説明

超音波センサおよびこれを用いた超音波流量計

【課題】超音波センサの残響を抑制すること。
【解決手段】超音波センサ1は、ケース2と、ケース2の底部内側に設けられた圧電体3と、ケース2の底部外側に設けられた整合層4とケース2を封止する端子板7と、端子板7に配置された絶縁部11と、絶縁部11にて支持された第一の電極端子10と、第一の電極端子10と圧電体3との間に配置された導電体13と、端子板7に取り付けられた第二の電極端子15とを備え、第一の電極端子10を樹脂絶縁部11にて保持する構成とした。これにより、樹脂絶縁部11が制振作用部として機能するため、圧電体3から導電ゴム14を介して第一の電極端子10に伝達される残響を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波流量計等に用いる超音波センサの残響抑制に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の超音波センサとして、図6のようなものがある。
【0003】
図6において、超音波センサ101のケース102は有底筒状に形成されており、その底部内側には圧電体103が接着されており、底部外側には整合層104が接着されている。圧電体103の底部側の面に第一の電極105が形成されており、天部側の面には第二の電極106が形成されている。圧電体103は、これら第一の電極105と第二の電極106間に印加される振動電圧により超音波を発生する。また、逆に、圧電体103が超音波を受信したときはこれら第一の電極105と第二の電極106間に電圧を発生するものである。
【0004】
また、図示されるとおり、有底筒状のケース102の開放端にはケース102の筒内部を封止するよう端子板107が設けられており、ケース102の縁部108にて溶接等で封止されている。端子板107上に設けられた接続部近傍109には、第一の電極端子110が配置されており、端子板107に設けられたガラス絶縁部111にて保持されている。第一の電極端子110の平面部112と圧電体103との間には導電体113を有する導電ゴム114が配置されている。第一の電極端子110は導電ゴム114の導電体113を介して、圧電体103の第一の電極105と電気的に接続されている。端子板107には第二の電極端子115がつけられており、この第二の電極端子115は端子板107、ケース102を介して、圧電体103の第二の電極106と電気的に接続されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−15264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の構成は、圧電体103において発生した振動が導電ゴム114を介して、直接、第一の電極端子110に伝達される構造であるため、第一の電極端子110の保持接続の状態により、残響が形成され易いという課題を有していた。
【0007】
また、このような残響が発生すると、超音波伝搬時間差を用いて流量を計測する超音波流量計において、伝播時間の計測精度が悪くなり、結果として流量計測精度の低下を来たすものであった。
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、残響の少ない超音波センサを実現するとともに、計測精度の良い超音波流量計を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従来の課題を解決するために、本発明の超音波センサは、有底筒状のケースと、ケースの底部内側に設けられた圧電体と、ケースの底部外側に設けられた整合層とケースを封止する端子板と、端子板に配置された絶縁部と、絶縁部にて支持された第一の電極端子と、第一の電極端子と圧電体との間に配置された導電体と、端子板に取り付けられた第二の電
極端子と、を備えたものである。そして、特に、第一の電極端子に接した制振作用部を有するように構成したことを特徴とすることで、第一電極端子に接した制振作用部が圧電体の残響を抑制し、残響を少なくすることが実現できるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の超音波センサは、第一電極端子に接した制振作用部が圧電体の残響を抑制するため、残響を少なくするとともに、計測精度の良い超音波流量計を提供することが実現できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における超音波流量計を示す概略構成図
【図2】本発明の実施の形態1における超音波センサの断面図
【図3】本発明の実施の形態2における超音波センサの部分断面図
【図4】本発明の実施の形態3における超音波センサの部分断面図
【図5】本発明の実施の形態4における超音波センサの部分断面図
【図6】従来の超音波センサの断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の発明は、有底筒状のケースと、ケースの底部内側に設けられた圧電体と、底部外側に設けられた整合層とケースを封止する端子板と、端子板に配置された絶縁部と、絶縁部にて支持された第一の電極端子と、第一の電極端子と圧電体との間に配置された導電体と、端子板に取り付けられた第二の電極端子と、を備えたものである。そして、特に、第一の電極端子に接した制振作用部を有するように構成したことを特徴とすることで、圧電体に直接影響しないで残響が抑制できるため、圧電体構成と制振作用部の分離が可能となるものである。
【0013】
第2の発明は、特に第1の発明において制振作用部を第一の電極端子の端子板接続部近傍に設けたもので、超音波センサ本体に近い部分での残響抑制対策ができるため、リード線等以降の構成に対する制限を受けることがない。
【0014】
第3の発明は、特に第2の発明において制振作用部を第一の電極端子の端子板接続部に塗布された制振部材にて構成したもので、端子板接続部に制振部材を塗布するだけで残響を抑制できるため、簡便に実施できるものである。
【0015】
第4の発明は、特に第2の発明において制振作用部として樹脂絶縁部にて構成したもので、絶縁部が制振作用部を兼ねるため、特別な部材を使用することなく残響を抑制できるものである。
【0016】
第5の発明は、特に第1の発明において制振作用部を第一の電極端子のリード線接続部にて構成したもので、超音波センサ本体に関係なく残響抑制対策ができるため、超音波センサの製造が容易に行えるものである。
【0017】
第6の発明は、特に第5の発明において制振作用部として、第一の電極端子とリード線とを一体接合して構成したものであり、リード線接合部が残響抑制効果も兼ねるため、特別な部材を使用することなく残響を抑制することができるものである。
【0018】
第7の発明は、特に第5の発明において制振作用部として、第一の電極端子とリード線とを半田づけすることにより構成したものであり、半田付けという通常の接続手段で残響抑制を実現できるため、低コストで残響を抑制することができるものである。
【0019】
第8の発明は、有底筒状のケースと、ケースの底部内側に設けられた圧電体と、底部外側に設けられた整合層と、ケースを封止する端子板と、端子板に配置された絶縁部と、絶縁部にて支持された第一の電極端子と、第一の電極端子と圧電体との間に配置された導電体と、端子板に取り付けられた第二の電極端子とを備えている。そして、第一の電極端子は制振作用部を有するように構成したことを特徴とするもので、圧電体の第一の電極端子自体が残響抑制効果も兼ねるため、余分な部材を必要とせず、残響抑制が実現できるものである。
【0020】
第9の発明は、特に第8の発明において制振作用部として、第一の電極端子を細い形状にて形成するもので、第1の電極端子をより細くすることができ、少ない材料で残響抑制が実現できるものである。
【0021】
第10の発明は、流路を流れる流体の流量を測定する流量測定部と、この流量測定部に設けられた第1から第9の発明のいずれか1つに記載の一対の超音波センサと、この超音波センサ間の超音波伝搬時間を計測する計測回路と、この計測回路からの信号に基づいて流量を求める流量演算回路を備えた超音波流量計である。そして、残響の少ない超音波センサの使用により、伝搬時間を正確に測定できるため、流量測定精度のよい超音波流量計を実現できるものである。
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0023】
(実施の形態1)
図1において、流路31はLPガスや天然ガスなどの流体を流すものであり、流量測定部32はこの流路31を流れる流体の流量を測定するものであり、超音波センサ33、34は流路31の上流側と下流側に対向して配置され超音波を送受信するものである。計測回路35は超音波センサ33、34間の超音波伝搬時間を計測する。演算回路36は計測回路35からの信号に基づいて流速および/または流量を求める。
【0024】
以上のように構成された流量測定部32での超音波流量計の動作、作用について説明する。超音波センサ33と超音波センサ34の中心を結ぶ距離をLとし、この直線と流れの方向である流路31の長手方向となす角度をθとする。また音速をC、流路31内での流体の流速をVとする。流量測定部32の上流側に配置された超音波センサ33から送信された超音波は流路31を斜めに横断し、下流側に配置された超音波センサ34で受信する。
【0025】
このときの伝搬時間t1は、
t1=L/(C+Vcosθ)
で示される。
【0026】
次に超音波センサ34から超音波を送信して超音波センサ33で受信する。
【0027】
このときの伝搬時間t2は、
t2=L/(C−Vcosθ)
で示される。
【0028】
そして、t1とt2の式から音速Cを消去すると、
V=L/(2cosθ(1/t1−1/t2))
の式が得られる。
【0029】
Lとθが既知なら、計測回路35にてt1とt2を測定することにより流速Vが求められる。
【0030】
この流速Vを平均流速に換算する係数をkとし、流路断面積をSとすると、流量Qは、下記の式により求められる。
【0031】
Q=kVS
以上の演算処理が演算回路36により実施される。
【0032】
次に、以上のような動作原理で流量計測を行う超音波流量計に用いる超音波センサ1について図2を用いて説明する。
【0033】
図2は本発明の第1の実施形態における超音波センサ1全体の断面図を示すものである。
【0034】
ケース2は有底筒状に形成されており、その底部内側には圧電体3が接着されており、底部外側には整合層4が接着されている。圧電体3の天部側には第一の電極5が形成されており、底部側には第二の電極6が形成されている。圧電体3は、これら第一の電極5と第二の電極6間に印加される振動電圧により超音波を発生する。また、圧電体3が超音波を受信したときはこれら第一の電極5と第二の電極6間に電圧を発生するものである。ケース2の天部側にはケース2の内部を封止する端子板7があり、ケース2の縁部8にて溶接等で封止されている。端子板7の接続部近傍9には、第一の電極端子10が配置されており、端子板7に設けられた樹脂絶縁部11にて保持されている。第一の電極端子10の平面部12と圧電体3との間には導電体13を有する導電ゴム14が配置されている。また、第一の電極端子10は導電ゴム14の導電体13を介して、圧電体3の第一の電極5と電気的に接続されている。端子板7には第二の電極端子15がつけられており、この第二の電極端子15は端子板7、ケース2を介して、圧電体3の第二の電極6と電気的に接続されている。
【0035】
このような構成において、送信側の超音波センサに加えたパルス状の印加電圧により超音波が送信されると、受信側センサの圧電体3がこの超音波振動を受信し、第一の電極端子10、および第二の電極端子15より受信電圧振動として取り出される。
【0036】
本実施例の場合、端子板7の中央部に配置されている第一の電極端子10は樹脂絶縁部11にて保持されているため、この樹脂が制振作用を発揮して圧電体3の不要な残響振動が吸収される。
【0037】
このように、第一の電極端子10を樹脂絶縁部11で保持することにより、残響が抑制され、精度よく伝搬時間を計測することができる。
【0038】
(実施の形態2)
本発明の第2の実施の形態における超音波センサ1について図3を用いて説明する。上記以外の構成は実施の形態1と同じなので省略する。
【0039】
図3は、超音波センサ1の第一の電極端子10近傍について示す図である。
【0040】
この場合、端子板7の中心近傍に配置された第一の電極端子10は、端子板7に設けられたガラス絶縁部16にて保持されている。また、第一の電極端子10のガラス絶縁部16近傍には、樹脂17が塗布されている。
【0041】
本実施例の場合、第一の電極端子10は周囲が硬いガラス絶縁部16にて支持されているため、圧電体3の残響が伝搬されるが、ガラス絶縁部16の外部に樹脂17が塗布されているため、この樹脂が制振作用を発揮して圧電体3の不要な残響振動が吸収される。
【0042】
このように、第一の電極端子10の近傍に樹脂17を塗布することにより、より残響が抑制され、精度よく伝搬時間を計測することができる。
【0043】
(実施の形態3)
本発明の第3の実施の形態における超音波センサ1について図4を用いて説明する。上記以外の構成は実施の形態1と同じなので、省略している。
【0044】
図4は、超音波センサ1の第一の電極端子10近傍について示す図である。
【0045】
この場合、端子板7の中心近傍に配置された第一の電極端子10は、端子板7に設けられたガラス絶縁部16にて保持されている。また、第一の電極端子10のリード線接続部18は、リード線19とともに端子金具20の内部で半田部21により、接続保持されている。
【0046】
本実施例の場合、第一の電極端子10のリード線接続部18の周囲が、リード線19とともに端子金具20の内部で半田部21により、接続保持されており、全体として圧電体3の受信周波数により共振し難い状態になっているため、この構造が制振作用を発揮して圧電体3の不要な残響振動が抑制される。
【0047】
このように、第一の電極端子10のリード線接続部18が、リード線19とともに端子金具20の内部で半田部21により、接続保持され、全体として圧電体3の受信周波数により共振し難い状態になっている。この構成により、残響が抑制され、精度よく伝搬時間を計測することができる。
【0048】
(実施の形態4)
本発明の第2の実施の形態における超音波センサ1について図5を用いて説明する。上記以外の構成は実施の形態1と同じなので、省略する。
【0049】
図5は、超音波センサ1の第一の電極端子10近傍について示す図である。
【0050】
この場合、第一の電極端子10は、実施の形態1等に比べて、その直径dが細く形成されている。本実施例の場合、第一の電極端子10の直径dを細く形成しており、その細さは圧電体3の受信周波数により共振し難い状態になっているため、この第一の電極端子自体が制振作用を発揮して圧電体3の不要な残響振動が抑制される。
【0051】
このように、第一の電極端子10の直径dを細く形成することにより、圧電体3の受信周波数により共振し難い状態になっているため、残響が抑制され、精度よく伝搬時間を計測することができる。
【0052】
なお、本実施例では、第一の電極端子の直径を細くした例を示したが、圧電体3の受信周波数により共振し難い状態を形成する方法として、曲線状に形成することや、柔らかい素材で形成することも可能である。
【0053】
以上、第1〜第4の実施の形態において、それぞれ個別に残響抑制手段を列挙したが、これらを組み合わせて使用することにより、残響抑制効果がより有効に発揮されるものであることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上のように、本発明にかかる超音波センサは、残響の少ない超音波センサとして各種用途に利用可能である。とりわけ、この超音波センサを用いた超音波流量計は、良好な精度を実現できるのものとして有用である。
【符号の説明】
【0055】
1 超音波センサ
2 ケース
3 圧電体
4 整合層
5 第一の電極
6 第二の電極
7 端子板
8 縁部
9 接続部近傍
10 第一の電極端子
11 樹脂絶縁部
12 平面部
13 導電体
14 導電ゴム
15 第二の電極端子
16 ガラス絶縁部
17 樹脂
18 リード線接続部
19 リード線
20 端子金具
21 半田部
31 流路
32 流量測定部
33 超音波センサ
34 超音波センサ
35 計測回路
36 演算回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状のケースと、前記ケースの底部内側に設けられた圧電体と、前記ケースの底部外側に設けられた整合層と前記ケースを封止する端子板と、前記端子板に配置された絶縁部と、前記絶縁部にて支持された第一の電極端子と、前記第一の電極端子と圧電体との間に配置された導電体と、前記端子板に取り付けられた第二の電極端子とを備え、前記第一の電極端子に接した制振作用部を有するように構成された超音波センサ。
【請求項2】
前記制振作用部は前記第一の電極端子の端子板接続部近傍に設けられた、請求項1に記載の超音波センサ。
【請求項3】
前記制振作用部は前記絶縁部を樹脂にて構成した、請求項2に記載の超音波センサ。
【請求項4】
前記制振作用部は前記第一の電極端子の前記端子板接続部に塗布された制振部材にて構成した、請求項2に記載の超音波センサ。
【請求項5】
前記制振作用部は前記第一の電極端子のリード線接続部に設けられた、請求項1に記載の超音波センサ。
【請求項6】
前記制振作用部は前記第一の電極端子とリード線とを一体接合して構成した、請求項5に記載の超音波センサ。
【請求項7】
前記制振作用部は前記第一の電極端子とリード線とを半田づけして構成した、請求項5に記載の超音波センサ。
【請求項8】
有底筒状のケースと、前記ケースの底部内側に設けられた圧電体と、前記底部外側に設けられた整合層と前記ケースを封止する端子板と、前記端子板に配置された絶縁部と、前記絶縁部にて支持された第一の電極端子と、前記第一の電極端子と圧電体との間に配置された導電体と、前記端子板に取り付けられた第二の電極端子とを備え、前記第一の電極端子は制振作用部を有するように構成された超音波センサ。
【請求項9】
前記制振作用部は前記第一の電極端子が細い形状にて形成された、請求項8に記載の超音波センサ。
【請求項10】
流路を流れる流体の流量を測定する流量測定部と、この流量測定部に設けられた請求項1から9のいずれか1項に記載の少なくとも一対の超音波送受波器と、この超音波送受波器間の超音波伝搬時間を計測する計測回路と、この計測回路からの信号に基づいて流量を求める流量演算回路を備えた超音波流量計。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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