説明

超音波を利用した担体からのガラス基板の剥離

機能性基板を担体基板に結合し、前記機能性基板上に機能性要素を形成し、その結合界面に超音波を印加することによって前記機能性基板を前記担体基板から剥離する、各工程を有してなる、薄い機能性基板を備えた装置の製造方法。超音波の印加は、機能性基板が受ける引張応力を低減することによって、剥離ステップを補助する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2009年8月27日出願の米国特許出願第12/548,685号の優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、薄い基板を基礎とした機器を製造するための方法および装置に関する。特に、本発明は、担体基板に支持された薄い基板表面上に機器を作製するための方法および装置に関する。本発明は、例えば、担体基板を用いた、500μm未満の厚さを有する薄い柔軟なガラス基板の表面に表示装置などの光電子デバイスを製造するのに有用である
【背景技術】
【0003】
従来のTFT・LCDディスプレイは、ガラス基板の表面に薄膜半導体トランジスタを形成することによって製造される。使用するガラス基板の最も一般的な厚さは約500〜700μmである。LCDパネル製造業者は、これらの比較的厚いガラス基板の製造ラインに大規模な資本投資を行ってきた。
【0004】
TFT機器の下層にあるガラス基板は、より薄く、軽くなる傾向にある。300μm、100μmまたはそれ以上に薄いなど、500μm未満の厚さを有するガラス基板は、幾つかの特定のディスプレイ用途、特に、ラップトップコンピュータ、ハンドヘルドデバイスなどの携帯機器にとって望ましい。装置においてこのような薄さを達成する1つの方法は、最初に、厚いガラス基板をベースとして機器を組立て、その後、基板の化学的および/または機械的薄化を行うことである。この工程は効果的であるが、薄い基板上に直接機器を組み立て、薄化の工程を排除することが望ましいであろう。
【0005】
しかしながら、多くの製造ラインは、このような著しく薄いガラス基板を大幅な工程の修正なしに処理する能力を有するようには設計されていないため、このような薄いガラス基板の取り扱いは、パネル製造業者に相当な技術的困難を与えることとなる。
【0006】
厚いガラス基板用の従来の方法への修正の提案の1つは、下流の工程段階に適合する接着剤などの結合剤を用いて、薄いガラス基板を担体ガラス基板に結合することである。結合基板の合計の厚みが大きくなることで、従来のTFT製造ラインにおける取扱の問題を解決することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
担体基板に支持された薄い機能性ガラス基板表面上に半導体機器を形成する際に、機能性基板は、担体基板から取り外されなければならない。しかしながら、機能性基板および/またはそこに形成される機器に損傷を生じさせることなく剥離を達成することは、容易なことではない。
【0008】
よって、薄い機能性基板を担体基板から剥離する効果的な方法が必要とされている。
【0009】
本発明は、この要求および他の要求を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のいくつかの態様を本明細書に開示する。これらの態様は、互いに重複していてもしていなくてもよいことが理解されるべきである。1つの態様の一部は、別の態様の範囲内に含まれる場合があり、またその逆もありうる。
【0011】
各態様は、同様に、1つ以上の特別な実施の形態を含みうる、多くの実施の形態によって例証されている。実施の形態は、互いに重複していてもしていなくてもよいことが理解されるべきである。1つの実施の形態の一部、またはそれらの特定の実施の形態は、別の実施の形態、またはそれらの特定の実施の形態の範囲内に入っても入らなくてもよく、またその逆もありうる。
【0012】
本開示は、第1の表面、前記第1の表面と反対側の第2の表面、および前記第1の表面と前記第2の表面の間の厚さT1を有する薄い機能性基板を備えた機器を製造する方法を対象としており、本方法は、
(A)結合界面に結合剤の層を用いることによって、前記機能性基板の第1の表面を、厚さT2を有する担体基板に結合し;
(B)前記機能性基板の第2の表面を処理し;
(C)前記結合界面に超音波を印加することによって、前記担体基板を前記機能性基板から取り外す、
各工程を有してなる。
【0013】
本開示の方法の幾つかの実施の形態では、T2>T1である。
【0014】
本開示の方法の幾つかの実施の形態では、T1≦500μmである。
【0015】
本開示の方法の幾つかの実施の形態では、ステップ(B)において、機能性要素は機能性基板の第2の表面に形成される。
【0016】
本開示の方法の幾つかの実施の形態では、機能性基板および担体基板は両方とも、ガラス材料を含む。
【0017】
本開示の方法の幾つかの実施の形態では、ステップ(A)に用いる結合剤は、シリコーン接着剤およびペルフルオロエラストマーのうち少なくとも1つを含む。
【0018】
本開示の方法の幾つかの実施の形態では、結合剤の層は、(a)10〜90の範囲のショアA硬さ;および(b)最大で183ナノメートルの粗さを有するエラストマーである。
【0019】
本開示の方法の幾つかの実施の形態では、担体基板と結合剤の層の間の結合は、20ミリメートル/分の剥離速度および90°の剥離角で測定した場合に、少なくとも0.5キロニュートン/メートルの剥離強度を有する。
【0020】
本開示の方法の幾つかの実施の形態では、ステップ(C)において、超音波は、液浴を通じて結合界面に印加される。
【0021】
本開示の方法の幾つかの実施の形態では、ステップ(C)において、超音波は、20℃において、エタノールなどの水より小さい表面張力を有する有機溶媒を含む液浴を通じて結合界面に印加される。
【0022】
本開示の方法の幾つかの実施の形態では、ステップ(C)において、超音波は、変換器を通じて結合界面に印加される。
【0023】
本開示の方法の幾つかの実施の形態では、ステップ(C)において、超音波は、機能性基板と担体基板との間の結合界面の周辺領域に印加される。
【0024】
本開示の方法の幾つかの実施の形態では、ステップ(C)において、超音波は、担体基板と機能性基板との間の結合界面の中央領域よりも周辺領域により大きい力が印加される。
【0025】
本開示の方法の幾つかの実施の形態では、ステップ(C)は、結合界面に超音波を印加した後、機能性基板を担体基板から剥離する工程をさらに含む。
【0026】
本開示の方法の幾つかの実施の形態では、機能性基板を担体基板から剥離するステップの間、剥離半径は、少なくとも5cmであり、幾つかの特定の実施の形態では少なくとも10cmであり、幾つかの特定の他の実施の形態では少なくとも20cmであり、幾つかの特定の他の実施の形態では少なくとも30cmである。
【0027】
本開示の方法の幾つかの実施の形態では、機能性基板を担体基板から剥離するステップは、剥離ローラーの使用を含む。
【0028】
本開示の方法の幾つかの実施の形態では、機能性基板は、最大で400μmの厚さT1を有し、幾つかの特定の実施の形態では最大で300μm;幾つかの特定の実施の形態では最大で200μm、幾つかの特定の実施の形態では最大で100μm、幾つかの特定の実施の形態では最大で50μmである。
【0029】
本開示の方法の幾つかの実施の形態では、ステップ(A)において、結合界面における結合剤の層は、最大で300μmの厚さを有し、幾つかの特定の実施の形態では最大で200μm、幾つかの特定の他の実施の形態では最大で150μm、幾つかの特定の他の実施の形態では最大で100μm、幾つかの特定の実施の形態では1μm〜80μm、幾つかの特定の実施の形態では5μm〜60μm、幾つかの特定の実施の形態では10μm〜50μmである。
【0030】
本開示の方法の幾つかの実施の形態では、ステップ(C)において、超音波は、ステップ(B)で形成された機能性基板が損傷を受けないように印加される。
【0031】
本開示の方法の幾つかの実施の形態では、ステップ(C)において、超音波は、20〜400kHzの範囲の周波数および0.1〜500ワットの範囲の電力を有するように選択される。
【0032】
本開示の方法の幾つかの実施の形態では、ステップ(C)において、超音波は、担体基板と機能性基板との間の結合界面に、実質的に均一な力で印加される。
【0033】
本開示の方法の幾つかの実施の形態では、結合剤の層は、機能性基板よりも前記担体基板に対して強力な接着を有する。
【0034】
本開示の方法の幾つかの実施の形態では、ステップ(C)の終わりに、担体基板は、結合剤の層に結合した状態のままである。
【0035】
本開示の方法の幾つかの実施の形態では、ステップ(A)は、
(A01)担体基板の表面に未重合の結合剤の層を施用し;その後、
(A02)前記未重合の層を重合して、前記担体基板に結合した前記結合剤の重合層を獲得し;
(A03)前記結合剤の重合層の上に、機能性基板の第1の表面を設置して、前記結合剤と前記担体基板の間の結合よりも弱い、前記機能性基板との結合を達成する、
各工程を有してなる。
【0036】
本開示の方法の幾つかの実施の形態では、ステップ(A)は、
(A11)前記担体基板の表面に第1のコーティングの第1の層を形成し;
(A12)前記第1のコーティングの第1の層と機能性基板の第1の表面の間に結合剤を施用する、
各工程を有してなる。
【0037】
本開示の方法の幾つかの実施の形態では、ステップ(A11)において、第1のコーティングの第1の層はシランを含む。
【0038】
本開示の方法の幾つかの実施の形態では、機能性基板は、ガラスとポリイミドなどのポリマーとの多重層を含む。
【0039】
本開示の方法の幾つかの実施の形態では、ステップ(C)の後、結合剤の層に結合した担体基板は、別の機能性基板の処理サイクルに再使用される。
【0040】
本開示の方法の1つ以上の実施の形態は、次の利点を有する。
【0041】
超音波剥離方法の使用は、ディスプレイ製造業者の現行の設備および組立条件の範囲内での薄いガラス基板の使用を可能にする。薄いガラス基板は、プラスチックおよびステンレス鋼基板よりも曲げ応力に起因する破損の影響を受けやすい。超音波剥離法を使用することにより、そうでなければガラス基板にける機械的欠陥を生じたであろう基板の曲げ応力を最小限に抑える。
【0042】
本方法は、清浄後の担体基板の再使用を可能にし、全費用を軽減する。
【0043】
超音波剥離法は、幾つかの接着方法に適合する。超音波法は、基板−担体の結合が全般的な構造において最弱である限り、機能性基板の表面に形成された機能性要素における不当な有害な影響なしに、担体からの基板の取り外しを可能にする。基板の超音波により取り外しは、大きい領域にわたって、平行に行うことができる。
【0044】
この処理方法は、0.5mmの厚さのガラス上にディスプレイを組み立てる必要性、および、<0.3mmの厚さになるまで基板をHFエッチングまたは研磨する必要性を排除または低減する。これは、HFの使用および処分の観点からも、より環境に優しい方法を生み出す。
【0045】
超音波剥離法の使用は、ガラス基板本来のエッジ強度を保つ(低下しない)。この剥離法は、ガラス基板エッジの破損および損傷を最小限に抑え、したがって、ディスプレイ製造業者の設備における機械的欠陥を最小限に抑える。
【0046】
本発明の追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明に記載され、一部には、その説明から当業者には容易に明らかとなり、または、明細書および特許請求の範囲ならびに添付の図面に記載される本発明を実施することによって認識されるであろう。
【0047】
前述の概要および後述する詳細な説明は、本発明の単なる典型例であって、特許請求の範囲に記載される本発明の性質および特徴を理解するための概観または枠組みを提供することが意図されていることが理解されるべきである。
【0048】
添付の図面は本発明のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に取り込まれ、その一部を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】TFTディスプレイを製造する本開示の1つの実施の形態に従った方法の概略図。
【図2】本開示の1つの実施の形態に従った結合剤の層によって機能性基板に結合した担体基板を備えた組立体に、液浴を介して超音波を印加するステップの概略図。
【図3】本開示の別の実施の形態に従った結合剤の層によって機能性基板に接着した担体基板を含む組立体に、液浴を用いて超音波を印加するステップの概略図。
【図4】本開示の1つの実施の形態に従った結合剤の層によって機能性基板に接着した担体基板を含む組立体に、導波管を介して超音波を印加するステップの概略図。
【図5】本開示の1つの実施の形態に従った結合剤の層によって機能性基板に接着した担体基板を含む組立体に、導波管を介して超音波を印加するステップの概略図。
【図6】本開示の1つの実施の形態に従った剥離ロールを使用することにより、結合剤の層によって、機能性基板を、そこに結合した担体基板から剥がすステップの概略図。
【図7】機能性基板および担体基板に結合したプレートを引き剥がすことによる、結合剤の層によって、機能性基板を、そこに結合した担体基板から剥がすステップの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0050】
他に示されない限り、本明細書および特許請求の範囲で用いられる重量パーセント表わされる原料、寸法、およびある特定の物理的特性の値など、すべての数値は、すべての事例において、用語「約」によって修飾されると理解されるべきである。本明細書および特許請求の範囲で用いられる正確な数値が本発明の追加の実施の形態を形成することも理解されるべきである。実施例に開示される数値の正確性を確保するために努力してきた。しかしながら、測定された数値は、それぞれの測定技術に見られる標準偏差から生じるある特定の誤差を本質的に含みうる。
【0051】
本発明は、従来のTFTディスプレイ機器など、ガラス基板を基礎とした光電子デバイスの組立てに有利に適用することができる。しかしながら、当業者は、本開示を読んだとき、2つの基板間の結合剤の使用を含む剥離ステップが組立工程に必要とされる限り、本明細書の教示の利益を用いて、本発明が金属または有機基板に基づいた機器など他の機器の組み立てに適用されうることが容易に理解するであろう。本開示は、TFTディスプレイ機器の組立てとの関連でさらに例証されるが、特許請求の範囲に記載される本発明はそのような工程に限定されるべきではない。
【0052】
400μm、300μmなどを含め、最大で500μmの厚さを有するガラス基板を備えたものなど、より薄く、軽い携帯ディスプレイ製品に関心が集まっている。薄いガラス基板に特に適した製造ラインの開発及び導入に必要とされる高額な資本投資を低減するため、もっと厚いガラス基板(例えば約700μmの厚さのものなど)を主として扱う製造ラインでこのような製品を製造することが非常に望まれている。
【0053】
試みの1つは、500μm〜700μmの厚さのガラス機能性基板上に標準的なディスプレイを組み立てることである。機能性機器が組み立てられた後、エッチングまたは研磨工程を使用して、機能性基板を500μm未満、例えば400μm、300μm、200μmまたは100μmにまで薄くする。
【0054】
薄化のステップを排除するため、一時的な担体基板に機能性基板を一時的に結合する担体接着工程が提案された。機能性基板上に機器が組み立てられた後、機能性基板は担体基板から剥離され、担体基板は潜在的に再使用される。「ガラス基板用担体(Carrier for Glass Substrates)」という発明の名称で2009年5月6日に出願した欧州特許出願第09305404.7号明細書は、このような担体接着工程について詳細に説明しており、その関連する部分は信頼に値し、参照することにより、その全体が本明細書に取り込まれる。
【0055】
有機系の接着フィルム、エラストマー、直接的なガラス−ガラス間結合、または無機接着層などのさまざまな接着方法が使用されうる。同様に、機能性基板を剥離するのに十分にこの一時的な接着を弱めるために、幾つかの異なる方法が存在する。これらの脆弱化する方法は、結合材料および機構について最適化されてきたが、提案する本方法の大部分は、ある程度の基板の曲げを必要とする。組み立てた機器が剛性であったとしても、担体基板から機能性基板を剥離するまたは引き剥がす際に、若干の引っ張り曲げ応力が生じる。機能性基板上にすでに形成された機能性機器における基板の破損または有害作用を防ぐため、機能性基板を担体基板から剥離するまたは引き剥がすことによって生じる引っ張り曲げ応力は、最小限に抑えることが望ましい。本開示の方法は、剥離ステップの間に超音波を利用することによって、剥離の間の曲げ応力の印加を低減または排除する助けとなりうる。
【0056】
ディスプレイ市場における典型的な従来のTFT機器において、本開示の出願日以降、電気回路のトランジスタ、レジスタ、誘導子、ワイヤなどの機能性要素は、高精度ガラス基板の表面に形成される。よって、本開示の方法では、機能性基板はガラス基板でありうる。特に望ましい実施の形態では、機能性基板は、150μm、200μm、250μm、300μm、350μm、400μm、および450μmなど、最大で500μmの厚さを有する。上述のように、このような薄い機能性基板は、担体基板と組み合わせた場合に、約600μmおよび700μmの厚さを有するものなど、特に、もっと厚い基板用に設計され、組み立てられた標準的な従来の設備の利益を享受できる。ガラス機能性基板の組成は、意図する機能性要素を表面に製作するのに適している限り、本発明にとって重要ではない。次の典型的な商業的ガラスの組成は、本開示の機能性基板に適しうる:米国ニューヨーク州コーニング所在のCorning Incorporated社(以降「Corning」)から市販されるEagle XG(登録商標);Corninigから市販されるJade(登録商標);日本電気硝子株式会社から市販されるOA−20;およびAGC旭硝子から市販されるAN−100。しかしながら、機能性基板は、他の材料、例えば:ポリエステル、ポリアミドポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリオレフィンなどの有機ポリマー;β−スポジュメン、β−水晶、スピネル、または他の結晶相を含むものなど、ガラスセラミック材料;ジルコニア、クリストバライトなどのセラミック材料;および、単結晶シリコン、SiC、GaAsなどの結晶材料に基づくか、または含みうるというルールには反しない。機能性基板は、ベアガラス基板の場合のように、単一の同質の材料でできていて差し支えない。他の実施の形態では、ガラス基板などの機能性基板は、摩耗からの保護、接着の調節および/または脆弱さの低減など、所望の特性を提供することができるポリマーまたは分子でコーティングすることができる。例として、ペルフルオロオクタデシルトリクロロシランは、ガラスのエラストマーへの接着を調節するのに使用することができ、1〜50μmの厚さのポリイミドコーティングは、接触損傷からガラス表面を保護するのに使用することができる。さらに他の実施の形態では、機能性基板は、限定はしないが:(i)その上にあらかじめ構築された幾つかの光学部品または電気部品を有するシート材料;および(ii)ある特定の光学または電気部品が間に構築された2枚のガラスシートを備えたガラスパッケージを含む、複雑な重層構造を有しうる。
【0057】
担体は、ディスプレイ基板として使用するには内包物、すじ、または縞の欠陥レベルが高すぎる、工業等級または他の低級ガラス基板でできていて差し支えない。しかしながらこれらの物理的または光学的欠陥は、担体基板としての使用を抑制しない。担体はまた、フュージョン、スロット、フロート、または他のシート成形方法を通じて形成されうる。担体は、機能性基板と同一面積であるか、またはやや大きめでありうる。担体がやや大きい場合、機器の加工方法の間に機能性基板をエッジの影響から保護する。例えば、担体は、わずかに5mm大きくてもよく、機器組み立て設備において経験する典型的な影響に耐えるように、最終仕上げされ、丸められ、または研磨されたエッジを有する。担体はまた、機能性基板とは異なる幾何学的形状でありうる。機能性基板は大きい担体基板上に置いて構わない。担体はまた、結合する材料の接着または配置を可能にする表面形状、溝、または細孔率も有しうる。担体基板自体は、それらが接着したときに、合わせた剛性が典型的な処理装置に適合するかぎり、機能性基板と同一の厚さおよび剛性を有しうる。
【0058】
機能性基板と担体基板の間の結合剤は、その後のステップの必要とされる工程条件に応じて、例えば、有機系の接着フィルム、エラストマー、または無機の接着層でありうる。汚染物質に感受性の半導体材料および機器が機能性基板の下流の工程で形成される場合は、低ガス放出結合剤が望ましい。幾つかの特定の実施の形態では、結合剤層は、有利には、エラストマー、特に非極性のエラストマーであり、例としては、シリコーンエラストマー、フルオロシリコーンエラストマーおよびペルフルオロエラストマーが挙げられる。当然ながら、ペルフルオロエラストマーは、低レベルのガス放出(例えば、325℃で1時間浸漬後にガス放出不検出)および、例えば、400℃までの熱的安定性およびシリコーンおよびフルオロシリコーンよりも高い化学的耐久性など、高レベルの熱的および化学的安定性につながる、フッ素原子による水素原子の全置換および完全な架橋を達成する能力に起因して、多くの用途に特によく適合する。ペルフルオロエラストマーは、機能性基板および担体基板の組成に応じて、一部の用途にとって追加の利点となりうる、シリコーンエラストマーよりも高い、ガラスに対する結合エネルギーを示す。
【0059】
シリコーンエラストマーは、硬化の間に用いる架橋剤の量を変化させることによって接着レベルを簡便に調整することができるという利点を有する。しかしながら、最終製品中の未反応の架橋剤および/または低分子量種が、電子部品の製造の間に、許容できないレベルのガス放出を生じさせる場合がある。上述のように、ペルフルオロエラストマーは、典型的にはガス放出の問題を有しない。
【0060】
結合剤は、機能性基板と担体基板の間の結合界面に施用するときに、液体、または実質的に固体の形態でありうる。1つの典型的な実施の形態では、結合剤は両面接着テープとして導入されうる。別の実施の形態では、 結合剤は、最初に未重合の液体または固体として施用され、その後、例えば、熱または放射による開始によって誘起される重合に供される。用途に応じて、結合剤は、担体基板の表面全体および機能性基板の第1の表面、またはそれらの一部を覆いうる。部分的に覆うことで、結合剤と担体基板または機能性基板またはその両方との間の結合強度を調節することができる。液体または固体の形態の未重合の結合剤の施用は、従来の設備および、キャスティング、流し塗り、はけ塗り、噴霧コーティング、浸漬コーティング、スクリーン印刷など、当業者に既知の方法によって達成することができる。
【0061】
用途およびその後の工程条件に応じて、結合剤は、2つの基板の間の所望の接着を達成するために、次のいずれかであって差し支えない:(i)最初に担体基板の表面に施用され、重合に供され、その後、機能性基板の第1の表面に取り付けられる;または(ii)最初に機能性基板の第1の表面に施用し、重合に供され、その後、担体基板の表面に取り付けられる;または(iii)直接、機能性基板の第1の表面と担体基板の表面に同時に施用され、その後に重合する。幾つかの特定の実施の形態では、結合剤層は、機能性基板の第1の表面と直接接触する十分に滑らかな表面を有することが望ましい。そのためには、結合剤の未重合の層が最初に担体基板の表面に施用する場合には、重合の間に、例えば、ペルフルオロシラン(例えば、ペルフルオロデシルトリクロロシラン)の薄層の蒸着によって疎水化されたガラスシートなど、滑らかな疎水化された加圧基板を用いて覆うことができる。加圧基板の表面品質および結合剤に及ぼす負荷は、重合ステップの終わりにおける結合剤の厚さおよび表面粗さの調節を目的として変化しうる。一般に、結合剤の未重合の層が最初に担体基板表面に施用され、その後に重合され、次に機能性基板が重合した結合剤層に取り付けられる場合には、得られる重合した結合剤と担体基板の間の結合は、結合剤と機能性基板との間の結合よりも強い。これは、重合反応から得られる重合した結合剤と担体基板表面との結合が共有結合を含みうるのに対し、機能性基板と重合した結合剤との間にその後に形成された結合は、大部分がファンデルワールス型であることによる。
【0062】
用途に応じて、結合剤は、機能性基板と担体基板のいずれかとの強い結合、または実質的に両方の基板と同一レベルの結合を実証しうる。しかしながら、幾つかの特定の実施の形態では、結合剤は、機能性基板の第1の表面よりも担体基板とのほうに強い結合を示すことが特に望ましい。幾つかの特定の実施の形態では、担体基板と結合剤との間に所望のレベルの接着を達成するために、結合剤を施用する前に、接着促進剤が担体基板の表面に施用される。接着は、シリコーンの加硫速度を変化させることによって促進させることができる。Gent, The Journal of Adhesion, 79, pp315-325, (2003)参照。他のエラストマーでは、接着促進剤は、必要なレベルの結合の達成に有用でありうる。L. Leuger, Macromol. Symp. 149, pp197-205(2000)参照。例えば、ペルフルオロエラストマーおよびガラスからなる支持体の場合には、1つ以上のフッ素化シラン、例えば、FDS(ペルフルオロオクタデシルトリクロロシラン)が、接着促進剤として利用されて差し支えない。フッ素化シランは、フッ素化鎖がペルフルオロエラストマー内に浸透し、結果的に、エラストマーとガラス支持体の間の接着を改善するように、ガラス上に蒸着されうる。このような担体基板との強い結合は、結合剤および担体基板からの機能性基板の優先的な剥離につながり、その後の機能性基板の取り扱いおよび処理を容易にする。幾つかの特定の実施の形態では、結合剤の層を有する担体基板が別の機能性基板の処理に再使用および再利用可能であることが非常に望ましく、また可能である。これらの実施の形態では、結合剤と担体基板との強い結合が特に有利である。上述のように、このような担体基板との強い結合は、担体基板の表面に施用する際であって、かつ機能性基板に取り付ける前に、結合剤の重合によって達成することができる。他方では、担体基板と結合剤との弱い結合が望ましい場合、結合剤が施用される担体基板の表面に接着低減層を施用することができる。
【0063】
用途に応じて、機能性基板と担体基板の間の結合剤の厚さは幅広く変化して差し支えなく、例えば、1μmから数千マイクロメートルまでの範囲でありうる。幾つかの特定の実施の形態では、 最大で1000μm、例えば1μm〜300μm、1μm〜200μm、1μm〜100μm、または1μm〜50μmなどである。機能性基板が500μm未満の厚さを有し、機能性基板と担体基板の厚さの合計が1000μm未満の場合、結合剤は1μm〜200μmの厚さを有することが望ましく、1μm〜100μm、1μm〜50μm、10μm〜100μm、または10μm〜80μmなどでありうる。結合剤の厚さは、施用する結合剤の量および適用する方法によって調節することができる。結合剤のヤング率も幅広い範囲でありうる。例えば、約1〜10MPa、例えば、約1〜5MPaでありうる。
【0064】
ショアA硬さは、柔らかい材料の硬さを測定するのに使用した正規化試験である。他の硬さ試験と同様に、所定の応力下、侵入物が材料を貫通し、侵入深さ(すなわち、侵入に対する材料の抵抗性)を用いてショアA硬さの値を決定する。機能性基板と担体基板の間に存在する結合剤がエラストマーの場合、10〜90のショアA硬さを有することが非常に望ましく、幾つかの特定の実施の形態では10〜80、幾つかの特定の実施の形態では、10〜60、15〜60、10〜50、20〜50、30〜50など、10〜70の範囲である。
【0065】
粗さ(Ra)は、表面品質を示す干渉指紋が知られている参照表面を含む走査干渉顕微鏡を用いて測定される。サンプルの粗さを決定するため、光源はサンプルと参照表面の両方を照らす。サンプルおよび参照表面からの反射光は、サンプルの粗さに依存する干渉指紋を与えるように再結合され、ナノメートル単位の粗さ値に変換される。未重合の結合剤層の重合によって形成される結合剤と担体基板との間の結合より実質的に低い、例えば、最大で180nm、最大で175nm、最大で170nm、最大で160nm、最大で150nm、最大で140nm、最大で130nm、最大で120nm、または最大で110nmなど、最大で183nmの機能性基板の第1の表面に結合する結合剤の表面粗さが、結合剤と機能性基板との所望の結合にとって特に有利であることが判明した。上記のように、結合剤の重合層の表面粗さは、結合剤の未重合の層の重合ステップの間に用いられる加圧基板の表面の品質によって調節することができる。
【0066】
担体基板にあらかじめ結合した結合剤の重合層への機能性基板の第1の表面の取り付けは、結合剤の表面に機能性基板を設置することによって達成することができる。上記のように、さらに処理することなく、結合剤と機能性基板の第1の表面との結合は、一般にファンデルワールス力によって生じ、十分だが一般に弱く、その後の結合剤と機能性基板との界面における剥離を促進することができる。機能性基板の第1の表面は、結合剤と機能性基板との接着を増大または低減するために、例えば、コーティング層の施用によって化学的に改質して差し支えない。
【0067】
上述のように、結合剤の表面と機能性基板との界面における優先的な剥離は、剥離ステップの終了時において、結合剤層が担体基板の表面に付着したままの状態で残るので、幾つかの特定の実施の形態では非常に望ましい。しかしながら、ひとたび担体基板−機能性基板組立体の処理が完了すると機能性基板がエラストマーから剥離されることから、結合剤(エラストマーなど)と担体基板の間に形成される結合は、結合剤層が担体基板に付着したまま残るように十分に高い剥離強度を有することが必要とされる。定量的に、結合剤の表面と担体基板との結合は、20ミリメートル/分の剥離速度および90°の剥離角で測定して、この機能性を達成するためには、少なくとも0.5キロニュートン/メートルの剥離強度を有することが必要とされる。剥離強度は、引張強度を測定するように構成されたINSTRON(登録商標)機械を使用して測定される。結合剤層と担体基板との界面の所定の剥離速度および角度、すなわち20ミリメートル/分および90°では、引張荷重は測定の間にモニタされ、エネルギーに変換される。
【0068】
結合剤によって結合された機能性基板と担体基板とを備えた組立体が形成されると、機能性基板の第2の表面は、組立体の厚さを有する単一の厚い基板と同様の方法で処理することができる。このような処理としては、限定はしないが、厚みの減少、および、表面の研磨、粗化、膜蒸着、エッチング、放射線への曝露、追加の基板またはフィルムへの結合などの表面の改質、ならびにそれらの上への機能性要素の組み立てなどが挙げられる。さまざまな機能性要素が機能性基板の第2の表面上に形成されうる。これらの機能性要素は、光学的、機械的、電気機器またはそれらの組み合わせまたは混合物を含みうる。光学的要素の非限定的な例としては:ディスプレイ;カラーフィルター;平面導波管;平面導波管要素およびデバイス;レンズ;光増幅器;マルチプレクサー;デマルチプレクサー;などが挙げられる。機械的要素の非限定的な例としては、MEMS;バルブ;などが挙げられる。電気部品の非限定的な例としては:トランジスタ;ダイオード;キャパシタ;レジスタ;誘導子;アンテナ;トランシーバ;伝導体;センサ;光ダイオード;およびそれらの組み合わせまたは混合物;などが挙げられる。機能性要素は、材料の機能層またはその一部でありうる。例えば、機能層は、シリコンの単層(非晶質、多結晶または単結晶)でありうる。これらの機能性要素を機能性基板の第2の表面に組み立てるために必要な工程条件および材料は、当業者にとって既知である。機能性要素を形成するステップの間、組立体は、高温、さまざまな化学溶液、蒸気、さまざまなエネルギーレベルおよび放射線量の放射線、機械的振動、機械的洗浄、ブラッシング、加速および減速などに供されうる。結合剤用に選択される材料、および、結合剤と2つの基板との結合強度は、これらの工程条件に耐え抜けることが非常に望ましい。
【0069】
本発明によれば、機能性基板の担体基板からの剥離は、結合界面への超音波の印加によって補助される。組み立てた機器の用途に応じて、結合剤と機能性基板との間の結合は弱いことが望ましい、主として結合剤と機能性基板との界面に生じる剥離;または、結合剤と担体基板との間の結合は弱いことが望ましい、結合剤層と担体基板との界面に生じる剥離;または結合剤層の両側における結合が取り外しのステップにおいて壊れるのに十分に脆弱である、両方の界面に生じる剥離;を有することが望ましい。上記のように、一般に、機能性基板のその後の取り扱いを容易にし、結合剤の層を有する担体基板の再使用および再利用を可能にするために、結合剤層と機能性基板との界面に生じる剥離を有することがさらに望ましい。
【0070】
超音波エネルギーは、典型的な超音波ユニットを使用して印加して差し支えない。代表的な周波数は20〜400kHzであり、例えば20〜300kHzである。選択肢の1つは超音波洗浄浴である。例えば、装置は、Bransonic and Sonix IV Corporationから市販されている。さらに洗練されたユニットは、超音波顕微鏡に含まれるものに類似している。これらは、印加される超音波エネルギーの周波数、位置、および規模を掃引することが可能である。超音波周波数および出力は、貫通する音響ビームの目的とする特定の深さおよび領域に調節される。このようにして、超音波出力は機能性基板と担体基板との間の結合層に送達される。この装置の例は、Sonix,Inc.社から市販されている。別の選択肢は、歯科で使用する超音波工具である。これらは磁気歪みによってエネルギーを生み出し、超音波エネルギーを変換する局所的液体の流れを提供する。超音波ユニットの供給業者の例として、Bonart Medical Technology社がある。
【0071】
典型的な有利な実施の形態では、組立体は液浴内に配置され、そこに超音波が印加される。液体は超音波を結合界面に伝える。特定の理論に縛られることは意図しないが、超音波の印加によって生じる、液体媒体におけるマイクロキャビテーションの崩壊は、結合界面に破損を生じさせ、基板を分離すると考えられる。液浴のための典型的な液体は脱イオン水であろう。
【0072】
組立体が設置される液体媒体の表面張力は、超音波剥離プロセスの効率に影響を与えることが判明した。典型的には、液浴中の液体媒体の表面張力が低下すると、剥離プロセスはより効率的になる。特定の理論に縛られることは意図しないが、表面張力が低下すると、液体はさらに容易に結合界面を湿らせ、結合界面の亀裂に浸透し、したがって、超音波エネルギーをさらに容易に結合界面内深くまで伝播することができ、完全な破損および分離を生じさせると考えられる。よって、液浴中に、比較的低い表面張力を有する液体を含めることが有利であろう。そのためには、エタノール、アセトン、エタノールとアセトンの混合液、水とエタノールの混合液、水とアセトンの混合液、界面活性剤などを含む水溶液は、その低い表面張力を所与として、純粋な脱イオン水よりも液浴にとって有利でありうる。エタノールは、その製造工程に使用する材料との適合性を所与として、表示装置などの光電変換用途を対象とした機能性基板にとって特に有利な超音波カップリング媒体である。
【0073】
他の実施の形態では、超音波は、液浴以外のカップリング媒体を介して変換器から担体/機能性基板組立体に印加される。このようなカップリング媒体は、超音波を組立体の局所領域に伝達する、導波管または組立体の局所領域に印加される液体であって差し支えない。
【0074】
剥離および分離は、典型的には、結合界面のエッジから開始され、より深い領域に伝搬されることから、超音波は、組立体のエッジ領域に高い強度で印加されることが望ましい。そのため、少なくとも剥離ステップの最初の段階においては、エッジ領域に方向づけられた超音波の印加が望ましい。この超音波の位置調整も、機能性基板が担体基板から剥離される際に移動するように分離工程の間に調整することができる。
【0075】
超音波エネルギーの結合界面のみへの印加は結合界面の破損を生じ、機能性基板および/または担体基板の取り外しを生じうる。別の実施の形態では、超音波は、ローラー剥離、てこ作用による剥離(prying)、エッチングなどの他の剥離技術と組み合わせて印加される。超音波の印加はエッチングおよび他の機械的剥離を同時に行うことができる。他の実施の形態では、超音波の印加は、機械的剥離およびローラー剥離またはエッチングの前に行うこともできる。さらに他の実施の形態では、超音波の印加は、エッチングのステップの後で行うこともできる。これらの実施の形態では、超音波の印加は他の剥離の印加強度を低減することができ、よって、機能性基板および/または担体基板への機械的または化学的損傷が少なくなる。特に、超音波の印加は、機械的曲げまたは剥離によって生じる引張応力を軽減または排除し、剥離の間の化学的エッチングの必要性を軽減または排除し、したがって、剥離ステップの生産量を高めることができる。
【0076】
組立体の温度、および超音波の周波数、方向および強度は、すべて、剥離工程の効率を決定する重要なパラメータである。当業者は、本開示の教示に基づいて、いくつかの試験によって関数パラメータを選択することができる。一般に、温度が高くなると、剥離はより効率的になる傾向にある。加えて、温度は、超音波の印加と組み合わせて用いられる他の剥離技術、特にエッチングに影響を及ぼしうる。
【0077】
剥離ローラーが剥離ステップで用いられる場合、または基板がてこ作用による剥離(prying)に供される場合、剥離半径は少なくとも5cmであることが望ましく、幾つかの特定の実施の形態では少なくとも10cm、幾つかの特定の他の実施の形態では少なくとも20cm、幾つかの特定の他の実施の形態では少なくとも30cmである。剥離半径が大きくなると、剥離の間に基板が被る応力は低下する。
【0078】
幾つかの特定の実施の形態では、剥離ステップの間、基板組立体は、超音波印加の際に垂直に配置される。他の実施の形態では、基板はこの工程の間、実質的に水平に配置される。しかしながら、組立体の残りの部分から機能性基板および/または担体基板を分離する間の引張応力における基板の重力の悪影響を低減するため、組立体は、超音波の印加の間または後に、基板が互いに分離される際に実質的に垂直に配置されることが望ましい。
【0079】
次に、添付の図面を参照することによって、本発明をさらに例証する。
【0080】
図1は、TFTディスプレイを組み立てる本開示に従った1つの実施の形態の方法を概略的に例証している。1Aでは、約400μmの厚さを有するガラス基板でできた担体基板101が提供される。ステップ(1)では、未重合のペルフルオロポリマー103の層を、担体基板101の1つの主要表面に施用し、構造1Bを得る。ステップ(2)では、未重合の層103は熱的に硬化されて、エラストマー105の実質的にガス放出がない層を生じ、これは、担体基板を、後に加える機能性基板に結合させるための結合剤の層としての役割をする。ステップ(2)では、一時的な加圧基板(図示せず)を用いて重合の間に層103を覆い、その後に取り外して、実質的に滑らかな表面または表面粗さが調節された表面を有する重合層105を得る。ステップ(3)では、担体基板101およびエラストマー105の重合層を備えた構造1Cの上面に、機能性基板107を配置して、構造1Dを得る。107は、TFTの組み立てに適した約300μmの厚さを有する薄いガラス基板でありうる。その後のステップ(4)では、基板107の反対側の表面は、TFTおよび他の機能性要素を備えた層109を含む構造1Eを有する組立体が得られるように処理される。その後、ステップ(5)では、エラストマー層105および担体基板101からの機能性基板107の優先的な分離を補助するために、構造1Eに超音波が印加される(構造1F)。この実施の形態では、ステップ(5)の終了時に、エラストマー 層105は担体基板101に結合したままの状態であることに留意されたい。
【0081】
図1のステップ(5)における超音波の印加は、さまざまな方法で実施することができる。図2では、完全組立体1Eが、例えば、容器201内に液体エタノール203を含む液浴に浸漬され、ここで、超音波205が変換器によって容器の壁を通じて多方向から印加される。このような超音波の多方向の印加は、機能性基板107とエラストマー層105の間の結合界面に伝達され、それらの間に優先的な剥離を達成することができる。図3では、完全組立体1Eが、例えば、容器301内に液体エタノール303を含む液浴に浸漬され、ここで、超音波305が図2に示すより集中的な方法で変換器から印加される。このような超音波の方向づけられた印加は、機能性基板107とエラストマー層105との結合界面の目的とする領域に伝達されて、それらの間に優先的な剥離を達成することができる。超音波305は、逐次的な剥離を生じる結合界面の領域全体を走査するように方向づけることもできる。超音波305は、機能性要素109の工程の最適化および適合性に応じて、機能性基板または担体基板のいずれかを通じて方向づけられる。
【0082】
図4は、完全組立体1Eを液浴に配置せずに、超音波補助による剥離工程を概略的に示している。代わりに、超音波405は、担体基板の下から結合界面の目的とする領域に、液体媒体、カップリング剤など導波管の使用を介して、変換器407から方向づけられる。図3の実施の形態と同様に、超音波ビームは、完全な大きい液浴を使わずに、逐次的な剥離を生じる結合界面の領域全体を走査するように方向づけることもできる。
【0083】
図5は、図4の実施の形態がわずかに変化した実施の形態を概略的に示している。図5では、超音波ビームは結合界面のエッジ領域の方に直接的に向けられており、エッジからの潜在的に速い剥離の開始を生じさせる。図4と同様に、カップリング剤503は液体流れでありうる。
【0084】
図6に示すように、超音波の印加の間または後、表面機能層109を有する機能性基板107は、例えば、接着剤または真空を利用して、109の表面に取り付けられた剥離ローラー601の補助によって、エラストマー層105および担体基板101から分離されうる。図に示すように、剥離ローラーの使用によって、基板107と機能性要素の層109は剥離の間に機械的引張応力に晒されるが、これは、最終的なローラーが補助する剥離ステップの間または前に超音波の印加を使用することにより、低減される。
【0085】
図7は、それぞれ、両面接着を介して101および109の表面に一時的に付着し(構造7Aおよび7B)、エラストマー層105から機能性基板107を引き離す(構造7B)、引き剥がしプレート701および703の使用の可能性を示している。結合界面への超音波の印加に起因して、このような引き剥がしのプロセスが促進され、超音波を印加しない場合よりも容易に剥がれる。
【0086】
本発明を、以下の非限定的な例によってさらに例証する。
【実施例】
【0087】
実施例1
脆弱なシリカ無機接着剤を使用した、担体基板に一時的に結合した機能性基板を、積極的な超音波浴に曝露した。微小亀裂および接着層への液体浸透が見られた。これは、超音波への曝露が結合剤と機能性基板との結合を弱め、分離を促進することを実証している。
【0088】
実施例2
エラストマー性の接着を使用した、担体基板に一時的に結合した機能性基板を製造し、その接着強度(表面張力γS=17mJ/m2)を、図1に示す方法に従って、水(表面張力γL=72mJ/m2)超音波浴中で試験し、欠陥はなかった。水と比べて液体の表面張力(γL=23mJ/m2)が低いアセトンについて同一の機器を試験し、剥離が観察された。
【0089】
当業者は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、本発明にさまざまな変更および調整がなされうることを認識するであろう。よって、本発明は、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内に入ることを条件として、本発明の変更および変形にも及ぶことが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面、前記第1の表面と反対側の第2の表面、および前記第1の表面と前記第2の表面の間の厚さT1を有する薄い機能性基板を備えた機器の製造方法であって、
(A)結合剤の層を結合界面に使用することによって、前記機能性基板の第1の表面を、厚さT2を有する担体基板に結合し;
(B)前記機能性基板の第2の表面を処理し;
(C)前記結合界面に超音波を印加することによって、前記担体基板を前記機能性基板から取り外す、
各工程を有してなる方法。
【請求項2】
ステップ(A)に用いる結合剤が、シリコーン接着剤およびペルフルオロエラストマーのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
ステップ(C)において、前記超音波が、20℃において、水より小さい表面張力を有する有機溶媒を含む液浴を通じて前記結合界面に印加されることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
ステップ(C)が、前記結合界面に前記超音波を印加した後、前記機能性基板を前記担体基板から剥離する工程をさらに有してなる、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
ステップ(C)において、前記超音波が、ステップ(B)で形成された機能性基板が損傷を受けないように印加されることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
前記結合剤の層が前記機能性基板よりも前記担体基板に対して強力な接着を有することを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項7】
ステップ(C)の終わりにおいて、前記担体基板が前記結合剤の層に結合した状態で残ることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
ステップ(A)が、
(A01)前記担体基板の表面に、未重合の結合剤の層を施用し;その後に、
(A02)前記未重合の層を重合して前記担体基板に結合した前記結合剤の重合層を得;
(A03)前記結合剤の重合層の上に前記機能性基板の第1の表面を設置して、前記結合剤と前記担体基板の間の結合よりも弱い、前記機能性基板との結合を達成する、
各工程を有してなる、請求項1または2記載の方法。
【請求項9】
ステップ(A)が、
(A11)前記担体基板の表面に第1のコーティングの第1の層を形成し、
(A12)前記第1のコーティングの第1の層と前記機能性基板の第1の表面の間に前記結合剤の層を施用する、
各工程を有してなることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項10】
ステップ(A11)において、前記第1のコーティングの第1の層がシランを含むことを特徴とする請求項9記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−503366(P2013−503366A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526957(P2012−526957)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/046724
【国際公開番号】WO2011/031507
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】