説明

超電導ケーブルの端末構造

【課題】超電導薄膜を有する超電導導体層と常電導導体部との接続箇所の抵抗を低減することができる超電導ケーブルの端末構造を提供する。
【解決手段】超電導ケーブルの超電導導体層903と、この導体層と接続されて常温側の機器と電力を入出力するための常電導導体部703とを備える超電導ケーブルの端末構造である。導体層903は、基板上11に形成された超電導薄膜15を有する超電導線材1を、超電導薄膜15が内周側、基板11が外周側となるように螺旋状に巻回して構成される。この端末構造は、超電導薄膜に対向される接合面を有する一端側と、常電導導体部703に接続される他端側とを有する常電導接続部材709と、超電導線材1の端部における超電導薄膜15と接合面とを接合する導電接合材3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導ケーブルの端末構造に関するものである。特に、超電導薄膜を有する超電導線材の超電導薄膜の面をケーブルの内周方向に向けて螺旋状に巻回された超電導導体層を備える超電導ケーブルの端末構造に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導ケーブルは、常電導ケーブルと比較して大容量の電流を低損失で送電できることから、省エネルギー技術として期待されている。最近では、実用化に向けて超電導ケーブルの実証試験が実施されている。
【0003】
一般に、この超電導ケーブルは、図6に示すように外管91の内部に内管93を有する断熱管を備え、その内管93に1本以上のコア95を収納した構造である。このコア95は、中心から外周側に向かって順に、心材901、超電導導体層903、絶縁層905、超電導シールド層907、保護層909を備える。
【0004】
超電導導体層として、超電導薄膜を有する図7のような超電導線材を用いたものがある。具体的には、常電導の基板11上に超電導薄膜15を形成した超電導線材1を、基板11が外周側、超電導薄膜15が内周側となるように螺旋状に巻回して超電導導体層903(図6参照)を構成する(特許文献1)。超電導薄膜15をケーブルの内周側に向けた導体層903とすれば、曲げの内側となる超電導薄膜15に圧縮歪が作用し、曲げの外側となる基板11に引張歪が作用するため、臨界電流が低下し難い。
【0005】
このような超電導ケーブルの端部には、常温側に設置された機器、例えば常電導ケーブルとの間で電力の授受を行うために、端末構造が設置される。
【0006】
従来、この端末構造として、図5に示す構造のものが知られている(特許文献2参照)。この端末構造の概略は次の通りである。
【0007】
超電導ケーブルの端末構造は、真空槽に収納された冷媒槽を備える。真空層には主真空槽71と、主真空槽71の側面につながった接続真空槽75とを備える。同様に冷媒槽も主冷媒槽73と、主冷媒槽73の側面につながった接続冷媒槽77とを備える。常電導ケーブル(図示せず)に接続されるブッシング701の上端は、主冷媒槽73と主真空槽71とを順次貫通し、主真空槽71の外部に引き出される。一方、ブッシング701の下端は、常電導導体部703の一端と、主冷媒槽73の内部で接続される。そして、超電導ケーブルの端部から引き出されたコア95の超電導導体層903と、前記常電導導体部703の他端とが接続冷媒槽77内部の接続部705で接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−188844号公報
【特許文献2】特開2006−196628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上述した従来技術では、上記超電導ケーブルの超電導導体層と常電導導体部との具体的な接続構造を開示していない。
【0010】
ここで、超電導導体層と常電導導体部との接続構造として、超電導導体層の外周に常電導スリーブ(常電導接続部材)をはめ込み、超電導導体層と常電導接続部材との間に半田を流し込むことが考えられる。
【0011】
ところが、このような接続構造の場合、超電導薄膜は超電導導体層の外周側に位置する常電導の基板を介して常電導接続部材と接続されることになる。その結果、接続箇所での抵抗が大きくなることが予想される。
【0012】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、超電導薄膜を有する超電導導体層と常電導導体部との接続箇所の抵抗を低減することができる超電導ケーブルの端末構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明超電導ケーブルの端末構造は、超電導ケーブルの超電導線材と、常電導導体部との接続構造に工夫を施すことで上記の目的を達成する。
【0014】
本発明超電導ケーブルの端末構造は、超電導ケーブルの超電導導体層と、この導体層と接続されて常温側の機器と電力を入出力するための常電導導体部とを備える超電導ケーブルの端末構造に係る。前記導体層は、基板上に形成された超電導薄膜を有する超電導線材を、超電導薄膜が内周側、基板が外周側となるように螺旋状に巻回して構成される。そして、この端末構造は、前記超電導薄膜に対向される接合面を有する一端側と、前記常電導導体部に接続される他端側とを有する常電導接続部材と、前記超電導線材の端部における超電導薄膜と前記接合面とを接合する導電接合材とを備えることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、超電導薄膜と常電導接続部材は、高抵抗の基板を介することなく導電接合材で接続されるため、接続箇所での抵抗を低減できる。
【0016】
本発明超電導ケーブルの端末構造において、複数の超電導線材を径方向に積層し、この導体層の端部を、外層側の超電導線材の端部を内層側の超電導線材の端部よりもケーブル軸端方向に長くして、各層の超電導薄膜を段階状に構成することが挙げられる。
【0017】
この構成により、積層された超電導導体層の端部における各層の超電導薄膜を段階的に露出させることができる。そのため、各層の積層された超電導導体層の超電導薄膜と常電導接続部材とを対面させて導電接合材で接続することができ、その接続箇所での抵抗を低減できる。
【0018】
本発明超電導ケーブルの端末構造において、ケーブルの径方向に積層された超電導導体層の各層がコアの端部で段階状に構成されている場合、前記常電導接続部材の接合面を前記段階状に構成された超電導導体層に対応した段階状に構成することが好ましい。
【0019】
この構成によれば、超電導導体層の各層の段階形状と常電導接続部材の接合面の段階形状とが対応して接合されるため、外層側の超電導線材であっても屈曲することなく接合面に接合される。そのため、各超電導線材の端部に屈曲に伴う歪が作用することがなく、かつ接合面におけるケーブル軸方向の長さを短縮することができる。また、径方向へのサイズの増大を抑制することもできる。その上、補強絶縁層の形成作業も容易に行うことができる。
【0020】
本発明超電導ケーブルの端末構造において、ケーブルの径方向に積層された超電導導体層の各層がコアの端部で段階状に構成されている場合、前記常電導接続部材の接合面には、前記段階状に構成された超電導導体層に対応した傾斜を設けることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、常電導接続部材の加工が容易にでき、超電導導体層の各層の段階形状と常電導接続部材の接合面の傾斜が対応して接合されるため、接合面におけるケーブル軸方向の長さを短縮することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明超電導ケーブルの端末構造によれば、超電導薄膜と常電導接続部材とを、基板を介することなく導電接合材で接続でき、接続箇所での抵抗を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態1に係る超電導ケーブルの端末構造の要部縦断面図である。
【図2】図2(A)は、本発明の実施形態1の変形例に係る超電導ケーブルの端末構造要部縦断面図、図2(B)は、同変形例に用いる常電導接続部材の上面概略図である。
【図3】本発明の実施形態2に係る超電導ケーブルの端末構造において常電導接続部材の接合面に傾斜を備えた接合部の要部縦断面図である。
【図4】本発明の実施形態3に係る超電導ケーブルの端末構造において常電導接続部材を直管にした要部縦断面図である。
【図5】超電導ケーブルの端末構造の断面図である。
【図6】超電導ケーブルの横断面図である。
【図7】薄膜超電導線材の構成を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。下記の各実施形態において、同一部材には同一符号を付している。
【0025】
[実施形態1]
〔全体構成〕
実施形態1に係る端末構造を図1及び図5〜図7に基づいて説明する。本例の端末構造は、図5に示すように、超電導ケーブルと、その端部に形成される端末容器部7とを備える。
【0026】
<超電導ケーブル>
超電導ケーブルは、図5には1心しか示していないが、図6のように断熱管内に3心のコア95を収納した構造である。断熱管は、外管91・内管93の間を真空引きした断熱二重管で構成され、外管91と内管93との間には輻射断熱材(図示略)が配置される。一方、コア95は、中心から外周側に向かって順に、心材901、超電導導体層903、絶縁層905、超電導シールド層907、保護層909を備える。
【0027】
このうち、超電導導体層903は、複数の超電導線材を心材901の外周に螺旋状に巻回して単層を構成し、その単層をコア95の径方向に複数積層した構成である。図7のように超電導線材1は、超電導薄膜15を有するものを利用する。例えば、基板11の上に、中間層13、超電導薄膜15、安定化層17を順次成膜した積層構造の超電導線材1を用いる。そして、各超電導線材1は、超電導薄膜15がコア95(図5、図6)の内周側、基板11が外周側になるように螺旋状に巻回されている。
【0028】
<端末容器部の概略>
一方、端末容器部7は、真空槽に収納された冷媒槽を備える。真空層には主真空槽71と、主真空槽71の側面につながった接続真空槽75とを備える(図5)。同様に冷媒槽も主冷媒槽73と、主冷媒槽73の側面につながった接続冷媒槽77とを備える。常電導ケーブル(図示せず)に接続されるブッシング701の上端は、主冷媒槽73と主真空槽71とを順次貫通し、主真空槽71の外部に引き出される。一方、ブッシング701の下端は、常電導導体部703の一端と、主冷媒槽73の内部の接続部705で接続される。そして、超電導ケーブルの端部から引き出した超電導導体層903と常電導導体部703の他端とが接続冷媒槽77の内部で接続される。
【0029】
〔各部の構成〕
本発明端末構造の最も特徴とするところは、この超電導導体層903と常電導導体部703との接続構造にある。この接続構造は、図1に示すように、超電導ケーブルの端部、常電導導体部703、常電導接続部材709、及び導電接合材3を備える。
【0030】
<超電導ケーブルの端部>
図6のような超電導ケーブル9の端部では、コア95を構成する心材901から超電導シールド層907までの各層が段階的に露出される。心材901には複数の銅素線からなる撚り線を、超電導導体層903と超電導シールド層907とを構成する図7のような超電導線材1にはRE123系線材(RE:希土類元素、例えばY、Ho、Nd、Sm、Gdなど)を、絶縁層にはポリプロピレンとクラフト紙がラミネートされたPPLP(登録商標)を利用できる。
【0031】
そのうち、積層構造の超電導導体層903の各層は、図1に示すように、順次、内層から外層に向かってケーブル軸端方向(図1の右側)に長くなるように構成される。つまり、超電導導体層903の各層の端部は、超電導薄膜15が基板11よりもコア95の内周側に向いた状態で、外層側ほど内径が大きくなる段階状に形成される。必要に応じて、径方向に隣接する超電導導体層903の外層のうち、内層よりもケーブル軸端方向に突出する領域から、超電導薄膜15上の安定化層17(図7参照)を機械的又は化学的に除去して超電導薄膜15を超電導導体層903の内周側に露出させてもよい。それにより、一層低抵抗の接続構造を構成できる。つまり、超電導薄膜15と後述する常電導接続部材709の接合面との接合は、直接接合であってもよいし、安定化層17を介在する間接接合であってもよく、基板11と同等以上の抵抗を有する材料を介在しなければよい。
【0032】
図1では、説明の便宜上、超電導導体層903の端部における超電導線材1の段階状態を誇張して示している。一般に、1本の超電導線材1の厚さは100〜200μm程度である。また、図1では省略しているが、超電導導体層903の各層の間には層間絶縁が施され、その厚さは140μm程度である。一方、本例ではコア95の径方向に隣接する一対の超電導線材1のうち、内層よりもケーブル軸端方向に突出する外層の寸法(突出量)を15〜20mm程度としている。そのため、実際の超電導導体層903の端部では、1層の超電導線材1の厚さに対して、ほぼ100倍以上の突出量となり、1段の段差が240〜340μm程度の段階状態が形成される。
【0033】
<常電導導体部>
図5の常電導導体部703は、超電導ケーブルの超電導導体層903と端末容器部内に配されるブッシング701の端部との間を電気的に接続するための導体である。この常電導導体部703は、超電導ケーブルからの電流又はブッシング701からの電流の容量に応じた断面積を備えており、例えば、銅や銅合金など高導電率材料からなる棒材、或いは撚り線で構成される。ここでは、複数本の銅素線から構成され、超電導ケーブル9の心材901と実質的に同径の撚り線で常電導導体部703を構成している。
【0034】
<常電導接続部材>
常電導接続部材709は、各コア95の超電導導体層903と常電導導体部703とを接続するための部材である(図1)。本例では、銅製のスリーブ材を常電導接続部材709としている。この常電導接続部材709の一端側の内側には常電導導体部703が嵌めこまれ、他端側の内側には心材901が嵌め込まれる。常電導導体部703と心材901は、両者の突き合せ箇所を覆う常電導接続部材709により圧縮接続される。
【0035】
この常電導接続部材709の他端側(超電導ケーブル側)の外周には、段階状の接合面が形成されている。この接合面は、常電導接続部材709の他端(超電導ケーブル側)から一端(常電導導体部側)に向かって段階的に外径が増大するように構成され、かつ図1のように超電導導体層903の端部における各層の段階状態に対応するように形成されている。常電導接続部材709の他端部は、最も外径が細くなって薄くなるため、最内層の超電導導体層903からの電流容量を考慮して適切な厚さを選択する。そして、各段の接合面には、超電導導体層903の各層の端部における内周面が対面される。図1において、この接合面の段階状態が誇張して示されていることは、超電導導体層903の端部と同様である。
【0036】
一方、常電導接続部材709の一端側(常電導導体部側)の外周面は、端部側ほど外径が小さくなるテーパ状に形成されている。この形状により、常電導導体部703と常電導接続部材709との境界部に電界が集中することを抑制する。
【0037】
<導電接合材>
導電接合材3は、超電導薄膜15と常電導接続部材709の接合面とを導電接続する。具体的には半田が利用できる。低融点半田を利用してもよい。この導電接合材3により、超電導薄膜15と常電導接続部材709の接合面との間には、半田や安定化層17(図7)だけが介在され、高抵抗の基板11が介在されることはない。半田以外の材料であっても、超電導薄膜15と常電導接続部材709の接合面とを電気的に低抵抗で接続でき、かつ機械的にも適切な接合強度が得られる材料であれば導電接合材3として利用できる。
【0038】
〔組立方法〕
以上の本発明端末構造は、次のようにして組み立てられる。
【0039】
まず、超電導ケーブル9(図6参照)の端部を段剥ぎし、コア95を構成する心材901から超電導シールド層907までの各層を段階的に露出させる。この段階では、超電導導体層903の各層の端部は、いずれも同じ長さに揃えられている。
【0040】
次に、超電導導体層903の端部から、螺旋状に巻回されている各層の超電導線材1を一旦広げて解きほぐす。
【0041】
一方、常電導接続部材709の一端側から常電導導体部703を挿入し、他端側からコア95の心材901を挿入して、常電導導体部703の端面と心材901の端面とを突き合わせる(図1)。その状態で常電導接続部材709を圧縮機で圧縮する。この圧縮は、常電導接続部材709における接合面以外の箇所に対して行う。この圧縮により、常電導導体部703と心材901は、常電導接続部材709により圧縮接続される。
【0042】
続いて、図1のように解きほぐしておいた各層の超電導線材1の端部を切断する。具体的には、内層側の超電導導体層903ほど切断代を多くとって各層の超電導線材1を切断する。その際、各層の超電導導体層903の端部が常電導接続部材709の接続面の各段に対応するように切断代を選択する。この切断により、超電導導体層903の各層は、順次、内層から外層に向かってケーブル軸端方向に長くなるように構成される。
【0043】
この切断を終えたら、解きほぐしておいた超電導線材1を元に戻す。これにより、各層の超電導線材1の端部を、常電導接続部材709の接合面の各段に対向させる。
【0044】
そして、常電導接続部材709の接合面の各段に、超電導導体層903の各層を半田(導電接合部材)3にて接合する。この半田付けは、超電導導体層903の内層側から各層ごとに行えばよい。その後、図5のように超電導導体層903の露出箇所及び常電導接続部材709の外周に補強絶縁層707を形成する。
【0045】
〔作用効果〕
このような本発明端末構造によれば、超電導導体層903が、基板11よりも超電導薄膜15を内周側として巻回された超電導線材1で構成されている場合に、超電導薄膜15と常電導接続部材709の接合面との間に高抵抗の基板11が介在されることはない。そのため、この接合箇所での抵抗を低減できる。
【0046】
また、超電導導体層903の各層の段階形状と常電導接続部材709の接合面の段階形状とが対応して接合されるため、外層側の超電導線材1であっても屈曲することなく接合面に接合される。そのため、各超電導線材1の端部に屈曲に伴う歪が作用することがなく、かつ接合面におけるケーブル軸方向の長さを短縮することができる。
【0047】
加えて、超電導導体層903の段階形状と接合面の段階形状との対応により、径方向へのサイズの増大を抑制することもできる。それに伴って、超電導導体層903と常電導接続部材709との接続箇所における局所的な径の増大を可及的に抑制し、補強絶縁層の形成作業も容易に行うことができる。
【0048】
〔その他〕
以上の実施形態では、超電導導体層903を2層しか示していないが、この層数が特に限定されるわけではなく、単層や3層以上などであってもよい。また、組立方法も上記の手順に限定されるものではなく、常電導接続部材709の圧縮を行う前に、予め超電導導体層903の各層を所定の長さに切断しておいてもよい。
【0049】
<変形例>
次に、実施形態1の変形例として、常電導導体部と常電導接続部材とをボルトの締め付けにより接続する構成を図2に基づいて説明する。
【0050】
常電導接続部材709の常温側端部は、常電導導体部703と接続する平板状端子部710を有し、その平板状端子部710に複数のボルト孔712(図2(B)参照)を有する。一方、この端子部710と対向する常電導導体部703もボルト孔(図示略)を有する平板状の端部を備える。常電導接続部材709の平板状端子部710と、常電導導体部703の平板状の端部とを両ボルト孔が一致するよう重ね合わせる。そして、両ボルト孔にボルト(図示略)を貫通させナット(図示略)で固定する。これにより、常電導接続部材709と常電導導体部703とが容易かつ強固に接続することができる
【0051】
一方、図2(A)に示すように常電導接続部材709と心材901との接続は、常電導接続部材709に心材901を挿入し、常電導接続部材709と圧縮機で圧縮する。この圧縮は、常電導接続部材709における超電導線材1との接合面と平板状端子部710との間の箇所に対して行う。この圧縮により、心材901と常電導接続部材709とは、圧縮接続される。
【0052】
また、常電導接続部材709は、その内周面に導電性の接触子を複数有したマルチコンタクト(商品名)などを使用することができる。このマルチコンタクトを用いた常電導接続部材709に心材901を挿入することで、複数の接触子が心材901を圧接し、常電導接続部材709と心材901とを電気的・機械的に接続する。そのため、マルチコンタクトを利用すれば、常電導接続部材709に圧縮箇所を設ける必要がないため常電導接続部材709を短くでき、さらに圧縮作業も不要となる。
【0053】
〔実施形態2〕
次に、実施形態1とは構成が異なる実施形態2について説明する。実施形態1との主たる相違点は、図3のように常電導接続部材709における接合面の形状である。図3では超電導線材1を基板11と超電導薄膜15と区別して示していないが、基板11がコア95の外周側、超電導薄膜15がコア95の内周側である点は実施形態1と同様である。
【0054】
<接合面の構成>
この常電導接続部材709の他端側(超電導ケーブル側)の外周には、傾斜状の接合面が形成されている。この接合面は、常電導接続部材709の他端(超電導ケーブル側)から一端(常電導導体部側)に向かって外径が増大する略円錐面に形成されている。常電導接続部材709の縦断面において、接合面のコア95の軸方向に対する傾斜角は、接合後の超電導線材1に過度の歪が作用しない限度で適宜選択することができる。もっとも、この接合面の傾斜角は、段階状に構成した超電導導体層903の端部の傾斜、つまり各層の端部を形成する内周側角部をつなぐ仮想線の傾斜に対応した角度とすることが好ましい。常電導接続部材709の他端部は、最も外径が細くなるため、最内層の超電導導体層903からの電流容量を考慮して適切な厚さを選択する。そして、接合面には、超電導導体層903の各層の端部における内周面が対面され、導電接合材3を介して接合される。図3において、接合面の傾斜角・超電導線材1の厚さ・超電導線材1と接合面との接合距離の相互の関係は誇張して示されている。
【0055】
〔作用効果〕
このような本発明端末構造によれば、超電導導体層903が、基板11よりも超電導薄膜15を内周側として巻回された超電導線材1で構成されている場合に、超電導薄膜15と常電導接続部材709の接合面との間に高抵抗の基板11が介在されることはない。そのため、この接合箇所での抵抗を低減できる。
【0056】
特に、常電導接続部材709の接合面の傾斜を、超電導導体層903の端部に形成される前記仮想線の傾斜に対応させれば、超電導線材1の屈曲する角度を低減できるため、超電導線材1に作用する機械的負荷を軽減できる。
【0057】
また、常電導接続部材709の接合面が円錐面状であるため、その接合面の加工も容易に行うことができる。
【0058】
〔実施形態3〕
次に、実施形態1とは構成が異なる実施形態3について説明する。実施形態1、2との主たる相違点は、図4のように常電導接続部材709における接合面の形状である。図4では超電導線材1を基板11と超電導薄膜15と区別して示していないが、基板11がコア95の外周側、超電導薄膜15がコア95の内周側である点は実施形態1と同様である。
【0059】
<接合面の構成>
この常電導接続部材709の他端側(超電導ケーブル側)の外周は、常電導接続部材709の他端から一端(常電導導体部側)に向かって一様な径を有する円筒面で構成されている。常電導接続部材709の他端部は、超電導導体層903からの電流容量を考慮して適切な厚さを選択する。そして、超電導導体層903の各層の端部における内周面が接合面に対面され、導電接合材3を介して接合される。
【0060】
〔作用効果〕
このような本発明端末構造によれば、超電導導体層903が、基板11よりも超電導薄膜15を内周側として巻回された超電導線材1で構成されている場合に、超電導薄膜15と常電導接続部材709の接合面との間に高抵抗の基板11が介在されることはない。そのため、この接合箇所での抵抗を低減できる。
【0061】
また、常電導接続部材709の接合面が円筒面であるため、その加工を容易に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明超電導ケーブルの端末構造は、超電導薄膜を利用した超電導ケーブルにおいて好適に利用できる。特に超電導薄膜と常電導接続部材との接続箇所での抵抗を低減した端末構造に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0063】
1 超電導線材
11 基板 13 中間層 15 超電導薄膜 17 安定化層
3 導電接合材(半田)
7 端末容器部
71 主真空槽 73 主冷媒槽 75 接続真空槽 77 接続冷媒槽
701 ブッシング 703 常電導導体部 705 接続部
707 補強絶縁層 709 常電導接続部材 710 平板状端子部
712 ボルト孔
9 超電導ケーブル
91 外管 93 内管 95 コア
901 心材 903 超電導導体層 905 絶縁層
907 超電導シールド層 909 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導ケーブルの超電導導体層と、この導体層と接続されて常温側の機器と電力を入出力するための常電導導体部とを備える超電導ケーブルの端末構造であって、
前記導体層は、基板上に形成された超電導薄膜を有する超電導線材を、超電導薄膜が内周側、基板が外周側となるように螺旋状に巻回して構成され、
この端末構造は、
前記超電導薄膜に対向される接合面を有する一端側と、前記常電導導体部に接続される他端側とを有する常電導接続部材と、
前記超電導線材の端部における超電導薄膜と前記接合面とを接合する導電接合材とを備えることを特徴とする超電導ケーブルの端末構造。
【請求項2】
前記導体層は、複数の超電導線材が径方向に積層され、
この導体層の端部は、外層側の超電導線材の端部を内層側の超電導線材の端部よりもケーブル軸端方向に長くして、各層の超電導薄膜を段階状に構成したことを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブルの端末構造。
【請求項3】
前記常電導接続部材の接合面は、前記段階状に構成された導体層の超電導薄膜に対応する段階状に構成されたことを特徴とする請求項2に記載の超電導ケーブルの端末構造。
【請求項4】
前記常電導接続部材の接合面は、常電導接続部材の前記一端側から他端側に向けて径が大きくなる傾斜面を備えることを特徴とする請求項2に記載の超電導ケーブルの端末構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−263699(P2010−263699A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112894(P2009−112894)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「イットリウム系超電導電力機器技術開発」に関する委託研究、産業技術力法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(391004481)財団法人国際超電導産業技術研究センター (144)
【Fターム(参考)】