説明

超音波センサ

【課題】ケーブルを容易に挟持させることができるとともにケーブルが傷むのを防ぐことができる張力止め部を備えた超音波センサを提供する。
【解決手段】超音波を送波又は受波若しくは送受波する超音波振動子を有する超音波素子1と、超音波を通過させる開口20aを有するとともに超音波素子1を収納するボディ2及びカバー3から成る筐体4と、カバー3と一体に形成されて外部から引き回されるケーブルCをカバー3との間で挟持して張力止めする張力止め部31とを備え、張力止め部31は、一端部がカバー3と一体に形成されるとともにカバー3から所定の距離だけ離れた位置とカバー3との間でケーブルCを挟持する位置との間で撓み自在な主片31aと、主片31aの他端部に設けられて人の手の指で摘むための摘み部31cとから成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波の送波又は受波若しくは送受波に用いられる超音波センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば超音波を監視空間内に放射しておき、監視空間内に存在する物体の移動に伴ってドップラー効果として生じる反射波の周波数偏移を検出することで物体の移動を検知するドップラー式の移動体検出装置に用いられる超音波センサが知られている。一般的に、このような移動体検出装置には、超音波を送波する送波用の超音波センサ、超音波を受波する受波用の超音波センサ、送波部及び受波部を制御するECU(Electronic Control Unit)を一つの筐体に一体に形成するもの、若しくはこれらを別々の筐体で構成して各部をリード線等で接続するものがある。後者の場合には、輸送時や装置を設置する際の組立作業時において各超音波センサのリード線等が接続されるコネクタに応力がかからないようにリード線等を張力止めする必要がある。このような張力止め構造を有した装置が例えば特許文献1,2に開示されている。以下、特許文献1に記載の電子装置について図面を用いて説明する。
【0003】
この従来例は、車両に搭載される圧力検出装置であって、図5に示すように、センサ本体102に設けられた雄型コネクタ101と、ケーブル103の一端に接続された雌型コネクタ100とを嵌合することで構成され、センサ本体102の側面には、ケーブル103を張力止めするための張力止め部104が一体に形成されている。張力止め部104は、ケーブル103を支える一対の突起104a,104cと、ケーブル103を押さえつける突起104bとを交互に配置して成り、これらの突起104a〜104cがケーブル103を挟持することでケーブル103を安定して保持できるようになっている。
【特許文献1】特開2007−35526号公報
【特許文献2】実用新案登録第3083747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来例では、張力止め部104にケーブル103を挟持させるためにはケーブル103を屈曲させねばならず、ケーブル103が傷み易いという問題があった。また、ケーブル103が硬い外皮から成る場合には、ケーブル103を屈曲し難いことから張力止め部104にケーブル103を挟持させるのが困難であるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みて為されたもので、ケーブルを容易に挟持させることができるとともにケーブルが傷むのを防ぐことができる張力止め部を備えた超音波センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、超音波を送波又は受波若しくは送受波する超音波振動子を有する超音波素子と、超音波を通過させる開口を有するとともに超音波素子を収納する筐体と、筐体と一体に形成されて外部から引き回されるケーブルを筐体との間で挟持して張力止めする張力止め部とを備えた超音波センサであって、張力止め部は、一端部が筐体と一体に形成されるとともに筐体から所定の距離だけ離れた位置と筐体との間でケーブルを挟持する位置との間で撓み自在な主片と、主片の他端部に設けられて人の手の指で摘むための摘み部とから成ることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、張力止め部には、主片の他端部側に一体に形成されて主片及び筐体とともにケーブルの周面を覆う突片が設けられたことを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、突片には、外部からケーブルが挟持される空間にケーブルを案内する傾斜を有した第1のテーパが形成されたことを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項2又は3の発明において、突片には、ケーブルが挟持される空間から外部にケーブルを案内する傾斜を有した第2のテーパが形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、摘み部を手の指で摘み上げることで主片を筐体から離れた位置に撓ませることができ、ケーブルを容易に挟持させることができる。また、ケーブルを張力止め部に挟持させる際にケーブルを屈曲させる必要がないので、ケーブルが傷むのを防ぐことができる。
【0011】
請求項2の発明によれば、ケーブルが張力止め部に挟持されている状態においてケーブルがスライドして脱落するのを防止することができる。
【0012】
請求項3の発明によれば、ケーブルを張力止め部に挟持させる際に、摘み部を手の指で摘み上げるとともにケーブルを第1のテーパに押し当てることで主片を筐体から離れた位置に撓ませることができるので、第1のテーパを設けない場合と比較して摘み部を手の指で摘み上げる力を必要とせず、ケーブルを容易に挟持させることができる。
【0013】
請求項4の発明によれば、ケーブルを張力止め部から取り外す際に、ケーブルを第2のテーパに押し当てるだけで主片を筐体から離れた位置に撓ませることができるので、第2のテーパを設けない場合と比較して摘み部を手の指で摘み上げる力を必要とせず、ケーブルを容易に取り外すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る超音波センサの実施形態について図面を用いて説明する。尚、以下の説明では、図1(b)における上下を上下方向と定めるものとする。本実施形態は、図1(a)〜(d)に示すように、超音波を送波又は受波若しくは送受波する超音波振動子(図示せず)及び超音波振動子を内蔵するとともに一面に超音波を通過させるための開口10aを有する略円筒状の器体10及び器体10から突設されて超音波振動子に給電するための端子部11から成る所謂開放型の超音波素子1と、下面に超音波素子1の開口10aと連通する開口20bを有するとともに超音波素子1を収納する略有底円筒状の収納部20を備えた略直方体状の筐体4と、収納部20との間で超音波素子1を挟持するように配置されて超音波素子1の端子部11が実装される平板状のプリント配線板5と、収納部20と超音波素子1との間の隙間を埋める略円筒状の弾性部材6とから構成される。
【0015】
筐体4は、図2に示すように、上面を開口した略直方体状のボディ2及び下面を開口した略直方体状のカバー3の各開口を互いに突き合わせて結合して成り、ボディ2下部に収納部20が一体に形成されている。尚、筐体4は、例えばプラスチック樹脂等の弾性を有する合成樹脂材料から形成される。
【0016】
ボディ2の長手方向における両側面には、それぞれ外方向に突出する係止爪21が突設されており、カバー3の長手方向における両端部からそれぞれ下方に突出する略矩形状の被係止部30に貫設された係止孔30aに係止するようになっている。また、ボディ2の短手方向における両側面には、それぞれ外方に突出する取付片23が突設されており、取付片23に貫設された略円形状の取付孔23aを介して本実施形態を外部の装置にねじ止めすることができるようになっている。ボディ2の内部には、収納部20を挟んで一対の略円筒状のボス部22が一体に形成されており、該ボス部22の内側にはそれぞれ雌ねじ部22aが設けられている。収納部20の下底部には、図1(d)に示すように開口20bが設けられており、該開口20bが超音波の送受波の範囲を広げるとともに超音波の指向性を決定するホーン部20bとなる。
【0017】
カバー3上面の略中央部には、図1(a)に示すように、略矩形状の通孔33が貫設されるとともに、該通孔33を覆うように設けられて外部の装置から引き回されるケーブルCを挟持して張力止めする張力止め部31が一体に形成されている。また、カバー3上面の長手方向における一端部には、後述するコネクタ50及びケーブルCの一端部に設けられたコネクタC1が挿通される略矩形状の窓孔32が貫設されている。また、窓孔32の周部には、上方に向かって突出するリブ34がカバー3と一体に形成されており、該リブ34によってケーブルCが配設される部位を除いて窓孔32が覆われている。
【0018】
張力止め部31は、図1(d)に示すように、一端部(同図における左端部)がカバー3と一体に形成されるとともにカバー3から所定の距離だけ上方に離れた位置とカバー3との間でケーブルCを挟持する位置との間で撓み自在な主片31aと、主片31aの他端部(同図における右端部)側に一体に形成されて主片31a及びカバー3とともにケーブルCの周面を覆う突片31bと、主片31aの他端部に設けられて人の手の指で摘むための摘み部31cとから成る。また、突片31bの同図における右側には、外部からケーブルCが挟持される空間にケーブルCを案内する傾斜を有した第1のテーパ31dが形成され、突片31bの同図における左側には、ケーブルCが挟持される空間から外部にケーブルCを案内する傾斜を有した第2のテーパ31eが形成されている。尚、筐体4は弾性を有する合成樹脂材料から成るので、主片31aも弾性を有する。このため、摘み部31cを手の指で摘み上げた後に手の指を離すと、元の位置に復帰するようになっている。
【0019】
プリント配線板5には、電子部品51が実装されることで超音波素子1を駆動するための駆動回路又は超音波素子1で受波した超音波を受波信号に変換する変換回路の少なくとも何れか一方が設けられている。これらの回路は本実施形態の用途に応じて変更され、例えば、本実施形態を超音波を送波するために用いるのであれば駆動回路をプリント配線板5に設け、超音波(反射波)を受波するために用いるのであれば変換回路を設ければよい。勿論、上記回路を両方とも設けても構わない。また、プリント配線板5の長手方向における一端部には、前記ケーブルの一端部が接続されるコネクタ50が設けられており、ボディ2の各ボス部22と対向する部位には、それぞれ略円形状のねじ挿通孔5aが貫設されている。更に、超音波素子1の端子部11が挿通される一対の略円形状の端子部挿通孔5bが貫設されており、該端子部挿通孔5bに端子部11を挿通した状態で半田付けを行うことで、端子部11がプリント配線板5の回路パターンに接合される。
【0020】
弾性部材6は、超音波素子1の側面を覆う寸法に形成され、超音波素子1を収納部20に収納した際に収納部20の側面に圧接することで超音波素子1の開口10aの中心とホーン部20aの中心との位置関係がずれないように位置決めをする。
【0021】
以下、本実施形態の組立方法について説明する。先ず、超音波素子1を弾性部材6で覆った後に端子部11を上方に向けた形で収納部20に収納する。次に、端子部11を端子部挿通孔5bに挿入した形でプリント配線板5を超音波素子1の上面に載置し、ねじ挿通孔5aを介して組立ねじ7をボス部22の雌ねじ部22aに螺合することで、プリント配線板5をボディ2にねじ止めする。そして、端子部11をプリント配線板5上の回路パターンに半田付けした後に、カバー3の被係止部30にボディ2の係止爪21を係止してカバー3をボディ2に結合することで本実施形態が完成する(図3(a)参照)。
【0022】
本実施形態に外部の装置を接続する際には、図3(b)に示すように、外部の装置から引き回されるケーブルCの一端部に設けられたコネクタC1を窓孔32を介してプリント配線板5のコネクタ50に接続する。この時、ケーブルCを張力止め部31に挟持させて張力止めすることで、輸送時や本実施形態を設置する際の組立作業時においてケーブルCが引っ張られてもコネクタ50に応力がかからないようにすることができる。
【0023】
ここで、本実施形態では、上述のように張力止め部31が主片31a及び摘み部31cを有しているので、摘み部31cを手の指で摘むことで主片31aをカバー3から離れた位置に撓ませることができ、主片31aを撓ませた状態でケーブルCを挟持させる位置に配置して摘み部31cから手の指を離すだけでケーブルCを容易に挟持させることができる。また、ケーブルCを張力止め部31に挟持させる際にケーブルCを屈曲させる必要がないので、ケーブルCが傷むのを防ぐことができる。
【0024】
ところで、本実施形態のような超音波センサでは、組立作業時において超音波素子1の感度を調整するために一端ケーブルCを取り外して他の調整装置に接続し直す必要がある。このような場合でも、本実施形態では上述のように摘み部31cを手の指で摘むことで主片31aを撓ませればケーブルCを容易に取り外すことができる。
【0025】
また、主片31aに突片31bを形成しているので、ケーブルCを張力止め部31に挟持させている状態において、ケーブルCが突片31b側にスライドしても突片31bによってそれ以上の移動を阻止されるので、ケーブルCがスライドして脱落するのを防ぐことができる。
【0026】
上述のように突片31bを設けた場合、ケーブルCを張力止め部31に挟持させる又は張力止め部31から取り外す際に、ケーブルCが突片31bに引っ掛からないように手の指で摘み部31cを摘み上げなければならない。これに対して、本実施形態では突片31bに第1のテーパ31dを形成しているので、ケーブルCを張力止め部31に挟持させる際に、摘み部31cを手の指で摘み上げるとともにケーブルCを第1のテーパ31dに押し当てることで、ケーブルCが突片31bに引っ掛からない程度まで主片31aを上方へと撓ませることができる。したがって、第1のテーパ31dを設けない場合と比較して摘み部31cを手の指で摘み上げる力を必要とせず、ケーブルCを張力止め部31に容易に挟持させることができる。
【0027】
更に、突片31bに第2のテーパ31eを形成しているので、ケーブルCを張力止め部31から取り外す際に、摘み部31cを手の指で摘み上げるとともにケーブルCを第2のテーパ31eに押し当てることで、ケーブルCが突片31bに引っ掛からない程度まで主片31aを上方へと撓ませることができる。したがって、第2のテーパ31eを設けない場合と比較して摘み部31cを手の指で摘み上げる力を必要とせず、ケーブルCを張力止め部31から容易に取り外すことができる。
【0028】
また、カバー3の窓孔32の周部にリブ34を設けているので、本実施形態を外部の装置に組み付ける際に、不用意にケーブルC及びコネクタC1に触れるのを防止することができ、コネクタC1を外れ難くすることができる。尚、リブ34は上述のようにケーブルC及びコネクタC1に不用意に触れることを防止するものであって、リブ34が存在していてもコネクタC1を外すことは可能である。
【0029】
尚、本実施形態は、監視空間内に存在する物体の移動に伴ってドップラー効果として生じる反射波の周波数偏移を検出することで物体の移動を検知する移動体検出装置に用いられる。この移動体検出装置は、図4(a),(b)に示すように、本実施形態である送波用の超音波センサA及び受波用の超音波センサBと、各超音波センサA,Bをそれぞれ収納する一面を開口した長尺箱形のハウジング9と、ハウジング9に収納されて送波用の超音波センサAへの駆動信号及び受波用の超音波センサBからの受波信号を処理する信号処理回路を備えたECU(Electronic Control Unit)8とから構成される。
【0030】
ハウジング9は、例えば車両の天井に設置され、超音波センサA,B及びECU8が収納される側と反対側の面には、超音波センサAから発振される超音波を車両内の監視空間に送波するための略円形状の送波口9aと、監視空間に存在する物体からの反射波を超音波センサBで受波するための略円形状の受波口9bとが貫設されている。また、各超音波センサA,BとECU8との間はそれぞれケーブルC(一部図示省略)によって接続され、ケーブルCは各超音波センサA,Bの張力止め部31によって張力止めされる。
【0031】
上述のように、本実施形態は上記のような移動体検出装置に好適であるが、本実施形態の用途は移動体検出装置に限定されるものではなく、他の装置に用いても構わないのは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る超音波センサの実施形態を示す図で、(a)は上面図で、(b)は一の方向から見た側面図で、(c)は前記一の方向と異なる方向から見た側面図で、(d)は断面図である。
【図2】同上の分解斜視図である。
【図3】同上の全体斜視図で、(a)はケーブルを接続する前の状態を示す図で、(b)はケーブルを接続した状態を示す図である。
【図4】本実施形態を用いた移動体検出装置を示す図で、(a)は背面図で、(b)は正面図である。
【図5】従来の張力止め部を備えた電子装置(圧力検出装置)を示す全体斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1 超音波素子
31 張力止め部
31a 主片
31c 摘み部
4 筐体
C ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送波又は受波若しくは送受波する超音波振動子を有する超音波素子と、超音波を通過させる開口を有するとともに超音波素子を収納する筐体と、筐体と一体に形成されて外部から引き回されるケーブルを筐体との間で挟持して張力止めする張力止め部とを備えた超音波センサであって、張力止め部は、一端部が筐体と一体に形成されるとともに筐体から所定の距離だけ離れた位置と筐体との間でケーブルを挟持する位置との間で撓み自在な主片と、主片の他端部に設けられて人の手の指で摘むための摘み部とから成ることを特徴とする超音波センサ。
【請求項2】
前記張力止め部には、主片の他端部側に一体に形成されて主片及び筐体とともにケーブルの周面を覆う突片が設けられたことを特徴とする請求項1記載の超音波センサ。
【請求項3】
前記突片には、外部からケーブルが挟持される空間にケーブルを案内する傾斜を有した第1のテーパが形成されたことを特徴とする請求項2記載の超音波センサ。
【請求項4】
前記突片には、ケーブルが挟持される空間から外部にケーブルを案内する傾斜を有した第2のテーパが形成されたことを特徴とする請求項2又は3記載の超音波センサ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−25674(P2010−25674A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−185811(P2008−185811)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】