説明

超電導ケーブル、及びそれを用いた接続構造並びにその施工方法

【課題】断熱管の端部を切断しても断熱管全長に亘って真空状態が破壊されることがなく、長さ調整が可能な超電導ケーブルを提供する。
【解決手段】超電導ケーブル101は、ケーブルコア1と、このケーブルコア1を収納する断熱管2とを備える。断熱管2は、内管21bと外管22bとを有する二重管構造の基部2bと、基部2bの端部に延設され、延長内管21aと延長外管22aとの二重管からなる長さ調整部2aとを備える。基部2bと長さ調整部2aとは隔壁23により分離され、内管21bと外管22bとの間に形成される空間が密閉されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導ケーブル、及びそれを用いた接続構造並びにその施工方法に関する。特に、断熱管の端部を切断して長さ調整をすることができる超電導ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
超電導ケーブルは、既存のケーブルと比較して、大容量の電流を低損失で送電できることから、省エネルギー技術として期待されている。最近では、実用化に向けて超電導ケーブルを実系統に接続し、実証試験が実施されている。
【0003】
超電導ケーブルは、超電導導体を有するケーブルコアを内管と外管とからなる二重管構造の断熱管内に収納し、この断熱管内に冷媒(例、液体窒素(LN2))を流通させることで、超電導導体を冷却して超電導状態とする構造のものが代表的である。また、断熱管は、断熱性を高めるために、両端部が封止部材により封止され、内管と外管との間に形成される空間が真空に保たれている。
【0004】
また、超電導ケーブルは、製造上、輸送上、布設上などの理由によりケーブルの単位長が制限される。そのため、超電導ケーブルを用いて単位長を超える長距離に亘る線路を構築する場合、線路の途中に超電導ケーブル同士を接続する中間接続部や、線路の終端で超電導ケーブルを他の電力機器(例えば、常電導ケーブル)に接続する終端接続部が必要となる(以下、中間接続部及び終端接続部を、単に接続部と呼ぶ)。図5を参照して説明すると、通常、超電導ケーブル10の接続部10jの形成は、断熱管2の端部からケーブルコア1を引き出し、露出させた超電導導体と接続対象とを導電接続部材を介して接続し、その外周に絶縁紙を巻回して補強絶縁層を形成することで行われている。そして、断熱管2の内側(内管21)に超電導ケーブル10の接続部10jを収納する冷媒容器31を取り付けると共に、更に断熱管2の外側(外管22)にこの冷媒容器31を収納する真空容器32を取り付けることで接続構造3を施工する。この真空容器32は、筒状部32pとフランジ部32fとで構成され、フランジ部32fを断熱管2の外管22に装着した台座30に溶接することで、断熱管2の外管22に取り付けられている。
【0005】
ところで、超電導ケーブルを実用化する上で、常電導ケーブルが既に布設されている既存の地中管路を利用することが検討されている。超電導ケーブルを管路に布設する場合、超電導ケーブルの一端にプーリングアイを取り付け、このプーリングアイを牽引することで、管路内に超電導ケーブルを引き込んでいる(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006‐197702号公報
【特許文献2】特開2007‐287388号公報(段落0015、0030)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
管路に布設された超電導ケーブルの端部は、例えばマンホール内に引き入れられ、マンホール内で接続構造の施工が行われる。接続構造を施工する場合、従来の超電導ケーブルでは、ケーブルコアは、断熱管内に蛇行した状態で配置したり、切断するなどして、長さを調整することができるが、断熱管は、両端部を封止して、内管と外管との間の空間を真空状態としているため、切断して長さを調整することができない。通常、断熱管の真空引きは超電導ケーブルの製造時に行われるため、超電導ケーブルのケーブル長は工場において製造時に固定されることになる。
【0008】
従来の超電導ケーブルを管路に布設する場合、管路長を予め測定して求めておき、その測定長に基づいて、製造時の超電導ケーブル(ケーブルコア及び断熱管)の長さを決めている。マンホール内のスペース、接続構造の冷媒容器や真空容器などのサイズは固定されるため、接続構造には若干の裕度があるものの、測定誤差が大きいと接続構造を施工することができない虞がある。例えば、マンホールの長さLm=10000mm、接続構造の長さLj=5500mm、断熱管の端部から真空容器の取付位置までの長さLep=500mm、真空容器の取付位置から管路の開口部が形成されたマンホール壁面までの長さLpw=2250mmの場合では、測定長の誤差範囲は±50mm以内に抑えることが要求される。そのため、管路長の測定は高精度に行う必要があり、実測により求めることが望まれるが、管路が屈曲していたり傾斜していると測定が難しく、その結果、管路長の測定に多大な時間を要することがある。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、断熱管の端部を切断しても断熱管全長に亘って真空状態が破壊されることがなく、長さ調整が可能な超電導ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の超電導ケーブルは、超電導導体を有するケーブルコアと、このケーブルコアを収納する断熱管とを備える。そして、断熱管は、内管と外管とを有する二重管構造の基部と、この基部の少なくとも一方の端部に延設された延長管からなる長さ調整部とを備える。この基部の両端部には隔壁が形成され、内管と外管との間に形成される空間が密閉されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、超電導ケーブルを管路に布設して接続構造の施工を行う際、断熱管の長さ調整部を切断して超電導ケーブルを所定の長さに調整したとしても、断熱管の基部の密閉状態を維持することができる。そのため、断熱管全長に亘って真空状態が破壊されることがなく、断熱管全体としての断熱性の低下を抑制することができる。また、超電導ケーブルの長さ調整が可能であるため、管路長は簡易測定により大まかに求めておけばよいので、測定時間を大幅に短縮することができる。
【0012】
断熱管の長さは、接続構造を施工するのに必要な長さ(図5中、Lep+Lpwの合計長さ)と実際の管路長とを足した長さが必要である(以下、この長さのことを必要長さと呼ぶ)。本発明の超電導ケーブルでは、簡易測定により得られた管路長の大まかな値に基づいて製造時の超電導ケーブルの長さ、即ち断熱管の長さを決めるが、断熱管の長さは必要長さに余裕代を加えた長さに設定する(以下、この長さのことを設定長さと呼ぶ)。具体的には、基部の長さは必要長さより短くなるように設定し、長さ調整部の長さは余裕代を含む長さに設定することで、断熱管の設定長さが必要長さよりも長くなるように設定する。このようにすれば、長さ調整部を切断して断熱管の長さを必要長さに調整しても、基部の密閉状態が破壊されることもない。一つの長さ調整部の長さは3000mm以上5000mm以下とすることが好ましく、3000mm以上とすることで十分な余裕代を確保し易い。一方、5000mm以下とすることで基部の長さを十分に確保して、断熱管全体としての断熱性が低下することを抑制し易い。
【0013】
また、本発明の超電導ケーブルでは、基部の両端部には隔壁が形成され、内管と外管との間に形成される空間が密閉されている。基部の長さが20m未満であれば、接続構造の施工後に内管と外管との間を真空引きしても、ある程度高いレベルの真空状態を実現することができる。しかし、基部の長さが20m以上、特に100m以上の場合は、接続構造の施工後に内管と外管との間を真空引きしても、十分な断熱性が得られる高いレベルの真空状態を実現することが難しい。そのため、基部の真空引きは工場内で行い、高真空を得るためのベーキング作業などを実施して、両端部に隔壁を形成して内管と外管との間の空間を密閉することで、所望の真空度にしておく方が有利である。
【0014】
本発明の超電導ケーブルにおいて、長さ調整部は延長内管と延長外管との二重管からなり、延長内管及び延長外管が基部の内管及び外管と同径であることが好ましい。
【0015】
長さ調整部が延長内管と延長外管との二重管からなることで、接続構造の施工後、真空容器を真空引きする際に、延長内管と延長外管との間に形成される空間も同時に真空引きすることができる。また、延長内管が基部の内管と同径であることで、長さ調整部において超電導ケーブルを収納する空間が小さくなり過ぎることもなく、延長外管が基部の外管と同径であることで、長さ調整部を管路内に引き込めないという問題も生じない。
【0016】
このような構成の断熱管は、例えば従来の断熱管を利用して次のようにして作製することができる。第一の方法は、真空引きした設定長さを有する断熱管を用意し、この断熱管の端部から長さ調整部の長さ分の位置でかしめて内管と外管とを接合する。この場合、かしめ箇所が基部の端部となり、内管と外管とが接合されることで隔壁が形成される。また、断熱管の端部からかしめ箇所までが長さ調整部となり、この長さ調整部は、基部と同様、内管(延長内管)と外管(延長外管)との二重管からなる。第二の方法は、基部の長さを有する真空二重管を用意し、この二重管の端部に長さ調整部の長さを有する延長内管及び延長外管を接続する。この場合、基部を構成する真空二重管の端部の封止部材が隔壁となり、延長内管及び延長外管の径は基部の内管及び外管と同径とする。また、保管時や輸送時に延長内管と延長外管との間の空間に水分などが浸入することを防ぐため、この空間に窒素ガスを充填すると共に長さ調整部の端部に仮封止部材を取り付け、密閉しておくことが好ましい。更に、この仮封止部材は、超電導ケーブルを管路に布設する際に延長外管の変形を防止して、延長内管と延長外管との間の空間を保持する機能も兼ね備える構成とすることが好ましい。
【0017】
本発明の超電導ケーブルにおいて、長さ調整部は基部の内管と同径の一重管で構成してもよい。
【0018】
このような構成の断熱管は、上記した第一の方法で作成した断熱管において長さ調整部の延長外管を取り外したり、第二の方法で断熱管を作製する際、延長内管のみを接続することで作製することができる。
【0019】
本発明の超電導ケーブルにおいて、基部の一方の端部には、長さ調整部を設け、基部の他方の端部には、内管と外管との間に形成される空間と連通する真空引きポートを隔壁に設ける構成としてもよい。
【0020】
長さ調整部は、基部の一方の端部或いは両端部に設けてもよい。基部の両端部に長さ調整部を設けた場合は、超電導ケーブルの両端部において長さ調整が可能である。また、基部の一方の端部にのみ長さ調整部を設ける場合は、基部の他方の端部に真空引きポートを設けておくことで、接続構造の施工時、施工後において、この真空引きポートから内管と外管との間の空間の真空度を確認したり、真空引きを行うことができる。
【0021】
上記した本発明の超電導ケーブルを用いて接続構造を施工する場合、以下に説明する本発明の超電導ケーブルを用いた接続構造の施工方法を利用することができる。
【0022】
本発明の超電導ケーブルを用いた接続構造の施工方法は、次の工程を備えることを特徴とする。
(1)超電導ケーブルの断熱管の長さ調整部を切断し、その超電導ケーブルを所定の長さに調整する工程
(2)超電導ケーブルの接続部を形成する工程
(3)長さ調整された断熱管の内側に超電導ケーブルの接続部を収納する冷媒容器を取り付け、断熱管の外側にその冷媒容器を収納する真空容器を取り付ける工程
【0023】
この接続構造の施工方法によれば、施工する際に超電導ケーブルの長さを調整しているので、施工作業が行い易く、またマンホール内での接続構造の配置の自由度が高い。
【0024】
また、上記した本発明の超電導ケーブルを用いて接続構造を構成する場合、以下に説明する本発明の超電導ケーブルを用いた接続構造とすることが望ましい。
【0025】
本発明の超電導ケーブルを用いた接続構造は、次の構成を備えることを特徴とする。断熱管が、内管と外管とを有する二重管構造の基部と、この基部の少なくとも一方の端部に延設され、延長内管と延長外管との二重管からなる長さ調整部とを備える。この基部の両端部には隔壁が形成され、内管と外管との間に形成される空間が密閉されている。そして、長さ調整部の延長内管には超電導ケーブルの接続部を収納する冷媒容器が取り付けられ、基部の外管又は長さ調整部の延長外管にはその冷媒容器を収納する真空容器が取り付けられている。更に、延長内管と延長外管との間に形成される空間と冷媒容器と真空容器との間に形成される空間とが連通している。
【0026】
この接続構造によれば、接続構造の施工後、真空容器を真空引きして冷媒容器と真空容器との間の空間を真空状態とした際、延長内管と延長外管との間の空間も真空状態とすることができる。そのため、超電導ケーブルの運転時には断熱管全長に亘って真空状態が保持されるので、断熱管全体としての断熱性の低下が生じない。
【発明の効果】
【0027】
本発明の超電導ケーブルは、断熱管が基部と長さ調整部とを備えることで、基部の真空状態を維持したまま、長さ調整部を切断して超電導ケーブルの長さを調整することができる。また、製造時の超電導ケーブルの長さを決定するための管路長の測定を簡易化することができるので、超電導ケーブルの製造前段階での作業時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る超電導ケーブルの基本構造の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る超電導ケーブルの要部(端部)を示す長手方向に沿って切断した概略断面図である。
【図3】実施の形態1に係る超電導ケーブルを用いた接続構造の要部(取り付け部)を示す長手方向に沿って切断した概略断面図であり、(A)は隔壁が真空容器内に位置している状態を示し、(B)は隔壁が真空容器外に位置している状態を示す。
【図4】(A)は本発明の実施の形態2に係る超電導ケーブルの要部(端部)を示す長手方向に沿って切断した概略断面図であり、(B)はこの超電導ケーブルを用いた接続構造の要部(取り付け部)を示す長手方向に沿って切断した概略断面図である。
【図5】従来の超電導ケーブルを用いた接続構造を示す長手方向に沿って切断した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図を用いて説明する。また、図中において同一部材には同一符号を付している。
【0030】
図1は、本発明に係る超電導ケーブルの基本構造の一例を示す概略断面図である。超電導ケーブル10は、3心のケーブルコア1を撚り合わせて断熱管2内に一括に収納した構造である。断熱管2は、内管21と外管22とからなる二重管構造のコルゲート管であり、両管21、22の間が真空引きされ、両端部が封止部材により封止されている。外管22上には防食層25が形成されている。
【0031】
一方、ケーブルコア1は、中心から順にフォーマ11、超電導導体12、絶縁層13、シールド層14、保護層15を配置した構造である。超電導導体12及びシールド層14は、Bi2223系超電導テープ線材を巻回することで形成されている。また、絶縁層13は、PPLP(登録商標、Polypropylene Laminated Paper)を巻回することで形成されている。
【0032】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る超電導ケーブル101は、上記した超電導ケーブル10を利用して作製する。例えば、設定長さを有する超電導ケーブル10を用意し、真空引きした断熱管2の端部から長さ調整部2aの長さ分の位置でかしめて内管21と外管22とを接合し、断熱管2をかしめ箇所で基部2bと長さ調整部2aとに分離することで作製する(図2を参照)。このとき、断熱管2(長さ調整部2a)の端部には封止部材20が配置される共に、内管21と外管22とが接合されることで隔壁23が形成される。また、基部2bは、内管21bと外管22bとの二重管からなり、長さ調整部2aは、延長内管21aと延長外管22aとの二重管からなる。長さ調整部2aの長さは、例えば3000mm〜5000mmに設定する。
【0033】
図3は、この超電導ケーブル101を用いた接続構造の要部を示す概略断面図である。ここでは、超電導ケーブルの中間接続部を収納する接続構造を例に挙げて説明する。接続構造3は、超電導ケーブルの接続部を収納する冷媒容器31と、冷媒容器31を収納する真空容器32とで構成され、冷媒容器31が断熱管2の内側に取り付けられ、真空容器32が断熱管2の外側に取り付けられる構造である。また、この真空容器32は、筒状部32pとフランジ部32fとで構成され、断熱管2の外側に装着した台座30に溶接することで取り付けられる。
【0034】
具体的な接続構造の施工方法について説明する。まず、超電導ケーブル101を管路Tに布設してマンホールM内に引き出した後、断熱管2の長さ調整部2aを切断して、超電導ケーブル101を所定の長さに調整する。その後、超電導ケーブル101の接続部を形成する。次に、長さ調整された断熱管2の内側に超電導ケーブル101の接続部を収納する冷媒容器31を取り付けた後、断熱管2の外側に冷媒容器31を収納する真空容器32を取り付ける。ここで、接続構造を施工する際の長さ調整部2aの切断量が多い場合は、図3(A)に示すように、基部2bの端部に形成された隔壁23が真空容器32の内に位置することになる。また、この場合、長さ調整部2aの延長内管21aに冷媒容器31が取り付けられ、基部2bの外管22bに真空容器32が取り付けられることになる。真空容器32の取り付けは、例えば外管22bの外周面に嵌合する内周面を有する台座30を外管22bに嵌め込み装着し、台座30にフランジ部32fを溶接する共に、フランジ部32fと筒状部32pとを溶接で一体化する。一方、長さ調整部2aの切断量が少ない場合は、図3(B)に示すように、隔壁23が真空容器32の外に位置することになる。この場合では、長さ調整部2aの延長外管22aに真空容器32が取り付けられ、その他の点は図3(A)を参照して説明したのと同様となる。
【0035】
接続構造の施工時には、長さ調整部2aが切断され、延長内管21aと延長外管22aとの間の空間は一度真空状態が破壊されることになるが、延長内管21aと延長外管22aとの間の空間は冷媒容器と真空容器との間の空間と連通することになる。そのため、接続構造の施工後、真空容器32の真空引きポート33から冷媒容器31と真空容器32との間の空間を真空引きするので、延長内管21aと延長外管22aとの間の空間は再度真空状態に保持されることになる。また、例え隔壁23が管路T内に位置することになっても、延長内管21aと延長外管22aとの間の空間は真空状態が保持されることになる。更に、長さ調整部2aの上限を5000mmに設定しているので、延長内管21aと延長外管22aとの間の空間を短時間で高レベルの真空状態とすることができる。
【0036】
以上説明した実施の形態1に係る超電導ケーブル101は、接続構造を施工する際に長さ調整部2aを切断して長さを調整しても、基部2bの真空状態を維持することができる。また、超電導ケーブルの長さ調整が可能であるため、製造時の超電導ケーブルの長さを決定するための管路長の測定を簡易化することができるので、超電導ケーブルの製造前段階での作業時間を短縮することができる。加えて、接続構造の施工後、真空容器32を真空引きするついでに延長内管21aと延長外管22aとの間の空間も真空引きされるので、断熱管全長に亘って真空状態が保持されるため、断熱管全体としての断熱性の低下が生じない。
【0037】
その他、超電導ケーブル101では、基部2bの一端部に対して長さ調整部2aを一つ設ける構成を示したが、例えば長さ調整部2aにおいてかしめ箇所を増やす、即ち隔壁23を複数形成して、長さ調整部2aを複数に分割してもよい。しかし、隔壁23を増やすとその分熱浸入が多くなるため、長さ調整部2aは基部2bの一端部に対して一つ設けることが好ましいと考えられる。
【0038】
(実施の形態2)
図4(A)は、本発明の実施の形態2に係る超電導ケーブルの要部を示す縦断面図である。超電導ケーブル102は、断熱管2の長さ調整部2aが実施の形態1に係る超電導ケーブル101と相違し、その他の点は超電導ケーブル101と同様である。以下、相違点を中心に説明し、その他の点は説明を省略する。
【0039】
超電導ケーブル102は、例えば超電導ケーブル101と同様に、断熱管2をかしめて基部2bと長さ調整部2aとに分離した後、長さ調整部2aの延長外管22aを取り除くことで作製する。つまりこの場合では、長さ調整部2aが延長内管21aのみの一重管からなる。
【0040】
図4(B)は、この超電導ケーブル102を用いた接続構造の要部を示す概略断面図である。ここでも、超電導ケーブルの中間接続部を収納する接続構造を例に挙げて説明し、接続構造3の構成並びに接続構造の施工方法は、図3を参照して説明した超電導ケーブル101を用いた接続構造とほぼ同様である。ただし、接続構造を施工する際の長さ調整部2aの切断量が少ない場合は、接続構造の施工方法が若干相違するので、その点を中心に説明する。
【0041】
長さ調整部2aの切断量が少ない場合は、図4(B)に示すように、隔壁23が真空容器32の外に位置することになる。この場合、長さ調整部2aの延長内管21aに冷媒容器31を取り付けられる点は同じであるが、ここでは、真空容器32を取り付けるときは、真空容器32から露出する延長内管21aの外側にストレート管24を配置し、ストレート管24の外周面に台座30を溶接している。また台座30は位置決め完了後に常温硬化型エポキシパテなどで気密にシールしてもよい。このストレート管24は、一定の長さを有しており、接続構造の施工を行う際に切断して長さを調整した後、基部2bの端部に接続して配置する。また、ストレート管24には、台座30が一体に形成されたもの、或いは台座30とフランジ部32fとが一体に形成されたものを用いてもよい。
【0042】
以上説明した実施の形態2に係る超電導ケーブル102であっても、接続構造を施工する際に基部2bの真空状態を維持したまま、長さ調整部2aを切断して超電導ケーブルの長さを調整することができる。また、超電導ケーブルの長さ調整が可能であるため、製造時の超電導ケーブルの長さを決定するための管路長の測定を簡易化することができるので、超電導ケーブルの製造前段階での作業時間を短縮することができる。
【0043】
超電導ケーブル102を用いた接続構造の別の形態としては、ストレート管24に代えて真空容器32から露出する延長内管21aの外側に断熱材を配置したり、ストレート管24と延長内管21aとの間に断熱材を配置する構造としてもよい。このように断熱材を配置することで、真空容器32から露出する長さ調整部2aにおける断熱性の低下を抑制することができる。
【0044】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、長さ調整部を基部の一方の端部だけでなく両端部に設けてもよい。基部の一方の端部にのみ長さ調整部を設ける場合は、基部の他方の端部に真空引きポートを設けておくことで、接続構造の施工時、施工後において、この真空引きポートから内管と外管との間の空間の真空度を確認することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の超電導ケーブルは、超電導ケーブル同士を接続する中間接続部、或いは超電導ケーブルを他の電力機器に接続する終端接続部を収納する接続構造の施工が容易である。また、本発明の接続構造及びその施工方法は、超電導ケーブル線路の構築に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
10,101,102 超電導ケーブル 10j 接続部
1 ケーブルコア
11 フォーマ 12 超電導導体 13 絶縁層
14 シールド層 15 保護層
2 断熱管 2a 長さ調整部 2b 基部 20 封止部材
21,21b 内管 21a 延長内管 22,22b 外管 22a 延長外管
23 隔壁 24 ストレート管 25 防食層
3 接続構造 30 台座
31 冷媒容器 32 真空容器 33真空引きポート
32p 筒状部 32f フランジ部
M マンホール T 管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導導体を有するケーブルコアと、このケーブルコアを収納する断熱管とを備える超電導ケーブルであって、
前記断熱管は、内管と外管とを有する二重管構造の基部と、この基部の少なくとも一方の端部に延設された延長管からなる長さ調整部とを備え、
前記基部の両端部には隔壁が形成され、前記内管と前記外管との間に形成される空間が密閉されていることを特徴とする超電導ケーブル。
【請求項2】
前記長さ調整部は、延長内管と延長外管との二重管からなり、
前記延長内管及び前記延長外管が前記基部の内管及び外管と同径であることを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブル。
【請求項3】
前記長さ調整部は、前記基部の内管と同径の一重管からなることを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブル。
【請求項4】
前記基部の一方の端部には、前記長さ調整部が設けられ、
前記基部の他方の端部には、前記内管と前記外管との間に形成される空間と連通する真空引きポートが前記隔壁に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の超電導ケーブル。
【請求項5】
超電導導体を有するケーブルコアと、このケーブルコアを収納する断熱管とを備える超電導ケーブルを用いた接続構造の施工方法であって、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の超電導ケーブルの断熱管の長さ調整部を切断し、その超電導ケーブルを所定の長さに調整する工程と、
前記超電導ケーブルの接続部を形成する工程と、
長さ調整された断熱管の内側に超電導ケーブルの接続部を収納する冷媒容器を取り付け、断熱管の外側にその冷媒容器を収納する真空容器を取り付ける工程とを備えることを特徴とする超電導ケーブルを用いた接続構造の施工方法。
【請求項6】
超電導導体を有するケーブルコアと、このケーブルコアを収納する断熱管とを備える超電導ケーブルを用いた接続構造であって、
前記断熱管は、内管と外管とを有する二重管構造の基部と、この基部の少なくとも一方の端部に延設され、延長内管と延長外管との二重管からなる長さ調整部とを備え、
前記基部の両端部には隔壁が形成され、前記内管と前記外管との間に形成される空間が密閉されており、
前記長さ調整部の延長内管には超電導ケーブルの接続部を収納する冷媒容器が取り付けられ、前記基部の外管又は前記長さ調整部の延長外管にはその冷媒容器を収納する真空容器が取り付けられており、
前記延長内管と前記延長外管との間に形成される空間と前記冷媒容器と前記真空容器との間に形成される空間とが連通していることを特徴とする超電導ケーブルを用いた接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−165552(P2010−165552A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6695(P2009−6695)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】