説明

超音波アクチュエータ

【課題】小型化を阻害することなく、優れた駆動性能を安定して得ることが可能な超音波アクチュエータを提供する。
【解決手段】電気信号により伸縮する変位部と、変位部の伸縮により楕円運動を生じる当接部と、を備えた振動体と、当接部に接触し楕円運動により発生する摩擦力により振動体に対して相対移動を生じるガイド部材と、ガイド部材と当接部とを加圧接触させる加圧部材と、を有する超音波アクチュエータにおいて、ガイド部材と加圧部材は、一体化して形成されたものであり、加圧部材の材料は、ヤング率が0.1GPa以上の高分子材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波アクチュエータに関し、特に振動体を被駆動体に加圧接触させて相対移動を発生させる超音波アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な移動装置に超音波アクチュエータを用いることが試みられている。超音波アクチュエータは、通常、電気−機械エネルギー変換素子である圧電素子を備えた振動体と、該振動体に加圧された状態で接触する被駆動体(移動体)等から構成される。超音波アクチュエータは、振動体に駆動信号を入力して振動体を伸縮運動させ、振動体の一部に楕円振動(以下、円振動を含む。)をさせることにより、振動体に加圧接触された被駆動体との間で摩擦力により相対運動を発生させるものである。
【0003】
超音波アクチュエータは、小型、且つ静音性に優れていることから、電子カメラ等の電子機器の駆動装置として利用される様になり、その用途はさらに拡大しつつある。
【0004】
この様な構成の超音波アクチュエータにおける走行機構としては、通常、リニア駆動平行ガイド方式が用いられている。
【0005】
例えば、超音波振動子(振動体)を保持する一対の平行に配設されたガイド(被駆動体)と、一対のガイドの両側面に配設され、収容された超音波振動子とガイドとを所定の圧力で押圧する為に、ガイドを付勢する板ばね等から構成される走行機構(特許文献1参照)。
【0006】
また、振動子(振動体)とガイド軸(被駆動体)とを所定の圧力で押圧する為に、平行に配された一対のガイド軸の一方を付勢するコイルばねを設けた走行機構(特許文献2参照)等が知られている。
【特許文献1】特開2004−104984号公報
【特許文献2】特開2005−57837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されている超音波アクチュエータは、一対の平行なガイドに板ばねを配設し、超音波振動子を挟み込んでいる。
【0008】
この様な構成においては、ガイドの材料が金属(アルミニウム)である為、超音波振動子の振動が加振力となり、ガイドに固有振動等の不要振動が励起される場合がある。金属、とりわけアルミニウムは、損失係数が小さい為、振動し易い。不要振動が励起されると、超音波振動子の楕円振動とガイドの振動との周波数や位相の関係によっては、楕円振動の伝達効率が大きくて低下し、推力の低下や異音の発生を招く恐れがある。
【0009】
また、振動がガイドを介して板ばねや超音波アクチュエータが組み込まれた装置へ伝達され、磨耗や異音の発生を招く恐れがある。
【0010】
ここで、不要振動の駆動性能への影響について図8を用いて説明する。図8(a)は、被駆動体に不要振動が発生していない場合、図8(b)は、振動体の駆動周波数と被駆動体の固有振動周波数が一致した場合、図8(c)は、振動体の駆動周波数より被駆動体の固有振動周波数が低い場合の駆動の様子を示す模式図である。
【0011】
図8(a)の場合、振動体に設けられた当接部は、楕円運動を行うことにより、被駆動体と接触/離脱を繰返しながら、接触時に摩擦力により駆動力を伝達する。
【0012】
しかしながら、被駆動体は、当接部の衝突により加振され、衝突周期(振動体の駆動周波数)と被駆動体の固有振動周波数の関係によっては、被駆動体に固有振動が励起される場合がある。固有振動は、被駆動体の大きさ、形状、材質に基づくものであり、被駆動体の小型化、長尺化、複雑化等に伴い、モード数が増加し、振動形態が複雑化する。
【0013】
被駆動体に固有振動が励起され、振動体の駆動周波数と被駆動体の固有振動周波数が一致した場合、図8(b)に示す様に、被駆動体が固有振動により、当接部の楕円振動に同期して振動(変形)する。この為、当接部が反駆動方向に移動する時にも、被駆動体から離脱できず、被駆動体に駆動力が働きブレーキとなり、出力が低下すると伴に、駆動状態が不安定になる。
【0014】
また、振動体の駆動周波数より被駆動体の固有振動周波数が低い場合、図8(c)に示す様に、両者の振動の周期が異なる為、当接部と被駆動体との接触/離脱が不規則になる。この為、当接部は、毎振動周期では被駆動体に接触できず(空振り)、出力の低下や異音の発生を招く。
【0015】
また、特許文献2に開示されている超音波アクチュエータは、長穴に挿入された可動側ガイド軸をコイルばねにより固定側ガイド軸へ加圧し、振動子を狭持している。
【0016】
この様な構成において、可動側ガイド軸を滑らかに上下運動させる為には、振動子の移動方向に多少のガタが必要である。振動子が楕円振動を行うと、接触しているガイド軸からの反力により駆動力を得て自走を行うが、可動側ガイド軸はガタがある為、起動時には、先ず、そのガタ分に応じた量だけ可動側ガイド軸が移動する。その間、可動側ガイド軸から駆動力が得られず、振動子の推力は半減する為、起動が遅れ、応答性が低下する。また可動側ガイド軸の移動に伴う音の発生を招く恐れもある。
【0017】
また、ガイド軸、コイルばねを保持する為の筐体を必要とし、装置の小型化を阻害するといった問題もある。
【0018】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたもので、小型化を阻害することなく、優れた駆動性能を安定して得ることが可能な超音波アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的は、下記の1乃至3のいずれか1項に記載の発明によって達成される。
【0020】
1.電気信号により伸縮する変位部と、
前記変位部の伸縮により楕円運動を生じる当接部と、を備えた振動体と、
前記当接部に接触し前記楕円運動により発生する摩擦力により前記振動体に対して相対移動を生じるガイド部材と、
前記ガイド部材と前記当接部とを加圧接触させる加圧部材と、
を有する超音波アクチュエータにおいて、
前記ガイド部材と前記加圧部材は、一体化して形成されたものであり、
前記加圧部材の材料は、ヤング率が0.1GPa以上の高分子材料であることを特徴とする超音波アクチュエータ。
【0021】
2.前記加圧部材の剛性は、前記振動体の前記ガイド部材に対する相対移動方向よりも加圧方向において低いことを特徴とする前記1に記載の超音波アクチュエータ。
【0022】
3.前記加圧部材は、前記振動体の前記ガイド部材に対する相対移動方向に垂直な方向への該振動体の揺動を規制する規制部を有することを特徴とする前記1または2に記載の超音波アクチュエータ。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ガイド部材と加圧部材とを一体化して形成し、加圧部材の材料として、ヤング率が0.1GPa以上の高分子材料を用いる様にした。すなわち、加圧部材は、樹脂材料で構成されているので、振動体の振動が加振力となり、ガイド部材に不要振動が起こり始めると、振動(変形)に対する樹脂材の粘弾性によって、振動エネルギーが熱エネルギーに変換されることで、不要振動が減衰される。また、ガイド部材と加圧部材とは、一体的に形成されることで、互いの密着性を確保することが出来るので、大きな制振効果を得ることが出来る。
【0024】
この様にして、ガイド部材の不要振動を制振することで、楕円振動(以下、楕円運動とも記する)の伝達効率が高まり、駆動性能や安定性を高めることができる。また、異音の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下図面に基づいて、本発明に係る超音波アクチュエータの実施の形態を説明する。尚、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明するが、本発明は該実施の形態に限られない。
【0026】
〔実施形態1〕
最初に、実施形態1による超音波アクチュエータ1の構成を図1を用いて説明する。図1(a)は、超音波アクチュエータ1の全体構成の概要を示す正面図、図1(b)は、側面図、図1(c)は、図1(a)においてA−A′方向から見た側面断面図である。
【0027】
超音波アクチュエータ1は、図1(a)に示す様に、振動体10、ガイド部材21,22、及び加圧部材30等を有する。
【0028】
振動体10は、2本のガイド部材21,22の間に配置され、後述の縦振動方向の一方の端部に設けられた当接部105,106でガイド部材21と、また、他方の端部に設けられた当接部104でガイド部材22と当接する。振動体10は、図示しない駆動回路により印加される駆動信号により伸縮運動を行い、当接部105,106と当接部104が互いに逆方向に楕円振動を行うことにより、当接部105,106、及び当接部104にそれぞれ加圧接触されたガイド部材21,22との間で摩擦力により相対移動を行う。
【0029】
ガイド部材21は、図1(a)に示す様に、横方向に一部突出しており、突出部21a、21bを基準に装置へ組込み固定する。振動体10の移動に伴って、ガイド部材22には若干の傾きが生じるが、当接部104は、移動方向に対して当接部105,106の間に位置する為、ガイド部材21に対する振動体10の姿勢は常に変わらず、高精度な位置制御や速度制御を行うことができる。
【0030】
ガイド部材21,22は、断面形状が円形や四角形等の長尺部品であり、材料には、安価で製造し易いステンレス等の金属部品を用いる。表面には、振動体10との磨耗を防ぐ為、焼入れや窒化処理等の表面硬化処理を施す。CrNやTiCN等のセラミックコーティングを行ってもよい。また、アルミナやジルコニア等のセラミックを用いることで、さらに耐磨耗性を上げることができる。
【0031】
ガイド部材21,22には、ガイド部材21,22に振動体10を加圧接触させる加圧部材30が結合されている。加圧部材30の両端には、バネ構成部30aが設けられ、バネ構成部30aの弾性により所定の力量で振動体10を挟み込む。
【0032】
バネ構成部30aは、図1(b)に示す様に、菱形形状に形成されたバネ機構で、中央の屈曲部30a1の変形、及び腕部30a2の曲げ変形により弾性力を発生し、振動体10に所定の力を印加する。この様な構成により、加圧方向(矢印H1,H2方向)のばね定数を小さくすることができるので、製造誤差や、振動体10の位置による振動体10への加圧力のばらつきを低減することができる。また、図1(a)に示す様に、バネ構成部30aの幅寸法W、すなわち、振動体10の移動方向の寸法を十分大きくとり剛性を高めることで、振動体10の移動に伴うガイド部材21,22間の横ズレ等を防止することができる。
【0033】
尚、バネ構成部30aは、2箇所に限らず、3箇所以上設けてもよく、それらが連結されている必要もない。また、菱形形状に限らず、振動体10の移動方向の剛性が高く、加圧方向(矢印H1,H2方向)のばね定数を低くできる構成であればよい。
【0034】
ここで、超音波アクチュエータ1を用いて、例えばレンズブロック60を駆動する場合の振動体10とレンズブロック60との連結方法を図2を用いて説明する。図2は、振動体10とレンズブロック60との結合方法の一例を示し、図1(a)においてB−B′方向から見た平面断面図である。
【0035】
レンズブロック60は、図示しないガイド部材に沿って移動を行い、レンズブロック60に固定された2本の板バネ50により、振動体10の縦方向中央付近を挟み込む。振動体10の移動に伴い、板バネ50を介してレンズブロック60に駆動力が伝達される。板バネ50の力量は、振動体10の振動を阻害しない程度の力量に設定する。板バネ50と振動体10との磨耗を防止する為に、板バネ50と振動体10とをゴム系等の柔らかい接着剤で固定してもよい。
【0036】
次に、振動体10の構成を図3を用いて説明する。図3(a)は、振動体10の構成を示す正面図、図3(b)は、側面図である。
【0037】
振動体10は、図3(a)に示す様に、圧電変位部101、錘部材102,103、及び当接部104,105,106等を有する。
【0038】
圧電変位部101は、本発明における変位部に該当し、図示しない駆動回路からの電力供給により変位し、さらにその変位を加振力として共振し楕円振動を生じる。錘部材102,103は、圧電変位部101の両端に設けられ、共振時における振動振幅を拡大する。当接部105,106、及び当接部104は、それぞれ前述のガイド部材21、22と接触し、摩擦力により楕円振動をガイド部材21、22に伝達する。
【0039】
ここで、圧電変位部101の構成を図4を用いて説明する。図4は、圧電変位部101の内部電極構成を示し、図3(a)においてC−C′方向から見た平面断面図である。
【0040】
圧電変位部101は、PZTなどの圧電特性を示す長方形の圧電セラミックス薄板(以下、圧電薄板とも称する。)と図4(a)に示す内部電極a2,b2、図4(b)に示す内部電極a1,b1とが交互に積層されて構成される。また、内部電極a2,b2、及び内部電極a1,b1は、振動体10の左右に2つに分割されている。
【0041】
振動体10の正面、及び背面には、それぞれ外部電極A1,B1、及び外部電極A2,B2が設けられ、端面に突出した内部電極a1,b1、及び内部電極a2,b2とそれぞれ接続される。また、外部電極A1,B1、及び外部電極A2,B2には、図示しないリード線やFPC(フレキシブルプリント配線板)が接続され、駆動回路と接続される。
【0042】
圧電薄板は、内部電極a1−a2方向、内部電極b1−b2方向に、外部電極A1,A2、及び外部電極B1,B2を介して、互いに同じ方向に分極処理される。
【0043】
外部電極A1−A2間と外部電極B1−B2間に同極性の電圧(例えば、A1=B1=0V、A2=B2=10V)を印加すると全ての圧電薄板が伸び(または、縮み)、全体として伸張(または、収縮)する。また、A1−A2間と外部電極B1−B2間に逆極性の電圧(例えばA1=B2=10V、A2=B1=0V)を印加すると、圧電薄板の左半分は伸び(または、縮み)、右半分は縮み(または、伸び)、全体として圧電部に屈曲変形が生じることになる。
【0044】
図3に戻って、錘部材102,103は、圧電変位部101の積層方向の両端に、エポキシ等の弾性率の比較的高い接着剤により固定され、共振時における振動振幅を拡大する。錘部材102,103の材料は、比重の大きいものが効果的である為、タングステン(比重≒19)やニッケル、銅、鉄等をバインダとしたタングステン合金(比重≒18)、タングステンカーバイト系超硬合金(比重≒15)、タングステン粉末と樹脂を複合化したタングステン樹脂(比重≒10〜13)等を用いる。
【0045】
圧電変位部101は、振動体10より充分大きなブロック単位で積層を行った後、ダイサ等で振動体10の大きさに切り出して製造する。尚、積層工程時に錘部材102,103も同時に積層、接着しておくことで、振動体単位での貼り付け作業を行わなくて済むので、製造工程を大きく簡略化でき、コストを低減させることができる。
【0046】
当接部104,105,106の材料は、磨耗を防止する為、超硬合金やアルミナ、ジルコニア等のセラミックスを用いる。当接部104、及び当接部105,106は、エポキシ等の比較的高弾性率の接着剤を用いてそれぞれ錘部材103,102に固定する。
【0047】
ここで、この様な構成の振動体10に励振される楕円振動について図5を用いて説明する。振動体10は、共振を利用して駆動される。図5は、共振駆動に用いる固有モードによる振動体10の変形の様子を示し、図5(a)は、縦(伸縮)1次振動モード、図5(b)は、屈曲1次振動モードである。
【0048】
縦1次振動モードは、図5(a)に示す様に、振動体10の中央部Pを節として伸縮振動を行い、当接部104乃至106が縦方向(Y方向)に変位する。屈曲1次振動モードは、図6(b)に示す様に、P1,P2の2箇所を節として、1次の曲げ変形を行い、当接部104乃至106の先端が横方向(X方向)に変位する。
【0049】
縦1次振動モードは、外部電極A1−A2間と外部電極B1−B2間に同位相の駆動信号をその共振周波数で印加することで励起できる。屈曲1次振動モードは、外部電極A1−A2間と外部電極B1−B2間に逆位相の駆動信号をその共振周波数で印加することで励起できる。
【0050】
これらの2つのモードを略一致させ、外部電極A1−A2間と外部電極B1−B2間に位相差が90度の駆動信号をその共振周波数で印加することで、両モードが励起され、振動体10の両端部に楕円振動が生成される。外部電極A1−A2間に、外部電極B1−B2間に対して90度位相の進んだ駆動信号を印加すると、当接部104の端面には、反時計周り、当接部105,106の端面には、時計周りに回転する楕円振動が励起される。印加する駆動信号の位相を反転(−90度)すると、各当接点の楕円振動の回転方向が逆になる。
【0051】
この様な構成の超音波アクチュエータ1において、本発明は、振動体10の加振力によりガイド部材21,22に励起される固有振動等の不要振動を効率よく制振するものである。以下にその詳細を説明する。
【0052】
加圧部材30は、図1(a)に示す様に、ガイド部材21,22の略全長にわたって結合しており、損失係数の大きい樹脂材料で構成されている。振動体10の振動が加振力となり、ガイド部材21,22に不要振動が起こり始めると、振動(変形)に対する樹脂材の粘弾性によって、振動エネルギーが熱エネルギーに変換されることで、不要振動が減衰される。
【0053】
加圧部材30の材料には、金属の様に損失係数が小さい(0.01未満)材料は適さず、損失係数が大きい材料が好ましいが、実験では、ゴム等のヤング率が小さい(0.1GPa未満)比較的柔らかい材料は、制振効果が小さかった。ゴムは、一般的には損失係数が大きく、比較的低周波の振動には大きな制振効果を発揮するが、超音波アクチュエータのように数十kHz以上の微小振動には効果が小さい。
【0054】
したがって、加圧部材30の材料には、損失係数0.01以上、及びヤング率0.1GPa以上の樹脂材料が好ましく、良好なばね性を発揮し、衝撃に強いPC(ポリカーボネイト)、POM(ポリアセタール)等の材料を用いる。
【0055】
また、ガイド部材21,22と加圧部材30とは、インサート成型等により一体化して成型されることで、容易に製造が可能であり、互いの密着性を確保できるので、大きな制振効果を発揮することができる。尚、ガイド部材21,22と加圧部材30とはエポキシ等の接着剤で結合してもよい。
【0056】
また、加圧部材30には、図1(c)に示す様に、振動体10の進行方向と垂直な方向への振動体10の揺動を規制する為の、本発明における規制部に該当する側壁30b、30cが一体的に形成されている。
【0057】
この様に、本発明の実施形態1に係る超音波アクチュエータ1においては、ガイド部材21,22と加圧部材30とを一体化して形成し、加圧部材30の材料として、損失係数が0.01以上、およびヤング率が0.1GPa以上の高分子材料を用いる様にした。すなわち、加圧部材30は、損失係数の大きい樹脂材料で構成されているので、振動体10の振動が加振力となり、ガイド部材21,22に不要振動が起こり始めると、振動(変形)に対する樹脂材の粘弾性によって、振動エネルギーが熱エネルギーに変換されることで、不要振動が減衰される。また、ガイド部材21,22と加圧部材30とは、一体的に形成されることで、互いの密着性を確保することが出来るので、大きな制振効果を得ることができる。
【0058】
この様に、ガイド部材21,22の不要振動を制振することで、楕円振動の伝達効率が高まり、駆動性能や安定性を高めることができる。また、異音の発生を防止することができる。さらに、超音波アクチュエータ1が組み込まれた装置への振動の伝達を防止し、装置における異音の発生や磨耗等を防ぐことができる。
【0059】
また、ガイド部材21,22と加圧部材30とを一体加して形成することにより、超音波アクチュエータ1の小型化、及び製造工程を簡略化することができる。また、前述の特許文献2の場合の様な筐体が不要であり、より小型化することができる。
【0060】
また、バネ構成部30aは、加圧方向(矢印H1,H2方向)のばね定数を小さくすることができるので、製造誤差や、振動体10の位置による振動体10への加圧力のばらつきを低減することができる。また、バネ構成部30aの幅寸法W、すなわち、振動体10の移動方向の寸法を十分大きくとり剛性を高めることで、振動体10の移動に伴うガイド部材21,22間の横ズレ等を防止することができる。これにより、起動時の応答性を高めるとともに、振動体10の移動に伴う押圧力の変化を小さくすることができるので、駆動安定性を高めることができる。
【0061】
また、加圧部材30に振動体10の進行方向と垂直な方向への振動体10の揺動を規制する為の側壁30b、30cを設ける様にした。これにより、ガイド部材21,22や振動体10にその機能を持たせる必要がないので、ガイド部材21,22、及び振動体10の当接部104,105,106の形状を簡素化することができる。また、加圧部材30の材料は、樹脂であることから、射出成型により、容易に、且つコストを上げることなく製造することができる。
【0062】
〔実施形態2〕
次に、実施形態2による超音波アクチュエータ1について説明する。尚、その要部構成は、前述した実施形態1による超音波アクチュエータ1と略同様なので詳細な説明は省略し、第1の実施形態と構成の異なる振動体等について説明する。第1の実施形態による超音波アクチュエータ1では、矩形振動体を用いたが、第2の実施形態の場合は、トラス型振動体を用いるものである。
【0063】
最初に、実施形態2による超音波アクチュエータ1の構成を図6を用いて説明する。図6(a)は、超音波アクチュエータ1の全体構成の概要を示す正面図、図6(b)は、側面図、図6(c)は、図6(a)においてA−A′方向から見た側面断面図である。
【0064】
超音波アクチュエータ1は、図6(a)に示す様に、振動体10、ガイド部材21,22、加圧部材30、保持板40、及びローラ45等を有する。
【0065】
振動体10は、図6(a)に示す様に、2つの圧電変位部101、当接部104、及びベース部材108等を備え、圧電変位部101の一端には当接部104が接着剤等により接合されている。一方、圧電変位部101の他端はベース部材108が接着剤等により接合されている。尚、接着剤には、接着強度が高く、剛性の高いエポキシ系接着剤を用いる。
【0066】
2つの圧電変位部101は、当接部104を介して略90度に配置され、くの字型に一体化して形成されている。尚、この様な構成の振動体10は、例えば特開2000−358387号公報に開示されているトラス型振動体に準拠するものであり詳細な説明は省略する。
【0067】
トラス型の振動体10は、その1箇所、すなわち1つの当接部104が楕円振動を行うタイプである為、振動体10と接するガイド部材はガイド部材22のみである。
【0068】
振動体10は、図6(b)に示す様に、ベース部材108を介してその背面に設けられた保持板40に固定される。保持板40には、ガイド部材21が振動体10を加圧保持したときの移動抵抗を低減する為のローラ45、または図示しないベアリング等が設けられている。
【0069】
ガイド部材22が、振動体1の当接部104に接触し、ガイド部材21がローラ45に接触する。尚、ガイド部材21を設けずに、ローラ45が直接加圧部材30を転がる様な構成にしてもよい。
【0070】
〔実施形態3〕
次に、実施形態3による超音波アクチュエータ1について説明する。第1の実施形態、第2の実施形態による超音波アクチュエータ1は、一対の平行に配設されたガイド部材21,22の間に挟持された振動体10が、ガイド部材21,22に沿って直線的に移動する、所謂リニア駆動平行ガイド方式である。一方、第3の実施形態の場合は、円弧状の形状をなすガイド部材21、22に沿って振動体10が揺動(回動)するものである。
【0071】
最初に、実施形態3による超音波アクチュエータ1の構成を図7を用いて説明する。図7は、超音波アクチュエータ1の全体構成の概要を示す正面図である。
【0072】
超音波アクチュエータ1は、図7に示す様に、2つの振動体10、ガイド部材21,22、及び加圧部材30、等を有する。
【0073】
振動体10は、実施形態2で用いたトラス型振動体であり、図7に示す様に、それぞれの振動体10に設けられたベース108が対向して図示しない保持板に結合されている。
【0074】
ガイド部材21,22は、正面視形状が円弧をなし、断面形状が円形や四角形等の長尺部品ある。
【0075】
ガイド部材21,22周縁には、ガイド部材21,22に2つの振動体10をそれぞれ加圧接触させる正面視形状が円形の加圧部材30が結合されている。加圧部材30の左右には、バネ構成部30aが設けられ、バネ構成部30aの矢印H3方向の弾性により所定の力量で振動体10を挟み込む。
【0076】
振動体10は、図示しない駆動回路により印加される駆動信号により伸縮運動を行い、2つの当接部104が同じ方向に楕円振動を行うことにより、2つの当接部104にそれぞれ加圧接触されたガイド部材21,22との間で摩擦力により矢印P、Q方向に揺動(回動)する。尚、振動体10を図示しない筐体に固定し、ガイド部材21,22を揺動(回動)させる様にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施形態1による超音波アクチュエータの全体構成図である。
【図2】実施形態1による振動体とレンズブロックとの結合方法の一例を示す図である。
【図3】実施形態1による振動体の構成を示す図である。
【図4】実施形態1による圧電変位部の内部電極構成を示す図である。
【図5】実施形態1による振動体の固有モードにおける変形の様子を示す図である。
【図6】本発明の実施形態2による超音波アクチュエータの全体構成図である。
【図7】本発明の実施形態3による超音波アクチュエータの全体構成図である。
【図8】楕円振動による駆動の様子を示す模式図である。
【符号の説明】
【0078】
1 超音波アクチュエータ
10 振動体
101 圧電変位部
102,103 錘部材
104,105,106 当接部
108 ベース部材
21,22 ガイド部材
30 加圧部材
40 保持板
45 ローラ
50 板バネ
60 レンズブロック
A1,A2,B1,B2 外部電極
a1,a2,b1,b2 内部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号により伸縮する変位部と、
前記変位部の伸縮により楕円運動を生じる当接部と、を備えた振動体と、
前記当接部に接触し前記楕円運動により発生する摩擦力により前記振動体に対して相対移動を生じるガイド部材と、
前記ガイド部材と前記当接部とを加圧接触させる加圧部材と、
を有する超音波アクチュエータにおいて、
前記ガイド部材と前記加圧部材は、一体化して形成されたものであり、
前記加圧部材の材料は、ヤング率が0.1GPa以上の高分子材料であることを特徴とする超音波アクチュエータ。
【請求項2】
前記加圧部材の剛性は、前記振動体の前記ガイド部材に対する相対移動方向よりも加圧方向において低いことを特徴とする請求項1に記載の超音波アクチュエータ。
【請求項3】
前記加圧部材は、前記振動体の前記ガイド部材に対する相対移動方向に垂直な方向への該振動体の揺動を規制する規制部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の超音波アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−178209(P2008−178209A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−8974(P2007−8974)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】