説明

超純水システム

【課題】温超純水から微粒子のみならず、金属イオン、アニオン成分等の他の不純物をも除去することができ、したがって高純度の温超純水を安定して供給することが可能な超純水システムを提供する。
【解決手段】超純水システムにおいて、超純水を加温して温超純水を製造する超純水加熱装置14と、超純水加熱装置により製造された温超純水をイオン吸着膜に通水する温超純水浄化装置18とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超純水を加温した温超純水を供給するための超純水システムに関し、さらに詳述すると、温超純水を浄化する手段を有し、高純度の温超純水を安定して供給することが可能な超純水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイス製造工程において、ウエハの洗浄水として超純水が使用されているが、洗浄効率の向上などのために、超純水を加温した温超純水が洗浄水として使用されることがある(例えば、特許文献1参照)。上記温超純水は、超純水システムのサブシステム(二次純水系システム)内で加熱装置にて加温されユースポイントまで運ばれる場合と、ユースポイント内で小型の加熱装置にて加温される場合とがある。上記加熱装置としては、一般に熱交換器が使用される。また、温超純水は、60〜80℃の温度範囲で使用されることが多い。
【0003】
温超純水は、超純水システムのサブシステム内で加温される場合およびユースポイント内で加温される場合のいずれでも、加温時に加熱装置から不純物が溶出したり、加熱装置からユースポイントに至る間の輸送配管から不純物が溶出したりすることにより、水質が悪化して半導体デバイスの特性に悪影響を及ぼすことがある。特に、サブシステム内で加温された場合では、温超純水は、各ユースポイントへ長いときには数百メートルの配管によって運ばれるため、配管からの不純物の溶出による水質悪化への影響が大きくなる。
【0004】
超純水の加熱装置や温超純水の輸送配管から温超純水中に溶出する不純物としては、微粒子(パーティクル)、金属イオン、アニオン成分、TOC等が挙げられるが、これらのうち、金属イオンによる汚染はppt以下のオーダーでもウエハのキャリアライフタイムを悪化させること、微粒子による汚染はパターン欠陥、断線、絶縁耐圧不良を引き起こし、大きな問題となることがわかっている。また、超純水システムで除去しきれなかった不純物が温超純水に混入している場合や、超純水システムから何らかの理由で瞬間的にまたはある期間にわたって不純物のリークが起こった場合も、同様に半導体デバイスの特性に悪影響を及ぼす。
【0005】
そのため、従来、温超純水から上述した不純物を除去するために、ユースポイント直前やユースポイントの洗浄装置内部に微粒子除去用のフィルタを設置することが提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開平10−272492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前述したユースポイント直前やユースポイントの洗浄装置内部に微粒子除去用のフィルタを設置する手段では、温超純水から微粒子を除去することはできても、他の不純物、例えば金属イオン、アニオン成分等を除去することはできなかった。
【0008】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたもので、温超純水から微粒子のみならず、金属イオン、アニオン成分等の他の不純物をも除去することができ、したがって高純度の温超純水を安定して供給することが可能な超純水システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前述した問題を解決するために種々検討を行った結果、特定のイオン交換基を有する単数または複数のイオン吸着膜に温超純水を通水した場合、温超純水から微粒子、金属イオン、アニオン成分等の各種不純物を効率的に除去して、きわめて清浄な温超純水を得ることができることを見出した。
【0010】
本発明は、上述した知見に基づいてなされたもので、超純水を加温して温超純水を製造する超純水加熱装置と、前記超純水加熱装置により製造された温超純水をイオン吸着膜に通水する温超純水浄化装置とを具備することを特徴とする超純水システムを提供する。
【0011】
なお、本発明の超純水システムは、一次純水系システムおよび二次純水系システムからなる超純水製造装置ならびにユースポイントを含むシステムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の超純水システムによれば、超純水の加熱装置や温超純水の輸送配管から溶出した不純物、超純水システムで除去しきれなかった不純物、超純水システムから何らかの理由で瞬間的にまたはある期間にわたってリークした不純物が温超純水に含まれている場合に、上述した各種不純物、例えば微粒子、金属イオン、アニオン成分、TOC等を効率的に除去して、高純度の温超純水を安定して供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明につきさらに詳しく説明する。本発明の超純水システムは、超純水加熱装置と温超純水浄化装置とを具備する。超純水加熱装置としては、超純水を加温できるものであればどのようなものでもよいが、通常は熱交換器が使用される。超純水加熱装置では、超純水を35〜100℃、通常は60〜80℃に加熱して温超純水を製造する。なお、加熱前の超純水は一般に20〜25℃程度である。
【0014】
温超純水浄化装置は、超純水加熱装置により製造された温超純水をイオン吸着膜に通水して浄化するものである。本発明において、イオン吸着膜とは、膜内部にイオン交換機能を有する高分子鎖が保持されている多孔膜であって、イオン交換機能と微粒子除去機能を有するものを言う。上記イオン吸着膜としては、例えば、膜内部にイオン交換機能を有する高分子鎖が保持されている多孔膜であって、膜1g当たり0.2〜10ミリ当量のイオン交換基を有し、平均孔径0.01〜100μm、より好ましくは1〜100μmの多孔膜を使用することができる。このようなイオン吸着膜としては、例えば、特開平8−89954号公報や特開2003−112060号公報に開示されているものを挙げることができる。
【0015】
イオン吸着膜は、通常は80℃の耐熱性があればよく、材質、型式等に特に制限はない。イオン吸着膜の基材としては、ポリエチレン等のポリオレフイン系樹脂やポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂が耐薬品性に優れ、溶出物が少ない点で好ましい。イオン吸着膜の構造としては、プリーツ型、中空糸型、イオン吸着樹脂を結合焼結した樹脂焼結多孔体型などが挙げられる。
【0016】
より具体的には、イオン吸着膜として、例えば、アニオン交換基を有するイオン吸着膜(アニオン吸着膜)、カチオン交換基を有するイオン吸着膜(カチオン吸着膜)、キレート交換基を有するイオン吸着膜(キレート吸着膜)等を挙げることができる。
【0017】
アニオン吸着膜は、アニオン交換基として例えば第4級アンモニウム基を有するものであり、クロロメチルスチレンを4級化したアニオン交換基を有する膜が好適に用いられる。ただし、ピリジン系やイミダゾール系などの複素環の窒素原子を4級化したアニオン交換基を有するものもアニオン吸着膜として使用可能である。カチオン吸着膜としては、カチオン交換基として、例えば、スルホン酸基、リン酸基、カルボキシル基等を有する膜を挙げることができる。キレート膜としては、水中の金属イオンとキレートを形成する機能を有する官能基であるキレート交換基(キレート形成基)として、例えば、イミノジ酢酸基、メルカプト基、エチレンジアミン等を有する膜を挙げることができる。
【0018】
本発明では、温超純水浄化装置を下記(1)〜(5)の構成とすることが特に好ましい。
(1)アニオン吸着膜に温超純水を通水する構成
この構成では、微粒子、アニオン成分、イオン状シリカ、コロイド成分および一部の遷移金属類を極低濃度まで除去することが可能である。
(2)カチオン吸着膜に温超純水を通水する構成
この構成では、微粒子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属類およびカチオン成分を極低濃度まで除去することが可能である。
(3)キレート吸着膜に温超純水を通水する構成
この構成では、微粒子および遷移金属類を極低濃度まで除去することが可能である。キレート吸着膜は、不純物除去機構上の理由によって、一度捕捉した金属を離しにくいという特徴を持つ。アルカリ金属やアルカリ土類金属の除去が必要ない場合はキレート吸着膜の使用が望ましい。
(4)カチオン吸着膜およびアニオン吸着膜に温超純水を通水する構成
この構成では、前記(1)および(2)の特徴を併せ持つため、微粒子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属類、カチオン成分、アニオン成分、イオン状シリカおよびコロイド成分を極低濃度まで除去することが可能である。なお、カチオン吸着膜およびアニオン吸着膜にはこの順で通水することが好ましい。
(5)キレート吸着膜およびアニオン吸着膜に温超純水を通水する構成。
【0019】
この構成では、前記(1)および(3)の特徴を併せ持つため、微粒子、遷移金属類、アニオン成分、イオン状シリカおよびコロイド成分を極低濃度まで除去することが可能である。なお、キレート吸着膜およびアニオン吸着膜にはこの順で通水することが好ましい。
【0020】
温超純水浄化装置の設置箇所に限定はないが、図1に示すように、超純水製造装置10のサブシステム12に超純水加熱装置14が含まれている場合は、例えば、図1の設置箇所Aのように、超純水循環ライン16に温超純水浄化装置18を設置したり、図1の設置箇所Bのように、温超純水を各ユースポイント20a〜20cに輸送する輸送ライン22a〜22cのうちの特に清浄な温超純水を必要とするユースポイント20bへの輸送ライン22bのみに温超純水浄化装置18を設置したりすることができる。コスト面では、設置箇所Aより設置箇所Bの方が処理容量が少なく有利である。
【0021】
また、図2に示すように、ユースポイント30に小型の超純水加熱装置32が設置されている場合は、例えば、図2の設置箇所Cのように、加熱装置32の出口配管34に温超純水浄化装置36を設置したり、図2の設置箇所Dのように、温超純水を各洗浄装置38a〜38cに輸送する輸送ライン40a〜40cのうちの特に清浄な温超純水を必要とする洗浄装置38bへの輸送ライン40bのみに温超純水浄化装置36を設置したりすることができる。コスト面では、設置箇所Cより設置箇所Dの方が処理容量が少なく有利である。また、図2の設置箇所Dに代えて、洗浄装置38b内に温超純水浄化装置36を組み込んでもよい。
【実施例】
【0022】
以下に、実施例により本発明を具体的に示す。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0023】
(実施例1)
超純水システムのユースポイントに、小型の超純水加熱装置を設置するとともに、その後段にアニオン吸着膜に温超純水を通水する構成の温超純水浄化装置を設置した。
【0024】
(実施例2)
超純水システムのユースポイントに、小型の超純水加熱装置を設置するとともに、その後段にカチオン吸着膜に温超純水を通水する構成の温超純水浄化装置を設置した。
【0025】
(実施例3)
超純水システムのユースポイントに、小型の超純水加熱装置を設置するとともに、その後段にキレート吸着膜に温超純水を通水する構成の温超純水浄化装置を設置した。
【0026】
(実施例4)
超純水システムのユースポイントに、小型の超純水加熱装置を設置するとともに、その後段にカチオン吸着膜およびアニオン吸着膜にこの順で温超純水を通水する構成の温超純水浄化装置を設置した。
【0027】
(実施例5)
超純水システムのユースポイントに、小型の超純水加熱装置を設置するとともに、その後段にキレート吸着膜およびアニオン吸着膜にこの順で温超純水を通水する構成の温超純水浄化装置を設置した。
【0028】
(比較例)
超純水システムのユースポイントに、小型の超純水加熱装置を設置するとともに、その後段に粒径0.05μmの微粒子を除去可能な微粒子除去用フィルタに温超純水を通水する構成の温超純水浄化装置を設置した。
【0029】
上記実施例1〜5および比較例は、図2の設置箇所Cの位置に超純水加熱装置を設置したものである。
【0030】
上記実施例、比較例において、加熱装置により加熱した温超純水を温超純水浄化装置に通水し、処理水の水質を比較した。結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
表1の結果より、イオン吸着膜によれば、微粒子以外の不純物の除去も可能であることを確認できた。最も水質浄化効果が大きいのは、カチオン吸着膜とアニオン吸着膜との併用であり、入口水で検出された不純物を全て低減することができた。これに対し、比較例の微粒子除去用フィルタでは、微粒子しか除去することができない上、金属イオンの溶出なども確認された。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】超純水加熱装置および温超純水浄化装置をサブシステム内に設置した状態を示す説明図である。
【図2】超純水加熱装置および温超純水浄化装置をユースポイント内に設置した状態を示す説明図である。ある。
【符号の説明】
【0034】
10 超純水製造装置
12 サブシステム
14 超純水加熱装置
16 超純水循環ライン
18 温超純水浄化装置
20a〜20c ユースポイント
22a〜22c 輸送ライン
30 ユースポイント
32 超純水加熱装置
34 出口配管
36 温超純水浄化装置
38a〜38c 洗浄装置
40a〜40c 輸送ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超純水を加温して温超純水を製造する超純水加熱装置と、前記超純水加熱装置により製造された温超純水をイオン吸着膜に通水する温超純水浄化装置とを具備することを特徴とする超純水システム。
【請求項2】
前記超純水加熱装置および温超純水浄化装置がサブシステム内に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の超純水システム。
【請求項3】
前記超純水加熱装置および温超純水浄化装置がユースポイント内に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の超純水システム。
【請求項4】
前記温超純水浄化装置が、アニオン交換基を有するイオン吸着膜に温超純水を通水するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の超純水システム。
【請求項5】
前記温超純水浄化装置が、カチオン交換基を有するイオン吸着膜に温超純水を通水するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の超純水システム。
【請求項6】
前記温超純水浄化装置が、キレート交換基を有するイオン吸着膜に温超純水を通水するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の超純水システム。
【請求項7】
前記温超純水浄化装置が、カチオン交換基を有するイオン吸着膜およびアニオン交換基を有するイオン吸着膜に温超純水を通水するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の超純水システム。
【請求項8】
前記温超純水浄化装置が、キレート交換基を有するイオン吸着膜およびアニオン交換基を有するイオン吸着膜に温超純水を通水するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の超純水システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−160231(P2007−160231A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−360538(P2005−360538)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】