説明

超音波プローブ及び超音波プローブ製造方法

【課題】固溶系圧電単結晶と樹脂との複合圧電体を用いて、切断時の加工不良が生じない一次元及び二次元アレイ超音波プローブ及び当該超音波プローブの製造方法を提供すること。
【解決手段】少なくともチタン酸鉛を含む固溶系単結晶により形成され、アレイ状に配列された複数の圧電体と、前記各圧電体の下面に形成された第1の電極と、それぞれの幅が前記各圧電体のアレイ方向の幅よりも小さく、前記各圧電体の長手方向に沿って前記第1の電極と接続され、前記各第1の電極から電気配線を引き出して超音波診断装置本体に接続するための複数のパターン配線を有する第1のフレキシブル印刷配線基板と、を具備する超音波プローブである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置や超音波治療装置等に用いられる超音波プローブと、当該超音波プローブ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波プローブは、圧電体を主体として構成され、超音波を対象物に向けて照射し、その対象物における音響インピーダンスの異なる界面からの反射波を受信することにより、対象物の内部状態を画像化するために用いられる。このような超音波プローブが採用された超音波画像装置として、例えば、人体内部を検査するための医用診断装置や金属溶接内部の探傷を目的とする検査装置等が存在する。
【0003】
この医用超音波画像装置である超音波診断装置では、人体の断層像(Bモード像)に加え、超音波の血流によるドプラシフトを利用して血流の速度を2次元でカラー表示するカラーフローマッピング(CFM)法や、二次高調波を画像化したティッシュハーモニックイメージング(THI)法等の撮影技術が開発されている。超音波プローブは、これら種々の撮影方法に応じた形態を有し、人体のあらゆる臓器器官に関する超音波の送受信を可能にしている。
【0004】
一般に超音波診断装置に使用される超音波プローブには、高分解能の画像が、高感度に得られることが要求される。これは、診断対象の深部まで明瞭に表示可能な画像により、小さな病変や空隙を発見できるようにするためである。近年、その方法の一つとして、センサー部分である超音波プローブをさらに高感度化、広帯域化することが考えられている。
【0005】
上述した高感度化、広帯域化を達成するために、圧電体柱や圧電体粉を樹脂に埋め込んだ構成などの複合圧電体が研究されている(例えば、特許文献1〜10等参照)。
【0006】
これらに開示されている複合圧電体を使用した超音波プローブは、音響インピーダンスが低下して生体のインピーダンスに近づくこと、1−3型や2−2型などの構成では電気機械結合係数が薄板の場合に比べて増加すること等のメリットを有している。これは、複合圧電体には、誘電率が大きく電気機械結合係数k33も大きいPZT系圧電セラミックが主として用いられているからである。
【0007】
一方、複合圧電体を使用した超音波プローブは、樹脂を含むことによる誘電率低下に比べて電気機械結合係数の向上が小さいという問題も有している。従って現実には、複合圧電体は、素子面積が大きいシングル型メカニカルプローブやアニュラアレイ等に用いられているのみである。そこで、ktに比べk33が飛躍的に高い固溶系圧電単結晶を用いることでこの問題を解決しようという試みもなされている(例えば、特許文献11等参照)。
【0008】
高感度、広帯域の超音波プローブを実現するためには、図13(a)に示したアレイ状プローブ28のように、固溶系圧電単結晶32と樹脂34、36との複合圧電体30を形成する方法がある。しかしながら、この複合圧電体30の形成においては、切削加工時の不良が問題となっている。すなわち、一般的に固溶系圧電単結晶32は破壊靭性が低く脆いため、図13(b)に示す溝38をアレイ状に形成する切削加工時において、図13(c)に示すようなチッピングが発生する問題がある。このチッピングは、特性の劣化や素子へのクラックにより不良を引き起こしてしまう。
【0009】
そこで我々はこれらの単結晶を用いた超音波プローブとして図14(a)のような構造を提案し(例えば、特許文献12等参照)、プローブ作製歩留まりの改善を試みてきた。図14(a)は、単結晶振動素子を用いたアレイプローブの断面構造を示している。単結晶振動素子1の両面には電極4、5が形成されており、振動素子1の下面にはバッキング材2が設けられている。また、単結晶振動素子上面には音響マッチング層3a,3bが形成され、単結晶振動素子1および音響マッチング層3a、3bアレイ加工されている。アレイプローブの配列ピッチは、狭いもので0.1mm程度である。さらに音響マッチング層3b上に設けられた音響レンズ8を通して超音波の送受信が行われる。単結晶振動素子1の両面に形成された電極4、5はFPC6、7を介してケーブルに接続され、診断装置に繋がる(図省略)。図14(a)の構造においてFPC6は前記FPCの導電層を振動素子の面積分に拡張して前記振動素子と全面に渡ってエポキシ系接着剤で接合されている。また前記導電層としては一般に金属Cuが用いられている。図14(b)は図14(a)で示した信号用FPCの下部の導電層を単結晶振動素子1から見たものである。図14(a)の信号用FPCの導電層6a’は図14(b)で示したように導電層6aから千鳥に引き出されている。これらの配列構造は以下の説明の通りに作製される。一体形状の単結晶振動素子1に電極4、5を形成する。FPCを接着した振動素子をバッキング材2に接着し、音響マッチング層3a、3bを形成した後にダイシングソーを用いて、マッチング層側から切断する。その後、音響マッチング層3b上に音響レンズ8を形成して完成となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公昭54−19151号公報
【特許文献2】特開昭60−97800号公報
【特許文献3】特開昭61−53562号公報
【特許文献4】特開昭61−109400号公報
【特許文献5】特開昭57−45290号公報
【特許文献6】特開昭58−21883号公報
【特許文献7】特開昭60−54600号公報
【特許文献8】特開昭60−85699号公報
【特許文献9】特開昭62−122499号公報
【特許文献10】特開昭62−131700号公報
【特許文献11】特開平09−84194号公報
【特許文献12】特開2000−14672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、上記の製造方法を採用し、導電層を単結晶振動素子の面積分に拡張したFPCを前記振動素子と全面に渡ってエポキシ系接着剤し、バッキング材にエポキシ接着剤で前期振動素子を接着し、前期振動素子の上に音響マッチング層を形成した後、ダイシングソーでアレイ加工すると、単結晶振動素子のFPCが接着された面のダイシングエッジ部にクラックやチッピングが発生することがあるという問題が生じた。これはアレイ加工時に機械的強度の弱い圧電単結晶と切削性の劣るFPCの導電層を同時に切断するために生じるものと考えられる。また、加工中に生じる導電層からのばりは単結晶振動素子の切断面を荒らし、ブレードに巻き込まれた切削屑は切削製を低下させる原因となる。こうした単結晶振動素子のクラックやチッピングは、加工条件を調整しても抑制することが困難である。大きなクラックは断線不良となり、製造歩留まり低下させ、小さなクラックは使用中に進展し、市場事故を起こす原因となり得る。また、チッピングは短冊形状に加工された振動素子の電極面積を減少させるため、特性劣化を招くだけではなくアレイ素子間の特性ばらつきも大きくなる。アレイ素子数は数十から数百に及ぶため、アレイ素子間の特性ばらつきは診断装置に表示される断層像の画質に影響する。
【0012】
本発明の目的は、上記課題を解決するためになされたものであり、固溶系圧電単結晶と樹脂との複合圧電体を用いて、切断時の加工不良が生じない一次元及び二次元アレイ超音波プローブ及び当該超音波プローブの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0014】
請求項1に記載の発明は、少なくともチタン酸鉛を含む固溶系単結晶により形成され、アレイ状に配列された複数の圧電体と、前記各圧電体の下面に形成された第1の電極と、それぞれの幅が前記各圧電体のアレイ方向の幅よりも小さく、前記各圧電体の長手方向に沿って前記第1の電極と接続され、前記各第1の電極から電気配線を引き出して超音波診断装置本体に接続するための複数のパターン配線を有する第1のフレキシブル印刷配線基板と、を具備することを特徴とする超音波プローブである。
【0015】
請求項6に記載の発明は、樹脂部材上に所定の間隔で複数の導電性層が平行にパターン化されているフレキシブル印刷配線板と、単結晶圧電体とを、前記複数の導電性層が前記単結晶圧電体の長手方向に沿って電気的に接続されるように接着する第1のステップと、前記複数の導電性層の間を前記フレキシブル印刷基板と単結晶圧電体を共に切削して、前記導電性層よりも大きな幅を有する複数の圧電振動素子を形成する第2のステップと、を備えることを特徴とする超音波プローブ製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
以上本発明によれば、切断時の加工不良が生じない超音波プローブを製造することができる。その結果、高感度、広帯域特性を有する超音波プローブが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、第1、第2の実施形態に係る超音波プローブ10の概略構成を示す斜視図。
【図2】図2は、第1、第2の実施形態に係る超音波プローブ10の断面を示す図。
【図3】図3は、第3の実施形態に係る超音波プローブ30の断面を示す図。
【図4】図4は、第5の実施形態に係るアレイ型超音波プローブの概略構成を示す図。
【図5】図5は、第6の実施形態に係るアレイ型超音波プローブ35の断面図。
【図6】図6は、第2のフレキシブル配線基板44の導電層440の上面図。
【図7】図7は、超音波プローブ35の変形例を説明するための図。
【図8】図8は、変形例に係る超音波プローブ35が有する第2のフレキシブル配線基板44のパターン配線を示した図。
【図9】図9は、第7の実施形態に係る超音波プローブ50の概略構成を説明するための図
【図10】図10は、第7の実施形態に係る超音波プローブの変形例を示した図。
【図11】図11は、第7の実施形態に係る超音波プローブの変形例を示した図。
【図12】図12は、第7の実施形態に係る超音波プローブの変形例を示した図。
【図13】図13(a)は、従来の複合圧電体30の断面を示す図である。図13(b)、13(c)は、従来の複合圧電体30の製造過程において発生するチッピング及びクラックを説明するための図である。
【図14】図14(a)は、従来の超音波プローブの断面を示す図。図14(b)は、従来の超音波プローブが有するフレキシブル配線基板6のパターン配線を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の第1実施形態〜第7実施形態を図面に従って説明する。
【0019】
(第1の実施形態)
図1は、第1実施形態に係る超音波プローブ10の概略構成を示している。
【0020】
図1において、超音波プローブ10は、複合圧電体(1−3型)11、音響整合層17、音響レンズ19、共通電極板21、フレキシブル配線基板23、バッキング材25を具備する構成となっている。
【0021】
複合圧電体(1−3型)11は、単結晶圧電体111と上側PVC樹脂層113と下側PVC樹脂層115とを有している。すなわち、複合圧電体(1−3型)11は、単結晶圧電セラミックスの一次元的な細棒が3次元的な高分子であるPVC樹脂マトリクスの中に埋め込まれた圧電体であり、高い電気機械結合係数と低い音響インピーダンスを有している。複合圧電体11の上下両面には、圧電気直接効果及び圧電気逆効果による電気信号を送受信するための図示していない電極が、後述する方法により形成されている。
【0022】
単結晶圧電体111は、亜鉛ニオブ酸鉛(PZN)、チタン酸鉛(PT)等を含む固溶系単結晶圧電セラミックスであり、後述する方法により作成される。
【0023】
上側PVC樹脂層113は、圧電体111の超音波照射側(以下、上側)に銀入りPVC樹脂を塗布することにより形成された層であり、導電性、良好な切削性、単結晶圧電体に比して小さい音響インピーダンス(例えば、2×10g/ms乃至10×10g/ms程度)を有している。
【0024】
下側PVC樹脂層115は、単結晶圧電体111の上側と反対側(以下、下側)に銀入りPVC樹脂を塗布することにより形成された層であり、導電性、良好な切削性、単結晶圧電体に比して小さい音響インピーダンスを有している。下側PVC樹脂層115と上側PVC樹脂層113は、単結晶圧電体111のチッピングやクラック発生を防止する役割を果たしている。この下側PVC樹脂層115と上側PVC樹脂層113の形成方法については、後で詳しく説明する。
【0025】
音響整合層17は、図示していない被検体と複合圧電体11との間に位置するように設けられており、単層或いは多層から成っている。当該整合層17における音速、厚み、音響インピーダンス等のパラメータを調節することで、被検体と複合圧電体11との音響インピーダンスの整合を図ることができる。
【0026】
音響レンズ19は、音響インピーダンスが生体に近いシリコーンゴム等から成るレンズであり、音波の屈折を利用して超音波ビームを集束させ分解能を向上させる。
【0027】
共通電極板21は、上側PVC樹脂層113の一端に設けられている。共通電極板21は、複合圧電体11上面に形成された図示していない電極に電力の印加等するための電極であり、アース接続されている。
【0028】
フレキシブル配線基板23は、下側PVC樹脂層115の一端に設けられており、各複合圧電体11に電力を印加するための柔軟性を備えた電極基板である。
【0029】
バッキング材25は、フレキシブル配線基板23の背面に設けられており、複合圧電体11を機械的に支持する。また、バッキング材25は、超音波パルスを短くするために、複合圧電体11を制動している。このバッキング材25の厚さは、トランスデューサの音響的特性を良好に保つため、使用する超音波周波数の波長に対して十分な厚さ(十分減衰される厚さ)に保たれている。
【0030】
次に、第1実施形態に係る超音波プローブ10に使用される1−3型複合圧電体11の製造方法について説明する。本製造方法は、単結晶圧電体111の作成(第1ステップ)、上下PVC樹脂層の形成(第2ステップ)、PVC樹脂層113、15のダイシング(第3ステップ)、樹脂充填(第4ステップ)、PVC樹脂層113、15の研磨(第5ステップ)の5つの大きなステップに分けることができる。
【0031】
まず、第1ステップの複合圧電体11の形成について説明する。
【0032】
亜鉛ニオブ酸鉛(PZN)とチタン酸鉛(PT)とが91:9のモル比をPbフラックスとともに白金容器に入れ昇温して溶解した後、室温まで冷却し固溶系単結晶を育成する。その後、ラウエカメラを用いて前記単結晶の<001>軸方位を出し、この軸に垂直にカッターで切断する。そして、厚さ300μmに研磨後、スパッタ法によりTi/Au電極を両面に形成することで単結晶圧電体111を作成することができる。
【0033】
次に、第2ステップの上下PVC樹脂層113、15の形成について説明する。
【0034】
第1ステップにおいて形成された圧電体111をガラス板へ仮留めし、周りをカプトンテープにてマスキングした後、導電性の銀入りPVC樹脂を塗布して300μmに平面研磨機にて研磨し切削性良好な上側PVC樹脂層113を形成する。同様に、圧電体11の裏面側も300μmの切削性良好な下側PVC樹脂層115を形成する。なお、上側PVC樹脂層113と下側PVC樹脂層115の形成順序は、逆であっても構わない。
【0035】
次に、第3ステップの上側PVC樹脂層113と下側PVC樹脂層115のダイシング、第4ステップの樹脂充填について説明する。
【0036】
第2ステップにおいて形成された銀入りPVC樹脂の層113、115によってサンドイッチされた圧電体111を、ダイシングソーで50μm厚のブレードにより200μmピッチで深さ800μm(100μmの切り残し)の溝をアレイ状に入れ、エポキシ樹脂12を切断溝に充填して硬化させる。同様に、先の切断溝に対して直角に同様の切断溝を形成してエポキシ樹脂12を充填し硬化させる。
【0037】
次に、第5ステップの上下PVC樹脂層113、115の研磨について説明する。
【0038】
その後、切り残し側を下面としてガラス板へ仮留めし、反対側の層を平面研磨機にて150μmに研磨する。更に切り残し側を上面として同様に150μmに研磨する。そして、スパッタリングにより両面にTi/Au電極を形成することで、切削等によるチッピングやクラックの少ない1−3型複合圧電体11を形成することができる。
【0039】
最後に、上記製造方法により形成された1−3型複合圧電体11へ、1KV/mmの電界を印加して分極処理を施す。
【0040】
なお、上記複合圧電体製造方法は、その本質を変えない範囲で種々変形可能である。例えば、1−3型複合圧電体11を例として説明したが、本発明は、第2の実施形態で説明するように2−2型複合圧電体についても適用可能である。また、最初からマトリクス状にカットして、その後樹脂を充填しても良い。さらに、本実施例のようにエポキシ樹脂を2段階に分けて充填する場合は、その種類を変えても良い。
【0041】
次に、上記製造方法によって製造された1−3型複合圧電体を用いて、一次元アレイ型超音波プローブ10を製造する方法の例を、図2に従って説明する。
【0042】
図2は、本実施形態に係る超音波プローブ10の断面を示す図である。
【0043】
まず、複合圧電体11の上側PVC樹脂層113に共通電極板21を、下側PVC樹脂層115にフレキシブル配線基板23を、導電ペーストとを用いて接続し、超音波放射面側に第二の音響整合層17を形成する。その後、バッキング材25とフレキシブル配線基板23とをエポキシ樹脂で接着する。
【0044】
次に、ダイシングソーにより厚さ50μmのブレードで、アレイ方向に200μmピッチで切断する。その溝にシリコーン系の接着剤を充填し、音響レンズ19を接着する。
【0045】
そして、静電容量110pF/m、長さ2mの同軸ケーブルを前記フレキシブル配線基板23に接続することで、1次元アレイ型超音波プローブ10を製造することができる。
【0046】
次に、上記製造方法によって製造された超音波プローブによる作用について説明する。
【0047】
超音波プローブ10は、1−3型複合圧電体11は、上側PVC樹脂層113と下側PVC樹脂層115とで単結晶圧電体111を挟んでいるので、アレイ状の溝を形成する際においてもチッピングの発生を防止することができる。
【0048】
また、上側PVC樹脂層113と下側PVC樹脂層115とは、単結晶圧電体111に比して小さい音響インピーダンス、導電性、良好な切削性を有しているので、単結晶圧電体111に関する電気信号を送受信する電極、若しくは、音響整合層とすることが可能である。
【0049】
なお、第1〜第4ステップによってアレイ状の溝形成、エポキシ樹脂12を充填した後、すなわちチッピング発生の恐れがなくなった後、第5ステップにおいて上側PVC樹脂層113と下側PVC樹脂層115の少なくとも一方を全て研磨し、新たに電極或いは音響整合層を設ける構成であってもよい。
【0050】
また、上側PVC樹脂層113と下側PVC樹脂層115は、デュロメータ硬さが700乃至1000HDdであることが好ましい。
【0051】
従って、このような構成によれば、本発明に係わる切削性良好な層を固溶系圧電単結晶の上下面の少なくとも一方へ設けることで、切断時の加工不良を削減し高感度、広帯域な超音波プローブを容易に製造することができる。また、PVC樹脂層が導電性を有するため、単結晶圧電体との電気的な接続性が高く、良好な特性の超音波振動素子を形成できる。
【0052】
(第2実施形態)
第1の実施形態では、1−3型の複合圧電体11の製造方法、及び当該圧電素子を使用した超音波プローブ10の製造方法について説明を行った。これに対し、第2の実施形態では、2−2型の複合圧電体の製造方法、及び当該2−2型複合圧電体を使用した超音波プローブの製造方法について説明を行う。
【0053】
なお、2−2型複合圧電体を使用した超音波プローブの外観は、図2に示した1−3型複合圧電体を使用した超音波プローブ10と同様であるから、同図を援用するものとし、既に説明した構成要素についての説明は省略する。また、第1の実施形態で述べた製造方法と重複する部分はその説明を省略し、異なる部分のみ説明する。
【0054】
第2の実施形態に係る2−2型複合圧電体の製造方法は、第1ステップ、第2ステップについては第1の実施形態と同様である。
【0055】
第3ステップの上側PVC樹脂層113と下側PVC樹脂層115のダイシング、第4ステップの樹脂充填について説明する。
【0056】
第2ステップにおいて形成された銀入りPVC樹脂の層3、4によってサンドイッチされた圧電体11を、ダイシングソーで50μm厚のブレードにより200μmピッチで深さ800μm(100μmの切り残し)の溝をアレイ方向と垂直に入れた後、エポキシ樹脂12を切断溝に充填して硬化させる。
【0057】
次に、第5ステップの上下PVC樹脂層113、115の研磨について説明する。
【0058】
その後、切り残し側を下面としてガラス板へ仮留めし、反対側の層を平面研磨機にて150μmに研磨する。更に切り残し側を上面として同様に150μmに研磨する。そして、スパッタリングにより両面にTi/Au電極を形成することで、切削等によるチッピングやクラックの少ない2−2型複合圧電体11を形成することができる。
【0059】
最後に、上記製造方法により形成された2−2型複合圧電体11へ、1KV/mmの電界を印加して分極処理を施す。
【0060】
次に、上記製造方法によって製造された2−2型複合圧電体を用いて、一次元アレイ型超音波プローブ10を製造する方法の例を説明する。
【0061】
まず、複合圧電体11の上側PVC樹脂層113に共通電極板21を、下側PVC樹脂層115にフレキシブル配線基板23を、導電ペーストとを用いて接続し、超音波放射面側に第二の音響整合層18を形成する。その後バッキング材25にエポキシ樹脂で接着する。
【0062】
次にダイシングソーにより厚さ50μmのブレードで、アレイ方向に200μmピッチで切断した。その溝にシリコーン系の接着剤を充填し、音響レンズ6を接着する。
【0063】
そして、静電容量110pF/m、長さ2mの同軸ケーブルを前記フレキシブル配線基板23に接続して一次元アレイ型超音波プローブ10を製造することができる。
【0064】
上記方法によって製造された2−2型複合圧電体を有する超音波プローブによれば、第1の実施形態で説明した1−3型複合圧電体を有する超音波プローブと同様の作用・効果を得ることができる。
【0065】
(第3実施形態)
第3の実施形態では、1−3型の複合圧電体11を使用して、超音波振動素子が2次元状配列(例えば、マトリックス状に配列)された2次元アレイ型超音波プローブを製造する方法について説明する。
【0066】
図3は、第3の実施形態に係る2次元アレイ型超音波プローブ30の横断面図である。
【0067】
なお、図2で既に説明した構成要素には同一符号を付し、その説明は省略する。また、第1、第2の実施形態で述べた製造方法と重複する部分はその説明を省略し、異なる部分のみ説明する。
【0068】
第3の実施形態に係る1−3型複合圧電体11の製造方法は、第1ステップ、第2ステップについては第1の実施形態と同様である。
【0069】
次に、第3ステップの上側PVC樹脂層113と下側PVC樹脂層115のダイシング、第4ステップの樹脂充填について説明する。
【0070】
第2ステップにおいて形成された銀入りPVC樹脂の層3、4によってサンドイッチされた圧電体11を、ダイシングソーで50μm厚のブレードにより200μmピッチで深さ700μm(100μmの切り残し)の溝をアレイ状に入れ、エポキシ樹脂12を切断溝に充填して硬化させる。同様に、先の切断溝に対して直角に同様の切断溝を形成してエポキシ樹脂12を充填し硬化させる。
【0071】
次に、第5ステップの上下PVC樹脂層113、115の研磨について説明する。
【0072】
その後、切り残し側を下面としてガラス板へ仮留めし、反対側の層を平面研磨機にて150μmに研磨する。更に切り残し側を上面として同様に150μmに研磨する。すなわち研磨後も切り残し側の下面PVC樹脂層113は切断されていない状態となっている。
【0073】
そして、スパッタリングにより両面にTi/Au電極を形成することで、切削等によるチッピングやクラックの少ない、2次元状配列を有する1−3型複合圧電体11を形成することができる。
【0074】
次に、上記製造方法によって製造された2次元配列の複合圧電体を用いて、2次元アレイ型超音波プローブ30を製造する方法の例を説明する。
【0075】
まず、切り残し側の上面PVC樹脂層113へ共通電極板21を接合し、その反対の面へ2次元的な信号配線を施したフレキシブル配線基板8を全面で接合する。超音波放射面側に第二の音響整合層18を形成した後、バッキング材25にエポキシ樹脂で接着した。これにシリコーン系の音響レンズ19を接着した。FPCの信号側を一括して、信号側とGND側との間に1KV/mmの電圧を印加し、分極処理を施した。
【0076】
これに、静電容量110pF/m、長さ2mの同軸ケーブルを前記フレキシブル配線基板8に接続して、2次元アレイ型超音波プローブ30を製造することができる。
【0077】
なお、上記説明においては、1−3型複合圧電体を使用した2次元アレイ型超音波プローブ30を説明したが、本発明は2−2型複合圧電体について適用可能である。
【0078】
従って、第3の実施形態に係る、1−3型複合圧電体を有する2次元アレイ型超音波プローブ30は、第1、第2の実施形態で説明した1次元アレイ型超音波プローブと同様の作用・効果を得ることができる。
【0079】
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、1−3型或いは2−2型の複合圧電体11の他の製造方法について説明する。
【0080】
まず、1−3型の複合圧電体11を製造する他の方法について説明する。
【0081】
第1の実施形態に示した第1ステップと同様の手法により、単結晶圧電体111を作成する。
【0082】
続く第2ステップにおいて、本実施例では、上下PVC樹脂層113、115を次に述べる様に形成する。すなわち、第1ステップにおいて形成された複数個の圧電体111を導電性樹脂シート上に並べて接着し、同シートを同圧電体11の裏面の大きさに切り取る。導電性樹脂シートとしては導電性銀入りのPVC樹脂をシート状に成型したものを使用する。
【0083】
続いて、第1の実施形態に示した第3ステップ、第4ステップ、第5ステップと同様の工程を経て、1−3型複合圧電体11を形成する。形成された1−3型複合圧電体11には、1KV/mmの電界を印加して分極処理が施される。
【0084】
以上述べた製造方法によっても、第1の実施形態で述べた1−3型複合圧電体11を形成することが可能である。また、本製造方法は、圧電単結晶を用いた超音波プローブを大型化する場合に実益がある。すなわち、一般に、圧電単結晶自体を大型化することは困難であるから、圧電単結晶の複合圧電体を使用する超音波プローブを大型化することは容易ではない。しかし、本製造方法によれば、特に、導電性の樹脂シート上に複数の単結晶圧電体111を配列することにより、例えば単結晶圧電体111がアレイ方向に複数配列された1−3型複合圧電体11も容易に製造することができ、超音波プローブを容易に大型化することができる。
【0085】
次に、2−2型の複合圧電体11を製造する他の方法について説明する。2−2型の複合圧電体11においても、上記1−3型の複合圧電体11の製造方法と同様の手順により、導電性樹脂シートに接着された単結晶圧電体から2−2型複合圧電体を形成することができる。その他の工程は、第2の実施形態と同様である。
【0086】
なお、上記各製造方法によって形成された1−3型或いは2−2型複合圧電体を使用した1次元或いは2次元アレイ型超音波プローブは、既述の方法によって製造することができる。
【0087】
(第5の実施形態)
第5の実施形態では、1−3型或いは2−2型の複合圧電体11を用いた他の1次元或いは2次元アレイ型超音波プローブについて説明する。
【0088】
図4は、本実施形態に係るアレイ型超音波プローブの概略構成を示している。図3に示したプローブと異なる点は、各単結晶圧電体111の下側PVC樹脂層115に電極24が設けられており、当該電極24の一端からフレキシブル配線基板23が引き出されていることである。この様な構成においても、第1乃至第3の実施形態で説明したアレイ型超音波プローブと同様の作用・効果を得ることができる。
【0089】
(第6の実施形態)
第6の実施形態では、下側PVC樹脂層及び上側PVC樹脂層を形成せずに、チッピング及びクラックを低下させる1次元アレイ型超音波プローブについて説明する。
【0090】
まず、図5、7を参照して本実施形態に係る1次元アレイ型超音波プローブ35の概略構成について説明する。
【0091】
図5は、本実施形態に係る1次元アレイ型超音波プローブ35の断面図を示している。
【0092】
図5に示すように、各単結晶圧電体111の上面には第1の電極40、下面には第2の電極50が形成されている。各第1の電極40には第1のフレキシブル配線基板42が導電ペーストにて接続されている。一方、各第2の電極50には第2のフレキシブル配線基板44がエポキシ系接着剤にて接続されている。
【0093】
各電極40、50には、各フレキシブル配線基板42、44を介して所定の電力が印可され或いは検出される。第1のフレキシブル配線基板42は、銅等からなる導電層420及びポリイミドフィルム等からなる絶縁層421とからなる多層基板であり、GND接続をとるためのものである。また、第2のフレキシブル配線基板44は、銅等からなる導電層440、442と、ポリイミドフィルム等からなる絶縁層441、443、445とからなる多層基板となっており、プローブ35と超音波診断装置本体とを電気的に接続する。なお、導電層444は、後述する所定の配線パターンを有している(図6参照)。
【0094】
1次元アレイ型超音波プローブ35は、第1の音響整合層17、第2の音響整合層18を有している。このプローブ35の振動素子の配列ピッチは、狭いもので0.1mm程度である。
【0095】
図6は、第2のフレキシブル配線基板44の導電層440の上面図を示している。
【0096】
図6に示すように、第2のフレキシブル配線基板44は所定パターンの配線440aを有している。当該配線440aのピッチ幅は、プローブ35が有する単結晶圧電体111のアレイ配列のピッチ幅以下である。各配線440aは、各単結晶圧電体111に対応する各第2の電極4の全面にエポキシ系接着剤にて接着され、図6に示すように交互に逆向きに引き出されている。この配線の交互の引き出しは必須ではなく、例えば全ての配線を同一方向に引き出す構成であってもよい。
【0097】
なお、本実施形態では、第1のフレキシブル配線基板42も第2のフレキシブル配線基板44と同じものを用いている。
【0098】
この様なプローブ35によれば、第1のフレキシブル配線基板42及び第2のフレキシブル配線基板44は単結晶圧電体111のアレイ配列のピッチ幅以下としているから、アレイ配列を形成する際の切削において、導電層444と単結晶圧電体111とを同時に切断する必要がない。すなわち、切削性の異なる導電層444と単結晶圧電体111とは同時に切削されないから、アレイ製造にけるクラックやチッピングの発生を抑制することが可能である。また、第1のフレキシブル配線基板42及び第2のフレキシブル配線基板44を接続した状態で単結晶圧電体111を切削することによっても、クラックやチッピングの発生は抑制される。
【0099】
本発明者らの実験によれば、完成したプローブ35の特性を評価したところ、断線素子は全く存在せず、感度ばらつきも2dBと小さいものとなった。
【0100】
これに対し、従来の手法、例えば第2のフレキシブル配線基板44の導電層440を単結晶圧電体111の接触面サイズに拡張し、当該単結晶圧電体111の全面に渡ってエポキシ系接着剤で接合した場合、本発明者らの評価は次の様になった。すなわち、アレイ加工時にクラックが3割ほど発生した。プローブを完成させ、特性評価を行ったところ断線素子が2割ほどあり、感度ばらつきが10dBと大きかった。断線原因を調べると断線の起きたチャンネルの振動素子にはアレイ加工時に生じたと思われるクラックが存在していた。また、多くの振動素子にはチッピングも見られた。これらの結果は、感度のばらつきに影響を与えているものと考えられる。
【0101】
ところで、プローブ量産の観点からすれば、第1のフレキシブル配線基板42を第2のフレキシブル配線基板44と同じものを用いる必要はない場合がある。各フレキシブル配線基板の配線442は、アレイ配列された単結晶圧電体111と同じ幅以下でパターン化されているから、第1のフレキシブル配線基板42と第2のフレキシブル配線基板44との間の位置合わせすることは容易ではないからである。
【0102】
そこで、第2のフレキシブル配線基板44にのみ図6に示した導体層を使用する構成としてもよい。この様な構成によれば、切断の必要な導電層は第1のフレキシブル配線基板42の振動素子の端部近傍のみとなるため、その影響は無視できる程度となり加工中のクラックやチッピングが発生することはない。本発明者らの評価によれば、プローブ53の断線素子は全くなく、感度ばらつきも2dBと小さかった。
【0103】
なお、本実施形態に係る超音波プローブ35は上記構成に限定する趣旨ではない。例えば次の様な変形が可能である。
【0104】
図7は、超音波プローブ35の変形例を説明するための図である。また、図8は、当該変形例に係る超音波プローブ35が有する第2のフレキシブル配線基板44のパターン配線を示した図である。
【0105】
図7において、超音波プローブ35は、図5に示した構成に加えてスルーホール45を有している。このスルーホール45により、図8に示すように導電層440の配線440aと440bとの通電が取られている。
【0106】
以上述べた本実施形態に係る超音波プローブ35によれば、チッピング及びクラックを低下させることができる。
【0107】
(第7の実施形態)
第7の実施形態では、第1の電極40から引き出す配線と第2の電極50から引き出す配線とを一体化し、単結晶圧電体111の下面から取り出す超音波プローブについて説明する。
【0108】
図9は、第7の実施形態に係る超音波プローブ50の概略構成を説明するための図である。なお、同図は、第1の電極40及び第2の電極50と、第2のフレキシブル配線基板44とを接着する前の状態を示している。図9において、GND用の第1の電極40は、単結晶圧電体111上面から側面を経由して下面にまで連続する回し込み電極となっている。第1の電極40は、第2のフレキシブル配線基板44の導電層442に接続され、第2の電極50は、第2のフレキシブル配線基板44の導電層440に接続されている。なお、各導電層442、440には、図示していないが、単結晶圧電体111の各電極40、50に合わせて露出部が構成されている。
【0109】
なお、各導電層440、442の厚さは18μmである。また、ポリイミドからなる絶縁層443の厚さは12.5〜25μmである。
【0110】
次に、超音波プローブ50の変形例を示す。
【0111】
図10は、超音波プローブ50の変形例である超音波プローブ51を示した図である。図10に示すように、導電層442を延長して単結晶圧電体111回り込ませた第1の電極40に接続する。延長した導電層440を延長した絶縁層443に回り込ませて第2の電極50と接続する。回し込み構造は端部をメッキするなどの方法で形成可能である。
【0112】
図9に示した超音波プローブ50と比較した場合、図10に示したプローブ51では、導電層442と導電層44との段差が無くなっている。従って、この様な構成であれば、加圧接着によって生じる可能性がある単結晶圧電体111の破壊を防止することができる。
【0113】
図11は、超音波プローブ51の変形例である超音波プローブ52を示した図である。図11に示すプローブ52は、例えば、図10に示したプローブ51の形態で導電層440の回し込み構造を取るのが困難な場合に実益がある。図11に示すように、プローブ52では、導電層440と導電層442の上下関係は図10の場合と逆になっている。また、第1の電極40の回し込み構造の位置もプローブ51と逆になっており、導電部材48によって第1の電極40、導電層442、442aとの通電が取られている。
【0114】
この様な構成であれば、単結晶圧電体111と第2のフレキシブル配線基板44とを接着した後、導電部材48によって第1の電極40と導電層442、442aとを接続すればよい。なお、導電部材48は導電ペーストが好ましい。また、導電部材48による接続は、超音波振動素子アレイ形成後に行っても良い。
【0115】
図12は、超音波プローブ52の変形例である超音波プローブ53を示した図である。図12に示すように超音波プローブ53は、導電層442の先端から露出部442bを露出させ、単結晶圧電体111接着後当該露出部442bを折り曲げて第1の電極40と接続してある。この様な構成であれば、より安定な接続が得ることができる。
【0116】
なお、図10、12、13中で示した第1のフレキシブル配線基板42を第2のフレキシブル配線基板44と同様に、ピッチ幅がプローブ35が有する単結晶圧電体111のアレイ配列のピッチ幅以下であるパターン配線440aを有する構成とすることで、加工中のクラックやチッピングが抑止できる。切削性の劣る導電層と単結晶圧電体111とを一緒に切断することがないからである。
【0117】
以上、本発明を実施形態に基づき説明したが、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変形例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。例えば以下に示す(1)、(2)のように、その要旨を変更しない範囲で種々変形可能である。
【0118】
(1)各実施形態で使用する単結晶圧電体は特に限定されない。例えば、Pb((Zn1/3Nb2/3)0.91Ti0.09)O3に代表される亜鉛ニオブ酸鉛とチタン酸鉛との固溶体からなる単結晶のように少なくともチタン酸鉛を含む複合ペロブスカイト型で、マグネシウムニオブ酸鉛とチタン酸鉛との固溶体からなる単結晶、スカンジウムニオブ酸鉛とチタン酸鉛との固溶体からなる単結晶などが挙げられる。あるいはニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウム等の単結晶を用いても良い。
【0119】
(2)上記本発明を第1の実施形態〜第3の実施形態においては、単結晶圧電体111の上下面にPVC樹脂層を形成してチッピング発生を防止し、さらに及び電極或いは音響整合層の機能を持たせる構成により、高感度広帯域の超音波プローブを実現した。しかし、PVC樹脂層の形成を単結晶圧電体111の片面のみとしても、チッピング発生防止、電極或いは音響整合層の役割を果たすことは可能である。
【符号の説明】
【0120】
10、35、50、51、52、53…超音波プローブ、11…複合圧電体、12…エポキシ樹脂、17…第1の音響整合層、18…第2の音響整合層、19…音響レンズ、21…共通電極板、23…フレキシブル配線基板、24…電極、25…バッキング材、38…溝、40…第1の電極、50…第2の電極、42…第1のフレキシブル配線基板、44…第2のフレキシブル配線基板、45…スルーホール、50…第2の電極、111…単結晶圧電体、113…上側PVC樹脂層、115…下側PVC樹脂層、420、440、442…導電層、421、443、445…絶縁層、440a…パターン配線、442b…露出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともチタン酸鉛を含む固溶系単結晶により形成され、アレイ状に配列された複数の圧電体と、
前記各圧電体の下面に形成された第1の電極と、
それぞれの幅が前記各圧電体のアレイ方向の幅よりも小さく、前記各圧電体の長手方向に沿って前記第1の電極と接続され、前記各第1の電極から電気配線を引き出して超音波診断装置本体に接続するための複数のパターン配線を有する第1のフレキシブル印刷配線基板と、
を具備することを特徴とする超音波プローブ。
【請求項2】
前記各圧電体の上面に形成された第2の電極と、
それぞれの幅が前記各圧電体のアレイ方向の幅よりも小さく、前記各第2の電極から電気配線を引き出してGND接続するための複数のパターン配線を有する第2のフレキシブル印刷配線基板と、
をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の超音波プローブ。
【請求項3】
前記各圧電体の上面から側面を介し下面の一部まで回り込むように形成された、GND接続用の少なくとも一つの第2の電極をさらに具備し、
前記第1のフレキシブル印刷配線基板は、前記少なくとも一つの第2の電極をGND接続するための少なくとも一つのパターン配線をさらに有すること、
を特徴とする請求項1記載の超音波プローブ。
【請求項4】
前記複数のパターン配線は、前記各第1の電極から交互に逆向きに引き出され、前記各圧電体の長手方向の全面を前記第1の電極と接続するように形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の超音波プローブ。
【請求項5】
前記複数のパターン配線は、前記各第1の電極から同一方向に引き出され、前記各圧電体の長手方向の全面を前記第1の電極と接続するように形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の超音波プローブ。
【請求項6】
樹脂部材上に所定の間隔で複数の導電性層が平行にパターン化されているフレキシブル印刷配線板と、単結晶圧電体とを、前記複数の導電性層が前記単結晶圧電体の長手方向に沿って電気的に接続されるように接着する第1のステップと、
前記複数の導電性層の間を前記フレキシブル印刷基板と単結晶圧電体を共に切削して、前記導電性層よりも大きな幅を有する複数の圧電振動素子を形成する第2のステップと、
を備えることを特徴とする超音波プローブ製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−130477(P2011−130477A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21130(P2011−21130)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【分割の表示】特願2001−31281(P2001−31281)の分割
【原出願日】平成13年2月7日(2001.2.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】