説明

超電導導体から成る少なくとも2つの複合導体を備えた抵抗性開閉素子のための導体装置

抵抗性開閉素子のための導体装置(1A)は、共通平面内に互いに隣接して相互に絶縁して配置された少なくとも1つの第1複合導体と少なくとも1つの第2複合導体(10、20、30、40、50、60)とを有している。複合導体(10、20、30)は互いに平行に延び二本巻き構造を形成し少なくとも1つの超電導導体テープ(2)で構成された2つの導体部分(11、12、21、22、31、32、41、42、51、52、61、62)を有している。複合導体(10、20、30)はコイル巻線の形に成形され、その巻線はほぼ渦形の形態で延びスペーサ(3)によって相互に絶縁されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの第1複合導体と少なくとも1つの第2複合導体とを備えた抵抗性開閉素子のための導体装置に関する。前記複合導体は、各々少なくとも1つの超電導導体テープで構成され、互いに平行に延び二本巻き構造を形成する2つの導体部分を有している。かかる導体装置は例えば特許文献1で知られている。
【背景技術】
【0002】
電流系統において、電気エネルギが電源から負荷に搬送される。その場合、短絡はそれが設備に修復不能な損傷を生じさせるために防止せねばならない。電流系統において短絡を防止する方式は所謂短絡電流限流器の利用にある。
【0003】
開閉特性および運転経費に関し特に良好な方式は、超電導短絡電流限流器である。これは運転中超電導に基づき損失電力が零であるかほんの僅かであり、迅速な可逆開閉性の点で優れている。その機能原理は、短絡電流発生時の超電導導体装置の超電導状態から常電導状態への転移に基づいている。系統に直列接続された超電導導体装置は、その転移によって短絡電流を制限する抵抗を系統に非常に迅速に投入接続する。これによって、系統およびこれに接続された設備が短絡電流から保護される。短絡電流限流器は短絡電流の減衰後、臨界温度以下に冷却した際に超電導導体装置が常電導状態から超電導状態に戻る故、補助抵抗を再び系統から除く働きをする。この結果、再び系統における短絡電流限流器を介しての殆ど損失の無い電流伝達が可能となる。
【0004】
従来、例えば特許文献1により、二本巻き式に並べて巻回された超電導コイルを備えた短絡電流限流器が公知である。コイルは各々導体テープで構成され、該導体テープは2つの導体部分から成り、円筒状コイル鉄心の周りに巻回されている。導体テープはそれ自体が折り曲げられ、その場合、隣接する2つの導体部分が生じ、その各導体部分は隣接する導体部分に対して絶縁層によって電気的に分離されている。隣接するコイルは円筒状コイル鉄心の軸線に沿って異なった位置に巻回されている。隣接するコイルは互いに並列接続される。しかしその際、コイルの絶縁耐力に関し問題が生ずる。この構造の場合、コイルに印加された全電圧が両外側巻線において降下する。導体部分間に必要な間隔のため、インダクタンス、損失および所要場所が特に10kV以上の定格電圧の場合非常に大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6275365号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、冒頭に述べた特徴と、コンパクトな構造で大きな絶縁耐力と、小さなインダクタンスと、小さな交番磁界損失とを有し、利用する導体テープへの冷却材の良好な到達が保証できる抵抗性開閉素子、特に短絡電流限流器における改良された導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1に記載の特徴を有する抵抗性開閉素子における導体装置によって解決される。
【0008】
本発明による抵抗性開閉素子のための導体装置は、各々少なくとも1つの超電導テープで構成された少なくとも1つの第1複合導体と、少なくとも1つの第2複合導体とを備える。この導体装置において、各複合導体は互いに平行に延びて二本巻き構造を形成し、少なくとも1つの超電導導体テープから成る2つの導体部分を備える。その少なくとも1つの第1複合導体と少なくとも1つの第2複合導体は共通平面内に互いに隣接して配置され相互に絶縁されて共通コイル巻線の形に成形され、該巻線はほぼ渦形の形態で延びる。
【0009】
本発明に基づく導体装置の有利な実施態様は、各従属請求項から明らかである。
【0010】
導体装置の有利な実施態様において、渦形はアルキメデス螺線、対数螺線、双曲線螺線或いはフェルマー螺線の形に形成される。その場合、複合導体の互いに平行に延び二本巻き構造を形成している2つの導体部分は、その終端および/又は始端で電気的および/又は機械的に互いに接続され、その際、少なくとも1つの接合点が生ずる。
【0011】
特に有利な実施態様では、少なくとも1つの接合点は互いに尖って合流する2つの始端および/又は終端の形に形成される。その代わりに、少なくとも1つの接合点はU形形状に特に片側にU形に曲げられた形状に形成されおよび/又は接続部は二重U形、特にS形に形成される。少なくとも1つの導体テープが複合導体の少なくとも1つの接合点に部分楕円形、特に部分円形を有してもよい。また接合点のそれら形状の組合せも考えられる。
【0012】
有利な実施態様では少なくとも2つの接合点が共通平面内に重ね合わせて配置される。その代わりに、少なくとも2つの接合点は共通平面内において楕円、特に円の円周上に配置され得る。その場合、少なくとも2つの接合点が円周に一様に分布されていると特に好適である。それらは好適には渦形の中心に或いは渦形の中心近くに配置される。
【0013】
超電導導体テープは、好適な実施態様では高温超電導材料を含む。隣接する導体部分間に、特に複合導体の隣接する導体部分間に絶縁体が形成される。この絶縁体は、少なくとも1つのスペーサの形に、特に隣接する導体部分間に2〜3mmの範囲の間隔を形成するスペーサの形に形成されるとよい。
【0014】
複合導体の2つの導体部分は、特に好適にはこれらが電流を互いに逆向きに導くように形成される。隣接する複合導体の隣接する導体部分は、これらが同様に電流を互いに逆向きに導くように形成される。
【0015】
導体装置の特に有利な実施態様では、少なくとも1つの第1複合導体と第2複合導体が並列接続される。その代わりに、少なくとも1つの第1複合導体と第2複合導体は直列接続することもできる。複合導体の種々の接続を組み合わせることもできる。
【0016】
複合導体の導体部分の接合点は電気的および/又は機械的に互いに接続される。ここで接続とは、先に分かれていた部分の電気的および/又は機械的な接続或いは単一部材から作られた導体部分に存在する電気的および/又は機械的な接続を意味する。前者の、先に分かれていた部分の接続の場合、その接続は例えばハンダ付けや溶接で行われる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は全般的に、被保護系統に直列接続された超電導導体装置が短絡発生時に超電導状態から常電導状態に転移し、これに伴い、短絡電流を制限する抵抗が非常に迅速に系統に投入接続されるという考えを基礎としている。限流状態では、全定格電圧は流れ方向においてほぼ線形に導体装置に沿って低下する。その際、導体テープにおける配置は導体装置の本発明に基づく形態により保証できる特定基準を最適に満たさねばならない。
【0018】
一方で導体テープは、系統が定常状態にあるとき、限流器が無視できる程度のものであるようにすべく、できるだけ小さなインダクタンスを生ずるように配置される。これは原理的には逆向き電流の導体部位をできるだけ小さな相対間隔で配置することによって達成される。大雑把な原則として導体間隔を導体幅より小さくすることが有効である。
【0019】
導体テープの配置に対する他の基準は、その配置を数kA(キロアンペア)の定格電流の限流器の場合でもできるだけ低い交番磁界損失が生ずるように選定することにある。大きな交番磁界損失は総損失を高め、従って運転経費を高め、大形で従って高価な冷却機の採用を余儀無くする。磁束が超電導導体に入るか出るときに交番磁界損失が生ずる。交番磁界損失は、原理的に小さな横断面積の単位導体の適当な並列接続、或いは例えば小さな相対間隔における逆向き電流の場合のような発生磁界が小さくなるような配置によって小さくなる。この効果を得るべく、その間隔は導体幅よりかなり小さくせねばならない。
【0020】
導体テープの配置はできるだけコンパクトな構造にしなければならない。これは主に開閉素子の内部における導体間並びに場合によって存在する複数の開閉素子間の小さな間隔によって達成される。
【0021】
また導体テープの配置は冷却材の良好な到達を可能としなければならない。通常、冷却材として液体窒素が使われる。導体テープへの冷却材の良好な到達性は開閉過程後における急速な再冷却を可能とする。これは、導体表面が場合により存在する薄い絶縁層を問題とせずに本質的に露出して冷却材で濡らされることよって達成される。特に導体装置は、例えばエポキシ樹脂で埋設されてはならない。開閉過程後の迅速な再冷却を保証するには隣接する導体テープ間の本発明に基づく約2〜3mmの最低間隔で十分である。
【0022】
導体テープの配置に対する他の基準は絶縁耐力である。誘電試験で必要とされる絶縁耐力は、限界時に印加する系統の定格電圧にほぼ相当する電圧の約5〜10倍である。絶縁耐力は特に高電圧技術での使用にとって重要であり、通常、大きな間隔、樹脂による表面被覆或いはエポキシ樹脂による埋設によって得られる。従って、この絶縁耐力の要件は上述した他の要件と矛盾する。それらの基準間における最適化は、本発明の実施例に示す抵抗性開閉素子、即ち限流器の形態によって達成される。
【0023】
各々超電導テープから二本巻き構造に構成され共通平面内において平行に渦形の様式で延びている少なくとも1つの第1複合導体と少なくとも1つの第2複合導体との配置は、前述の基準に応じた最良の形態を生ずる。その場合、少なくとも1つのスペーサの形をした絶縁体が冷却材の良好な到達性と、導体テープの最良の間隔とを生じさせる。一平面への配置は、特にコンパクトな構造を可能とする。複合導体の接続、例えば並列接続は隣り合う全ての導体テープに逆向き電流を生じさせ、かくして損失の最少化に資する。
【0024】
複数の複合導体の並列接続により、個別テープの長さは大きな直径のコイルにおいても小さくなる。このため、コイル当たりの定格電圧も低くなる。その結果、絶縁耐力上からのテープ間隔を基準にとって良好な2〜3mmの間隔より大きくする必要はない。小さな間隔の二本巻き式配置により発生する磁界は最小になり、これは低いインダクタンスと僅かな交番磁界損失を生じさせる。この配置は低電圧の限流器においても同様にテープの並列接続により大形コイルが利用でき、この結果空間利用率が著しく向上する。
【0025】
従来の二本巻き式円板形コイル或いは互いに入り組まされたソレノイドコイルで生ずる絶縁耐力の問題は、導体テープの本発明に基づく配置によって、実際にコイルに加わる全電圧が外側の両巻線間において低下するので解消される。コンパクトな構造は、従来の直列接続された多数の小形コイルを備えた装置において、高電圧の場合に生ずるか並列接続されたコイルの場合にも大きな定格電流において生ずる損失を減少する。全コイルが軸方向に直列接続された構造形態の場合、不利な細長い形状が生じ、並べて並列積層体の形に配置されたコイルの場合に、必然的にクライオスタットにおいて空間利用率が低下する。この問題は、本発明に基づく配置で克服される。
【0026】
コイル直径の増大も、悪い空間利用率、大きなインダクタンス及び高い交番磁界損失を伴う。コイル直径の増大に伴い、コイル当たりの導体長と定格電圧とが増大する。その結果、絶縁耐力を保証すべく、テープ間の間隔も増大せねばならない。大電流の利用に対し、導体幅の増大や、細いテープを備えた複数のコイルの並列配置により、テープ毎の臨界電流を高めることができる。巻線間の間隔が非常に小さな二本巻き式配置を利用しない場合には、導体電流の増大は交番磁界損失を余剰比例的に著しく増大させる。また、細いテープを備えた複数のコイルの並列接続は空間利用率を悪くする。これに対し、本発明に基づく導体テープ配置は、最小損失で最良の空間利用率を保証する。
【0027】
本発明に基づく有利な実施例を従属請求項の特徴に応じた有利な発展形態と共に図を参照して詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。なお各図において相当部分には同一符号を付している。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】3つの複合導体を備えた抵抗性開閉素子における本発明に基づく導体装置。
【図2】3つの複合導体に代わって6つの複合導体を備えた図1に類似の導体装置。
【図3】U状接合点を備えた図1に類似の導体装置。
【図4】U状ないしS状接合点を備えた図1に類似の導体装置。
【図5】尖って形成された接合点を備えた図1に類似の導体装置。
【図6】相互に入り組まされた接合点を備えた図1に類似の導体装置。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0029】
図1は、3つの複合導体、即ち複合導体10、20、30を有する抵抗性開閉素子における本発明に基づく導体装置1Aを概略的に示す。各複合導体10、20、30は、少なくとも1つの超電導導体テープ2から成っている。各複合導体10、20、30は、互いに平行に延び二本巻き構造を形成し、各々中央接合点15、25、35を備えた2つの導体部分11、12ないし21、22ないし31、32を有している。複合導体10、20、30は共通平面内に互いに隣接して配置され、相互に絶縁されている。複合導体10、20、30は共通コイル巻線の形に成形され、それら巻線はほぼ渦形の様式で延びている。複合導体10、20、30の接合点15、25、35は各々部分的に円形に形成され、その平面内において渦形中心70の周りの円半径71に接して配置されている。
【0030】
複合導体10、20、30の互いに隣接する2つの導体部分11、12ないし21、22ないし31、32の間に、各々導体テープ2間の電気絶縁体として用いられるスペーサ3が配置されている。図1においてスペーサ3は波形線で示している。その構造は種々に形成でき、特に導体テープ2を図示した紙面に対し垂直方向に並びに平面の方向に、即ち相互に固定する。一般にスペーサ3はポリテトラフルオロエチレンのような合成樹脂や低温において安定した他の電気絶縁材料で構成される。スペーサ3は、その形状が冷却材の導体テープ2への良好な到達を可能とするように形成されている。冷却材として特に液体窒素が適するが、例えば液体ヘリウムや液体ネオン等の他の冷却材も利用できる。
【0031】
導体テープ2は、高温超電導材料Bi2Sr2Ca2Cu3O(BSCCO(2223))のような、銀被覆内の超電導材料で構成され、或いは例えば鋼のテープ上に設けられた希土類銅酸化物(YBCCO)のような超電導材料で構成される。導体テープの特に好適な形状は所謂レーベル導体としての形成によって与えられる。NbTiやNb3Snのような低転移温度超電導材料(LTS材料)および/又は常電導材料内ないし常電導材料上における高温超電導材料(HTS)の異なった超電導材料の組合せも可能である。
【0032】
二本巻き複合導体10、20、30の導体テープ2は、一体部品や複合された複数部品から成っている。一体形導体テープ2が利用される場合、複合導体10、20、30は導体テープ2の折り重ねによって生じ、その折り目箇所を接合点15、25、35と呼び、導体部分11、12ないし21、22ないし31、32を互いに接続している。組立てられた導体テープ2において、二本巻き複合導体10、20、30は2つの導体テープ2の重ね合わせによって生じ、その一端が機械的および電気的に特に形状合致的に結合され、この結果、各導体部分11、12と、21、22と、31、32とは互いに機械的および電気的に接続されている。この場合、導体テープ2が接続される箇所を接合点15、25、35と呼ぶ。後者の場合における結合は例えばハンダ付けによって行われる。
【0033】
少なくとも1つの導体テープ2の接合点15、25、35とは反対の端部、即ち図1において螺線外縁に、導体部分11、12、21、22、31、32に各々電気接触のために端子13、14、23、24、33、34が設けられている。導体部分11、12、21、22、31、32はその端子13、14、23、24、33、34を介して電気接触され、特に互いに直列又は並列接続され、外部の正ないし負電圧が供給される。
【0034】
図1に示す実施例において、端子13、14、23、24、33、34は螺線外周に一様に分布して配置されている。複合導体の一方の導体部分は各々正電位と接触され、他方の導体部分は各々負電位に接触され(正電位は+符号、負電位は−符号で表示)、その際二本巻き複合導体10、20および30の端子13と14、23と24および33、34は各々互いに隣接して円周半径上に配置されている。複合導体は直接隣接する複合導体の直接隣接する導体部分が各々逆符号の印加電位を有するように機械的および電気的に接触されている。
【0035】
図1における3つの複合導体10、20、30の導体テープ2の3つの接合点15、25、35は各々部分的に円形に形成されている。これらは螺線の内部に渦形中心70の周りの円71に配置されている。この場合円71に関し、各接合点15、25、35の円形形状が中心70の周りの円71と特に正確に一点で交差することを意味する。
【実施例2】
【0036】
図2は、本発明に基づく導体装置1Bの異なった実施例を概略的に示す。図2における導体装置1Bは、図1における導体装置1Aと異なり、3つの複合導体に代わって6つの複合導体を有している。導体部分11、12と、21、22と、31、32と、41、42と、51、52と、61、62と、接合点15、25、35、45、55、65とを備えた複合導体10、20、30、40、50、60の形状および配置は、図1における導体部分11、12と、21、22と、31、32と、接合点15、25、35とを備えた複合導体10、20、30の形状および配置に、複合導体の多さに基づく立体的寸法を除いて類似している。
【実施例3】
【0037】
図3は本発明に基づく導体装置1Cの他の実施例を概略的に示す。図3における導体装置1Cは、図1に示す導体装置1Aと異なり、互いに重ね合わされ接合点15、25、35が直線72上に重ね合わせて配置された複合導体10、20、30を有している。スペーサ3が導体テープ2間に配置されている。接合点15、25、35は各々U形に形成され、そのU形は巻線の渦形への巻回によって片側に向けて曲げられている。図3に示す本発明に基づく実施例の、図1の本発明に基づく導体装置1Aの実施例に対する別の相違点は、端子13、14、23、24、33、34の配置にある。図3の端子は、図1におけるように渦形の円周に一様に分布して配置されておらず、紙面における渦形外周の一箇所に互いに重ね合わされている。図1に示す実施例は、端子が大きな立体的相対間隔を有するので、図3に示す実施例に比べて良好な絶縁耐力を有する利点がある。しかし特定の場合には、図3に示す配置が接触技術的理由から有利である。
【実施例4】
【0038】
図4は本発明に基づく導体装置1Dの異なった実施例を概略的に示す。図4の導体装置1Dは、図3に示す導体装置1Cに類似して、互いに重ね合わされ接合点15、25、35が直線72上に重ね合わせて配置され、U又はS形に形成された複合導体10、20、30を有している。導体テープ2間にはスペーサ3が配置されている。複合導体10、20、30の各第1導体部分11、21、31の端子12、22、32は、図3に示す実施例と異なり、渦形外周片側に紙面において渦形中心を通る直線に沿って互いに重ね合わせて配置され、他方で複合導体10、20、30の第2導体部分14、24、34の端子13、23、33は、渦形外周反対側に同じ直線上に重ね合わせて配置されている。図4に挙げた本発明に基づく実施例は非常に良好な絶縁耐力を提供する。
【実施例5】
【0039】
図5は、尖った接合点15、25、35を備える本発明に基づく導体装置1Eの実施例を概略的に示す。図5の導体装置1Eでは、図1に示した導体装置1Aに類似して、複合導体10、20、30の接合点15、25、35は互いに入り組んでおらず、互いに並べて重ね合わされている。図5に示す実施例の導体部分の積層順序は、渦形の外側から内側に見ての通り11、12、21、22、31、32であり、これによって、各複合導体の導体部分は各々常に互いに隣接して配置されている。これに対し図3と4に示す実施例における渦形の外側から内側への導体部分の積層順序は、31、21、11、12、22、32である。従って後者の場合、複合導体は相互に重ね合わされ、即ち互いに入り組んでおり、最内側複合導体10および最外側複合導体30を除いて他の複合導体の導体部分に直接隣接している。図5において、接合点15、25、35は渦形の内部で紙面に沿い、湾曲線72に沿って互いに重ね合わされている。
【実施例6】
【0040】
本発明に基づく導体装置の異なった実施例1Fを図6に示す。この実施例では、尖って形成された接合点は互いに入り組んで配置されている。従って図6に示す実施例は、接合点15、25、35の形状を除いて、図3に示す実施例1Cに相応している。
【0041】
図1〜図6に示す本発明に基づく実施例1A〜1Fの個々の特徴事項は組み合わせることができる。特に端子の配置は接合点の配置と無関係に選定できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々少なくとも1つの超電導テープ(2)から成る少なくとも1つの第1複合導体と少なくとも1つの第2複合導体(10、20、30、40、50、60)とを備えた抵抗性開閉素子のための導体装置(1A〜1F)であって、該導体装置(1A〜1F)において各複合導体(10、20、30、40、50、60)が互いに平行に延び二本巻き構造を形成し、少なくとも1つの超電導導体テープ(2)から成る2つの導体部分(11、12、21、22、31、32、41、42、51、52、61、62)を有し、少なくとも1つの第1複合導体と少なくとも1つの第2複合導体(10、20、30、40、50、60)が共通平面内に互いに隣接して配置され相互に絶縁されて共通コイル巻線の形に成形され、該巻線がほぼ渦形の形態で延びていることを特徴とする抵抗性開閉素子における導体装置(1A〜1F)。
【請求項2】
渦形の形態が、アルキメデス螺線、対数螺線、双曲線螺線又はフェルマー螺線を含んでいることを特徴とする請求項1記載の導体装置(1A〜1F)。
【請求項3】
複合導体(10、20、30、40、50、60)の互いに平行に延び二本巻き構造を形成する2つの導体部分(11、12、21、22、31、32、41、42、51、52、61、62)が、その終端および/又は始端で電気的および/又は機械的に互いに接続されて少なくとも1つの接合点(15、25、35、45、55、65)が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の導体装置(1A〜1F)。
【請求項4】
複合導体(10、20、30、40、50、60)の少なくとも1つの接合点(15、25、35、45、55、65)が、互いに尖って合流する2つの始端および/又は終端の形に形成されていることを特徴とする請求項3記載の導体装置(1A〜1F)。
【請求項5】
複合導体(10、20、30、40、50、60)の少なくとも1つの接合点(15、25、35、45、55、65)が、U形形状に曲げられた形状に形成されおよび/又は接合点(15、25、35、45、55、65)が二重U形に形成されていることを特徴とする請求項3記載の導体装置(1A〜1F)。
【請求項6】
少なくとも1つの導体テープ(2)が、複合導体(10、20、30、40、50、60)の少なくとも1つの接合点(15、25、35、45、55、65)に部分楕円形を有していることを特徴とする請求項3記載の導体装置(1A〜1F)。
【請求項7】
少なくとも2つの接合点(15、25、35、45、55、65)が共通平面内において重ね合わせて配置されていることを特徴とする請求項3ないし6の1つに記載の導体装置(1A〜1F)。
【請求項8】
少なくとも2つの接合点(15、25、35、45、55、65)が共通平面内において楕円又は円の円周上に配置されていることを特徴とする請求項3ないし6の1つに記載の導体装置(1A〜1F)。
【請求項9】
少なくとも2つの接合点(15、25、35、45、55、65)が円周に一様に分布されていることを特徴とする請求項8記載の導体装置(1A〜1F)。
【請求項10】
少なくとも2つの接合点(15、25、35、45、55、65)が渦形中心に或いは渦形中心近くに配置されていることを特徴とする請求項1ないし9の1つに記載の導体装置(1A〜1F)。
【請求項11】
超電導導体テープ(2)が高温超電導材料を含んでいることを特徴とする請求項1ないし10の1つに記載の導体装置(1A〜1F)。
【請求項12】
隣接する導体部分(11、12、21、22、31、32、41、42、51、52、61、62)間に、少なくとも1つのスペーサ(3)の形の絶縁体が形成されていることを特徴とする請求項1ないし11の1つに記載の導体装置(1A〜1F)。
【請求項13】
複合導体(10、20、30、40、50、60)の2つの導体部分(11、12、21、22、31、32、41、42、51、52、61、62)が電流を互いに逆向きに導くように形成され、隣接する複合導体(10、20、30、40、50、60)の隣接する導体部分(11、12、21、22、31、32、41、42、51、52、61、62)が電流を互いに逆向きに導くように形成されていることを特徴とする請求項1ないし12の1つに記載の導体装置(1A〜1F)。
【請求項14】
少なくとも1つの第1複合導体および第2複合導体(10、20、30、40、50、60)が直列接続されていることを特徴とする請求項1ないし13の1つに記載の導体装置(1A〜1F)。
【請求項15】
少なくとも1つの第1複合導体および第2複合導体(10、20、30、40、50、60)が並列接続されていることを特徴とする請求項1ないし13の1つに記載の導体装置(1A〜1F)。
【請求項16】
少なくとも1つの第1複合導体および第2複合導体(10、20、30、40、50、60)の導体部分(11、12、21、22、31、32、41、42、51、52、61、62)の接合点(15、25、35、45、55、65)が電気的および/又は機械的に互いに接続されていることを特徴とする請求項1ないし15の1つに記載の導体装置(1A〜1F)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2011−525684(P2011−525684A)
【公表日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513961(P2011−513961)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際出願番号】PCT/EP2009/054275
【国際公開番号】WO2009/156197
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】