説明

超音波トランスデューサ、超音波プローブおよび超音波トランスデューサの製造方法

【課題】非導電性の音響整合層の製造工程の煩雑さを回避しつつ、導通路を確保することが可能な超音波トランスデューサや超音波プローブの提供を目的とする。
【解決手段】圧電体の電極側の第1の面と、反対側の第2の面とを有する非導電性音響整において、第1の面それぞれには、第1の面と第2の面の間の中間部分まで至る深さを有する複数の第1の溝が設けられる。また第2の面それぞれには第2の面から少なくとも中間部分まで至る深さを有し、第1の溝と交差する複数の第2の溝が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、超音波トランスデューサ、超音波プローブ、および超音波トランスデューサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波プローブは、複数の圧電体と、圧電体を挟んだ両面にある電極とを有している。圧電体における電極の引き出し方法は様々である。例えば、圧電体における超音波放射方向側の前面に配置された電極を、FPC(Flexible Printed Circuits)と導通させる方法がある。FPCにより引き出された信号は、送受信回路に送信される。
【0003】
一般的に生体組織の音響インピーダンスは、1.5Mrayl程度である。また、圧電体の音響インピーダンスは、30Mrayl以上である。このように大きな差があるため、生体組織を圧電体に直接接合させると音響的ミスマッチが発生する。音響的ミスマッチがあると、超音波ビームが音響インピーダンスの大きく異なる境界で反射してしまう。したがって、生体組織と圧電体との間に超音波を効率よく伝搬させる中間層として音響整合層が必要となる。
【0004】
また前述の音響的ミスマッチを軽減、解消するために、複数層の音響整合層を構成することがある。この構成では、生体組織の音響インピーダンス(例えば1.5Mrayl)から圧電体の音響インピーダンス(例えば30Mrayl)の間の、異なる音響インピーダンスを有する複数の音響整合層が段階的に積層される。
【0005】
この構成において、例えば音響整合層の第1層目に好適な音響インピーダンスを9〜15Mrayl程度とするならば、このような音響インピーダンスを有する材料としてマシナブルセラミックスがある。マシナブルセラミックスは雲母を主成分としている。このマシナブルセラミックスは非導電性を有する。
【0006】
ところで、圧電体へは、超音波の送信のために駆動電圧を印加する必要があり、また、受信時にはこの圧電体から受信信号を取り出す必要がある。これらは、圧電体に形成されている電極へ、超音波診断装置の駆動回路および受信回路を、ケーブル等を解して接続することでなされる。この圧電体へ電気的接続を取る主な手段として、比較的音響インピーダンスが小さい基板上に形成された電極パターンを用いる方法がある。主に基板としてFPCが使用される。
ところが、圧電体の電極にFPCを直接接続(接触)することは、その音響インピーダンスの値(約3Mrayl程度)から、先に述べた生体との音響不整合と同様の、ミスマッチが起こる。そのため、FPCは、先に述べたいくつかの音響整合層を介して振動子内に設置する必要がある。
第1層目に非導電性の音響整合層を配置する場合、非導電性の音響整合層が圧電体の電極とFPC上の電極間に存在することになり、電気的接続が得られなくなる。つまり、この非導電性の音響整合層に導通路を設けなければならない。
【0007】
例えば2次元アレイの超音波トランスデューサにおいては、膨大な数の素子それぞれからFPCまで電極を引き出さなければない。そこで、従来、非導電性の音響整合層に対し、積層方向に、圧電体の数・配列に対応して導電性を有する貫通孔を形成した構成の超音波トランスデューサがあった。この超音波トランスデューサでは、音響整合層に貫通孔を圧電体の数だけ形成し、その貫通孔の全面に例えばメッキ処理を施し、導通路を確保していた。
【0008】
また従来、両面に導電性膜が設けられた非導電性材料の板を形成することにより、非導電性部材に対し、積層方向に導電性を持たせ、その板の導電性膜の面同士を重ね合わせて音響整合層を形成する超音波トランスデューサの製造方法があった。一例として、圧電体のピッチと同様の幅を有する非導電性材料の板を形成し、その両面に導電性膜を設ける。この板を圧電体の行数または列数に対応した数だけ重ね合わせていくつかのブロックを形成し、ブロック同士をさらに重ね合わせて音響整合層を形成する。このような工程によって形成された音響整合層では、板と板の重ね合わせ面が電極とFPCとの導通路として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−130611号公報
【特許文献2】特開2009−177342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、これらの製造方法によれば、製造工程が煩雑となってしまう。また位置合わせが困難で製造コストが高くなってしまう。例えば圧電体の数、配列に対応して貫通孔を形成する工程は、コストを増加させるおそれがあり、また貫通孔の位置精度を確保する作業は煩雑である。また、音響整合層の製造工程において非導電性材料からなる板に導電性膜を設けてから重ね合わせる作業は複雑であり、また音響整合層の製造工程における製造コストおよびリードタイムの増加を招くおそれがある。
【0011】
本実施形態は、非導電性の音響整合層の製造工程の煩雑さを回避しつつ、基板と圧電体の電極との間の導通路を確保することが可能な超音波トランスデューサ、その製造方法や超音波プローブの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この実施形態にかかる超音波トランスデューサは、2次元配置された複数の圧電体と、これら圧電体それぞれに設けられた電極とを備える。また電極側の第1の面と、第1の面の反対側である第2の面とを有する非導電性音響整合層を備える。また第2の面側に配置された基板を備える。第1の面それぞれには、第1の面と第2の面の間の中間部分まで至る深さを有する複数の第1の溝が設けられる。また第2の面それぞれには第2の面から少なくとも中間部分まで至る深さを有し、第1の溝と交差する複数の第2の溝が設けられる。電極と第2の面とは、第1の溝と、第1の溝および第2の溝の交差部と、第2の溝とを介して、導通されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態にかかる超音波トランスデューサの構成を示す概略斜視図である。
【図2】第1実施形態にかかる音響整合層および圧電体の積層体を示す概略斜視図である。
【図3A】第1実施形態にかかる非導電性音響整合層の溝および導電性膜を示す概略斜視図である。
【図3B】図3Aの第1の溝および第2の溝に樹脂を充填した状態を示す概略斜視図である。
【図4】第1実施形態にかかる超音波トランスデューサの非導電性音響整合層を形成する工程の一部を示す概略斜視図である。
【図5】第1実施形態にかかる超音波トランスデューサの製造工程のうち、図4の次の工程を示す概略斜視図である。
【図6】図5の非導電性材料ブロックの第1の溝、第2の溝および貫通孔を示す概略斜視図である。
【図7】図6の非導電性材料ブロックの内部構造を示す、概略斜視図である。
【図8】図7の非導電性材料ブロックのA−A断面図である。
【図9】図7の非導電性材料ブロックのB−B断面図である。
【図10】第1実施形態にかかる超音波トランスデューサの製造工程のうち、図5の次の工程を示す概略斜視図である。
【図11】第1実施形態にかかる超音波トランスデューサの製造工程のうち、図10の次の工程を示す概略斜視図である。
【図12】第1実施形態にかかる超音波トランスデューサの製造工程のうち、図11の次の工程を示す概略斜視図である。
【図13】第2実施形態にかかる超音波トランスデューサの非導電性音響整合層を形成する工程の一部を示す概略斜視図である。
【図14】第2実施形態にかかる超音波トランスデューサの非導電性音響整合層に形成された第2の溝の一例の概要を示す概略底面図である。
【図15】図14の一部分の概略拡大図である。
【図16】第2実施形態にかかる超音波トランスデューサの非導電性音響整合層に形成された第2の溝の他の例の概要を示す非導電性音響整合層の概略上面図である。
【図17】図16の一部分の概略拡大図である。
【図18】第3実施形態にかかる超音波トランスデューサの非導電性音響整合層に設けられた第1の溝および第2の溝の一例の概要を示す非導電性音響整合層の概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態にかかる超音波トランスデューサおよび超音波プローブにつき、図1〜図18を参照して説明する。
【0015】
[第1実施形態]
(超音波トランスデューサの概略構成)
図1〜図3を参照して第1実施形態における超音波トランスデューサ100の概要について説明する。図1は、超音波トランスデューサ100の概要を示す概略斜視図である。以下、本実施形態にかかる超音波トランスデューサ100の概略構成について説明する。なお、図1において示される超音波トランスデューサ100の圧電体114の配列数は概念上示されるものである。また図示された配列全体がなす形状、例えば2次元配列における行数や列数についても一例に過ぎず、その他の構成を適用することも可能である。
【0016】
また、以下の説明においてバッキング材118から導電性音響整合層111へ向かう方向を「前方」(図1におけるz方向)と記載し、前方と反対側の方向を「後方」と記載する。また超音波トランスデューサ100における各構成部分における前方側の面を「前面」と記載し、後方側の面を「背面」と記載する。なお非導電性音響整合層110の前面は「第2の面」の一例に該当し、背面は「第1の面」の一例に該当する。
【0017】
図1に示すように、この実施形態にかかる超音波トランスデューサ100においては、圧電体114がxy面上において2次元的に配列されている。また各圧電体114の前面それぞれに対応して非導電性音響整合層110が設けられている。さらに非導電性音響整合層110における前面側に導電性音響整合層111が設けられる。また、圧電体114における背面側にはバッキング材(負荷材相)118が設けられ、かつバッキング材118と圧電体114との間には、背面基板120が設けられている。なお、超音波トランスデューサ100において、背面基板120は少なくとも送受信回路などの後段回路側まで引き出されるものであるが、図1では背面基板120のその部分の図示を省略している。
【0018】
また、図1に示すように導電性音響整合層111の前面側には前面基板122が設けられている。前面基板122のさらに前面側には図示しない音響レンズが設けられている。なお背面基板120と同様に、図1の前面基板122も後段回路へ延びる部分の図示が省略されている。また、圧電体114における前面側には前面電極112が設けられ、前面電極112は非導電性音響整合層110の背面に隣接する。さらに圧電体114の背面側には背面電極116が設けられる。
【0019】
(各部の構成)
次に、第1実施形態にかかる超音波トランスデューサ100における各部の構成について説明する。
【0020】
〈圧電体〉
圧電体114は、背面電極116および前面電極112に印加された電圧を超音波パルスに変換する。この超音波パルスは超音波診断装置による検査対象としての被検体へ送波される。また、圧電体114は、被検体からの反射波を受け、電圧に変換する。圧電体114の材料としては、一般にPZT(チタン酸ジルコン酸鉛/Pb(Zr,Ti)O)、チタン酸バリウム(BaTiO )、PZNT(Pb(Zn1/3Nb2/3)O3−PbTiO3)単結晶、PMNT(Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−PbTiO3)単結晶等を用いることが可能である。圧電体114の音響インピーダンスは、例えば30Mrayl程度とされる。なお、図1における圧電体114は単一層によって構成されているが、複数層の圧電体114として構成することも可能である。
【0021】
〈バッキング材〉
バッキング材118は、超音波パルスの送波の際に超音波の照射方向と反対側(後方)に放射される超音波パルスを吸収し、各圧電体114の余分な振動を抑える。バッキング材118により、振動時における各圧電体114背面からの反射を抑制し、超音波パルスの送受信に悪影響を及ぼすことを回避することが可能である。なお、バッキング材118としては、音響減衰、音響インピーダンス等の観点から、PZT粉末やタングステン粉末等を含むエポキシ樹脂、ポリ塩化ビニールやフェライト粉末を充填したゴムあるいは多孔質のセラミックにエポキシ等の樹脂を含漬したもの等、任意の材料を用いることができる。
【0022】
〈前面基板、背面基板〉
前面基板122および背面基板120は、例えばフレキシブルプリント基板(FPC/Flexible Printed Circuits)であり、それぞれ送受信回路またはケーブルへの接続部等の後段回路まで至る長さを有している。また前面基板122および背面基板120それぞれの前面側および背面側の一方または双方には、後段回路と接続される接続リード(不図示)が設けられている。前面基板122および背面基板120は、例えばベース材料としてポリイミドが用いられる。ポリイミドの音響インピーダンスは3Mrayl程度である。
【0023】
〈音響整合層〉
次に図2および図3を参照して本実施形態の非導電性音響整合層110および導電性音響整合層111について説明する。図2は、第1実施形態にかかる音響整合層(111、110)および圧電体114の積層体を示す概略斜視図である。図3(A)は、第1実施形態にかかる非導電性音響整合層110における第1の溝110a、第2の溝110bおよび導電性膜110cを示す概略斜視図である。図3(B)は、図3(A)の第1の溝110aおよび第2の溝110bに樹脂110dを充填した状態を示す概略斜視図である。
【0024】
非導電性音響整合層110および導電性音響整合層111は、圧電体114と被検体の間で音響インピーダンスを整合させるものである。そのために非導電性音響整合層110および導電性音響整合層111は、圧電体114と前面基板122の間に配置され(図1参照)、かつ非導電性音響整合層110および導電性音響整合層111には、それぞれ互いに音響インピーダンスの異なる材料が用いられる。圧電体114と、音響レンズとの間で段階的に音響インピーダンスを変化させ音響的な整合をとるためである。また非導電性音響整合層110には、切削加工が可能な材料が用いられる。
【0025】
切削加工可能かつ圧電体114に隣接させるのに好適な音響インピーダンスを有する非導電性音響整合層110としては、例えば、マシナブルガラス、マシナブルセラミックス、エポキシと酸化金属粉末の混合体、エポキシと金属粉末の混合体などがある。このような非導電性音響整合層110の音響インピーダンスは、9〜15Mrayl程度である。また非導電性音響整合層110と前面基板122との間に配置させるのに好適な音響インピーダンスを有する導電性音響整合層111の材料の一例として、例えば、カーボン(等方性黒鉛やグラファイト)がある。このような導電性音響整合層111の音響インピーダンスは、4〜7Mrayl程度である。また導電性音響整合層111の厚さ(前後方向(図1のz方向)の長さ)は、例えば150μm〜200μmである。
【0026】
図2および図3Aに示すように第1実施形態の非導電性音響整合層110における、前面電極112との境界面(非導電性音響整合層110背面)には、中間の位置まで到達する深さを有する第1の溝110aが設けられている。ここで中間の位置とは、非導電性音響整合層110における背面と前面の間の位置である。すなわち、第1の溝110aは非導電性音響整合層110を貫通せず、非導電性音響整合層110の中間部分まで設けられている。
【0027】
また非導電性音響整合層110における、導電性音響整合層111との境界面(非導電性音響整合層110前面)には、第1の溝110aの前方側端部を越えた非導電性音響整合層110の中間の位置(中間部分)まで到達する深さを有する第2の溝110bが設けられている。すなわち、第2の溝110bは、非導電性音響整合層110を貫通せず、非導電性音響整合層110の背面と前面の間における、第1の溝110aの前端よりさらに後方側まで至るように設けられている。また、本構成の非導電性音響整合層110における第1の溝110aおよび第2の溝110bの深さの一例において、第1の溝110aの深さと第2の溝110bの深さとを合わせた長さは、非導電性音響整合層110の厚さ、すなわち非導電性音響整合層110の背面から前面までの長さ以上となる。
【0028】
また、図3(A)に示すように、第1の溝110aは、非導電性音響整合層110の側面から反対側の側面まで至るように(非導電性音響整合層110配列のy方向へ)貫通して設けられている。また第2の溝110bは、非導電性音響整合層110における第1の溝110aが露出していない側面からその反対側の側面まで至り、第1の溝110aと交差するように、非導電性音響整合層110の配列のx方向の向きに貫通して設けられている。すなわち図1に示すように、第1の溝110aは、マトリックス状に配列された非導電性音響整合層110を含む各素子に対し、素子配列方向における一方向に並んで設けられており、これに対する第2の溝110bは、各素子に対し、第1の溝110aと直交する方向に並んで設けられている。
なお、第1の溝110aが並べられた素子配列における一方向について、以下、単に「x方向」(図1参照)と記載することがある。素子配列におけるx方向は、「第1の方向」の一例に該当する。また、第2の溝110bが並べられた方向、すなわち当該x方向と直交する方向について、以下、単に「y方向」(図1参照)と記載することがある。
【0029】
さらに第2の溝110bは、非導電性音響整合層110の前面から第1の溝110aの前方側端部を越えた非導電性音響整合層110の中間部分まで至る。このような第1の溝110aと第2の溝110bの構成によれば、第1の溝110aと第2の溝110bとは、非導電性音響整合層110の中間部分において交差することになる。結果、これら第1の溝110aと第2の溝110bとの交差部(図7〜図9の符号110f参照)を介して、非導電性音響整合層110の前面から背面を貫通する貫通孔110e(図6および図7参照)が形成される。なお、素子の配列方向は、超音波トランスデューサ100の超音波放射方向(前後方向(図1のz方向))と略直交する方向、すなわちxy方向(図1参照)である。また、第1の溝110aと比較して第2の溝110bを浅く設けることが有効である。また、サブダイスを採用する場合は、第1の溝110aの位置をサブダイスに合わせることが有効である。
【0030】
さらに、このような第1の溝110aの構成によれば、非導電性音響整合層110に対して第1の溝110aを設けるにあたり、素子配列における1行分に属する各素子に対し、1回の工程で第1の溝110aを設けることができる(図4、図5、図7参照)。同じように、このような第2の溝110bの構成によれば、素子配列における1列分に属する各素子に対し、1回の工程で第2の溝110bを設けることができる。なお、1行分または1列分に属する素子(積層体)それぞれに対し、それぞれ1回で溝を設けることができればよく、他の構成とすることも可能である。例えば素子配列方向の両端に位置する素子については、必ずしも素子配列方向に貫通していなくてもよい。
【0031】
また、図3(A)に示す非導電性音響整合層110における第1の溝110aおよび第2の溝110bの内面には、その全面にわたってメッキやスパッタなどにより導電性膜110cが設けられている。第1の溝110aに対しては、非導電性音響整合層110の背面から、交差部110fを経て、非導電性音響整合層110の中間部分まで導電性膜110cが設けられている。すなわち、第1の溝110aの導電性膜110cは、非導電性音響整合層110の背面と、交差部110fとの間の電気的な導通路となる。また、第2の溝110bの導電性膜110cは、交差部110fと、非導電性音響整合層110の前面との間の電気的な導通路となる。したがって、非導電性音響整合層110の背面と、導電性音響整合層111の背面との間には、非導電性音響整合層110の貫通孔110eを介した電気的な導通路が設けられる。結果として、非導電性音響整合層110の背面に隣接した前面電極112は、貫通孔110eに設けられた導電性膜110cおよび導電性音響整合層111を介して前面基板122の配線パターンと導通されることになる。なお、前面基板122の配線パターンはベタ電極である場合を含む。
【0032】
また、図3(B)に示すように非導電性音響整合層110における第1の溝110aおよび第2の溝110bの導電性膜110cのさらに内側には、樹脂110dが充填される。この樹脂110dにはエポキシ接着剤などを用いることが可能である。この樹脂110dにより第1の溝110aおよび第2の溝110bを埋めることで、非導電性音響整合層110に第1の溝110aおよび第2の溝110bを設けたことによる影響を抑制することが可能となる。ただし、必ずしもこの樹脂110dを第1の溝110aおよび第2の溝110bに充填する構成に限られない。つまり、素子(積層体)の形状や超音波トランスデューサ100の振動モードとの関係によっては、音響整合層に第1の溝110aおよび第2の溝110bを設けたことに起因する音響的影響を回避する必要があるが、それ以外の場合には樹脂110dを設けなくても良い。また、第1の溝110aおよび第2の溝110bのいずれか一方のみに樹脂110dを設けてもよい。
【0033】
なお、図1〜図3(B)に示す第1の溝110aおよび第2の溝110bは、その深さ方向が超音波トランスデューサ100における超音波の放射方向(素子の前後方向(図1のz方向))に対して平行に設けられているが、必ずしもこのような構成に限らず、例えば、素子の前後方向に対し、傾斜するように設けることも可能である。また、導電性膜110cが第1の溝110aおよび第2の溝110bの内側全面にわたって設けられている例を説明したが、必ずしもこれに限られない。非導電性音響整合層110を通して前面電極112と導電性音響整合層111が導通されていればよいので、非導電性音響整合層110の背面側端部から、導電性音響整合層111に至る部分までを通るように、導電性膜110cを設けてもよい。
また、導電性膜110cに限らず、貫通孔110eに接続リードを設けることが可能であればそのような構成を採用することも可能である。
【0034】
また、図1に示す非導電性音響整合層110においては、第1の溝110aがx方向に並んでy方向へ設けられており、第2の溝110bがy方向に並んでx方向へ設けられている。しかしながら、本実施形態の超音波トランスデューサ100としてはこのような構成に限らず、第1の溝110aをy方向に並べてx方向へ設け、第2の溝110bをx方向に並べてy方向へ設けてもよい。
【0035】
また、図1〜図3(B)に示す非導電性音響整合層110においては、1素子に対し第1の溝110aおよび第2の溝110bがそれぞれ1つずつ設けられているが、必ずしもこれに限られない。例えば、第1の溝110aおよび第2の溝110bの少なくともいずれか一方を、1素子に対し複数設けることが可能であればそのような構成を採用することも可能である。また、図1の超音波トランスデューサ100においては後方から前方へ、圧電体114、非導電性音響整合層110、導電性音響整合層111、前面基板122、音響レンズの順に配置・積層されているが、これに限らず音響整合層を3層以上とすることも可能である。例えば後方から前方へ、非導電性音響整合層110、導電性音響整合層111、前面基板122を順に配置し、さらに音響レンズとの音響整合の観点から、前面基板122の前方に音響整合層を配置することも可能である。
【0036】
なお、第1の溝110aおよび第2の溝110bそれぞれの溝幅は、最大で素子幅の約30%程度に抑えることが好適である。例えば150μm幅の素子であれば、50μm〜10μm程度とするのが好適である。すなわち、第1の溝110aおよび第2の溝110bの溝幅をこのように設けることで、超音波パルスの放射性能、超音波トランスデューサ100の振動モード、導電性膜110c設ける作業において有効である。ここで「素子」とは、圧電体114、非導電性音響整合層110、導電性音響整合層111の積層体(図2を参照)である。また「素子幅」とは、超音波トランスデューサ100の第1の溝110aの配列方向または第2の溝110bの配列方向(例えば図1のx方向またはy方向)における、素子の長さである。また、図示されている素子は、断面略正方形のものであるが、これに限られず、例えば断面略長方形のものであってもよい。
【0037】
〈音響レンズ〉
音響レンズ(不図示)は、送受信される超音波を収束してビーム状に整形するものであるが、2Dアレイの場合は各素子の位相制御によって3次元的に焦点を結ばせることができるので、レンズ機能を付与しない場合もある。音響レンズの素材としては、音響インピーダンスが生体に近いシリコーンなどが使用される。
【0038】
(超音波トランスデューサの製造方法の概略)
次に図4〜図12を参照し、第1実施形態にかかる超音波トランスデューサ100の製造方法、特に非導電性音響整合層110に第1の溝110aおよび第2の溝110bを設ける工程を主として説明する。図4、図5および図10〜図12は、第1実施形態にかかる超音波トランスデューサ100の製造工程を示す概略斜視図である。
【0039】
《第1の溝の形成/図4》
図1〜図3に例示されるように本実施形態の超音波トランスデューサ100における音響整合層は、非導電性音響整合層110および導電性音響整合層111を積層して構成されている。この音響整合層の非導電性音響整合層110としては、図4に示すような、非導電性音響整合層110に必要な材料で構成された非導電性材料ブロック1101が用いられる。同様に導電性音響整合層111に必要な材料で構成された導電性材料ブロック1111(図10)が用いられる。
【0040】
本実施形態の超音波トランスデューサ100を形成するにあたり、まず図4に示すように、非導電性材料ブロック1101に対し、(2次元配列分割後(図12)における)x方向に並んでy方向(図1におけるy方向)に、所定のピッチで第1の溝110aを形成する。この第1の溝110aは、非導電性材料ブロック1101の背面から、非導電性材料ブロック1101の中間位置までの深さを有するように設けられる。つまり、非導電性材料ブロック1101を前後方向(深さ方向)に貫通しないように、非導電性材料ブロック1101における背面と前面の間の中間部分まで設けられる。
【0041】
また、第1の溝110aは、超音波トランスデューサ100の素子ピッチに対応したピッチで複数設けられる。言い換えると、素子配列のx方向に並んで第1の溝110aを設ける場合は、少なくとも列数分だけ第1の溝110aを設けることになる。また素子配列のy方向に並んで第1の溝110aを設ける場合は、少なくとも行数分だけ第1の溝110aを設けることになる。なお、図4などにおける非導電性材料ブロック1101の第1の溝110aの数は、概念上示されるものである。
【0042】
上述のように第1の溝110aとして、非導電性音響整合層110に切込みを設ける。この切り込み幅(第1の溝110aの幅)は素子幅に比較して狭いほうが望ましい。例えば切り込み幅は、素子幅の約30%以下、かつ、10μm以上に設定してもよい。このような条件における、素子幅に対しての切り込み幅の一例としては、素子幅350μmに対して、50μm幅とすることが考えられる。また切り込み幅のピッチは0.4mm程度とすることが可能である。このような切込み幅であれば、超音波パルスの放射性能、超音波トランスデューサ100の振動モード、導電性膜110cの形成作業などにおいて有効である。
【0043】
《第2の溝の形成/図5》
図4に示すように、非導電性材料ブロック1101に対し、第1の溝110aを設けたら、図5に示すように非導電性音響整合層110に第2の溝110bを設ける。この第2の溝110bは、非導電性材料ブロック1101の前面から後方側へ、第1の溝110aの前方側端部を越えた非導電性音響整合層110の中間の位置までの深さを有するように設けられる。つまり、非導電性音響整合層110を前後方向に貫通しないように設けられる。例えば、非導電性音響整合層110における背面と前面の間の第1の溝110aとの交差部110f(図8、図9参照)より後方まで設けられる。
【0044】
また、第2の溝110bは、超音波トランスデューサ100の素子ピッチに対応したピッチで複数設けられる。言い換えると、素子配列のx方向に並んで第2の溝110bを設ける場合は、少なくとも列数分だけ第2の溝110bを設けることになる。また素子配列のy方向に応じて第2の溝110bを設ける場合は、少なくとも行数分だけ第2の溝110bを設けることになる。
【0045】
ここで、非導電性材料ブロック1101に形成された第1の溝110aと第2の溝110bとの交差部110fおよび貫通孔110eにつき、図6〜図9を参照して説明する。図6は、図5の非導電性材料ブロック1101の第1の溝110a、第2の溝110bおよび貫通孔110eを示す概略斜視図である。図7は、図6の非導電性材料ブロック1101の内部構造を示す概略斜視図である。図8は、図7に示す非導電性材料ブロック1101のA−A断面図である。図9は、図7に示す非導電性材料ブロック1101のB−B断面図である。
【0046】
第2の溝110bが形成されると、図6および図7に示すように第1の溝110aと第2の溝110bとが交差する。また、第1の溝110aと第2の溝110bとが交差することにより、非導電性材料ブロック1101の前面から背面までを通された貫通孔110eが形成される。図8に示すように、非導電性材料ブロック1101における第2の溝110bに沿った断面(図7A−A断面)には、所定のピッチで、第1の溝110aが配列されている。さらに図8の断面と直交する非導電性材料ブロック1101の断面(図9(図7のB−B断面))には、所定のピッチで第2の溝110bが配列されている。これらの第1の溝110aおよび第2の溝110bの底部同士は、第1の溝110aと第2の溝110bとが交差する部分においてつながっている(図8、図9の交差部110f)。さらに図6および図7に示すように、交差部110fは、y方向およびx方向における素子ピッチに対応して形成される。
【0047】
したがって、後の工程で、非導電性材料ブロック1101が導電性材料ブロック1111および圧電体材料ブロック1141と接続され(図10、図11)、これらの積層体がxy方向に分割されたとき(図12)には、非導電性音響整合層110それぞれに少なくとも一つ以上貫通孔110eが設けられた状態となる。
【0048】
第2の溝110bを設けるにあたり、切り込み幅(第2の溝110bの幅)を、超音波パルスの放射性能、超音波トランスデューサ100の振動モード、導電性膜110cの形成作業などの観点から、例えば素子幅の約30%以下、かつ、10μm以上に設定してもよい。なお、第1の溝110aと第2の溝110bを設ける順序は、いずれが先であっても、また同時であってもよい。また、図5などにおける非導電性材料ブロック1101の第2の溝110bの数は、概念上示されるものである。
【0049】
《導電性膜の形成》
非導電性材料ブロック1101に第1の溝110aおよび第2の溝110bを設けたら、第1の溝110aおよび第2の溝110bに導電性膜110cを設ける。導電性膜110cは、例えばメッキやスパッタなどにより、第1の溝110aおよび第2の溝110bの内面の全面および非導電性材料ブロックの前面、背面、側面にわたって設けられる。これにより、第1の溝110aおよび第2の溝110b(貫通孔110e)の一端から他端まで(非導電性材料ブロックの背面から前面まで)が電気的に導通される。さらに、非導電性音響整合層110の背面に隣接した前面電極112は、導電性膜110cおよび導電性音響整合層111を介して前面基板122の配線パターンと導通される。
【0050】
なお、導電性膜110cは必ずしも第1の溝110aおよび第2の溝110bの内側全面および非導電性材料ブロックの前面、背面、側面に設けなくても良い。例えば第1の溝110aおよび第2の溝110bの内面のうち、一部側面であって、第1の溝110aの一端(背面側端部)から、第2の溝110bの他端(導電性音響整合層111側端部)に至る部分までを通るように、導電性膜110cを設けてもよい。すなわち貫通孔110eのみに導電性膜110cを設けてもよい。また、前面電極112から導電性音響整合層111まで確実に電気的接続をとれるのであれば、貫通孔110eの全面にわたって導電性膜110cを設けなくてもよく、貫通孔110eの一端から他端まで至る一部側面のみに導電性膜110cを設けてもよい。また、前面電極112から導電性音響整合層111まで、第1の溝110aおよび第2の溝110bを通した接続リードを設けることが可能であれば、導電性膜110cの代わりに接続リードを設けてもよい。
【0051】
《樹脂の充填》
非導電性材料ブロック1101の第1の溝110aおよび第2の溝110bに導電性膜110cを設けたら、第1の溝110aおよび第2の溝110bそれぞれにおける導電性膜110cのさらに内側に、樹脂110dを充填する工程を行ってもよい。この工程は素子の振動設計により実施、非実施が決定されるものである。樹脂110dにはエポキシ接着剤などを用いることが可能であるが、場合によってはシリコーン系ゴム接着剤である場合もある。ただし、素子(圧電体114、非導電性音響整合層110および導電性音響整合層111の積層体)の形状や超音波トランスデューサ100の振動モードによっては、第1の溝110aおよび第2の溝110bによる音響的な影響が少ない場合があり、その場合は樹脂110dを設けなくてもよい。また、第1の溝110aおよび第2の溝110bのいずれか一方のみに樹脂110dを設けてもよい。
【0052】
また、導電性膜110cおよび樹脂110dを設ける工程は、必ずしも第1の溝110aおよび第2の溝110bの双方を設けた後に行わなくてもよく、第1の溝110aを設け、まず第1の溝110a側から導電性膜110c、樹脂110dを設け、その後第2の溝110bに導電性膜110c、樹脂110dを設けてもよい。しかし、第1の溝110aおよび第2の溝110bの双方を設けた後に導電性膜110c、樹脂110dを一度に設ける上記工程の方が、超音波トランスデューサ100の製造工程として簡便である。
【0053】
《ブロックの接続/図10・11》
非導電性材料ブロック1101に第1の溝110aおよび第2の溝110bを設け、導電性膜110c(場合によっては樹脂110d)を設けたら、非導電性材料ブロック1101と導電性材料ブロック1111とを接続する。すなわち図10および図11に示すように、非導電性材料ブロック1101における第2の溝110b端部が露出した面に、導電性材料ブロック1111を重ね合わせ、接続する。なお後の工程で、非導電性材料ブロック1101および導電性材料ブロック1111には、共にxy方向に分割溝が設けられ、それにより図12に示すように所望の素子数と同数の積層体が形成される。
【0054】
《圧電体の接続/図10・11》
非導電性材料ブロック1101の第1の溝110aおよび第2の溝110bに導電性膜110c(場合によっては樹脂110d)を設け、導電性材料ブロック1111を積層したら、その音響整合層ブロックと圧電体材料ブロック1141とを接続する。つまり、図10および図11に示すように非導電性材料ブロック1101における導電性材料ブロック1111との接続面と反対側の面に対し、圧電体材料ブロック1141を接続する。なお、圧電体材料ブロック1141の前面にはあらかじめ前面電極112となる層が設けられているものとする。同じく圧電体材料ブロック1141の背面にはあらかじめ背面電極116となる層が設けられているものとする。また圧電体材料ブロック1141には、後の工程でxy方向に分割溝が設けられ、超音波トランスデューサ100における圧電体114の所望の素子数となるように分割される(図1参照)。なお、非導電性材料ブロック1101に対する導電性材料ブロック1111と圧電体材料ブロック1141との接続の順序は、いずれが先であってもよい。
【0055】
《分割溝の形成/図12》
第1の溝110aおよび第2の溝110bが設けられた音響整合層ブロックと圧電体材料ブロック1141とを接続したら、その積層体に対しxy方向に分割溝を設ける。つまり、図12に示すように音響整合層ブロックおよび圧電体材料ブロック1141の積層方向に沿ってy方向に所定のピッチで分割溝を設け、ブロックの積層体を複数行のブロックに分割する。さらに音響整合層ブロックおよび圧電体材料ブロック1141の積層方向に沿ってx方向に所定のピッチで分割溝を設ける。その結果、図12のような圧電体114、非導電性音響整合層110、導電性音響整合層111の積層体を2次元配列してなる素子群が形成される。
【0056】
《基板の接続》
図12に示すように2次元アレイの素子群を形成したら、導電性音響整合層111それぞれの前面に前面基板122を接続し、同様に圧電体114における背面電極116の背面に背面基板120を接続する。これによって、前面基板122の配線パターン(グランドとしてのベタ電極の場合もある)と各導電性音響整合層111とが電気的に接続される。また背面基板120の配線パターンと背面電極116とが電気的に接続される。
【0057】
《バッキング材接続》
2次元アレイの素子群の前面および背面に基板を接続したら、背面基板120の背面にバッキング材118を接続する。なお、圧電体114、背面基板120およびバッキング材118の間の構成としては、図1に示されるものに限られず、必要に応じて信号処理を行う電子回路や背面整合層などの構造物を介在させることが可能である。
【0058】
《音響レンズの接続》
2次元アレイの素子群の前面および背面に基板を接続したら、バッキング材118の接続と同時または前後して、前面基板122の前面に音響レンズを接続する。なお、上述のように音響整合層を3層以上で構成する場合は、前面基板122と音響レンズを隣接させず、前面基板122の前面に音響整合層を配置し、その音響整合層のさらに前面に音響レンズを配置することも可能である。
【0059】
(超音波トランスデューサと外部装置との接続)
次に、第1実施形態の超音波トランスデューサ100を有する超音波プローブと、超音波診断装置本体との接続構成の一例について説明する。なお、以下の説明においては図示を省略する。超音波プローブは、内部に超音波トランスデューサ100が設けられ、超音波診断装置本体と超音波プローブとを電気的に接続するためのインターフェース(ケーブル等)を有している。また超音波トランスデューサ100は、前面基板122の配線パターン(ベタ電極の場合を含む)および背面基板120の配線パターンと、超音波プローブのインターフェースとを通じて、超音波診断装置本体と電気的に接続されており、超音波の送受信にかかる信号を相互に伝達している。
【0060】
なお超音波プローブ内には、送受信回路等の電子回路が設けられた回路基板や、インターフェースと当該電子回路とを接続する接続用基板が設けられていてもよい。この場合は、超音波プローブと本体を接続するインターフェース、接続用基板の配線パターン、電子回路、前面基板122や、背面基板120の配線パターンを介して、前面電極112や背面電極116と超音波診断装置本体の制御部との間で信号が送受信される。
【0061】
例えば超音波診断装置本体は、その制御部からインターフェースを通じて超音波トランスデューサ100の駆動制御にかかる電気信号を超音波プローブに送る。この電気信号は、接続用基板を介して回路基板の電子回路に送信される。電子回路は、超音波診断装置本体制御部からの信号に基づき、前面基板122や背面基板120を通じて圧電体114に電圧を印加する。例えば背面基板120を通じ背面電極116に電圧が印加される。前面電極112は非導電性音響整合層110の第1の溝110aおよび第2の溝110b、導電性音響整合層111ならびに前面基板122の配線パターンを通じてグランドに接続される。このようにして圧電体114に電圧が印加され、超音波パルスが被検体に送信される。
【0062】
また、例えば超音波診断装置本体は、超音波トランスデューサ100が被検体からの反射波を受信すると、背面基板120や実施形態の非導電性音響整合層110、前面基板122等を介して、圧電体114が変換した電気信号を電子回路に送信する。電子回路はこの電気信号に所定の処理(遅延加算、増幅等)を行い、さらに接続用基板、インターフェースを介して超音波診断装置本体へ電気信号を送信する。この電気信号を基に超音波診断装置は超音波画像を生成する。
【0063】
(作用・効果)
以上説明した第1実施形態にかかる超音波トランスデューサ100および超音波プローブの作用および効果について説明する。
【0064】
上記説明したように第1実施形態の超音波トランスデューサ100では、圧電体114の前方に配置された非導電性音響整合層110それぞれにおける、前面電極112との境界面(非導電性音響整合層110背面)には、中間の位置まで到達する深さを有する第1の溝110aが設けられている。さらに、非導電性音響整合層110には、導電性音響整合層111との境界面(非導電性音響整合層110前面)には、非導電性音響整合層110の中間位置、つまり、第1の溝110aの前端よりさらに後方側の位置まで至る深さを有する第2の溝110bが設けられている。これら第1の溝110aおよび第2の溝110bの交差部110fが形成される結果、図6および図7に示すように、前面電極112との境界面から、導電性音響整合層111との境界面まで至る貫通された貫通孔110eが形成される。さらに第1の溝110aおよび第2の溝110bの内面における、少なくとも非導電性音響整合層110背面側の端部(第1の溝110a後方端部)から、導電性音響整合層111背面に至る部分(第2の溝110b前方端部)までを通るように導電性膜110cが設けられている。
【0065】
このような非導電性音響整合層110を有する超音波トランスデューサ100の製造工程では、非導電性材料ブロック1101に第1の溝110aおよび第2の溝110bを設けることにより貫通孔110eを形成し、この貫通孔110eに、導電性膜110cを設けるのみで、前面電極112から前面基板122までの導通路を形成することが可能である。さらに非導電性材料ブロック1101、導電性材料ブロック1111および圧電体材料ブロック1141を積層させ、次にこれらの積層体に対しxy方向に分割溝を設けることによって、圧電体114、非導電性音響整合層110および導電性音響整合層111の積層体を備えて構成される素子の2次元配列を形成する。
【0066】
このような製造工程によって製造される超音波トランスデューサ100によれば、非導電性音響整合層110の導通路の形成、ひいては超音波トランスデューサ100の製造工程の煩雑さを回避することができる。すなわち、非導電性音響整合層110に第1の溝110a、第2の溝110bおよび導電性膜110cを設ける構成であれば、その製造工程において、前面電極112から導電性音響整合層111までの導通路を確実に設けることができるだけでなく、その導通路を設ける工程は、非導電性材料ブロック1101に第1の溝110aおよび第2の溝110bを設けるだけなので、簡便である。
【0067】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態にかかる超音波トランスデューサおよび超音波トランスデューサが設けられた超音波プローブについて図13〜図17を参照して説明する。図13は、第2実施形態にかかる超音波トランスデューサの非導電性材料ブロック2101の概要を示す概略斜視図である。なお、第2実施形態については、第1実施形態と異なる部分を主として説明し、その他重複する部分については説明を割愛する場合がある。また、図13において示される非導電性材料ブロック2101の第1の溝210aおよび第2の溝210bの数は概念上示されるものである。
【0068】
(超音波トランスデューサの概略構成)
第2実施形態にかかる超音波トランスデューサにおいても、圧電体がxy面上において2次元的に配列されている。この圧電体それぞれの前面側に前面電極が設けられ、背面側に背面電極が設けられる。また各圧電体の前面それぞれに対応して、非導電性音響整合層210(図14および図16等参照)が設けられている。さらに非導電性音響整合層210の前面前方へ向かって、導電性音響整合層、前面基板、音響レンズが順に配置されている。また、圧電体における背面側にはバッキング材が設けられ、かつバッキング材と圧電体との間には、背面基板が設けられている。
【0069】
(非導電性音響整合層と第1の溝および第2の溝の構成)
次に、図13〜図17を参照して、第2実施形態の超音波トランスデューサにおける非導電性音響整合層210と第1の溝210aおよび第2の溝210bについて説明する。図14は、第2実施形態にかかる超音波トランスデューサの非導電性音響整合層210に設けられた第2の溝210bの一例の概要を示す非導電性音響整合層210の概略上面図である。図中の非導電性音響整合層群230は、非導電性音響整合層210の2Dアレイ素子配列の全体を、概念的に破線で一括りとして示すものである。また交差部220は、素子配列(図中x方向)に平行な第1の溝210aと、素子配列に対して斜めに走る第2の溝210bとの交差する部分である。すなわち交差部220は、非道電音響整合層210に形成された貫通孔を示している。なお、図14においては2次元配列された複数の非導電性音響整合層210のうち、一部の非導電性音響整合層210のみを示している。図15は、図14の一部分の概略拡大図である。
【0070】
[溝の深さ]
超音波トランスデューサにおける、前面電極から導電性音響整合層までの電気的接続をとる導通路は、第1実施形態と同じく、第1の溝210aおよび第2の溝210b(図13参照)によって形成される。非導電性音響整合層210の背面には、中間の位置まで到達する深さを有する第1の溝210aが設けられている。また非導電性音響整合層210の前面には、中間部分、すなわち第1の溝210aの前端よりさらに後方側の位置まで至る深さを有する第2の溝210bが設けられている。これら第1の溝210aおよび第2の溝210bの交差部220が形成される結果、圧電体の前面電極との境界面から、導電性音響整合層との境界面まで至る貫通孔が形成される。
【0071】
[溝の方向(溝の角度)]
また、第1実施形態と同様に、第2実施形態の第1の溝210aは、マトリックス状に配列された非導電性音響整合層210に対し、y方向に並んでx方向へ貫通して設けられている。つまり第1の溝210aは、非導電性音響整合層210の側面から反対側の側面まで至るように、非導電性音響整合層210の配列のx方向へ貫通して形成されている。
【0072】
これに対し第2実施形態の第2の溝210bは、図14に示すように、非導電性音響整合層210の配列方向(例えばx方向)に対して所定の角度分、傾斜させて設けられている。また第2の溝210bは、第1の溝210aと交差するように設けられる。第2の溝210bの傾斜角度、すなわち2次元配列の非導電性音響整合層210におけるx方向に対する傾斜角度は、第2の溝210bを第1の溝210aと交差させるように設けるために、例えば90°未満に設定される。なお、この傾斜角度は配列方向(例えばx方向)と第2の溝210bとがなす角度のうち、小さい方の角度を示すものとする(例えば図14におけるθ)。
【0073】
第2の溝210bの傾斜角度を0°とすると、第2の溝210bと第1の溝210aとが平行となる場合がある。第2の溝210bと第1の溝210aとを平行にしてしまうと、非導電性音響整合層210が細い短冊状に分離されてしまう場合があるので、溝210aと溝210bのなす角度は、30°〜90°程度が望ましい。
【0074】
また、第2の溝210bは、非導電性音響整合層210の一側面から他側面へ貫通して形成される。
【0075】
このような第1の溝210aの構成によれば、非導電性音響整合層に対して第1の溝210aを設けるにあたり、素子配列における1行分に属する各素子に対し、1回の工程で第1の溝210aを設けることができる(図13参照)。同じように、このような第2の溝210bの構成によれば、素子配列における複数の素子それぞれに対し、1回の工程で第2の溝210bを設けることができる。なお、素子は、超音波トランスデューサの前後方向(図1のz方向参照)と略直交する方向に配列されている。なお、複数の素子それぞれに対し1回で溝を設けることができればよいので、他の構成とすることも可能である。例えば素子配列方向の両端に位置する素子(積層体)については、素子配列方向に貫通していなくてもよい。
【0076】
[溝のピッチ]
第2実施形態の第2の溝210bは素子配列に対し傾斜して設けられるものである。次に、第2の溝210b同士のピッチ(溝ピッチ)の例につき、図14〜図17を参照して説明する。なお第2の溝210b同士のピッチ、すなわち溝ピッチとは、図15に示すように、1つの第2の溝210bの中央ラインから隣の第2の溝210bの中央ラインまでの距離を示すものである。すなわち、ある1つの第2の溝210bの中心から、隣の第2の溝210bの中心までの距離を示すものである。また説明の便宜上、以下の説明においては、第2の溝210bの溝ピッチを単に「Pk」、「Pk」、「Pk」または「Pk」と記載することがある。また説明の便宜上、以下の説明において、第1の溝210aの溝ピッチを単に「Pk」、「Pk」または「Pk」または「Pk」と記載することがある。また説明の便宜上、第1の溝210aと第2の溝210bの交差部220に形成される貫通孔のピッチ(例えば、図15におけるx方向のピッチ)を「Ph」と記載することがある。
【0077】
また、1つの非導電性音響整合層210の配列方向(例えば、図15におけるx方向)における長さ、すなわち素子幅を単に「Pw」と記載することがある。Pwについて言い換えれば、非導電性音響整合層210における一側面から反対側の側面までの長さである。
【0078】
また、例えば図15における非導電性音響整合層210の配列(マトリックス状の圧電素子配列に対応した配列)のx方向の左端から隣の素子の左端までの周期的な距離を単に「Pe」と記載することがある。Peについて言い換えれば、1つの非導電性音響整合層210の幅方向の中心から、隣の非導電性音響整合層210の中心までの長さ(素子ピッチ)である。またPeについてさらに他の表現で言い換えれば、1つの非導電性音響整合層210の幅方向右端から、隣の非導電性音響整合層210の幅方向左端までの長さ(非導電性音響整合層210の素子間隔)と、素子幅Pwとを合わせた長さである。
【0079】
また、第2の溝210bの傾斜角度のうち、小さい方の角度を単に「θ」と記載することがある。ここで傾斜角度とはすなわち素子の配列方向(例えばx方向)と第2の溝210bとがなす角度をいう。
【0080】
〈溝ピッチ例1〉
第2実施形態の第2の溝210bの溝ピッチPkは、図15に例示するように、素子幅Pw以下として設定することが可能である。
【0081】
〈溝ピッチ例2〉
第2実施形態の第2の溝210bの溝ピッチPkは、素子幅Pw以下として設定することが可能であり、さらに図15に例示するように、加えて、Pkと、Pwの関係を下記の(1)式のように設定することが可能である。
[数1]

Ph=Pk/sinθ≦Pw…(1)
【0082】
非導電性音響整合層210それぞれには、少なくとも一つ以上、前後方向(図1のz方向参照)に導通路としての貫通孔を設ける必要があるが、上述の「溝ピッチ例1」によれば、第2の溝210bを配列方向xに対して傾斜させても、特に支障なく貫通孔を形成することができる。また「溝ピッチ例2」によれば、さらに非導電性音響整合層210に貫通孔を形成するための溝ピッチPkの設定が容易となる。なお、「θ」の角度の範囲は、30°超であって、かつ90°未満(30°<θ<90°)に設定することにより、溝ピッチPkの設定がさらに容易となる。
【0083】
次に、図16および図17を参照して溝ピッチPkの他の例について説明する。図16は、第2実施形態にかかる超音波トランスデューサの非導電性音響整合層210に設けられた第2の溝210bの他の例の概要を示す非導電性音響整合層210の概略上面図である。図中の破線で示す非導電性音響整合層群230は、非導電性音響整合層210の2Dアレイ素子配列の全体を、概念的に破線で一括りとして示すものである。図17は、図16の一部分の概略拡大図である。
【0084】
〈溝ピッチ例3〉
図16に例示するように、第2実施形態の第2の溝210bの溝ピッチPkは、素子ピッチPeと等しく設定することが可能である。ただし、製造工程における誤差を含むものとする。
【0085】
〈溝ピッチ例4〉
第2実施形態の第2の溝210bの溝ピッチPkは、図17に例示するように、素子ピッチPeとの関係において、下記の(2)式のように設定することが可能である。ただし、製造工程における誤差を含むものとする。
[数2]

Ph=Pk/sinθ=Pe…(2)
【0086】
上述の「溝ピッチ例1」と同様に、「溝ピッチ例3」によれば、第2の溝210bを配列方向xに対して傾斜させても、第1の溝210aとの関係において貫通孔の形成に影響を及ぼすおそれを回避することができる。また上述の「溝ピッチ例2」と同様に、「溝ピッチ例4」によれば、さらに非導電性音響整合層210に貫通孔を形成するための溝ピッチPkの設定が容易となる。なお、「θ」の角度の範囲は、30°超であって、かつ90°未満(30°<θ<90°)に設定することにより、溝ピッチPkの設定がさらに容易となる。
【0087】
[非導電性音響整合層の導通路]
また、非導電性音響整合層210における第1の溝210aおよび第2の溝210bの内面には、その全面にわたってメッキやスパッタなどにより導電性膜が設けられている。この点は第1実施形態と同様である。第1の溝210aおよび第2の溝210bの交差部220による貫通孔は非導電性音響整合層210の背面から前面(導電性音響整合層111の背面)に到り、かつ導電性膜210cが、少なくとも貫通孔の一端から他端まで連続して設けられている。すなわち、非導電性音響整合層210の前面側端部から、背面側端部(導電性音響整合層背面)に到るまでが電気的に導通される。結果として、前面電極が導電性膜の後方側と接しており、かつ非導電性音響整合層210の前面に隣接した導電性音響整合層と導通される。さらに、前面電極212は導電性音響整合層を介して前面基板の配線パターンと導通されることになる。
【0088】
また、第2実施形態においても、非導電性音響整合層210における第1の溝210aおよび第2の溝210bの導電性膜のさらに内側には、樹脂が充填される。第1実施形態と同じく、素子(積層体)の形状や超音波トランスデューサの振動モードによっては、非導電性音響整合層210の第1の溝210aおよび第2の溝210bによる音響的影響が少ない場合があり、その場合には樹脂を設けなくても良い。また、第1の溝210aおよび第2の溝210bのいずれか一方のみに樹脂を設けてもよい。
【0089】
なお、前面電極と導電性音響整合層が導通されていればよいので、例えば第1の溝210aおよび第2の溝210bの内面のうち、非導電性音響整合層210の前面側端部から、背面側端部に至る部分までを通るように貫通孔のみに導電性膜を設けてもよい。また、接続リードを設けることが可能であればそのような構成を採用することも可能である。
【0090】
また、上述の非導電性音響整合層210においては、第1の溝210aが配列方向と平行に設けられ、第2の溝210bが配列方向xと傾斜するように設けられている。しかしながら、第2実施形態の超音波トランスデューサ100としてはこのような構成に限らず、第1の溝210aが配列方向xと傾斜するように設けられていてもよく、第2の溝210bが配列方向yと平行に設けられていてもよい。
【0091】
〈溝ピッチ例5〉
上述のように第2実施形態において第1の溝210aを配列方向と傾斜させる場合、溝ピッチPkは、素子幅Pw以下として設定することが可能である。
【0092】
〈溝ピッチ例6〉
第2実施形態において第1の溝210aを配列方向と傾斜させる場合、第1の溝210aの溝ピッチPkは、素子ピッチPeとの関係において、下記の(3)式のように設定することが可能である。ただし、製造工程における誤差を含むものとする。
[数3]

Ph=Pk/sinθ≦Pw…(3)
【0093】
〈溝ピッチ例7〉
図16に例示するように、第2実施形態の第2の溝210bの溝ピッチPkは、素子ピッチPeと等しく設定することが可能である。ただし、製造工程における誤差を含むものとする。
【0094】
〈溝ピッチ例8〉
また、第2実施形態において第1の溝210aを配列方向と傾斜させる場合、第1の溝210aの溝ピッチPkは、素子ピッチPeとの関係において、下記の(4)式のように設定することが可能である。ただし、製造工程における誤差を含むものとする。
[数4]
Ph=Pk/sinθ=Pe…(4)
【0095】
非導電性音響整合層210それぞれには、少なくとも一つ以上、前後方向(図1のz方向参照)に導通路としての貫通孔を設ける必要があるが、上述の「溝ピッチ例5」、「溝ピッチ例7」によれば、第1の溝210aを配列方向xに対して傾斜させても、第2の溝210bとの関係において貫通孔の形成に影響を及ぼすおそれを回避することができる。また「溝ピッチ例6」、「溝ピッチ例8」によれば、さらに非導電性音響整合層210に貫通孔を形成するための溝ピッチPkの設定が容易となる。なお、「θ」の角度の範囲は、30°超であって、かつ90°未満(30°<θ<90°)に設定することにより、溝ピッチPkの設定がさらに容易となる。
【0096】
また、音響整合層を3層以上とすることも可能であり、例えば、前面基板の前方に音響整合層を配置することも可能である。なお、第1の溝210aおよび第2の溝210bの好適な幅(配列方向における長さ)については、第1実施形態と同様であるため説明を割愛する。
【0097】
(超音波トランスデューサの製造方法の概略)
次に図13を参照し、第2実施形態にかかる超音波トランスデューサの製造方法、特に非導電性音響整合層210の第1の溝210aおよび第2の溝210bを設ける工程を主として説明する。
【0098】
《第1の溝形成》
第2実施形態の超音波トランスデューサにおける音響整合層も、非導電性音響整合層210に必要な材料で構成された非導電性材料ブロック2101を用いる。第2実施形態の超音波トランスデューサを形成するにあたり、まず図13に示すように、非導電性材料ブロック2101に対し、(2次元配列分割後における)x方向に並んでy方向に所定のピッチで第1の溝210aを設けられる。この第1の溝210aは、非導電性材料ブロック2101の背面から、非導電性材料ブロック2101の中間位置までの深さを有するように設けられる。つまり、非導電性材料ブロック2101を貫通しないように、非導電性材料ブロック2101における背面と前面の間の中間部分まで設けられる。
【0099】
また第1の溝210aも、第1実施形態と同じく、素子配列のx方向に並んで設けられる場合には、少なくとも列数分に応じた数となる。またy方向に並んで第1の溝210aを設ける場合は、少なくとも行数分に応じた数となる。なお、図13における非導電性材料ブロック2101の第1の溝210aの数は、概念上示されるものである。
【0100】
第1の溝210aの設けるにあたって、一例として切り込み幅(第1の溝210aの幅)を、素子幅の約30%以下、かつ、10μm以上と設定してもよい。このような条件における素子幅に対しての切り込み幅の一例としては、素子幅350μmに対して、50μm幅とすることが考えられる。また切り込み幅のピッチは0.4mm程度とすることが可能である。このような切込み幅であれば、超音波パルスの放射性能、超音波トランスデューサの振動モード、導電性膜を設ける作業などにおいて有効である。
【0101】
《第2の溝形成/図13》
非導電性材料ブロック2101に対し、第1の溝210aを設けたら、図13に示すように、第2の溝210bを設ける。この第2の溝210bは、非導電性材料ブロック2101の前面から、第1の溝210aの前方側端部を越えた非導電性音響整合層210の中間の位置までの深さを有するように設けられる。つまり、非導電性材料ブロック2101を貫通しないように、非導電性材料ブロック2101における背面と前面の間の第1の溝210aとの交差部220より後方まで設けられる。
【0102】
また、第2の溝210bは、非導電性材料ブロック2101に対し所定のピッチで複数設けられる。また、第2の溝210bは、非導電性材料ブロック2101に対し、後の分割工程において分割された非導電性音響整合層210の配列方向x(図14等参照)に対して所定の角度分、傾斜させて設けられている。その上さらに第2の溝210bは、第1の溝210aと交差するように設けられる。第2の溝210bの傾斜角度は、第2の溝210bを第1の溝210aと交差させるように設けるために、例えば90°未満に設定される。
【0103】
また、第2の溝210bを設けるピッチは、上述の溝ピッチ例1〜4などに示されるように、非導電性音響整合層210それぞれに少なくとも1つ以上、導通路としての貫通孔が形成されるように設定される。また貫通孔は超音波トランスデューサの前後方向(図1のz方向参照)に形成される。
【0104】
第2の溝210bを設けるにあたり、切り込み幅(第2の溝210bの幅)を、超音波パルスの放射性能、超音波トランスデューサの振動モード、導電性膜を設ける作業などの観点から、例えば素子幅の約30%以下、かつ、10μm以上に設定してもよい。なお、第1の溝210aと第2の溝210bを設ける順序は、いずれが先であってもよい。
【0105】
なお、第2実施形態の導電性膜形成・樹脂充填工程、ブロック接続工程、圧電体接続工程、分割溝形成工程、前面基板および背面基板の接続工程、バッキング材の接続工程ならびに、音響レンズの接続工程は第1実施形態と同様であるため、説明を割愛する。
【0106】
(作用・効果)
以上説明した第2実施形態にかかる超音波トランスデューサおよび超音波プローブの作用および効果について説明する。
【0107】
上記説明したように第2実施形態の超音波トランスデューサでは、圧電体の前方に配置された非導電性音響整合層210それぞれに、前面電極との境界面(非導電性音響整合層210背面)から、中間の位置まで到達する第1の溝210aが設けられている。さらに、非導電性音響整合層210には、導電性音響整合層211との境界面(非導電性音響整合層210前面)から、非導電性音響整合層210の中間位置、すなわち第1の溝210aの前端よりさらに後方側の位置まで第2の溝210bが設けられている。これら第1の溝210aおよび第2の溝210bの交差部220が形成される結果、前面電極との境界面から、導電性音響整合層との境界面まで至る貫通された貫通孔が形成される。さらに第1の溝210aおよび第2の溝210bの内面における、少なくとも非導電性音響整合層210背面側の端部(第1の溝210aおよび第2の溝210b後方端部)から、導電性音響整合層に至る部分までを通るように導電性膜110cが設けられている。
【0108】
このような非導電性音響整合層210有する超音波トランスデューサの製造工程では、非導電性材料ブロック2101に第1の溝210aおよび第2の溝210bを設けることにより貫通孔を形成し、この貫通孔に、導電性膜を設けるのみで、前面電極から前面基板までの導通路を形成することが可能である。さらに非導電性材料ブロック2101と、導電性材料ブロック、圧電体材料ブロックとを積層させ、次にこれらの積層体に対しxy方向に分割溝を設けることによって、圧電体、非導電性音響整合層210および導電性音響整合層の積層体を備えて構成される素子の2次元配列を形成する。
【0109】
このような製造工程によって製造される超音波トランスデューサによれば、非導電性音響整合層210の導通路の形成、ひいては超音波トランスデューサの製造工程の煩雑さを回避することができること、前面電極から前面基板までの導通路を形成することの双方を達成可能となる。すなわち、非導電性音響整合層210に第1の溝210a、第2の溝210bおよび導電性膜を有する構成であれば、その製造工程において、前面電極から導電性音響整合層までの導通路を確実に設けることができるだけでなく、その導通路を設ける工程は、非導電性材料ブロック2101に第1の溝210aおよび第2の溝210bを設けるだけなので、簡便である。
【0110】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態にかかる超音波トランスデューサおよび超音波トランスデューサが設けられた超音波プローブについて図18を参照して説明する。図18は、超音波トランスデューサの非導電性音響整合層に設けられた第1の溝および第2の溝の一例の概要を示す非導電性音響整合層の概略上面図である。図中の破線で示す非導電性音響整合層群330は、非導電性音響整合層310の2Dアレイ素子配列の全体を、概念的に破線で一括りとして示すものである。なお、第3実施形態については、第2実施形態と異なる部分のみ説明し、その他重複する部分については説明を割愛する。また、図18において示される第1の溝310aおよび第2の溝310bの数は概念上示されるものである。
【0111】
図18に示すように第3実施形態における超音波トランスデューサにおいては、非導電性音響整合層310に設けられた第1の溝310aおよび第2の溝310bの双方が傾斜している。なお、図18において、実線によって示された溝は第2の溝310bであり、一点鎖線によって示された溝は第1の溝310aである。
【0112】
すなわち第3実施形態における第2の溝310bは、素子配列方向に対し傾斜して設けられ、かつ第1の溝310aも素子配列方向に対し傾斜して設けられている。また、第2実施形態と同じく第2の溝310bおよび第1の溝310aは、非導電性音響整合層310の前後方向(図1のz方向参照)における中間部分において交差する。また図18に示すように、第2の溝310bおよび第1の溝310aが交差する交差部310fは、非導電性音響整合層310のそれぞれに少なくとも1つ以上設けられる。
【0113】
また、第3実施形態における第2の溝310bおよび第1の溝310aの溝ピッチは第2実施形態において説明した溝ピッチ例1〜4に準じて設定することが可能である。
【0114】
(作用・効果)
以上の第3実施形態にかかる超音波トランスデューサおよび、当該超音波トランスデューサを含む超音波プローブの作用および効果について説明する。
【0115】
第3実施形態の超音波トランスデューサでは、圧電体の前方に配置された非導電性音響整合層それぞれに、前面電極との境界面(非導電性音響整合層310背面)から、中間の位置まで到達する第1の溝310aが設けられている。さらに、非導電性音響整合層310には、導電性音響整合層との境界面(非導電性音響整合層310前面)から、非導電性音響整合層310の中間位置、すなわち第1の溝310aの前端よりさらに後方側の位置まで第2の溝310bが設けられている。これら第1の溝310aおよび第2の溝310bの交差部310fが形成される結果、前面電極との境界面から、導電性音響整合層との境界面まで至る貫通された貫通孔が形成される。さらに第1の溝310aおよび第2の溝310bの内面における、少なくとも非導電性音響整合層310背面側の端部(第1の溝310aおよび第2の溝310b後方端部)から、導電性音響整合層に至る部分までを通るように導電性膜310cが設けられている。
【0116】
このような非導電性音響整合層310有する超音波トランスデューサの製造工程では、非導電性材料ブロックに第1の溝310aおよび第2の溝310bを設けることにより貫通孔を形成し、この貫通孔に、導電性膜を設けるのみで、前面電極から前面基板までの導通路を形成することが可能である。さらに非導電性材料ブロックと、導電性材料ブロック、圧電体材料ブロックとを積層させ、次にこれらの積層体に対しxy方向に分割溝を設けることによって、圧電体、非導電性音響整合層310および導電性音響整合層の積層体を備えて構成される素子の2次元配列を形成する。
【0117】
このような製造工程によって製造される超音波トランスデューサによれば、非導電性音響整合層310の導通路の形成、ひいては超音波トランスデューサの製造工程の煩雑さを回避することができること、前面電極から前面基板までの導通路を形成することの双方を達成可能となる。すなわち、非導電性音響整合層310に第1の溝310a、第2の溝310bおよび導電性膜を有する構成であれば、その製造工程において、前面電極から導電性音響整合層までの導通路を確実に設けることができるだけでなく、その導通路を設ける工程は、非導電性材料ブロックに第1の溝310aおよび第2の溝310bを設けるだけなので、簡便である。
【0118】
[変形例]
次に、上述した第1実施形態〜第3実施形態の超音波トランスデューサの変形例について、説明する。上述の超音波トランスデューサにおいては、非導電性音響整合層(110等)の前面側に導電性音響整合層(111等)を配置し、さらに導電性音響整合層の前面側に前面基板(122等)を配置する構成であり、非導電性音響整合層と前面基板とは、導電性音響整合層を介して電気的接続をとっている。しかしながらこれらの実施形態の超音波トランスデューサは、このような構成に限られない。例えば、導電性音響整合層を含まず非導電性音響整合層の前面側に前面基板を設ける構成であってもよい。
【0119】
この変形例が適用された第1実施形態〜第3実施形態の超音波トランスデューサにおいても非導電性音響整合層の導通路の形成の煩雑さを回避することができること、前面電極から前面基板までの導通路を形成することの双方を達成可能となる。
【0120】
この発明の実施形態を説明したが、上記の実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0121】
100 超音波トランスデューサ
110、210、310 非導電性音響整合層
110a、210a、310a 第1の溝
110b、210b、310b 第2の溝
110c、210c 導電性膜
110d 樹脂
110e 貫通孔
110f、310f 交差部
111、211 導電性音響整合層
112 前面電極
114 圧電体
116 背面電極
118 バッキング材
120 背面基板
122 前面基板
230 非導電性音響整合層群
1101、2101 非導電性材料ブロック
1111 導電性材料ブロック
1141 圧電体材料ブロック
Pe 素子ピッチ
Pk 溝ピッチ
Pw 素子幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元配置された複数の圧電体と、
前記複数の圧電体それぞれに設けられた電極と、
前記電極側の第1の面と、該第1の面の反対側である第2の面とを有し、前記圧電体に応じて2次元配置された非導電性音響整合層と、
前記第2の面側に配置された基板と、を備え、
前記第1の面それぞれには、該第1の面と前記第2の面の間の中間部分に至る深さを有する第1の溝が設けられ、
前記第2の面それぞれには少なくとも前記中間部分まで至る深さを有し、前記第1の溝と交差する第2の溝が設けられ、
前記電極と前記第2の面とは、前記第1の溝と、該第1の溝及び前記第2の溝の交差部と、第2の溝とを介して、導通されていること、
を特徴とする超音波トランスデューサ。
【請求項2】
前記非導電性音響整合層と前記基板との間に、前記圧電体に応じて2次元配置された導電性音響整合層をさらに備えたこと、
を特徴とする請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項3】
前記交差部は、前記複数の圧電体のそれぞれに対応して少なくとも1つ形成されること、
を特徴とする請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項4】
前記第1の溝は、前記圧電体の幅以下である第1のピッチを空けて設けられ、
前記圧電体の幅をPw、前記第1のピッチをPk、該圧電体の配列方向と第1の溝とが成す角をθとした場合に、
Pk/sinθ≦Pw
であること、
を特徴とする請求項3に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項5】
前記第2の溝は、前記圧電体の幅以下である第2のピッチを空けて設けられ、
前記圧電体の幅をPw、前記第2のピッチをPk、該圧電体の配列方向と第2の溝とが成す角をθとした場合に、
Pk/sinθ≦Pw
であること、
を特徴とする請求項3に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項6】
前記第1の溝は、前記複数の圧電体のピッチと略等しい第1のピッチを空けて設けられること、
を特徴とする請求項3に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項7】
前記非導電性音響整合層のピッチをPe、前記第1の溝のピッチをPk、該圧電体の配列方向と第1の溝とが成す角をθとした場合に、
Pk/sinθ=Pe
であること、
を特徴とする請求項3に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項8】
前記第2の溝は、前記複数の圧電体のピッチと略等しい第2のピッチを空けて設けられること、
を特徴とする請求項3に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項9】
前記非導電性音響整合層のピッチをPe、前記第2の溝のピッチをPk、該圧電体の配列方向と第2の溝とが成す角をθとした場合に、
Pk/sinθ=Pe
であること、
を特徴とする請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項10】
前記θは、0°超かつ90°未満であること、
を特徴とする請求項4、5、7、9のいずれかに記載の超音波トランスデューサ。
【請求項11】
前記第1の溝の内面には導電性材料が設けられていること、
を特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の超音波トランスデューサ。
【請求項12】
前記第2の溝の内面には導電性材料が設けられていること、
を特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の超音波トランスデューサ。
【請求項13】
前記複数の圧電体は互いに直交する第1の方向および第2の方向に沿って前記2次元配置され、
前記第1の溝は前記第1の方向に沿って配列され、
前記第2の溝は前記第2の方向に沿って配列され、
前記第1の溝は、前記第1の方向に対応して、前記非導電性音響整合層を貫通して設けられており、
前記第2の溝は、前記第2の方向に対応して前記非導電性音響整合層を貫通して設けられていること、
を特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の超音波トランスデューサ。
【請求項14】
第1の面と該第1の面の反対側である第2の面を有する非導電性音響整合層を有する超音波トランスデューサの製造方法であって、
前記非導電性音響整合層に対し、前記第1の面から中間部分まで至る第1の溝を形成する工程と、
前記非導電性音響整合層の前記第2の面から少なくとも前記中間部分まで至る深さを有し、前記第1の溝と交差する第2の溝を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする超音波トランスデューサの製造方法。
【請求項15】
前記第1の溝および前記第2の溝の内面に導電性材料を設ける工程と、
前記第1の面に導電性音響整合層を、前記第2の面に圧電体をそれぞれ積層することにより積層体を形成する工程と、
前記積層体を、互いに直交する第1の方向および第2の方向に分割する工程と、をさらに備えたこと、
を特徴とする請求項14に記載の超音波トランスデューサの製造方法。
【請求項16】
前記第1の溝および前記第2の溝の内面に導電性材料を設ける工程と、
前記第1の面に基板を、前記第2の面に圧電体をそれぞれ積層することにより積層体を形成する工程と、
前記積層体を、互いに直交する第1の方向および第2の方向に分割する工程と、をさらに備えたこと、
を特徴とする請求項14に記載の超音波トランスデューサの製造方法。
【請求項17】
超音波トランスデューサと、
前記超音波トランスデューサと外部装置との間のインターフェースと、を備え、
前記超音波トランスデューサは、
2次元配置された複数の圧電体と、
前記複数の圧電体それぞれに設けられた電極と、
前記電極側の第1の面と、該第1の面の反対側である第2の面とを有する非導電性音響整合層と、
前記第2の面側に配置された基板と、を備え、
前記第1の面それぞれには、該第1の面と前記第2の面の間の中間部分に至る深さを有する第1の溝が設けられ、
前記第2の面それぞれには少なくとも前記中間部分まで至る深さを有し、前記第1の溝と交差する第2の溝が設けられ、
前記電極と前記第2の面とは、前記第1の溝と、該第1の溝及び前記第2の溝の交差部と、第2の溝とを介して、導通されていること、
を特徴とする超音波プローブ。

【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−244342(P2012−244342A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111392(P2011−111392)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】