説明

超清浄なフルオロポリマー

【課題】従来のフルオロポリマーの有する問題点を解決した、超清浄なフルオロポリマーの提供。
【解決手段】フルオロポリマー分散体をフルオロポリマーと反応しないガスに50〜400バール(5×106〜4×107Pa)の圧力で接触させる、フルオロポリマーを凝固させる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超清浄なフルオロポリマー、特に熱可塑性でエラストマーのフルオロポリマー、このようなフルオロポリマーを組み込んだ組成物、このようなフルオロポリマーを用いた物品、そしてこのようなフルオロポリマーの製造および使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高純度フルオロポリマーは、多くの産業で使用される。2〜3例を挙げると、それらは特にエレクトロニクス、半導体、光学、医療、および製薬産業で使用するのに好まれる。これらのポリマーは、比較的低レベルの抽出性金属および金属化合物を有する。
【0003】
高純度フルオロエラストマー組成物については既知である。
(A)過酸化物硬化性エラストマーフルオロポリマー、
(B)有機酸受容体、
(C)有機過酸化物、
(D)有機過酸化物のための架橋助剤、および
(E)フルオロポリマーミクロパウダー充填剤
を含むエラストマー組成物を開示するEP−B−0 708 797を参照されたい。この組成物はカーボン充填剤を含まず、500ppb未満の抽出性金属および金属化合物を有すると言われる。この金属および金属化合物の低含有量は、金属を含まない酸受容体、架橋助剤および充填剤を選択することで達成される。酸受容体は概して有機強塩基である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような有機酸受容体を使用しなくても高純度フルオロポリマー、および対応するフルオロポリマー組成物が実現可能なことが分かった。
以上のように、本願発明の目的は、従来のフルオロポリマーの有する問題点を解決した、超清浄なフルオロポリマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明は、フルオロポリマー分散体をフルオロポリマーと反応しないガスに50〜400バール(5×106〜4×107Pa)の圧力で接触させる、フルオロポリマーを凝固させる方法に関する。
【0006】
本願発明に関連する発明の態様としては、
塩を含まないフルオロポリマーを調製する方法と、
このようにして得られたフルオロポリマーと、
このようなフルオロポリマーを含有する組成物と、
このようなフルオロポリマーまたはこのような組成物を使用する方法と、
前記フルオロポリマーまたはこのような組成物物品、あるいはそれらで被覆された物品と、を含む。
前記塩を含まないフルオロポリマーを調製する方法は、
水性エマルジョン重合法によって1つ以上のフルオロモノマーを重合するステップと、
このようにして得られるラテックスから、本質的にNH4+、H+、およびOH-と異なるあらゆるイオンを除去するステップと、
フルオロポリマーを本質的にイオンの添加なしに凝固させるステップと、
を含む。
この発明のポリマーは、本質的にNH4+、H+、およびOH-以外のあらゆるイオンを含まないエマルジョン重合されたフルオロポリマーを含む。
【0007】
好ましいフルオロポリマーは、熱可塑性ポリマーまたはエラストマーポリマーのどちらかである。好ましいエラストマーフルオロポリマーは、過酸化物硬化性エラストマー、あるいはペンダントのニトリル基を有するエラストマーなどの硬化性エラストマーである。
【0008】
この発明の硬化性フルオロポリマー組成物は、フルオロエラストマーおよび適切な硬化剤を含む。過酸化物硬化性エラストマーを使用する場合、硬化性エラストマー組成物は、
a)本質的にNH4+、H+、およびOH-以外のイオンを含まない過酸化物硬化性フルオロエラストマーと、
b)フルオロエラストマーのための有効量の過酸化物硬化剤と、
c)任意に、そして好ましくは、過酸化物のための架橋助剤(coagent)と、
d)任意に、好ましくは本質的にNH4+、H+、およびOH-以外のイオンを含まない部分的に結晶質のフルオロポリマーと、
を含む。
【0009】
ニトリル基含有エラストマーを使用する場合、硬化性エラストマー組成物は
a)ニトリル基を有し、本質的にNH4+、H+、およびOH-以外のイオンを含まない硬化性フルオロエラストマーと、
b)有効量のアンモニア発生硬化系と、
c)任意に、本質的にNH4+、H+、およびOH-以外のイオンを含まない部分的に結晶質のフルオロポリマーと、
を含む。
【0010】
この発明のポリマーまたはポリマー組成物を使用する方法は、ポリマーまたはポリマー組成物に表面を接触させるステップと、続いて任意にポリマーまたはポリマー組成物を硬化させ、あるいは別のやり方で基材に固定させるステップと、を含む。
【0011】
この発明の物品は、
a)この発明の硬化したエラストマー組成物を含む付形物品、および
b)この発明の組成物で被覆された物品
を含む。
【0012】
本発明で使用されるエマルジョン重合法については既知である。この方法では、比較的多量のペルフルオロオクタン酸の塩などのフッ素化された乳化剤を含有する水性溶媒中で、穏やかに撹拌しながらフッ素化されたモノマーを重合することで水性コロイド分散体が得られる。この方法は、「Modern Fluoropolymers」、High Performance Polymers for Diverse Applications、John Scheirs編、John Wiley & Sons(1997)、特に225〜227ページで詳細に述べられている。
【0013】
エマルジョン重合は、懸濁重合法とは区別される。後者は乳化剤および激しい撹拌をほとんどあるいは全く使用せず、顆粒状物品が得られる。
【0014】
通常エマルジョン重合は、5〜30バール(5×105〜3×106Pa)の圧力範囲内、および5〜100℃の温度範囲内で実施される。概してエマルジョン重合法では、顕著な量の補助剤が使用される。
【0015】
概して乳化の必須条件は、テロゲンを生じない乳化剤(US−A−2 559 752)の使用であるとされている。既述のように、ほとんどの場合過フッ素化されたアルカノール酸である、フッ素化された乳化剤が使用される。概してそれらはポリマーの0.02〜3重量%を構成する。
【0016】
重合法で使用するさらに別の材料は、重合を開始するための水溶性開始剤である。一般に、頻繁にはヒドロキシメタンスルフィン酸の亜硫酸水素塩、またはスルフィナート(US−A−5 285 002およびUS−A−5 378 782)、またはナトリウム塩(商品名RONGALITの下に市販される)などのさらに別の架橋助剤の存在下で、ペルオキソ硫酸の塩が適用される。これらの開始剤および乳化剤は、全て最も良い効率を示す最適pH範囲を有することから、緩衝剤が使用される。緩衝剤としてはリン酸、酢酸または炭酸緩衝剤あるいはあらゆるその他の酸、またはアンモニアあるいはアルカリ金属水酸化物などの塩基が挙げられる。
【0017】
開始剤および緩衝剤の濃度範囲は、水性重合溶媒を基準にして0.05〜5重量%で変化しても良い。
【0018】
この発明のフルオロポリマーは、1つ以上のフルオロオレフィンモノマー、そして任意に炭化水素オレフィンモノマーのエマルジョン重合された生成物を含む。概してフルオロオレフィンモノマーは、主鎖中に2〜8個の炭素原子を有する。このようなフルオロオレフィンモノマーの例としては、テトラフルオロエチレン(TFE)と、フッ化ビニリデン(VF2)と、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)と、ペルフルオロアルキルビニルエーテル(VE)などのフッ素化されたエーテルとが挙げられる。有用な炭化水素オレフィンの例としては、エチレンおよび/またはプロピレンと、フルオロポリマーの硬化のための「硬化部位」を提供できる臭素、ヨウ素またはニトリル基を含有するモノマーなどの「硬化部位モノマー」とが挙げられる。
【0019】
過酸化物硬化性フルオロエラストマーの場合、好ましくはフッ素である別のハロゲンを含有する臭素含有オレフィンなどの臭素含有硬化部位コモノマーが好ましい。例としては、ブロモトリフルオロエチレン、4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1、およびその内容を本願明細書に引用したUS−A−4 035 565で述べられるその他多数である。発明で有用な臭素化フルオロビニルエーテルとしては、US−A−4 745 165で例証されるCF2BrCF2OCF=CF2のような、CF2Br−Rf−O−CF=CF2(式中、Rfは−CF2−などの炭素原子4個までの完全にフッ素化されたアルキレンである。)、およびUS−A−4 564 662で例証されるようなCH3CF=CFBrまたはCF3CH2OCF=CFBrなどのROCF=CFBrまたはROCBr=CF2(式中、Rはそれぞれが炭素原子4個までを有する低級アルキル基またはフルオロアルキル基である。)のタイプが挙げられる。臭素含有単位の選択は、コストと入手しやすさに加えて主要なモノマーとの共重合性、および低い分枝傾向に基づく(その内容を本願明細書に引用したUS−A−5 007 359参照)。
【0020】
またニトリル含有硬化部位モノマーを使用しても良い。好ましい例は、CF2=CFO(CF2mCN、CF2=CFO[CF2CF(CF3)O]q(CF2O)sCF(CF3)CN、CF2=CF[OCF2CF(CF3)]rO(CF2tCN(式中、m=2〜12、q=0〜4、r=1〜2、s=0〜6、およびt=1〜4である。)などのニトリル含有フッ素化オレフィンおよびニトリル含有フッ素化ビニルエーテルである。このようなモノマーの代表例としては、ペルフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン)、CF2=CFO(CF25CN、CF2=CFO(CF23OCF(CF3)CN、CF2=CF−O−(CF24−O−CF(CF3)CN、およびCF2=CF−0−(CF23−CNが挙げられる。
【0021】
はじめに述べたように、発明は重合によって得られるラテックスから、本質的にNH4+、H+およびOH-以外のあらゆるイオン、好ましくはH+およびOH-以外のあらゆるイオンを除去することを必要とする、塩を含まないフルオロポリマーに関する。イオンの除去は透析によって達成できる。前記イオンの好ましい除去方法は、イオン交換である。この方法については、例えばUS−A−4 282 162、US−A−5 463 021またはDE−A−20 44 986から既知であり、さらに別の方法についてWO−A−99/62830およびWO−A−99/62858で開示されている。
【0022】
イオンの除去に続いて、イオンの添加なしにラテックスからフルオロポリマーが凝固する。これはUS−A−5 708 131で述べられるように、既知の凍結凝固法によって達成される。この方法では、水性ラテックス全体が凍結されてポリマーが凝固する。この方法はバッチ様式で、あるいは連続的に実施できる。分離したポリマーは既に清浄であるが、引き続くいくつかの水による洗浄ステップが有益かもしれない。
【0023】
イオン添加なしの凝固のための別の方法は、US−A−5 463 021で述べられるようないわゆる熱可塑性フッ素樹脂のための機械的凝固である。フルオロサーモプラスト分散体を最初に200〜400バール(2×107〜4×107Pa)までの圧力に圧搾し、次にノズルまたはスリットを通して除圧することで凝固を達成する。高圧はいわゆるホモジナイザーによって生成される。この技術は、装置が目詰まりすることからエラストマー分散体に対しては役に立たない。
【0024】
DE...........で提唱されるように(本願と同日出願、当方整理番号DYN 2000/U002)、これらの困難さは50〜400バール(5×106〜4×107Pa)の加圧ガスによって高圧を発生させることで克服できる。
【0025】
US−A−5 463 021で開示される方法とは対照的に、この技術による凝固は、溶解ガスの好ましくはノズルを通じた急速な膨張によってもたらされるようである。
【0026】
この方法で使用するのに好ましいガスは、窒素、空気またはCO2である。
【0027】
さらに別の凝固方法では、揮発性水混和性(water−miscible)有機溶剤が凝固をもたらす。溶剤は、炭素原子1〜4個のアルカノール、および炭素原子2または3個のケトンからなる群より選択される。前記溶剤は、凝固または凝集したポリマーの粘着性が高くなりすぎて混練を損なうことがないように、前記ポリマーに対して顕著な膨潤効果を有するべきでない。
【0028】
ポリマーを凝固させる機械的および熱的方法については、US−A−5 463 021、EP−B−0 084 837、EP−B−0 226 668およびEP−B−0 460 284から既知である。
【0029】
凝固後に、フルオロポリマーを脱水しても良い。ポリマーを脱水する一方法は、機械的脱水である。この方法についてはUS−A−4 132 845で述べられている。
【0030】
濡れたポリマーは、空気または窒素などのキャリアガス存在下に、通常110℃、好ましくは150℃から250℃の温度範囲で乾燥できる。
【0031】
以下の好ましい実施態様で、フルオロエラストマーについてより詳細に述べる。具体的には本発明は、本質的に抽出性イオンを含まないフルオロエラストマーを提供する。これはフルオロポリマー中に(硬化剤およびその他の成分を添加する前に)1000ppm未満、好ましくは500ppm未満のアニオンおよびカチオン(NH4+、H+およびOH-以外)があることを意味する。
【0032】
本質的にイオンを含まないフルオロエラストマー化合物を製造する方法は、
a)別々にカチオン性、そして続いてアニオン性イオン交換処理、またはその逆の順序を使用して、水性フルオロエラストマーラテックス(またはフルオロポリマー充填剤が必要ならば、水性フルオロエラストマーラテックスと、部分的に結晶質のフルオロポリマーのラテックスとの配合物)を精製するステップと、
b)塩を含まない方法によって精製したラテックスを凝固させるステップと、
を含む。
【0033】
さらに発明は、
a)実質的にNH4+、H+、およびOH-以外のイオンを含まない過酸化物硬化性フルオロエラストマー、エラストマーポリマーを基準にして、
b)100部のフルオロポリマー樹脂(phr)あたり好ましくは5.0部未満の有機過酸化物、
c)好ましくは10.0phr未満の架橋助剤、および
d)好ましくは50phr未満の本質的にイオンを含まない部分的に結晶質のフルオロポリマー
を含む、フルオロエラストマー組成物を提供する。
【0034】
最も好ましくはフルオロポリマー組成物は、過酸化物硬化性フルオロエラストマー、0.5〜3phrの有機過酸化物、1〜7phrの架橋助剤、および10〜40phrの部分的に結晶質のフルオロポリマーを含む。
【0035】
これに加えて、発明は
a)本質的にNH4+、H+、およびOH-以外のイオンを含まないニトリル基含有フルオロエラストマー、エラストマーポリマーを基準にして
b)5phr(好ましくは0.05〜2phr)未満のアンモニア発生硬化システム、および
c)50phr(好ましくは10〜40phr)未満の本質的にこのようなイオンを含まない部分的に結晶質のフルオロポリマーも含む。
【0036】
本発明で充填剤として使用される部分的に結晶質のフルオロポリマーは、融点が典型的に100〜340℃のポリマーである。発明で使用される部分的に結晶質のフルオロポリマーは、分散体の形態で使用される。このような分散体は、任意にHFP、および/またはVEで変性される低分子量PTFE、いわゆるミクロパウダーまたはワックス(DE−C−22 35 885で述べられるような)を含むことができる。分散体は、例えばペルフルオロ(プロピルビニル)エーテルなどの「PFA」として知られるTFEおよびVEの溶融加工性共重合体、「FEP」として知られるTFEおよびHFPの溶融加工性共重合体、および「ETFE」として知られるTFEおよびエチレン(ET)の部分的結晶質ポリマー、または「THV」として知られるTFE、HFPまたはVF2を含む。これらの共重合体については、上で引用した「Modern Fluoropolymers」で詳細に述べられている。
【0037】
ポリマー充填剤を組み込んだエラストマーラテックスは、イオン交換処理の前または後にラテックスを混合して調製される。この方法によりEP−B−0 708 797で述べられる乾式混合と比較して、ポリマー充填剤は確実に最も均一に分布するようになりあらゆる汚染が回避される。このようにして混合した後、配合物を上述のように凝固、脱水、乾燥する。
【0038】
特にフルオロエラストマーでは凝固生成物が粘着性で共に凝集する傾向があるので、塩化ナトリウムまたは塩化マグネシウムのような塩、または鉱酸などの既知の凝固剤を避けることが不可欠である。従って、徹底的な洗浄にもかかわらず、乾燥生成物は、なおもこのような添加された凝固剤および重合製法中に存在する塩を顕著な量で含有する。
【0039】
好ましい重合法は、緩衝剤などの補助剤を最小量含み、あるいは特に緩衝剤を含まない。
【0040】
この発明の好ましい実施態様は、エマルジョン法によって2つ以上のフルオロポリマーを重合するステップと、このようにして得られたラテックスを混合するステップと、それらを共に混練するステップと、を含む。
【0041】
この発明による方法からは、本質的に抽出性イオンを含まないフルオロポリマーが得られる。
【0042】
この発明によるフルオロポリマーは、コーティング組成物にとって特に有用である。
【0043】
フルオロポリマーが過酸化物硬化性エラストマーであれば、これは有機過酸化物、架橋助剤、および任意にフルオロポリマー充填剤を含有する組成物を硬化するのに特に有用である。
【0044】
フルオロポリマーがニトリル基を含有する場合、これはアンモニア発生触媒を含有する組成物で特に有用である。
【0045】
発明は、フルオロポリマーを含有するコーティング組成物に物品を接触させて、このコーティングステップ直後、またはそれからしばらくして任意にコーティングを硬化させて優れた表面特性を有する物品を得る、物品をコーティングするための超清浄なフルオロポリマー分散体をさらに提供する。
【0046】
発明はフルオロポリマー、特にフルオロエラストマーから付形された付形物品のための超清浄な材料をさらに含み、後者の場合、引き続いて物品が硬化される。
【0047】
広く用いられる硬化系は、完成品にさらなるイオン負荷を加えるオニウム化合物(US−A−4 233 421、US−A−4 912 171、およびUS−A−5 262 490)存在下のポリオール化合物を含む。半導体装置などの電子部品の製造のためには、通常シーリングコンパウンドのための厳しい必要条件が存在する。既知の方法によって硬化されたフルオロエラストマーは、このような要求を満たすことができないようである。
【0048】
有機溶剤中で重合を実施することは既知であるが(Modern Fluoropolymers、上記引用文中224〜225ページ)、これらの溶剤は高価であったり、あるいは最近は環境に対する懸念から段階的に使用が中止されている。
【0049】
EP−B−708 797は、半導体用途のために、フルオロポリマーミクロパウダー充填剤を有する過酸化物硬化性フルオロエラストマーの使用を開示する。材料がどのように精製されたかについての開示はない。この手順が有機酸受容体を要するという事実から、全体的なイオン含量が不満足に高いように見受けられる。
【0050】
過酸化物硬化性エラストマーは、フリーラジカル法によって硬化される。硬化性組成物はポリマーおよび過酸化物を含み、硬化温度でフリーラジカルを生じる。組成物が硬化前に高温で処理される場合、50℃を超える温度で分解するジアルキル過酸化物が特に好ましい。多くの場合、ペルオキシ酸素に付着した三級炭素原子を有するジ−過酸化三級ブチルを使用することが好まれる。このタイプの最も有用な過酸化物は、2,5−ジメチル−2,5−ジ(三級ブチルペルオキシ)−ヘキシン−3および2,5−ジメチル−2,5−ジ(三級ブチルペルオキシ)−ヘキサンである。その他の過酸化物は、過酸化ジクミル、過酸化ジベンゾイル、過安息香酸t−ブチル、およびジ[1,3−ジメチル−3−(三級ブチルペルオキシ)−ブチル]カーボネートなどの化合物から選択できる。
【0051】
組成物が最終生成物になる前に、通常混合される別の材料は、過酸化物と協同して有用な硬化を提供できる多価不飽和化合物を含む架橋助剤である。これらの架橋助剤は、共重合体含有重量を基準にして0.5〜10%、好ましくは約1〜7%の量で添加でき、以下の1つ以上の化合物であっても良い。トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリ(メタリル)−イソシアヌレート、トリス(ジアリルアミン)−s−トリアジン、トリアリルホスフィット、N,N−ジアリルアクリルアミド、ヘキサアリルホスホルアミド、N,N,N’,N’−テトラアリルテレフタルアミド、N,N,N’,N’−テトラアリルマロンアミド、トリビニルイソシアヌレート、2,4,6−トリビニルメチルトリシロキサン、およびトリ(5−ノルボルネン−2−メチレン)シアヌレート。特に有用なのは、トリアリルイソシアヌレート(US−A−5 077 359)である。
【0052】
通常、過酸化物硬化ステップで無機酸受容体が添加される。任意に、二価金属酸化物または二価金属水酸化物から選択される少なくとも1つの金属化合物が、調製中にまたは硬化前にフルオロエラストマーと混合されることが多い。このような化合物の存在は、ポリマーの熱老化抵抗性および熱安定性を改善する(US−A−5 077 359の5欄33〜48行)一方、このような酸受容体の添加は、本発明に従って得られるエラストマー組成物のイオン含量および抽出性に非常に有害な作用を及ぼす。したがって、ポリマー充填剤ありまたはなしの過酸化物硬化性フルオロエラストマーの硬化において、優れた硬化特性と物理特性を有する低イオン含量の物品を得るために、いかなる酸受容体も添加する必要はない。
【0053】
非常に低い圧搾固化が必要な場合、有機または無機酸受容体を含有しない調合物の特性を改善するために、有機オニウム化合物の添加が有益である。これは過酸化物硬化性、またはニトリル含有フルオロエラストマーを用いて実施しても良い。
【0054】
有機オニウム化合物は、この発明のフルオロエラストマー組成物に対する有用な添加剤の一種を代表する。適切な有機オニウム化合物は技術分野で、概してジヒドロキシ含有硬化剤によって硬化されるエラストマーのための加硫促進剤として既知である。知られているように、有機オニウムは適切なルイス塩基(例えばホスフィン、アミン、エーテル、およびスルフィド)の共役酸であり、前記ルイス塩基を適切なアルキル化剤(例えばハロゲン化アルキルまたはハロゲン化アリール)と反応させて形成できる。有機オニウム化合物は、有機または無機部分に結合するN、P、SまたはOなどの少なくとも1つのヘテロ原子を含有する。特に有用な四級オニウム化合物の一種は、比較的陽性および陰性のイオンを広く含み、亜リン酸および窒素が概して陽イオンの中心原子を構成し、陰イオンは有機または無機アニオン(例えばハロゲン化物、スルフェート、アセテート、ホスフェート、水酸化物、アルコキシド、フェノキシド)であっても良い。
【0055】
組み込むのに適切な有機オニウム化合物については、US−A−4 233 421、US−A−4 912 171 およびUS−A−5 262 490で述べられている。例は、塩化トリフェニルベニルホスホニウム、塩化トリブチルアルキルホスホニウム、塩化トリブチルベンジルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、塩化トリアリールスルホニウムである。
【0056】
別の種類の有機オニウム化合物は、式、
【化1】

(式中、
Qは窒素またはリンであり、
Zは水素原子、あるいは末端が式、−COOA(式中、Aは水素原子またはNH4+−カチオンである。)の基である4〜約20個の炭素原子を有する置換または非置換環式または非環式アルキル基であり、
あるいはZは式、CY2−COOR’(式中、Yは水素またはハロゲン原子であり、あるいは1〜約6個の炭素原子を有して1つ以上のカテナリーヘテロ原子を任意に含有しても良い置換または非置換アルキルまたはアリール基であり、R’は水素原子、NH4+−カチオン、アルキル基、または非環式酸無水物であり、例えば式、−COR(式中、Rはアルキル基であり、あるいはそれ自体が有機オニウム(すなわちビス有機オニウムを与える)を含有する基であり、好ましくはR’は水素である。)の基であり、
Zは末端が式、−COOA(式中、Aは水素原子またはNH4+−カチオンである。)の基である4〜約20個の炭素原子を有する置換または非置換環式または非環式アルキル基であっても良く、
1、R2、およびR3はそれぞれ独立に、水素原子、またはアルキル、アリール、アルケニル、あるいはそれらのあらゆる組み合わせであり、各R1、R2、およびR3は塩素、フッ素、臭素、シアノ、−OR”または−COOR”(式中、R”はC1〜C20アルキル、アリール、アラルキル、またはアルケニルである。)で置換されることができ、あらゆるR1、R2、およびR3基の対は、相互にそしてQと結合してヘテロ環を形成でき、R1、R2、およびR3基の1つ以上は、式Z(式中、Zは上で定義したとおり。)の基であっても良く、
xは有機または無機アニオン(例えばハロゲン化物、スルフェート、アセテート、ホスフェート、ホスホネート、水酸化物、アルコキシド、フェノキシドまたはビスフェノキシド)であり、
nはアニオンXの原子価と等しい数である。)によって表される。
【0057】
ホスフェート、ホスフィン酸化物、およびアミン酸化物もまた、フッ素化されたエラストマー組成物のための添加剤として有用である。これらの化合物としては、例えばアルキルおよびアリールホスフェート、酸化トリアリールホスフィン、酸化トリアルキルホスフィン、酸化トリアリールアミン、および酸化トリアルキルアミンが挙げられる。これらの化合物としては、式PR3OおよびNR3O(式中、各R置換基は独立に直鎖または分枝アルキルまたはアリール基である。)の化合物が挙げられる。
【0058】
有機オニウム化合物は、様々な用途分野の特定の必要条件を満たすように、多様な化合物から選択できる。
【0059】
ニトリル含有ポリマーは、通常アルキルスズ化合物とニトリル基との触媒性相互作用によって、トリアジン架橋構造(Modern Fluoropolymers、上記引用文中351ページ)ができて硬化する。スズ化合物の添加は、当然エラストマーのイオンレベルにとって有害である。周囲条件で固体または液体であり、硬化条件下でアンモニアを生じるアンモニア発生化合物存在下で、精製されたニトリルエラストマー混合物を硬化することはこの発明の一態様である。このような化合物としては、例えばヘキサメチレンテトラミン(ウロトロピン)、ジシアンジアミド、そして式、
【化2】

(式中、Rは水素、あるいは1〜約20個の炭素原子を有する置換または非置換アルキル、アリールまたはアラルキル基である。)で表される置換および非置換トリアジン誘導体が挙げられる。特定の有用なトリアジン誘導体としては、ヘキサヒドロ−1,3,5−s−トリアジンおよびアセトアルデヒドアンモニア三量体が挙げられる。
【0060】
イオン交換ステップ:
対応する分散体からのイオンの除去は、カチオンおよびアニオン交換体処理を使用することで達成される。分散体から最初にアニオン(ペルフルオロオクタノエート、PFOAに続いてスルフェート、塩化物、フッ化物など)を除去するのが好ましいやり方である。アニオン交換体を通じたアニオン除去は、以下の理由で重要なステップである。
【0061】
ラテックス粒子は、400nm未満の超顕微鏡的な直径を有する。ラテックス粒子は、コロイド化学上、アニオン性に安定化されている。アニオン性安定化は、ほとんどが−COOH−および−OSO3H−基であるアニオン性末端基により、そしてPFOAなどの吸着アニオン性乳化剤により提供される。このようなアニオン性に安定化された分散体は、アニオン交換床内で容易に凝固する傾向があるためイオン交換床を詰まらせる。したがって、アニオン交換体によるアニオン性に安定化された分散体の処理は、特に高濃度で技術的に実現可能でないとみなされる。
【0062】
アニオン交換床の障害または目詰まりは、重合後の分散体である未処理ポリマー分散体よりも1000倍低い固形分含量で既に観察される。WO−A−99/62830およびWO−A−99/62858で述べられるように、この凝固は、固形分含量が通常0.001〜3.0重量%の範囲である非イオン性乳化剤の存在下では生じない。非イオン性乳化剤については、「Nonionic Surfactants」、M.J.Schick編、Marcel Dekker,Inc.,ニューヨーク、1967で詳細に述べられている。
【0063】
非イオン性乳化剤の選択は重要でない。アルキルアリールポリエトキシアルコール、アルキルポリエトキシアルコール、またはその他の非イオン性乳化剤を使用しても良い。
【0064】
好ましい非イオン性界面活性剤は、例えば(登録商標)TRITON X 100(Rohm & Haas)などのアルキルアリールポリエトキシアルコールタイプ、あるいは例えば(登録商標)GENAPOL X 080(Clariant GmbH)などのアルキルポリエトキシアルコールタイプである。
【0065】
イオン交換樹脂の選択はそれほど重要でない。以下の使用可能なアニオン交換樹脂が入手できる。(登録商標)AMBERLITE IRA 402、(登録商標)AMBERJET 4200(Rohm and Haas)、(登録商標)PUROLITE A 845(Purolite GmbH)、(登録商標)LEWATIT MP−500(Bayer AG)、(登録商標)DOWEX 1X−2Xシリーズ(Dow Chemical)。
【0066】
使用するアニオン交換体の具体的な塩基性度は、それほど重要でない。弱い、中程度、そして強い塩基性の樹脂が使用できる。好ましくはイオン交換樹脂は、OH-形態に転換される。
【0067】
流速はそれほど重要でなく、標準流速が使用できる。流れの方向は上向きでも下向きでも良い。
【0068】
イオン交換処理は、容器内でイオン交換樹脂と共に分散体を穏やかに撹拌することで、バッチ処理としても実施できる。この処理後に分散体を濾過によって分離する。
【0069】
アニオンの除去は、好ましくは重合からの未処理分散体において実施される。このような分散体は、概して10〜40重量%の固形分含量を有し、それに十分な非イオン性乳化剤を添加して分散体安定性を提供し、必要ならば固形分含量を約20%未満に低下させる。
【0070】
引き続くステップでは、好ましくはH+−の形態であるLEWATIT SP 112(Bayer AG)などの容易に入手できる樹脂を使用して、カチオンが除去される。
【0071】
混合イオン交換樹脂(アニオンおよびカチオン交換基を有する)の使用も可能である。
【0072】
イオン交換処理を成功させるために、分散体中のフルオロポリマーの特定の組成は重要でない。
【0073】
実験セクション:
使用材料の説明:
アニオン交換樹脂、AMBERLITE IRA 402(塩化物形態)は、Rohm and Haasから供給された。樹脂を5%NaOH溶液によってOH−形態にした。NaOH溶液の溶出後、カラムを脱イオン水(DI)でフラッシュする。
【0074】
カチオン交換樹脂、LEWATIT SP 112(NH4+形態)は、Bayer AGによって供給された。それを硫酸または塩酸などの水性鉱酸によってH+−形態にした。酸溶液による樹脂の処理後、カラムを過剰のDIによって洗浄する。
【0075】
分散体調製:
エマルジョン重合によって、フルオロエラストマーおよび/または部分的に結晶質のフッ素プラスチック分散体を別々に調製した。このようにして得られた分散体を混合して、それらの所望の混合物を調製した。固形分の含量を20%に調節した。求められた量の非イオン性界面活性剤を希釈溶液の形態で添加する。実際的なレベルの非イオン性界面活性剤は、分散体混合物の総重量を基準にして、10〜30,000ppmの界面活性剤の範囲である。好ましい範囲は、10〜100ppmである。典型的な非イオン性界面活性剤は、例えばTRITON 100 XまたはENAPOL X 080である。
【0076】
カラムイオン交換処理:
カチオンおよびアニオン交換処理は同様である。分散体を所望の交換樹脂(カラム寸法:直径6cm、高さ30cm)を詰めたカラムに通過させることで、ポリマーラテックスをイオン交換する。ラテックスは、例えば重力送り、静止サイフォンまたは自動ポンプシステムなどのクロマトグラフィ手順に典型的なあらゆる手段によってカラムにデリバリできる。分散体をカラムに通過させるのに使用する特定方法は、重要でない。溶出速度は床容積/時間の3倍を越えてはならない。
【0077】
分析試験方法:
PFOA濃度をイオン交換前後に採取した分散体サンプルで測定した。PFOAレベルは、標準法(WO−A−99/62830およびWO−A−99/62858)に従ってガスクロマトグラフィーによって測定した。F-、Cl-、Br-、SO42-、PO43-の濃度は、凍結凝固によって得られる分散体の粒子を含まない水性相である「母液」のイオンクロマトグラフィーによって測定した。サンプルのカチオン含量は、ポリマーサンプルのイオン伝導プラズマ(ICP)によって測定した。サンプルはHNO3によって処理し、続いてそれらにICPを適用する前に、密封した熱分解ボンベ内で550℃で10分間熱分解した。
【0078】
試験方法:
以下の実施例では、示した結果は以下の試験方法を使用して得られた。
圧縮硬化サンプル。特に断りのない限り、物理特性を測定するために、約6.9MPaで10分間177℃でプレスして150×150×2.0mmのシートを調製した。
後硬化サンプルは、特に断りのない限り、プレス硬化サンプルを空気循環炉に入れて調製した。炉を232℃に保ちサンプルを16時間処理した。
プレス硬化または後硬化シートからASTMダイDによって切断したサンプルについて、ASTM D 412−92を使用して破断点引張強さ、破断点伸び、および100%伸び弾性率を測定した。報告単位はMPaである。
ASTM D 2240−85方法Aを使用して、タイプA−2ショアー押込硬度計で硬さを測定した。
圧搾固化はASTM 395−89方法Bを使用してOリング上で測定した。Oリングは横断面厚さ3.5mm(0.139インチ)を有する。後硬化後、Oリングを70時間200℃で圧搾した。結果を永久固化の百分率として報告する。
【0079】
ISO 12086に従って、メルトフローインデックス(MFI)を測定した。ASTM D−1646にってムーニー粘度を測定した。特に断りのない限りあらゆる百分率は重量を基準とする。
【0080】
実施例1
54%のTFE、45%のペルフルオロメチルビニルエーテル、1%のブロモトリフルオロエチレンの組成である固形分含量28.5%のペルフルオロエラストマー(ムーニー粘度ML 1+10/121℃=85)を有する分散体5kgをDIで18%固形分に希釈した。GENAPOL X 080のDI中20%溶液75gをこの混合物に添加して、一晩緩慢に撹拌した。上述のようにして調製した400mlのアニオン交換樹脂を装填した600mlカラムに分散体を通過させて、分散体をアニオン交換した。溶出速度を600ml分散体/時間に調節した。交換した分散体のpHは11であった。表1にアニオン含量を列挙して、イオン交換しなかった分散体からの母液と比較する。
【0081】
【表1】

【0082】
実施例2
実施例1からのアニオン交換後の分散体を400mlのカチオン交換樹脂で同様に処理した。交換した分散体はpH3を有した。凍結凝固によりポリマーを分散体から分離した。ポリマー樹脂を上述のようにICPによって分析した。カチオン含量を表2に列挙し、イオン交換していない分散体から凍結凝固を通じて得られたポリマーと比較し、さらにMgCl2−凝固によって得られたポリマーと比較して、イオンを含まない凝固法の利点を実証する。
【0083】
【表2】

【0084】
イオン交換された樹脂中のCu、Al、Ni、Zn、Ca、Cs、Mn、Co、LiおよびBaの測定された濃度は、1ppm未満であった。
【0085】
これらの結果を表1の結果に組み合わせると、本発明に従ったポリマーが超清浄であることが実証される。
【0086】
実施例3
バッチイオン交換処理:
100mlのアニオン交換樹脂を50mlのDIおよび200mlの実施例1の分散体と混合し、ガラスビーカーに入れて24時間緩慢に撹拌した。濾過により分散体を樹脂から分離した。サンプルを凍結凝固させて既述のように母液からアニオン含量を測定した。結果を表3に列挙する。
【0087】
【表3】

【0088】
実施例4
実施例2に従ってイオン交換した固形分含量20%の分散体を気密容器内において周囲温度で窒素で180バール(1.8×107Pa)に加圧した。加圧ラテックスは(US−A−5 463 021で述べられるようにホモジナイザーから)ノズルに供給され、そこで常圧に膨張した。得られる凝塊をフィルタープレス内で洗浄して脱水した。水性濾液は、0.5%の固形分を含有した。
【0089】
実施例5
窒素の代わりに二酸化炭素を用いて実施例4を繰り返し、40℃で100バール(1×107Pa)に加圧した。水性濾液は0.3%の固形分を含有した。
【0090】
実施例6〜10
これらのサンプルは、エラストマーに関して異なる組成について、過酸化物硬化したサンプルの純度、および部分的に結晶質のフルオロポリマー充填剤の使用を実証する。実施例1および2で述べたようにして、この発明の手順に従って材料を精製した。凍結凝固(実施例6、7、および10)または機械的凝固(実施例8および9)によって樹脂を回収した。表4は、有機オニウム化合物ありまたはなしで硬化のために使用した配合、および硬化性能を示す。表5は、硬化材料のいくつかの抽出データを列挙し、非常に低い抽出性イオン含量が示される。
【0091】
実施例6
31%のVF2、37%のHFP、31%のTFE、1%のブロモトリフルオロエチレン(BTFE)のターポリマー、ムーニー粘度ML 1+10/121℃=70。
【0092】
実施例7
実施例6からのターポリマー80%、および
PFAビポリマー(96%のTFE、4%のPPVE)、MFI 372℃、5kg=2.2g/10分、20%の混合物。
【0093】
実施例8
54%のTFE、45%のペルフルオロメチルビニルエーテル、1%のBTFEを含有するペルフルオロエラストマー、ムーニー粘度ML 1+10/121℃=85。
【0094】
実施例9
実施例8からのエラストマー80%、および
実施例7のPFAの混合物20%。
【0095】
実施例10
実施例6からのエラストマー80%、および
20%のHFP、63%のTFE、17%のETのターポリマー、MFI 297℃、5kg=10.5g/10分、20%の混合物。
【0096】
【表4】

【0097】
【表5】

【0098】
実施例11
イオン交換したペルフルオロエラストマー/PFA配合物を凍結によって凝固させ、130℃で乾燥させた。配合物は、
48%のTFE、46%のペルフルオロメチルビニルエーテル、および6%のニトリル硬化部位モノマー(CF2=CF−O−(CF23−O−CF(CF3)−CNを含有し、ムーニー粘度:ML 10+1/121℃=85のエラストマー80%、および
96%のTFEおよび4%のペルフルオロ(プロピルビニル)エーテル(PPVE)を含有し、MFI 372/5=2.2g/10分のPFA20%から構成された。
【0099】
100gの配合物を1gのヘキサメチレンテトラミンと混合した。混合物のシートを177℃で15分間プレスして、引き続いて以下の6段階の条件を使用して窒素下で後硬化させた。25〜200℃で6時間を超え、200℃で16時間、200〜250℃で2時間を超え、250℃で8時間、250〜300℃で2時間を超え、および300℃で18時間。以下の特性が測定された。
引っ張り強さ:14MPa
伸び:120%
ショアA硬度:80
圧搾固化:20.4%
【0100】
超純粋水中における85℃で14日間の抽出試験(サンプル重量:2g、溶出容積:500ml)からは、50μg/Lのアンモニウムおよび15μg/Lのフッ化物含量が得られた。Al、Cu、Mg、Zn、Fe、Ni、Ca、K、スルフェート、塩化物は、検出限界以下であった。
【0101】
本願発明に関連する発明の実施態様を以下に列挙する。
態様1: 水性エマルジョン重合法によって1つ以上のフルオロモノマーを重合するステップと、
このようにして得られたラテックスから実質的にNH4+、H+、およびOH-と異なる全てのイオンを除去するステップと、
フルオロポリマーを実質的にイオンの追加なしに凝固するステップと、
を含む超清浄なフルオロポリマーを調製する方法。
態様2: フルオロポリマーがサーモプラストまたはエラストマーである、態様1に記載の方法。
態様3: エマルジョン重合法がほとんどまたは全く緩衝剤なしに実施される、態様1に記載の方法。
態様4: エラストマーが過酸化物硬化性である、態様2に記載の方法。
態様5: エラストマーがニトリル基を含有する、態様2に記載の方法。
態様6: 前記イオンの除去がイオン交換によって達成される、態様1に記載の方法。
態様7: 凝固が、凍結凝固により、加圧ガスを用いた機械的凝固により、または炭素原子1〜4個のアルカノールおよび炭素原子2〜3個のケトンからなる群より選択されて前記ポリマーを本質的に膨潤させない揮発性水混和性有機溶剤の添加により達成される、態様1に記載の方法。
態様8: フルオロポリマー分散体をフルオロポリマーと反応しないガスに50〜400バール(5×106〜4×107Pa)の圧力で接触させる、フルオロポリマーを凝固させる方法。
態様9: 2つ以上のフルオロポリマーがエマルジョン重合法によって得られ、このようにして得られるラテックスが共に混合されて混練される態様1に記載の方法。
態様10: 態様1〜9のいずれか1項に記載の方法によって得られるフルオロポリマー。
態様11: 本質的にNH4+以外の抽出性イオンがないフルオロポリマー。
態様12: 態様10に記載のフルオロポリマーを含有する組成物。
態様13: 態様11に記載のフルオロポリマーを含有する組成物。
態様14: 態様4に記載の方法によって得られるフルオロポリマー、有機過酸化物、架橋助剤、およびフルオロポリマー充填剤を含有する組成物。
態様15: 態様5に記載の方法によって得られるフルオロポリマーを含有する組成物。
態様16: 有機オニウム化合物を含有する、態様14に記載の組成物。
態様17: 有機オニウム化合物を含有する、態様15に記載の組成物。
態様18: 物品を態様10に記載のポリマーを含有するコーティング組成物に接触させるステップを含む、その物品をコーティングする方法。
態様19: 物品を態様11に記載のポリマーを含有するコーティング組成物に接触させるステップを含む、その物品をコーティングする方法。
態様20: 態様10に記載のフルオロポリマーを含む組成物で被覆され、硬化された物品。
態様21: 態様11に記載のフルオロポリマーを含む組成物で被覆され、硬化された物品。
態様22: 態様12に記載の組成物を付形するステップと、それを硬化させるステップと、を含む物品を調製する方法。
態様23: 態様12に記載の組成物を付形するステップと、それを硬化させるステップと、を含む物品を調製する方法。
態様24: 態様11に記載の硬化した組成物から本質的になる物品。
態様25: 態様12に記載の硬化した組成物から本質的になる物品。
態様26: (a)1つ以上のフルオロオレフィンモノマーから誘導される共重合単位を含む超清浄なエマルジョン重合されたフルオロポリマーと、(b)水との分散体。
態様27: 超清浄なフルオロポリマーが本質的にNH4+、H+、およびOH-以外のイオンを含まない、態様26に記載の分散体。
態様28: 超清浄なフルオロポリマーがNH4+、H+、およびOH-以外のイオンを1000百万分率(ppm)未満含有する、態様27に記載の分散体。
態様29: 超清浄なフルオロポリマーが有機酸受容体を本質的に含まない、態様26に記載の分散体。
態様30: 1つ以上のフルオロオレフィンモノマーから誘導される共重合単位を含み、本質的にNH4+、H+、およびOH-以外のイオンを含まない、超清浄なエマルジョン重合されたフルオロポリマー。
態様31: NH4+、H+、およびOH-以外のイオンを1000ppm未満含有する、態様30に記載の超清浄なフルオロポリマー。
態様32: 有機酸受容体を本質的に含まない、態様30に記載の超清浄なフルオロポリマー。
態様33: 熱可塑性フッ素樹脂である、態様30に記載の超清浄なフルオロポリマー。
態様34: 硬化性フルオロエラストマーである、態様30に記載の超清浄なフルオロポリマー。
態様35: フルオロポリマーが硬化部位モノマーから誘導される共重合単位を含有する、態様34に記載の硬化性フルオロエラストマー。
態様36: 硬化部位モノマーが臭素含有またはニトリル含有硬化部位モノマーから選択される、態様35に記載の硬化性フルオロエラストマー。
態様37: 硬化部位モノマーが臭素含有硬化部位モノマーである、態様36に記載の過酸化物硬化性フルオロエラストマー。
態様38: 態様34に記載の過酸化物硬化性フルオロエラストマー。
態様39: 有効量の過酸化物硬化剤、そして任意に有効量の架橋助剤をさらに含む、態様38に記載の過酸化物硬化性フルオロエラストマー。
態様40: 有機酸受容体を本質的に含まない、態様39に記載の過酸化物硬化性フルオロエラストマー。
態様41: フルオロポリマー充填剤をさらに含む、態様39に記載の過酸化物硬化性フルオロエラストマー。
態様42: 硬化部位モノマーがニトリル含有硬化部位モノマーである、態様36に記載の硬化性フルオロエラストマー。
態様43: 有効量のアンモニア発生硬化系、そして任意にフルオロポリマー充填剤をさらに含む、態様42に記載の硬化性フルオロエラストマー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロポリマー分散体をフルオロポリマーと反応しないガスに50〜400バール(5×106〜4×107Pa)の圧力で接触させる、フルオロポリマーを凝固させる方法。

【公開番号】特開2007−327074(P2007−327074A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240867(P2007−240867)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【分割の表示】特願2001−557931(P2001−557931)の分割
【原出願日】平成12年9月18日(2000.9.18)
【出願人】(303002240)ダイネオン リミティド ライアビリティー カンパニー (1)
【Fターム(参考)】