説明

超電導モータ

【課題】超電導線材からなるコイルを所望の極低温まで効率よく迅速に冷却する。
【解決手段】超電導モータ10は、回転可能に支持されたロータ12と、ロータ12の外周を覆って設けられ、超電導線材からなる複数のコイル34がステータコア30内周部に巻装されているステータ14と、冷却部58をそれぞれ有する複数の冷凍機16,17を備える。ステータ14において軸方向両端部に位置する各コイル34のコイルエンド部36を複数の冷凍機16,17の冷却部58で軸方向両側から冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導モータに関し、特に、超電導線材からなるコイルを冷却する冷凍機を備えた超電導モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍機を備えた超電導モータとして図5に示すものが知られている。この超電導モータ100は、支持台110上に載置されている。超電導モータ100は、ロータシャフト102の両端部が回転可能に支持された円柱状のロータ104と、ロータ104の外周を覆って設けられた略円筒状のステータ106とを備える。ロータ104の外周面には、複数の永久磁石107が周方向に等間隔で配置されている。
【0003】
ステータ104は、略円筒状をなす鉄心であるステータコア108を含む。ステータコア108には、径方向内側へ突出する複数のティース部112が円周方向に等間隔に形成されている。各ティース部112の周囲には、超電導線材を巻回してなるコイル114がそれぞれ配置されている。各コイル114は、2つ置きごとのコイルと直列接続されてU,V,Wの各相コイルを構成する。各相コイルの一方端は、図示しない中性点において互いに接続され、各コイルの他方端は電流導入線115を介して各相電流導入端子116にそれぞれ接続されている。
【0004】
ロータ104およびステータ106を含む超電導モータは、内部が真空状態に保持されるモータケース118内に収容されている。モータケース118には、フランジ部120を介して冷凍機122が連結されている。冷凍機122は、冷媒ガスの圧縮および膨張を行うガス圧縮機124と、ガス圧縮機124からフランジ部120を貫通してモータケース118内へ延伸する段付き柱状の冷却部126とを有する。この冷却部126の先端は、伝熱部材128に接触されている。図5において、伝熱部材128がクロスハッチングにより示されている。
【0005】
伝熱部材128は、熱伝導性が良好な金属材料から好適に形成されることができる。冷凍機122の冷却部126の先端と接触する側とは反対側の伝熱部材128の表面は、円柱状をなすステータコア108の外周面に密着するように凹んだ湾曲面として形成されている。これにより、超電導モータ100の各コイル114は、冷凍機122の冷却部126により、伝熱部材128およびステータコア108を介して所望の極低温まで冷却され、直流電流に対する抵抗が存在しない超電導状態となる。
【0006】
ここで、モータのコイルを冷却する技術として、例えば、特開2000−125512号公報(特許文献1)には、コイルエンド接触冷却型回転電機が開示されている。このコイルエンド接触型回転電機では、ステータコイルの少なくともコイルエンドを、厚さ方向がステータコアの径方向に一致する姿勢でステータコアの端面から突出する細板状導体からある各軸方向突出部を互いに径方向に重ねて構成しており、このコイルエンドの径方向の最外側または径方向最内側の細板状導体の平坦な主面に電気絶縁されつつ直接に密着する平坦な冷却面を有する良熱伝導性の冷却部材を設けることによりコイルエンド部の冷却性を向上させることが記載されている。
【0007】
また、特開平5−91696号公報(特許文献2)には、固定子巻線3の周囲を密閉状態で覆うカバーの内側に冷却液通路を設け、冷却液を注入管から冷却液通路を介して排出管へと流通させることにより、固定子鉄心または固定子巻線で発生した熱を直接冷却液によって吸収して冷却するようにした回転電機が記載されている。
【0008】
さらに、特開平8−251872号公報(特許文献3)には、固定子コイルを収容する複数のスロットを内周部に設けた固定子鉄心と、固定子鉄心の内周面に空隙を介して対向する回転子を設け、固定子鉄心の外側にフレームを設け、このフレームに冷媒を通すフレーム冷却ジャケットを設けた高速モータにおいて、固定子鉄心のうち少なくとも一方の端部、または固定子鉄心を軸方向に複数個に分割した分割部に、にリング状またはC字状の固定子冷却ジャケットを設けた、モータの冷却装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−125512号公報
【特許文献2】特開平5−91696号公報
【特許文献3】特開平8−251872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように図5に示す冷凍機を備えた超電導モータでは、冷凍機の冷却部により伝熱部材およびステータコアを介して超電導線材からなるコイルを所望の極低温に冷却する構造になっているため、特に熱容量が大きなステータコアを介してすべてのコイルを目標温度まで冷却するのに時間がかかっていた。また、冷凍機の冷却部に接触された伝熱部材がステータコアの外周面の一部にだけ接触されていることから、この接触部分から径方向に対向する位置にあるステータコアの部分およびそこに配置されたコイルまで一様に冷却するのは容易ではなく、各部の熱伝導率によっては周方向や軸方向について大きな温度勾配が発生する可能性があった。
【0011】
また、上記特許文献1〜3はモータのステータに巻装されるコイルの冷却について開示するが、その何れもが冷凍機を備えるものではなく、超電導モータにおけるコイルを冷凍機により所望の極低温まで迅速に冷却する構成を教示および示唆するものではない。
【0012】
本発明の目的は、超電導線材からなる複数のコイルを所望の極低温に効率よく迅速に冷却することができる超電導モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る超電導モータは、回転可能に支持されたロータと、ロータの外周を覆って設けられ、超電導線材からなる複数のコイルがステータコア内周部に巻装されているステータとを有する超電導モータであって、冷却部をそれぞれ有する複数の冷凍機をさらに備え、前記ステータにおいて軸方向両端部に位置する各コイルのコイルエンド部を前記複数の冷凍機の冷却部で軸方向両側から冷却するものである。
【0014】
本発明に係る超電導モータにおいて、前記複数の冷凍機は第1および第2の冷凍機を含み、第1の冷凍機の冷却部は軸方向一方側の各コイルエンド部に接触して配置される環状の伝熱部材に接触して設けられ、第2の冷凍機の冷却部は軸方向他方側の各コイルエンド部に接触して配置される環状の伝熱部材に接触して設けられてもよい。
【0015】
また、本発明に係る超電導モータにおいて、前記第1および第2の冷凍機は、シリンダ内で直線的に往復移動して冷媒ガスの圧縮および膨張を行うピストンを有する圧縮機を含んでそれぞれ構成され、各ピストンの移動方向が同一直線上となるように前記第1および第2の冷凍機が配置されると共に、第1および第2の冷凍機の各ピストンが互いに反対方向に移動するように前記圧縮機が駆動されてもよい。
【0016】
この場合、前記第1および第2の冷凍機の各圧縮機がモータケースの外周側壁上に取り付けられ、各圧縮機からそれぞれ延伸する冷媒ガス流路管が各冷却部にそれぞれ接続されてもよい。
【0017】
また、本発明に係る超電導モータにおいて、前記第1および第2の冷凍機はシリンダ内で直線的に往復移動して冷媒ガスの圧縮および膨張を行うピストンを有する圧縮機を含んでそれぞれ構成され、前記1および第2の冷凍機は前記ステータの径方向に対向する位置に配置されると共に、前記第1および第2の冷凍機の各ピストンが互いに同一方向に移動するように前記圧縮機が駆動されてもよい。
【0018】
また、本発明に係る超電導モータにおいて、前記環状の伝熱部材は、金属板、または、熱伝導性を良好にするフィラを分散した樹脂材料で形成されてもよい。
【0019】
また、本発明に係る超電導モータにおいて、前記ステータは、前記ロータと同心上にそれぞれ配置される内筒部材および外筒部材と軸方向両端に設けられるモータエンドプレートとにより区画形成される筒状をなす真空室内に収容されてもよい。
【0020】
さらに、本発明に係る超電導モータにおいて、前記真空室は、前記外筒部材の外周を囲んで形成される別の真空室によりモータ外部と隔てられてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る超電導モータによれば、超電導線材からなるコイルを複数の冷凍機の冷却部により軸方向両端のコイルエンド部から冷却するので、各コイルを所望の極低温まで効率よく迅速に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施の形態(以下、実施形態という)である超電導モータの軸方向に沿った断面図(一部側面を含む)である。
【図2】図1におけるA−A線断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態である超電導モータの軸方向に沿った断面図(一部側面を含む)である。
【図4】本発明の第3の実施形態である超電導モータの軸方向に沿った断面図(一部側面を含む)である。
【図5】冷凍機を備えた超電導モータの従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。
【0024】
図1は、本発明の第1の実施形態である超電導モータ10をその軸方向に沿った断面(一部側面を含む)で示す。また、図2は、図1におけるA−A線に沿った断面図(ステータコアのハッチング省略)である。超電導モータ10は、回転可能に支持されたロータ12と、ロータ12の外周を覆って設けられる略円筒状のステータ14と、超電導モータ10の軸方向両端面に固定された2つの冷凍機16,17とを備える。ここでの説明において、ロータ12の中心を貫通するロータシャフト18の回転中心軸Xに関し、これに沿う方向を軸方向といい、回転中心軸Xと直交する放射方向を径方向といい、回転中心軸を中心点として描かれる円形に沿う方向を周方向という。
【0025】
ロータ12は、例えば電磁鋼板を積層してカシメや溶接等により一体に構成される円筒状のロータコア20と、ロータコア20の中心穴を貫通して固定された丸棒鋼材等からなるロータシャフト18とを含む。ロータコア20の外周面には、複数(本実施形態では6つ又は6箇所)の永久磁石22が露出した状態で周方向に等間隔に固定されている。ただし、ロータコア20に設けられる永久磁石は、外周面に露出していなくてもよく、外周面近傍の内部に埋設されてもよい。
【0026】
ロータ12のロータシャフト18は、その両端部19a,19bにおいて、超電導モータ10の軸方向両端面を形成する円盤状のエンドプレート24,26に固定された軸受部材28によって回転可能に支持されている。これにより、ステータ14の内部に回転磁界が形成されると、これに伴ってロータコア20の永久磁石22がひきつけられて、ロータ12が回転駆動されるようになっている。
【0027】
ステータ14は、略円筒状をなす固定子鉄心であるステータコア30を含む。ステータコア30の内周部には、径方向内側へ突出する複数(本実施形態では9つ)のティース部32が周方向に等間隔に形成されている。ステータコア30は、例えば複数の略円環状の電磁鋼板を軸方向に積層してカシメ、接着、溶接等によって一体に組み付けて構成されることができる。ただし、ステータコア30は、各々1つのティース部を有する9つの分割ステータコアを円環状に連ねて配置してその外側から筒状の締結部材により締め付けることによって構成されてもよい。上記分割ステータコアは、圧粉磁心により形成されることができる。
【0028】
ステータコア30のティース部32には、超電導線材からなるコイル34が巻装されている。超電導線材は、断面形状が円形状でもよいし、あるいは、矩形状であってもよい。また、超電導線材には、例えば、イットリウム系超電導材料やビスマス系超電導材料が好適に用いられる。ただし、超電導線材を構成する超電導材料は、これらに限定されるものではなく、他の公知の超電導材料、あるいは、将来開発される、より高温で超電導特性を発現する超電導材料であってもよい。
【0029】
コイル34を構成する超電導線材は、絶縁被覆されていてもよい。これにより、コイル34として密着して巻回されたときに各ターン間での電気絶縁が確保される。ただし、超電導線材が絶縁被覆されていない場合、コイル34に形成するときに絶縁紙や絶縁フィルム等を挟みながらコイル状に巻くことで各ターン間の電気絶縁が確保されてもよい。
【0030】
コイル34は、隣接するティース部32間に形成されるスロット内に位置する部分35と、ステータコア30の軸方向両端面から外側へそれぞれ突出するコイルエンド部36とを含む。各コイル34は、2つ置きごとのコイル34と直列接続されてU,V,Wの各相コイルを構成する。各相コイルの一方端は、図示しない中性点において互いに接続され、各相コイルの他方端は図示しない各相電流導入端子にそれぞれ接続されている。
【0031】
超電導モータ10は、円筒状のモータケース40を有している。モータケース40内に、ロータ12およびステータ14が収容されている。モータケース40の軸方向の両端部は、エンドプレート24,26の外周縁部に気密状態で連結されている。モータケース40およびエンドプレート24,26は、例えばステンレス等の非磁性材料から形成される。なお、モータケース40は、エンドプレート24または26と一体のものとして形成されてもよい。
【0032】
モータケース40内には、各々円筒状をなす内筒部材42および外筒部材44がロータ12と同心上に配置されている。内筒部材42および外筒部材44の軸方向両端部は、エンドプレート24,26の内面に気密状態を保持可能に連結されている。内筒部材42は、磁界の通過を妨げず且つ非導電性である非金属材料により形成されるのが好ましい。一方、外筒部材44は、低熱伝導率材料(例えばFRP等)で形成されるのが好ましく、低熱伝導率の非磁性材料で形成されるのがより好ましい。
【0033】
内筒部材42は、ロータ12のロータコア20よりも若干大きい内径を有し、ロータコア20の外周面との間に周方向に一様な隙間が形成されている。また、内筒部材42と外筒部材44との間には、筒状空間からなる第1真空室46が形成されている。第1真空室46内には、コイル34を含むステータ14が収容されている。ステータ14のステータコア30の外周面が、外筒部材44の内周面上に密着して固定されている。
【0034】
第1真空室46は、後述する冷凍機を含めて超電導モータ10が組み立てられた後に、エンドプレート24,26の少なくとも何れかに形成された図示しない空気抜き穴から真空引きされて、真空状態に維持される。このように、熱伝導率が低い内筒部材42および外筒部材44で区画形成し、かつ、内部を真空とすることで、第1真空室46内に収容されたコイル34を含むステータ14への断熱性を高めることができる。
【0035】
さらに、外筒部材44とモータケース40との間には、筒状空間からなる第2真空室48が形成されている。第2真空室48もまた、第1真空室46と同様に真空状態になっている。これにより、第1真空室46内に収容されたコイル34を含むステータ14が第2真空室48によってモータ外部と隔てられることで、コイル34を含むステータ14に対する断熱効果をより一層高めることができる。
【0036】
超電導モータ10において、軸方向の一端側に位置するエンドプレート24には第1の冷凍機16が設けられ、軸方向の他端側に位置するエンドプレート26には第2の冷凍機17が設けられている。第1および第2の冷凍機16,17は、気密状態を確保しつつエンドプレート24,26の貫通穴の周囲に固定された筒状のブラケット50を介してそれぞれ取り付けられている。
【0037】
第1および第2の冷凍機16,17は、シリンダ52内でピストン54が直線的に往復移動して冷媒ガス(例えば、Heガス)の圧縮および膨張を繰り返し行うガス圧縮機56をそれぞれ有する。また、第1および第2の冷凍機16,17は、筒状のブラケット50内からエンドプレート24,26の貫通穴を介して第1真空室46まで延伸した段付き柱状外形状を有する冷却部58をそれぞれ備える。冷却部58の平坦な先端面は、伝熱部材60を介してコイルエンド部36にそれぞれ接触している。ここで、コイルエンド部36と伝熱部材60との間、および、伝熱部材60と冷却部58との間の少なくともいずれか一方に絶縁紙等の絶縁部材を介在させて、コイル34と冷凍機16,17間の電気絶縁が確保されてもよい。
【0038】
第1および第2の冷凍機16,17は、超電導線材からなるコイル34が超電導特性を発現する所望の極低温(例えば、約70K)まで冷却可能な冷却性能を有し、ピストン54のストロークを制御することによって冷却温度を調節することができる。超電導モータ10が電気自動車等の電動車両に走行用動力源として搭載される場合、設置スペースの制約や車両重量の軽量化のため冷凍機16,17は小型で軽量のものであることが好ましい。例えば、第1および第2の冷凍機16,17には、フリー・ピストン・スターリング・クーラ(FPSC)が好適に用いられる。一方、設置スペースおよび重量の制約が緩い場合、例えば、超電導モータ10が電車や船舶等の大型の移動体の動力源として、あるいは、設置位置が固定された機械の動力源として用いられる場合には、上記のような冷却性能を有する冷凍機であれば、体格が大きくて重い冷凍機であっても構わない。
【0039】
第1および第2の冷凍機16,17は、各ピストン54の移動方向が同一直線上となるように対向配置されている。すなわち、第1および第2の冷凍機16,17は、軸方向に対向して設けられている。そして、第1および第2の冷凍機16,17では、各ピストン54が互いに反対方向に移動するように圧縮機56を駆動する。換言すれば、第1および第2の冷凍機16,17において、ピストン54bによる圧縮ストロークと膨張ストロークとを互いに同期するように駆動される。このような配置および駆動にすることで、ピストン54の移動によって第1および第2の冷凍機16,17が超電導モータ10に及ぼす回転モーメントが相殺されて、振動や騒音を抑制できる。
【0040】
第1の冷凍機16の冷却部58の軸方向先端面が接触する伝熱部材60は、例えば熱伝導性が良好な金属板で形成され、周方向に連なった円環状をなして軸方向一方側に位置する全てのコイルエンド部36に接触している。一方、第2の冷凍機17の冷却部58の軸方向先端面が接触する伝熱部材60は、例えば熱伝導性が良好な金属板で形成され、周方向に連なった円環状をなして、軸方向他方側に位置する全てのコイルエンド部36に接触している。これにより、各冷凍機16,17の冷却部58が伝熱部材60を介してコイルエンド部36から吸熱してコイル34を冷却することができる。
【0041】
伝熱部材60のコイル対向面には、コイルエンド部36が嵌合する凹部または溝が形成されている。このようにすることで、コイルエンド部36と伝熱部材60との接触面積が増加し、コイル34の冷却効率を上げることができる。
【0042】
また、伝熱部材60は、絶縁性樹脂材料を成型することによってコイルエンド部36に一体に形成されてもよい。これにより、コイル34と冷凍機16,17の冷却部58間の電気絶縁性がより向上する。この場合、伝熱部材60の熱伝導性を良好にするために、金属製の粒子または粉末を上記絶縁性樹脂材料に分散させるのが好ましい。
【0043】
このように本実施形態の超電導モータ10では、2つの冷凍機16,17によって、熱容量が大きいステータコア30を介在させることなく、コイル34を軸方向両側から効率よく迅速に所望の極低温まで冷却することができる。そのため、超電導モータ10の始動時間の短時間化、および、冷凍機の消費電力の低減を図れる。
【0044】
また、本実施形態の超電導モータ10では、第1および第2の冷凍機16,17は、各ピストン54の移動方向が同一直線上となるように配置され、かつ、各ピストン54が互いに反対方向に移動するように圧縮機56が駆動されることで、ピストン54の移動によって第1および第2の冷凍機16,17が超電導モータ10に及ぼす回転モーメントが相殺されて振動や騒音を抑制できる。
【0045】
次に、図3を参照して第2の実施形態の超電導モータ10aについて説明する。本実施形態の超電導モータ10aは、上述した第1の実施形態の超電導モータ10と冷凍機16,17の配置が異なるだけであるため、その相違点のみについて説明することとし、他の同一構成については同一符号を付して重複する説明を援用により省略する。
【0046】
超電導モータ10aでは、第1および第2の冷凍機16,17がモータケース40の外周側壁上に取り付けられ、各ガス圧縮機56からそれぞれ延伸する冷媒ガス流路管62が各冷却部58にそれぞれ接続されている。この場合においても、第1および第2の冷凍機16,17の各ピストン54は互いに反対方向に移動するように駆動される。これ以外の構成は、上記超電導モータ10と同様である。
【0047】
本実施形態の超電導モータ10bによれば、上記第1の実施形態の超電導モータ10と同様の作用効果を奏するのに加えて、軸方向のモータ幅を小さくすることができ、車両搭載性を向上させることができる。
【0048】
次に、図4を参照して第3の実施形態である超電導モータ10bについて説明する。本実施形態の超電導モータ10bは、上述した第1の実施形態の超電導モータ10と冷凍機16,17の配置が異なるだけであるため、その相違点のみについて説明することとし、他の同一構成については同一符号を付して重複する説明を援用により省略する。
【0049】
超電導モータ10bでは、第1および第2の冷凍機16,17が、14ステータの径方向に対向する位置に配置されると共に、各ピストン54が互いに同一方向に移動するようにガス圧縮機56が駆動されるようになっている。この場合でも、第1および第2の冷凍機16,17内の各ピストン54は、上記超電導モータ10,10aのように同一直線上ではないものの、軸方向に沿って往復移動する。これ以外の構成は、上記超電導モータ10と同様である。
【0050】
より詳細には、超電導モータ10bでは、第1の冷凍機16が、第2の冷凍機17に対して周方向に180度ずれた位置において第2の冷凍機17と対向して設けられている。この場合、第1の冷凍機16のピストン54が圧縮ストロークで図中右側へ移動するときには第2の冷凍機17のピストン54が膨張ストロークで図中右側へ移動し、第1の冷凍機16のピストン54が膨張ストロークで図中左側へ移動するときには第2の冷凍機17のピストン54が圧縮ストロークで図中左側へ移動するというように、各ピストン54が互いに同一方向に移動する。このように第1および第2の冷凍機16,17のガス圧縮機56が駆動されることで、ピストン54の移動によって第1および第2の冷凍機16,17が超電導モータ10bに及ぼす回転モーメントが相殺または減殺されて振動や騒音を抑制できる。
【0051】
さらに、超電導モータ10bでは、第1および第2の冷凍機16,17が径方向に対向する位置に設けられていることで、各冷却部58もまた径方向に対向する位置(すなわち周方向に180度ずれた位置)で伝熱部材60にそれぞれ接触している。これにより、上記第1の実施形態の超電導モータ10に比べて、周方向に配列された複数のコイル34全体を所望の極低温まで一様に冷却するのに要する時間をより短縮することが可能になる。
【0052】
なお、上記各実施形態の超電導モータ10,10a,10bにおいては、2つの冷凍機16,17を用いて超電導線材からなるコイル34を軸方向両側から冷却する構成としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、3つ以上の冷凍機を用いてコイルを軸方向両側から冷却するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10,10a,10b 超電導モータ、12 ロータ、14 ステータ、16 第1の冷凍機、17 第2の冷凍機、18 ロータシャフト、19a,19b 端部、20 ロータコア、22 永久磁石、24,26 エンドプレート、28 軸受部材、30 ステータコア、32 ティース部、34 コイル、36 コイルエンド部、40 モータケース、42 内筒部材、44 外筒部材、46 第1真空室、48 第2真空室、50 ブラケット、52 シリンダ、54 ピストン、56 ガス圧縮機、58 冷却部、60 伝熱部材、62 冷媒ガス流路管、X 回転中心軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に支持されたロータと、前記ロータの外周を覆って設けられ、超電導線材からなる複数のコイルがステータコア内周部に巻装されているステータとを有する超電導モータであって、
冷却部をそれぞれ有する複数の冷凍機をさらに備え、前記ステータにおいて軸方向両端部に位置する各コイルのコイルエンド部を前記複数の冷凍機の冷却部で軸方向両側から冷却する、
超電導モータ。
【請求項2】
請求項1に記載の超電導モータにおいて、
前記複数の冷凍機は第1および第2の冷凍機を含み、第1の冷凍機の冷却部は軸方向一方側の各コイルエンド部に接触して配置される環状の伝熱部材に接触して設けられ、第2の冷凍機の冷却部は軸方向他方側の各コイルエンド部に接触して配置される環状の伝熱部材に接触して設けられることを特徴とする超電導モータ。
【請求項3】
請求項2に記載の超電導モータにおいて、
前記第1および第2の冷凍機は、シリンダ内で直線的に往復移動して冷媒ガスの圧縮および膨張を行うピストンを有する圧縮機を含んでそれぞれ構成され、前記第1および第2の冷凍機が対向して配置されると共に、前記第1および第2の冷凍機の各ピストンが互いに反対方向に移動するように前記圧縮機が駆動されることを特徴とする超電導モータ。
【請求項4】
請求項2に記載の超電導モータにおいて、
前記第1および第2の冷凍機の各圧縮機がモータケースの外周側壁上に取り付けられ、前記各圧縮機からそれぞれ延伸する冷媒ガス流路管が前記各冷却部にそれぞれ接続されていることを特徴とする超電導モータ。
【請求項5】
請求項2に記載の超電導モータにおいて、
前記第1および第2の冷凍機はシリンダ内で直線的に往復移動して冷媒ガスの圧縮および膨張を行うピストンを有する圧縮機を含んでそれぞれ構成され、前記第1および第2の冷凍機は前記ステータの径方向に対向する位置に配置されると共に、前記第1および第2の冷凍機の各ピストンが互いに同一方向に移動するように前記圧縮機が駆動されることを特徴とする超電導モータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の超電導モータにおいて、
前記ステータは、前記ロータと同心上にそれぞれ配置される内筒部材および外筒部材と軸方向両端に設けられるモータエンドプレートとにより区画形成される筒状をなす真空室内に収容されることを特徴とする超電導モータ。
【請求項7】
請求項6に記載の超電導モータにおいて、
前記真空室は、前記外筒部材の外周を囲んで形成される別の真空室によりモータ外部と隔てられることを特徴とする超電導モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−244535(P2011−244535A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112124(P2010−112124)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】