説明

超薄遮蔽層をもつ誘導型受信コイルを有する電子装置及び方法

誘導的に電力供給又は充電される電子装置10,40は、受信コイル12の磁場の悪化を生じることなしに、且つ金属製のオブジェクト24,42に熱を発生することなしに、金属製のオブジェクトをその上に配置することができる受信コイル12を有する。50μm以下の厚さを有する、超薄型、可撓性があり、且つ高い透磁率をもつ金属箔14がコイルとオブジェクトとの間に遮蔽層として設けられる。遮蔽層において放射スリット22が設けられ、この放射スリットは、装置における望まれない渦電流を抑圧し、電力伝送の損失及び熱の発生を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置に関するものであり、より詳細には、超薄遮蔽層をもつ誘導型受信コイルを有する電子装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル機器は、家電製品及び医療機器を含む。モバイル家電製品の幾つかの例は、限定されるものではないが、携帯電話、携帯音楽プレーヤ及びデジタルカメラを含む。医療機器の例は、限定されるものではないが、意図される目的についてモバイル機器を動作させるため、周期的に再充電される必要がある幾つかの形態の電源を含んでおり、電源は、受信コイルを介して誘導的に充電することができる。また、電源は、モバイル機器を動作させる電力を発生する誘導型の電源を含む。誘導的に電力供給又は充電されたモバイル機器について、モバイル機器は、送信コイルの誘導結合の領域に配置され、送信コイルにより発生された交流磁場に応答して、交流磁場からのエネルギーは、受信コイルにより受けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
バッテリのような電源を誘導的に充電するために受信コイルの使用による1つの問題は、バッテリが金属体を一般に有することである。しかし、受信コイル上に金属体を配置することは弊害をもたらす。すなわち、受信コイル上に金属体を配置することは、受信コイルで受けた磁場を不都合なほどに減少させる金属体における誘導された渦電流のため、受信コイルへの誘導電力の伝送を不都合にも悪化させる。さらに、金属体における誘導された渦電流は、金属体における過剰及び/又は望まれない熱を生成する可能性があり、この熱は、モバイル機器の使用に関して安全性に関する懸念を生じさせる。
別の問題は、受信コイルのそばに金属体を配置することであるが、係るソリューションは、対応する機器の大きな領域を使用するか、機器のレイアウトのサイズを増加することになる。
【0004】
上記問題に対処する1つの知られているアプローチは、受信コイルと金属体との間に軟質磁性フェライト層を加えることである。しかし、係る軟質磁性フェライト層は、むしろ厚い。硬質フェライト材料は、脆弱であって、機械的な安定性のために少なくとも1ミリメートル以上の厚さを必要とする。脆弱性の少ない軟質磁性フェライト層の例は、FPC(Ferrite Polymer Compound)を含む。しかし、FPCは、低い透磁率を有する。妥当な遮蔽機能を達成するため、FPC材料は、少なくとも1ミリメートルの厚さを有する必要がある。係る厚さは、削減された寸法を必要とするモバイル機器の応用における使用にとって問題であり、受信コイルと金属体との間の距離は、モバイル機器におけるスペースを節約するため、できるだけ薄くあるべきである。
【0005】
従って、これらの当該技術分野における問題を克服する改善されたシステム及び方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1実施の形態によれば、誘導的に電力供給又は充電されるモバイル機器は、受信コイル、金属体(たとえば再充電可能なバッテリ等)、及び受信コイルと金属体との間に配置された超薄軟質磁性金属箔を含んでおり、超薄軟質磁性金属箔は、有利なことに磁性遮蔽層を提供する。1実施の形態では、超薄軟質磁性金属箔は、50マイクロメートル以下の厚さ(すなわち、厚さ≦50μm)を有するミューメタルからなる。有利なことに、超薄軟質磁性金属箔は、従来知られているソリューションの軟質フェライト装置よりも薄い厚さを超える(すなわち、厚さ≧1mm)。さらに、超薄軟質金属箔は、導電性材料からなる。遮蔽層における望まれない渦電流の形成を消散させるため、遮蔽層には、渦電流の消散機能が設けられる。1実施の形態では、受信コイルは、環状のコイルを備えており、遮蔽層は、受信コイルの一方側で受信コイルを覆うために十分な形状を備えており、遮蔽層の渦電流の消散機能は、遮蔽層に形成される放射スリットを備える。1実施の形態では、放射スリットは、環状に成形された受信コイルを中心とする位置から半径方向に拡がる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図面において、同じ参照符号は、同じ構成要素を示している。さらに、図面は、縮尺比に従って縮小又は拡大するように描かれていないことに留意されたい。
【図1】本発明の実施の形態に係る、超薄遮蔽層をもつ誘導型受信コイルを有する電子装置の分解図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る、超薄遮蔽層をもつ誘導型受信コイルを有する電子装置の幾つかのコンポーネントの上から見下ろした図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る、積層構成における図2の超薄遮蔽層をもつ誘導型受信コイルを有する電子装置の幾つかのコンポーネントの上から見下ろした図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る、製造の様々なステージの間の、超薄遮蔽層をもつ誘導型受信コイルを有する電子装置の一部の断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る、製造過程の様々な段階における、超薄遮蔽層をもつ誘導型受信コイルを有する電子装置の一部の断面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る、製造過程の様々な段階における、超薄遮蔽層をもつ誘導型受信コイルを有する電子装置の一部の断面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る、製造過程の様々な段階における、超薄遮蔽層をもつ誘導型受信コイルを有する電子装置の一部の断面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る、製造過程の様々な段階における、超薄遮蔽層をもつ誘導型受信コイルを有する電子装置の一部の断面図である。
【図9】本発明の別の実施の形態に係る、積層された構成における超薄遮蔽層をもつ誘導受信コイルを有する電子装置の幾つかのコンポーネントの上から見下ろした図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本発明の実施の形態に係る、超薄遮蔽層14をもつ誘導型受信コイル12を有する電子装置10の分解図である。電子装置10は、たとえば、携帯音楽プレーヤである。特に、モバイル機器10は、上部16及び下部18を含む筐体を備えており、上部及び下部は、非導電材料から形成される。装置10の下に近接して、螺旋状のインダクタコイル20は、誘導型の電力受信部として同心円状に配置される。螺旋状のコイル20の上に位置されて、軟質磁性層14は、磁気遮蔽を提供する。磁気遮蔽層14は、予め規定された数の渦電流の消散機能22を含み、この消散機能は、たとえば、本実施の形態で更に記載される様々な実施の形態に従って、遮蔽層において設けられる放射スリットである。たとえばバッテリ又は再充電可能な電源といった導電エレメント24は、遮蔽層14の上に配置される。1実施の形態において、明確に例示されていないが、電気絶縁層又は表面が導電素子24と遮蔽層14との間に設けられ、互いに接触して組み立てられたとき、導電素子24と遮蔽層14との電気的な短絡を防止する。
【0009】
さらに、モバイル機器10は、モバイル機器の動作回路に加えて、たとえば整流ダイオード、共振及び平滑化キャパシタ、及び任意に電流又は電荷制御回路といった、パワーレシーバのための更なるエレクトロニクスを含むプリント回路ボード26を含む。プリント回路ボード26は、参照符号28により示される、適切な導電性エレメントを介して受信コイルに結合される。モバイル機器10におけるバッテリ24は、たとえば交流磁場を生成する送信コイル(図示せず)上に配置されているモバイル機器に応答して、受信コイル12で受けた誘導電力により充電される。
【0010】
図2は、本発明の実施の形態に係る、超薄遮蔽層をもつ誘導型受信コイルを有する電子装置10の幾つかのコンポーネントの上から見下ろした図である。特に、図2は、その関連する螺旋状の導体20をもつ受信コイル12、渦電流の消散機能22をもつ遮蔽層14及び導体要素24からなる1例を示す。図2の実施の形態では、受信コイル12は、たとえば整流ダイオード、共振及び平滑化キャパシタ、及び任意に電圧又は電荷制御回路といった、受信コイルの一方の側に位置されるパワーレシーバの更なるエレクトロニクスを更に含む。図1の回路ボード26のエレクトロニクスに加えて、又は図1の回路ボードのエレクトロニクスに代えて、更なるエレクトロニクスを設けることができる。螺旋状のコイル20の仕様は、所与のバッテリ負荷、充電パラメータ等といった電子装置10の特定の要件に従って選択される。遮蔽層14は、パワーレシーバ12の螺旋状のコイル20の対応するレイアウトの寸法よりも、そのレイアウトに関して寸法において一般的に大きい。さらに、遮蔽層14の厚さの寸法は、本実施の形態において更に説明されるように、パワーレシーバ12の螺旋状のコイル22の厚さに類似しているか、及び/又は螺旋状のコイル22の厚さよりも薄い。
【0011】
図2を更に参照して、コイル12は、以下に本実施の形態において与えられるように、表1において列挙される様々なパラメータにより特徴付けされる。受信コイル12の巻き線20は、可撓性のある基板(たとえばポリイミド、“Flexfoil”)上の銅でエッチングされたプリント回路ボードとして形成することができる。図2の中段において、遮蔽箔を備える遮蔽層14が示されている。遮蔽箔は、ミューメタルに類似した特性をもつ非晶質鉄のタイプの50μmの薄箔を備える。たとえば、遮蔽層材料は、独国のHanauにおけるVakuumschmelzeによるVitroVacを備えることができる。さらに、図2の遮蔽層14は、(以下に本実施の形態で更に説明される)レーザ切断により形成される360のスリットを含む。図2の上部で、導電素子24は、金属製の筐体をもつリチウムイオンのバッテリを備える。
【0012】
図3は、本発明の実施の形態に係る、積層された構成における図2のコンポーネントの上から見下ろした図である。特に、図3は、その関連する螺旋状の導体20をもつ受信コイル12、渦電流の消散機能22(図1)をもつ遮蔽層14、及び導電素子24を示す。さらに、導電素子24は、適切な導電体を介してパワーレシーバ12のエレクトロニクス21に電気的に結合されるバッテリを備える。さらに、図3は、組み立てられたレシーバの1例を示す。組み立てられたレシーバにより、僅かに増加された損失をもつ良好な電力の伝送を示すことができる一方で、遮蔽がない場合又はスリットなしで遮蔽をした場合には損失は顕著である。
【0013】
図4〜8は、本発明の実施の形態に係る、製造過程の様々な段階における、超薄遮蔽層14をもつ誘導型受信コイル12を有する電子装置10(図1及び図3)の一部の断面図である。図4を参照して、誘導型受信コイル12の断面図が示されており、このコイルは、好ましくは、100μm以下の厚さを有する可撓性のある基板30から形成される。基板30は、たとえば、ポリイミド箔(“Flexfoil”とも呼ばれる)を備える。所与の巻き数の導電材料20からなる横方向に配置されるコイルは、本実施の形態で説明される更なるエレクトロニクスへの電気的な接続のための適切な相互接続(図示せず)を含めて、可撓性のある基板30の表面上に形成される。たとえば、導電性材料20のコイルは、銅伝導体の螺旋状の巻き線を備える。図示されるように、1実施の形態では、コイル22は、導体材料の単一層を含む。他の実施の形態では、コイル22は、導体材料の2以上の層を含んでおり、隣接する層は、適切な絶縁基板又は材料により分離される。コイル20の仕様又は特性は、所与の電子装置10の仕様の要件に従って決定される。1実施の形態では、コイルの特性は、以下の表において指定された特性を含む。
【0014】
【表1】

図5を参照して、実質的に平面の上面を有する接着性のある絶縁層32は、基板30及び導電性コイル20を覆うように形成される。層32は、電子装置10の形成において必要とされるように、接着及び絶縁を提供する適切な層を備える。図6に例示されるように、層32の形成に続いて、電子装置10の遮蔽層の要件に従って製造された、構造化された高透磁性の金属シート14は、接着性のある絶縁層32の上面に積層される。従って、統合されたコイルの巻き線20をもつ可撓性のある基板30は、本実施の形態で説明されるように、可撓性のある磁気の高透磁性の遮蔽層14に結合される。
【0015】
1実施の形態では、遮蔽層14は、従来知られている受信コイルの遮蔽層よりも薄い寸法を超える厚さを有する、ミューメタルの超薄軟質磁性金属箔からなる。μT>10000の透磁率でのミューメタルの極端に高い透磁率及び高い飽和磁束のため、遮蔽層について50μm以下での厚さは十分なものである。さらに、この種類の金属は、導電性がある。従って、望まれない損失を生じさせる渦電流が遮蔽材料において誘導される。この損失は、電力の伝送を減少させ、熱を発生し、この熱は、たとえば携帯用の電子装置のバッテリにとって危険な場合がある。磁気遮蔽のために超薄軟質磁性金属箔を使用することができるため、遮蔽層における望まれない渦電流は、本実施の形態で更に記載されるように、遮蔽層に放射スリットを設けることで有利にも抑圧される。一般に、スリットは、レシーバ12のコイル20の電流のトレースに直交して配置される。1実施の形態では、遮蔽層14の厚さは、25μmから100μmの範囲である。
【0016】
図7を参照して、本発明の1実施の形態に係る、遮蔽層14をもつ誘導型受信コイル12の断面図が示される。遮蔽層14は、参照符号22により示される、1以上の渦電流の抑圧又はマイグレーション機能を含む。1実施の形態では、渦電流の抑圧又はマイグレーション機能は、以下に本実施の形態で更に説明されるように、遮蔽層内に形成される放射スリットを備える。参照符号34により示される高さパラメータHは、受信コイル12と遮蔽層14との全体の厚さを表す。本発明の実施の形態によれば、高さHは、300μm未満、好ましくは200μm未満、より好ましくは75〜150μmの間である。
【0017】
更なる理解のため、動作において、受信コイル12の上の配置される軟質磁性遮蔽層14は、有利なことに、遮蔽層の材料を通して受信コイルの磁束を誘導する。これにより、磁束は、図8に例示されるように、遮蔽層14上の金属体24を浸透しない。磁束線は、受信コイルに関して、及び受信コイルの上の遮蔽材料に関して、半径方向において向けられる。
【0018】
抑圧又はマイグレーションの機能を持たずに遮蔽層自身において、渦電流は、磁束の存在において誘導される。すなわち、極端に高い透磁性をもつ可撓性のある材料は、典型的に、導電性である。磁束のある場合における導電層について、渦電流は、磁束線に垂直に流れる。従って、遮蔽層のみについて、渦電流は、電力の伝送を減少させる望まれない損失を生じ、たとえば携帯用の電子装置のバッテリにとって危険である熱を発生する可能性がある。
【0019】
遮蔽層14における望まれない渦電流を回避するため、遮蔽層には、渦電流の抑圧又はマイグレーション機能22が設けられる。1実施の形態では、渦電流の抑圧機能22は、放射スリットを備える。放射スリットは、放射スリットがない場合に存在する本来の渦電流に垂直に配置され、従って渦電流に大きなインピーダンスを課す。このように、渦電流、及び関連する損失が強く低減される。さらに、放射スリット22は、磁束が悪影響しないように、磁束線に平行に配置される。結果として、渦電流の抑圧のためのスリット機能22は、超薄軟質遮蔽層14の磁気遮蔽特性を低下しない。
【0020】
超薄軟質遮蔽層14における渦電流の抑圧又はマイグレーション機能22の有利な効果は、(i)磁場が遮蔽されたままであること(すなわち、遮蔽層は磁場に対してトランスペアレントにされない)、及び(ii)不利な損失及び受信コイル12の誘導率への渦電流の影響が大幅に低減される。この本発明の実施の形態の驚くべき効果は、スリットが磁束線に平行に配置されるために、軟質磁性材料の遮蔽層が磁束を有する能力を保持するという洞察に基づいている。抑圧された渦電流の磁気遮蔽効果に対する寄与は、ごく僅かである。対照的に、メタルハウジングにおいてスリットを有する従来の知られている構造は、ハウジングを磁場に対してトランスペアレントにし、金属性の筐体の遮蔽効果は、相補的な磁場を生成する渦電流のみに応答して生じる(すなわち、渦電流により生じる)。係る従来の知られている構成において、渦電流を抑圧することは望まれない。これは、その状況において渦電流を抑圧することは、遮蔽機能を除くことになり、従ってその意図された目的を損なうためである。
【0021】
本実施の形態において更に導入されたように、放射スリット22をもつ電子装置10の遮蔽箔又は遮蔽層14は、レーザ切断により製造することができる。最初のステップにおいて、透明な接着性のある箔(たとえばtesafilm)は、ミューメタルの一部の裏面に取り付けることができる。透明な接着性のある箔の裏当てをもつミューメタルは、次いで、上面からレーザ切断される。レーザ切断により、ミューメタルは、レーザのエネルギーの大部分を吸収し、融解され、消散される。このように、所望の放射スリットは、金属箔に「切断」される。レーザビームが金属箔を浸透するとすぐ、もはや吸収されない。これは、裏面の透明な箔はレーザビームを吸収しないが、レーザビームを通過するためである。結果として、透明な接着性のある箔は、損傷せず、1つのピースのままである。これに応じて、たとえ遮蔽材料の単一のピース間で残るために橋梁材料が存在しない場合であっても、任意の形状の遮蔽金属箔を切断することができる。最後のステップとして、不必要な金属部分が接着性の箔から除去され、残りの金属構造は、基板又は受信コイルに接着され、透明な接着性のある箔が上になる。更に、必要に応じて、透明な接着性のある箔は、適切な方法を介して分離又は除去される。さらに、遮蔽されたレシーバ12を製造するための更に別の方法は、コイル20の上に遮蔽層14を積層し、次いで、望まれる結果として得られる構造をエッチングすることである。
【0022】
本実施の形態で説明されたように、遮蔽層14は薄い層を含んでおり、遮蔽箔の薄い厚みのため、遮蔽層は、可撓性があり且つ曲げることができる。受信コイルは、可撓性がある基板上に製造することができる。従って、遮蔽層14をもつ全体のレシーバ12は、曲げることができる。更なる利点は、レシーバ及び遮蔽層は、電子装置の筐体の曲げられた形状に容易に適合することができ、高い設計の自由度を可能にする。さらに、遮蔽層におけるスリットの幅は、必要に応じて狭くすることができる。また、スリットは、非導電材料で充填することもできる。遮蔽層に形成されるスリットの数は、所与の電子装置の実装の特定の要件に従って決定される。たとえば、単一の長い対角線のスリットは、プラス効果を提供し、より多くのスリットは、更なる損失における対応する低減において役に立つ可能性がある。
【0023】
図9は、本発明の別の実施の形態に係る、積層された構成における、超薄遮蔽層14をもつ誘導受信コイル12を有する電子装置40の幾つかのコンポーネントの上から見下ろした図である。異なる応用となる例として、図9の実施の形態は、遮蔽層14の上に導電性又は金属体として金属性基板をもつ高出力LED42を含む。また、導電性又は金属体は、大型のランプ又はヒートシンクを備える。
【0024】
以上により、本実施の形態において誘導的に電力供給又は充電される電子装置が記載され、この電子装置は、誘導型受信コイルの第一の側で発生される交流磁場に応答して電流を発生する誘導型受信コイルと、交流磁場が発生された第一の側とは反対である、誘導型受信コイルの第二の側に配置される軟質磁性遮蔽層とを備え、軟質磁性遮蔽層は、(i)付加的なエレメントから交流磁場を遮蔽し、前記付加的なエレメントは、(i)(a)交流磁場により悪影響されるか、又は(i)(b)交流磁場に悪影響を及ぼし、(ii)軟質磁性遮断層及び付加的なエレメントにおける渦電流の形成を軽減する。1実施の形態では、軟質磁性遮蔽層は、100マイクロメートル(100μm)以下の厚さを有する超薄層を含む。
【0025】
別の実施の形態によれば、軟質磁性遮蔽層は、軟質磁性遮蔽層に形成される多数のスリットを含む少なくとも1つの渦電流の軽減機能を含んでおり、スリットは、渦電流の形成に対して大きなインピーダンスを課すように、磁束線に平行であって、渦電流の流れに直交する。1実施の形態では、軟質磁性遮断層に形成されるスリットは、レーザ切断を介して形成される。軟質磁性遮蔽材料の層は、透明な接着性のある箔に付着され、レーザのエネルギーは、所望のサイトで軟質磁性遮蔽材料層に向けられ、対応する軟質磁性遮蔽材料を消散してスリットを形成する。透明な接着性のある箔は、損傷を受けていないままである。別の実施の形態では、軟質磁性遮蔽材料の層は、誘導型受信コイルとプリント回路ボードからなるグループから選択された1つに積層され、材料の層はエッチングされて、スリットをもつ軟質磁性遮蔽層を形成する。
【0026】
更なる実施の形態によれば、誘導型受信コイル及び軟質遮蔽層の全体の厚さは、300μm未満の厚さである。さらに、軟質磁性遮蔽層は、ミューメタル、ナノ結晶性の金属、非晶質の金属からなるグループから選択される材料を含む。後の例では、軟質磁性遮蔽層は、50マイクロメートル以下の厚さを有する。
【0027】
更に別の実施の形態では、軟質磁性遮蔽層は、受信コイルの1つの側で受信コイルを覆うために十分なサイズの形状を有する。更なる実施の形態では、誘導型受信コイルは、環状のコイルを備え、更に、軟質磁性遮蔽層は、環状の受信コイルを中心とする位置から半径方向に拡がるスリットを有する渦電流の軽減機能を含む。更なる実施の形態では、誘導型受信コイルは、可撓性のある基板に統合される導電性材料のコイルを有する可撓性のある基板を有しており、軟質磁性遮蔽層は、可撓性のある層を有する。
【0028】
更に別の実施の形態では、付加的なエレメントは、導電性の筐体をもつ再充電可能なバッテリと電子回路とからなるグループから選択される1つを有する。さらに別の実施の形態では、導電性オブジェクトは、金属製の基板をもつランプを備えており、更に、ランプの金属製の基板は、遮断層を覆うように配置されており、ランプは、発生された電流に応答して電力が供給される。
【0029】
別の実施の形態では、誘導的に電力供給又は充電される電子装置は、誘導型受信コイルの第一の側で発生される交流磁場に応答して電流を発生する誘導型受信コイルと、交流磁場が発生された第一の側とは反対である、誘導型受信コイルの第二の側に配置される超薄軟質磁性遮蔽層とを備え、超薄軟質磁性遮蔽層は、(i)付加的なエレメントから交流磁場を遮蔽し、前記付加的なエレメントは、(i)(a)交流磁場により悪影響されるか、又は(i)(b)交流磁場に悪影響を及ぼし、(ii)遮断層及び付加的なエレメントにおける渦電流の形成を軽減する。遮蔽層は、100マイクロメートル(100μm)以下の厚さを備えており、前記遮蔽層は、遮蔽層で形成された多数のスリットを備える少なくとも1つの渦電流の軽減機能を含んでおり、スリットは、渦電流の形成に対して大きなインピーダンスを課すように、磁束線に実質的に平行であって、渦電流の流れに対して直交しており、遮蔽層は、ミューメタル、ナノ結晶性の金属及び非晶質の金属からなるグループから選択される材料を含む。
【0030】
更なる実施の形態では、導電性オブジェクトは、(i)導電性の筐体をもつ再充電可能なバッテリ、(ii)電子回路及び(iii)金属製の基板をもつランプモジュール、からなるグループから選択される1つを備えており、更に、ランプモジュールの金属製の基板は、遮蔽層を覆うように配置され、ランプは、発生された電流に応答して電力が供給される。1実施の形態では、ランプモジュールは、高出力LEDモジュールを備える。
【0031】
本発明の別の実施の形態によれば、誘導的に電力供給又は充電される電子装置の製造方法(configuring method)は、誘導型受信コイルの第一の側で発生された交流磁場に応答して電流を発生する誘導型受信コイルを設けるステップ、交流磁場が発生される第一の側とは反対にある、誘導型受信コイルの第二の側に、超薄軟質磁性遮蔽層を設けるステップを含み、超薄軟質磁性遮蔽層は、(i)付加的なエレメントから交流磁場を遮蔽し、前記付加的なエレメントは、(i)(a)交流磁場により悪影響されるか、又は(i)(b)交流磁場に悪影響を及ぼし、(ii)遮断層及び付加的なエレメントにおける渦電流の形成を軽減する。遮蔽層は、100マイクロメートル(100μm)以下の厚さを備えている。
【0032】
本方法の別の実施の形態では、前記遮蔽層を設けるステップは、遮蔽層に形成される多数のスリットを含む少なくとも1つの渦電流の軽減機能を設けるステップを含んでおり、スリットは、渦電流の形成に対して高いインピーダンスを課すように、磁束線に平行であって、渦電流の流れに直交する。更に別の実施の形態では、軟質磁性遮断層に形成されるスリットは、レーザ切断を介して形成され、軟質磁性遮断材料からなる層は、透明な接着性のある箔に付着され、レーザのエネルギーは、所望のサイトで軟質磁性遮蔽材料層に向けられ、対応する軟質磁性遮蔽材料を消散してスリットを形成し、透明な接着性のある箔は、損傷を受けていないままである。
【0033】
本方法の更なる実施の形態では、誘導型受信コイル及び超薄軟質磁性遮蔽層の全体の厚さは、300μm未満の厚さであり、超薄軟質磁性遮蔽層は、ミューメタル、ナノ結晶性の金属及び非晶質の金属からなるグループから選択された材料を含む。さらに、覆っているオブジェクトは、(i)導電性の筐体をもつ再充電可能なバッテリ、(ii)電子回路及び(iii)金属製の基板をもつランプモジュールからなるグループから選択された1つを含んでおり、さらに、ランプモジュールの金属製の基板は、遮蔽層を覆うように配置されており、ランプモジュールは、発生された電流に応答して電力が供給される。1実施の形態では、ランプモジュールは、高出力LEDモジュールを備える。
【0034】
幾つかの例示的な実施の形態のみが詳細に記載されたが、当業者であれば、本発明の実施の形態の新たな教示及び利点から実質的に逸脱することなしに、例示的な実施の形態において多くの変更が可能であることを理解されるであろう。たとえば、本発明の実施の形態は、本発明の実施の形態により可能となる、磁場に基づいてデータ通信機能を備える電子装置に適用することができる。たとえば、スリットは、電子装置10の筐体16,18内に配置される無線周波数識別(RFID)タグの検出を可能にする。さらに、近距離場通信(NFC)も可能になる。さらに、軟質遮蔽層14は、誘導型送信機でのモバイル機器の検出のために使用される。従って、全ての係る変更は、以下の特許請求の範囲で定義されるように本発明の実施の形態の範囲に含まれることが意図される。請求項において、「ミーンズ・プラス・ファンクション」の記載は、記載された機能、及び構造的に等価なものだけでなく、等価な構造をも実行するとして本実施の形態で記載された構造をカバーすることが意図される。
【0035】
さらに、1以上の請求項における括弧に配置される参照符号は、請求項を限定するものとして解釈されるべきではない。単語「有する“comprising”、“comprises”」等は、全体として請求項又は明細書で列挙されたもの以外の構成要素又はステップの存在を排除しない。構成要素の単数の参照は、係るエレメントの複数の参照を排除するものではなく、逆に、構成要素の複数の参照は、係るエレメントの単数の参照を排除するものではない。1以上の実施の形態は、幾つかの個別の構成要素を備えるハードウェアにより、及び/又は適切にプログラムされたコンピュータにより実現される。幾つかの手段を列挙する装置の請求項において、これらの手段の幾つかは、同一のアイテムのハードウェアにより実施される。所定の手段が相互に異なる従属の請求項で引用される事実は、これらの手段の組み合わせを利用するために使用することができないことを示すものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導的に電力供給又は充電される電子装置であって、
誘導型の受信コイルの第一の側で発生される交流磁場に応答して電流を生成する誘導型の受信コイルと、
前記交流磁場が発生される前記第一の側とは反対にある、前記誘導型の受信コイルの第二の側に配置される軟質磁性遮蔽層とを備え、
前記軟質磁性遮蔽層は、前記交流磁場により望まれない影響を受けるか又は前記交流磁場に望まれない影響を及ぼす付加的なエレメントから前記交流磁場を遮蔽し、前記軟質磁性遮蔽層及び前記付加的なエレメント内での渦電流の形成を軽減する、
ことを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記軟質磁性遮蔽層は、100μm以下の厚さを有する超薄層を含む、
請求項1記載の電子装置。
【請求項3】
前記軟質磁性遮蔽層は、前記軟質磁性遮蔽層内で形成される多数のスリットを含む少なくとも1つの渦電流を軽減する手段を含み、
前記スリットは、渦電流の形成に対して高いインピーダンスを課すように、磁束線に平行であって、渦電流の流れに直交するように設けられる、
請求項1記載の電子装置。
【請求項4】
前記誘導型受信コイル及び前記軟質磁性遮蔽層の全体の厚さは、300μm未満の厚さである、
請求項1記載の電子装置。
【請求項5】
前記軟質磁性遮蔽層は、ミューメタル、ナノ結晶性の金属、及び非晶質の金属からなるグループから選択される材料を含む、
請求項1記載の電子装置。
【請求項6】
前記軟質磁性遮蔽層は、50μm以下の厚さを有する、
請求項5記載の電子装置。
【請求項7】
前記軟質磁性遮蔽層は、前記誘導型受信コイルの単一の側で前記誘導型の受信コイルを覆うために十分なサイズからなる形状を有する、
請求項1記載の電子装置。
【請求項8】
前記誘導型受信コイルは、環状のコイルを備え、
前記軟質磁性遮断層は、前記環状のコイルを中心とする位置から半径方向に拡がるスリットを含む渦電流の軽減手段を含む、
請求項1記載の電子装置。
【請求項9】
前記誘導型受信コイルは、可撓性のある基板に統合される導電性材料のコイルを有する前記可撓性のある基板を有しており、
軟質磁性遮蔽層は、可撓性のある層を有する、
請求項1記載の電子装置。
【請求項10】
前記付加的なエレメントは、導電性の筐体をもつ再充電可能なバッテリと電子回路とからなるグループから選択される1つを含む、
請求項1記載の電子装置。
【請求項11】
前記付加的なエレメントは、金属製の基板をもつランプを含み、
前記ランプの前記金属製の基板は、前記軟質磁性遮蔽層を覆うように配置され、前記ランプは、前記生成された電流に応答して電力が供給される、
請求項1記載の電子装置。
【請求項12】
前記軟質磁性遮蔽層に形成されたスリットは、レーザ切断により形成され、
前記軟質磁性遮蔽層は、透明な接着性のある箔に付着され、
レーザのエネルギーは、所望のサイトで前記軟質磁性遮蔽層に向けられ、前記透明な接着性のある箔が損傷を受けていないままで、対応する軟質磁性遮蔽層の材料を消散させて前記スリットを形成する、
請求項3記載の電子装置。
【請求項13】
前記軟質磁性遮蔽層は、前記誘導型受信コイルとプリント回路ボードとからなるグループから選択された1つに積層され、
前記軟質磁性遮蔽層は、スリットをもつ軟質磁性遮蔽層を形成するためにエッチングされる、
請求項3記載の装置。
【請求項14】
誘導的に電力供給又は充電される電子装置であって、
誘導型の受信コイルの第一の側で発生される交流磁場に応答して電流を生成する誘導型受信コイルと、
前記交流磁場が発生される前記第一の側とは反対にある、前記誘導型受信コイルの第二の側に配置される超薄軟質磁性遮蔽層とを備え、
前記超薄軟質磁性遮蔽層は、前記交流磁場により望まれない影響を受けるか又は前記交流磁場に望まれない影響を及ぼす付加的なエレメントから前記交流磁場を遮蔽し、前記超薄軟質磁性遮蔽層及び前記付加的なエレメントにおける渦電流の形成を軽減し、
前記超薄軟質磁性遮蔽層は、100μm以下の厚さを含み、
前記超薄軟質磁性遮蔽層は、前記超薄軟質磁性遮蔽層において形成される多数のスリットを含む少なくとも1つの渦電流を軽減する手段を含み、
前記スリットは、渦電流の形成に対して高いインピーダンスを課すように、磁束線に対して平行であって、渦電流の流れに対して直交するように設けられ、
前記超薄軟質磁性遮蔽層は、ミューメタル、ナノ結晶性の金属及び非晶質の金属からなるグループから選択される材料を含む、
ことを特徴とする電子装置。
【請求項15】
前記付加的なエレメントは、導電性の筐体をもつ再充電可能なバッテリ、電子回路、及び金属製の基板をもつランプモジュールからなるグループから選択される1つを含み、
前記ランプモジュールの前記金属製の基板は、前記超薄軟質磁性遮蔽層を覆うように配置され、前記ランプモジュールは、前記生成された電流に応答して電力が供給される、
請求項14記載の電子装置。
【請求項16】
誘導的に電力供給又は充電される電子装置の製造方法であって、
誘導型受信コイルの第一の側で発生される交流磁場に応答して電流を生成する誘導型受信コイルを設けるステップと、
前記交流磁場が発生される前記第一の側とは反対にある、前記誘導型受信コイルの第二の側に軟質磁性遮蔽層を配置するステップとを含み、
前記軟質磁性遮蔽層は、前記交流磁場により望まれない影響を受けるか又は前記交流磁場に望まれない影響を及ぼす付加的なエレメントから前記交流磁場を遮蔽し、前記軟質磁性遮蔽層及び前記付加的なエレメント内での渦電流の形成を軽減し、
前記軟質磁性遮蔽層は、100μm以下の厚さを有する、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項17】
前記軟質磁性遮蔽層を配置するステップは、前記軟質磁性遮蔽層内で形成される多数のスリットを含む、少なくとも1つの渦電流の軽減手段を含み、
前記スリットは、渦電流の形成に対して高いインピーダンスを課すように、磁束線に平行であって、渦電流の流れに直交するように設けられる、
請求項16記載の製造方法。
【請求項18】
前記軟質磁性遮蔽層に形成されたスリットは、レーザ切断により形成され、
前記軟質磁性遮蔽層は、透明な接着性のある箔に付着され、
レーザのエネルギーは、所望のサイトで前記軟質磁性遮蔽層に向けられ、前記透明な接着性のある箔が損傷を受けていないままで、対応する軟質磁性遮蔽層の材料を消散させて前記スリットを形成する、
請求項17記載の製造方法。
【請求項19】
前記誘導受信コイル及び前記軟質磁性遮蔽層の全体の厚さは、300μm未満の厚さであり、
前記軟質磁性遮蔽層は、ミューメタル、ナノ結晶性の金属、及び非晶質の金属からなるグループから選択される材料を含む、
請求項16記載の製造方法。
【請求項20】
前記付加的なエレメントは、導電性の筐体をもつ再充電可能なバッテリ、電子回路、及び金属製の基板をもつランプモジュールからなるグループから選択される1つを含み、
前記ランプモジュールの前記金属製の基板は、前記軟質磁性遮蔽層を覆うように配置され、前記ランプモジュールは、前記生成された電流に応答して電力が供給される、
請求項16記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−527813(P2012−527813A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511378(P2012−511378)
【出願日】平成22年5月5日(2010.5.5)
【国際出願番号】PCT/IB2010/051979
【国際公開番号】WO2010/133995
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】