説明

超音波プローブおよび超音波トランスデューサ

【課題】超音波トランスデューサにおける圧電素子配列の位置精度を確保することにより、超音波プローブから放射される超音波ビームの形状や放射方向の精度を確保することが可能な超音波トランスデューサおよび超音波プローブを提供する。
【解決手段】超音波トランスデューサおよび超音波プローブにおいて、第1プリント基板に対し第1の圧電体および第2圧電体が配置されると、第1プリント基板の第1電極リード及び第2電極リードが第1の凹溝または第2の凹溝に収納され、第1プリント基板の面と、第1の圧電体および第2の圧電体の側面との間に生じる間隙を低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は超音波診断装置に用いられる超音波プローブに内蔵される超音波トランスデューサに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波プローブにより被検体の所望の診断部位の情報を取得するため、その部位に超音波を送波(送信)し、音響インピーダンスの異なる被検体内の組織境界から反射波を受信する。このようにして、超音波プローブにより超音波を走査して、被検体の体内組織の情報を得て画像化することにより診断を行うものである。この超音波プローブは、被検体等に超音波を送波し、反射波を受波するために、超音波トランスデューサを有している。
【0003】
近年においては、超音波プローブにおける1次元アレイの超音波トランスデューサを回転・揺動して用いる方法、または圧電素子をマトリックス状に配列した2次元アレイの超音波トランスデューサを用いた電子走査式の超音波プローブによって、3次元で超音波画像収集・表示を行うシステムの検討が進んできている。3次元の超音波画像は、2次元画像において見逃されやすい部位の診断に有用であり、また、診断や計測に適した断層像を得ることができ、診断精度の向上が期待できる。
【0004】
ただし、電子走査式の2次元アレイの超音波トランスデューサを使用する方法においては、圧電素子が2次元的に配列されることにより、圧電素子の素子数の増大(例えば、10倍〜100倍)をともなってしまう。圧電素子と超音波診断装置本体との間は、電気信号の処理、圧電素子に対しての電気信号の送受信等を行う中継基板を介して接続されており、この圧電素子数の増大によって、当該中継基板と圧電素子との電気的な接続を行う電極リード数は大幅に増加する。
【0005】
この電極リード数の大幅な増加は、超音波プローブにおける圧電素子(圧電体)と、中継基板における送受信回路および超音波診断装置本体等との接続構造の複雑化を招く。接続構造が複雑化すると2次元アレイの超音波トランスデューサの実現を困難とするおそれが生じる。よって、2次元アレイ上に配列された圧電素子と後段の回路との接続、例えば電極リードと中継基板との接続構造や、圧電素子と電極リードとの接続構造を複雑化せずに、2次元アレイの超音波トランスデューサの実現を可能とする構成が必要となる。
【0006】
この問題を解消するための各圧電素子と電極リードの接続構造の例として、例えば、圧電素子配列に対応する基板を積層して電極リードを引き出す構造を採用し、微細な圧電素子配列に対応する電極リードのピッチ幅が、リード中継基板の各層に形成されたパターン配線によって拡大され、中継回路となるIC基板接続側に整列して引き出される構造が提案されている(例えば、特許文献1)。この構造によれば、超音波プローブにおける2次元アレイ状に配列された超音波トランスデューサの信号電極から、多数の電極リードを引き出すことが可能で、かつ圧電素子の音響特性の維持、IC等の実装等を容易に実現することができる。
【0007】
しかしながら特許文献1に記載の超音波プローブは、信号電極等から引き出された電極リードのピッチを、超音波トランスデューサに接続した中継基板のパターン配線によって拡大するため、中継基板と超音波トランスデューサとの接続部分が大型化してしまうおそれがある。
【0008】
そこで発明者等は、中継基板との接続構造の大型化を防止するとともに、上記超音波トランスデューサのように多数の電極リードを引き出し可能で、かつ圧電素子の音響特性の維持、IC等の実装を容易に実現することが可能な超音波トランスデューサを発案する。この超音波トランスデューサの構造の例を図8に示す。図8は、2次元アレイの超音波トランスデューサを構成する超音波トランスデューサユニット300aを示す概略分解斜視図である。なお、図8においては超音波トランスデューサの全体の図示を省略し、一部分のみの構造を示しているが、その他の部分も当該図に示す構造とほぼ同一であり、当該構造(超音波トランスデューサユニット300a)が連続して積層されることにより超音波トランスデューサが形成されるものである。
【0009】
図8に示すように、超音波トランスデューサを構成する超音波トランスデューサユニット300aにおける、プリント基板330の表裏面には2次元アレイの1列分の圧電体が配置される。すなわち、プリント基板330の表面(図8の左側の面)には、音響整合層310、第1積層圧電体(圧電素子)314、およびバッキング材(負荷材相)318の順に積層されたものが並列に配列され、かつプリント基板330の裏面には、音響整合層320、第2積層圧電体(圧電素子)324、およびバッキング材328(負荷材相)の順に積層されたものが、表面の第1積層圧電体等と同じように並列配置されて構成される。このプリント基板330の表面および裏面には導電性の電極リード331が並列配置され形成されている。
【0010】
また図8に示すように、音響整合層とプリント基板330の両面における各積層圧電体(314・324)との間には、積層圧電体の各側面に露出されるように形成された前面電極312・322が配設される。この前面電極312・322の反対側、つまりバッキング材と積層圧電体との間には、当該各側面に露出されるように形成された背面電極316・326が配設される。さらに積層された圧電素子それぞれの間には、第1内部電極312a・322aおよび第2内部電極316a・326aが形成される。
【0011】
またこの前面電極312・322および第1内部電極312a・322aは、共に同種(正極または負極)の電極となるように構成されている。同様に背面電極316・326および第2内部電極316a・326aも共に同種の電極、かつ前面電極・第1内部電極と異なる電極となるように構成されている。このように構成することにより、1つの圧電素子が異極の電極に挟まれることになり、当該圧電素子を電気信号で駆動可能となる。
【0012】
また図8に示すように、導電性を有する金属薄膜370によって、プリント基板330と、当該プリント基板330の両面に配設された各積層圧電体(314・324)とが、スパッタ、蒸着など種々の方法で接着される。つまり、この金属薄膜370を用いることによって前面電極312・322等の各電極とプリント基板330側の各電極リード(配線パターン)との電気的な接続を強化するとともに、各積層圧電体とプリント基板との接着を行う。
【0013】
図8に示すように、この金属薄膜370は積層圧電体314・324の側面における背面電極316・326から前面電極312・322までにわたって形成される。したがって、第1積層圧電体314の側面は、金属薄膜370が形成されたときに、前面電極312および第1内部電極312aまたは、背面電極316および第2内部電極316aのいずれかにのみ接触するように構成されている。同様に、第2積層圧電体324の側面は金属薄膜370が、前面電極322および第1内部電極322aまたは、背面電極326および第2内部電極326aのいずれかのみに接触するように構成されている。このようにすることで、積層圧電体における1つの圧電素子を異極の電極によって挟む構成とすることができる。
【0014】
この第1積層圧電体314の側面および第2積層圧電体324の側面の構造について図9を参照して説明する。図9(A)は、超音波トランスデューサの形成過程において溝が形成される前の振動子ブロックを示す概略斜視図である。図9(B)は、超音波トランスデューサの形成過程において溝が形成され、樹脂が充填された後の振動子ブロック側面を示す部分拡大図前である。図9(C)は、図9(B)に示す絶縁樹脂充填後の振動子ブロックの側面に金属薄膜を形成する過程を示す概略斜視図である。図9(D)は、振動子ブロックに金属薄膜が形成された後の状態を示す概略斜視図である。
【0015】
超音波トランスデューサでは次のように、超音波トランスデューサユニット300a(図8)を形成する。すなわち、まず1つの圧電素子は、その両面から異極の電極に挟まれるようにするために、図9(A)に示す分割前の超音波トランスデューサにおいて、第1積層圧電体314の側面(図の右側の側面)に露出した金属薄膜370と接触させない電極の部分を、図9(B)に示すように、第1積層圧電体314ごと削って圧電体の積層方向と直交する溝を形成する。
【0016】
つまり、まず第1積層圧電体314の側面(図の右側の面)において、前面電極312が形成されている端縁において、圧電素子の積層方向と直交する溝を形成する。さらに当該側面において第1内部電極312aが設けられている圧電素子の境界部分において、圧電素子の積層方向と直交する溝を形成する。これらの溝に絶縁樹脂311・315を充填する。さらに絶縁樹脂311・315が形成された側面に対して反対側となる側面では、背面電極316が形成されている端縁、および第2内部電極316aが設けられている圧電素子の境界部分において、圧電素子の積層方向と直交する溝を形成し、その溝に絶縁樹脂317・313を充填する。このように形成した溝に絶縁樹脂311・315・313・317を充填させることで、溝が形成されている部分に設けられている電極および金属薄膜を電気的に結合させないように構成することができる。
【0017】
さらに図9(B)に示す絶縁処理後の圧電素子の側面は、例えば当該溝上で絶縁樹脂(311等)を硬化させた後、当該溝からあふれた絶縁樹脂311等を研削し、かつ第1積層圧電体314側面の表面研磨を行って絶縁樹脂の表面の平坦化を行うことによって形成される。
【0018】
また第1積層圧電体314側面の表面研磨工程が終了すると、図9(C)に示すように当該側面に金属薄膜370を形成し、図9(D)に示すような振動子ブロックを形成する。その後、この振動子ブロックを分割することによって、2次元アレイの超音波トランスデューサにおける1列分を形成する。また当該プリント基板330の裏面には第1積層圧電体314とほぼ同じ工程で、図8に示すような、当該第1積層圧電体314とほぼ同じ構造の第2積層圧電体324を形成する。その後、図8に示すようにプリント基板330の表面と第1積層圧電体314との接着を行い、これによって超音波トランスデューサユニット300aを形成する。
【0019】
積層圧電体の側面を上記のように構成することによって、金属薄膜370は積層圧電体の側面に露出した同種の電極(正極または負極)のみに接触する。したがって当該金属薄膜370に接するプリント基板330の電極リード331にも当該同種の電極のみを接続させることができる。
【0020】
以上説明した超音波トランスデューサは、プリント基板330の表面だけでなく裏面にも電極リード331が設けられており、1枚のプリント基板の1つの面にのみ圧電素子を配列する構成と比較して、2列の圧電素子に対し1枚の基板で後段電子回路との接続を行うことができ、超音波トランスデューサと後段電子回路との接続構造を単純化し、かつ当該接続部分の小型化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2001−292496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
また上記説明したように、図8および図9に記載の超音波プローブの製造工程では、積層圧電体の側面に形成した溝に対し絶縁樹脂311等を充填し、充填した絶縁樹脂311等が硬化した後、あふれた樹脂の研削、当該側面の表面研磨を必要とする。しかし振動子ブロックは非常に薄い(例えば0.2mm程度)ため、この研削作業、表面研磨作業は非常に煩雑である。
【0023】
さらに、振動子ブロックが薄いため、この研削作業と研磨作業によって振動子ブロックの厚さにバラつきが出てしまうおそれが生じうる。さらに表面が平坦にならないおそれが生じうる。図8に示すような超音波トランスデューサは、超音波トランスデューサユニット300aを積み重ねて形成されるものであるから、振動子ブロックの厚さのバラつきや、表面の凹凸によって、振動子ブロックを積み重ねたときに、2次元状に配列される圧電体の位置精度が悪くなってしまう。超音波プローブの超音波トランスデューサにおける積層圧電体が本来の位置からずれてしまうと、超音波トランスデューサから放射される超音波ビームに悪影響を与えるおそれがある。
【0024】
すなわち、超音波トランスデューサの各積層圧電体を駆動したときに、位置がずれた積層圧電体それぞれから放射される超音波が、超音波トランスデューサ全体から放射される超音波ビームの形状や、放射方向にずれを生じさせてしまうおそれがある。結果として、超音波診断装置によって生成される超音波画像に支障をきたすおそれもある。従来の超音波トランスデューサはこのような第1の問題を有する。
【0025】
また、上記説明したような超音波トランスデューサでは、圧電体とプリント基板との間に、電極リードが介在することになる。また、このような2次元アレイの超音波トランスデューサを形成する際には、プリント基板上に圧電体を並列配置した後、当該並列配置された1列分の超音波トランスデューサを複数積層することにより超音波トランスデューサの2次元配列を形成する工程を経る。
【0026】
しかしながら、平面状の圧電体側面を平板状のプリント基板に配置するときに、電極リードが介在してしまうため、電極リードの厚さの分だけ圧電体側面とプリント基板の面が密着しない。すなわち、プリント基板上に圧電体を並列配置する際、また1列分の超音波トランスデューサを複数積層する際に、プリント基板に対して圧電体の位置がずれてしまうおそれがある。また、圧電体は電極リードに対してもずれてしまうおそれがある。
【0027】
当該位置ずれが生じてしまうと、超音波トランスデューサの各圧電体を駆動したときに、位置がずれた圧電体それぞれから放射される超音波が、超音波トランスデューサ全体から放射される超音波ビームの形状や、超音波の放射方向にずれを生じさせてしまうおそれがある。結果として、超音波診断装置によって生成される超音波画像に支障をきたすおそれもある。このように図8に示すような超音波トランスデューサにおいては上記のような第2の問題があった。
【0028】
この発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、超音波トランスデューサにおける圧電素子配列の位置精度を確保することにより、超音波プローブから放射される超音波ビームの形状や放射方向の精度を確保することが可能な超音波トランスデューサおよび超音波プローブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
実施形態にかかる超音波トランスデューサは、第1プリント基板と、複数の第1の圧電体と、複数の第2の圧電体と、複数の第1電極リードと、複数の第2電極リードとを備える。第1の圧電体における超音波放射方向側の前面には前面電極が形成される。また第1の圧電体における前面と反対側の背面には背面電極が形成される。また、第1の圧電体は、第1の凹溝を有する。第1の凹溝は、第1の圧電体の前面および背面と直交する第1の側面における当該前面電極側の端縁から当該背面電極側の端縁へ向かって形成される。また第1の圧電体の第1の側面に対し反対側となる第2の側面において第2の凹溝を有する。第2の凹溝は、当該第2の側面において前面電極側の端縁から背面電極側の端縁へ向かって形成される。また、第1の圧電体は前面および背面が前記第1プリント基板の表面に直交し当該第1の側面または第2の側面が当該表面に対向するように並列に配置される。第2の圧電体は、前記第1の圧電体と同一の構造である。また第2の圧電体は、その前面および背面が前記第1のプリント基板の前記表面に対し反対側となる裏面に直交する。さらに第2の圧電体は、前記第1の凹溝または第2の凹溝が第1プリント基板の裏面に対向するように並列に配置される。第1電極リードは、前記第1プリント基板の前記表面上に形成される。また、第1電極リードは前記第1の圧電体の第1の凹溝または第2の凹溝に収納される。また、第1電極リードは第1の圧電体それぞれの前記前面電極または背面電極の一方と直接にまたは間接に結合される。第2電極リードは、前記第1プリント基板の前記裏面上に形成される。また、第2電極リードは前記第2の圧電体の前記第1の凹溝または第2の凹溝に収納される。また、第2電極リードは該第2の圧電体それぞれの前記前面電極または背面電極の一方と直接にまたは間接に結合される。
【発明の効果】
【0030】
請求項1および7に記載の発明によれば、超音波プローブにおける超音波トランスデューサにおいて、プリント基板の表裏面に圧電素子をそれぞれ配列しているので、2次元アレイの超音波トランスデューサの2列分の圧電素子を1枚のプリント基板で配線することができる。したがって、超音波プローブにおける超音波トランスデューサにおいて後段電子回路との接続構造を単純化することが可能となる。さらに超音波トランスデューサに対して送受信する電気信号の処理を容易にすることが可能となる。
【0031】
さらに請求項1に記載の超音波トランスデューサによれば、第1プリント基板に対し第1の圧電体および第2圧電体が配置されると、第1プリント基板の第1電極リード及び第2電極リードが第1の凹溝または第2の凹溝に収納される超音波トランスデューサを有する。したがって、第1プリント基板の面と、第1の圧電体および第2の圧電体の側面との間に生じる間隙を大幅に低減させることができる。その結果、第1プリント基板の面と第1の圧電体および第2の圧電体の側面とを密着または近接させることが可能となり、第1プリント基板に対して第1の圧電体および第2の圧電体の位置がずれてしまう事態を防止することが可能となる。
【0032】
また、請求項7に記載の超音波プローブによれば、第1プリント基板に対し第1の圧電体および第2圧電体が配置されると、第1プリント基板の第1電極リード及び第2電極リードが第1の凹溝または第2の凹溝に収納される超音波トランスデューサを有する。したがって、第1プリント基板の面と、第1の圧電体および第2の圧電体の側面との間に生じる間隙を大幅に低減させることができる。その結果、第1プリント基板の面と第1の圧電体および第2の圧電体の側面とを密着または近接させることが可能となり、第1プリント基板に対して第1の圧電体および第2の圧電体の位置がずれてしまう事態を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(A)この発明の第1実施形態にかかる超音波トランスデューサを側方から見た状態を示す概略斜視図である。 (B)この発明の第1実施形態にかかる超音波トランスデューサを構成する超音波トランスデューサユニットの構成を示す概略分解斜視図である。
【図2】(A)この発明の第1実施形態にかかる超音波トランスデューサの製造工程において、圧電体ブロックに金属薄膜が形成される過程を示す概略斜視図である。 (B)図2(A)の圧電体ブロックの側面に金属薄膜が形成された状態を示す概略斜視図である。 (C)図2(B)の圧電体ブロックの側面に溝が形成された状態を示す概略斜視図である。 (D)図2(C)の概略部分拡大図である。
【図3】(A)図2(B)の圧電体ブロックがプリント基板に配置される過程を示す概略斜視図である。 (B)図3(A)における超音波トランスデューサユニットを積層した後、分割される前の超音波トランスデューサを示す概略斜視図である。
【図4】超音波トランスデューサの接続方法の一例であり、本実施形態における超音波トランスデューサとIC基板とを接続する機構および、IC基板上のICと超音波診断装置本体に接続されるケーブルとを接続する機構を示す概略斜視図である。
【図5】(A)この発明の第2実施形態にかかる超音波トランスデューサを側方から見た状態を示す概略斜視図である。 (B)この発明の第2実施形態にかかる超音波トランスデューサを構成する超音波トランスデューサユニットの構成を示す概略分解斜視図である。
【図6】(A)この発明の第2実施形態にかかる超音波トランスデューサの製造工程において、圧電体ブロックに凹溝や金属薄膜が形成される前の状態を示す概略斜視図である。 (B)図6(A)の圧電体ブロックに対しに凹溝が形成され、金属薄膜が形成される過程を示す概略斜視図である。 (C)図6(A)・(B)の工程を経て、圧電体ブロックに金属薄膜が形成された状態を示す概略斜視図である。 (D)図6(C)の概略部分拡大図である。
【図7】(A)この発明の第2実施形態にかかる超音波トランスデューサの製造工程において、金属薄膜が形成された圧電体ブロックをプリント基板の表裏面に配置する過程を示す概略斜視図である。 (B)図7(A)における超音波トランスデューサユニットを積層した後、分割される前の超音波トランスデューサを示す概略斜視図である。
【図8】2次元アレイの超音波トランスデューサを構成する超音波トランスデューサユニットを示す概略分解斜視図である。
【図9】(A)超音波トランスデューサの形成過程において溝が形成される前の振動子ブロックを示す概略斜視図である。 (B)超音波トランスデューサの形成過程において溝が形成され、樹脂が充填された後の振動子ブロック側面を示す部分拡大図である。 (C)図9(B)に示す絶縁樹脂充填後の振動子ブロックの側面に金属薄膜を形成する過程を示す概略斜視図である。 (D)振動子ブロックに金属薄膜が形成された後の状態を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
[第1実施形態]
以下、この発明の第1実施形態にかかる超音波トランスデューサおよび超音波プローブにつき、図1〜4を参照して説明する。
【0035】
図1(A)は、この発明の第1実施形態にかかる超音波トランスデューサ100を側方から見た状態を示す概略斜視図である。また、図1(B)は、この発明の第1実施形態にかかる超音波トランスデューサを構成する超音波トランスデューサユニット100aの構成を示す概略分解斜視図である。これらの図1(A)・(B)は、本発明による製造方法で製造された超音波トランスデューサの全体図の一例および分解図の一例を示すものである。以下、第1実施形態にかかる超音波トランスデューサの構成について説明する。
【0036】
(超音波トランスデューサの概略構成)
図1(A)に示すように、この実施形態にかかる超音波トランスデューサ100は、圧電素子が3層に積層された第1積層圧電体114および第2積層圧電体124を有する。
また図1(A)に示すように超音波トランスデューサ100では、第1積層圧電体114における圧電素子の積層方向に隣接して音響整合層110が設けられている。また第1積層圧電体114における音響整合層110側と反対側にはバッキング材118(負荷材相)が設けられている。この音響整合層110、第1積層圧電体114およびバッキング材118によって圧電体ブロック101を構成する。同様に第2積層圧電体124の積層方向に隣接して音響整合層120が設けられ、音響整合層120の反対側にはバッキング材128が設けられている。この音響整合層120、第2積層圧電体124およびバッキング材128によって圧電体ブロック102を構成する。また、プリント基板130の表裏面には配線パターンで形成された電極リード131が形成されている。
【0037】
図1(B)に示すように、圧電体ブロック101は、プリント基板130の一面(図1(A)における左側の面/以下「表面」という)に並列に形成された複数の電極リード(不図示)上にそれぞれ並列配置される。また図1(B)に示すように、圧電体ブロック102は、プリント基板130の表面に対し反対側となる裏面(図1(A)における右側の面)において並列に形成された複数の電極リード131上にそれぞれ並列配置される。これらの圧電体ブロックにおける、第1積層圧電体114と第2積層圧電体124は、プリント基板130に対して同方向に配置される。なお、電極リード131は、本発明にかかる「配線パターン」の一例に該当する。
【0038】
また、第1積層圧電体114とプリント基板130、および第2積層圧電体124とプリント基板130とは金属薄膜170によって接続される。このようにプリント基板130の表裏面に対して積層圧電体(114・124)が配置、接続されることにより、超音波トランスデューサ100を構成する超音波トランスデューサユニット100aが形成される。
【0039】
超音波トランスデューサユニット100aそれぞれは、さらにプリント基板130の表裏面に配置され、第1積層圧電体114から第2積層圧電体124へ向かう方向(または第2積層圧電体124から第1積層圧電体114へ向かう方向)に重ね合わせられる。このように、プリント基板130を介して重ね合わせられる超音波トランスデューサユニット100aの方向はすべて同じ方向となる。このようにして積層圧電体が2次元状に配列され、図1(A)に示すような超音波トランスデューサ100が構成される。なお、超音波トランスデューサユニット100aにおけるプリント基板130は、本発明にかかる「第1プリント基板」の一例に該当し、超音波トランスデューサユニット100a間に配置されるプリント基板130は、本発明にかかる「第2プリント基板」の一例に該当する。
【0040】
(積層圧電体における側面および各電極の構成)
図1(B)に示すように、第1積層圧電体114においては、音響整合層110と隣接する前面において前面電極112が設けられる。さらに当該前面に対し反対側となる背面において背面電極116が設けられる。さらに第1積層圧電体114において積層される各圧電素子間には内部電極が設けられる。すなわち、3層に積層された圧電素子のうち、背面側の圧電素子と中間の圧電素子との間には前面電極112に対応して駆動される第1内部電極112aが設けられ、前面側の圧電素子と中間の圧電素子との間には背面電極116に対応して駆動される第2内部電極116aが設けられる。
【0041】
また第1積層圧電体114は、前面に直交するとともに背面に直交し、かつ金属薄膜170が設けられる側面、つまりプリント基板130の表面に対向する第1の側面(図1における右側の面)において背面電極116および第2内部電極116aが露出するように構成されている。また第1積層圧電体114はその第1の側面に対し反対側となる第2の側面において前面電極112および第1内部電極112aが露出するように構成されている。
【0042】
すなわち、第1積層圧電体114の第1の側面においては、電極リード131が前面電極112および第1内部電極112aに電気的に結合しないように、溝111・115が形成される。この溝111の位置は第1積層圧電体114の第1の側面における、第1積層圧電体114と音響整合層110との境界上(前面電極112上)となる。つまり、この溝111は、圧電素子の積層方向と直交し、前面電極112に隣接する圧電素子の端縁(1辺)に沿って形成される。また溝115の位置は第1積層圧電体114の背面側の圧電素子と中間の圧電素子の境界上(第1内部電極112a上)となる。またこの溝115は溝111と略平行となる。
【0043】
さらに第1積層圧電体114の第2の側面においては、プリント基板130の電極リードが背面電極116および第2内部電極116aに電気的に結合しないよう、溝113・117が形成される。溝117は、第1積層圧電体114の第1の側面において背面電極116側の端縁に沿って形成され。溝113は、中間の圧電素子と前面側の圧電素子の境界上(第2内部電極116a上)に沿って形成される。
【0044】
このように、第1積層圧電体114の第1の側面および第2の側面における溝は、圧電素子の積層方向の順に電極1つ置きに形成される。
【0045】
当該第1積層圧電体114に対し、第2積層圧電体124では、図1(B)に示すように第1の側面(図1における右側の面)および第2の側面(図1における左側の面)において溝が形成される位置が逆になる。つまり、第2積層圧電体124の第2の側面は、表面に第1積層圧電体114が配置されたプリント基板130の裏面に対向しているため、当該第2の側面では、背面電極116および第2内部電極116aが露出している。さらに反対側の第1の側面においては前面電極112および第1内部電極112aが露出するように構成されている。
【0046】
すなわち、第2積層圧電体124の第2の側面における前面電極122に隣接した圧電素子の端縁に、溝121が設けられる。この溝121は金属薄膜170と前面電極122とを電気的結合を妨げるものである。また第2積層圧電体124の第2の側面における中間の圧電素子と背面側の圧電素子との境界に溝125が設けられる。この溝125は、金属薄膜170と第1内部電極122aとを絶縁するものである。
【0047】
さらに第2積層圧電体124の第1の側面においては、背面電極126側の端縁に溝127が形成され、中間の圧電素子と前面側の圧電素子の境界には溝123が形成される。溝123・127は、電極リード131が背面電極126および第2内部電極126aに電気的に結合しないようにするものである。
【0048】
このように、第2積層圧電体124の第1の側面および第2の側面における溝も、第1積層圧電体114における溝111・115・113・117と同様、圧電素子の積層方向の順に電極1つおきに形成される。
【0049】
なお、金属薄膜170ごと削られて積層圧電体の側面に形成される、金属薄膜170の間隙および溝111・121は、本発明にかかる「第1の溝」の一例に該当する。金属薄膜170ごと削られて積層圧電体の側面に形成される、金属薄膜170の間隙および溝117・127は、本発明にかかる「第2の溝」の一例に該当する。同様に積層圧電体の側面に形成される、金属薄膜170の間隙および溝115は、本発明にかかる「第3の溝」の一例に該当し、金属薄膜170の間隙および溝113は、本発明にかかる「第4の溝」の一例に該当する。
【0050】
以上のように、第1積層圧電体114および第2積層圧電体124において電極リード131上に配置される第1の側面および第2の側面に金属薄膜170ごと電極1つおきに
溝を形成することにより、積層圧電体における1つの圧電素子を異極の電極によって挟む構成とすることができ、積層圧電体における各側面の電極に電気信号を印加することにより、超音波トランスデューサ100として駆動することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態の超音波トランスデューサ100は、プリント基板130の表面だけでなく裏面にも電極リード131が設けられており、1枚のプリント基板の1つの面にのみ圧電体を配列する構成と比較して、2列の圧電体に対し1枚の基板で後段電子回路との接続を行うことができる。結果として超音波トランスデューサ100とIC基板200(図4参照)とを接続する、プリント基板130と中継基板201との接続構造を単純化することが可能となる。さらに当該プリント基板130と中継基板201との接続部分の小型化を図ることができる。
【0052】
(製造工程)
次に、図1〜3を参照して第1実施形態にかかる超音波トランスデューサ100の製造工程について説明する。図2(A)は、この発明の第1実施形態にかかる超音波トランスデューサ100の製造工程において、圧電体ブロックに金属薄膜170が形成される過程を示す概略斜視図である。また、図2(B)は、図2(A)の圧電体ブロックの側面に金属薄膜が形成された状態を示す概略斜視図である。図2(C)は、図2(B)の圧電体ブロックの側面に溝が形成された状態を示す概略斜視図である。図2(D)は、図2(C)の概略部分拡大図である。また、図3(A)は、図2(B)の圧電体ブロックがプリント基板130に配置される過程を示す概略斜視図である。また、図3(B)は、図3(A)における超音波トランスデューサユニット100aを積層した後、分割される前の超音波トランスデューサ100を示す概略斜視図である。
【0053】
(ステップ1)
まず圧電素子を3層に積層するとともに当該圧電素子間には内部電極を設け、分割前の積層圧電体を形成する。この積層圧電体の前面に前面電極を、背面に背面電極を形成する。さらに当該積層圧電体に対し、前面に音極整合層を、背面にバッキング材を設けることにより、図2(A)に示すような。圧電体ブロック101・102を形成する。この圧電体ブロックは完成時の超音波トランスデューサ100の積層圧電体それぞれの厚さと同じ厚さであり、かつ図1(A)に示すような完成時の超音波トランスデューサ100において2次元的に配列される積層圧電体の1列分と同じ長さを有する。この長さの方向は圧電素子の積層方向と直交する方向である。さらに、図2(B)に示すようにこの圧電体ブロックにおける積層圧電体の前面および背面に対し直交する第1の側面および当該第1の側面の反対側となる第2の側面に対し、金属薄膜170を形成する。なお、この圧電体ブロックは、この後の工程で音響整合層110・120側から分割され、2次元アレイの超音波トランスデューサ100における1列分の積層圧電体を構成するものである。また、第1の側面および第2の側面に対して金属薄膜170が形成された時点においては、第1の側面においても第2の側面においても金属薄膜170がこれらの側面に露出した各電極すべてに接触している。また、この金属薄膜170を形成する工程は、本発明における「第1の工程」の一例に該当する。
【0054】
(ステップ2)
図2(B)のように圧電体ブロックに対し金属薄膜170が形成された後、図2(C)・(D)に示すように、圧電体ブロックにおける第1の側面および第2の側面において所定の位置に溝が形成される。すなわち、溝(111・115・113・117)それぞれは以下のようにして形成される。図2(B)に示すような金属薄膜170が積層圧電体の側面に形成された時点においては、第1積層圧電体114の第1の側面(図2(B)における右側の面)には前面電極112が露出している。この前面電極112が露出している部分、つまり第1の側面における音響整合層110と第1積層圧電体114との境界を、圧電素子の積層方向に対し、直交する方向に金属薄膜170ごと削る。当該部分を削ることにより、図2(C)・(D)に示すような溝111が形成される。さらに当該第1積層圧電体114の第1の側面では、背面側の圧電素子と中間の圧電素子との境界部分に溝111と平行な溝115が形成される。これに対し、図2(C)・(D)に示すように第1積層圧電体114の第2の側面(図2(B)における左側の面)ではバッキング材118と第1積層圧電体114との境界を、圧電素子の積層方向に対し直交する方向に金属薄膜170ごと削る。当該部分を削ることにより、図2(C)・(D)に示すような第1積層圧電体114における第2の側面に溝117を形成する。さらに当該第1積層圧電体114における第2の側面では、前面側の圧電素子と中間の圧電素子との境界部分に溝117と平行な溝113が形成される。
【0055】
(ステップ3)
また、第2積層圧電体124にかかる圧電体ブロックに金属薄膜170が形成された後、当該圧電体ブロックにおいても溝が形成される。ただし、第2積層圧電体124においては、第1の側面(図2(B)における右側の面)と第2の側面における溝の位置が第1積層圧電体114と対称な位置となる。すなわち、第2積層圧電体124の第2の側面において、前面電極122が露出している音響整合層120と第2積層圧電体124との境界を、圧電素子の積層方向に対し直交する方向に金属薄膜170ごと削る。当該部分を削ることにより、溝121が形成される。さらに、当該第2積層圧電体124における第2の側面では、背面側の圧電素子と中間の圧電素子との境界部分に溝121と平行な溝125が形成される。また当該第2の側面に対し第2積層圧電体124における第1の側面においては、バッキング材128と第2積層圧電体124との境界を、圧電素子の積層方向に対し直交する方向に金属薄膜170ごと削る。当該部分を削ることにより、溝127が形成される。さらに当該第2積層圧電体124における第1の側面では、前面側の圧電素子と中間の圧電素子との境界部分に溝127と平行な溝123が形成される。
【0056】
(ステップ4)
第1積層圧電体114および第2積層圧電体124における第1の側面および第2の側面に対し溝がそれぞれ形成された後、圧電体ブロック101と、圧電体ブロック102とは、図3(A)に示すように、プリント基板130の電極リード131上にそれぞれ配置される。すなわち、表裏面に電極リード131が形成されたプリント基板130の表面(図3(A)の左側の面)に対し、圧電体ブロック101を配置する。このときプリント基板130の電極リード131の位置と第1積層圧電体114の第1の側面(図3(A)の右側の面)の位置とを合わせるように配置する。さらにプリント基板130の裏面には、圧電体ブロック102が配置される。当該圧電体ブロック102においても、裏面の電極リード131の位置と第2積層圧電体124の第2の側面(図3(A)の左側の面)の位置とを合わせるように配置する。このように、プリント基板130の表裏面に対して圧電体ブロック101・102をそれぞれ配置することにより、超音波トランスデューサユニット100aを形成する。
【0057】
(ステップ5)
超音波トランスデューサユニット100aが複数形成された後、これらはさらに、プリント基板130を介して積層される。すなわち、図3(A)のようにして超音波トランスデューサユニット100aが形成された後、プリント基板130の表裏面に形成された圧電体ブロック101・102における、プリント基板130と接していない側面に対してプリント基板130を配置する。例えば超音波トランスデューサユニット100aにおける第1積層圧電体114では、第1の側面の反対側の第2の側面に対し新たにプリント基板130を配置する。第2積層圧電体においては第2の側面の反対側の第1の側面に対し新たにプリント基板130を配置する。このときも第1積層圧電体114の第2の側面の位置、第2積層圧電体の第1の側面の位置と、当該各プリント基板130の電極リード131の位置とを合わせるように配置する。このように、一方の超音波トランスデューサユニット100aの圧電体ブロックにおいて、空いている両側面にプリント基板130を配置した後、他方の超音波トランスデューサユニット100aを積層していく。このとき、隣り合う超音波トランスデューサユニット100aの音響整合層110・120の向きは同じ方向となる。このようにして超音波トランスデューサユニット100aが積層されていき、分割前の超音波トランスデューサ100が形成される。
【0058】
(ステップ6)
超音波トランスデューサ100が形成された後、図1(A)に示すように。音響整合層110・120側から、超音波トランスデューサユニット100aの積層方向と平行で、かつ圧電体側面の溝(111等)の方向と直交する方向に超音波トランスデューサ100を分割してバッキング材118・128まで至る溝を形成する。当該分割によってできた溝に絶縁樹脂を充填して、図1(A)に示すような積層圧電体を2次元的に配列した超音波トランスデューサ100が形成される。なお、当該分割溝が、バッキング材118・128まで至るように形成されるのは、圧電体ブロックにおける積層圧電体を確実に分割するためである。
【0059】
本実施形態の超音波トランスデューサ100は、積層圧電体の側面に金属薄膜170を設けた後、金属薄膜170ごと各電極部分に、プリント基板130の電極リード131と当該各電極とを絶縁する溝を形成する。さらに当該溝を形成してからプリント基板130の表裏面に当該積層圧電体を配置する。したがって、超音波トランスデューサ100の製造工程においては、電極リード131と各電極を絶縁させるために、積層圧電体の側面を部分的に研磨するというような工程が不要である。結果として、積層圧電体の研磨工程という煩雑な工程を省略することができる。さらに当該研磨工程を省略することにより、積層圧電体の側面の平坦度を確保することができる。この結果、超音波トランスデューサユニット100aを積み重ねたときの、超音波トランスデューサ100の積層圧電体の2次元アレイの配列における各積層圧電体の位置精度を確保することができる。このように各積層圧電体の位置精度を確保することにより、超音波プローブから放射される超音波ビームの形状や放射方向の精度を確保することが可能となる。
【0060】
なお以上においては、本実施形態における超音波トランスデューサ100の製造工程を、上記ステップ2、ステップ3の順で記載したが、これらの工程の順は逆であってもよく、また同時に行われてもよい。また、ステップ5においては超音波トランスデューサユニット100aを積層していくことにより超音波トランスデューサ100を形成しているが、この実施形態に限られず、プリント基板130と圧電体ブロック101・102を交互に積層していくような工程であってもよい。また、本実施形態において溝111・121・117・127を形成するステップ2・3は、本発明の「第1の工程」および「第2の工程」の一例に該当する。
【0061】
また、本実施形態において溝111・121・117・127を形成するステップ2・3は、本発明の「第1の工程」および「第2の工程」の一例に該当する。また、ステップ4において積層圧電体を、プリント基板130の電極リード131の位置と第1積層圧電体114の第1の側面の位置とを合わせるように配置する工程は、本発明の「第4の工程」の一例に該当する。また、超音波トランスデューサユニット100aを積層していき、超音波トランスデューサ100を形成する工程は、本発明における「第5の工程」および「第6の工程」の一例に該当する。
【0062】
(超音波トランスデューサとIC基板との接続)
次に図4を用いて本実施形態にかかる超音波トランスデューサ100とIC基板200との接続構成の一例について説明する。図4は、超音波トランスデューサ100の接続方法の一例であり、本実施形態における超音波トランスデューサ100とIC基板200とを接続する機構および、IC基板200上のIC205と超音波診断装置本体に接続されるケーブルとを接続する機構を示す概略斜視図である。
【0063】
図4に示すように、超音波トランスデューサ100とIC基板200とは中継基板201を介して接続される。すなわち、各プリント基板130それぞれにおける超音波照射方向側の一端と相対する他端が、中継基板201と接続されることにより、当該接続されたプリント基板130の両面に配列された複数の電極リード131が中継基板201を介し、IC基板200上のIC205と接続される。
【0064】
この中継基板201は、例えば、超音波トランスデューサ100に対向する側の面に中継パッドが電極リード131それぞれの位置に応じて配設され、超音波トランスデューサ100の電極リード131のそれぞれと接続される。このとき超音波トランスデューサ100側のプリント基板130の端面に電極パッドを設け、電極パッドと中継パッドを接続してもよい。また、中継基板201としては、樹脂やセラミクスなどからなる平板形状の基板を用いることが望ましい。
【0065】
また、図4に示すように、IC基板200は超音波診断装置本体と電気的に接続を行うケーブル(共に図示せず)を介して接続され、IC基板200と当該ケーブルとはケーブル接続基板210によって接続される。当該ケーブル接続基板210の一端は、IC基板200における信号リード(図示せず)が設けられた一端とは反対側の一端に接続されている。
【0066】
コネクタ211は、ケーブル接続基板210の他端及び前記ケーブルの一端にそれぞれ設けられている。このコネクタ211によって、ケーブル接続基板210と超音波診断装置本体に接続されるケーブルとが接続される。図4における超音波トランスデューサ100、中継基板201、IC基板200、IC205、ケーブル接続基板210およびコネクタ211は、超音波プローブ220を構成する。
【0067】
図4に示すように、超音波トランスデューサ100と超音波診断装置本体との間に設けられたIC基板200にはIC205が形成されており、IC205は中継基板201などを介してプリント基板130の電極リード131と接続されている。このIC205は、前面電極112・122および第1内部電極112a・122aに同種の電極となる信号を印加し、かつ背面電極116・126および第2内部電極116a・126aに同種の電極となる電気信号を印加して、第1積層圧電体114および第2積層圧電体124を駆動させる。このようにしてIC205は超音波トランスデューサ100に超音波ビームを送波させる。
【0068】
またIC205は、第1積層圧電体114および第2積層圧電体124が受波した信号の処理を行う。このような構成により、超音波トランスデューサ100を内蔵する超音波プローブでは、第1積層圧電体114および第2積層圧電体124が受波した反射波を信号に変換し、当該信号をIC基板200上の各IC205に送信し、IC205が受信した当該信号を処理する。さらにIC205はケーブル接続基板210を介して超音波診断装置本体に当該処理した信号を送信する。なお、本実施形態ではIC205を用いているが、ASIC、その他の手段を含む。
【0069】
(作用・効果)
以上説明した第1実施形態にかかる超音波トランスデューサ100の作用及び効果について説明する。
【0070】
第1実施形態の超音波トランスデューサ100では、第1積層圧電体114および第2積層圧電体124における第1の側面および第2の側面それぞれに、金属薄膜170を設ける。また当該側面において各電極部分を金属薄膜170ごと削ることによって溝111等の各溝が圧電素子の積層方向と直交する方向に形成される。これらの工程を経て、各電極と電極リード131とを絶縁する溝が形成される。また当該溝111等が形成されてから電極リード131上に積層圧電体が配置される。このような超音波トランスデューサ100における積層圧電体の側面では、溝が形成されている部分において電極(112等)と電極リード131とが非接触であって絶縁されており、その他の部分は電極リード131に接触しているため特に電極(112等)の部分において電極リード131と導通している。
【0071】
したがって、当該超音波トランスデューサ100の製造工程においては、プリント基板130の電極リード131と、前面電極112・122、第1内部電極112a・122a、第2内部電極116a・126aまたは背面電極116・126とを絶縁させるために、第1の側面および第2の側面の各電極部分に絶縁樹脂を設け、当該絶縁樹脂を硬化させてから、硬化した樹脂を部分的に研磨して取り除くというような工程が不要である。結果として、超音波トランスデューサ100の製造工程から積層圧電体の側面の表面研磨という工程を省略し、当該製造工程の煩雑さを解消することが可能となる。なおかつ、当該表面研磨の工程が省略されているため、当該研磨工程に起因して積層圧電体側面の平坦度に支障をきたすという事態を解消し、当該平坦度を確保することが可能となる。
【0072】
積層圧電体側面の平坦度が確保されると、超音波トランスデューサユニット100aを積み重ねたときの、超音波トランスデューサ100における2次元アレイの配列や各積層圧電体の位置精度を確保することができる。このように各積層圧電体の位置精度を確保することにより、超音波プローブから放射される超音波ビームの形状や放射方向の精度を確保することが可能となる。
【0073】
また、以上説明した本実施形態の超音波トランスデューサ100は、プリント基板130の表面だけでなく裏面にも電極リード131が設けられており、1枚のプリント基板の1つの面にのみ圧電体を配列する構成と比較して、2列の圧電体に対し1枚の基板で後段電子回路との接続を行うことができる。結果として超音波トランスデューサ100とIC基板200(図4参照)とを接続する、プリント基板130と中継基板201との接続構造を単純化することが可能となる。さらに当該プリント基板130と中継基板201との接続部分の小型化を図ることができる。
【0074】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態にかかる超音波トランスデューサについて図5〜図7を参照して説明する。図5(A)は、この発明の第2実施形態にかかる超音波トランスデューサ100を側方から見た状態を示す概略斜視図である。また、図5(B)は、この発明の第2実施形態にかかる超音波トランスデューサを構成する超音波トランスデューサユニット100aの構成を示す概略分解斜視図である。
【0075】
以下、第2実施形態の概要を説明する。図8に示すような、プリント基板上に圧電体を配置することにより構成される超音波トランスデューサでは、プリント基板の少なくとも表面に当該電極リードが配置されるものがある。このような超音波トランスデューサのプリント基板上には、略直線状の電極リードが並列に配置される。またこの電極リード上に当該超音波トランスデューサの圧電体を配置する。
【0076】
したがって、上記説明したような超音波トランスデューサでは、圧電体とプリント基板との間に、電極リードが介在することになる。また、このような2次元アレイの超音波トランスデューサを形成する際には、プリント基板上に圧電体を並列配置した後、当該並列配置された1列分の超音波トランスデューサを複数積層することにより超音波トランスデューサの2次元配列を形成する工程を経る。
【0077】
しかしながら、平面状の圧電体側面を平板状のプリント基板に配置するときに、電極リードが介在してしまうため、電極リードの厚さの分だけ圧電体側面とプリント基板の面が密着しない。すなわち、プリント基板上に圧電体を並列配置する際、また1列分の超音波トランスデューサを複数積層する際に、プリント基板に対して圧電体の位置がずれてしまうおそれがある。また、圧電体は電極リードに対してもずれてしまうおそれがある。
【0078】
当該位置ずれが生じてしまうと、超音波トランスデューサの各圧電体を駆動したときに、位置がずれた圧電体それぞれから放射される超音波が、超音波トランスデューサ全体から放射される超音波ビームの形状や、超音波の放射方向にずれを生じさせてしまうおそれがある。結果として、超音波診断装置によって生成される超音波画像に支障をきたすおそれもある。このように図8に示すような超音波トランスデューサにおいては上記のような課題があった。
【0079】
第2実施形態にかかる超音波トランスデューサは、以上の問題点に鑑みてなされたものである。その概要は、圧電体の前面および背面に対し直交し、プリント基板と対向する圧電体の側面において、電極リードが収容される大きさの溝が超音波の放射方向に形成された超音波トランスデューサである。この超音波トランスデューサは圧電体をプリント基板上に配置した際、プリント基板上の電極リードが当該溝に収容される。
【0080】
つまり、プリント基板の面と圧電体の当該側面との間に生じる電極リード分の隙間が、大幅に低減される。その結果、プリント基板の面と圧電体の当該側面とを密着または近接させることにより、プリント基板に対して圧電体の位置がずれてしまう事態を防止することが可能となる。さらに電極リードが当該溝に収容されているので、プリント基板に対して圧電体がずれるような方向に力が加わっても、当該位置ずれを回避することが可能となる。なおかつこのような位置ずれを防止する結果として、超音波トランスデューサにおける圧電素子配列の位置精度が確保され、超音波プローブから放射される超音波ビームの形状や放射方向の精度を確保することが可能となる。
【0081】
以下、第2実施形態にかかる超音波トランスデューサの構成について説明する。
【0082】
図5(A)に示すように、第2実施形態にかかる超音波トランスデューサ100は、第1実施形態と同様に、圧電素子が3層に積層された積層圧電体114・124を有し、かつ積層圧電体の積層方向における前面に音響整合層110・120が設けられ、前面に対し反対側となる背面にバッキング材118・128が設けられている。この音響整合層110、第1積層圧電体114およびバッキング材118は圧電体ブロック101を構成する。また音響整合層120、第2積層圧電体124およびバッキング材128は圧電体ブロック102を構成する。さらに当該積層圧電体の前面に前面電極112・122が、背面に背面電極116・126が設けられている。また積層圧電体における圧電素子間には各内部電極112a・122a・116a・126aが設けられている。これら超音波トランスデューサ各部の機能、および各部の位置関係については、第1実施形態にかかる超音波トランスデューサと同様であるため、説明を割愛する。
【0083】
また図5(B)に示すように、第1実施形態と同じく、第2実施形態にかかる超音波トランスデューサ100における圧電体ブロック101・102は、プリント基板130の表裏面に並列に形成された複数の電極リード131上にそれぞれ並列配置される。第1積層圧電体114と第2積層圧電体124のプリント基板130に対する配置方向は同方向となる。
【0084】
また、図5(B)に示すように第1積層圧電体114とプリント基板130、および第2積層圧電体124とプリント基板130とは金属薄膜170によって接続される。このようにプリント基板130の表裏面に対して積層圧電体が配置、接続されることにより、超音波トランスデューサ100を構成する超音波トランスデューサユニット100aが形成される。
【0085】
超音波トランスデューサユニット100aそれぞれは、さらにプリント基板130の表裏面に配置され、積層圧電体における圧電素子の積層方向と直交する方向に積層される。このようにプリント基板130を介して積層される超音波トランスデューサユニット100aの方向はすべて同じ方向となる。このようにして積層圧電体が2次元状に配列され図5(A)に示すような超音波トランスデューサ100が構成される。
【0086】
なお、第2実施形態にかかる超音波トランスデューサ100は、積層圧電体を有する構成となっているが、本発明の超音波トランスデューサにおいては圧電素子1層の圧電体を用いることも可能である。また、第2実施形態にかかる超音波トランスデューサ100においてはプリント基板130の表裏面に電極リード131が設けられているが、電極リード131は表裏面のうち、いずれか一面に設けられていればよい。また、第1積層圧電体114と第2積層圧電体124は同一の構造であってもよい。
【0087】
(積層圧電体における側面の構成)
次に、図5(B)を用いて第2実施形態にかかる積層圧電体114・124およびバッキング材118・128の側面の構成について説明する。図5(B)に示すように、第2実施形態にかかる超音波トランスデューサ100の第1積層圧電体114には、前面および背面に直交し、プリント基板130表面に対向し、かつ電極リード131上に配置される第1の側面には、凹形状の凹溝119が設けられている。この凹溝119は、圧電体ブロック101において第1積層圧電体114の当該第1の側面における前面電極112から背面電極116を通過して、バッキング材128における後段電子回路側(中継基板側)まで至る。また凹溝119の幅(第1積層圧電体の積層方向と直交する方向の長さ)は、電極リード131の幅とほぼ同じ長さか、または電極リード131の幅よりやや長くなるように形成される。このように凹溝119を構成することにより、第1積層圧電体114をプリント基板130上に配置する際、電極リード131が当該凹溝119に収容される。
【0088】
また、この凹溝119の深さ(第1積層圧電体114の第1の側面から、凹溝119底面までの長さ)は、電極リード131がプリント基板130から突出する高さよりやや浅く形成されることが望ましい。これは第1積層圧電体114における第1の側面を、プリント基板130の面に配置する際、プリント基板130と第1積層圧電体114とを接触させようとする力を、電極リード131の部分に集中させやすくするためである。このように凹溝119を構成することで、電極リード131と積層圧電体における各電極(前面電極112等)との電気的な接続が確実となる。
【0089】
また、この凹溝119の形状は、電極リード131の形状に対応した形状となるように構成することが望ましい。すなわちこのように構成することで、第1積層圧電体114における第1の側面をプリント基板130の面に配置する際に生じやすくなる、圧電素子の積層方向と直交する方向の積層圧電体の位置ずれを防止することが可能となる。
【0090】
また、第1積層圧電体114の第1の側面と同様に、第2の側面においても凹溝119が設けられる。さらに図5(B)に示すように、圧電体ブロック102における第2積層圧電体124の第1の側面および第2の側面においても、第1積層圧電体114の凹溝119と同様に、バッキング材128まで至るように形成された、凹溝129が形成される。なお、第2実施形態にかかる超音波トランスデューサにおいても第1積層圧電体114および第2積層圧電体124の側面における、金属薄膜170と各電極の絶縁処理を、第1実施形態と同様に構成することも可能である。ただしこの場合、各凹溝119の深さは、溝111・113・115・117の深さより、浅く形成される。また各凹溝129の深さは、溝121・123・125・127の深さより、浅く形成される。凹溝の方が深い場合、金属薄膜170が、絶縁しようとする積層圧電体の各電極に対して接触してしまうからである。
【0091】
(製造工程)
次に、図5〜図7を用いて本実施形態における超音波トランスデューサ100の製造工程の概略について説明する。図6(A)は、この発明の第2実施形態にかかる超音波トランスデューサ100の製造工程において、圧電体ブロックに凹溝119や金属薄膜170が形成される前の状態を示す概略斜視図である。図6(B)は、図6(A)の圧電体ブロックに対しに凹溝119が形成され、金属薄膜170が形成される過程を示す概略斜視図である。図6(C)は、図6(A)・(B)の工程を経て、圧電体ブロックに金属薄膜170が形成された状態を示す概略斜視図である。図6(D)は、図6(C)の概略部分拡大図である。図7(A)は、この発明の第2実施形態にかかる超音波トランスデューサ100の製造工程において、金属薄膜170が形成された圧電体ブロックをプリント基板130の表裏面に配置する過程を示す概略斜視図である。図7(B)は、図7(A)における超音波トランスデューサユニット100aを積層した後、分割される前の超音波トランスデューサ100を示す概略斜視図である。
【0092】
なお、圧電体ブロックを形成するまでの工程は、第1実施形態にかかる超音波トランスデューサの製造工程と同一であるため、説明を割愛する。
【0093】
(ステップ1)
図6(B)に示すように、まず図6(A)のような凹溝が形成される前の圧電体ブロック101・102の第1の側面および第2の側面に対し、前面電極が形成されている部分から、バッキング材における積層圧電体との境界部分と反対側の端部まで、凹溝119・129を形成する。またこの凹溝は積層圧電体における圧電素子の積層方向とほぼ同じ方向に形成される。
【0094】
(ステップ2)
次に、図6(B)に示すように凹溝が形成された圧電体ブロックにおける積層圧電体の第1の側面および第2の側面に対し、金属薄膜170を形成する。なお、この圧電体ブロックは、この後の工程で分割され、2次元アレイの超音波トランスデューサ100における1列分の積層圧電体を構成するものである。
【0095】
(ステップ3)
第1積層圧電体114および第2積層圧電体124における第1の側面および第2の側面に対し金属薄膜170がそれぞれ形成された後、圧電体ブロック101および圧電体ブロック102は、図7(A)に示すように、プリント基板130の電極リード131上に配置される。すなわち、表裏面に電極リード131が形成された、分割される前のプリント基板130に対し、表面(図7(A)の左側の面)に圧電体ブロック101を配置する。このときプリント基板130の電極リード131の位置と第1積層圧電体114の第1の側面(図7(A)の右側の面)の位置とを合わせるように配置する。さらにプリント基板130の裏面には、圧電体ブロック102が配置される。当該圧電体ブロック102においても、裏面の電極リード131の位置と第2積層圧電体124の第2の側面(図7(A)の左側の面)の位置とを合わせるように配置する。このようにしてプリント基板130の表裏面に圧電体ブロックを形成して、分割前の超音波トランスデューサユニット100aを形成する。
【0096】
(ステップ4)
超音波トランスデューサユニット100aが複数形成されると、第1実施形態と同様に、これらはさらにプリント基板130を介して積層される。このようにして超音波トランスデューサユニット100aが積層されていき、分割前の超音波トランスデューサ100が形成される。
【0097】
(ステップ5)
超音波トランスデューサ100が形成された後、図5(A)に示すように。音響整合層110・120側から、超音波トランスデューサユニット100aの積層方向と平行で、かつ圧電体側面の溝(111等)の方向と直交する方向に超音波トランスデューサ100を分割する。当該分割によってできた溝に絶縁樹脂を充填して、図1(A)に示す超音波トランスデューサ100が形成される。
【0098】
なお、第2実施形態における超音波トランスデューサ100とIC基板との接続は、第1実施形態にかかる超音波トランスデューサと同様であるため、説明を割愛する。
【0099】
(作用・効果)
以上説明した第2実施形態にかかる超音波トランスデューサ100およびそれを用いた超音波プローブ(不図示)の作用及び効果について説明する。
【0100】
第2実施形態にかかる超音波トランスデューサ100およびそれを用いた超音波プローブ220は、積層圧電体(114・124)の前面および背面に直交する第1の側面および第2の側面から、バッキング材(118・128)に連続して形成される凹溝(119・129)を備えている。この凹溝は、第1の側面における前面電極側の端縁から圧電素子の積層方向と同じ方向に形成され、かつ当該前面電極側端縁から背面電極を経由してバッキング材における後段電子回路側まで延伸するように形成される。さらにこの凹溝は、プリント基板130における電極リード131とほぼ同じ幅かやや大きい幅となるように形成される。
【0101】
したがって、プリント基板130に積層圧電体を配置する際、当該凹溝に電極リード131が収容される。すなわち、プリント基板130の面と圧電体の側面との間に生じる間隙を大幅に低減させることができる。その結果、プリント基板130の面と積層圧電体の側面とを密着または近接させることが可能となり、プリント基板130に対して積層圧電体の位置がずれてしまう事態を防止することが可能となる。
【0102】
さらに、電極リード131が凹溝(119・129)に収容されているので、プリント基板130に積層圧電体を配置する際、プリント基板130に対して積層圧電体がずれるような方向に力が加わっても、当該位置ずれを回避することが可能となる。なおかつこのような位置ずれを防止する結果として、超音波トランスデューサ100における圧電素子配列の位置精度が確保され、超音波プローブから放射される超音波ビームの形状や放射方向の精度を確保することが可能となる。
【0103】
また、以上説明した本実施形態の超音波トランスデューサ100は、プリント基板130の面と圧電体の側面との間に生じる間隙を大幅に低減させることができるため、超音波トランスデューサユニット100aの積層方向における、積層厚さを薄くすることができ、超音波トランスデューサ100および超音波プローブの小型化を図ることが可能となる。
【0104】
また、以上説明した本実施形態の超音波トランスデューサ100は、プリント基板130の表面だけでなく裏面にも電極リード131が設けられており、1枚のプリント基板の1つの面にのみ圧電体を配列する構成と比較して、2列の圧電体に対し1枚の基板で後段電子回路との接続を行うことができる。結果として超音波トランスデューサ100とIC基板200(図4参照)とを接続する、プリント基板130と中継基板201との接続構造を単純化することが可能となる。さらに当該プリント基板130と中継基板201との接続部分の小型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0105】
100 超音波トランスデューサ
100a 超音波トランスデューサユニット
101・102 圧電体ブロック
110・120 音響整合層
111・113・115・117・121・123・125・127 溝
112・122 前面電極
112a・122a 第1内部電極
114 第1積層圧電体
124 第2積層圧電体
116・126 背面電極
116a・126a 第2内部電極
118・128 バッキング材
119・129 凹溝
130 プリント基板
131 電極リード
200 IC基板
201 中継基板
205 IC
210 ケーブル接続基板
220 超音波プローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1プリント基板と、
超音波放射方向側の前面には前面電極が、反対側の背面には背面電極が形成され、かつ当該前面および当該背面と直交する第1の側面における当該前面電極側の端縁から当該背面電極側の端縁へ向かって形成された第1の凹溝を有し、かつ第1の側面と反対側の第2の側面において当該前面電極側の端縁から当該背面電極側の端縁へ向かって形成された第2の凹溝を有し、かつ前面および背面が前記第1プリント基板の表面に直交し当該第1の側面または第2の側面が当該表面に対向するように並列に配置された複数の第1の圧電体と、
前記第1の圧電体と同一の構造であってその前面および背面が前記第1のプリント基板の前記表面と反対側の裏面に直交し、かつ前記第1の凹溝または第2の凹溝が当該裏面に対向するように並列に配置される複数の第2の圧電体と、
前記第1プリント基板の前記表面上に形成され、かつ前記第1の圧電体の第1の凹溝または第2の凹溝に収納され、かつ該第1の圧電体それぞれの前記前面電極または背面電極の一方と直接にまたは間接に結合される複数の第1電極リードと、
前記第1プリント基板の前記裏面上に形成され、前記第2の圧電体の前記第1の凹溝または第2の凹溝に収納され、かつ該第2の圧電体それぞれの前記前面電極または背面電極の一方と直接にまたは間接に結合される複数の第2電極リードとを備えたこと、
を特徴とする超音波トランスデューサ。
【請求項2】
前記第1の圧電体および第2の圧電体のそれぞれは、前記前面から前記背面の方向に複数の圧電素子が積層されて構成され、かつ該積層される該複数の圧電素子それぞれの間には内部電極が形成される積層圧電体であること、
を特徴とする請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項3】
前記第1の凹溝および第2の凹溝の深さより、前記第1電極リードおよび前記第2電極リードが前記第1プリント基板の面から突出する高さの方が長いこと、
を特徴とする請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項4】
前記第1プリント基板における第1電極リードおよび第2電極リードのそれぞれには、対応する前記第1の圧電体および第2の圧電体それぞれの前記前面電極および前記背面電極のうち、同種の電極のみが結合されること、
を特徴とする請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項5】
前記第1プリント基板の表面と対向する、前記第1の圧電体側の前記第1の側面または前記第2の側面と前記第1の電極リードとの間に設けられた導電性の薄膜を介して、該第1プリント基板における該第1電極リードと、該第1の圧電体における前記前面電極または前記背面電極とが接続され、
前記第1プリント基板の裏面と対向する、前記第2の圧電体側の前記第1の側面または前記第2の側面と前記第2の電極リードとの間に設けられた導電性の薄膜を介して、該第1プリント基板における該第2電極リードと、該第2の圧電体における前記前面電極または前記背面電極とが接続されること、
を特徴とする請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項6】
前記第1プリント基板とほぼ同一の構造であって、前記第1の圧電体における前記第1プリント基板と接続された第1の側面と反対側である第2の側面または第2の側面と反対側である第1の側面に対し、その表面が直接的または間接的に接続される第2プリント基板と、
前記第1の圧電体と同一の構造であって、その前面および背面が前記第2プリント基板の裏面に直交し、前記第1の凹溝または第2の凹溝が当該裏面に対向するとともに並列に配置される複数の第3の圧電体と、を備えたこと、
を特徴とする請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項7】
第1プリント基板と、
超音波放射方向側の前面には前面電極が、当該前面に対し反対側となる背面には背面電極が形成され、かつ当該前面および当該背面と直交する第1の側面における当該前面電極側の端縁から当該背面電極側の端縁へ向かって形成された第1の凹溝を有し、かつ第1の側面と反対側の第2の側面において当該前面電極側の端縁から当該背面電極側の端縁へ向かって形成された第2の凹溝を有し、かつ前面および背面が前記第1プリント基板の表面に直交し当該第1の側面または第2の側面が当該表面に対向するように並列に配置された複数の第1の圧電体と、
前記第1の圧電体と同一の構造であってその前面および背面が前記第1のプリント基板の前記表面と反対側となる裏面に直交し、かつ前記第1の凹溝または第2の凹溝が当該裏面に対向するように並列に配置される複数の第2の圧電体と、
前記第1プリント基板の前記表面上に形成され、かつ前記第1の圧電体の第1の凹溝または第2の凹溝に収納され、かつ該第1の圧電体それぞれの前記前面電極または背面電極の一方と直接にまたは間接に結合される複数の第1電極リードと、
前記第1プリント基板の前記裏面上に形成され、前記第2の圧電体の前記第1の凹溝または第2の凹溝に収納され、かつ該第2の圧電体それぞれの前記前面電極または背面電極の一方と直接にまたは間接に結合される複数の第2電極リードとを有する超音波トランスデューサを備えたこと、
を特徴とする超音波プローブ。

【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−42552(P2013−42552A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−249879(P2012−249879)
【出願日】平成24年11月14日(2012.11.14)
【分割の表示】特願2008−122986(P2008−122986)の分割
【原出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】