説明

超音波オーラルケア用品

【課題】 超音波発振部の設計上の自由度を向上できるとともに温度上昇による不快感を未然に防止でき、また、液溜め部や頸部における液状体の供給路中の液体中に空気層が生じることがなく伝達効率を維持できる程度のより少ない液状体を供給することで効率良く口腔清掃することができ、使い勝手が良く、設計上の自由度も大きい超音波オーラルケア用品を提供せんとする。
【解決手段】 頸体12内を介してハンドル体10からヘッド体11の吐出部2に至る液状体の供給路52を設けるとともに、前記ハンドル体10内部に、前記液状体に対して超音波エネルギーを照射するための超音波発振部4を設け、前記液状体を振動伝達媒体として伝わる超音波が供給路5内を反射しつつ吐出部2まで伝達されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を利用して洗浄等のオーラルケアを行う超音波オーラルケア用品に係わり、より詳しくは、液状体を振動伝達媒体として効率よく洗浄等のオーラルケアを行うことができる超音波オーラルケア用品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手動の歯ブラシのヘッド体に圧電変換器を取り付け、共振周波数又はその付近で共振する圧電結晶が、毛の間で超音波を発射して、エネルギーを使用者の口の中で歯みがき剤を介して歯の表面に結合させ、軟らかい歯垢を除去するとともに口内炎の処理及び防止を行うことが可能な超音波歯ブラシは提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、超音波素子をハンドル本体に装備し、ヘッド部までホーンで超音波を伝えるものも提案されている(例えば、特許文献2、3参照)。しかし、このような歯ブラシでは毛束の届かない歯周ポケット内の歯垢を十分に除去することはできなかった。
【0003】
一方、歯ブラシのヘッド体に洗浄水の溜まりやすい空間を構成し、水溜まりに洗浄水を供給するとともにその空間後方に装着する超音波発生器の発生する超音波の作用によって歯垢や汚れ物を剥離、乳化させ除去する超音波歯ブラシが提案されている(例えば、特許文献4参照)。
また、同じく超音波の作用で歯垢等を落とす超音波歯ブラシであって、洗浄中における洗浄水の口からの漏れ出しを防止すべく排水口を設けたものも提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【0004】
これら超音波歯ブラシにおいては、清掃時に口腔内に入れられるヘッド体に超音波発振部が設けられているので、当該超音波発振部を大きくするにも限界があり、超音波の出力アップを図るにも限界があり、また、超音波発振部の温度上昇により不快感を感じる可能性も高い。
【0005】
【特許文献1】特表平7−509151号公報
【特許文献2】特開2004−41684号公報
【特許文献3】特開2004−41691号公報
【特許文献4】特開平9−206130号公報
【特許文献5】特開2001−8736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、超音波発振部の設計上の自由度を向上できるとともに温度上昇による不快感を未然に防止でき、また、液溜め部や頸部における供給路内の液状体中に空気層が生じることがなく伝達効率を維持できる程度のより少ない液状体を供給することで効率良く口腔清掃することができ、使い勝手が良く、設計上の自由度も大きい超音波オーラルケア用品を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前述の課題解決のために、使用時に把持されるハンドル体と、液状体を吐出するための吐出部を有した先端のヘッド体と、これら双方間に介在して前記ヘッド体を口腔内の奥にまで至らしめるための頸体とを備え、前記頸体内を介して前記ハンドル体からヘッド体の吐出部に至る液状体の供給路を設けるとともに、前記ハンドル体内部に、前記液状体に対して超音波エネルギーを照射するための超音波発振部を設け、前記液状体を振動伝達媒体として伝わる超音波が供給路内を吐出部まで伝達されることを特徴とする超音波オーラルケア用品を構成した。
ここに、オーラルケア用品は、たとえば前記の超音波供給部分を有する歯ブラシ、イリゲーター、舌または舌苔清掃具、美白用具、薬剤吸収促進用具等が該当するが、これに限定されるものではない。
また、液状体とは、水等の液体や液状またはジェル状の口腔用組成物などのケア用液であり、たとえば殺菌剤、抗炎症剤、酵素、ビタミン類、収斂剤、抗う蝕剤、漂白剤、ホワイトニング剤、ステイン抑制剤、コーティング剤、研磨剤、歯石制御剤、植物抽出物、香料、洗浄剤、界面活性剤からなる群の1種以上の成分を含有する液体または液状またはジェル状の口腔用組成物を用いることが好ましい。
【0008】
ここで、前記供給路の屈曲部に、屈曲方向に超音波を反射させるための反射板を設けたものが好ましく、前記供給路の少なくとも内壁部分を、金属、硬質樹脂又はガラスより構成したものが好ましい。
【0009】
また、前記超音波発振部より供給路内に延びる棒状の超音波ホーンを設け、該超音波ホーンより超音波エネルギーを照射するものが好ましい。
【0010】
前記供給路は、具体的には、頸体内部に設けた送液路と、ヘッド体において前記送液路に対し交差する方向に延びて前記吐出部を構成する吐出路とより構成したものが好ましい。また、前記頸体は、前記ハンドル体に対して着脱自在に装着するものが好ましい。
【0011】
また、前記吐出部を、ヘッド体に突設され、その突出方向に沿った先端側が開放された液溜め部より構成し、前記液状体の1秒当たりの供給量を、前記液溜め部の内部容積の1/10〜6/5としたものが好ましい。
【0012】
ここで、前記液溜め部の内部容積を0.01〜1.0mLとしたものが好ましく、前記液溜め部の開口面積を3.0〜100mm2としたものが好ましい。
【0013】
前記液溜め部が、前記ヘッド体に設けた筒状の少なくとも先端が弾性部材からなるものが好ましく、この弾性部材の厚みは0.1〜3.0mmとしたものが好ましい。
【0014】
また、前記ヘッド体に、刷掃又はマッサージに供するブラシ材が植設されたブラシ部を設けたものが好ましく、前記ブラシ部の複数のブラシ材で囲まれた内部に前記液溜め部を設けたものや、前記ブラシ部の隣りに前記液溜め部を併設したものが好ましい。
【0015】
更に、前記ヘッド体が、前記液溜め部を備えた分割ヘッドと、前記ブラシ材が植設されるブラシ部を備えた分割ヘッドとを併設し、ブラシ部を備えた分割ヘッドを液溜め部を備えた分割ヘッドに対して前後方向に移動可能に構成したものが好ましい。
【0016】
また、前記ヘッド体に、刷掃又はマッサージに供するブラシ材が植設されたブラシ部を設け、該ブラシ部のブラシ材により前記液溜め部の内壁を構成したものが好ましい。
【0017】
前記供給路には、逆止弁を設けたものが好ましい。
【0018】
また、前記吐出部をヘッド体に突設されたノズル部より構成し、該ノズルから吐出される液状体の勢いを利用して口腔内を清掃するものが好ましい。
【0019】
液状体を供給するための貯液タンクをハンドル体の内部に設けたものが好ましく、また、液状体を洗浄液としたものが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
以上にしてなる本願発明に係る超音波オーラルケア用品によれば、清掃時に口腔内に入れないハンドル体の内部に超音波発振部を設けたので、当該超音波発振部を大きくして超音波の出力アップを図るなどの設計上の自由度が向上するとともに、口腔部に挿入されるヘッド体の温度上昇による不快感を未然に防止でき、更に、ヘッド体やヘッド体及び頸体をハンドル体から分離させて交換できる着脱自在な構造を採用した場合、当該交換部位には超音波発振部が存在しないためコストの大幅な低減が可能である。
本発明の超音波オーラルケア用品は、口腔清掃できるだけでなく、歯牙等の着色汚れや口腔軟組織に対するマッサージや薬剤の吸収促進、舌の清掃、口腔内の殺菌、歯槽骨吸収の抑制・再生をすることもできる。
【0021】
また、前記供給路の屈曲部に、屈曲方向に超音波を反射させるための反射板を設けたので、供給路を屈曲させた様々な形状としても上記反射板を用いて超音波を効率よく伝播させることができる。
【0022】
また、前記供給路の少なくとも内壁部分を、金属、硬質樹脂又はガラスより構成したので、反射時の超音波のエネルギーロスを抑え、効率よく伝播させることができる。
【0023】
また、前記超音波発振部より供給路内に延びる棒状の超音波ホーンを設け、該超音波ホーンより超音波エネルギーを照射するので、気泡が生じ易い供給路基端側において気泡により超音波のエネルギーロスを防止できる。
【0024】
また、前記吐出部を、ヘッド体に突設され、その突出方向に沿った先端側が開放された液溜め部より構成し、前記液状体の1秒当たりの供給量を、前記液溜め部の内部容積の1/10〜6/5としたので、液溜め部に空気層が生じることがなく伝達効率を維持できる程度のより少ない液状体を供給し、これにより該液溜め部の先端開口部より溢れる液状体を振動伝達媒体として歯周ポケット内の歯垢等を効率よく除去でき、使い勝手が良く、貯液タンクの容量も小さいもので十分であり、歯ブラシ内部に装着することも可能となる。
【0025】
また、前記液溜め部の内部容積を0.01〜1.0mLとしたり、前記液溜め部の開口面積を3.0〜100mm2としたので、表面張力により液状体を保持しつつ清掃面積を維持したより効率の良い洗浄等ができる。
【0026】
また、前記弾性部材の厚みを0.1〜3.0mmとしたので、歯周ポケット等に押さえ付けた際に強度が維持でき、且つ狭い部位にも適用できる。
【0027】
また、前記ヘッド体が、前記液溜め部を備えた分割ヘッドと、前記ブラシ材が植設されるブラシ部を備えた分割ヘッドとを併設し、ブラシ部を備えた分割ヘッドを液溜め部を備えた分割ヘッドに対して前後方向に移動可能に構成したので、使用者は部品の疲労に応じて分割ヘッドを別々に交換することも可能となり、また、ブラシ部を備えた分割ヘッドを相対運動させる構造を採用しても互いに独立して運動させることができるので、液溜め部が前記ブラシ部の運動により振動を受けて液放出時に暴れるといった事態も未然に回避でき、狙った部位に対してより確実に液状体を供給することができる。
【0028】
また、前記供給路には、逆止弁を設けたので、液溜め部に徐々に充填される液状体の自重により該液が逆流することが防止され、液状体のより緩慢な供給が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0030】
図1は、本発明に係るの全体構成を示す図であり、図1〜3は第1実施形態、図4、5は第2実施形態、図6は第3実施形態、図7は第4実施形態、図8は第5実施形態、図9は第6実施形態、図10は第7実施形態、図11は第8実施形を示し、図中符号1A〜1Hは超音波オーラルケア用品、2は液溜め部、3はブラシ部、4は超音波発振部、5は供給路をそれぞれ示している。
【0031】
本発明に係る超音波オーラルケア用品は、使用時に把持されるハンドル体10と、液状体を吐出するための吐出部2を有した先端のヘッド体11と、これら双方間に介在して前記ヘッド体11を口腔内の奥にまで至らしめるための頸体12とを備えており、頸体12内を介してハンドル体10からヘッド体11の吐出部2に至る液状体の供給路52を設けるとともに、前記ハンドル体10内部に、前記液状体に対して超音波エネルギーを照射するための超音波発振部4を設け、前記液状体を振動伝達媒体として伝わる超音波が供給路5内を反射しつつ吐出部2まで伝達されることを特徴としている。
【0032】
まず、図1〜図3に基づき本発明の第1実施形態を説明する。
【0033】
本実施形態の超音波オーラルケア用品1Aは、上記吐出部2として突出方向に沿った先端側が開放された液溜め部20が、先端のヘッド体11に突設されており、該液溜め部20より洗浄液である液状体を口腔内に供給し、該液状体を振動伝達媒体として超音波振動により通常のブラッシングでは届かない歯周ポケット内のプラークを除去したり、舌や口腔内粘膜に付着した残渣等を除去するものである。特に、液状体の供給量を、1秒当たり前記液溜め部20の内部容積の1/10〜6/5に設定することで、前記液状体の表面張力の作用により該液状体が常に満たされた状態の液溜め部20を前記歯周ポケットや舌等に押し当て効率よく洗浄することが可能となる。
【0034】
ハンドル体10の内部には、液状体が充填された貯液タンク50が設けられている。該貯液タンク50から頸体12を介して液溜め部20の内部空間層21に連通する送液路52が形成されており、ハンドル体10から吐出部2に至る供給路5は、頸体12の内部に設けられた前記送液路52と、ヘッド体11において前記送液路52に対し交差する方向に延びる液溜め部20の内部空間層21でなる吐出路55とより構成され、この供給路5を通じて内部空間層21に液状体が供給され、開口面から徐々に溢れ出る液状体を介して口腔内の歯周ポケット等に超音波振動を伝達することになる。
【0035】
ハンドル体10の内部に装着される貯液タンク50はチューブ容器で構成され、これによりポンプ51で吸引される液中へのエア混入が未然に防止されている。このようなチューブ容器は、例えば二枚のシート材を対面させるとともに当該シート材の対向する各一端中央部にノズル材を挟持させ、左右側端縁及び当該ノズル材を設けた中央部を含む一端縁を熱溶着して密封することにより他端が開口した袋体を形成した後、該開口より液状体を充填して当該他端縁を熱溶着してなるソフトチューブを用いることができる。液状体は専用の薬剤が用いられ、本例では、貯液タンク50として前記薬剤を充填したカートリッジが交換可能に装着される。尚、前記液状体は、蒸留水や水道水等の水のみからなるものであっても良い。
【0036】
前記送液路52に液状体を供給するための送液ポンプ51が設けられているが、このような液状体を供給する手段は様々な方法を適宜用いることが可能であり、例えば本例では上述したように送液ポンプ51により貯液タンク50から液状体を吸引するものを示しているが、その他、ポンプにより貯液タンクから送り出すものや、貯液タンク内容積をローラー等で縮小させて送り出すもの、圧縮空気を貯液タンク内に入れて送り出すものなども採用できる。
【0037】
上記液溜め部20が突設されるヘッド体11には、口腔内の刷掃又はマッサージに供するブラシ材からなるブラシ部3が設けられており、本例では、液溜め部20の周囲に、複数のフィラメントを密集させた毛束30を複数立設してなるブラシ部3が配設され、当該ブラシ部3が液溜め部20に対して頸体長手方向に沿った前後に往復運動可能に構成されている。尚、ブラシ材は、ナイロン、ポリエステル(例えば、PET、PBT等)、ポリオレフィン(例えば、PE、PP等)などの他に、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エラストマー等が可能である。
【0038】
ヘッド体11は、より具体的にはそれぞれ上下に分割構成されており、上側の分割ヘッド13にブラシ材として毛束30を植設するとともに、下側の分割ヘッド14に前記分割ヘッド13の長孔を貫通して上方に突出する液溜め部20を設けたものである。これら上下の分割ヘッド13、14は、同じく上下に分割構成された分割頸体15、16の先端側にそれぞれ連続的に一体形成されたものであり、分割頸体16の内部に上述の送液路52が設けられ、他方の分割頸体15は、ハンドル体10内に設けられた駆動モータ53の回転運動を前後方向への往復運動に変換出力するギアボックス54の出力軸58に基端側が着脱自在に接続され、分割ヘッド13とともに分割ヘッド14及び分割頸体16に対して前後方向に往復運動する。符号60は前記出力軸58の運動を支持する支持体であり、例えばベアリング、ゴム材、バネ材などからなる軸受け構造を有している。
【0039】
尚、図3に示すように出力軸58を前後往復移動させる駆動モータ53及びギアボックス54を設けるかわりに、分銅80を回転させる駆動モータ57を設け、支持体60で支持された出力軸58を介して分割頸体15及び分割ヘッド13を前後方向に振動させることも好ましい例である。
【0040】
送液路52は、分割頸体16の内部に金属、樹脂又はガラス素材よりなる管部材56を埋設してなり、ハンドル体10に接続される基端側は、圧電素子40の周辺部材に対して着脱自在に接続されている。尚、管部材56を埋設する代わりに上記素材により頸体を形成し、該頸体の内部に送液路52を穿設したものや、その他素材からなる頸体に送液路を穿設し、少なくとも該送液路の内面に金属層を被着したものであっても良い。
【0041】
上記金属素材としては、ステンレス、アルミニウム、真鍮、チタン等を用いることが好ましく、また、上記樹脂素材としては、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂等の硬質樹脂を用いることが好ましい。なお、シリコーンゴムやウレタン樹脂、エラストマーなどの軟質素材を用いることも可能であり、この場合は、送液路52を超音波の吸収による伝搬損失を少なくさせるため伝播方向に沿って真直ぐに形成することでもよいし、送液路の内部形状は、円状のみならず、多角形状や楕円、途中形状や径が変化する、例えばテーパー状のものでも良い。
前記送液路52の内径は、直径1〜10mm、好ましくは2〜6mmに設定される。
【0042】
図2(a)にも示すように、先端側の送液路52と吐出路55との接続部分には屈曲した流路が形成されており、ここに送液路52内を伝播してきた超音波を吐出路55が延びる方向へ反射させるための反射板54が設けられている。この反射板54も、上述と同様の金属、樹脂又はガラス素材よりなるものや、反射面に金属層を蒸着等で被着したもの、金属箔を貼り付けたもの、表面を鏡面に仕上げた耐熱性樹脂等からなるものが好ましい実施例であり、その形状は、平面的なもの以外に、パラボラ形状等の集光機能を有するものも好ましい。このような屈曲流路は吐出路55との接続部分に限らず、適宜な箇所に設けることができ、例えば図2(b)に示すようにハンドル体10との接続部分に屈曲流路が形成される場合はその部分に反射板54を設ければよく、反射の角度も屈曲方向には何ら限定されない。
【0043】
尚、反射板を用いることなくパイプの内面反射を利用して超音波を誘導することも可能であり、例えば図2(c)に示すように、四角形状のパイプなど、内面に平面部を有するパイプを用い、折曲げ角度を調整して超音波を反射させることも可能である。また、図2(d)に示すように、超音波ホーン43を供給路5内に延ばし、送液路52の基端側に発生する気泡により超音波が減衰するエネルギーロスを防止することも好ましい例である。
【0044】
ハンドル体10には、前記圧電素子40に高周波を供給するための超音波発振回路41、及び該回路に電源を供給する蓄電池42または乾電池がそれぞれ内装されており、前記圧電素子40により発生した超音波振動は、供給路5を通じて液溜め部20に充填され且つ該液溜め部20の先端より口腔内に供給される液状体を媒体として、口腔内の歯周ポケット等に伝達され、当該部位の洗浄が為されるのである。
【0045】
液溜め部20内部の底面となるヘッド体11上面には、前記送液路52に連通する給液孔52aが開口しており、該給液孔52aには、液溜め部20に徐々に充填される液状体の自重により該液が逆流することを防止する逆止弁が設けられ、該逆止弁によって液状体のより緩慢な供給も可能とされることが望ましい。尚、本例ではヘッド体上面に開口する給液孔52aから液溜め部20の裏面より液状体を供給しているが、本発明はこれに限らず、液溜め部20の側面から供給してもよい。
【0046】
この液溜め部20は、本例ではシリコーンゴムや熱可塑性エラストマー等より成形される筒状の弾性部材が採用されているが、超音波伝播時の反射の点から金属、樹脂又はガラス素材よりなるものも好ましい。口腔内に直接接触することとなる先端開口面は、緩やかな凸状面に形成して歯周ポケットに密着可能な形状とすることが好ましい実施例である。
【0047】
液溜め部20は、開口面積が3.0〜100mm2、好ましくは3.0〜30mm2、厚みが0.1〜3.0mmに設定され、内部空間層21からなる内部容積は0.01〜1.0mLに設定されている。厚みが0.1mmより小さいと歯周ポケット等に押さえ付けた際に強度が維持できずに開口部が潰れてしまい効率の良い清掃ができなくなる虞があり、3.0mmより大きいと全体が大きくなり狭い部位に届かない等使い勝手が悪くなる虞がある。内部容積については、容積が大きすぎると表面張力により液状体を保持することが困難であり、小さすぎると清掃面積が小さく洗浄効率が低下し、より好ましくは0.01〜0.5mLに設定される。
【0048】
液溜め部20の深さは、即ち当該液溜め部20の突出高さとなるが、深さすぎると突出高さが大きくなって口腔内における洗浄作業に不都合が生じ、浅すぎるとある程度の高さが必要な毛束30との関係で先端開口面が周囲の毛束30の先端高さよりも低くなって当該先端開口面を歯周ポケット等に接触させることが困難となる。
【0049】
また、液溜め部の内径は大きすぎると表面張力により液状体を保持することが困難となる。液溜め部20の他の例としては、縦方向に沿った複数の貫通孔を有するハニカム状の弾性部材からなるものも可能であり、この場合、柱状の内部空間層が複数形成されることとなる。また、内部に複数の連通空間層を有するスポンジ状の弾性部材より液溜め部を構成することも可能である。これらは、先端開口面に小さな開口が多数集合することとなるため、上述の表面張力による液状体の保持力を更に向上させることができ、複数の内部空間層からなる総内部容積は、上記液溜め部20の内部容積と同様、0.01〜1.0mL、より好ましくは0.01〜0.5mLに設定される。
【0050】
流量を正確に送り出すために、送液路52に流量調整のための弁を付加することも有効な手段である。送液ポンプ51による液状体の供給量は、上述したように1秒当たりの供給量が液溜め部20の内部容積の1/10〜6/5となるように液溜め部20の内部容積に応じて効率の良い最適量が設定され、具体的には、前記送液ポンプ51により1〜1200μL/secで供給される。1秒当たりの供給量が内部容積の6/5よりも多いと、口の中に水が溢れ、非効率的で使い勝手が悪くなり、ハンドル体に内装可能な内部容積5〜15mL程度の貯液タンクで一回の洗浄を行うことが困難となり、その逆に1/10よりも少ないと、内部に空間が生じて超音波振動の伝達性が低下し、当該超音波による清掃効率が低下する。
【0051】
ここで、洗浄開始から前記液溜め部20に液状体が充填されるまでの間は超音波洗浄ができないため、当該充填に要する数秒の間は、ポンプ動作を早め、供給量を増やすように駆動制御することが好ましく、このような供給量の切換えスイッチを設けたり供給量の増減を自動制御することが望ましい。
【0052】
以上の第1実施形態ではヘッド体11及び頸体21をそれぞれ分割構成し、ブラシ部を吐出部2とは独立に前後方向に移動させる例を示したが、図4及び図5に示す第2実施形態の超音波オーラルケア用品1Bは、ヘッド体11や頸体12を分割構成することなく、吐出部2と一体的にブラシ部3を含むヘッド体11全体を所定方向に振動させるものであり、図4はハンドル体10の内容に分銅80を前後方向に振動させる駆動モータ57を設け、ヘッド体11を口腔内で前後方向に振動させるものであり、図5は分銅80を横方向に振動させる駆動モータ57を設けてヘッド体11を口腔内で横方向に振動させるものである。
【0053】
液溜め部20は、ヘッド体11の上面に底面が固定されており、例えば合成樹脂材料を用いて一体成形した前記ヘッド体11と頸体12が、同じく合成樹脂材料で成形されたハンドル体10に対して着脱自在に装着されている。尚、ヘッド体11を頸体12に着脱自在に設けたものや、全体を合成樹脂材料で一体成形したものなど、従来から提供されている各種形態を適宜採用することができる。超音波発振部4や供給路5を含むその他の構造については、基本的には上述の第1実施形態と同様であるので、同一構造については同一符号を付してその説明を省略する。
【0054】
図6は、弾性部材等からなる液溜め部20を前記ヘッド体11におけるブラシ部3の隣りに併設した本発明の第3実施形態の超音波オーラルケア用品1Cを示している。図示した状態はブラシ部3が歯毛束先端側に位置しているが、超音波振動による洗浄を行う際には、該ヘッド体11の先端側と基端側を逆に向けて頸体12に装着し、或いは180度回転させ、図で基端側に位置している液溜め部20を先端側に位置を変更させて洗浄することとなる。
【0055】
当該ヘッド体11内部の図示しない送液路は、液溜め部20の底の給液孔から延びてヘッド体11の先端側に開口しており、前記液溜め部20をヘッド体先端側にセットした場合に当該開口が頸体12の送液路に接続される。
このように液溜め部20とブラシ部3を併設したものでは、ブラシ洗浄と超音波洗浄のそれぞれの場合に応じてブラシ部3及び液溜め部20を最適なヘッド体先端位置にセットすることができ、より効率よく口腔洗浄を行うことが可能となる。
【0056】
図7は、ヘッド体11に、刷掃又はマッサージに供するブラシ材(本例では毛束30)が植設されたブラシ部3を設け、該ブラシ部のブラシ材により前記液溜め部20Aからなる吐出部2の内壁を構成した本発明の第4実施形態の超音波オーラルケア用品1Dを示している。より詳しくは、前記ブラシ部3において複数の毛束30をリング状に密に整列させ、これら複数の毛束30、・・・で内壁22が構成されている。ブラシ部3の少なくとも当該内壁22を構成する各毛束30は、強い横弾性力を有し且つ互いに密に植毛されており、これにより別途弾性部材を用いることなく、液状体を漏らさず充填できる内部空間層21Aの吐出路55が形成されており、コスト上昇が抑制されている。
【0057】
図8は、ブラシ部3として液溜め部20の周囲にマッサージ用のブラシ材を植設した本発明の第5実施形態の超音波オーラルケア用品1Eを示している。このようなブラシ材は、ナイロン、ポリエステル(例えば、PET、PBT等)、ポリオレフィン(例えばPE、PP等)などの他に、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エラストマー等が可能であり、その他、上述の管部材56を構成する樹脂素材又はそれと金属素材との組み合わせ等からなるブラシ材を用いることもできる。その他の構造は、基本的には上述の第1実施形態と同様であるので、同一構造については同一符号を付してその説明を省略する。
【0058】
以上の各実施形態におけるブラシ部3は、固定或いは前後移動するものであるが、その他、例えば毛束が立設される前記ブラシ部3をヘッド体本体とは別体構成された植毛台に設け、該植毛台を回転させる機構を設けることも好ましい実施例である。また、刷掃用としては、上述のごとく歯ブラシとして機能するものの他、歯間ブラシとして機能するブラシ部としてもよい。また、ブラシ部3を省略し、水溜め部20のみ設けたものも好ましい実施例である。
【0059】
図9は、前記吐出部55をヘッド体11に突設されたノズル部23より構成し、該ノズル23から吐出される液状体の勢いを利用して口腔内を清掃する水流洗浄器として使用できる本発明の第6実施形態の超音波オーラルケア用品1Fを示している。
【0060】
ノズル先端の吐出口23aは、図9(b)(c)に示すように丸穴のほかに楕円や矩形その他の形状でもよく、また吐出口の数、方向も一箇所一方向とは限らず複数設けてもよい。その他の構造については基本的には上述の第1実施形態と同様であり、ノズルより吐出される洗浄溶液はその勢いにより口腔内を清掃するとともに超音波振動により勢いだけでは取れにくい汚れも洗浄可能に構成されているのであるが、その吐出量は第1実施形態の水溜め部20の場合と異なり多くなるであろう。
【0061】
ノズル部23は第5実施形態のマッサージ用ブラシと同様のシリコーンゴム、ウレタンゴム、エラストマー等も可能であり、その他、図9(d)に示すように、比較的硬い金属素材等からなる基端部23bと比較的柔らかい樹脂素材又は上記マッサージ用ブラシと同様の素材からなる先端部23cとでノズル部23を構成することが好ましい実施例である。
【0062】
図10は、ヘッド体11の中央部に水溜め部20を設けるとともに、その周囲に上記第6実施形態と同様のノズル部23を複数設け、舌ブラシとして機能し得る本発明の第7実施形態の超音波オーラルケア用品1Gを示しており、また、図11は、貯液タンク50や送液ポンプ51、駆動回路41等をハンドル体10の内容に設ける代わりに、別体の外部装置8としてこれらを構成し、当該外部装置8の貯液タンク50より別途給液管59をハンドル体10の送液路52に接続して液状体を供給する本発明の第8実施形態の超音波オーラルケア用品1Hを示している。図11ではヘッド体11にノズル部23を設けた水流洗浄器とした例を示しているが、これに限らず上述の各実施形態と同様、ブラシ材を植設したもの等様々なものが採用できる。
【0063】
以上の実施形態ではヘッド体11及び頸体12がハンドル体10に対して着脱自在に装着され、ヘッド体11と頸体12とは一体形成された例について説明したが、本発明はこのような構造に何ら限定されず、頸体12とハンドル体10が一体的に成形されたものや、ヘッド体11が頸体12の先端部に対して着脱自在に装着されたものも勿論採用できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】(a)は本発明の第1実施形態に係る超音波オーラルケア用品の内部構成を示す概略図、(b)はヘッド体を示す部分斜視図。
【図2】(a)〜(d)は、それぞれ供給路中における超音波の伝播形態を説明するための説明図。
【図3】出力軸を介して分割ヘッドを前後方向に振動させる変形例を示す部分断面図。
【図4】ヘッド体を口腔内で前後方向に振動させる本発明の第2実施形態を示す断面図。
【図5】ヘッド体を口腔内で横方向に振動させる本発明の第2実施形態を示す断面図。
【図6】液溜め部をブラシ部の隣りに併設した本発明の第3実施形態を示す部分斜視図。
【図7】ブラシ部のブラシ材により吐出部の内壁を構成した本発明の第4実施形態を示す部分斜視図。
【図8】液溜め部の周囲にマッサージ用のブラシ材を植設した本発明の第5実施形態を示す部分平面図。
【図9】(a)はヘッド体に突設されたノズル部より吐出部を構成した本発明の第6実施形態を示す部分断面図、(b)及び(c)は部分平面図、(d)はノズル部を示す説明図。
【図10】(a)及び(b)はヘッド体中央部の水溜め部周囲にノズル部を複数設けた本発明の第7実施形態を示す説明図。
【図11】外部装置を構成して液状体を供給する本発明の第8実施形態を示す説明図。
【符号の説明】
【0065】
1A〜1H 超音波オーラルケア用品
2 吐出部
3 ブラシ部
4 超音波発振部
5 供給路
8 外部装置
10 ハンドル体
11 ヘッド体
12 頸体
13、14 分割ヘッド
15、16 分割頸体
20、20A 液溜め部
21、21A 空間層
22 内壁
23 ノズル部
23a 吐出口
23b 基端部
23c 先端部
30 毛束
40 圧電素子
41 超音波発振回路
42 蓄電池
43 超音波ホーン
50 貯液タンク
51 送液ポンプ
52 送液路
52a 給液孔
53 駆動モータ
54 反射板
55 吐出路
56 管部材
57 駆動モータ
58 出力軸
59 給液管
60 支持体
80 分銅


【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用時に把持されるハンドル体と、液状体を吐出するための吐出部を有した先端のヘッド体と、これら双方間に介在して前記ヘッド体を口腔内の奥にまで至らしめるための頸体とを備え、前記頸体内を介して前記ハンドル体からヘッド体の吐出部に至る液状体の供給路を設けるとともに、前記ハンドル体内部に、前記液状体に対して超音波エネルギーを照射するための超音波発振部を設け、前記液状体を振動伝達媒体として伝わる超音波が供給路内を吐出部まで伝達されることを特徴とする超音波オーラルケア用品。
【請求項2】
前記供給路の屈曲部に、屈曲方向に超音波を反射させるための反射板を設けてなる請求項1記載の超音波オーラルケア用品。
【請求項3】
前記供給路の少なくとも内壁部分を、金属、硬質樹脂又はガラスより構成してなる請求項1又は2記載の超音波オーラルケア用品。
【請求項4】
前記超音波発振部より供給路内に延びる棒状の超音波ホーンを設け、該超音波ホーンより超音波エネルギーを照射してなる請求項1〜3の何れか1項に記載の超音波オーラルケア用品。
【請求項5】
前記供給路を、頸体内部に設けた送液路と、ヘッド体において前記送液路に対し交差する方向に延びて前記吐出部を構成する吐出路とより構成してなる請求項1〜4の何れか1項に記載の超音波オーラルケア用品。
【請求項6】
前記頸体を、前記ハンドル体に対して着脱自在に装着してなる請求項1〜5の何れか1項に記載の超音波オーラルケア用品。
【請求項7】
前記吐出部を、ヘッド体に突設され、その突出方向に沿った先端側が開放された液溜め部より構成し、前記液状体の1秒当たりの供給量を、前記液溜め部の内部容積の1/10〜6/5とした請求項1〜6の何れか1項に記載の超音波オーラルケア用品。
【請求項8】
前記液溜め部の内部容積を0.01〜1.0mLとしてなる請求項7記載の超音波オーラルケア用品。
【請求項9】
前記液溜め部の開口面積を3.0〜100mm2としてなる請求項7又は8記載の超音波オーラルケア用品。
【請求項10】
前記液溜め部が、前記ヘッド体に設けた筒状の少なくとも先端が弾性部材からなる請求項7〜9の何れか1項に記載の超音波オーラルケア用品。
【請求項11】
前記弾性部材の厚みを0.1〜3.0mmとしてなる請求項10記載の超音波オーラルケア用品。
【請求項12】
前記ヘッド体に、刷掃又はマッサージに供するブラシ材が植設されたブラシ部を設けてなる請求項7〜11の何れか1項に記載の超音波オーラルケア用品。
【請求項13】
前記ブラシ部の複数のブラシ材で囲まれた内部に前記液溜め部を設けてなる請求項12記載の超音波オーラルケア用品。
【請求項14】
前記ブラシ部の隣りに前記液溜め部を併設してなる請求項12記載の超音波オーラルケア用品。
【請求項15】
前記ヘッド体が、前記液溜め部を備えた分割ヘッドと、前記ブラシ材が植設されるブラシ部を備えた分割ヘッドとを併設し、ブラシ部を備えた分割ヘッドを液溜め部を備えた分割ヘッドに対して前後方向に移動可能に構成してなる請求項12〜14の何れか1項に記載の超音波オーラルケア用品。
【請求項16】
前記ヘッド体に、刷掃又はマッサージに供するブラシ材が植設されたブラシ部を設け、該ブラシ部のブラシ材により前記液溜め部の内壁を構成してなる請求項7〜9の何れか1項に記載の超音波オーラルケア用品。
【請求項17】
前記供給路に逆止弁を設けてなる請求項7〜16の何れか1項に記載の超音波オーラルケア用品。
【請求項18】
前記吐出部をヘッド体に突設されたノズル部より構成し、該ノズルから吐出される液状体の勢いを利用して口腔内を清掃できる請求項1〜6の何れか1項に記載の超音波オーラルケア用品。
【請求項19】
液状体を供給するための貯液タンクをハンドル体の内部に設けてなる請求項1〜18の何れか1項に記載の超音波オーラルケア用品。
【請求項20】
前記液状体が洗浄液である請求項1〜19の何れか1項に記載の超音波オーラルケア用品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−6570(P2006−6570A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186958(P2004−186958)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000106324)サンスター株式会社 (200)
【Fターム(参考)】