超音波プローブ
【課題】矩形振動子に加え、矩形以外の圧電振動子を用い、圧電素子の背面にフレキシブルプリント基板を接合する構成を用いた、折り曲げ部を保護層で保護した超音波プローブを提供すること。
【解決手段】一部に盛り上がり部を有するベース層と、前記ベース層の圧電素子側の面に前記ベース層に沿って形成され、前記盛り上がり部に対応する一部で前記圧電素子の背面に接地された信号電極に接続される信号配線層と、前記盛り上がり部に対応する前記信号配線層の一部を挟んで両側に形成された保護層とを備え、前記盛り上がり部に対応する前記信号配線層の一部の前記圧電振動部品側の面と、前記信号電極の背面とが接続され、前記保護層の前記圧電振動部品側の面と、前記信号電極の背面とが接続されたフレキシブルプリント基板を具備するよう構成されている。
【解決手段】一部に盛り上がり部を有するベース層と、前記ベース層の圧電素子側の面に前記ベース層に沿って形成され、前記盛り上がり部に対応する一部で前記圧電素子の背面に接地された信号電極に接続される信号配線層と、前記盛り上がり部に対応する前記信号配線層の一部を挟んで両側に形成された保護層とを備え、前記盛り上がり部に対応する前記信号配線層の一部の前記圧電振動部品側の面と、前記信号電極の背面とが接続され、前記保護層の前記圧電振動部品側の面と、前記信号電極の背面とが接続されたフレキシブルプリント基板を具備するよう構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に接続され、被検体に超音波を送受信する超音波プローブに関し、特に圧電素子の電極構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被検体内を超音波で走査し、被検体内からの反射波から生成した受信信号を基に当該被検体の内部状態を画像化する超音波診断装置がある。このような超音波診断装置は、超音波プローブから被検体内に超音波を送信し、被検体内部で音響インピーダンスの不整合によって生じる反射波を超音波プローブで受信して受信信号を生成する。
【0003】
超音波プローブは、送信信号に基づいて振動して超音波を発生し、反射波を受けて受信信号を生成する圧電素子を走査方向に複数個配設している。
【0004】
圧電素子にはその背面から超音波送波面に電圧を印加する必要があることから、圧電素子の背面に信号電極が設けられ、圧電素子の超音波送波面に接地電極が設けられている。この信号電極及び接地電極と、超音波診断装置と電気的信号を送受信するための電気回路とを接続する配線部材としてフレキシブルプリント基板が用いられている。
【0005】
圧電素子から電極を引出す構成としては、圧電素子の側面にフレキシブルプリント基板をはんだ付けする構成と、圧電素子の背面にフレキシブルプリント基板をはんだ付け又は接着接合する構成の、主に2種類に大別される。例えば、特許文献1には、圧電素子の背面でフレキシブルプリント基板を接着接合する場合の一例が開示されている。
【0006】
圧電素子の側面にフレキシブルプリント基板をはんだ付けする構成は、例えば圧電素子が円形振動子の場合に用いられる。図12は、圧電素子の側面にフレキシブルプリント基板をはんだ付けする従来の超音波プローブにおける、圧電素子とバッキング材とフレキシブルプリント基板の構成の一例である。
【0007】
図12の例では、圧電素子10と、圧電素子10の背面のほぼ全面と一方の側面を覆うように形成された信号電極11と、圧電素子10の超音波送波面のほぼ全面と他方の側面を覆うように形成された接地電極12と、圧電素子10の背面に接合されたバッキング材3と、信号電極11を引出すフレキシブルプリント基板2と、接地電極12を引出すフレキシブルプリント基板5とで構成される。
【0008】
図12に示すように、圧電素子10の側面に位置する信号電極11の信号電極接続部101とフレキシブルプリント基板2の信号配線層22とが電気的に接続される。また、圧電素子10の側面に位置する接地電極12の接地電極接続部121とフレキシブルプリント基板5の接地配線層52とが電気的に接続される。
【0009】
また、信号電極11の信号電極接続部101とは逆側の端部には信号電極切欠き部112が設けられ、接地電極12の接地電極接続部121とは逆側の端部には接地電極切欠き部122が設けられている。この信号電極切欠き部112と接地電極切欠き部122とにより、信号電極11と接地電極12とが電気的に分離される。
【0010】
また、圧電素子の背面にフレキシブルプリント基板をはんだ付け又は接着接合する構成は、例えば圧電素子が矩形振動子の場合に用いられる。図13及び図14は、圧電素子の背面にフレキシブルプリント基板をはんだ付け又は接着接合する従来の超音波プローブにおける、圧電素子とバッキング材とフレキシブルプリント基板の一例である。
【0011】
例えば図14は、特許文献1に開示された超音波プローブの例であり、圧電素子10と、圧電素子10の背面の中央部を覆うように形成された信号電極11と、圧電素子10の超音波送波面のほぼ全面を覆い、圧電素子10の側面を介して圧電素子10の背面に引出すように形成された接地電極12と、圧電素子10の背面に接合されたバッキング材3と、圧電素子10とバッキング材3との間に介在し、信号電極11及び接地電極12を引出すフレキシブルプリント基板2とで構成される。
【0012】
図14に示すように、フレキシブルプリント基板2は、第1の絶縁層27と、接地配線層26と、第2の絶縁層25と、信号配線層22と、ベース層(第3の絶縁層)21とで構成される基板本体と、第2の保護層(スペーサー)24とで構成されている。
【0013】
信号配線層22及びベース層21の中央部は、第2の保護層24に押し上げられ、信号配線層22の電極接続部221と接地配線層26とがほぼ同じ高さとなり、圧電素子10の背面と接合する。このとき、信号電極11と電極接続部221とが電気的に接続される。また、接地電極12の圧電素子10の背面に引出された接地電極接続部121と接地配線層26とが電気的に接続される。
【0014】
図13や図14の例のように、圧電素子10の背面にフレキシブルプリント基板2をはんだ付け又は接着接合する構成の場合、圧電素子10とフレキシブルプリント基板2とを接合後、フレキシブルプリント基板2を圧電素子10の端部でバッキング材3に沿ってほぼ直角に折り曲げる構成が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2007−167445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
一方で、図12に示すように、圧電素子10の側面にフレキシブルプリント基板2及び5をはんだ付けする構成は、薄い圧電素子10の側面においてはんだ付けされるため、有効なはんだ面積が確保できず電極の接続品質が悪化し、作業も煩雑になるため歩留まりが安定しないという問題がある。
【0017】
また図13や図14の例のように、圧電素子10の背面にフレキシブルプリント基板2をはんだ付け又は接着接合する構成の場合、超音波プローブを小型化するためにフレキシブルプリント基板2を圧電素子10の端部で折り曲げる構成とすることから、矩形以外の圧電振動子を用いることが困難である。また、折り曲げ部において信号配線層22が断線する可能性が高く、保護層を設けて保護する必要がある。
【0018】
さらに、特許文献1(図14)に示すように、接地電極12を圧電素子10の側面を介し背面に引出す構成の場合、圧電素子10の有効部分が信号電極11に覆われた部分に限られ、無効部分が形成される。この無効部分は超音波の送受信に寄与しないため、有効部分を大きくしようとすると超音波プローブの不必要な大型化につながる。
【0019】
本発明は上記の問題を解決するものであり、矩形振動子を用いた場合に加え、矩形以外の圧電振動子(例えば八角形の圧電振動子)を用いた場合において、圧電素子の背面にフレキシブルプリント基板をはんだ付け又は接着接合する構成により、折り曲げ部を保護層で保護した超音波プローブの提供を目的とする。
【0020】
さらに、圧電素子の背面にフレキシブルプリント基板をはんだ付け又は接着接合する構成により、圧電素子に無効部分を必要としない超音波プローブの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、この発明の第1の形態は、超音波送波面に接地電極が設置され、背面に信号電極が設置された1以上の圧電素子で構成された圧電振動部品と、前記圧電振動部品の背面に重ねられたバッキング材と、前記圧電振動部品と前記バッキング材との間に介在するフレキシブルプリント基板とを備えた超音波プローブであって、前記フレキシブルプリント基板は、一部に盛り上がり部を有するベース層と、前記ベース層の前記圧電振動部品側の面に前記ベース層に沿って形成され、前記盛り上がり部に対応する部分が前記信号電極に接続される信号配線層と、前記盛り上がり部に対応する前記信号配線層の一部を挟んで両側に形成され、前記盛り上がり部以外の部分に対応する前記信号配線層を保護する保護層とを備え、前記盛り上がり部に対応する前記信号配線層の一部の前記圧電振動部品側の面と、前記信号電極の背面とが接続され、前記保護層の前記圧電振動部品側の面と、前記信号電極の背面とが接続されたことを特徴とする超音波プローブである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、矩形振動子を用いた場合に加え、矩形以外の圧電振動子(例えば八角形の圧電振動子)を用いた場合において、圧電素子の背面にフレキシブルプリント基板をはんだ付け又は接着接合する構成により、折り曲げ部を保護層で保護した超音波プローブを提供することが可能となる。
【0023】
また、圧電素子に電圧を印加する信号電極を、圧電素子の背面のほぼ全面を覆うように設置することが可能となるため、無効部分を必要とせず、超音波プローブを小型化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の実施形態における圧電素子とバッキング材とフレキシブルプリント基板の分解図である。
【図2】第1の実施形態におけるフレキシブルプリント基板の平面図である。
【図3】第1の実施形態におけるフレキシブルプリント基板の拡大断面図である。
【図4】第1の実施形態におけるフレキシブルプリント基板の作成方法を説明するための図である。
【図5】第1の実施形態におけるフレキシブルプリント基板の作成方法を説明するための図である。
【図6】本発明に係る超音波プローブの概略図である。
【図7】変形例1におけるフレキシブルプリント基板の作成方法を説明するための図である。
【図8】変形例1におけるフレキシブルプリント基板の作成方法を説明するための図である。
【図9】変形例1におけるフレキシブルプリント基板の平面図である。
【図10】変形例1における圧電素子とバッキング材とフレキシブルプリント基板の分解図である。
【図11】円形の一部を直線状に切欠いた圧電素子を用いた場合におけるフレキシブルプリント基板の平面図である。
【図12】信号電極及び接地電極の双方を圧電素子の側面でフレキシブルプリント基板と接続する従来の超音波プローブの一例を示す断面図である。
【図13】信号電極及び接地電極の双方を圧電素子の背面でフレキシブルプリント基板と接続する従来の超音波プローブの一例を示す断面図である。
【図14】信号電極及び接地電極の双方を圧電素子の背面でフレキシブルプリント基板と接続する従来の超音波プローブの一例を示す分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1の実施形態)
以下に、図1及び図2と、図6とを参照しながら第1の実施形態に係る超音波プローブについて説明する。
【0026】
図1に示すように、本実施形態に係る超音波プローブは、超音波送波面に接地電極12が設置され、背面に信号電極11が設置された1以上の圧電素子10で構成された圧電振動部品1と、圧電振動部品1の背面に重ねあわされたバッキング材3とを具備しており、圧電振動部品1とバッキング材3との間にはフレキシブルプリント基板2が設けられている。また、図6に示すように、圧電振動部品1の超音波送波面には、第1の音響整合層41と第2の音響整合層42(導電体)で構成された音響整合層4と、音響レンズ6とが、これらの順に重ね合わされて設けられている。第1の音響整合層41と第2の音響整合層42との間にはフレキシブルプリント基板5が介在し、接地電極12からの信号を引出している。
【0027】
以下、各部の構成について具体的に説明する。なお以下の説明において、超音波を走査する方向をZ軸方向(図1の紙面に直角方向)、超音波を収束する方向をY軸方向(図1の紙面の上下方向)、Z軸とY軸の双方に直交する方向をX軸方向(図1の紙面の左右方向)とする。また、Y軸方向において、上側を超音波送波面側、下側を背面側と呼ぶ。
【0028】
圧電振動部品1は、信号電極11及び接地電極12が配置された圧電素子10がスキャン方向(Z軸方向)に対して1以上配列され構成されている(圧電素子10、信号電極11、及び、接地電極12については後述する)。本実施形態に係る圧電振動部品1は、図2に示すように、Y軸方向から見たとき、矩形の形状をなしている。なお以降は、圧電振動部品1が複数(2以上)の圧電素子10により構成されているものとして説明する。
【0029】
圧電素子10は圧電効果を有しており、その素材としては、例えば酸化亜鉛(ZnO)やチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)のような圧電セラミックスが使用される。
【0030】
信号電極11は、圧電素子10の背面のほぼ全面を覆うように配置されている。具体的には、圧電素子10や信号電極11の加工精度の違いを考慮し、加工後に圧電素子10の背面の全面を覆うように、信号電極11を形成する。信号電極11の素材としては、導電性が良好な金、銀、銅などの金属が使用される。
【0031】
接地電極12は、圧電素子10の超音波送波面のほぼ全面を覆うように配置されている。具体的には、圧電素子10や接地電極12の加工精度の違いを考慮し、加工後に圧電素子10の超音波送波面の全面を覆うように、接地電極12を形成する。これは、接地電極12と信号電極11との間で電圧が印加されるため、接地電極12で覆われた部分が実際に駆動する部分となり、接地電極12をより広くとることが望ましいためである。
【0032】
なお、信号電極11及び接地電極12は、圧電素子10ごとに配置されており、圧電振動部品1を圧電素子10それぞれに分割する切断溝により、圧電素子10それぞれの信号電極11及び接地電極12が、他の圧電素子10の信号電極11及び接地電極12と電気的に分離される。
【0033】
バッキング材3は、圧電素子10の背面側に伝播する超音波を吸収するものであって、圧電振動部品1の背面側に配置されている。バッキング材3の素材としては、特に限定されるものではないが、吸音性に優れたゴムなどが使用される。
【0034】
フレキシブルプリント基板2は、圧電素子10へ駆動信号を伝達し、かつ、反射波を電気信号に変換した受信信号を電気回路へ伝達するものであって、圧電振動部品1とバッキング材3との間に介在する。
【0035】
フレキシブルプリント基板2は、基板本体20と、第2の保護層24とで構成されている。基板本体20は、バッキング材3から圧電素子10に向かって順に積層された、ベース層21と、信号配線層22と、第1の保護層23とで構成されている。
【0036】
信号配線層22は、信号電極11と接続される電極接続部221と、電極接続部221をベース層21に沿ってX軸方向に引出す電極引出し部222とで構成されている。信号配線層22の素材としては、導電性が良好な金、銀、銅などの金属が使用される。なお以降では、ベース層21の電極接続部221に対応する部分を、ベース層露出部211と呼ぶものとする。
【0037】
第1の保護層23は、バッキング材3の超音波送波面側に対応する圧電素子接合部231と、バッキング材3の側面に沿って折り曲げられる側面保護部232とで構成されている。
【0038】
圧電素子接合部231は、電極接続部221の超音波送波面側に対応する部分よりも僅かに大きい領域が除去されている。即ち、圧電素子接合部231には、Y軸方向に対して、電極接続部221よりも僅かに大きい開口01が形成されている。これにより、電極接続部221及びベース層露出部211は、フレキシブルプリント基板2から、圧電素子10の背面に形成された信号電極11側に露出する。
【0039】
第2の保護層24は、バッキング材3と基板本体20との間に介在し、基板本体20の電極接続部221が露出した部分(図1の範囲Aに相当する、ベース層露出部211及び電極接続部221)を圧電素子10に向けて隆起させる。この隆起した部分が盛り上がり部に相当する。第2の保護層24の形成範囲は、電極接続部221の形成範囲とほとんど対応している。ただし、第2の保護層24の形成範囲は、圧電素子接合部231に形成された開口01の内側(図1の範囲A)に限定されていれば、電極接続部221より大きくても小さくても構わない。
【0040】
ここで、図3を参照しながら第2の保護層24の厚さについて説明する。図3は、第1の実施形態におけるフレキシブルプリント基板の拡大断面図である。図3に示すように、第2の保護層24の厚さd4は、第1の保護層23の厚さd3に設定されている。従って、バッキング材3から圧電素子接合部231までの厚さ(ベース層21の厚さd1と、信号配線層22の厚さd2と、第1の保護層23の厚さd3との和d1+d2+d3)は、バッキング材3から電極接続部221までの厚さ(第2の保護層24の厚さd4と、ベース層21の厚さd1と、信号配線層22の厚さd2との和d4+d1+d2)に等しい。電極接続部221、圧電素子接合部231、及び、第2の保護層24はほぼ平坦な形状に成形されている。即ち、第2の保護層24の厚さd4が、第1の保護層23の厚さd3に設定されることで、電極接続部221と圧電素子接合部231とが同一平面内に含まれることになる。
【0041】
なお、第2の保護層24の厚さd4は、第2の保護層24の素材に応じて微調整されることもある。即ち、第2の保護層24が軟らかい素材であれば、バッキング材3と基板本体20に挟まれることで僅かに圧縮する。従って、第2の保護層の圧縮量daを考慮して、第2の保護層24の厚さd4がd3+daに設定されていても良い。これは第1の保護層23に軟らかい素材を用いる場合も同様である。この場合、圧電振動部品1とフレキシブルプリント基板2とを接合したときに、電極接続部221と圧電素子接合部231とが同一平面内に含まれるように、第1の保護層23の厚さd3を設定することとなる。
【0042】
バッキング材3とフレキシブルプリント基板2との接合、及び、フレキシブルプリント基板2と圧電振動部品1(具体的には信号電極11)との接合には従来技術を用いれば良い。バッキング材3とフレキシブルプリント基板2との接合について一般的な技術としては、接着剤による接合が良く知られている。また、フレキシブルプリント基板2と圧電振動部品1との接合について一般的な技術としては、はんだ付けによる接合や接着剤による接合が良く知られている。なお、フレキシブルプリント基板2と圧電振動部品1とを接合する場合、信号電極11と、電極接続部221及び圧電素子接合部231とを接合する。
【0043】
バッキング材3とフレキシブルプリント基板2とが接合されたら、フレキシブルプリント基板2は、折り曲げ部αによりバッキング材3の側面に沿って折り曲げられる。このとき、信号配線層22の電極引出し部222が、第1の保護層23の圧電素子接合部231と側面保護部232により保護される。
【0044】
以下、図6を参照しながら超音波プローブの構成を説明する。図6は、本発明に係る超音波プローブの構成の概略図である。
【0045】
音響レンズ6は、送受信される超音波を収束してビーム状に整形するものであって、音響整合層4の超音波送波面側に配置されている(音響整合層4については後述する)。音響レンズ6の素材としては、音響インピーダンスが生体に近いシリコーンなどが使用される。
【0046】
音響整合層4は、圧電素子10と音響レンズ6を音響整合させるものであって、圧電素子10と音響レンズ6の間に介在している。音響整合層4は、第1の音響整合層41と第2の音響整合層42とで構成されている。第1の音響整合層41及び第2の音響整合層42の素材としては、特に限定されるものではないが、圧電素子10から音響レンズ6に向かって段階的に音響インピーダンスが変化し、かつ、圧電素子10側に位置する第2の音響整合層42が導電性を有するように材質の選定がなされている。
【0047】
フレキシブルプリント基板5は、第1の音響整合層41及び第2の音響整合層42の間に介在し、接地電極12から電気的信号を引出している。フレキシブルプリント基板5は、ベース層と接地配線層(図示しない)で構成されており、該接地配線層が第2の音響整合層42を介し接地電極12から電気的信号を引出している。
【0048】
(第1の実施形態に係るフレキシブルプリント基板2の作成方法)
次に、フレキシブルプリント基板2の作成方法について、図4及び図5を参照しながら説明する。図4及び図5は、第1の実施形態におけるフレキシブルプリント基板の作成方法を説明するための図である。図4(a)及び図5(a)は、フレキシブルプリント基板2のZ軸方向から見た平面図を示しており、図4(b)及び図5(b)は、フレキシブルプリント基板2をXY平面で切断した断面図を示している。
【0049】
まず、図4に示すように、ベース層21の超音波送波面側の面に信号配線層22を積層し、ベース層21の背面に第2の保護層24を積層する。このとき、第2の保護層24は、信号配線層22の電極接続部221の背面側に対応する位置、つまりベース層露出部211の背面に設置する。
【0050】
ベース層21と、信号配線層22と、第2の保護層24とを積層したら、平坦な面に置いて、これらの積層体をヒートプレスなどにより加圧する。これにより、ベース層露出部211及び電極接続部221は、第2の保護層24からの押圧を受けて隆起する。
【0051】
次に、図5に示すように、電極引出し部222の超音波送波面側に第1の保護層23を積層する。
【0052】
積層した第1の保護層23と、信号配線層22と、ベース層21とは、ヒートプレスにより加圧し圧着する。このとき、第2の保護層24からの押圧により隆起した電極接続部221と、第1の保護層23とが同一平面内に設定される。以上により、フレキシブルプリント基板2が形成される。
【0053】
なお、上記の説明では、ベース層露出部211及び電極接続部221を隆起させた後に第1の保護層23を積層し圧着しているが、ベース層21、信号配線層22、第1の保護層23、及び、第2の保護層24を積層させた後に、ヒートプレスなどによる加圧により、ベース層露出部211及び電極接続部221を隆起させても良い。
【0054】
(第1の実施形態に係るフレキシブルプリント基板2と圧電振動部品1との接合)
作成したフレキシブルプリント基板2は、圧電振動部品1の背面に接合する。このとき、電極接続部221と圧電素子10の背面に設置された信号電極11とを電気的に接続させる。フレキシブルプリント基板2と圧電振動部品1(具体的には信号電極11)との接合には、従来の技術を用いれば良く、一般的にははんだ付けや接着剤による接合が良く知られている。
【0055】
(第1の実施形態に係るフレキシブルプリント基板2とバッキング材3との接合)
バッキング材3は、フレキシブルプリント基板2の背面に接合する。フレキシブルプリント基板2とバッキング材3との接合には、従来の技術を用いれば良く、一般的には接着剤による接合が良く知られている。
【0056】
ここで図1を参照する。図1は、本実施形態における圧電素子10とバッキング材3とフレキシブルプリント基板2の分解図である。フレキシブルプリント基板2とバッキング材3とを接合したら、図1に示すように、フレキシブルプリント基板2を折り曲げ部αでバッキング材3の側面に沿って折り曲げる。
【0057】
次に、図6に示すように、音響整合層4、接地電極12を引出すフレキシブルプリント基板5、及び、音響レンズ6を、圧電振動部品1の超音波送波面に接合することで、本実施形態に係る超音波プローブが形成される。なお、圧電振動部品1、音響整合層4、フレキシブルプリント基板5、及び、音響レンズ6の接合については従来の技術を用いれば良い。
【0058】
ここで図2を参照する。図2は、第1の実施形態におけるフレキシブルプリント基板2の平面図である。圧電振動部品1、音響整合層4、フレキシブルプリント基板5、及び、音響レンズ6を接合したら、図2に示すように、圧電振動部品1をXY平面に平行な面で切断し、スキャン方向(Z軸方向)に複数の素子(信号電極11及び接地電極12を配置した圧電素子10)に分割する。
【0059】
このとき圧電振動部品1を分割する切断溝を、圧電振動部品1の背面(信号電極11とフレキシブルプリント基板2との接合面)から、少なくとも圧電素子接合部231の背面と信号電極11の背面との間に位置するXZ平面β(図1参照)までの深さとすると良い。なお、本実施形態に係る超音波プローブにおいては、XZ平面βより背面側の深い位置まで切断しても、該超音波プローブの機能を実現することは可能である。
【0060】
以上、本実施形態に係る超音波プローブによれば、圧電素子の背面にフレキシブルプリント基板をはんだ付け又は接着接合する構成により、フレキシブルプリント基板の折り曲げ部を保護層(第1の保護層23)で保護した超音波プローブを提供することが可能となる。
【0061】
また、圧電素子に電圧を印加する信号電極を、圧電素子の背面のほぼ全面を覆うように設置することが可能となるため、無効部分を必要とせず、超音波プローブを小型化することが可能となる。
【0062】
(変形例1)
次に、変形例1に係る超音波プローブについて、図9を参照しながら説明する。図9は、変形例1におけるフレキシブルプリント基板2の平面図である。なお、図7及び図8は変形例1におけるフレキシブルプリント基板2の作成方法を説明するための図である。フレキシブルプリント基板2の作成方法については後述する。また、変形例1では、第1の実施形態に係る超音波プローブと異なる圧電振動部品1、フレキシブルプリント基板2の構成に着目して説明する。
【0063】
変形例1に係る圧電振動部品1は、図9に示すように、Y軸方向から見たとき、少なくとも側面の一部が平面状に形成された側面部1aを有する形状をなしている。このときバッキング材3は、圧電振動部品1の形状に対応して、Y軸方向から見たとき、圧電振動部品1と同様の形状をなすように成形されている。
【0064】
また、変形例1に係るフレキシブルプリント基板2は、圧電振動部品1の背面に接合する部分が、Y軸方向から見たとき、圧電振動部品1と同様の形状をなすように成形されている。例えば図9の例の場合、圧電振動部品1と、バッキング材3と、フレキシブルプリント基板2の圧電振動部品1の背面に接合する部分とが、Y軸方向から見たとき、Z軸に平行な辺が直線状の八角形の形状をなすように成形されている。このとき、圧電振動部品1の側面部1aと、バッキング材3の前記Z軸に平行な辺を含むYZ平面に平行な側面とが、連続した平面に含まれるように成形されていると良い。
【0065】
変形例1に係る電極引出し部222は、電極接続部221を、側面部1aに対応するフレキシブルプリント基板2の折り曲げ部αを介して、側面部1aと連続するバッキング材3の側面に沿って引出すように設置する。このとき、電極引出し部222の圧電素子接合部231の背面に対応する部分(図9の範囲B)は、XY平面と交差する方向に引出されても良い。
【0066】
変形例1に係る第1の保護層23は、Y軸方向から見た形状は異なるものの、第1の実施形態に係る第1の保護層23の構成と同様に、圧電素子接合部231と側面保護部232とで構成され、開口01が設けられている。
【0067】
また、変形例1に係る第2の保護層24は、第1の実施形態に係る第2の保護層24の構成と同様であり、第1の保護層23と同じ厚さで成形され、基板本体20の電極接続部221が露出した部分(図9の範囲Aに相当する、ベース層露出部211及び電極接続部221)を圧電素子10に向けて隆起させる。
【0068】
(変形例1に係るフレキシブルプリント基板2の作成方法)
次に、フレキシブルプリント基板2の作成方法について、図7及び図8を参照しながら説明する。図7及び図8は、変形例1におけるフレキシブルプリント基板の作成方法を説明するための図である。図7(a)及び図8(a)は、フレキシブルプリント基板2のZ軸方向から見た平面図を示しており、図7(b)及び図8(b)は、フレキシブルプリント基板2をXY平面で切断した断面図を示している。変形例1に係るフレキシブルプリント基板2の作成方法は、第1の実施形態に係るフレキシブルプリント基板2と同様である。
【0069】
具体的には、まず図7に示すように、ベース層21の超音波送波面側の面に信号配線層22を積層し、ベース層21の背面に第2の保護層24を積層する。
【0070】
ベース層21と、信号配線層22と、第2の保護層24とを積層したら、これらの積層体をヒートプレスなどにより加圧する。これにより、ベース層露出部211及び電極接続部221は、第2の保護層24からの押圧を受けて隆起する。
【0071】
次に、図8に示すように、信号配線層22の超音波送波面側の面に第1の保護層23を積層する。
【0072】
積層した第1の保護層23と、信号配線層22と、ベース層21とは、ヒートプレスにより加圧し圧着する。このとき、第2の保護層24からの押圧により隆起した電極接続部221と、第1の保護層23とが同一平面内に設定される。以上により、フレキシブルプリント基板2が形成される。
【0073】
なお、第1の実施形態と同様に、ベース層21、信号配線層22、第1の保護層23、及び、第2の保護層24を積層させた後に、ヒートプレスなどによる加圧により、ベース層露出部211及び電極接続部221を隆起させても良い。
【0074】
(変形例1に係る圧電振動部品1のスキャン方向に対する分割)
ここで図9及び図10を参照する。図9は、変形例1におけるフレキシブルプリント基板2の平面図である。また、図10は、変形例1における圧電素子とバッキング材とフレキシブルプリント基板の分解図である。前記第1の実施形態と同様に圧電振動部品1、音響整合層4、フレキシブルプリント基板5、及び、音響レンズ6を接合したら、図9に示すように、圧電振動部品1をXY平面で切断し、スキャン方向(Z軸方向)に対して複数の素子に分割する。
【0075】
このとき圧電振動部品1を分割する切断溝を、圧電振動部品1の背面(信号電極11とフレキシブルプリント基板2との接合面)から、少なくとも圧電素子接合部231の背面と信号電極11の背面との間に位置するXZ平面β(図10参照)までの深さとする。
【0076】
これにより、圧電素子接合部231の背面に位置する電極引出し部222を、切断溝により切断することなく、切断溝とXZ平面上で交差する位置に配置することが可能となる。これにより、電極引出し部222を折り曲げ部αを介し、側面部1aと連続するバッキング材3の側面に沿って引き出すことが可能となる。そのため、圧電振動部品1は少なくとも側面の一部が平面状に形成された側面部1aを有していれば良く、圧電振動部品1に矩形以外の圧電振動子を用いることが可能となる。
【0077】
以上により、変形例1に係る超音波プローブは、第1の実施形態に係る超音波プローブの特徴に加え、矩形以外の圧電振動子(例えば八角形の圧電振動子)を用いることが可能となるため、サイドローブを低減した超音波プローブを低コストで実現することが可能となる。
【0078】
なお、上述した説明では圧電振動部品1をY軸方向から見た形状が八角形の場合を例に説明したが、これは八角形に限るものではない。例えば図11は、円形の一部を直線状に切欠いた圧電素子を用いた場合におけるフレキシブルプリント基板の平面図である。図9や図11に示すように、電極引出し部222が引出されるバッキング材3の側面と連続する、圧電振動部品1の側面が平面となる形状であればその形状は限定されない。
【0079】
また、上述した説明では圧電振動部品1のYZ平面に平行な側面が平面状に形成されているが、これはYZ平面に平行な側面に限るものではない。Y軸の方向から見ていずれかの側面の一部が平面上に形成された側面部を備えていれば良く、該側面部と連続するバッキング材3の側面に沿って電極引出し部222が引出されていればその構成は限定されない。
【符号の説明】
【0080】
1 圧電振動部品 10 圧電素子 11 信号電極 12 接地電極
2 フレキシブルプリント基板 21 ベース層 211 ベース層露出部
22 信号配線層 221 電極接続部 222 電極引出し部
23 第1の保護層 231 圧電素子接合部 232 側面保護部
24 第2の保護層
3 バッキング材 4 音響整合層 5 フレキシブルプリント基板
6 音響レンズ
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に接続され、被検体に超音波を送受信する超音波プローブに関し、特に圧電素子の電極構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被検体内を超音波で走査し、被検体内からの反射波から生成した受信信号を基に当該被検体の内部状態を画像化する超音波診断装置がある。このような超音波診断装置は、超音波プローブから被検体内に超音波を送信し、被検体内部で音響インピーダンスの不整合によって生じる反射波を超音波プローブで受信して受信信号を生成する。
【0003】
超音波プローブは、送信信号に基づいて振動して超音波を発生し、反射波を受けて受信信号を生成する圧電素子を走査方向に複数個配設している。
【0004】
圧電素子にはその背面から超音波送波面に電圧を印加する必要があることから、圧電素子の背面に信号電極が設けられ、圧電素子の超音波送波面に接地電極が設けられている。この信号電極及び接地電極と、超音波診断装置と電気的信号を送受信するための電気回路とを接続する配線部材としてフレキシブルプリント基板が用いられている。
【0005】
圧電素子から電極を引出す構成としては、圧電素子の側面にフレキシブルプリント基板をはんだ付けする構成と、圧電素子の背面にフレキシブルプリント基板をはんだ付け又は接着接合する構成の、主に2種類に大別される。例えば、特許文献1には、圧電素子の背面でフレキシブルプリント基板を接着接合する場合の一例が開示されている。
【0006】
圧電素子の側面にフレキシブルプリント基板をはんだ付けする構成は、例えば圧電素子が円形振動子の場合に用いられる。図12は、圧電素子の側面にフレキシブルプリント基板をはんだ付けする従来の超音波プローブにおける、圧電素子とバッキング材とフレキシブルプリント基板の構成の一例である。
【0007】
図12の例では、圧電素子10と、圧電素子10の背面のほぼ全面と一方の側面を覆うように形成された信号電極11と、圧電素子10の超音波送波面のほぼ全面と他方の側面を覆うように形成された接地電極12と、圧電素子10の背面に接合されたバッキング材3と、信号電極11を引出すフレキシブルプリント基板2と、接地電極12を引出すフレキシブルプリント基板5とで構成される。
【0008】
図12に示すように、圧電素子10の側面に位置する信号電極11の信号電極接続部101とフレキシブルプリント基板2の信号配線層22とが電気的に接続される。また、圧電素子10の側面に位置する接地電極12の接地電極接続部121とフレキシブルプリント基板5の接地配線層52とが電気的に接続される。
【0009】
また、信号電極11の信号電極接続部101とは逆側の端部には信号電極切欠き部112が設けられ、接地電極12の接地電極接続部121とは逆側の端部には接地電極切欠き部122が設けられている。この信号電極切欠き部112と接地電極切欠き部122とにより、信号電極11と接地電極12とが電気的に分離される。
【0010】
また、圧電素子の背面にフレキシブルプリント基板をはんだ付け又は接着接合する構成は、例えば圧電素子が矩形振動子の場合に用いられる。図13及び図14は、圧電素子の背面にフレキシブルプリント基板をはんだ付け又は接着接合する従来の超音波プローブにおける、圧電素子とバッキング材とフレキシブルプリント基板の一例である。
【0011】
例えば図14は、特許文献1に開示された超音波プローブの例であり、圧電素子10と、圧電素子10の背面の中央部を覆うように形成された信号電極11と、圧電素子10の超音波送波面のほぼ全面を覆い、圧電素子10の側面を介して圧電素子10の背面に引出すように形成された接地電極12と、圧電素子10の背面に接合されたバッキング材3と、圧電素子10とバッキング材3との間に介在し、信号電極11及び接地電極12を引出すフレキシブルプリント基板2とで構成される。
【0012】
図14に示すように、フレキシブルプリント基板2は、第1の絶縁層27と、接地配線層26と、第2の絶縁層25と、信号配線層22と、ベース層(第3の絶縁層)21とで構成される基板本体と、第2の保護層(スペーサー)24とで構成されている。
【0013】
信号配線層22及びベース層21の中央部は、第2の保護層24に押し上げられ、信号配線層22の電極接続部221と接地配線層26とがほぼ同じ高さとなり、圧電素子10の背面と接合する。このとき、信号電極11と電極接続部221とが電気的に接続される。また、接地電極12の圧電素子10の背面に引出された接地電極接続部121と接地配線層26とが電気的に接続される。
【0014】
図13や図14の例のように、圧電素子10の背面にフレキシブルプリント基板2をはんだ付け又は接着接合する構成の場合、圧電素子10とフレキシブルプリント基板2とを接合後、フレキシブルプリント基板2を圧電素子10の端部でバッキング材3に沿ってほぼ直角に折り曲げる構成が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2007−167445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
一方で、図12に示すように、圧電素子10の側面にフレキシブルプリント基板2及び5をはんだ付けする構成は、薄い圧電素子10の側面においてはんだ付けされるため、有効なはんだ面積が確保できず電極の接続品質が悪化し、作業も煩雑になるため歩留まりが安定しないという問題がある。
【0017】
また図13や図14の例のように、圧電素子10の背面にフレキシブルプリント基板2をはんだ付け又は接着接合する構成の場合、超音波プローブを小型化するためにフレキシブルプリント基板2を圧電素子10の端部で折り曲げる構成とすることから、矩形以外の圧電振動子を用いることが困難である。また、折り曲げ部において信号配線層22が断線する可能性が高く、保護層を設けて保護する必要がある。
【0018】
さらに、特許文献1(図14)に示すように、接地電極12を圧電素子10の側面を介し背面に引出す構成の場合、圧電素子10の有効部分が信号電極11に覆われた部分に限られ、無効部分が形成される。この無効部分は超音波の送受信に寄与しないため、有効部分を大きくしようとすると超音波プローブの不必要な大型化につながる。
【0019】
本発明は上記の問題を解決するものであり、矩形振動子を用いた場合に加え、矩形以外の圧電振動子(例えば八角形の圧電振動子)を用いた場合において、圧電素子の背面にフレキシブルプリント基板をはんだ付け又は接着接合する構成により、折り曲げ部を保護層で保護した超音波プローブの提供を目的とする。
【0020】
さらに、圧電素子の背面にフレキシブルプリント基板をはんだ付け又は接着接合する構成により、圧電素子に無効部分を必要としない超音波プローブの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、この発明の第1の形態は、超音波送波面に接地電極が設置され、背面に信号電極が設置された1以上の圧電素子で構成された圧電振動部品と、前記圧電振動部品の背面に重ねられたバッキング材と、前記圧電振動部品と前記バッキング材との間に介在するフレキシブルプリント基板とを備えた超音波プローブであって、前記フレキシブルプリント基板は、一部に盛り上がり部を有するベース層と、前記ベース層の前記圧電振動部品側の面に前記ベース層に沿って形成され、前記盛り上がり部に対応する部分が前記信号電極に接続される信号配線層と、前記盛り上がり部に対応する前記信号配線層の一部を挟んで両側に形成され、前記盛り上がり部以外の部分に対応する前記信号配線層を保護する保護層とを備え、前記盛り上がり部に対応する前記信号配線層の一部の前記圧電振動部品側の面と、前記信号電極の背面とが接続され、前記保護層の前記圧電振動部品側の面と、前記信号電極の背面とが接続されたことを特徴とする超音波プローブである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、矩形振動子を用いた場合に加え、矩形以外の圧電振動子(例えば八角形の圧電振動子)を用いた場合において、圧電素子の背面にフレキシブルプリント基板をはんだ付け又は接着接合する構成により、折り曲げ部を保護層で保護した超音波プローブを提供することが可能となる。
【0023】
また、圧電素子に電圧を印加する信号電極を、圧電素子の背面のほぼ全面を覆うように設置することが可能となるため、無効部分を必要とせず、超音波プローブを小型化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の実施形態における圧電素子とバッキング材とフレキシブルプリント基板の分解図である。
【図2】第1の実施形態におけるフレキシブルプリント基板の平面図である。
【図3】第1の実施形態におけるフレキシブルプリント基板の拡大断面図である。
【図4】第1の実施形態におけるフレキシブルプリント基板の作成方法を説明するための図である。
【図5】第1の実施形態におけるフレキシブルプリント基板の作成方法を説明するための図である。
【図6】本発明に係る超音波プローブの概略図である。
【図7】変形例1におけるフレキシブルプリント基板の作成方法を説明するための図である。
【図8】変形例1におけるフレキシブルプリント基板の作成方法を説明するための図である。
【図9】変形例1におけるフレキシブルプリント基板の平面図である。
【図10】変形例1における圧電素子とバッキング材とフレキシブルプリント基板の分解図である。
【図11】円形の一部を直線状に切欠いた圧電素子を用いた場合におけるフレキシブルプリント基板の平面図である。
【図12】信号電極及び接地電極の双方を圧電素子の側面でフレキシブルプリント基板と接続する従来の超音波プローブの一例を示す断面図である。
【図13】信号電極及び接地電極の双方を圧電素子の背面でフレキシブルプリント基板と接続する従来の超音波プローブの一例を示す断面図である。
【図14】信号電極及び接地電極の双方を圧電素子の背面でフレキシブルプリント基板と接続する従来の超音波プローブの一例を示す分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1の実施形態)
以下に、図1及び図2と、図6とを参照しながら第1の実施形態に係る超音波プローブについて説明する。
【0026】
図1に示すように、本実施形態に係る超音波プローブは、超音波送波面に接地電極12が設置され、背面に信号電極11が設置された1以上の圧電素子10で構成された圧電振動部品1と、圧電振動部品1の背面に重ねあわされたバッキング材3とを具備しており、圧電振動部品1とバッキング材3との間にはフレキシブルプリント基板2が設けられている。また、図6に示すように、圧電振動部品1の超音波送波面には、第1の音響整合層41と第2の音響整合層42(導電体)で構成された音響整合層4と、音響レンズ6とが、これらの順に重ね合わされて設けられている。第1の音響整合層41と第2の音響整合層42との間にはフレキシブルプリント基板5が介在し、接地電極12からの信号を引出している。
【0027】
以下、各部の構成について具体的に説明する。なお以下の説明において、超音波を走査する方向をZ軸方向(図1の紙面に直角方向)、超音波を収束する方向をY軸方向(図1の紙面の上下方向)、Z軸とY軸の双方に直交する方向をX軸方向(図1の紙面の左右方向)とする。また、Y軸方向において、上側を超音波送波面側、下側を背面側と呼ぶ。
【0028】
圧電振動部品1は、信号電極11及び接地電極12が配置された圧電素子10がスキャン方向(Z軸方向)に対して1以上配列され構成されている(圧電素子10、信号電極11、及び、接地電極12については後述する)。本実施形態に係る圧電振動部品1は、図2に示すように、Y軸方向から見たとき、矩形の形状をなしている。なお以降は、圧電振動部品1が複数(2以上)の圧電素子10により構成されているものとして説明する。
【0029】
圧電素子10は圧電効果を有しており、その素材としては、例えば酸化亜鉛(ZnO)やチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)のような圧電セラミックスが使用される。
【0030】
信号電極11は、圧電素子10の背面のほぼ全面を覆うように配置されている。具体的には、圧電素子10や信号電極11の加工精度の違いを考慮し、加工後に圧電素子10の背面の全面を覆うように、信号電極11を形成する。信号電極11の素材としては、導電性が良好な金、銀、銅などの金属が使用される。
【0031】
接地電極12は、圧電素子10の超音波送波面のほぼ全面を覆うように配置されている。具体的には、圧電素子10や接地電極12の加工精度の違いを考慮し、加工後に圧電素子10の超音波送波面の全面を覆うように、接地電極12を形成する。これは、接地電極12と信号電極11との間で電圧が印加されるため、接地電極12で覆われた部分が実際に駆動する部分となり、接地電極12をより広くとることが望ましいためである。
【0032】
なお、信号電極11及び接地電極12は、圧電素子10ごとに配置されており、圧電振動部品1を圧電素子10それぞれに分割する切断溝により、圧電素子10それぞれの信号電極11及び接地電極12が、他の圧電素子10の信号電極11及び接地電極12と電気的に分離される。
【0033】
バッキング材3は、圧電素子10の背面側に伝播する超音波を吸収するものであって、圧電振動部品1の背面側に配置されている。バッキング材3の素材としては、特に限定されるものではないが、吸音性に優れたゴムなどが使用される。
【0034】
フレキシブルプリント基板2は、圧電素子10へ駆動信号を伝達し、かつ、反射波を電気信号に変換した受信信号を電気回路へ伝達するものであって、圧電振動部品1とバッキング材3との間に介在する。
【0035】
フレキシブルプリント基板2は、基板本体20と、第2の保護層24とで構成されている。基板本体20は、バッキング材3から圧電素子10に向かって順に積層された、ベース層21と、信号配線層22と、第1の保護層23とで構成されている。
【0036】
信号配線層22は、信号電極11と接続される電極接続部221と、電極接続部221をベース層21に沿ってX軸方向に引出す電極引出し部222とで構成されている。信号配線層22の素材としては、導電性が良好な金、銀、銅などの金属が使用される。なお以降では、ベース層21の電極接続部221に対応する部分を、ベース層露出部211と呼ぶものとする。
【0037】
第1の保護層23は、バッキング材3の超音波送波面側に対応する圧電素子接合部231と、バッキング材3の側面に沿って折り曲げられる側面保護部232とで構成されている。
【0038】
圧電素子接合部231は、電極接続部221の超音波送波面側に対応する部分よりも僅かに大きい領域が除去されている。即ち、圧電素子接合部231には、Y軸方向に対して、電極接続部221よりも僅かに大きい開口01が形成されている。これにより、電極接続部221及びベース層露出部211は、フレキシブルプリント基板2から、圧電素子10の背面に形成された信号電極11側に露出する。
【0039】
第2の保護層24は、バッキング材3と基板本体20との間に介在し、基板本体20の電極接続部221が露出した部分(図1の範囲Aに相当する、ベース層露出部211及び電極接続部221)を圧電素子10に向けて隆起させる。この隆起した部分が盛り上がり部に相当する。第2の保護層24の形成範囲は、電極接続部221の形成範囲とほとんど対応している。ただし、第2の保護層24の形成範囲は、圧電素子接合部231に形成された開口01の内側(図1の範囲A)に限定されていれば、電極接続部221より大きくても小さくても構わない。
【0040】
ここで、図3を参照しながら第2の保護層24の厚さについて説明する。図3は、第1の実施形態におけるフレキシブルプリント基板の拡大断面図である。図3に示すように、第2の保護層24の厚さd4は、第1の保護層23の厚さd3に設定されている。従って、バッキング材3から圧電素子接合部231までの厚さ(ベース層21の厚さd1と、信号配線層22の厚さd2と、第1の保護層23の厚さd3との和d1+d2+d3)は、バッキング材3から電極接続部221までの厚さ(第2の保護層24の厚さd4と、ベース層21の厚さd1と、信号配線層22の厚さd2との和d4+d1+d2)に等しい。電極接続部221、圧電素子接合部231、及び、第2の保護層24はほぼ平坦な形状に成形されている。即ち、第2の保護層24の厚さd4が、第1の保護層23の厚さd3に設定されることで、電極接続部221と圧電素子接合部231とが同一平面内に含まれることになる。
【0041】
なお、第2の保護層24の厚さd4は、第2の保護層24の素材に応じて微調整されることもある。即ち、第2の保護層24が軟らかい素材であれば、バッキング材3と基板本体20に挟まれることで僅かに圧縮する。従って、第2の保護層の圧縮量daを考慮して、第2の保護層24の厚さd4がd3+daに設定されていても良い。これは第1の保護層23に軟らかい素材を用いる場合も同様である。この場合、圧電振動部品1とフレキシブルプリント基板2とを接合したときに、電極接続部221と圧電素子接合部231とが同一平面内に含まれるように、第1の保護層23の厚さd3を設定することとなる。
【0042】
バッキング材3とフレキシブルプリント基板2との接合、及び、フレキシブルプリント基板2と圧電振動部品1(具体的には信号電極11)との接合には従来技術を用いれば良い。バッキング材3とフレキシブルプリント基板2との接合について一般的な技術としては、接着剤による接合が良く知られている。また、フレキシブルプリント基板2と圧電振動部品1との接合について一般的な技術としては、はんだ付けによる接合や接着剤による接合が良く知られている。なお、フレキシブルプリント基板2と圧電振動部品1とを接合する場合、信号電極11と、電極接続部221及び圧電素子接合部231とを接合する。
【0043】
バッキング材3とフレキシブルプリント基板2とが接合されたら、フレキシブルプリント基板2は、折り曲げ部αによりバッキング材3の側面に沿って折り曲げられる。このとき、信号配線層22の電極引出し部222が、第1の保護層23の圧電素子接合部231と側面保護部232により保護される。
【0044】
以下、図6を参照しながら超音波プローブの構成を説明する。図6は、本発明に係る超音波プローブの構成の概略図である。
【0045】
音響レンズ6は、送受信される超音波を収束してビーム状に整形するものであって、音響整合層4の超音波送波面側に配置されている(音響整合層4については後述する)。音響レンズ6の素材としては、音響インピーダンスが生体に近いシリコーンなどが使用される。
【0046】
音響整合層4は、圧電素子10と音響レンズ6を音響整合させるものであって、圧電素子10と音響レンズ6の間に介在している。音響整合層4は、第1の音響整合層41と第2の音響整合層42とで構成されている。第1の音響整合層41及び第2の音響整合層42の素材としては、特に限定されるものではないが、圧電素子10から音響レンズ6に向かって段階的に音響インピーダンスが変化し、かつ、圧電素子10側に位置する第2の音響整合層42が導電性を有するように材質の選定がなされている。
【0047】
フレキシブルプリント基板5は、第1の音響整合層41及び第2の音響整合層42の間に介在し、接地電極12から電気的信号を引出している。フレキシブルプリント基板5は、ベース層と接地配線層(図示しない)で構成されており、該接地配線層が第2の音響整合層42を介し接地電極12から電気的信号を引出している。
【0048】
(第1の実施形態に係るフレキシブルプリント基板2の作成方法)
次に、フレキシブルプリント基板2の作成方法について、図4及び図5を参照しながら説明する。図4及び図5は、第1の実施形態におけるフレキシブルプリント基板の作成方法を説明するための図である。図4(a)及び図5(a)は、フレキシブルプリント基板2のZ軸方向から見た平面図を示しており、図4(b)及び図5(b)は、フレキシブルプリント基板2をXY平面で切断した断面図を示している。
【0049】
まず、図4に示すように、ベース層21の超音波送波面側の面に信号配線層22を積層し、ベース層21の背面に第2の保護層24を積層する。このとき、第2の保護層24は、信号配線層22の電極接続部221の背面側に対応する位置、つまりベース層露出部211の背面に設置する。
【0050】
ベース層21と、信号配線層22と、第2の保護層24とを積層したら、平坦な面に置いて、これらの積層体をヒートプレスなどにより加圧する。これにより、ベース層露出部211及び電極接続部221は、第2の保護層24からの押圧を受けて隆起する。
【0051】
次に、図5に示すように、電極引出し部222の超音波送波面側に第1の保護層23を積層する。
【0052】
積層した第1の保護層23と、信号配線層22と、ベース層21とは、ヒートプレスにより加圧し圧着する。このとき、第2の保護層24からの押圧により隆起した電極接続部221と、第1の保護層23とが同一平面内に設定される。以上により、フレキシブルプリント基板2が形成される。
【0053】
なお、上記の説明では、ベース層露出部211及び電極接続部221を隆起させた後に第1の保護層23を積層し圧着しているが、ベース層21、信号配線層22、第1の保護層23、及び、第2の保護層24を積層させた後に、ヒートプレスなどによる加圧により、ベース層露出部211及び電極接続部221を隆起させても良い。
【0054】
(第1の実施形態に係るフレキシブルプリント基板2と圧電振動部品1との接合)
作成したフレキシブルプリント基板2は、圧電振動部品1の背面に接合する。このとき、電極接続部221と圧電素子10の背面に設置された信号電極11とを電気的に接続させる。フレキシブルプリント基板2と圧電振動部品1(具体的には信号電極11)との接合には、従来の技術を用いれば良く、一般的にははんだ付けや接着剤による接合が良く知られている。
【0055】
(第1の実施形態に係るフレキシブルプリント基板2とバッキング材3との接合)
バッキング材3は、フレキシブルプリント基板2の背面に接合する。フレキシブルプリント基板2とバッキング材3との接合には、従来の技術を用いれば良く、一般的には接着剤による接合が良く知られている。
【0056】
ここで図1を参照する。図1は、本実施形態における圧電素子10とバッキング材3とフレキシブルプリント基板2の分解図である。フレキシブルプリント基板2とバッキング材3とを接合したら、図1に示すように、フレキシブルプリント基板2を折り曲げ部αでバッキング材3の側面に沿って折り曲げる。
【0057】
次に、図6に示すように、音響整合層4、接地電極12を引出すフレキシブルプリント基板5、及び、音響レンズ6を、圧電振動部品1の超音波送波面に接合することで、本実施形態に係る超音波プローブが形成される。なお、圧電振動部品1、音響整合層4、フレキシブルプリント基板5、及び、音響レンズ6の接合については従来の技術を用いれば良い。
【0058】
ここで図2を参照する。図2は、第1の実施形態におけるフレキシブルプリント基板2の平面図である。圧電振動部品1、音響整合層4、フレキシブルプリント基板5、及び、音響レンズ6を接合したら、図2に示すように、圧電振動部品1をXY平面に平行な面で切断し、スキャン方向(Z軸方向)に複数の素子(信号電極11及び接地電極12を配置した圧電素子10)に分割する。
【0059】
このとき圧電振動部品1を分割する切断溝を、圧電振動部品1の背面(信号電極11とフレキシブルプリント基板2との接合面)から、少なくとも圧電素子接合部231の背面と信号電極11の背面との間に位置するXZ平面β(図1参照)までの深さとすると良い。なお、本実施形態に係る超音波プローブにおいては、XZ平面βより背面側の深い位置まで切断しても、該超音波プローブの機能を実現することは可能である。
【0060】
以上、本実施形態に係る超音波プローブによれば、圧電素子の背面にフレキシブルプリント基板をはんだ付け又は接着接合する構成により、フレキシブルプリント基板の折り曲げ部を保護層(第1の保護層23)で保護した超音波プローブを提供することが可能となる。
【0061】
また、圧電素子に電圧を印加する信号電極を、圧電素子の背面のほぼ全面を覆うように設置することが可能となるため、無効部分を必要とせず、超音波プローブを小型化することが可能となる。
【0062】
(変形例1)
次に、変形例1に係る超音波プローブについて、図9を参照しながら説明する。図9は、変形例1におけるフレキシブルプリント基板2の平面図である。なお、図7及び図8は変形例1におけるフレキシブルプリント基板2の作成方法を説明するための図である。フレキシブルプリント基板2の作成方法については後述する。また、変形例1では、第1の実施形態に係る超音波プローブと異なる圧電振動部品1、フレキシブルプリント基板2の構成に着目して説明する。
【0063】
変形例1に係る圧電振動部品1は、図9に示すように、Y軸方向から見たとき、少なくとも側面の一部が平面状に形成された側面部1aを有する形状をなしている。このときバッキング材3は、圧電振動部品1の形状に対応して、Y軸方向から見たとき、圧電振動部品1と同様の形状をなすように成形されている。
【0064】
また、変形例1に係るフレキシブルプリント基板2は、圧電振動部品1の背面に接合する部分が、Y軸方向から見たとき、圧電振動部品1と同様の形状をなすように成形されている。例えば図9の例の場合、圧電振動部品1と、バッキング材3と、フレキシブルプリント基板2の圧電振動部品1の背面に接合する部分とが、Y軸方向から見たとき、Z軸に平行な辺が直線状の八角形の形状をなすように成形されている。このとき、圧電振動部品1の側面部1aと、バッキング材3の前記Z軸に平行な辺を含むYZ平面に平行な側面とが、連続した平面に含まれるように成形されていると良い。
【0065】
変形例1に係る電極引出し部222は、電極接続部221を、側面部1aに対応するフレキシブルプリント基板2の折り曲げ部αを介して、側面部1aと連続するバッキング材3の側面に沿って引出すように設置する。このとき、電極引出し部222の圧電素子接合部231の背面に対応する部分(図9の範囲B)は、XY平面と交差する方向に引出されても良い。
【0066】
変形例1に係る第1の保護層23は、Y軸方向から見た形状は異なるものの、第1の実施形態に係る第1の保護層23の構成と同様に、圧電素子接合部231と側面保護部232とで構成され、開口01が設けられている。
【0067】
また、変形例1に係る第2の保護層24は、第1の実施形態に係る第2の保護層24の構成と同様であり、第1の保護層23と同じ厚さで成形され、基板本体20の電極接続部221が露出した部分(図9の範囲Aに相当する、ベース層露出部211及び電極接続部221)を圧電素子10に向けて隆起させる。
【0068】
(変形例1に係るフレキシブルプリント基板2の作成方法)
次に、フレキシブルプリント基板2の作成方法について、図7及び図8を参照しながら説明する。図7及び図8は、変形例1におけるフレキシブルプリント基板の作成方法を説明するための図である。図7(a)及び図8(a)は、フレキシブルプリント基板2のZ軸方向から見た平面図を示しており、図7(b)及び図8(b)は、フレキシブルプリント基板2をXY平面で切断した断面図を示している。変形例1に係るフレキシブルプリント基板2の作成方法は、第1の実施形態に係るフレキシブルプリント基板2と同様である。
【0069】
具体的には、まず図7に示すように、ベース層21の超音波送波面側の面に信号配線層22を積層し、ベース層21の背面に第2の保護層24を積層する。
【0070】
ベース層21と、信号配線層22と、第2の保護層24とを積層したら、これらの積層体をヒートプレスなどにより加圧する。これにより、ベース層露出部211及び電極接続部221は、第2の保護層24からの押圧を受けて隆起する。
【0071】
次に、図8に示すように、信号配線層22の超音波送波面側の面に第1の保護層23を積層する。
【0072】
積層した第1の保護層23と、信号配線層22と、ベース層21とは、ヒートプレスにより加圧し圧着する。このとき、第2の保護層24からの押圧により隆起した電極接続部221と、第1の保護層23とが同一平面内に設定される。以上により、フレキシブルプリント基板2が形成される。
【0073】
なお、第1の実施形態と同様に、ベース層21、信号配線層22、第1の保護層23、及び、第2の保護層24を積層させた後に、ヒートプレスなどによる加圧により、ベース層露出部211及び電極接続部221を隆起させても良い。
【0074】
(変形例1に係る圧電振動部品1のスキャン方向に対する分割)
ここで図9及び図10を参照する。図9は、変形例1におけるフレキシブルプリント基板2の平面図である。また、図10は、変形例1における圧電素子とバッキング材とフレキシブルプリント基板の分解図である。前記第1の実施形態と同様に圧電振動部品1、音響整合層4、フレキシブルプリント基板5、及び、音響レンズ6を接合したら、図9に示すように、圧電振動部品1をXY平面で切断し、スキャン方向(Z軸方向)に対して複数の素子に分割する。
【0075】
このとき圧電振動部品1を分割する切断溝を、圧電振動部品1の背面(信号電極11とフレキシブルプリント基板2との接合面)から、少なくとも圧電素子接合部231の背面と信号電極11の背面との間に位置するXZ平面β(図10参照)までの深さとする。
【0076】
これにより、圧電素子接合部231の背面に位置する電極引出し部222を、切断溝により切断することなく、切断溝とXZ平面上で交差する位置に配置することが可能となる。これにより、電極引出し部222を折り曲げ部αを介し、側面部1aと連続するバッキング材3の側面に沿って引き出すことが可能となる。そのため、圧電振動部品1は少なくとも側面の一部が平面状に形成された側面部1aを有していれば良く、圧電振動部品1に矩形以外の圧電振動子を用いることが可能となる。
【0077】
以上により、変形例1に係る超音波プローブは、第1の実施形態に係る超音波プローブの特徴に加え、矩形以外の圧電振動子(例えば八角形の圧電振動子)を用いることが可能となるため、サイドローブを低減した超音波プローブを低コストで実現することが可能となる。
【0078】
なお、上述した説明では圧電振動部品1をY軸方向から見た形状が八角形の場合を例に説明したが、これは八角形に限るものではない。例えば図11は、円形の一部を直線状に切欠いた圧電素子を用いた場合におけるフレキシブルプリント基板の平面図である。図9や図11に示すように、電極引出し部222が引出されるバッキング材3の側面と連続する、圧電振動部品1の側面が平面となる形状であればその形状は限定されない。
【0079】
また、上述した説明では圧電振動部品1のYZ平面に平行な側面が平面状に形成されているが、これはYZ平面に平行な側面に限るものではない。Y軸の方向から見ていずれかの側面の一部が平面上に形成された側面部を備えていれば良く、該側面部と連続するバッキング材3の側面に沿って電極引出し部222が引出されていればその構成は限定されない。
【符号の説明】
【0080】
1 圧電振動部品 10 圧電素子 11 信号電極 12 接地電極
2 フレキシブルプリント基板 21 ベース層 211 ベース層露出部
22 信号配線層 221 電極接続部 222 電極引出し部
23 第1の保護層 231 圧電素子接合部 232 側面保護部
24 第2の保護層
3 バッキング材 4 音響整合層 5 フレキシブルプリント基板
6 音響レンズ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波送波面に接地電極が設置され、背面に信号電極が設置された1以上の圧電素子で構成された圧電振動部品と、
前記圧電振動部品の背面に重ねられたバッキング材と、
前記圧電振動部品と前記バッキング材との間に介在するフレキシブルプリント基板とを備えた超音波プローブであって、
前記フレキシブルプリント基板は、一部に盛り上がり部を有するベース層と、前記ベース層の前記圧電振動部品側の面に前記ベース層に沿って形成され、前記盛り上がり部に対応する部分が前記信号電極に接続される信号配線層と、前記盛り上がり部に対応する前記信号配線層の一部を挟んで両側に形成され、前記盛り上がり部以外の部分に対応する前記信号配線層を保護する保護層とを備え、
前記盛り上がり部に対応する前記信号配線層の一部の前記圧電振動部品側の面と、前記信号電極の背面とが接続され、
前記保護層の前記圧電振動部品側の面と、前記信号電極の背面とが接続されたことを特徴とする超音波プローブ。
【請求項2】
前記保護層の前記圧電振動部品側の面と、前記盛り上がり部に対応する前記信号配線層の一部の前記圧電振動部品側の面とがほぼ同一平面上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項3】
前記圧電振動部品が、2以上の圧電素子で構成され、超音波を送信する方向から見て矩形であり、
前記信号配線層が、前記圧電振動部品を2以上の圧電素子に分割する切断面を含む平面と平行に引出されるように形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の超音波プローブ。
【請求項4】
前記圧電振動部品は、2以上の圧電素子で構成され、少なくとも側面の一部が平面状に形成されており、
前記配線層の少なくとも一部が、前記圧電振動部品の背面の一部に対向する前記ベース層上において、前記圧電振動部品を2以上の圧電素子に分割する切断面を含む平面と交差する方向に引出され、前記圧電振動部品の前記平面状の側面と連続する前記バッキング材の側面に沿って引出されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の超音波プローブ。
【請求項1】
超音波送波面に接地電極が設置され、背面に信号電極が設置された1以上の圧電素子で構成された圧電振動部品と、
前記圧電振動部品の背面に重ねられたバッキング材と、
前記圧電振動部品と前記バッキング材との間に介在するフレキシブルプリント基板とを備えた超音波プローブであって、
前記フレキシブルプリント基板は、一部に盛り上がり部を有するベース層と、前記ベース層の前記圧電振動部品側の面に前記ベース層に沿って形成され、前記盛り上がり部に対応する部分が前記信号電極に接続される信号配線層と、前記盛り上がり部に対応する前記信号配線層の一部を挟んで両側に形成され、前記盛り上がり部以外の部分に対応する前記信号配線層を保護する保護層とを備え、
前記盛り上がり部に対応する前記信号配線層の一部の前記圧電振動部品側の面と、前記信号電極の背面とが接続され、
前記保護層の前記圧電振動部品側の面と、前記信号電極の背面とが接続されたことを特徴とする超音波プローブ。
【請求項2】
前記保護層の前記圧電振動部品側の面と、前記盛り上がり部に対応する前記信号配線層の一部の前記圧電振動部品側の面とがほぼ同一平面上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項3】
前記圧電振動部品が、2以上の圧電素子で構成され、超音波を送信する方向から見て矩形であり、
前記信号配線層が、前記圧電振動部品を2以上の圧電素子に分割する切断面を含む平面と平行に引出されるように形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の超音波プローブ。
【請求項4】
前記圧電振動部品は、2以上の圧電素子で構成され、少なくとも側面の一部が平面状に形成されており、
前記配線層の少なくとも一部が、前記圧電振動部品の背面の一部に対向する前記ベース層上において、前記圧電振動部品を2以上の圧電素子に分割する切断面を含む平面と交差する方向に引出され、前記圧電振動部品の前記平面状の側面と連続する前記バッキング材の側面に沿って引出されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の超音波プローブ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−146764(P2011−146764A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3704(P2010−3704)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
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