種のモノマーとナノフィブリルおよび/またはマイクロ繊維との混合物を、発泡体として形成するステップをさらに含む、請求項16または17に記載の方法。
【請求項20】
可塑剤、界面活性剤および発泡剤からなる群から選択される1種または複数種の物質を添加するステップをさらに含む、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
粘度調整剤を添加するステップをさらに含む、請求項18から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
吸収構造を作製するための方法であって、請求項16から21のいずれか一項に記載の方法を実行するステップと、得られた超吸収ポリマー複合材、発泡体または粒子を、前記吸収構造内に組み込むステップとを含む方法。
【請求項23】
超吸収ポリマーのゲル強度を増加させるための、セルロース系ナノフィブリルの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−512739(P2012−512739A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542069(P2011−542069)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際出願番号】PCT/SE2009/051446
【国際公開番号】WO2010/071584
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(506215320)エスセーアー・ハイジーン・プロダクツ・アーベー (157)
【Fターム(参考)】