説明

超純水製造方法及び装置

【課題】被処理水である超純水中の溶存酸素を除去しつつ、添加される窒素を無駄にすることなく、ユースポイントで必要となる溶存窒素の濃度管理を容易に行う。
【解決手段】溶存酸素を含む被処理水を貯留する一次純水タンク11と、一次純水タンク11からの被処理水に紫外線を照射する紫外線酸化装置14と、紫外線を照射された被処理水中のイオン成分を除去する非再生型混床式イオン交換装置21と、イオンが除去された処理水をユースポイントに供給する供給ラインと、供給ラインから分岐し処理水の一部または全部を一次純水タンク11に戻す循環ラインと、を有する純水製造装置において、被処理水に窒素を添加する窒素添加装置15と、白金族金属が担持された触媒金属担持体を備え、窒素が添加された被処理水を触媒金属担持体に接触させて被処理水中の溶存酸素を除去する溶存酸素除去装置17と、を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超純水製造方法及び装置に関し、特に、半導体装置などの電子部品製造工程などでの使用に適し、溶存酸素が極低濃度であるとともに溶存窒素の濃度が管理された超純水を製造する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの製造では、高度に不純物が除去された超純水等の純水が使用されている。半導体製造分野で多く用いられている超純水では、現在、水質指標の一つである溶存酸素(DO)濃度を5ppb以下、例えば1ppb以下とするように管理されることが多い。
【0003】
超純水は、工業用水、井水、水道水などの原水を前処理した後、逆浸透膜分離装置及びイオン交換装置などで構成された一次純水製造装置により原水を処理して一次純水を生成し、さらに、紫外線酸化装置、イオン交換装置及び限外濾過膜分離装置などで構成されたサブシステムによって一次純水を処理することによって製造される。一次純水製造装置とサブシステムとの間には、一次純水を一時的に貯蔵する一次純水タンクが設けられることが多い。
【0004】
溶存酸素を極低濃度とするために、一次純水製造装置やサブシステムには、溶存酸素除去装置が設けられる。また、一次純水タンク内を窒素ガスでシールすることすなわち窒素パージも行われている。
【0005】
純水中から溶存酸素を除去する方法として、特許文献1では、白金族金属を担持した樹脂によって被処理水を処理することが提案されている。特許文献2では、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属を担持した白金族担持モノリスを使用し、被処理水に水素を添加した後に白金族担持モノリスに接触させることで、被処理水から溶存酸素を除去することが提案されている。また特許文献2には、白金族担持モノリスの製造方法も示されている。
【0006】
ところで、超純水が使用されるプロセスによっては、所定量(例えば10ppm程度)の溶存窒素が存在することが望ましい場合があり、近年では、溶存酸素の濃度に加えて溶存窒素の濃度を管理することも求められるようになってきている。超純水中の溶存窒素濃度を制御する方法として、特許文献3では、被処理水の脱気処理を行う際に溶存窒素濃度を測定しつつ脱気膜装置の真空度を調整することによって、溶存窒素濃度を制御する方法が提案されている。特許文献4では、脱気膜等により溶存ガスを除去した後に、高純度の窒素を被処理水に添加することとし、その際、添加される窒素ガスの流量を制御する方法が提案されている。さらに、特許文献5には、溶存酸素を選択的に除去できるパラジウム触媒によって被処理水に対して脱酸素処理を行った後に、被処理水に対して高純度の窒素ガスを溶解させて窒素ガス溶解水を製造する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−93606号公報
【特許文献2】特開2010−240642号公報
【特許文献3】特開平10−309566号公報
【特許文献4】特開2008−86879号公報
【特許文献5】特開2007−699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
超純水製造において溶存窒素濃度を制御する従来の方法のうち、特許文献3に示すものでは、脱気処理における真空度を調整するので溶存酸素の除去性能が低下し、このため、溶存酸素濃度を極低濃度に調整しつつ溶存窒素濃度を調整することは困難である。特許文献4に記載される方法では、溶存ガス除去の際に既に被処理水中に含まれていた溶存窒素も除去されるので、後段の窒素添加工程でより多くの窒素を添加しなくてはならず、窒素添加量に無駄が生じる。特許文献5で示される方法では、溶存酸素を除去したことにより溶存ガスがほとんど存在しない状態となった超純水に対して窒素ガスを添加するため、窒素ガスの溶解速度が速くなり、溶存窒素の濃度調整を細かく行うことが困難となる。
【0009】
本発明の目的は、被処理水である超純水中の溶存酸素を極低濃度まで除去しつつ、ユースポイントで必要となる溶存窒素の濃度管理を容易に行うことができる純水製造方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の純水製造方法は、溶存酸素を含む被処理水を紫外線を照射する照射工程と、紫外線が照射された被処理水に対してイオン交換処理を行うイオン交換工程と、を少なくとも有して純水を生成し、生成された純水が被処理水の少なくとも一部として照射工程に循環される純水製造方法において、被処理水に窒素を添加する窒素添加工程と、白金族金属が担持された触媒金属担持体に、窒素添加工程により窒素が添加された被処理水を接触させて、その被処理水中の溶存酸素を除去する溶存酸素除去工程と、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の純水製造装置は、溶存酸素を含む被処理水を貯留する貯槽と、貯槽から流出する被処理水に紫外線を照射する紫外線酸化装置と、紫外線酸化装置によって紫外線を照射された被処理水中のイオン成分を除去するイオン交換装置と、イオン交換装置によってイオン成分が除去された処理水をユースポイントに供給する供給ラインと、供給ラインから分岐し処理水の一部または全部を貯槽に戻す循環ラインと、を有する純水製造装置であって、被処理水に窒素を添加する窒素添加装置と、白金族金属が担持された触媒金属担持体を備え、窒素添加装置により窒素が添加された被処理水を触媒金属担持体に接触させてこの被処理水中の溶存酸素を除去する溶存酸素除去装置と、を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、被処理水中に溶存酸素が存在する状態で被処理水に対し窒素を添加し、その後、白金族金属が担持された触媒金属担持体(すなわち白金族触媒)に被処理水を接触させて溶存酸素だけを選択的に除去する。これにより、無駄に窒素を消費することなく、ユースポイントで必要となる溶存窒素の濃度管理を容易に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の一形態の純水製造装置の構成の一例を示す図である。
【図2】実験例で純水製造装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。図1に示す本発明の実施の一形態の純水製造装置は、サブシステムである超純水製造装置として構成されており、不図示の一次純水製造装置から一次純水の供給を受けて溶存酸素(DO)濃度が極低濃度に管理され、溶存窒素(DN)濃度が所定の値に管理された超純水を生成してユースポイントに供給するものである。当然のことながら、本発明に基づく純水製造装置は図1に示されたものに限定されるものではない。
【0015】
図1に示す装置は、一次純水を供給水として受け入れる貯槽である一次純水タンク11と、一次純水タンク11から純水を送出するポンプ(P)12とを備えており、ポンプ12に対し、熱交換器13、紫外線酸化装置14、窒素添加装置15、溶存酸素除去装置17、非再生型混床式イオン交換装置(CP)21及び限外濾過膜装置(UF)22がこの順で接続し、限外濾過膜装置22から流出する水が超純水として弁23を介してユースポイントに送られるようになっている。ユースポイントで使用されたなかった分の超純水を一次純水タンク11に戻すために、弁24を備える循環配管が設けられている。この装置では、一次純水タンク11からポンプ12、熱交換器13、紫外線酸化装置14、窒素添加装置15、溶存酸素除去装置17、非再生型混床式イオン交換装置21及び限外濾過膜装置22を経て一次純水タンク11に戻る循環系が形成されている。
【0016】
この構成では、一次純水タンク11内の一次純水は、ポンプ12によって熱交換器13を通って紫外線酸化装置14に供給され、紫外線酸化装置14内で純水に対して紫外線を照射することにより純水中の有機物が分解される。紫外線酸化装置14から流出した純水に対し、続いて、窒素添加装置15により窒素(N2)が添加される。窒素が添加された純水は、溶存酸素除去装置17によって溶存酸素が除去され、次に、非再生型混床式イオン交換装置21においてイオン交換処理により金属等が除去され、さらに、限外濾過膜装置22において微細な不純物が除去されて、超純水としてユースポイントに送られる。一次純水タンク11、ポンプ12、熱交換器13、紫外線酸化装置14、非再生型混床式イオン交換装置21及び限外濾過膜装置22としては、サブシステムとして構成された超純水装製造装置において一般的に用いられているものを使用することができるので、以下、窒素添加装置15及び溶存酸素除去装置17について、詳しく説明する。
【0017】
<窒素添加装置>
窒素添加装置15は、純水中に窒素ガスを供給する窒素供給部と、純水中の溶存窒素濃度を測定する溶存窒素計32と、溶存窒素計32での測定結果から窒素ガスの供給量を決定する制御部33とを有している。窒素供給部は、ガス溶解膜31と、窒素(N2)ガス供給源とガス溶解膜31の間に設けられたマスフローコントローラ34とを備えており、ガス溶解膜31を介して純水中に高純度の窒素ガスを供給する。窒素ガスの供給量は、制御部33によってマスフローコントローラ34で調節される。
【0018】
ガス溶解膜31は、液体は透過させず気体のみを透過させる膜であり、このような膜としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン製の膜や、ポリ四フッ化エチレン等のフッ素樹脂製の膜、さらにはポリスルホン製、シリコンゴム製等の膜がある。また気体透過性膜を中空糸状に形成した中空糸膜もガス溶解膜31として好適に用いられるものであり、そのような中空糸膜の形状は特に制限されないが、中空糸膜の内径は0.1〜1mm程度のものが好ましい。中空糸膜の長さは10〜300cm、特に50〜100cm程度のものが好ましい。
【0019】
マスフローコントローラ34は、流量センサーによって入口側の流量を検知して、流量調節弁により、出口側の流量を設定流量に調節するものである。
【0020】
溶存窒素計32は、窒素が添加された後の純水を被測定水として、弁16を介して被測定水を取り込み、被測定水中の溶存窒素濃度を計測するものである。例えば、被測定水が導入される測定セルを有し、導入前後の熱伝導度の変化速度を熱検出器により求め、求めた変化速度から溶存窒素濃度を算出するものを溶存窒素計32として用いることができる。そのような溶存窒素計としては、市販のもの、例えばハック・ウルトラ社製model−3621などを使用することができる。
【0021】
制御部33は、溶存窒素計32での測定結果とマスフローコントローラ34の流量センサーの検知結果とから、マスフローコントローラ34の設定流量を算出し、マスフローコントローラ34の流量調節弁の開度を調節するような信号をマスフローコントローラ34に送る。
【0022】
<溶存酸素除去装置>
溶存酸素除去装置17は、白金族金属が担持された触媒金属担持体を用いた装置である。以下、白金族金属が担持された触媒金属担持体を白金族触媒41と呼ぶ。溶存酸素除去装置17は、純水を白金族触媒41に接触させることにより、純水中の溶存酸素を除去する。
【0023】
ここで一次純水タンク11が窒素パージされている場合を考える。窒素パージされている場合には、一次純水タンク11から送出される純水中の溶存窒素濃度は3ppm程度となっている。そのような場合に溶存酸素除去に脱気膜を使用するものとすると、
(1)溶存酸素除去用の脱気膜の後段に窒素添加装置を設ける構成では、溶存酸素とともに窒素パージに由来する溶存窒素も脱気膜で除去されるため、脱気膜で除去された分の窒素も窒素添加装置で添加する必要があり、窒素の無駄が生じ、
(2)溶存酸素除去用の脱気膜の前段に窒素添加装置を設ける構成では、脱気膜で除去される溶存窒素を考慮して窒素を添加する必要があり、溶存窒素量の細かい調節が困難となる、
という課題を生じる。そこで本実施形態では、溶存酸素を選択的に除去することができる白金族触媒41を用いて溶存酸素を除去することとしている。これにより、純水中の溶存窒素濃度を低下させることなく溶存酸素のみを除去でき、窒素パージされた一次純水タンク11内で純水に溶解した溶存窒素を有効に利用することができるようになる。
【0024】
白金族触媒41の形態は特に限定されるものではないが、好ましくは、イオン交換樹脂(特にアニオン交換樹脂)に白金族金属を担持したものや、モノリス状有機多孔質であるアニオン交換体(すなわちモノリスアニオン交換体)に白金族金属を担持したものがよい。モノリスアニオン交換体を用いた場合には、1時間当たりにこのモノリスアニオン交換体の体積の2000〜20000倍(すなわちSV=2000〜20000h-1;SVは1時間に触媒担持体体積の何倍の量の流体を流すかの指標)の純水を流すことが可能であるから、担体としてモノリスアニオン交換体を用いることがより好ましい。
【0025】
白金族触媒41のみで溶存酸素除去装置17を構成してもよいが、白金族触媒41を単独で使用した場合には、純水中の溶存酸素との反応量に限度があり、その限度を超えると純水中から溶存酸素を除去できなくなる。そこで、白金族触媒41に対して水素を供給する水素添加手段を備え、白金族触媒41の存在下で水素と溶存酸素とを反応させて水を生成させ、反応した分だけ溶存酸素量が減少するような構成とすることが好ましい。水素添加手段としては、白金族触媒41に水素(H2)ガスを直接添加する構成のものが使用可能であり、また、白金族触媒41の前段でガス溶解膜を介して水素ガスを純水中に添加することも可能である。しかしながら、水素添加手段としては、添加量の調整が容易である点から、図1に示したように、あらかじめ水素を溶解した水素水を溶存酸素除去装置17に通水して白金族触媒41と接触させるような構成とすることが好ましい。図1に示したものでは、水素ガス供給源から水素ガスが供給されて純水に水素を溶解させ水素水を生成する水素水生成装置18と、水素水生成装置18からの水素水の流量を測定する流量計(FI)19と、流量計19と溶存酸素除去装置17との間に設けられた弁20とによって、水素添加手段が構成されている。この水素水は、窒素添加装置15からの純水と混合して白金族触媒41と接触することになる。水素水生成装置18に供給する水素については、不純物混入の防止、及び水素ガスボンベを不要とするいう安全面から、純水を電気分解して生成することが好ましい。水素水生成装置18には例えばガス溶解膜を用いることができる。
【0026】
なお、上述のように水素添加手段を設けた場合、純水中に溶存水素が存在すると、溶存窒素計において実際の溶存窒素濃度よりも高い値で溶存窒素濃度が検出されてしまうおそれがあるので、水素添加は、循環系において、窒素添加装置15の溶存窒素計32への配管の分岐よりも下流で行うことが好ましい。
【0027】
<窒素添加装置と溶存酸素除去装置の配置>
次に、窒素添加装置15と溶存酸素除去装置17との配置関係について説明する。
【0028】
一般にガス溶解膜を介して純水中に窒素ガスを添加する場合、純水中への窒素ガスの溶解速度は、純水中に含まれる気体の分圧の合計とガス溶解膜の気相側における気体の分圧との差が大きいほど大きくなる。つまり、いずれの気体成分についても溶存ガスをほとんど含んでいない純水は、気体が溶け込みやすくなっている。このため、純水中の溶存酸素を除去した後で窒素ガスを添加すると、窒素添加装置15においてマスフローコントローラ34の流量調整弁の開度による窒素ガス流量の調整が困難になり、結果的に純水中の溶存窒素量を細かく調整することが困難になる。そのため本実施形態では、溶存酸素除去装置17の前段に窒素添加装置15を配置する。純水中に溶存酸素が存在した状態で窒素ガスを添加するため、所定の溶存窒素濃度になるように窒素ガス添加量を細かく調整することが容易になる。
【0029】
[実験例]
次に、本実施形態の純水製造装置の有効性を示すために行った実験結果について説明する。
【0030】
図2に示す純水製造装置を構成した。この装置は、図1に示した装置から窒素添加装置15を取り除き、その代わり、弁51〜54と溶存酸素計55及び溶存窒素計56とを設けることにより、溶存酸素除去装置17の入口と出口での純水の溶存酸素濃度及び溶存窒素濃度、すなわち溶存酸素除去装置17の通過の前後での純水における溶存酸素濃度及び溶存窒素濃度を測定できるようにしたものである。溶存酸素濃度は、溶存酸素計55(ハック・ウルトラ社製model−3600)を用いて測定し、溶存窒素濃度は、溶存窒素計56(ハック・ウルトラ社製model−3621)を用いて測定した。溶存酸素除去装置17には、内径16mmの塩化ビニル製カラムに層高40mm(約8mL)でPd担持モノリス(担持量:2.3g/L)を充填して構成した白金族触媒担持体を用いた。一次純水タンク11は窒素パージされており、純水は、溶存酸素除去装置17に対して40L/h(つまりSV=5000h-1)で通水した。溶存酸素除去装置17の通過の前後での純水中の溶存酸素濃度及び溶存窒素濃度の測定結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

表1から、白金族触媒を用いた溶存酸素除去装置では、その前後での溶存窒素濃度に変わりがなく、純水中の溶存酸素を選択的に除去できることがわかる。したがって、本実施形態の純水製造装置のように、窒素添加装置の後段に、白金族触媒を用いた溶存酸素除去装置を配置することにより、溶存酸素濃度を極低濃度にまで低減しつつ、ユースポイントで必要とする溶存窒素濃度にするために添加すべき窒素ガスの量を少なくすることができることが分かる。また、白金族触媒による溶存酸素除去装置を用いる場合には、超純水を循環させる構成として純水製造装置を構成すると、循環する超純水中の溶存窒素濃度が基本的に低下することがないから、一度、ユースポイントで必要な溶存窒素濃度に調整した後は、窒素添加装置による窒素ガスの添加を微調整程度で済ませることができる。
【0032】
[比較例]
図2に示した純水製造装置において溶存酸素除去装置として脱気膜(大日本インキ化学工業株式会社製:EF−002A)を用いたことを除いて、実験例と同様の実験を行った。このときの溶存酸素除去装置の通過の前後での純水中の溶存酸素濃度及び溶存窒素濃度の測定結果を表2に示す。
【0033】
【表2】

表2から、溶存酸素除去装置として脱気膜を使用した場合には、溶存酸素除去装置を通過した純水での溶存窒素濃度が低下しており、溶存酸素だけでなく溶存窒素も溶存酸素除去装置によって除去されてしまうことが分かった。脱気膜による溶存酸素除去装置では、純水中の溶存酸素とともに溶存窒素も除去してしまうため、ユースポイントで必要とする溶存窒素濃度にするために添加すべき窒素ガスの量が、実験例に比べて多くなる。
【0034】
循環系内で超純水を循環させると、溶存酸素除去装置を通過するたびに、溶存窒素も除去されてしまうため、ユースポイントでの溶存窒素濃度を一定値とするためには、除去された窒素の分だけ窒素を再度添加しなければならない、という無駄が生じることも分かる。脱気膜による溶存酸素除去装置で除去される溶存窒素の量は常に一定であるとは言えないので、除去される溶存窒素量の変動に応じて、添加すべき窒素ガスの量を頻繁に調整する必要も生じ、制御が複雑になる。
【符号の説明】
【0035】
11 一次純水タンク
12 ポンプ
13 熱交換器
14 紫外線酸化装置
15 窒素添加装置
16,20,23,24,51〜54 弁
17 溶存酸素除去装置
18 水素水生成装置
19 流量計(FI)
21 非再生型混床式イオン交換装置(CP)
22 限外濾過膜装置(UF)
31 ガス溶解膜
41 白金族触媒
32,56 溶存窒素計
55 溶存酸素計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶存酸素を含む被処理水を紫外線を照射する照射工程と、前記紫外線が照射された被処理水に対してイオン交換処理を行うイオン交換工程と、を少なくとも有して純水を生成し、生成された純水が前記被処理水の少なくとも一部として前記照射工程に循環される純水製造方法において、
前記被処理水に窒素を添加する窒素添加工程と、
白金族金属が担持された触媒金属担持体に、前記窒素添加工程により窒素が添加された被処理水を接触させて、該被処理水中の溶存酸素を除去する溶存酸素除去工程と、
を有することを特徴とする純水製造方法。
【請求項2】
前記照射工程で紫外線が照射された被処理水に対して前記窒素添加工程と前記溶存酸素除去工程を実施し、その後、前記溶存酸素が除去された被処理水に対して前記イオン交換工程を実施する、請求項1に記載の純水製造方法。
【請求項3】
前記窒素添加工程は、前記被処理水にガス溶解膜を介して窒素を添加するガス溶解工程と、前記窒素添加工程より下流側の被処理水中の溶存窒素濃度を測定し、測定された溶存窒素濃度に応じて前記ガス溶解膜に供給される窒素量を制御する制御工程と、を有する、請求項1または2に記載の純水製造方法。
【請求項4】
前記触媒金属担持体に対して水素が供給されるように水素を添加する水素添加工程を有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の純水製造方法。
【請求項5】
前記水素添加工程は、純水に水素を添加して水素水とする工程を有し、前記窒素添加工程によって窒素を添加された被処理水とともに前記水素水が前記触媒金属担持体に接触させられる、請求項4に記載の純水製造方法。
【請求項6】
溶存酸素を含む被処理水を貯留する貯槽と、前記貯槽から流出する被処理水に紫外線を照射する紫外線酸化装置と、前記紫外線酸化装置によって紫外線を照射された被処理水中のイオン成分を除去するイオン交換装置と、前記イオン交換装置によってイオン成分が除去された処理水をユースポイントに供給する供給ラインと、前記供給ラインから分岐し前記処理水の一部または全部を前記貯槽に戻す循環ラインと、を有する純水製造装置であって、
前記被処理水に窒素を添加する窒素添加装置と、
白金族金属が担持された触媒金属担持体を備え、前記窒素添加装置により窒素が添加された被処理水を前記触媒金属担持体に接触させて該被処理水中の溶存酸素を除去する溶存酸素除去装置と、
を有する超純水製造装置。
【請求項7】
前記紫外線酸化装置の後段となり前記イオン交換装置の前段となる位置に前記窒素添加装置及び前記溶存酸素除去装置が配置される請求項6に記載の純水製造装置。
【請求項8】
前記窒素添加装置は、前記被処理水に窒素を添加するガス溶解膜と、前記窒素が添加された被処理水での溶存窒素濃度を測定する溶存窒素計と、測定された溶存窒素濃度に応じて前記ガス溶解膜に供給される窒素の流量を決定して前記ガス溶解膜での窒素添加量を制御する制御部と、を有する請求項6または7に記載の純水製造装置。
【請求項9】
前記触媒金属担持体は、アニオン交換体に白金族金属が担持された触媒金属担持体である請求項6乃至8のいずれか1項に記載の純水製造装置。
【請求項10】
前記アニオン交換体は、モノリス状有機多孔質である請求項9に記載の純水製造装置。
【請求項11】
前記溶存酸素除去装置に水素を供給する水素添加手段をさらに有する、請求項6乃至10のいずれか1項に記載の純水製造装置。
【請求項12】
前記水素添加手段は、純水に水素を添加して水素水として前記溶存酸素除去装置に供給する水素水生成装置を備える、請求項11に記載の純水製造装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−254428(P2012−254428A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129971(P2011−129971)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】