説明

超電導体法およびリアクタ

酸化物膜を成長させるための方法であって、中間酸化物材料の膜(120)の表面上に反応ガス混合物(60,70)を入射することと、膜(120)の表面に隣接する領域(80)から生成ガスの少なくとも一部を除去することとを含む。反応ガス混合物(60,70)は、膜(120)の表面に対して少なくとも約5度の角度で膜(120)の表面に入射し、膜は、最大約700トル(91kPa)の全圧力を有するリアクタ(100)の一部(150,160,170)内に位置している。酸化物は、バッファ材料および超電導体材料からなるグループから選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、米国特許法第119条により、2003年6月10日付けの、「超電導体法およびリアクタ」(Superconductor Methods And Reactors)という名称の米国仮特許出願第60/477,613号への優先権を主張する。上記米国仮特許出願の全文は参照により本明細書に組み込むものとする。
(参照文献による編入)
下記の文献は参照により本明細書に組み込むものとする。1993年7月27日付けの、「MOD前駆体溶液からの非常に多くのテクスチャを有する酸化物超電導膜の製造」(Preparation of Highly Textured Oxide Superconducting Films from MOD Precursor Solutions)という名称の米国特許第5,231,074号;2000年2月8日付けの、「エピタキシャル層を含む超電導体物品を製造するための低真空プロセス」(Low Vacuum Process for Producing Superconductor Articles with Epitaxial Layers)という名称の米国特許第6,022,832号;2000年2月22日付けの、「エピタキシャル層を製造するための低真空プロセス」(Low Vacuum Process for Producing Epitaxial Layers)という名称の米国特許第6,027,564号;2001年2月20日付けの、「非晶質表面上に堆積された岩塩状の構造を有する薄膜」(Thin Films Having Rock−Salt−Like Structure Deposited on Amorphous Surfaces)という名称の米国特許第6,190,752号;2000年10月5日付けの、「合金材料」(Alloy Materials)という名称の国際公開公報WO 00/58530;2000年10月5日付けの、「合金材料」(Alloy Materials)という名称の国際公開公報WO/58044;1999年4月8日付けの、「酸化に対する耐性が改善された基板」(Substrates with Improved Oxidation Resistance)という名称の国際公開公報WO 99/17307;1999年4月8日付けの、「超電導体用基板」(Substrates for Superconductors)という名称の国際公開公報WO 99/16941;1998年12月23日付けの、「超電導酸化物への金属オキシフルオライドの制御変換」(Controlled Conversion of Metal Oxyfluorides into Superconducting Oxides)という名称の国際公開公報WO 98/58415;2001年2月15日付けの、「多層物品およびその製造法」(Multi−Layer Articles and Methods of Making Same)という名称の国際公開公報WO 01/11428;2001年2月1日付けの、「多層物品およびその製造法」(Multi−Layer Articles And Methods Of Making Same)という名称の国際公開公報WO 01/08232;2001年2月1日付けの、「多層物品の製造法および組成」(Methods And Compositions For Making A Multi−Layer Article)という名称の国際公開公報WO 01/08235;2001年2月1日付けの、「コーティングした導体厚膜前駆体」(Coated Conductor Thick Film Precursor)という名称の国際公開公報WO 01/08236;2001年2月1日付けの、「A.C.損失が少ないコーティングした導体」(Coated Conductors With Reduced A.C. Loss)という名称の国際公開公報WO 01/08169;2001年3月1日付けの、「表面制御合金基板およびその製造法」(Surface Control Alloy Substrates And Methods Of Manufacture Therefor)という名称の国際公開公報WO 01/15245;2001年2月1日付けの、「強化純粋酸化物層の形成」(Enhanced Purity Oxide Layer Formation)という名称の国際公開公報WO 01/08170;2001年4月12日付けの、「酸化物層の反応速度の制御」(Control of Oxide Layer Reaction Rates)という名称の国際公開公報WO 01/26164;2001年4月12日付けの、「酸化物層方法」(Oxide Layer Method)という名称の国際公開公報WO 01/26165;2001年2月1日付けの、「強化高温コーティング超電導体」(Enhanced High Temperature Coated Superconductors)という名称の国際公開公報WO 01/08233;2001年2月1日付けの、「超電導体の製造法」(Methods of Making A Superconductor)という名称の国際公開公報WO 01/08231;2002年4月20日付けの、「前駆体溶液およびその使用法」(Precursor Solutions and Methods of Using Same)という名称の国際公開公報WO 02/35615;2000年5月26日付けの、「酸化物青銅組成およびそれにより製造したテクスチャ物品」(Oxide Bronze Compositions And Textured Articles Manufactured In Accordance Therewith)という名称の米国特許出願第09/579,193号;2001年7月31日付けの、「多層超電導体およびその製造法」(Multi−Layer Superconductors And Methods Of Making Same)という名称の米国仮特許出願第60/309,116号;2002年7月30日付けの、「超電導体法およびリアクタ」(Superconductor Methods and Reactor)という名称の米国特許出願第10/208,134号;および2001年7月31日付けの、「超電導体法およびリアクタ」(Superconductor Methods and Reactors)という名称の米国仮特許出願第60/308,957号。
【0002】
本発明は、超電導体材料、その製造法およびそれを製造するためのリアクタに関する。
【背景技術】
【0003】
多層物品は、種々の用途に使用することができる。例えば、酸化物超電導体を含む超電導体は、多層物品から形成することができる。通常、このような超電導体は、超電導体材料の1つまたは複数の層、および多層物品の機械的強度を強化することができる通常基板と呼ばれる層を含む。
【0004】
通常、多層超電導体の強度を強化する他に、基板はいくつかの他の特性を有することが望ましい。例えば、基板は、超電導体の使用温度で強磁性にならないように、低いキュリー温度を有することが望ましい。さらに、基板内の化学種が超電導体材料の層内に拡散できないことが望ましい。さらに、基板の熱膨張係数は、超電導体材料の熱膨張係数とほぼ等しいことが望ましい。さらに、基板を酸化物超電導体用に使用する場合には、基板材料が酸化に対して比較的高い耐性を有することが望ましい。
【0005】
イットリウム−バリウム−銅−酸化物(YBCO)のようなある種の材料の場合には、その超電導状態の場合に大きな移動電流を供給する材料の性能は、通常、材料の結晶学的配向に依存する。例えば、このような材料は、材料が2軸方向にテクスチャを有する場合、比較的大きな臨界電流密度(Jc)を有することができる。
【0006】
本明細書で使用する場合、「2軸方向にテクスチャを有する表面」という用語は、結晶粒が、表面の平面内のある方向ときちんと整合している表面、または表面の平面内のある方向および表面に垂直な方向の両方にきちんと整合している表面を意味する。2軸方向にテクスチャを有する表面の1つのタイプは、結晶粒の主要な立方軸が、表面に垂直な方向および表面の平面内の方向ときちんと整合しているキューブ・テクスチャを有する面である。キューブ・テクスチャを有する面の一例としては、(100)[001]面があり、2軸方向にテクスチャを有する面の例としては、(011)[100]および(113)[211]面等がある。
【0007】
ある種の多層超電導体の場合には、超電導体材料の層は、エピタキシャル層である。本明細書で使用する場合には、「エピタキシャル層」という用語は、その結晶の方向が、その上にエピタキシャル層が堆積される材料の層の表面の結晶学的配向から由来する材料の層を意味する。例えば、基板上に堆積されている超電導体材料のエピタキシャル層を有する多層超電導体の場合には、超電導体材料の層の結晶学的配向は、基板の結晶学的配向に由来する。それ故、基板の上記特性の他に、基板は2軸方向にテクスチャを有する表面またはキューブ・テクスチャを有する表面を有することが望ましい。
【0008】
ある種の基板は、上記特徴のすべてを容易に示さない。それ故、通常バッファ層と呼ばれる1つまたは複数の中間層を、基板と超電導体層との間に配置することができる。バッファ層は、基板より酸化に対する耐性の強いものであってもよいし、および/または基板と超電導体層との間の化学種の拡散を低減するものであってもよい。さらに、バッファ層は、超電導体材料とよくマッチする熱膨張係数を有することができる。
【0009】
いくつかの例の場合には、バッファ層はエピタキシャル層である。それ故、その結晶学的配向は、バッファ層が堆積される表面の結晶学的配向に由来する。例えば、基板、超電導体材料(例えば、2軸方向にテクスチャを有する超電導体材料のバルクを含む)のエピタキシャル・バッファ層およびエピタキシャル層を有する多層超電導体の場合には、バッファ層の表面の結晶学的配向は、基板の表面の結晶学的配向から由来し、超電導体材料の層の結晶学的配向は、バッファ層の表面の結晶学的配向から由来する。それ故、バッファ層を有する多層超電導体が示す超電導特性は、バッファ層の表面の結晶学的配向により異なる。
【0010】
いくつかの例の場合には、バッファ層は、エピタキシャル層ではないが、イオン・ビーム援用デポジションにより形成することができる。通常、イオン・ビーム援用デポジションは、材料を同時に堆積しながら、表面を表面に対して特定の角度を有するイオンで照射するステップを含む。バッファ層を形成するためにイオン・ビーム援用デポジションを使用するいくつかの例の場合には、バッファ層の表面の結晶学的配向は、下に位置する層(例えば、テクスチャを有さない基板などのような基板)の表面の結晶学的配向とは無関係である。しかし、通常、例えば、イオン・エネルギーおよびビーム電流、温度、表面に同時に到着するイオンの数に対する表面に到着する原子の数の比、および基板上への入射角のようなイオン・ビーム堆積パラメータは、バッファ層の表面の結晶学的配向が、バッファ層(例えば、超電導材料の層)の表面上に堆積する層に対して適当なテンプレートを供給するように選択される。
【0011】
いくつかの例の場合には、超電導体材料の形成は、下記のステップを含む。溶液を表面(例えば、バッファ層表面)へ配置するステップ。超電導体材料を供給するために溶液を加熱するステップ。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
一般に、本発明は、超電導体(前駆体から形成される超電導体膜)を製造するための方法、超電導体を製造するために使用するリアクタ、およびこのようなリアクタを含むシステムに関する。この方法、リアクタ、およびシステムは、前駆体(例えば、YBCOのような高品質の希土類アルカリ土類銅酸化物超電導体材料)から比較的迅速に形成された超電導体膜のような高品質の超電導体材料を供給するために使用することができる。例えば、この方法、リアクタおよびシステムは、優れた結晶学的配向(例えば、平面の外にc軸を有し、平面内に2軸方向のテクスチャを有するYBCO)を有し、および/または優れた超電導性(例えば、1平方センチメートル当たり少なくとも約5×10アンペアの臨界電流密度、および/または1センチメートルの幅当たり少なくとも約100アンペアの臨界電流)を有する超電導体材料(例えば、前駆体から形成した超電導体膜)を比較的迅速に形成するために使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
ある態様においては、本発明は、超電導体を製造するための方法を特徴とする。この方法は、中間超電導体材料の膜の表面上に、反応ガス混合物を入射するステップを含む。反応ガス混合物は、膜の表面に対して所定の角度、すなわち、少なくとも約5度の角度で膜の表面上に入射し、膜は最高約700トル(91kPa)の全圧力を有するリアクタの一部内に位置する。
【0014】
他の態様においては、本発明は、中間超電導体材料の膜の表面上に、反応ガス混合物を入射するステップを含む超電導体の製造方法を特徴とする。膜は、最高約700トル(91kPa)の全圧力を有するリアクタの一部内に位置していて、膜は基板の表面上に配置される。基板は2軸方向に配向している。基板は少なくとも約1センチメートルの幅を有し、超電導体は、少なくとも約1センチメートルの幅を有する。超電導体は2軸方向に配向し、超電導体は、その幅を横切ってほぼ一定のc軸配向を有する。超電導体のc軸配向は、基板の表面に対してほぼ垂直である。超電導体は、その幅を横切ってほぼ一定の化学組成を有し、超電導体は、その幅を横切ってほぼ一定の相含量を有する。
【0015】
他の態様においては、本発明は、中間の超電導体材料の膜の表面上に反応ガス混合物を入射するステップと、膜の表面上に反応ガスを入射しながら、膜を移動するステップとを含む超電導体の製造方法を特徴とする。膜は、最高約700トル(91kPa)の全圧力を有するリアクタの一部内に位置する。
【0016】
ある態様においては、本発明は、中間超電導体材料の膜の表面上に反応ガス混合物を入射するステップを含む超電導体の製造方法を特徴とする。膜は、最高約700トル(91kPa)の全圧力を有するリアクタの一部内に位置し、膜は基板の表面上に配置される。基板は2軸方向に配向している。超電導体は、2軸方向に配向し、超電導体は、基板の表面にほぼ垂直方向へ、1秒当たり少なくとも1オングストローム(0.1nm)の平均c軸成長速度を有する。
【0017】
他の態様においては、本発明は、フッ素含有超電導体前駆体の膜の表面上に反応ガス混合物を入射するステップと、膜の表面に隣接する領域からHFの少なくとも一部を除去するステップとを含む超電導体の製造方法を特徴とする。反応ガス混合物は、膜の表面に対して少なくとも約5度のある角度で膜の表面に入射し、膜は最高約700トル(91kPa)の全圧力を有するリアクタの一部内に位置する。
【0018】
他の態様においては、本発明は、中間超電導体材料の膜の表面上に反応ガス混合物を入射するステップと、膜の表面にガスを入射しながら、膜を移動するステップとを含む超電導体の製造方法を特徴とする。反応ガス混合物は、膜の表面に対して少なくとも約5度の角度で膜の表面上に入射し、膜は、最高約700トル(91kPa)の全圧力を有するリアクタの一部内に位置する。膜は基板の表面上に配置され、基板は2軸方向に配向し、基板は少なくとも約1センチメートルの幅を有する。超電導体は少なくとも約1センチメートルの幅を有し、超電導体は2軸方向に配向している。超電導体は、その幅を横切ってほぼ一定のc軸配向を有し、超電導体のc軸配向は、基板の表面にほぼ垂直であり、超電導体は、その幅を横切ってほぼ一定の化学組成を有する。超電導体は、その幅を横切ってほぼ一定の相含量を有する。
【0019】
ある態様においては、本発明は、超電導体の製造方法を特徴とする。この方法は、フッ化バリウム前駆体を移動させながら、フッ化バリウム前駆体の表面上に反応ガスを入射するステップを含む。膜は基板の表面上に配置され、基板は2軸方向に配向し、基板は少なくとも約1センチメートルの幅を有する。超電導体は少なくとも約1センチメートルの幅を有し、超電導体は2軸方向に配向している。超電導体は、その幅を横切ってほぼ一定のc軸方向に配向し、超電導体のc軸配向は、基板の表面に対してほぼ垂直であり、超電導体は、その幅を横切ってほぼ一定の化学組成を有する。超電導体は、その幅を横切ってほぼ一定の相含量を有する。
【0020】
他の態様においては、本発明は、酸化物膜の成長方法を特徴とする。この方法は、中間酸化物材料の膜の表面上に反応ガス混合物を入射するステップと、膜の表面に隣接する領域から生成ガスの少なくとも一部を除去するステップとを含む。反応ガス混合物は、膜の表面に対して少なくとも約5度の角度で膜の表面上に入射し、膜は最高約700トル(91kPa)の全圧力を有するリアクタの一部内に位置する。酸化物は、バッファ材料および超電導体材料からなるグループから選択される。
【0021】
ある態様においては、本発明は、基板の表面上にフッ化バリウムを含む膜を供給するステップと、膜上に第1の反応ガス混合物を入射するステップとを含む方法を特徴とする。この方法は、また、基板の表面上に超電導体材料を供給するために、膜上に第1の反応ガスを入射しながら、基板を第1の温度に加熱するステップを含む。第1の反応ガスは、基板の表面に対して少なくとも約5度の角度で膜上に入射する。
【0022】
他の態様においては、本発明は、超電導体材料の形成方法を特徴とする。この方法は、第1の物品を形成するために、基板の表面上にフッ化バリウムを含む超電導体前駆体膜を供給するステップと、基板の表面上に超電導体材料を形成するために、リアクタの第1のゾーン内の第1のガス環境に第1の物品を露出しながら第1の物品を加熱し、それにより基板の表面上に超電導体材料を有する第2の物品を形成するステップとを含む。この方法は、また、第2の物品をリアクタの第2のゾーンに移動するステップと、膜内に存在したほぼすべてのフッ化バリウムが超電導体材料に変換されるように、リアクタの第2のゾーン内の第2のガス環境に第2の物品を露出するステップとを含む。
【0023】
他の態様においては、本発明は、超電導体材料の製造方法を特徴とする。この方法は、超電導体材料を形成するために、フッ化バリウムを含む膜の表面に反応ガスを入射するステップを含む。超電導体材料は、基板の表面上によりサポートされ、超電導体材料は、基板の表面にほぼ垂直方向へ1秒当たり少なくとも約1オングストローム(0.1nm)の平均c軸成長速度を有する。
【0024】
ある態様においては、本発明は、超電導体材料の製造方法を特徴とする。この方法は、基板の表面上にフッ化バリウムを含む膜を供給するステップと、基板の表面上に超電導体材料を形成するために、膜の表面上に反応ガスを入射するステップとを含む。超電導体材料の表面の第1の点のところに位置する超電導体材料の一部は、基板の表面にほぼ垂直な方向に第1の平均c軸成長速度を有する。超電導体材料の表面の第2の点のところに位置する超電導体材料の一部は、基板にほぼ垂直な方向に第2の平均c軸成長速度を有する。基板にほぼ垂直な方向の第1の平均c軸成長速度は、基板にほぼ垂直な方向の第2の平均c軸成長速度とほぼ同じであり、超電導体材料の表面の第1および第2の点は、c軸にほぼ垂直な方向に少なくとも約3センチメートル開いている。通常、超電導体材料は、ほぼ均一および/または均質である。
【0025】
他の態様においては、本発明は、超電導体材料の製造方法を特徴とする。この方法は、基板の表面上にフッ化バリウムを含む膜を供給するステップと、膜の表面に接触する前に反応ガスを加熱するステップとを含む。この方法は、また、超電導体を形成するために膜の表面上に加熱した反応ガスを入射するステップを含む。
【0026】
他の態様においては、本発明は、超電導体材料の層を形成するためのリアクタを特徴とする。リアクタは、ハウジング、バリア、少なくとも1つの出口、および真空デバイスを含む。ハウジングは、超電導体材料の層に対して基板を保持するように構成されている。バリアは、ハウジングの内部を第1および第2の領域に分割するように構成されているハウジングの内部に位置する。バリアは、ハウジングの第1および第2のゾーンが、(例えば、実質的には任意のガス圧力で)流体が流通、即ち連通するように構成されている実質的なガス浸透部材からできている。少なくとも1つの出口がハウジング内部にあり、フッ化バリウムを含む表面上の膜が超電導体材料の層に変換されるように、動作中、基板がハウジング内に位置している場合に、反応ガスが少なくとも1つの出口から基板の表面の方向に流れることができるように構成されている。真空デバイスは、ハウジングの内部と連通していて、真空デバイスは、動作中、基板がハウジング内に位置している場合に、真空デバイスが、基板の表面に隣接する位置から1つまたは複数のガスを除去することができるように構成されている。真空デバイスは、リアクタの内部の少なくとも一部と連通するように構成することができる。
【0027】
ある態様においては、本発明は、超電導体材料の層を形成するためのシステムを特徴とする。このシステムは、ハウジング、第1のガス源、第2のガス源、少なくとも1つの真空デバイス、第1のヒータおよび第2のヒータを含む。ハウジングは第1および第2のゾーンを有し、ハウジングは超電導体材料の層に対して基板を保持するように構成されている。第1のガス源は、反応ガスが第1のガス源からハウジングの第1のゾーンの内部に流れることができるように、また動作中、基板がハウジング内に位置している場合に、第1の反応ガスが基板の表面の方向に向くように、ハウジングの第1のゾーンと連通している。第2のガス源は、第2の反応ガスが第2のガス源からハウジングの第2のゾーンの内部に流れることができるように、また動作中、基板がハウジング内に位置している場合に、第2の反応ガスが基板の表面の方向に向くように、ハウジングの第2のゾーンと連通している。真空デバイスは、ハウジングの内部と連通していて、真空デバイスは、動作中、基板がハウジング内に位置している場合に、真空デバイスが、基板の表面に隣接する位置から1つまたは複数のガスを除去することができるように構成されている。第1のヒータは、ハウジングの第1のゾーンに隣接していて、第1のヒータは、システムの動作中、ハウジングの第1のゾーンを加熱するように構成されている。第2のヒータは、ハウジングの第2のゾーンに隣接していて、第2のヒータは、システムの動作中ハウジングの第2のゾーンを加熱するように構成されている。真空デバイスは、リアクタの内部の少なくとも一部と連通するように構成することができる。
【0028】
いくつかの実施形態の場合には、本発明は、比較的速い速度(例えば、超電導体の幅に沿った基板の表面にほぼ垂直な方向に、1秒当たり少なくとも約1オングストローム(0.1nm)の平均c軸成長速度)で超電導体材料(例えば、前駆体からできている超電導体膜)の製造方法を提供することができる。超電導体材料は、優れた臨界電流密度、優れた臨界電流、および/または優れた結晶学的配向を有することができる。
【0029】
いくつかの実施形態の場合には、本発明は、比較的均一な方法で、超電導体材料(例えば、前駆体から作った超電導体膜)の製造方法を提供することができる。例えば、超電導体材料は、(例えば、超電導体の幅に沿って相互から約3センチメートルより長い)比較的遠くまで除去される表面上の点のところで、(例えば、超電導体の幅に沿って基板の表面にほぼ垂直な方向にc軸に沿って)比較的均一な成長速度で成長することができる。
【0030】
いくつかの実施形態の場合には、本発明は、表面(例えば、生成ガスの望ましくないガス境界層)のところの望ましくないガス境界層の狭い構成を有する超電導体材料(例えば、前駆体からできている超電導体膜)の製造方法を提供することができる。
【0031】
いくつかの実施形態の場合には、本発明は、表面をほとんど予備加熱しないで、超電導体材料(例えば、前駆体からできている超電導体膜)の製造方法を提供することができる。例えば、反応ガスを予備加熱することができる。
【0032】
いくつかの実施形態の場合には、本発明は、比較的広いエリア上で超電導体の比較的均一な構成を含む超電導体材料(例えば、前駆体からできている超電導体膜)の製造方法を提供することができる。
【0033】
いくつかの実施形態の場合には、本発明は、これらの方法および他の方法で使用することができるリアクタを提供することができる。リアクタの内部は真空デバイスと連通することができる。
【0034】
いくつかの実施形態の場合には、本発明は、比較的優れた反応ガスを混合することができるリアクタを提供することができる。リアクタの内部は真空デバイスと連通することができる。
【0035】
いくつかの実施形態の場合には、本発明は、反応ガスをほぼ除去することができるリアクタを提供することができる。例えば、リアクタの内部は真空デバイスと連通することができる。
【0036】
本明細書で使用する場合、「フッ化バリウム」という用語は、BaFおよび部分置換BaF(例えば、イットリウムおよび/または酸素で一部が置換されているBaF)を意味する。
【0037】
本発明の特徴、目的および利点は、説明、図面および特許請求の範囲内に記載してある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
図1は、多層YBCO超電導体のような多層超電導体物品を製造するためのリアクタ100の断面図である。リアクタ100は、炉20、一部が炉20内に配置されているレトルト30、送出しリール40、巻取りリール50、リール40および50の周囲に巻かれている基板120、ガス・ライン67を通してノズル65と連通している反応ガス源60、ガス・ライン77を通してノズル75と連通している反応ガス源70、およびレトルト30内に一部が配置されていて、炉20内に一部が配置されているガス抜き孔80を含む。レトルト30は、エンドキャップ32および34によりその端部で密封されている。加熱デバイス22、24および26は、炉20を加熱する。各加熱デバイスは、それ自身で1つまたは複数(例えば、1、2、3等)の個々のヒータを形成することができる。ガス抜き孔80は、エンドキャップ34を通過し、真空デバイス(例えば、ポンプ)と連通している。この配置の場合、炉20内に位置するレトルト30の一部は、ゾーン150、160および170に分割されている。(基板120、ガス供給源およびガス抜き孔を横切る)スロットを含む壁部162は、ゾーン150、160の間に位置していて、壁部172は、(基板120、ガス供給源およびガス抜き孔を横切る)スロットと一緒にゾーン160および170の間に位置する。
【0039】
使用中、リール40および50は回転し、そのため基板120はリアクタ100を通して矢印の方向に移動する。基板120がリアクタ100内に入ると、基板はゾーン150を通過し、その間ガス混合物を含むプルーム155は、ノズル75内の開口部152を通過して、基板120の方向に向かう。通常、前駆体(例えば、フッ化バリウム、および/またはCuOおよび/またはYのような追加の材料を含む超電導体前駆体膜)を含む膜は、ゾーン150を通って移動する場合に、少なくともいくつかの点で基板120の表面上に位置し(例えば、膜がゾーン150に入る場合に、基板120の表面上に位置し)、プルーム155(例えば、酸素および/または水を含む)と接触する。プルーム155内のガスは膜と反応し、ガス抜き孔80を通して膜120の表面に隣接する領域、および膜と反応しない入射ガス混合物の一部と一緒に真空デバイスから除去される1つまたは複数の生成物種(例えば、HFガス)を生成する。
【0040】
基板120は、次に、ゾーン160を通過し、その間ガス混合物を含むプルーム165は、ノズル65内の開口部162を通過し、基板120の方向に向けられる。フッ化バリウムおよび/またはフッ化バリウムを含む化学物質の反応生成物(以下の説明参照)は、ゾーン160を通して移動する際に、少なくともある点のところで基板120の表面上に位置する膜内に存在し、フッ化バリウムおよび/またはフッ化バリウムを含む化学物質の反応生成物を含む膜は、プルーム165(例えば、酸素および/または水を含む)と接触する。プルーム165内のガスは、膜と反応し、1つまたは複数の生成物種(例えば、HFガス)を生成し、これらの生成物は、ガス抜き孔80を通して膜120の表面に隣接する領域から、および膜と反応しない入射ガス混合物の一部と一緒に真空デバイスから除去される。
【0041】
次に、基板120は、リアクタ100のゾーン170を通過する。ゾーン170は、壁部172によりゾーン160から分離されている。いくつかの実施形態の場合には、壁部172は、ゾーン160と170間のガスの流れを低減(例えば、最小限度まで低減)するように設計される。
【0042】
一般に、リアクタ100および基板120に関連する種々のパラメータは、必要に応じて変更することができるが、通常、高品質の超電導体材料が形成されるように選択される。
【0043】
いくつかの実施形態の場合には、リアクタ100のために下記のパラメータが選択される。炉20は、その全長に沿って9つの等間隔のヒータを有する。炉20の長さは、約300センチメートルであり、炉20の直径は最大約15センチメートルであるレトルトを収容することができる大きさである。レトルト30は約135mm(外径)であり、約130mm(内径)であり、約3.5メートル(長さ)である。ガス抜き孔80は、約67ミリメートル(外径)であり、約63ミリメートル(内径)であり、約2.6メートル(長さ)である。エンドキャップ34は、真空ポンプに接続するためのQF40管継手を有する。ガス抜き孔80はその全長を貫通するドリルで開けた孔の2本のラインを有する。孔部の大きさは約100ミリトルのゾーン圧で、ゾーン150および160から100sccmのガスを、ほぼ均一に排出するように構成されている。エンドキャップ32および34(例えば、アルミニウム・エンドキャップ)は、基板120の横移動用の貫通孔を有するOリング・シール、ガス供給源およびガス抜き孔を有する。ノズル65(例えば、Inconel601スケジュール40パイプ)は、約33.4ミリメートル(外径)、約26.6ミリメートル(内径)であり、約1.6メートル(長さ)である。ノズル65は、約10ミリメートル間隔の159のスロットを有する。各スロットは、パイプの内径上で測定した場合、長さが約13ミリメートルであり、幅が約0.4ミリメートルである。ガス・ライン67(例えば、Inconel601チューブ)の直径は約0.5インチであり、長さは約2メートルである。ノズル75は、長さが約45センチメートルで約5ミリメートル間隔で88のスロットを有する点を除けば、ノズル65と同じ寸法および同じ構成部材を有する。
【0044】
このような実施形態の場合には、下記の追加パラメータを選択することができる。ゾーン150内の全ガス圧力は約1.3トルである。ゾーン150内の酸素の分圧は約0.1トル(0.013kPa)である。ゾーン150内の水の分圧は約1.2トルである。ゾーン150内の追加のガス(例えば、不活性ガス)の分圧は約0トルである。ゾーン150に入る時の基板120の温度はほぼ室温であり、基板120がゾーン150から出るときの温度は約800℃である。基板120がゾーン150に入る場所に隣接するゾーン150の一部内での基板120の温度急上昇率は、約50℃/分であり(基板120の温度が約650℃になるまで)、基板120がゾーン150からでる場所に隣接するゾーン150の一部内の基板120の温度急上昇率は、約25℃/分である(基板120が約650℃の温度から、約800℃の温度に達するまで加熱される間)。ゾーン160内の全ガス圧力は約1.3トルである。ゾーン160内の酸素の分圧は約0.1トル(0.013kPa)である。ゾーン160内の水の分圧は約1.2トルである。ゾーン160内の追加のガス(例えば、不活性ガス)の分圧は約0トルである。通常、その幅に沿ったゾーン160の温度は、ほぼ一定である(例えば、約5%以下、約2%以下、約1%以下だけ変化するというように)。
【0045】
いくつかの実施形態の場合には、ゾーン160の温度も、その全長に沿ってほぼ一定である(例えば、約5%以下、約2%以下、約1%以下だけ変化するというように)。例えば、ゾーン160の温度は、最高約800℃であってもよい(例えば、約760℃から約800℃、約760℃から約785℃のように)。いくつかの実施形態の場合には、ゾーン160の温度は、その全長に沿って変化する(例えば、その全長に沿って上昇し、その全長に沿って下降するように)。例えば、基板120が入るゾーン160の温度は、約760℃であってもよく、基板120が出るゾーン160の温度は約785℃であってもよい。
【0046】
他の例としては、基板120が入るゾーン160の温度は、約785℃であってもよく、基板120が出るゾーン160の温度は約760℃であってもよい。ゾーン170内の全ガス圧力は約1.3トルである。ゾーン170内の酸素の分圧は約0.1トル(0.013kPa)である。ゾーン170内の水の分圧は約1.2トルである。ゾーン170内の追加のガス(例えば、不活性ガス)の分圧は約0トルである。ゾーン170に入る時の基板120の温度は、約800℃であり、基板120がゾーン170から出るときの温度は約100℃以下である。
【0047】
一般に、リアクタ100の場合には、必要に応じて寸法を変更することができる。例えば、いくつかの実施形態の場合には、炉20は1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10等)のヒータを有することができる。ヒータ間の間隔は均一であっても、均一でなくてもよい。炉20の長さは約10センチメートルから約500センチメートル(例えば、約200センチメートルから約400センチメートル)であってもよい。炉20の直径は、約1センチメートルから約50センチメートル(例えば、約10センチメートルから約20センチメートル)の直径を有するレトルトを収容できるものであってもよい。レトルト30は、最大約200ミリメートル(例えば、最大約150ミリメートル)までの外径を有することができる。レトルト30は、最大約200ミリメートル(例えば、最大約150ミリメートル)までの内径を有することができる。レトルト30は、最大約10メートル(例えば、最大約3.5メートル)までの長さを有することができる。ガス抜き孔80は、最大約150ミリメートル(例えば、最大約100ミリメートル)までの外径を有することができる。ガス抜き孔80は、最大約200ミリメートル(例えば、最大約100ミリメートル)までの内径を有することができる。ノズル75は、最大約100ミリメートル(例えば、最大約50ミリメートル)までの外径を有することができる。ノズル75は、最大約75ミリメートル(例えば、最大約50ミリメートル)までの内径を有することができる。ノズル75は、最大約5メートル(例えば、最大約2メートル)までの長さを有することができる。ノズル75は、最大約500スロット(例えば、最大約200スロット)までを有することができる。ノズル75内のスロットは、最大約25ミリメートル(例えば、最大約15ミリメートル)までの間隔を有することができる。ノズル75内の各スロットは、パイプの内径上で測定した場合、最大約25ミリメートル(例えば、最大約15ミリメートル)までの長さを有することができる。ノズル75内の各スロットは、最大約1ミリメートル(例えば、最大約0.5ミリメートル)までの幅を有することができる。ガス・ライン77は、最大約1インチ(例えば、最大約0.75インチ)までの直径を有することができる。ガス・ラインは、最大約10メートル(例えば、最大約5メートル)までの長さを有することができる。ノズル65は、ノズル75と類似の寸法を有することができる。
【0048】
一般に、ゾーン150の場合には、必要に応じてパラメータを選択することができる。例えば、いくつかの実施形態の場合には、全ガス圧力は、約700トル(91kPa)以下(例えば、約500トル(65kPa)以下、約200トル(26kPa)以下、約100トル(13kPa)以下、約10トル(1.3kPa)以下、約10ミリトル(0.0013kPa)から約2トル(0.26kPa)、約10ミリトル(0.0013kPa)から約1トル(0.13kPa))であってもよい。酸素の分圧は、約10トル(1.3kPa)以下(例えば、約1トル(0.13kPa)以下、約10ミリトル(0.0013kPa)から約1トル(0.13kPa)、約10ミリトル(0.0013kPa)から約0.5トル(0.065kPa))であってもよい。水の分圧は、全ガス圧力と酸素の分圧との間の違い程度であってもよい。基板120がゾーン150に入る時の温度は、ほぼ室温である。基板120がゾーン150から出る時の温度は約220℃から約850℃であってもよい。基板120がゾーン150に入る場所に隣接するゾーン150の一部内での基板120の温度急上昇率は、例えば、基板120が約550℃から約650℃の温度に達するまで、少なくとも約1℃/分(例えば、約100℃/分から約10℃/分、約25℃/分から約75℃/分)であってもよい。基板120がゾーン150から出る場所に隣接するゾーン150の一部内の基板120の温度急上昇率は、約550℃から約650℃、約720℃、約850℃までの温度で基板120が加熱される時のように、少なくとも約1℃/分(例えば、約10℃/分から約50℃/分、約15℃/分から約35℃/分)であってもよい。また、基板120の一部は、約1分から約500分の間(例えば、約10分から約250分、約30分から約120分、約45分から約90分、約60分)、リアクタ100のゾーン150内に滞留することができる。
【0049】
一般に、ゾーン160の場合には、必要に応じてパラメータを選択することができる。例えば、いくつかの実施形態の場合には、全ガス圧力は、約700トル(91kPa)以下(例えば、約500トル(65kPa)以下、約200トル(26kPa)以下、約100トル(13kPa)以下、約10トル(1.3kPa)以下、約10ミリトル(0.0013kPa)から約2トル(0.26kPa)、約10ミリトル(0.0013kPa)から約1トル(0.13kPa))であってもよい。酸素の分圧は、約10トル(1.3kPa)以下(例えば、約1トル(0.13kPa)以下、約10ミリトル(0.0013kPa)から約1トル(0.13kPa)、約10ミリトル(0.0013kPa)から約0.5トル(0.065kPa))であってもよい。水の分圧は、全ガス圧力と酸素の分圧との間の違い程度であってもよい。基板120の温度はゾーン160内においてほぼ一定であってもよいし、またはゾーン160の全長に沿って変化することもできる。また、基板120の一部は、約1分から約500分の間(例えば、約10分から約250分、約30分から約120分、約45分から約90分、約60分)、リアクタ100のゾーン160内に滞留することができる。
【0050】
一般に、ゾーン170の場合には、必要に応じてパラメータを選択することができる。例えば、いくつかの実施形態の場合には、全ガス圧力は、約700トル(91kPa)以下(例えば、約500トル(65kPa)以下、約200トル(26kPa)以下、約100トル(13kPa)以下、約10トル(1.3kPa)以下、約10ミリトル(0.0013kPa)から約2トル(0.26kPa)、約10ミリトル(0.0013kPa)から約1トル(0.13kPa))であってもよい。酸素の分圧は、約10トル(1.3kPa)以下(例えば、約1トル(0.13kPa)以下、約10ミリトル(0.0013kPa)から約1トル(0.13kPa)、約10ミリトル(0.0013kPa)から約0.5トル(0.065kPa))であってもよい。水の分圧は、全ガス圧力と酸素の分圧との間の違い程度であってもよい。ゾーン170に入るときの基板120の温度は約720℃から約850℃であり、ゾーン170から出るときの基板120の温度は、約100℃以下(例えば、約50℃以下、ほぼ室温)であってもよい。ゾーン170内での基板120の温度の下降速度は、約1℃/分から約20℃/分の間(例えば、約2℃/分から約15℃/分、約5℃/分から約10℃/分)であってもよい。また、基板120の一部は、約1分から約500分の間(例えば、約10分から約250分、約30分から約120分、約45分から約90分、約60分)、リアクタ100のゾーン170内に滞留することができる。通常、ガス・プルームは、ゾーン170内においては基板120に入射しない。通常、ゾーン170内のガス環境は、基板120の表面上の超電導体材料とガス環境内のガスとの反応を低減するように(例えば、最小限度まで低減するように)選択される。いくつかの実施形態の場合には、ゾーン170のガス環境内の水の量は十分少ないので、ゾーン170のガス環境内の水と基板120の表面上の超電導体材料との間の反応は比較的少ない(全然起こらないというように)。
【0051】
一般に、リアクタ100内の基板120の表面上に形成された超電導体材料(例えば、YBCO)の層が、比較的厚く、比較的大きな臨界電流密度を有し、および/または比較的大きな臨界電流を有するようにパラメータが選択される。いくつかの実施形態の場合には、超電導体材料の層は、約0.1ミクロンから約20ミクロン(例えば、少なくとも約1ミクロン、少なくとも約2ミクロン、少なくとも約3ミクロン、少なくとも約4ミクロン、少なくとも約5ミクロン、約1ミクロンから約20ミクロン、約1ミクロンから約10ミクロン、約1ミクロンから約5ミクロン)の厚さを有する。いくつかの実施形態の場合には、超電導体材料の層は、センチメートル当たり1マイクロボルトの基準を使用して、セルフ・フィールド(すなわち、非適用フィールド)内で77Kで、移送測定で測定した場合、1平方センチメートル当たり少なくとも約5×10アンペア(例えば、1平方センチメートル当たり少なくとも約1×10アンペア、1平方センチメートル当たり少なくとも約2×10アンペア)の臨界電流密度を有する。いくつかの実施形態の場合には、超電導体材料の層は、大きな臨界電流(例えば、幅のセンチメートル当たり少なくとも約100アンペア、幅のセンチメートル当たり少なくとも約200アンペア、幅のセンチメートル当たり少なくとも約300アンペア、幅のセンチメートル当たり少なくとも約400アンペア、幅のセンチメートル当たり少なくとも約500アンペア)を有する。
【0052】
通常、プルーム155および165内に含まれているガスは、基板120の表面にほぼ平行でない角度(例えば、基板120の表面に対して少なくとも約5度、基板120の表面に対して少なくとも約10度、基板120の表面に対して少なくとも約20度、基板120の表面に対して少なくとも約30度、基板120の表面に対して少なくとも約40度、基板120の表面に対して少なくとも約50度、基板120の表面に対して少なくとも約60度、基板120の表面に対して少なくとも約70度、基板120の表面に対して少なくとも約80度、基板120の表面に対して少なくとも約85度、基板120の表面に対して約90度)で基板120上に入射する。例えば、図2A〜図2Dは、基板120の表面に対するガス・ビームの角度(Θ)を示す。
【0053】
ゾーン150、160および/または170内の温度はヒータにより制御することができる。例えば、ゾーン150は、ゾーン150を通して基板120が通過する場合に(例えば、基板120がゾーン150に入る位置に隣接するヒータの温度が、基板120がゾーン150から出る位置に隣接するヒータの温度より低くなるように)、基板120が所望の速度で所望の温度になるように制御される、1つまたは複数のヒータで熱伝達することができる。ゾーン160は、ゾーン160を通して基板120が通過する場合に、基板120が所望の速度で所望の温度になるように制御される1つまたは複数のヒータで熱伝達することができる。ゾーン170は、ゾーン170を通して基板120が通過する場合に、基板120が所望の速度で所望の温度になるように制御される1つまたは複数のヒータで熱伝達することができる。いくつかの実施形態の場合には、1つまたは複数のゾーン150、160および170用の1つまたは複数のヒータを、それぞれゾーン150、160および/または170と隣接させることができる(例えば、接触により)。1つまたは複数のヒータの温度は、例えば、1つまたは複数の適当なフィードバック・ループを使用して、または使用しないで、コンピュータ制御することができる。1つまたは複数のヒータの温度は、例えば、手動で制御することができる。
【0054】
理論により拘束されることは望まないが、高温(例えば、約675℃から約925℃、約700℃から約900℃、約750℃から約850℃、約775℃から約825℃、約800℃)では、フッ化バリウムは、下式によりBaO超電導体中間体を形成するために、反応ガス(例えば、水を含む反応ガス)と可逆的に反応することができると考えられている。
【0055】
BaF+HO ←→BaO+2HF
さらに、このような高温においては、BaO超電導体中間体は、下式によりYBCOを形成するために、YおよびCuOと反応することができる。
【0056】
2BaO+1/2Y+3CuO ←→ YBaCu
リアクタ100を使用した場合、1つまたは複数の反応ガス(例えば、水)は、基板120の表面のところで比較的よく混合され、比較的少量のある種の生成ガス(例えば、フッ化水素)が、基板120の表面に存在すると考えられている。基板120の表面に比較的よく混合された反応ガスが存在すると、および/または基板120の表面に少量の生成ガスが存在すると、BaOを含む超電導体中間体を供給するためにフッ化バリウムと反応する反応ガス(例えば、水)の機能を強化することができると考えられている。さらに、このことが、今度は、品質(例えば、平面からのc軸および平面内の2軸方向のテクスチャのような結晶学的配向についての)および/または形成されたYBCOの成長速度(例えば、超電導体の幅に沿った基板の面にほぼ垂直な方向の平均c軸成長速度)を改善することができると考えられている。
【0057】
通常、プルーム155および/または165内に含まれているガスの流れは、必要に応じて変化させることができる。例えば、いくつかの実施形態の場合には、プルーム155内のガスの混合物の流れは乱流であり、いくつかの実施形態の場合には、プルーム155内のガス混合物の流れは層流である。いくつかの実施形態の場合には、プルーム165内のガスの混合物の流れは乱流であり、いくつかの実施形態の場合には、プルーム165内のガス混合物の流れは層流である。ガス混合物のガスの乱流は、基板120の表面に入射する場合に、少なくとも約2,100(例えば、少なくとも約3,000、少なくとも約4,000、少なくとも約5,000)のレイノルド数を有することができる。いくつかの実施形態の場合には、プルーム155および/または165内のガス混合物の流れは、基板120の表面のところで反応ガスが比較的よく混合するような流れである。
【0058】
いくつかの実施形態の場合には、基板120の表面のところの生成ガス(例えば、フッ化水素)の境界層は低減する(例えば、基板120の表面は、フッ化水素の境界層を実質的に含んでいない)。このことは、例えば、フッ化水素の境界層の形成が、フッ化バリウムがBaO超電導体中間体に変換される速度を低減することができる場合には有利である。
【0059】
いくつかの実施形態の場合には、よく混合された反応ガスを使用すると、超電導体の幅に沿った基板のテクスチャの表面にほぼ垂直な方向において、基板120の表面を横切るc軸の成長速度が比較的均一になる。例えば、図3に示すように、点2110および点2120間の距離が、少なくとも約1センチメートル(少なくとも約3センチメートル、少なくとも約5センチメートル、少なくとも約10センチメートル、少なくとも約15センチメートル)および/または最高約50センチメートルまで(例えば、最高約25センチメートル、最高約20センチメートル)である場合には、基板120の表面の点2110のところのYBCOのc軸成長速度を、基板120の表面の点2120のところの基板のテクスチャを有する表面にほぼ垂直な方向で、YBCOのc軸成長速度とほぼ同じにすることができる。通常、点2110および2120を結ぶ線は、基板120の幅に沿っている。このことは、例えば、ほぼ均一な(例えば、ほぼ同じ厚さ、ほぼ同じ化学組成、ほぼ同じ相含量、ほぼ同じ結晶学的配向、ほぼ同じ臨界電流密度および/またはほぼ同じ臨界電流)超電導体層が、超電導体がテープの形に形成された場合のように、比較的広い表面を横切っていることが望ましい場合には、いくつかの実施形態の場合有利である場合がある。いくつかの実施形態の場合には(例えば、超電導体がテープの形をしている場合)、超電導体は、少なくとも約10センチメートル(少なくとも約3センチメートル、少なくとも約5センチメートル、少なくとも約1センチメートル、少なくとも約15センチメートル)および/または最高約50センチメートル(例えば、最高約25センチメートル、最高約20センチメートル)の幅を有することができる。
【0060】
いくつかの実施形態の場合には(例えば、膜が2軸方向に配向している基板またはバッファ層上に位置している場合)、反応条件によっては、膜の表面にほぼ垂直な方向に、例えば、約0.5オングストローム(0.05nm)/秒から少なくとも約5オングストローム(0.5nm)/秒(例えば、少なくとも約1オングストローム(0.1nm)/秒、少なくとも約2オングストローム(0.2nm)/秒、少なくとも約25オングストローム/秒、少なくとも約50オングストローム(5nm)/秒)の平均c軸成長速度を有する必要な超電導体(例えば、YBCO)になる。
【0061】
今まで、反応全体を通して基板が移動するリアクタについて説明してきたが、他の装置も使用することができる。一例を挙げると、(例えば、真空デバイスを含むまたは含まない)固定リアクタを、ゾーン150後に起こる反応に対して使用することができる。他の例を挙げると、固定リアクタ(例えば、真空デバイスを含むまたは含まない)を、ゾーン160の前および/または後に起こる反応に対して使用することができる。他の例を挙げると、固定リアクタ(例えば、真空デバイスを含むまたは含まない)を、ゾーン170の前に起こる反応に対して使用することができる。
【0062】
さらに、今まで、超電導体材料の形成中に、リアクタを通して基板が移動するリアクタについて説明してきたが、1つまたは複数の上記利点を達成するために他のリアクタを使用することができる。例えば、図4は、壁部1110、1120、1130および1140を有するハウジング1100、ハウジング1100に伝熱するヒータ1145、およびヒータ1145から伝熱されるサポート1150を含むリアクタ1000の断面図である。ハウジング1100は、また、部材1170が出口1160(図5)をサポートするように、出口1160および出口1160の間に位置する部材1170を含む。各出口1160は、オリフィス1164を有し、出口1160は、コンジット1185を通してガス源1180と連通している。部材1170は、機械的に強固で、ガスが浸透することができる材料(例えば、Pall Corporationから市販されているRigimesh(登録商標)材料のようなメッシュ材料、ドリル加工または機械加工した金属またはセラミック・プレート)から形成されているので、リアクタ1000の領域1102(図4の部材1170の上に示す)および領域1104(図5の部材1170の下に示す)は、連通している。部材1170は、コンジット1195を通して真空デバイス(例えば、真空ポンプ)1190と連通している。
【0063】
図6は、YBCOを供給するために、フッ化バリウム(およびCuOおよび/またはYのようなオプションとしての1つまたは複数の追加の前駆体)を含む膜を処理するために使用中のリアクタ1000の断面図である。コンジット1185と接続しているガス源1180からの反応ガス(例えば、水および/または酸素)の流れは、出口1160に入り、オリフィス1164を通して出口1160から出て、サポート1150上に配置している物品2000の(フッ化バリウムを含む膜からできている)表面2100上に入射する。ポンプ1190は、部材1170およびコンジット1195を通して表面2100から生成ガス(例えば、フッ化水素)を除去する。
【0064】
ガス源1180、コンジット1185および出口1160は、通常、オリフィス1164から出るガスの圧力および/または速度が、リアクタ1100の使用中、所与の時点において異なる出口1160に対してほぼ均一になるように設計されている。いくつかの実施形態の場合には、オリフィス1164から出るガスの圧力および/または速度は、リアクタ1100の使用中変更することができる。
【0065】
領域1104内のガスの全圧力は、通常、約700トル(91kPa)以下(例えば、約500トル(65kPa)以下、約200トル(26kPa)以下、約100トル(13kPa)以下、約10ミリトル(0.0013kPa)から約2トル(0.26kPa))である。
【0066】
出口1160から出たガスは、表面2100にほぼ平行でない角度(例えば、表面2100に対して少なくとも約5度、表面2100に対して少なくとも約10度、表面2100に対して少なくとも約20度、表面2100に対して少なくとも約30度、表面2100に対して少なくとも約40度、表面2100に対して少なくとも約50度、表面12100に対して少なくとも約60度、表面2100に対して少なくとも約70度、表面2100に対して少なくとも約80度、表面2100に対して少なくとも約85度、表面2100に対して約90度)で表面2100上に入射する。
【0067】
部材1170を通しておよびコンジット1195に沿ってポンプ1190により除去されたガス(例えば、フッ化水素のような生成ガス)は、表面2100を離れ、表面2100のところのこれらガスの量が低減する。いくつかの実施形態の場合には、ガスは、表面2100にほぼ平行でない角度(例えば、表面2100に対して少なくとも約5度、表面2100に対して少なくとも約10度、表面2100に対して少なくとも約20度、表面2100に対して少なくとも約30度、表面2100に対して少なくとも約40度、表面2100に対して少なくとも約50度、表面2100に対して少なくとも約60度、表面2100に対して少なくとも約70度、表面2100に対して少なくとも約80度、表面2100に対して少なくとも約85度、表面2100に対して約90度)で表面2100を離れる。
【0068】
今まで、超電導体中間物を形成するためにフッ化バリウムを処理する際のリアクタの使用について説明してきたが、リアクタの使用はこれに限定されない。いくつかの実施形態の場合には、リアクタは、異なる超電導体前駆体により超電導体材料の層を形成するために使用することができる。いくつかの実施形態の場合には、超電導性を有さない材料の1つまたは複数の層を形成するために、リアクタを使用することができる。一例を挙げて説明すると、バッファ材料を形成するためにリアクタを使用することができる。
【0069】
基板120がリアクタ100に入る場合に、基板120の表面にフッ化バリウムを含む膜が存在するいくつかの実施形態の場合には、CuOおよび/またはYは、基板120の表面上に配置している膜内に存在することができる。フッ化バリウムCuOおよび/またはYを、例えば、溶液前駆体方法、および/または蒸着方法(例えば、化学蒸着方法、物理蒸着方法、電子ビーム蒸着方法)を含む種々の技術により、基板120の表面上に配置された膜内に形成することができる。フッ化バリウムCuOおよび/またはYのうちの1つまたはそれ以上を堆積するために、これらの方法の組合せを使用することもできる。
【0070】
今まで、リアクタに入る前に、その表面上に存在するフッ化バリウムを含む膜を有する基板について説明してきたが、本発明はこれに限定されない。いくつかの実施形態の場合には、フッ化バリウムおよび/または他の適当な材料の1つまたは複数の前駆体は、リアクタに入る場合に、基板の表面上の膜内に存在することができ、リアクタをフッ化バリウムおよび/または他の適当な材料を形成するために使用することができる。
【0071】
通常、フッ化バリウムおよび/または他の超電導体前駆体を作るために、溶液化学が使用されるいくつかの実施形態の場合には、溶液(例えば、酢酸イットリウム、酢酸銅、酢酸バリウム、および/またはバリウムのフッ化酢酸塩のような金属塩を含む溶液)が、表面上(例えば、その上に配置されている1つまたは複数のバッファ層を含む合金層を有する基板のような基板の表面上)に配置される。溶液は、標準技術(例えば、スピン・コーティング、ディップ・コーティング、スロット・コーティング)により表面上に配置される。(例えば、ほぼ室温または中適度の熱により乾燥した)溶液内に含まれている有機化合物のうちの少なくともいくつかを除去するために溶液を乾燥し、結果として得られる材料は、フッ化バリウムおよび/または他の適当な材料(例えば、CuOおよび/またはY)を形成するために、酸素および水を含むガス環境内の炉内で反応する(例えば、分解する)。いくつかの実施形態の場合には、これらのステップのうちの任意のステップまたはすべてのステップ中に上記リアクタを使用することができる。
【0072】
金属塩溶液のいくつかの例は下記のように使用することができる。
いくつかの実施形態の場合には、金属塩溶液は比較的少量の遊離酸を含むことができる。水溶液内においては、このことは、相対的に中性のpH(例えば、強酸性でもなければ強塩基性でもない)を有する金属塩溶液に対応することができる。金属塩溶液は、超電導体層が形成される下に位置する層として使用することができる、種々様々な材料を使用して多層超電導体を作るために使用することができる。
【0073】
金属塩溶液の全遊離酸の濃度は、約1×10−3モル以下(例えば、約1×10−5モル、または約1×10−7モル以下)であってもよい。金属塩溶液が含むことができる遊離酸の例としては、トリフルオロ酢酸、酢酸、硝酸、硫酸、沃化物の酸、臭化物の酸、硫化物の酸等がある。
【0074】
金属塩溶液が水を含んでいる場合には、前駆体の組成は、少なくとも約3(例えば、少なくとも約5または約7)のpHを有することができる。
いくつかの実施形態の場合には、金属塩溶液は、比較的少量の水(例えば、約50容量%以下の水、約35容量%以下の水、約25容量%以下の水)を有することができる。
【0075】
金属塩溶液が、トリフルオロ酢酸イオンおよびアルカリ土類金属カチオン(例えば、バリウム)を含んでいる実施形態の場合には、トリフルオロ酢酸イオンの全量は、金属塩溶液内に含まれているアルカリ土類金属(例えば、バリウムイオン)に対する、(例えば、トリフルオロ酢酸の形をしている)金属塩溶液内に含まれているフッ素のモル比が、少なくとも約2:1(例えば、約2:1から約18.5:1または約2:1から約10:1)になるように選択することができる。
【0076】
通常、金属塩溶液は、第1の金属(例えば、銅)、第2の金属(例えば、アルカリ土類金属)、および希土類金属の可溶性化合物を、1つまたは複数の所望の溶媒およびオプションとしての水と結合することにより作ることができる。本明細書で使用する場合、第1および第2の金属および希土類金属の「可溶性化合物」という用語は、金属塩溶液内に含まれている溶媒内で溶かすことができるこれら金属の化合物を意味する。このような化合物としては、例えば、塩(例えば、硝酸塩、酢酸塩、アルコキシド、沃化物、硫酸塩、およびトリフルオロ酢酸)、これらの金属の酸化物および水酸化物等がある。
【0077】
いくつかの実施形態の場合には、金属塩溶液は、当業者であれば周知の方法により結合および反応させることができる、Ba(OCCH、Y(OCCHおよびCu(OCCHの粉末から作ったトリフルオロ酢酸金属を含む有機溶液から作ることができる。例えば、トリフルオロ酢酸金属粉末は、メチルアルコール内で2:1:3の割合で結合して、銅の含有量をベースとするほぼ0.94Mの溶液を形成することができる。
【0078】
いくつかの実施形態の場合には、金属塩溶液は、ルイス塩基を含むことができる。希土類金属は、イットリウム、ランタン、ユーロピウム、ガドリリウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、セリウム、プラセオジミウム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、またはルテチウムであってもよい。通常、希土類金属塩は、金属塩溶液内に含まれている溶媒内で溶けることができ、中間体(例えば、金属オキシハライド中間体)を形成するために処理した場合、希土類酸化物(例えば、Y)を形成する任意の希土類金属塩であってもよい。このような塩は、例えば、M(OC−(CH−CXX’X”)(OC−(CH−CX”’X””X””’)(OC−(CH−CX”””X”””’X””””)またはM(OR)のような化学式を有することができる。式中、Mは希土類金属であり、n、mおよびpは、それぞれ少なくとも1であるが、溶媒内で塩を不溶性にするある数字より小さい数字である(例えば、1から10)。X、X’、X”、X”’、X””、X””’、X”””、X”””’およびX””””はそれぞれ、H、F、Cl、BrまたはIである。Rは、ハロゲン化(例えば、CHCF)することができる、またはハロゲン化することができない炭素含有基である。このような塩の例としては、非ハロゲン化カルボン酸塩、ハロゲン化酢酸塩(例えば、トリフルオロ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリブロモ酢酸塩、トリイオド酢酸塩)、ハロゲン化アルコキシド、および非ハロゲン化アルコキシド等がある。このような非ハロゲン化カルボン酸塩の例としては、非ハロゲン化酢酸塩(例えば、M(OC−CH)等がある。アルカリ土類金属は、バリウム、ストロンチウムまたはカルシウムであってもよい。通常、アルカリ土類金属塩は、金属塩溶液内に含まれている溶媒内で溶けることができ、中間体(例えば、金属オキシハライド中間体)を形成するために処理した場合、アルカリ土類酸化物(例えば、BaO)を形成する前に、アルカリ土類ハロゲン化物(例えば、BaF、BaCl、BaBr、BaI)を形成する任意のアルカリ土類金属塩であってもよい。このような塩は、例えば、M’(OC−(CH−CXX’X”)(OC−(CH−CX”’X””X””’)またはM’(OR)という化学式を有することができる。式中、M’はアルカリ土類金属であり、nおよびmは、それぞれ少なくとも1であるが、溶媒内で塩を不溶性にするある数字よりも小さい数字である(例えば、1から10)。X、X’、X”、X”’、X””およびX””’は、それぞれ、H、F、Cl、B、またはIである。Rは、ハロゲン化または非ハロゲン化炭素含有基であってもよい。このような塩の例としては、ハロゲン化酢酸塩(例えば、トリフルオロ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリブロモ酢酸塩、トリイオド酢酸塩)等がある。通常、遷移金属は銅である。遷移金属塩は、金属塩溶液が含んでいる溶媒内で溶けるものでなければならない。好適には、前駆体が中間物(例えば、金属オキシハライド)に変換中に、個々の遷移金属分子(例えば、銅の分子)間で最小の交差結合が起こることが好ましい。このような遷移金属塩は、例えば、M”(CXX’X”−CO(CH)CO−CX”’X””X””’)(CX”””X”””’X””””−CO(CH)COCX””””’X”””””X”””””’)、M”(OC−(CH−CXX’X”)(OC−(CH−CX”’X””X””’)またはM”(OR)という化学式を有することができる。式中、M”は遷移金属である。aおよびbは、それぞれ少なくとも1であるが、溶媒内で塩を不溶性にするある数字よりも小さい数字である(例えば、1から5)。通常、nおよびmは、それぞれ少なくとも1であるが、溶媒内で塩を不溶性にするある数字よりも小さい数字である(例えば、1から10)。X、X’、X”、X”’、X””、X””’、X”””、X”””’、X””””、X””””’、X”””””、およびX”””””’は、それぞれ、H、F、Cl、Br、またはIである。Rは、ハロゲン化(例えば、CHCF)することができる、またはハロゲン化することができない炭素含有基である。これらの塩としては、例えば、ハロゲン化していない酢酸塩(例えば、M”(OC−CH)、ハロゲンした酢酸塩、ハロゲン化したアルコキシド、およびハロゲン化してないアルコキシド等がある。このような塩の例としては、トリクロロ酢酸銅、トリブロモ酢酸銅、トリイオド酢酸銅、Cu(CHCOCHCOCF、Cu(OOCC15、Cu(CFCOCHCOF、Cu(CHCOCHCOCH、Cu(CHCHCOCHCOCH、CuO(CN)およびCuBa(O−CHCF等がある。いくつかの実施形態の場合には、遷移金属塩は、遷移金属のプロピオン酸塩(例えば、遷移金属のハロゲン化していないプロピオン酸塩)のような、カルボン酸塩(例えば、ハロゲン化していないカルボン酸塩)である。遷移金属のハロゲン化していないプロピオン酸塩の例としては、Cu(OCCがある。いくつかの実施形態の場合には、遷移金属塩は、硫酸銅、硝酸銅、沃化銅および/または蓚酸銅のような簡単な塩である。いくつかの実施形態の場合には、nおよび/またはmは、ゼロの値を有することができる。いくつかの実施形態の場合には、aおよび/またはbは、ゼロの値を有することができる。
【0079】
例示としてのしかしこれらに限定されないルイス塩基の例としては、アンモニアおよびアミンのような窒素を含む化合物等がある。アミンの例としては、CHCN、CNおよびRN等がある。各Rは、それぞれH、アルキル基(例えば、直鎖アルキル基、分鎖アルキル基、脂肪族アルキル基、非脂肪族アルキル基および/または置換アルキル基)等である。理論により拘束されることは望まないが、金属塩溶液内にルイス塩基が含まれていると、中間物形成中の銅の架橋結合が低減すると考えられている。このような低減は、ルイス塩基が、銅イオンと配位結合(例えば、選択的配位結合)をすることができ、それにより銅の架橋結合の機能が低下するために起こると考えられている。
【0080】
通常、金属塩溶液は、例えば、スピン・コーティング、ディップ・コーティング、ウエブ・コーティング、スロット・コーティング、グラビア・コーティング、または当業者であれば周知の他の技術により表面(例えば、バッファ層の表面)に塗布され、その後で加熱される。
【0081】
次に、付着した溶液は、超電導体材料(例えば、YBCO)を供給するために加熱される。理論により拘束されることは望まないが、いくつかの実施形態の場合には、YBCOを形成する場合、溶液はまずフッ化バリウムに変換され、超電導体前駆体はBaO超電導体中間物に変換され、次に、BaO超電導体中間物がYBCOに変換されると考えられている。
【0082】
いくつかの実施形態の場合には、フッ化バリウムの形成は、乾燥した溶液を、約760トルの全ガス圧力を有し、約5トルから約50トルの水、および約0.1トル(0.013kPa)から約760トルの酸素を含んでいて、残りは不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン)である公称ガス環境内で、約5℃/分の速度でほぼ室温から約200℃に加熱するステップを含む。次に、温度は、ほぼ同じ公称ガス環境を維持しながら、少なくとも約1℃/分(例えば、少なくとも約5℃/分、少なくとも約10℃/分、少なくとも約15℃/分、少なくとも約20℃/分)の速度で、約200℃から約220℃に急速に上昇する。
【0083】
これら実施形態のあるものの場合には、フッ化バリウムは、湿った酸素(例えば、約20℃から約75℃の範囲内に露点を有する)内部で乾燥した溶液を約300℃から約500℃の範囲の温度に加熱することにより形成される。
【0084】
他の実施形態の場合には、フッ化バリウムは、約5トルから約50トルの水蒸気(例えば、約5トルから約30トルの水蒸気、または約10から約25トルの水蒸気)の水蒸気圧内で、乾燥した溶液を初期温度(例えば、室温)から約190℃から約215℃の温度(例えば、約210℃)に加熱することにより形成される。酸素の公称分圧は、例えば、約0.1トル(0.013kPa)から約760トルであってもよい。これら実施形態の場合には、約5トルから約50トルの水蒸気(例えば、約5トルから約30トルの水蒸気、または約10トル(1.3kPa)から約25トルの水蒸気)の水蒸気圧内で、約220℃から約290℃の温度へ引き続き加熱される。酸素の公称分圧は、例えば、約0.1トル(0.013kPa)から約760トル(98.8kPa)であってもよい。その後で、フッ化バリウムを形成するために、約5トル(0.65kPa)から約50トル(6.5kPa)の水蒸気(例えば、約5トル(0.65kPa)から約30トル(3.9kPa)の水蒸気、または約10トル(1.3kPa)から約25トル(3.25kPa)の水蒸気)の水蒸気圧内で、少なくとも2℃/分(例えば、少なくとも約3℃/分、または少なくとも約5℃/分)の速度で、約400℃に加熱される。酸素の公称分圧は、例えば、約0.1トル(0.013kPa)から約760トル(98.8kPa)であってもよい。
【0085】
他の実施形態の場合には、フッ化バリウムを形成するための乾燥溶液の加熱は、ほぼ室温以上の温度への第1の温度急上昇の後の、比較的長い時間(例えば、約1分以上、約5分以上、約30分以上、約1時間以上、約2時間以上、約4時間以上)の間、温度がほぼ一定(例えば、約10℃内で、約5℃内で、約2℃内で、約1℃内で一定)に維持される1つまたは複数のステップを含む。これら実施形態の場合には、金属塩溶液の加熱は、比較的長い時間(例えば、約1分以上、約5分以上、約30分以上、約1時間以上、約2時間以上、約4時間以上)の間、温度をほぼ一定(例えば、約10℃内で、約5℃内で、約2℃内で、約1℃内)に維持しながら、2つ以上のガス環境(例えば、比較的高い水蒸気圧を有するガス環境、および比較的低い水蒸気圧を有するガス環境)を使用するステップを含むことができる。一例を挙げて説明すると、高い水蒸気圧環境内においては、水蒸気圧は、約5トル(0.65kPa)から約40トル(5.2kPa)(例えば、約32トル(4.2kPa)のように約25トル(3.25kPa)から約38トル(4.9kPa)の間)であってもよい。低い水蒸気圧環境は、約1トル(0.13kPa)以下(例えば、約0.1トル(0.013kPa)以下、約10ミリトル(0.0013kPa)以下、約5ミリトル(0.00065kPa))の水蒸気圧を有することができる。
【0086】
いくつかの実施形態の場合には、フッ化バリウムを形成するための乾燥した溶液の加熱は、(例えば、少なくとも約100℃、少なくとも約150℃、少なくとも約200℃、最高約300℃、最高約250℃、約200℃の温度に)予め加熱した炉内にコーティングしたサンプルを入れるステップを含むことができる。炉内のガス環境は、例えば、約760トルの全ガス圧力、水蒸気の所定の分圧(例えば、少なくとも約10トル(1.3kPa)、少なくとも約15トル(1.95kPa)、最高約25トル(3.25kPa)、最高約20トル(2.6kPa)、約17トル(2.21kPa))を有することができる。残りは分子状酸素である。コーティングしたサンプルが、炉の温度に達した後で、所定の温度急上昇速度(例えば、少なくとも約0.5℃/分、少なくとも約0.75℃/分、最高約2℃/分、最高約1.5℃/分、約1℃/分)で、炉の温度を上昇する(例えば、少なくとも約225℃へ、少なくとも約240℃へ、最高約275℃へ、最高約260℃へ、約250℃へ)ことができる。このステップは、最初の加熱ステップの際に使用した同じ公称ガス環境で行うことができる。次に、炉の温度を、所定の温度急上昇速度(例えば、少なくとも約5℃/分、少なくとも約8℃/分、最高約20℃/分、最高約12℃/分、約10℃/分)で、さらに上昇する(例えば、少なくとも約350℃、少なくとも約375℃、最高約450℃、最高約425℃、約450℃へ)ことができる。このステップは、最初の加熱ステップの際に使用した同じ公称ガス環境で行うことができる。
【0087】
いくつかの実施形態の場合には、超電導体材料の製造は、(例えば、テープの上、Gd、YSZおよびCeOのようなシーケンシャルに配置されているエピタキシャル・バッファおよび/またはキャップ層を有するテクスチャのあるニッケルテープからできているテープの上に)金属塩溶液をスロット・コーティングするステップを含むことができる。YSZは、イットリアで安定化したジルコニウムである。コーティングした金属塩溶液は、HO(例えば、約5トル(0.65kPa)のHOから約15トル(1.95kPa)のHO、約9トル(1.17kPa)のHOから約13トル(1.69kPa)のHO)を含む雰囲気内で堆積することができる。雰囲気の残りは不活性ガス(例えば、窒素)であってもよい。膜堆積中の全圧力は、例えば、約760トル(98.8kPa)であってもよい。膜は、例えば、温度の勾配を有するチューブ炉(例えば、直径約2.5インチのチューブ炉)を通してコーティングした膜を送ることにより分解することができる。炉内の各温度および勾配のガス雰囲気、および各勾配を通してのサンプルの移送速度は、上記方法により膜の処理がほぼ同じになるように選択することができる。
【0088】
金属塩溶液を上記のように処理すると、フッ化バリウムを作ることができる。好適には、前駆体は、欠陥密度が比較的低いものであることが好ましい。
特定の実施形態の場合には、必要な反応条件になるまで、酸化物層の形成を禁止することにより、望ましくないa軸方向に配向している酸化物層粒の形成を最小限度に低減するために、溶液のいくつかの処理方法を使用することができる。
【0089】
フッ化バリウム形成の溶液化学について説明してきたが、他の方法も使用することができる。例えば、固体材料、または準固体材料、前駆体材料はディスパージョンの形で堆積される。これらの前駆体の組成は、例えば、最終YBCO超電導体層内のBaCO形成を実質的に除去することができ、一方膜の核形成および成長を制御することもできる。このような前駆体組成物の定式化のための2つの一般的なアプローチを示す。
【0090】
一方のアプローチの場合には、前駆体組成物のカチオン性成分は、固体の形をしている成分内に、元素として、または好適には他の元素との混合物として供給される。前駆体組成物は、適当な基板、中間物でコーティングされた基板、またはバッファでコーティングした基板の表面上にコーティングできるように、また付着できるように、分散している極度に微細な粒子の形で供給される。これらの極度に微細な粒子は、エアゾール・スプレーにより、蒸着により、または所望の化学組成およびサイズを供給するために制御することができる、類似の技術により生成することができる。極度に微細な粒子は、約500nmより小さく、好適には約250nmより小さく、より好適には約100nmよりも小さく、さらにより好適には約50nmより小さいことが好ましい。一般に、粒子は、所望の最終膜の厚さの約50%未満、好適には、約30%未満、最も好適には、所望の最終膜の厚さの約10%未満であることが好ましい。例えば、前駆体組成物は、キャリア内に存在する実質的に化学量論的混合物内の超電導層の成分のうちの1つまたは複数の極度に微細な粒子を含むことができる。このキャリアは、このような粒子のディスパージョンを形成するために、溶媒、可塑剤、バインダ、分散剤、または当業者にとって周知の類似のシステムを含むことができる。極度に微細な各粒子は、このような成分の実質的に組成的に均一で、均質な混合物を含むことができる。例えば、各粒子は、実質的に化学量論的混合物内に、BaF、および希土類酸化物、および銅酸化物または希土類/バリウム/銅オキシフルオライドを含むことができる。できればこのような粒子を分析した場合、希土類:バリウム:銅の比率が化学量論的にほぼ1:2:3であり、フッ素:バリウムの比率が化学量論的にほぼ2:1であることが望ましい。これらの粒子は、結晶状であっても、非晶質のものであってもよい。
【0091】
第2のアプローチの場合には、前駆体成分は、元素ソースから、または所望の成分からなる実質的に化学量論的化合物から作ることができる。例えば、所望のREBCO成分(例えば、YBaCu7−x)の実質的に化学量論的化合物を含む固体、またはそれぞれが、所望の最終超電導層(例えば、Y、BaF、CuO)の特定の成分を含む多数の固体の蒸着を、前駆体組成物を製造するための極度に微細な粒子を作るために使用することができる。別の方法としては、所望のREBCO成分の実質的に化学量論的混合物を含んでいる有機金属溶液のスプレー乾燥またはエアゾール化を、前駆体組成物の際に使用する極度に微細な粒子を作るために使用することができる。別の方法としては、1つまたは複数のカチオン性成分を、前駆体組成物内に有機金属塩または有機金属化合物として供給することができるし、溶液内に存在させることもできる。有機金属溶液は、他の固体素子または化合物に対して溶媒またはキャリアとしての働きをすることができる。この実施形態によれば、分散剤および/またはバインダを前駆体組成物から実質的に除去することができる。例えば、前駆体組成物は、例えば、メタノールのような有機溶媒内に溶解しているトリフルオロ酢酸バリウムのような溶解性を持たせたバリウムを含む塩と一緒に、化学量論的に約1:3の比率で希土類酸化物および銅酸化物の極度に微細な粒子を含むことができる。
【0092】
超電導層がREBCOタイプのものである場合には、前駆体組成物は、その酸化物の形で希土類元素、バリウム、および銅;フッ化物、塩化物、臭化物および沃化物のようなハロゲン化物;例えば、トリフルオロ酢酸塩、蟻酸塩、蓚酸塩、乳酸塩、オキシフッ化物、プロピル酸塩、クエン酸塩、アセチルアセトン酸塩、塩素酸塩、および硝酸塩のようなトリハロ酢酸塩を含む酢酸塩のようなカルボン酸塩およびアルコラートを含むことができる。前駆体組成物は、その種々の形で元素(希土類元素、バリウム、および銅)の任意の組合せを含むことができる。前駆体組成物は、すべての成分が溶解していて、BaCOをほとんど形成しない前駆体のために必要な場合よりかなり短い個々の分解ステップを使用しないで、または分解ステップを使用して、ハロゲン化バリウムに希土類オキシフッ化物および銅(オキシフッ化物)を加えたものを含む中間物に変換することができる。また前駆体組成物は、後で、約89K程度のT、および1ミクロンまたはそれ以上の膜の厚さで約500,000A/cmより大きなJを含むエピタキシャルREBCO膜を製造するために、高温反応プロセスで処理することができる。例えば、YBaCu7−x超電導層の場合には、前駆体組成物は、ハロゲン化バリウム(例えば、フッ化バリウム)、酸化イットリウム(例えば、Y)、および酸化銅;または酸化イットリウム、トリフルオロ酢酸/メタノール溶液内のトリフルオロ酢酸バリウム、およびトリフルオロ酢酸/メタノール内の酸化銅およびトリフルオロ酢酸銅の混合物を含むことができる。別の方法としては、前駆体組成物は、トリフルオロ酢酸バリウム、YおよびCuOを含むことができる。別の方法としては、前駆体組成物は、メタノール内のトリフルオロ酢酸バリウムおよびトリフルオロ酢酸イットリウム、およびCuOを含むことができる。別の方法としては、前駆体組成物は、BaFおよび酢酸イットリウムおよびCuOを含むことができる。いくつかの好ましい実施形態の場合には、バリウムを含む粒子は、BaF粒子またはフルオロ酢酸バリウムとして存在する。いくつかの実施形態の場合には、前駆体は、固体の形で存在するカチオン成分を含む化合物のうちの1つの少なくとも一部を供給するカチオン成分のうちのいくつかまたはすべてを含む、実質的に溶解している有機金属塩であってもよい。いくつかの実施形態の場合には、ディスパージョン内の前駆体は、バインダおよび/または分散剤および/または溶媒を含む。
【0093】
前駆体組成物は、ほぼ均一な厚さのコーティングを行うように設計されている多数の方法により、基板またはバッファ処理された基板に塗布することができる。例えば、前駆体組成物は、スピン・コーティング、スロット・コーティング、グラビア・コーティング、ディップ・コーティング、テープ・キャスティングまたはスプレーにより塗布することができる。約1から10ミクロン、好適には約1から5ミクロン、より好適には約2から4ミクロンの厚さの超電導膜を形成するために、できれば均一にコーティングすることが好ましい。
【0094】
詳細については、2001年2月1日付けの、「コーティングした導体の厚膜前駆体」(Coated Conductor Thick Film Precursor)という名称の国際公開公報WO 01/08236を参照されたい。
【0095】
好ましい実施形態の場合には、超電導体層は、(例えば、平面内の2軸方向にテクスチャを有しているか、または平面からずれたc軸および平面内の2軸方向にテクスチャを有するというように)よく整理されている。いくつかの実施形態の場合には、超電導体材料のバルクは2軸方向にテクスチャを有する。超電導体層は、少なくとも約1ミクロンの厚さ(例えば、少なくとも約2ミクロンの厚さ、少なくとも約3ミクロンの厚さ、少なくとも約4ミクロンの厚さ、少なくとも約5ミクロンの厚さ)のものであってもよい。
【0096】
図7は、表面5110、バッファ層5200、および超電導体層5300を含む基板5100を有する超電導体物品5000の断面図である。
好適には、表面5110は、比較的はっきりと形成された結晶学的配向を有する。たとえば、表面5110は、2軸方向にテクスチャを有する表面(例えば、(113)[211]表面)、またはキューブ・テクスチャを有する表面(例えば、(100)[011]表面または(100)[001]表面)であってもよい。好適には、表面110のX線回折極点図内のピークは、約20度より小さな(例えば、約15度以下の、約10度以下の、または約5度から約10度の)FWHMを有することが好ましい。
【0097】
表面5110は、例えば、圧延および焼鈍しにより作ることができる。表面5110も、イオン・ビーム援用デポジション、傾斜基板デポジション、および例えばランダムな方向を向いている多結晶表面上に2軸方向にテクスチャを有する表面を形成するための、当業者であれば周知の他の真空技術のような真空プロセスにより作ることができる。いくつかの実施形態の場合には(例えば、イオン・ビーム援用デポジションを使用する場合)、基板5100の表面5110はテクスチャを有する必要はない(例えば、表面5110は、ランダムな方向を向いている多結晶であってもよいし、表面5110は非晶質であってもよい)。
【0098】
基板5100は、バッファ層スタックおよび/または超電導体材料の層をサポートすることができる任意の材料から形成することができる。基板5100として使用することができる基板材料の例としては、例えば、ニッケル、銀、銅、亜鉛、アルミニウム、鉄、クロム、バナジウム、パラジウム、モリブデンおよび/またはこれらの合金のような金属および/または合金等がある。いくつかの実施形態の場合には、基板5100は、超合金から形成することができる。いくつかの実施形態の場合には、基板5100は、比較的大きな表面積(例えば、テープまたはウエハ)を有する対象物の形であってもよい。これらの実施形態の場合には、好適には、基板5100は比較的柔軟な材料から形成することが好ましい。
【0099】
これらの実施形態のいくつかの場合には、基板は、下記の金属、すなわち銅、ニッケル、クロム、バナジウム、アルミニウム、銀、鉄、パラジウム、モリブデン、タングステン、金および亜鉛のうちの2つを含む二元合金である。例えば、二元合金は、ニッケルおよびクロム(例えば、ニッケルおよび最高20原子%のクロム、ニッケルおよび約5から約18原子%のクロム、またはニッケルおよび約10から約15原子%のクロム)から形成することができる。他の例を挙げて説明すると、二元合金は、ニッケルおよび銅(例えば、銅および約5から約45原子%のニッケル、銅および約10から約40原子%のニッケル、または銅および約25から約35原子%のニッケル)から形成することができる。もう1つの例を挙げて説明すると、二元合金は、ニッケルおよびタングステン(例えば、約1原子%のタングステンから約20原子%のタングステン、約2原子%のタングステンから約10原子%のタングステン、約3原子%のタングステンから約7原子%のタングステン、約5原子%のタングステン)を含むことができる。二元合金は、さらに、比較的少量の不純物(例えば、約0.1原子%以下の不純物、約0.01原子%以下の不純物、または約0.005原子%以下の不純物)を含むことができる。
【0100】
これらの実施形態のうちのいくつかの場合、基板は、3つ以上の金属(例えば、三元合金または四元合金)を含む。これらの実施形態のうちのいくつかの場合、合金は、(例えば、Mg、Al、Ti、Cr、Ga、Ge、Zr、Hf、Y、Si、Pr、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Lu、Th、Er、Tm、Be、Ce、Nd、Sm、Yb、および/またはLaのような、この場合はAlが好適な酸化物形成物である)1つまたは複数の酸化物形成物を含むことができ、また下記の金属、すなわち、銅、ニッケル、クロム、バナジウム、アルミニウム、銀、鉄、パラジウム、モリブデン、金および亜鉛のうちの2つを含むことができる。これらの実施形態のうちのいくつかの場合、合金は、下記の金属、すなわち、銅、ニッケル、クロム、バナジウム、アルミニウム、銀、鉄、パラジウム、モリブデン、金および亜鉛のうちの2つを含むことができ、上記酸化物形成物のうちの任意のものを実質的に使用しないことができる。
【0101】
合金が酸化物形成物を含んでいる実施形態の場合には、合金は、少なくとも約0.5原子%の酸化物形成物(例えば、少なくとも約1原子%の酸化物形成物、少なくとも約2原子%の酸化物形成物)を含むことができ、および最高約25原子%の酸化物形成物(例えば、最高約10原子%の酸化物形成物、または最高約4原子%の酸化物形成物)を含むことができる。例えば、合金は、酸化物形成物(例えば、少なくとも約0.5アルミニウム)、約25原子%から約55原子%のニッケル(例えば、約35原子%から約55原子%のニッケル、または約40原子%から約55原子%のニッケル)を含むことができる。この場合、残りは銅である。もう1つの例を挙げて説明すると、合金は、酸化物形成物(例えば、少なくとも約0.5原子アルミニウム)、約5原子%から約20原子%のクロム(例えば、約10原子%から約18原子%のクロム、または約10原子%から約15原子%のクロム)を含むことができる。この場合、残りはニッケルである。合金は、比較的少量の追加金属(例えば、約0.1原子%以下の追加金属、約0.01原子%以下の追加金属、または約0.005原子%以下の追加金属)を含むことができる。
【0102】
合金からできている基板は、例えば、粉末の形態の成分を組合せ、溶融および冷却し、または例えば固体内で粉末成分を一緒に拡散することにより作ることができる。次に、テクスチャ表面(例えば、2軸方向にテクスチャを有するまたはキューブ・テクスチャを有する)を形成するために、変形織り込み(例えば、焼鈍および圧延、スエージング、押し出しおよび/または絞り加工)により合金を形成することができる。別の方法としては、合金成分をゼリーロール構造内にスタックし、その後で変形テクスチャー加工を行うことができる。いくつかの実施形態の場合には、熱膨張係数が比較的低い材料(例えば、Nb、Mo、Ta、V、Cr、Zr、Pd、Sb、NbTi、NiAlまたはNiAlのような合金またはこれらの混合物)を、ロッドに形成し、変形テクスチャー加工の前に合金内に埋設することができる。
【0103】
いくつかの実施形態の場合には、表面5110のところの安定な酸化物の形成を、基板の表面上に配置した中間層により、2軸方向にテクスチャを有する合金の表面上に、第1のエピタキシャル(例えば、バッファ)層が形成されるまで緩和することができる。本発明で使用するのに適している中間層は、PO2により確立された条件、およびエピタキシャル・バッファ層の膜の初期成長のために必要な温度に曝された場合、表面酸化物を形成しないこれらのエピタキシャル金属層または合金層を含む。さらに、バッファ層は、基板の元素が、中間層の表面に移動し、エピタキシャル層の初期成長の間に酸化物を形成するのを防止するためのバリアとしての働きをする。このような中間層がないと、基板内の1つまたは複数の元素が、例えば、この酸化物層内にテクスチャが無いために、エピタキシャル層の堆積を有意に阻害する場合がある、基板の表面に熱力学的に安定な酸化物を形成する場合がある。
【0104】
これらの実施形態のうちのあるものの場合、中間層の性質は一過性である。本明細書で使用する場合、「一過性」という用語は、エピタキシャル膜の初期の核形成および成長の後の2軸方向テクスチャ基板に、全体的にまたは部分的に内蔵されているかまたは含まれている中間層を意味する。これらの環境下ですら、中間層および2軸方向テクスチャ基板は、堆積した膜のエピタキシャル的性質が確立されるまではっきりと残っている。例えば、中間層がニッケルのように磁性を有しているというように、ある望ましくない特性を有している場合には、一過性の中間層を使用することが好ましい。
【0105】
例示としての中間金属層としては、ニッケル、金、銀、パラジウムおよびこれらの合金等がある。追加の金属または合金は、ニッケルおよび/または銅の合金を含むことができる。中間層上に堆積しているエピタキシャル膜または層は、金属酸化物、カルコゲニド、ハロゲン化物、および窒化物を含むことができる。いくつかの実施形態の場合には、中間金属層は、エピタキシャル膜堆積条件下で酸化しない。
【0106】
初期バッファ層構造の核形成および成長の前に、堆積した中間層が基板内に完全に内蔵されていないか、基板内に完全に拡散していないと、エピタキシャル層が確立することに留意されたい。このことは、基板合金内の拡散定数、実際のエピタキシャル層の成長条件の下での酸化に対する熱力学的安定性、およびエピタキシャル・バッファ層との格子マッチングのような正しい属性のための金属(または合金)の選択の後で、堆積した金属層の厚さは、エピタキシャル層の堆積条件、特に温度に適合しなければならないことを意味する。
【0107】
中間金属層の堆積は、蒸着またはスパッタリングのような真空プロセスにより、または(電極を使用する、または使用しない)電気メッキのような電気化学的手段により行うことができる。これらの堆積した中間金属層は、(堆積中の基板の温度により)堆積後エピタキシャルなものであってもよいし、なくてよいが、その後で堆積後の熱処理中にエピタキシャル方向を向くことができる。
【0108】
いくつかの実施形態の場合には、中間層の表面上に硫黄を形成することができる。硫黄は、例えば、ある時間の間(例えば、約10秒から約1時間、約1分から約30分、約5分から約15分)、硫黄供給源(例えば、HS、タンタル箔または銀箔)、および水素(例えば、水素または5%水素/アルゴン・ガスの混合物のような水素と不活性ガスの混合物)を含むガス環境に中間層を露出することにより、中間層の表面上に形成することができる。このことは、高温で(例えば、約450℃から約1100℃、約600℃から約900℃、850℃の温度で)行うことができる。水素(または水素/不活性ガスの混合物)の圧力は、比較的低い(例えば、約1トル(0.13kPa)以下、約1×10−3トル以下、約1×10−6トル以下の)圧力であってもよいし、または比較的高い(例えば、約1トル(0.13kPa)以上、約100トル(13kPa)以上、約760トル以上の)圧力であってもよい。
【0109】
理論により拘束されることは望まないが、これらの条件下でテクスチャ基板の表面を硫黄供給源に露出すると、テクスチャ基板の表面上に硫黄の上部構造(例えば、ac(2×2)上部構造)が形成されるものと考えられる。さらに、上部構造は、中間層の表面の安定化(例えば、化学的および/または物理的な安定化)の際に効果がある場合があるものと考えられる。
【0110】
硫黄の上部構造を形成するための1つのアプローチについて説明したが、上部構造を形成するための他の方法も使用することができる。例えば、中間層の表面上に適当な有機溶液を塗布し、適当なガス環境内で適当な温度に加熱することにより、硫黄の上部構造(例えば、Sc(2×2))を形成することができる。
【0111】
さらに、中間層の表面上での硫黄の上部構造の形成について説明してきたが、表面の安定化(例えば、化学的および/または物理的な安定化)の際に、他の上部構造も効果があるものと考えられる。例えば、表面上に配置した酸素上部構造、窒素上部構造、炭素上部構造、カリウム上部構造、セシウム上部構造、リチウム上部構造、またはセレン上部構造は、表面の安定性を強化するのに有効な場合がある。
【0112】
いくつかの実施形態の場合には、イオン・ビーム援用デポジション(IBAD)により、バッファ層を形成することができる。この技術の場合、バッファ層材料は、例えば、電子ビーム蒸着、スパッタリング蒸着、またはパルス・レーザ蒸着により蒸着される。一方、イオン・ビーム(例えば、アルゴン・イオン・ビーム)は、蒸着したバッファ層材料が堆積される基板の平滑な非晶質表面に向けられる。
【0113】
例えば、バッファ層材料が、平面内および平面外の両方で、実質的な整合(例えば、約13度以下)を含む表面を有するように、基板の平滑な非晶質表面(例えば、約100オングストローム(10nm)以下の二乗平均平方根粗さを有する表面)上に、岩塩状の構造(例えば、MgOまたは窒化物を含む酸化物のような岩塩構造を有する材料)を有するバッファ層材料を蒸着させることにより、イオン・ビーム援用デポジションにより、バッファ層を形成することができる。
【0114】
バッファ層材料の堆積中に使用する条件は、例えば、約0℃から約750℃(例えば、約0℃から約400℃、ほぼ室温から約750℃、ほぼ室温から約400℃)の基板温度、約1.0オングストローム(0.1nm)/秒から約4.4オングストローム(0.44nm)/秒の堆積速度、約200eVから約1200eVのイオン・エネルギー、および/または約110マイクロアンペア/平方センチメートルから約120マイクロアンペア/平方センチメートルのイオン・フラックスを含むことができる。
【0115】
いくつかの実施形態の場合で、IBADを使用する場合には、基板は、異なる材料(例えば、Si)からできている平滑な非晶質表面を有する、多結晶、非アモルファス・ベース構造(例えば、ニッケル合金のような金属合金)を有する材料からできている。
【0116】
いくつかの実施形態の場合には、元のIBAD表面上にエピタキシャル成長により、複数のバッファ層を堆積することができる。各バッファ層は、平面内および平面外の両方で、ほぼ整合(例えば、約13度以下)させることができる。
【0117】
バッファ材料は、例えば、J.Am.Cer.Soc.81巻、3019ページ掲載のS.S.Shoup他;Mat.Res.Soc.Symp.Proc.495巻、263ページ(1988)掲載のD.Beach他;Superconductor Sci.Tech.12巻、319ページ(1999)掲載のM.Paranthaman他;Japanese J.Appl.Phys.38巻、L178ページ(1999)掲載のD.J.Lee他;およびI.E.E.E.Trans.on Appl.Supercon.9巻、1527ページ掲載のM.W.Rupich他が開示しているような有機金属堆積を含む溶液相技術を使用して作ることができる。いくつかの実施形態の場合には、テクスチャ基板上に酸化物の層のうちの1つのまたは任意の組合せを堆積するために、溶液コーティング・プロセスを使用することができる。しかし、これらのプロセスは、特に、テクスチャ金属基板上の初期(シード)層の堆積のために使用することができる。シード層の役割は、1)基板(例えば、酸化物目標からイットリアで安定化したジルコニウムのマグネトロン・スパッタ蒸着)に対する酸化雰囲気内で行う場合、次の酸化層の堆積中の酸化からの基板の保護を行うことであり、2)以後の酸化物層の成長のためのエピタキシャル・テンプレートを供給することである。これらの要件を満たすために、シード層は、金属基板の全表面上でエピタキシャル的に成長しなければならないし、以後のエピタキシャル酸化物層の堆積と干渉を起こす恐れがある汚染物質を何も含んでいてはならない。
【0118】
酸化物バッファ層の形成は、下に位置する基板層の湿潤を促進するように行うことができる。さらに、特定の実施形態の場合には、金属酸化物層の形成は、金属アルコキシル前駆体(例えば、「ゾルゲル」前駆体)を使用して行うことができる。この場合、炭素汚染のレベルは、金属アルコキシル前駆体を使用する他の周知のプロセスと比較すると大幅に低減する。
【0119】
酸化物層の下に位置する基板が、酸化物層を形成するために使用した金属塩溶液で十分にカバーされていない場合で、基板に対して酸化雰囲気内で行った場合には、酸化物層は、以後の酸化物層の堆積中酸化から基板を必要な程度に保護しないし、以後の層のエピタキシャル成長に対して完全なテンプレートとはならない。ゾルゲル膜を加熱し、それにより前駆体が基板の木目境界エリア内に流れることができるようにすることにより、完全にカバーすることができる。加熱は、例えば、約80℃から約320℃、例えば、約100℃から約300℃、または約100℃から約200℃のような比較的低い温度で行うことができる。このような温度は、例えば、約2分から約45分、または約15分から約45分のような約1分から約60分間維持することができる。加熱ステップは、また、もっと高い温度でもっと短い時間内で行うこともできる。例えば、膜は、300℃の温度で2分以内に処理することができる。
【0120】
加熱ステップは、ゾルゲル膜から余分な溶媒を乾燥した後で行うこともできるし、または同時に行うことができる。しかし、この加熱は膜の分解前に行わなければならない。
還元環境(例えば、4%H2−Ar)内での従来の酸化物膜形成を伴う炭素汚染は、膜の有機成分の除去が完全でないために起こると考えられている。酸化物層内または近くの炭素を含む汚染物質、CおよびCの存在が有害である場合がある。何故なら、これら汚染物質は、以後の酸化物層のエピタキシャル堆積を変える恐れがあるからである。さらに、酸化雰囲気を使用することができる、以後の酸化物層のための処理ステップ中に、膜が含んでいる捕集した炭素を含む汚染物質が酸化する恐れもある。炭素を含む汚染物質が酸化すると、COが形成されたり、膜が膨れたり、膜が剥離したり、または合成構造内に他の欠陥を生じる恐れがある。それ故、金属アルコキシド分解による炭素を含む汚染物質を、酸化物層が形成された後でだけ酸化することができるようにするのは望ましくない。好適には、分解が起こった場合に、炭素を含む汚染物質が酸化される(それ故、COとして膜構造から除去される)ことが好ましい。また、膜の表面内または近くに炭素を含む汚染物質が存在すると、以後の酸化物層のエピタキシャル成長を阻害する恐れがある。
【0121】
特定の実施形態の場合には、金属基板またはバッファ層をコーティングした後で、金属塩溶液を空気乾燥させ、次に、初期分解ステップ中に加熱することができる。別の方法としては、金属塩溶液を、金属基板に対して還元する雰囲気内で、初期分解ステップ中に直接加熱することができる。所望のエピタキシャルの方向に金属基板上で酸化物層が最初に核形成されると、例えば、水蒸気または酸素を加えることにより、処理ガスの酸素レベルが増大する。核形成ステップが起こるには、通常の条件の下で約5分から約30分かかる。
【0122】
いくつかの実施形態の場合には、低真空蒸着プロセス(例えば、少なくとも約1×10−3トルの圧力下で行うプロセス)により、エピタキシャル・バッファ層を形成することができる。このプロセスは、比較的速い速度および/またはバッファ層材料の焦点を合わせたガス・ビームにより、エピタキシャル層を形成するステップを含むことができる。
【0123】
ガス・ビーム内のバッファ層材料は、約1メートル/秒より速い(例えば、約10メートル/秒以上、または約100メートル/秒以上の)速度を有することができる。ビーム内の少なくとも約50%のバッファ層材料が、目標表面上に入射することができる(例えば、ビーム内のバッファ層材料の少なくとも約75%が、目標表面上に入射することができ、またはビーム内のバッファ層材料の少なくとも約90%が、目標表面上に入射することができる)。
【0124】
この方法は、低真空環境内に目標表面(例えば、基板表面またはバッファ層表面)を置くステップ、および目標表面を、そうでない同じ条件の下で、高真空環境(例えば、約1×10−4トル以下のような約1×10−3トル以下)内で、目標表面上に所望の材料のエピタキシャル層を形成するためのしきい値温度より高い温度に、目標表面を加熱するステップを含むことができる。バッファ層材料およびそうしたい場合には不活性キャリア・ガスを含んでいるガス・ビームは、少なくとも約1メートル/秒の速度で目標表面に向けられる。調整ガスが低真空環境内で供給される。ガス・ビームは調整ガスを含むことができるし、または調整ガスを他の方法で低真空環境内に導入する(例えば、環境内への漏洩)ことができる。調整ガスは、物質を除去するために目標表面のところに位置する物質(例えば、汚染物質)と反応することができ、それによりエピタキシャル・バッファ層の核形成を促進することができる。
【0125】
エピタキシャル・バッファ層は、高真空(例えば、最高約1×10−4トル)での物理蒸着により、エピタキシャル層を成長させるのに使用する温度以下の表面温度で、低真空(例えば、少なくとも約1×10−3トル、少なくとも約0.1トル(0.013kPa)、または少なくとも約1トル(0.13kPa))により目標表面上で成長させることができる。目標表面の温度は、例えば、約25℃から約800℃(例えば、約500℃から約800℃、または約500℃から約650℃)であってもよい。
【0126】
エピタキシャル層は、例えば、少なくとも約50オングストローム(5nm)/秒のような比較的高速で成長することができる。
他の実施形態の場合には、エピタキシャル・バッファ層は、高い処理能力で、金属または金属酸化物目標からスパッタリングにより堆積することができる。基板の加熱は、エピタキシャル形状を得るために、抵抗加熱、またはバイアスおよび電位により行うことができる。金属または金属酸化物目標から酸化物エピタキシャル膜を形成するためには、堆積ドウエルを使用することができる。
【0127】
通常、基板上に位置する酸化物層は、基板表面をイオン・ビーム・エッチングとも呼ばれる還元環境内の高エネルギー・イオンに露出することにより除去することができる。イオン・ビーム・エッチングは、基板から残りの酸化物または不純物を除去することにより、また本質的には酸化物を含まない、好適には2軸方向テクスチャ基板表面を形成することにより、膜を堆積する前に、基板を清掃するために使用することができる。これにより、基板と以後の堆積材料との間の接触を改善することができる。高エネルギー・イオンは、例えば、Ar+のようなイオンを基板表面の方向に加速する種々のイオン・ガンにより生成することができる。好適には、150eV以上のビーム電圧を有するグリッド付きイオン供給源を使用することが好ましい。別の方法としては、基板表面の近くの領域内にプラズマを確立することができる。この領域内においては、イオンは化学的に基板表面と相互作用を行い、ほぼ酸化物を含まない金属表面を生成するために金属酸化物を含む材料を表面から除去する。
【0128】
基板から酸化物層を除去するもう1つの方法は、基板に電気的バイアスをかける方法である。基板テープまたはワイヤがアノード電位に対して負である場合には、堆積の前に(目標がシャッタされている場合)または全膜堆積中、ガスからのイオンの一定のボンバードを行う。このイオン・ボンバードは、ワイヤまたはテープの表面から、そうでない場合には膜内に入り込む恐れがある吸収ガスを除去することができ、また、基板を高い堆積温度に加熱することができる。エピタキシャル膜の密度または平滑性を改善することにより、このようなイオン・ボンバードをさらに有利にすることができる。
【0129】
適当にテクスチャを有する、ほとんど酸化物を含んでいない基板表面が形成されると、バッファ層の堆積をスタートすることができる。それぞれが1つの金属層または酸化物層を含んでいる、1つまたは複数のバッファ層を使用することができる。いくつかの実施形態の場合には、基板はこれら実施形態の堆積方法のステップを実行することができる装置を通過することができる。例えば、基板がワイヤまたはテープの形をしている場合には、基板は、供給リールから巻き取りリールに直線的に移動することができ、基板がリール間を移動している間に基板上でステップを実行することができる。
【0130】
いくつかの実施形態の場合には、基板材料は、基板材料の融点の約90%以下であるが、所定の堆積速度で真空環境で、基板材料上の所望の材料のエピタキシャル層を形成するためのしきい値温度よりは高い高温に加熱される。適当なバッファ層結晶構造を形成するためには、またバッファ層を平滑にするためには、通常、高い基板温度のほうが好ましい。金属上での酸化物層の成長の通常の下限温度は、約200℃から800℃、好適には500℃から800℃、より好適には650℃から800℃である。基板の短い長さ(2cmから10cm)の場合には、放射加熱、対流加熱、伝導加熱のような種々の周知の方法が適しているが、もっと長い長さ(1mから100m)の場合には、これらの方法はあまり適していない場合がある。また製造プロセス中に所望の高い処理能力速度を達成するために、基板ワイヤまたはテープは、プロセス中堆積ステーション間を移動または通過しなければならない。特定の実施形態の場合には、基板は抵抗加熱により加熱される。すなわち、金属基板を通して電流を流すことにより加熱される。この加熱方法は、長い製造プロセスに容易にスケーリングすることができる。このアプローチは、これらの領域間を瞬間的に迅速に移動することができ、よく機能する。温度制御は、加熱中の基板に供給される電力を制御するための、光学的高温計および閉ループ・フィードバック・システムにより行うことができる。電流は、基板の少なくとも2つの異なるセグメントで基板に接触する電極により基板に供給することができる。例えば、テープまたはワイヤの形をしている基板がリール間を通過すると、リール自身が電極としての働きをする。別の方法としては、リール間で基板を移送するのにガイドを使用する場合には、ガイドが電極としての働きをすることができる。また、電極を任意のガイドまたはリールから完全に独立させることもできる。いくつかの実施形態の場合には、電流は電流ホイール間でテープに供給される。
【0131】
堆積を適当な温度のテープ上で行うために、テープ上に堆積される金属または酸化物材料は、電流ホイール間の領域内に堆積することが望ましい。電流ホイールは効率的なヒートシンクとなりうるし、それ故、テープをホイールに最も近い領域内で冷却することができるので、材料をホイールに最も近い領域内に堆積しないことが望ましい。スパッタリングの場合には、テープ上に堆積した帯電した材料は、スパッタ・フラックス経路に最も近い他の帯電した表面、または材料により影響を受けないことが望ましい。そのため、好適には、スパッタ・チャンバは、それらが、適当な堆積温度で、テープの領域内の金属または金属酸化物の所望の直線的フラックス経路および堆積を変えないように、堆積ゾーンから遠い位置において、チャンバ壁部および他の堆積素子を含む、スパッタ・フラックスに影響を与え、偏向させる恐れがある構成部材および表面を置くように構成することが好ましい。
【0132】
いくつかの実施形態の場合には、バッファ層(および/または超電導体材料の層)は、(例えば、熱調節および/または化学的調節のように)調整することができるので、以後の層は調整した表面上に形成される。材料層の調整した表面は、2軸方向にテクスチャ(例えば、(113)[211]または(100)[011])を持たせることもできるし、またはキューブ・テクスチャ(例えば、(100)[001])を持たせることもできるし、約20度より小さい(例えば、約15度以下、約10度以下、または約5度から約10度)最大値の半分のところに全幅を有するX線回折極点図内にピークを有することができ、高解像度の走査電子顕微鏡検査または原子間力顕微鏡検査で決まるように、調整の前より平滑にすることもでき、不純物の比較的高い密度を有することができ、比較的低い密度を有することができ、他の材料の層(例えば、超電導体層またはバッファ層)に強化された接着力を有することもできるし、および/またはX線回折で測定するように比較的小さなロッキング曲線幅を有することもできる。
【0133】
本明細書で使用する場合、「化学的調節」という用語は、結果として得られる表面が、上記特性のうちの1つまたは複数を有するように、バッファ層または超電導体材料層のような材料層の表面内に変化を起こすような1つまたは複数の化学種(例えば、気相化学種および/または溶液相化学種)を使用するプロセスを意味する。
【0134】
本明細書で使用する場合、「熱調節」という用語は、結果として得られる表面が、上記特性のうちの1つまたは複数を有するように、バッファ層または超電導体材料層のような材料層の表面内に変化を起こすような化学的調節を含むまたは含まない高温を使用するプロセスを意味する。熱調節は、化学的調節を使用して、または使用しないで行うことができる。好適には、熱調整は、制御環境(例えば、制御ガス圧力、制御ガス環境および/または制御温度)内で行うことが好ましい。
【0135】
熱調節は、下に位置する層の堆積温度または結晶温度より少なくとも約5℃高い温度(例えば、下に位置する層の堆積温度または結晶温度より約15℃から約500℃以上、下に位置する層の堆積温度または結晶温度より約75℃から約300℃以上、または下に位置する層の堆積温度または結晶温度より約150℃から約300℃以上)にバッファ層の表面を加熱するステップを含むことができる。このような温度の例としては、約500℃から約1200℃(例えば、約800℃から約1050℃)がある。熱調節は、大気圧以上、大気圧以下、または大気圧のような種々の圧力条件下で行うことができる。また、熱調節は、化学的調節環境(例えば、酸化ガス環境、還元ガス環境)または不活性ガス環境のような、種々のガス環境を使用して行うことができる。
【0136】
本明細書で使用する場合、「堆積温度」という用語は、調整中の層に堆積が行われた温度を意味する。
本明細書で使用する場合、「結晶温度」という用語は、材料の層(例えば、下に位置する層)が結晶になる温度を意味する。
【0137】
化学的調節は、真空技術(例えば、反応イオン・エッチング、プラズマ・エッチングおよび/またはBF3および/またはCF4のようなフッ素化合物によるエッチング)を含むことができる。例えば、1986年、カルフォルニア州サンセットパーク所在のLattice Press社発行の、S.WolfおよびR.N.Tanber編集の、「VLSI時代のシリコン処理」(Silicon Processing for the VLSI Era)1巻、539〜574ページが化学的調節を開示している。
【0138】
別の方法としては、または追加的に、化学的調節は、1949年マグローヒル社出版のジョージ L.ケールの「冶金学および冶金エンジニアリング・シリーズ」第3版に開示されているような溶液相技術を含むことができる。この技術は、下に位置する層の表面を、比較的穏和な酸溶液(例えば、約10%以下の酸、約2%以下の酸または約1%以下の酸を含む酸溶液)と接触させるステップを含むことができる。穏和な酸溶液の例としては、過塩素酸、硝酸、フッ化水素酸、塩化水素酸、酢酸および緩衝剤で処理した酸溶液等がある。ある実施形態の場合には、穏和な酸溶液は、約1%の水性硝酸である。いくつかの実施形態の場合には、臭化物を含むおよび/または臭素を含む組成(例えば、液体臭素溶液)を、バッファ層または超電導体層の表面を調整するために使用することができる。
【0139】
バッファ層用に使用することができる材料としては、例えば、CeO、Y、TbO、GaO、YSZ、LaAlO、SrTiO、Gd、LaNiO、LaCuO、SrTuO、NdGaO、NdAlO、MgO、AlN、NbN、TiN、VNおよびZrN等がある。
【0140】
通常、層5200の厚さは、必要に応じて変更することができる。いくつかの実施形態の場合には、層200の厚さは、約0.01ミクロンから約5ミクロン(例えば、約0.02ミクロンから約1ミクロン、約0.02ミクロンから約0.75ミクロン)である。
【0141】
いくつかの実施形態の場合には、複数のバッファ層が使用される。バッファ層材料および/またはバッファ層の厚さの種々の組合せを使用することができる。いくつかの実施形態の場合には、YまたはCeOの層(例えば、約20ナノメートルの厚さから約50ナノメートルの厚さ)が、表面110上に堆積される(例えば、電子ビーム蒸着により)。YSZの層(例えば、約0.1ミクロンの厚さから約0.5ミクロンの厚さ)が、スパッタリング(例えば、マグネトロン・スパッタリング)によりYまたはCeO表面上に堆積される。CeOの層(例えば、約20ナノメートルの厚さ)が、YSZ表面上に堆積される(例えば、マグネトロン・スパッタリングにより)。これら層のうちの1つまたは複数の表面は、化学的に調整および/または熱的に調整することができる。
【0142】
複数の層の物品用のいくつかのアーキテクチャについて説明してきたが、本発明はこれらに限定されない。他のアーキテクチャを使用することもできる。例えば、図8は、バッファ層5200と超電導体層5300との間にキャップ層5400を含む、物品6000のある実施形態の断面図である。キャップ層5400は、層5300(例えば、YBCOのエピタキシャル堆積)の形成(例えば、エピタキシャル堆積)のためのテンプレートを供給する材料(例えば、酸化セラミック)から形成することができる。例示としてのキャップ材料としては、CeO、YおよびSrTiO等がある。
【0143】
バッファ層および超電導体材料層の種々の組合せを使用することができる。例えば、複数のバッファ層を、基板と超電導体層との間に配置することができる。もう1つの例を挙げて説明すると、超電導体材料の複数の層を使用することができる。追加の例としては、バッファ層と超電導体層(例えば、交互のバッファ層と超電導体層)の組合せを使用することができる。
【0144】
他の配置も使用することができる。
図9は、基板5100aおよび5100b、バッファ層5200aおよび5200b、超電導体層5300aおよび5300b、および結合層5500を含む、超電導体物品7000の実施形態の断面図である。
【0145】
このような複数の層のアーキテクチャは、電流の共有を改善し、交流に対するヒステリシス損失を低減し、電気的および熱的安定性を改善し、機械的特性を改善することができる。十分なアンペア容量、寸法の安定性、機械的強度を持たせるために、相互にスタックしたおよび/または積層した複数のテープを有する有用な導体を作ることができる。このような実施形態は、また、コーティングしたテープのセグメントをスプライスし、またコーティングしたテープをスタックしたものまたは導体素子を終端処理するための手段を提供する。
【0146】
さらに、このアーキテクチャは、交流用の用途用に有意な利点をもたらすことができると期待される。交流損失は導体内の実効臨界電流密度に反比例する。もっと詳細に説明すると、電流を運ぶ断面の面積に反比例する。多重フィラメント導体の場合には、この面積は、「束」の周囲の被覆材料を除く、超電導フィラメントのこの束の面積である。「対面」アーキテクチャの場合には、「束」の臨界電流密度は、高温超電導体膜および結合層構造の厚さだけを含む。結合層5500は、好適には、少なくとも1つの貴金属の層を含むことが好ましい、1つまたは複数の層から形成することができる。例示としての貴金属としては、例えば、銀、金、パラジウム、およびプラチナ等がある。貴金属のHTS層と結合層5500との間の界面抵抗は低い。さらに、結合層5500は、通常の金属(例えば、銅またはアルミニウム、または通常の金属の合金)の第2の層を含むことができる。いくつかの実施形態の場合には、結合層5500は、1つまたは複数の貴金属を含む合金からできている。直流の用途の場合、必要なアンペア容量とし、所与の用途用の幾何学的形状にするために、追加の対面ワイヤを束ねたり、スタックしたりする。
【0147】
さらに、テープの表面上の高温超電導体膜を、局部的断絶、すなわち、(電流の流れる方向内の)テープの全長沿った方向だけの、膜内の非超電導領域またはストリップを形成するように処理することができる。次に、高温超電導体膜上に堆積されている結合層5500は、非超電導ゾーンを延性を有する通常の金属領域に結合する働きをする。走行する結合ブリック・パターンに似ている狭いストリップまたはフィラメントの縁部位置調整のずれにより、電流はいくつかの狭い超電導フィラメントに(結合層を横切って隣接するフィラメントに)移動することができ、さらに冗長性を増大し、安定性を改善する。
【0148】
すべての実施形態の場合、高温超電導体膜を密封し、電流が膜内に移動し、必要な場合には、膜から基板内に移動するように、導体の縁部に沿って通常の金属層を内蔵させることができる。
【0149】
いくつかの実施形態の場合には、コーティングした導体は、交流用途内で発生する損失を最小限度に低減するように作ることができる。導体は、それぞれが少なくとも2つの導電層を横切って延びていて、さらにこれらの層の間を延びる経路セグメントを含む複数の導電経路を含むように作ることができる。
【0150】
各超電導層は、一方の縁部から他方の縁部に層の幅を横切って延びる複数の導電経路セグメントを有していて、経路セグメントは、また、超電導層の全長に沿う方向に構成部材を有する。超電導層表面内の経路セグメントは、電流がある超電導層から他の超電導層に流れることができるようにする層間接続で電気的に連絡している。経路セグメントからできている経路は、一般に、2つの層からなる実施形態内の2つの超電導層間を電流が交互に流れ、層間接続を通して層を横切るように周期的に設計されている。
【0151】
超電導層は、その幅を横切り、その全長に沿って延びる複数の経路セグメントを含むように作ることができる。例えば、超電導層は、複数の各経路セグメント間に高い比抵抗を有するか、または完全絶縁バリアができるようにパターン形成することができる。例えば、対角線経路セグメントの一定周期のアレイを、テープの全長に沿って層の上に設置することができる。このようなアレイを形成するための超電導層のパターン形成は、例えば、レーザけがき、機械的切断、注入、マスクによる局部的化学処理、および他の周知の方法を含む当業者であれば周知の種々の手段により行うことができる。さらに、超電導層は、その表面内の導電性経路セグメントが、その縁部のところまたはその縁部の近くの層間を通る導電性層間接続と電気的に連絡できるようにすることができる。層間接続は、通常、通常(超電導でなく)導電性であるが、特種な構成の場合には超電導性であってもよい。層間接続により、超電導層間に位置する非導電性または高抵抗の材料により分離されている超電導層間が電気的に連絡する。このような非導電性または高抵抗の材料は、1つの超電導層上に堆積することができる。層間接続を行いその後でもう1つの超電導層を堆積することができるように、絶縁材料の縁部のところに通路を設けることができる。超電導層をテープの軸に平行なフィラメントにパターン形成し、テープを円筒形の周囲に螺旋状に巻くことにより、コーティングした導体で移転した構成とすることができる。
【0152】
いくつかの超電導体材料およびその製造方法について説明してきたが、他の超電導体材料(例えば、YBCO)も使用することができる。このような超電導体材料としては、例えば、GdBCOおよびErBCOのようなYBCO以外の希土類−バリウム銅酸化物を含むYBCO以外の希土類−アルカリ土類金属酸化物等がある。
【0153】
さらに、リアクタのいくつかの実施形態について説明してきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
一例を挙げて説明すると、1つまたは複数の出口は、1つまたは複数のヒータと熱的に連絡することができる。これにより、例えば、超電導体前駆体の表面と接触する前に、1つまたは複数の反応ガスを予熱することができる。これら実施形態の場合には、リアクタの1つまたは複数の壁部も、1つまたは複数のヒータと熱的に接触することができるし、または壁部はヒータと熱的に接触していなくてもよい。いくつかの実施形態の場合には、超電導体前駆体は、反応ガスと接触する前に実質的に予熱しなくてもよい。
【0154】
もう1つの例を挙げると、出口内のオリフィスを、異なるノズルが噴出したガスが、(例えば、反応ガスの混合を促進するために)相互に作用することができるように配置することができる。いくつかの実施形態の場合には、超電導体前駆体の表面に接触する前に、ガスを相互に作用させることができる。これにより、例えば、反応ガスの混合および/または反応ガスの流れの均一性を改善することができる。
【0155】
もう1つの例を挙げると、いくつかの出口は、それぞれ反応ガス供給源の1つだけと流体で連絡することができ、一方、他の出口は、1つまたは複数の異なる反応ガス供給源と流体で連絡することができる。例えば、いくつか出口は、ガス状の水の1つまたは複数の供給源と流体で連絡することができ、一方、他の出口は、ガス状の酸素の1つまたは複数の供給源と流体で連絡することができる。このような配置の組合せも使用することができる。
【0156】
もう1つの例を挙げると、1つまたは複数の出口を、比較的不活性であってもよいガス(例えば、実質的な化学的役割を行わないガス)を噴出するために使用することができる。このようなガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、ネオン、クリプトン、キセノン等がある。これらガスは、例えば、出口から噴射する前に反応ガスと混合することができる。
【0157】
もう1つの例を挙げると、リアクタは、物品(例えば、テープ)を、そこを通して移送できるようにすることもできる。例えば、コンベア・ベルトを使用することができる。別の方法としてはまたは追加的に、リール間装置を使用することもできる。
【0158】
さらにもう1つの例を挙げると、リアクタは、リアクタを通過する前にまたは通過中に、物品(例えば、テープ)を加熱するようにすることができる。例えば、抵抗加熱を使用することができる。
【0159】
特定の前駆体から超電導体材料を作るいくつかの方法により、リアクタの使用方法について説明してきたが、他の前駆体も使用することができる。通常、リアクタは、超電導体材料(例えば、YBCOのような希土類−アルカリ土類−銅酸化物)を形成するために処理することができる任意の前駆体と一緒に使用することができる。このような前駆体は、例えば、化学蒸着、物理蒸着、および/またはスプレー高温加熱により作ることができる。適当な超電導体前駆体を供給するために、当業者であれば周知の他の技術も使用することができる。これらの前駆体は、超電導体材料の形成プロセス中に超電導体中間物を形成するために使用することができる。このような中間物は、例えば、ハロゲン化中間物および/または炭酸塩中間物であってもよい。
【0160】
さらに、リアクタを種々の形に作ることができる。いくつかの実施形態の場合には、リアクタは、単一のユニットであってもよい。いくつかの実施形態の場合には、リアクタは、個々のチャンバから形成することができる。
【0161】
下記の例は例示としてのものであって、本発明を制限するものではない。
【実施例1】
【0162】
エピタキシャルYBCO膜を下記のように製造した。
2軸方向にテクスチャを有する95原子%のニッケル/5原子%のタングステン合金基板を冷間圧延および焼鈍によりテープの形(厚さ75ミクロン、幅1センチメートル)に作った。基板の表面上に2ミクロンの厚さのニッケル層を形成し、(C2X2)硫黄上部構造をニッケル層上に形成した。
【0163】
構造基板/Y/YSZ/CeOでスタックを形成するために、エピタキシャル酸化物バッファ層を順次堆積した。Yシード層(50ナノメートルの厚さ)を電子ビーム蒸着により堆積した。YSZバリア層(300ナノメートルの厚さ)およびCeOキャップ層(30ナノメートルの厚さ)両方を、RFスパッタリングにより堆積した。
【0164】
プロピオン酸銅、トリフルオロ酢酸バリウム、トリフルオロ酢酸イットリウム系溶液を、CeOキャップ層上にウエブ・コーティングした。湿った空気の中で60℃で膜を乾燥し、結果として得られた材料を最高400℃の温度で湿った酸素雰囲気内で、以後のYBCO形成のために、化学量論的量の銅およびイットリウムを含むフッ化バリウム系前駆体に分解した。
【0165】
1.5メートルのチューブ炉内の湿度の高い低酸素分圧環境内でエピタキシャル超電導YBCOを形成するために、前駆体膜を連続的に変換した。炉は3つのゾーンを有していた。各ゾーン内での滞留時間は60分であった。スロットにより周囲環境から第1および第3のゾーンを分離した。第1および第2のゾーン内のガスを混合することができたが、これらのゾーン内のガスの混合を最小限度に低減するために、スロットにより第2のおよび第3のゾーンを分離した。第1および第2のゾーンは、1センチメートルの間隔を有し、横方向の流れを形成するためにテープ表面から約1センチメートル離して垂直に置かれた狭いスロットからなる入射ノズルをそれぞれ備えていた。
【0166】
入射ノズルは、N(残り)、O(0.015容量%)、水(2.6容量%)のガス混合物を供給するために使用した。ガスの流れは、1メートル/秒の速度でスロットから外へ出た。圧力を名目的に大気圧にまたはそれ以上に維持するために、真空により第1および第2のゾーンからガスを除去した。第3のゾーンのガスは、水がNで置換された乾いたガスであった。
【0167】
クォーツ・チューブの外側に設置した抵抗加熱素子により、基板が第1の入射ゾーンを通過中に、基板の温度を400℃から790℃に一気に上昇した。クォーツ・チューブの外側に設置した抵抗加熱素子により、基板の温度を第2のゾーン内で790℃に保持した。基板の温度を第3のゾーン内で300℃に一気に冷却した。
【0168】
SEM断面分析により測定した、結果として得られたYBCO膜の厚さは1.0ミクロンであった。RBSデータは、膜が完全に濃い化学量論的0.9μmの膜の質量を含んでいることを示した。
【0169】
YBCO層の表面上に3ミクロンの厚さの銀のキャップ層を配置した。YBCOを酸素化するために、大気圧酸素処理を使用した(30分間500℃で熱し、その後で1℃/分の速度で300℃まで温度を一気に下げ、その後で室温に一気に下げて)。
【実施例2】
【0170】
エピタキシャルYBCO膜を下記のように作った。
バッファした基板を下記のように作った。厚さ75ミクロン、幅1センチメートルの2軸方向にテクスチャを有する95原子%のニッケル/5原子%のタングステン合金基板を冷間圧延および焼鈍によりテープの形に作った。(連続的なDCスパッタリングにより)基板の表面上に2ミクロンの厚さのNi層を形成し、(C2X2)硫黄上部構造をニッケル層上に形成した。厚さ50ナノメートルのY層を金属イットリウムから反応性電子ビーム蒸着によりニッケル層上に堆積した。厚さ280ナノメートルのYSZ層を、酸化物目標からRFスパッタリングにより、Y上に堆積した。厚さ30ナノメートルのCeO層をRFスパッタリングにより、酸化物目標からYSZ層上に堆積した。
【0171】
Ba(OCCF、Y(OCCF、およびCu(Oを、0.4モルYの溶液が形成されるように、また溶液のY:Ba:Cuの比率が約1:2:3になるように、メタノール内に溶解した。溶液を、4.8グラムのYBCO/平方メートルと等価のローディングにより、バッファした基板上にスロット・ダイ・コーティングした。湿った空気の中で60℃で膜を乾燥し、結果として得られた材料を、以後のYBCO形成のために、酸化物の形で化学量論的量の銅およびイットリウムを含むフッ化バリウム系前駆体膜を形成するために、400℃の温度で酸素および17トルの水蒸気を含む雰囲気内で分解した。
【0172】
膜をリアクタを通過させることにより、フッ化バリウム前駆体膜をYBCOに変換した。リアクタの構成はほぼ図1に示すようなもので、下記のパラメータおよび構成部材を含んでいた。炉は、その全長に沿って等間隔の9つのヒータを有していた。ヒータの温度および位置を下記の表に示す。
【0173】
【表1】

炉(L&L Special Furnace社製)は、長さ300センチメートルであり、炉の直径は最大約15センチメートルの直径を有するレトルトを収容することができる直径のものであった。レトルトはクォーツ製であり、外径は135mmであり、内径は130ミリメートルであり、長さは3.5メートルであった。ガス抜き孔の外径は67ミリメートルであり、内径は63ミリメートルであり、長さは2.6メートルであった。エンドキャップはアルミニウム製であった。右のエンドキャップは真空ポンプに接続するためのQF40取付具を有していた。ガス抜き孔は、その全長を延びる2列のドリルで開けた孔部を有していた。ガス抜き孔の長さに垂直な方向に見た場合、孔部は相互に直角であった。下記の表は孔部の大きさと配置を示す。第1の3.8ミリメートルの孔部はガス抜き孔の密封端部から5ミリメートル離れていて、孔部の中心距離は10ミリメートルであった。
【0174】
【表2】

エンドキャップは、ウエブの横移動のための貫通孔、ガス供給源およびガス抜き孔を有していた。ノズル(図1のノズル65に対応する)は、インコネル601スケジュール40パイプからできていて、33.4ミリメートルの外径、26.6ミリメートルの内径を有し、長さは約1.6メートルであり、約10ミリメートル間隔で159個のスロットを有していて、各スロットの長さは、パイプの内径上で測定した場合13ミリメートルであり、幅は0.4ミリメートルであった。ガス・ライン(図1のガス・ライン67に対応する)は、インコネル601チューブからできていて、直径は0.5インチであり、長さは2メートルであった。ノズル(図1のノズル75に対応する)は、長さが45センチメートルであり、5ミリメートル間隔の88個のスロットを有していた点を除けば、他のノズルと同じ直径および構成部材を有していた。ノズル内のスロットは、テープの方向に面を下にして配置されていた。
【0175】
テープ状の基板は、3つのゾーン(図1参照)を有するリアクタを連続的に通過した。各ノズルは、O(0.15トル)、および水(1.20トル)のガス混合物を供給した。リアクタの最初の2つのゾーンにおいて、膜表面に隣接するガス混合物は、ポンプに接続していたガス抜き孔によりリアクタから除去された。第3のゾーンは、ほぼ同じガス混合物を含んでいたが、入射はなかった。各ノズル内のスロットは、横方向の流れを形成するために、膜表面から約1センチメートル離れていた。10標準立方センチメートル/分の各ノズルから出口流れを形成するためにガスの流れを使用した。膜の温度は、第1のゾーン内において400℃から780℃に一気に上昇し、第2のゾーン内において780℃に一定に維持した。第3のゾーンの一部においては、温度は780℃に一定に維持され、第3のゾーンの残りの部分において300℃に一気に下げた。ガスはゾーン全体内で混合することができた。テープは約4センチメートル/分の速度で炉から引き出した。
【実施例3】
【0176】
エピタキシャルYBCO膜を下記のように作った。
2軸方向にテクスチャを有する95原子%のニッケル/5原子%のタングステン合金基板を例Iに記載した方法により作った。Y/YSZ/CeOバッファ・コーティングを例Iに記載した方法により基板上に形成した。プロピオン酸銅、トリフルオロ酢酸バリウム、トリフルオロ酢酸イットリウム系溶液を、例Iに記載した方法でバッファした基板のCeOキャップ層上にウエブ・コーティングした。結果として得られたテープを下記のように3つのゾーンを有する炉内で処理した。
【0177】
第1のゾーン内には40個のノズルがあり、第2のゾーン内には160個のノズルがあった。各ノズルは酸素および水のガス混合物を供給した。全システムに対する酸素の分圧は0.15トルであり、各ノズルからの酸素の流れは約0.5cc/分であった。次に、水蒸気等価の0.0225トル/ノズルが第1のゾーン内に導入され、水蒸気等価の0.0078トル/ノズルが第2のゾーン内に導入された。リアクタの最初の2つのゾーン内においては、膜表面に隣接するガス混合物は、ポンプに接続していたガス抜き孔によりリアクタから除去された。第3のゾーンは、ほぼ同じガス混合物を含んでいたが、入射はなかった。各ノズル内のスロットは、横方向の流れを形成するために膜表面から約1センチメートル離れていた。膜の温度は、第1のゾーン内で400℃から780℃に一気に上昇し、第2のゾーン内において780℃に一定に維持した。第3のゾーンの一部内においては、温度は780℃に一定に維持され、次に、第3のゾーンの残りの部分内において300℃に一気に下げた。ガスはゾーン全体内で混合することができた。テープは約4センチメートル/分の速度で炉から引き出した。
【0178】
次に、テープは、3μmの厚さのAgの層でコーティングされ、24分間550℃で純粋な酸素内で焼鈍し、冷却された。次に、焼鈍したテープは機械的におよび電気的に安定させるために、75μmの厚さの銅で積層された。
【0179】
テープをDC電源によりセルフ・フィールド内で77Kで測定した。臨界電流密度は電圧タップ間で1μV/cmである。各電圧タップ間の距離は50cmである。図10は、10mの長さのテープ沿いの臨界電流を示す。10mの長さ上の平均Icは272Aであり、各セクションからの標準偏差は5.5Aである。
【0180】
他の実施形態は特許請求の範囲に記載してある。
【図面の簡単な説明】
【0181】
【図1】リアクタのある実施形態の断面図。
【図2】(A)から(D)は基板の表面に対するガス・ビームの角度。
【図3】超電導体物品のある実施形態の平面図。
【図4】リアクタのある実施形態の断面図。
【図5】リアクタのある実施形態の部分平面図。
【図6】使用中のリアクタのある実施形態の断面図。
【図7】超電導体物品のある実施形態の断面図。
【図8】超電導体物品のある実施形態の断面図。
【図9】超電導体物品のある実施形態の断面図。
【図10】超電導体テープの全長に沿った臨界電流のグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導体を製造するための方法であって、
中間超電導体材料の膜の表面上に、反応ガス混合物を入射するステップを含み、前記反応ガス混合物が、前記膜の表面に対して少なくとも約5度の角度で前記膜の表面上に入射し、前記膜が、最高約700トル(91kPa)の全圧力を有するリアクタの一部内に位置する方法。
【請求項2】
前記膜の表面に隣接する領域から前記反応ガスの少なくとも一部を除去するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応ガス混合物が、水および酸素からなるグループから選択したガスを含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記膜の表面に隣接する領域から生成ガスの少なくとも一部を除去するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記生成ガスがHFを含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記反応ガスが前記膜の表面上に入射している際に、前記膜を移動するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記膜が、2軸方向に配向している基板の表面上に配置され、
前記基板の幅が少なくとも約1センチメートルであり、
前記超電導体の幅が少なくとも約1センチメートルであり、
前記超電導体が2軸方向に配向し、
前記超電導体がその幅を横切ってほぼ一定のc軸方向に配向し、前記超電導体の前記c軸配向が前記基板の表面にほぼ垂直であり、
前記超電導体がその幅を横切ってほぼ一定の化学組成を有し、
前記超電導体がその幅を横切ってほぼ一定の相含量を有する請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記基板の長さが少なくとも約1メートルである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記基板がテープの形をしている請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記基板が金属または合金を含む請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記超電導体が、前記膜の表面にほぼ垂直な方向に少なくとも1オングストローム(0.1nm)/秒の平均c軸成長速度を有する請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記膜が入射デバイスおよび真空デバイスを有するリアクタ内に位置する請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記膜が少なくとも2つのゾーンを有するリアクタ内に位置し、前記ゾーンのうちの少なくとも一方が入射デバイスを有する請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記リアクタが少なくとも3つのゾーンを有する請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記全圧力が最高約200トル(26kPa)である請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記超電導体が希土類金属酸化物超電導体を含む請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記超電導体がYBCOを含む請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記膜を約20℃から650℃の温度に加熱するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項19】
中間超電導体材料が前記超電導体のフッ素を含む前駆体を含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記反応ガス混合物が水および酸素を含む請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記膜を約550℃から約850℃の温度に加熱するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記反応ガス混合物が水および酸素を含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
超電導体を製造するための方法であって、
中間超電導体材料の膜の表面上に反応ガス混合物を入射するステップを含み、
前記膜が最高約700トル(91kPa)の全圧力を有するリアクタの一部内に位置していて、
前記膜が2軸方向に配向している基板の表面上に配置され、
前記基板の幅が少なくとも約1センチメートルであり、
前記超電導体の幅が少なくとも約1センチメートルであり、
前記超電導体が2軸方向に配向し、
前記超電導体がその幅を横切るほぼ一定のc軸方向に配向し、前記超電導体の前記c軸配向が前記基板の前記面にほぼ垂直であり、
前記超電導体がその幅を横切ってほぼ一定の化学組成を有し、
前記超電導体がその幅を横切ってほぼ一定の相含量を有する方法。
【請求項24】
前記膜の表面に隣接する領域から前記反応ガスの少なくとも一部を除去するステップをさらに含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記反応ガス混合物が、水および酸素からなるグループから選択したガスを含む請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記膜の表面に隣接する領域から生成ガスの少なくとも一部を除去するステップをさらに含む請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記反応ガスがHFを含む請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記基板の長さが少なくとも約1メートルである請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記基板がテープの形態を有している請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記基板が金属または合金を含む請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記反応ガスが前記膜の表面上に入射している際に、前記膜を移動するステップをさらに含む請求項23に記載の方法。
【請求項32】
前記超電導体が、前記膜の表面にほぼ垂直な方向に、少なくとも1オングストローム(0.1nm)/秒の平均c軸成長速度を有する請求項23に記載の方法。
【請求項33】
前記リアクタが入射デバイスおよび真空デバイスを備える請求項23に記載の方法。
【請求項34】
前記リアクタが少なくとも2つのゾーンを有し、前記ゾーンのうちの少なくとも一方が入射デバイスを有する請求項23に記載の方法。
【請求項35】
前記リアクタが少なくとも3つのゾーンを有する請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記超電導体の幅が少なくとも約3センチメートルである請求項23に記載の方法。
【請求項37】
前記超電導体の幅が最高約50センチメートルである請求項23に記載の方法。
【請求項38】
前記全圧力が最高約200トル(26kPa)である請求項23に記載の方法。
【請求項39】
前記超電導体が希土類金属酸化物超電導体を含む請求項23に記載の方法。
【請求項40】
前記超電導体がYBCOを含む請求項23に記載の方法。
【請求項41】
前記膜を約20℃から650℃の温度に加熱するステップをさらに含む請求項23に記載の方法。
【請求項42】
中間超電導体材料が、前記超電導体のフッ素を含む前駆体を含む請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記反応ガス混合物が水および酸素を含む請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記膜を約550℃から約850℃の温度に加熱するステップをさらに含む請求項23に記載の方法。
【請求項45】
前記反応ガス混合物が水および酸素を含む請求項44に記載の方法。
【請求項46】
超電導体を製造するための方法であって、
中間超電導体材料の膜の表面上に反応ガス混合物を入射するステップと、
前記反応ガスが前記膜の表面上に入射している間に、前記膜を移動するステップとを含み、
前記膜が最高約700トル(91kPa)の全圧力を有するリアクタの一部内に位置している方法。
【請求項47】
前記膜の表面に隣接する領域から前記反応ガスの少なくとも一部を除去するステップをさらに含む請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記反応ガスが、水および酸素からなるグループから選択される請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記膜の表面に隣接する領域から生成ガスの少なくとも一部を除去するステップをさらに含む請求項46に記載の方法。
【請求項50】
前記生成ガスがHFを含む請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記膜が、2軸方向に配向している基板の表面上配置され、
前記基板の幅が少なくとも約1センチメートルであり、
前記超電導体の幅が少なくとも約1センチメートルであり、
前記超電導体が2軸方向に配向し、
前記超電導体が、その幅を横切ってほぼ一定のc軸方向に配向し、前記超電導体の前記c軸配向が前記基板の表面にほぼ垂直であり、
前記超電導体が、その幅を横切ってほぼ一定の化学組成を有し、
前記超電導体が、その幅を横切ってほぼ一定の相含量を有する請求項46に記載の方法。
【請求項52】
前記基板の長さが少なくとも約1メートルである請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記基板がテープの形をしている請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記基板が金属または合金を含む請求項51に記載の方法。
【請求項55】
前記超電導体が、前記膜の表面にほぼ垂直な方向に、少なくとも1オングストローム(0.1nm)/秒の平均c軸成長速度を有する請求項51に記載の方法。
【請求項56】
前記膜が入射デバイスおよび真空デバイスを備えるリアクタ内に位置する請求項46に記載の方法。
【請求項57】
前記膜が、少なくとも2つのゾーンを有するリアクタ内に位置し、前記ゾーンのうちの少なくとも一方が入射デバイスを有する請求項46に記載の方法。
【請求項58】
前記リアクタが少なくとも3つのゾーンを有する請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記全圧力が最高約200トル(26kPa)である請求項46に記載の方法。
【請求項60】
前記超電導体が希土類金属酸化物超電導体を含む請求項46に記載の方法。
【請求項61】
前記超電導体がYBCOを含む請求項46に記載の方法。
【請求項62】
前記膜を約20℃から650℃の温度に加熱するステップをさらに含む請求項46に記載の方法。
【請求項63】
前記中間超電導体材料が、前記超電導体のフッ素を含む前駆体を含む請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記反応ガス混合物が水および酸素を含む請求項62に記載の方法。
【請求項65】
前記膜を約550℃から約850℃の温度に加熱するステップをさらに含む請求項46に記載の方法。
【請求項66】
前記反応ガス混合物が水および酸素を含む請求項65に記載の方法。
【請求項67】
超電導体を製造するための方法であって、
中間超電導体材料の膜の表面上に反応ガス混合物を入射するステップを含み、
前記膜が最高約700トル(91kPa)の全圧力を有するリアクタの一部内に位置していて、
前記膜が、2軸方向に配向している基板の表面上に配置され、
前記超電導体が2軸方向に配向し、
前記超電導体が、前記基板の表面にほぼ垂直な方向に、少なくとも1オングストローム(0.1nm)/秒の平均c軸成長速度を有する方法。
【請求項68】
前記膜の表面に隣接する領域から前記反応ガスの少なくとも一部を除去するステップをさらに含む請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記反応ガス混合物が、水および酸素からなるグループから選択したガスを含む請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記膜の表面に隣接する領域から生成ガスの少なくとも一部を除去するステップをさらに含む請求項67に記載の方法。
【請求項71】
前記生成ガスがHFを含む請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記反応ガスが前記膜の表面上に入射している際に、前記膜を移動するステップをさらに含む請求項67に記載の方法。
【請求項73】
前記リアクタが、入射デバイスおよび真空デバイスを有する請求項67に記載の方法。
【請求項74】
前記リアクタが少なくとも2つのゾーンを有し、前記ゾーンのうちの一方が入射デバイスを有する請求項67に記載の方法。
【請求項75】
前記リアクタが少なくとも3つのゾーンを有する請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記全圧力が最高200トル(26kPa)である請求項67に記載の方法。
【請求項77】
前記超電導体が、前記膜の表面にほぼ垂直な方向に、少なくとも2オングストローム(0.2nm)/秒の平均c軸成長速度を有する請求項67に記載の方法。
【請求項78】
前記超電導体が、前記膜の表面にほぼ垂直な方向に、少なくとも3オングストローム(0.3nm)/秒の平均c軸成長速度を有する請求項67に記載の方法。
【請求項79】
前記超電導体が希土類金属酸化物超電導体を含む請求項67に記載の方法。
【請求項80】
前記超電導体がYBCOを含む請求項67に記載の方法。
【請求項81】
前記膜を約20℃から650℃の温度に加熱するステップをさらに含む請求項67に記載の方法。
【請求項82】
前記中間超電導体材料が、前記超電導体のフッ素を含む前駆体を含む請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記反応ガス混合物が水および酸素を含む請求項81に記載の方法。
【請求項84】
前記膜を約550℃から約850℃の温度に加熱するステップをさらに含む請求項67に記載の方法。
【請求項85】
前記反応ガス混合物が水および酸素を含む請求項84に記載の方法。
【請求項86】
超電導体を製造するための方法であって、
フッ素を含む超電導体前駆体の膜の表面上に反応ガス混合物を入射するステップと、
前記膜の表面に隣接する領域からHFの少なくとも一部を除去するステップとを含み、
前記反応ガス混合物が、前記膜の表面に対して少なくとも約5度の角度で前記膜の表面上に入射し、前記膜が最高約700トル(91kPa)の全圧力を有するリアクタの一部内に位置する方法。
【請求項87】
前記膜の表面に隣接する領域から前記反応ガス混合物の少なくとも一部を除去するステップをさらに含む請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記反応ガス混合物が、水および酸素からなるグループから選択したガスを含む請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記反応ガスが前記膜の表面上に入射している際に、前記膜を移動するステップをさらに含む請求項86に記載の方法。
【請求項90】
前記膜が、入射デバイスおよび真空デバイスを有するリアクタ内に位置する請求項86に記載の方法。
【請求項91】
前記超電導体が希土類金属酸化物超電導体を含む請求項86に記載の方法。
【請求項92】
前記超電導体がYBCOを含む請求項86に記載の方法。
【請求項93】
前記膜を約20℃から650℃の温度に加熱するステップをさらに含む請求項86に記載の方法。
【請求項94】
前記中間超電導体材料が、前記超電導体のフッ素を含む前駆体を含む請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記反応ガス混合物が水および酸素を含む請求項93に記載の方法。
【請求項96】
前記膜を約550℃から約850℃の温度に加熱するステップをさらに含む請求項93に記載の方法。
【請求項97】
前記反応ガス混合物が水および酸素を含む請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記膜の温度を少なくとも約1分の間約550℃から約850℃の温度に維持するステップをさらに含む請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記膜の温度を少なくとも約30分間約550℃から約850℃に維持する請求項98に記載の方法。
【請求項100】
超電導体を製造するための方法であって、
中間超電導体材料の膜の表面上に反応ガス混合物を入射するステップと、
前記ガスが前記膜の表面上に入射している間に、前記膜を移動するステップとを含み、
前記反応ガスが、前記膜の表面に対して少なくとも約5度の角度で前記膜の表面上に入射し、
前記膜が最高約700トル(91kPa)の全圧力を有するリアクタの一部内に位置していて、
前記膜が、2軸方向に配向している基板の表面上に配置され、
前記基板の幅が少なくとも約1センチメートルであり、
前記超電導体の幅が少なくとも約1センチメートルであり、
前記超電導体が2軸方向に配向し、
前記超電導体がその幅を横切ってほぼ一定のc軸方向に配向し、前記超電導体の前記c軸配向が前記基板の表面にほぼ垂直であり、
前記超電導体がその幅を横切ってほぼ一定の化学組成を有し、
前記超電導体がその幅を横切ってほぼ一定の相含量を有する方法。
【請求項101】
前記リアクタが、入射デバイスおよび真空デバイスを備える請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記超電導体が希土類金属酸化物超電導体を含む請求項100に記載の方法。
【請求項103】
前記超電導体がYBCOを含む請求項100に記載の方法。
【請求項104】
超電導体を製造するための方法であって、
フッ化バリウム前駆体を移動している間に、前記フッ化バリウム前駆体の表面上に反応ガスを入射するステップを含み、
前記膜が、2軸方向に配向している基板の表面上に配置され、
前記基板の幅が少なくとも約1センチメートルであり、
前記超電導体の幅が少なくとも約1センチメートルであり、
前記超電導体が2軸方向に配向し、
前記超電導体がその幅を横切ってほぼ一定のc軸方向に配向し、前記超電導体の前記c軸配向が前記基板の表面にほぼ垂直であり、
前記超電導体がその幅を横切ってほぼ一定の化学組成を有し、
前記超電導体が、その幅を横切ってほぼ一定の相含量を有する方法。
【請求項105】
前記膜の表面に隣接する領域から反応ガスの少なくとも一部を除去するステップをさらに含む請求項104に記載の方法。
【請求項106】
前記反応ガスがHFを含む請求項105に記載の方法。
【請求項107】
前記膜の表面に隣接する領域から前記反応ガス混合物の少なくとも一部を除去するステップをさらに含む請求項104に記載の方法。
【請求項108】
前記反応ガス混合物が、水および酸素からなる前記グループから選択したガスを含む請求項107に記載の方法。
【請求項109】
前記超電導体が、前記膜の表面にほぼ垂直な方向に、少なくとも1オングストローム(0.1nm)/秒の平均c軸成長速度を有する請求項104に記載の方法。
【請求項110】
前記超電導体がYBCOを含む請求項104に記載の方法。
【請求項111】
酸化物膜を成長させるための方法であって、
中間酸化物材料の膜の表面上に反応ガス混合物を入射するステップと、
前記膜の表面に隣接する領域から生成ガスの少なくとも一部を除去するステップとを含み、
前記反応ガス混合物が、前記膜の表面に対して少なくとも約5度の角度で前記膜の表面上に入射し、前記膜が最高約700トル(91kPa)の全圧力を有するリアクタの一部内に位置していて、前記酸化物が、バッファ材料および超電導体材料からなるグループから選択される方法。
【請求項112】
前記膜の表面に隣接する前記反応ガス混合物の少なくとも一部を除去するステップをさらに含む請求項111に記載の方法。
【請求項113】
前記膜が、2軸方向に配向している基板の表面上に配置され、
前記基板の幅が少なくとも約1センチメートルであり、
前記酸化物の幅が少なくとも約1センチメートルであり、
前記酸化物が2軸方向に配向し、
前記酸化物がその幅を横切ってほぼ一定のc軸方向に配向し、前記酸化物の前記c軸配向が前記基板の表面にほぼ垂直であり、
前記酸化物がその幅を横切ってほぼ一定の化学組成を有し、
前記酸化物が、その幅を横切ってほぼ一定の相含量を有する請求項111に記載の方法。
【請求項114】
前記酸化物が、前記膜の表面にほぼ垂直な方向に、少なくとも1オングストローム(0.1nm)/秒の平均c軸成長速度を有する請求項113に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−525790(P2007−525790A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515358(P2006−515358)
【出願日】平成16年6月2日(2004.6.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/017138
【国際公開番号】WO2005/001947
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(500117059)アメリカン スーパーコンダクター コーポレイション (13)
【氏名又は名称原語表記】AMERICAN SUPERCONDUCTOR CORPORATION
【Fターム(参考)】