説明

超音波プローブ

【課題】弾性画像診断を安定して行うことができる無線式の超音波プローブを提供することを目的とする。
【解決手段】プローブ本体1に一体化された圧迫板2の上面には、振動子アレイの配列方向に対して直交する方向で且つ振動子アレイの両側にそれぞれ重りWが埋設され、振動子アレイの超音波送受信面を水平にしたときの重心Gの位置が、振動子アレイの配列方向および振動子アレイの配列方向に直交する方向に関して振動子アレイの配列のほぼ中心線C上に存在し、また、筐体3の高さHの1/2の高さH/2より下方に存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超音波プローブに関し、特に、弾性画像診断を行うことができる超音波プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療分野において、超音波画像を利用した超音波診断装置が実用化されている。一般に、この種の超音波診断装置は、振動子アレイを内蔵した超音波プローブと、この超音波プローブに接続された装置本体とを有しており、超音波プローブから被検体に向けて超音波を送信し、被検体からの超音波エコーを超音波プローブで受信して、その受信信号を装置本体で電気的に処理することにより超音波画像が生成される。
【0003】
このような超音波診断装置を用いる診断のひとつに、被検体の組織の局所的硬さを測定する弾性画像診断(エラストグラフィ)がある。これは、例えば、特許文献1に記載されているように、圧迫板を取り付けたプローブで被検体の表面から関心領域を圧迫することにより、応力分布と歪みデータから関心領域の弾性情報を画像化するものである。この関心領域の圧迫は、片手に超音波プローブを持ち、圧迫板を被検体表面に対して垂直方向に押圧することでなされ、関心領域の圧迫量が均一になるように圧迫板を被検体へ押圧することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2005/120358号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような押圧による測定は、ある程度の経験や熟練度を必要とする。特に、従来から用いられている特許文献1に記載のような有線式のプローブではなく、無線式の超音波プローブは、筐体内に各種基板やバッテリなどを含み、従来の有線式の超音波プローブよりも重くなるため、被検体表面に対して圧迫板を垂直に位置固定し、圧迫板と被検体の接触面の圧迫量が均一になるように押圧して、安定且つ正確な弾性画像診断を行うのは、有線式のプローブの場合と比較して、更に熟練を要することとなる。
【0006】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、弾性画像診断を安定して行うことができる無線式の超音波プローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る超音波プローブは、駆動信号に基づいて振動子アレイから超音波ビームを送信すると共に被検体による超音波エコーを前記振動子アレイで受信して受信信号を生成する超音波プローブであって、振動子アレイと、振動子アレイの送受信回路を有する送受信基板と、診断装置本体と無線通信を行う無線通信回路を有する無線通信基板と、送受信回路および無線通信回路に電源供給するバッテリを収容する筐体と、その筐体に固定され且つ振動子アレイの超音波受信面とほぼ同一面の圧迫面を有する圧迫板とを備え、振動子アレイの超音波送受信面を水平にしたときの重心位置が振動子アレイの配列方向および振動子アレイの配列方向に対して直交する方向に関して振動子アレイの配列のほぼ中心線上に存在することを特徴とするものである。
【0008】
圧迫板は、振動子アレイの配列方向に対して直交する方向で且つ振動子アレイの両側に位置するように配置された複数の重りを備えていることが好ましい。
複数の重りは、それぞれ圧迫板に着脱可能に配置されていてもよい。
バッテリは、振動子アレイの配列のほぼ中心線上に配置されているか、振動子アレイの配列のほぼ中心線上よりも振動子アレイの配列方向にずれた位置に配置されていることが好ましい。
振動子アレイの超音波送受信面を水平にした時の重心位置は、筐体の高さの1/2より下方に存在することが好ましい。
圧迫板は、振動子アレイの配列方向に対して直交する方向で且つ振動子アレイの両側に複数の圧迫センサを有していてもよい。
圧迫板は、前記筐体に着脱可能であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、弾性画像診断を安定して行うことができる無線式の超音波プローブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1に係る超音波プローブを示す図であり、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図2】実施の形態1に係る超音波プローブを有する超音波診断装置の内部構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態2に係る超音波プローブの構成を示し、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図4】実施の形態3に係る超音波プローブの構成を示す正面図である。
【図5】実施の形態4に係る超音波プローブで用いられた重りを示す図である。
【図6】実施の形態5に係る超音波プローブを示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に、この発明の実施の形態1に係る超音波プローブを示す。この超音波プローブは、プローブ本体1と、圧迫板2と、重りWからなり、プローブ本体1は、筐体3と、無線通信基板4と、バッテリ5と、送受信基板6と、振動子アレイを有する振動子ユニット7とから構成されている。
【0012】
圧迫板2は、図1に示されるように、筐体3に固定され、プローブ本体1と一体化して構成されるとともに、振動子アレイの配列方向に対して直交する方向で且つ振動子アレイの両側にそれぞれ重りWがその上面に埋設されている。
また、圧迫板2の下面は、弾性画像診断を行う際に被検体の表面を押圧する圧迫面を形成し、振動子アレイの配列方向に対して直交する方向で且つ振動子アレイの両側にそれぞれ圧力センサ9が埋設されている。このように、圧迫板2に圧力センサ9を配置すれば、被検体への圧迫量が均一になるように圧迫板2を押圧しているか確認でき、また、その重量も均等に分散することができる。
【0013】
無線通信基板4、バッテリ5、送受信基板6および振動子ユニット7は、筐体3の内部に収容されている。
バッテリ5は、振動子アレイの配列のほぼ中心線C上に配置されている。
振動子ユニット7は、振動子アレイ、音響整合層、音響レンズおよびバッキング層等から構成されるものである。
【0014】
また、この超音波プローブは、図1(A)および(B)に示すように、振動子アレイの超音波送受信面を水平にしたときの重心Gの位置が振動子アレイの配列方向および振動子アレイの配列方向に対して直交する方向に関して振動子アレイの配列のほぼ中心線C上に存在する。
このような構成であれば、操作者は、片方の手で、超音波プローブを安定した姿勢で被検体に位置固定させることができるため、容易に、被検体表面に対しプローブが垂直になるように押圧することができる。
【0015】
また、この超音波プローブは、図1(A)に示すように、振動子アレイの超音波受信面を水平にしたときの重心Gの位置は、筐体3の高さHの1/2の高さH/2より下方に存在する。
超音波プローブにおいては、筐体3の最下部に振動子ユニット7を配置する必要があり、この振動子ユニット7を駆動するための送受信基板6を振動子ユニット7の近傍に配置することが望まれるため、重量の大きいバッテリ5は筐体3内の上方に必然的に配置され、プローブの重心位置もプローブの上方になってしまい安定性が悪くなる。しかしながら、この実施の形態1に係る超音波プローブでは、圧迫板2に重りWを埋設しているため、重心Gの位置がプローブ下方に存在することになり、操作者は、より安定な姿勢でプローブを操作することができる。
【0016】
図2に、この発明の実施の形態1に係る超音波プローブを有する超音波診断装置の構成を示す。プローブ本体1に診断装置本体10が無線通信により接続されている。
【0017】
プローブ本体1は、1次元又は2次元の振動子アレイを構成する複数の超音波トランスデューサ11を有し、これらトランスデューサ11にそれぞれ対応して受信信号処理部12が接続され、さらに受信信号処理部12にパラレル/シリアル変換部13を介して無線通信部14が接続されている。また、複数のトランスデューサ11に送信駆動部15を介して送信制御部16が接続され、複数の受信信号処理部12に受信制御部17が接続され、無線通信部14に通信制御部18が接続されている。そして、パラレル/シリアル変換部13、送信制御部16および受信制御部17および通信制御部18にプローブ制御部19が接続されている。
さらに、プローブ制御部19には、バッテリ制御部20を介してバッテリ5と、圧迫板2に埋設されている圧力センサ9とがそれぞれ接続されている。
【0018】
複数のトランスデューサ11は、それぞれ送信駆動部15から供給される駆動信号に従って超音波を送信すると共に被検体からの超音波エコーを受信して受信信号を出力する。各トランスデューサ11は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミックや単結晶、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電素子等からなる圧電体の両端に電極を形成した振動子によって構成される。
そのような振動子の電極に、パルス状又は連続波の電圧を印加すると、圧電体が伸縮し、それぞれの振動子からパルス状又は連続波の超音波が発生して、それらの超音波の合成により超音波ビームが形成される。また、それぞれの振動子は、伝搬する超音波を受信することにより伸縮して電気信号を発生し、それらの電気信号は、超音波の受信信号として出力される。
【0019】
送信駆動部15は、例えば、複数のパルサを含んでおり、送信制御部16によって選択された送信遅延パターンに基づいて、複数のトランスデューサ11から送信される超音波が被検体内の組織のエリアをカバーする幅広の超音波ビームを形成するようにそれぞれの駆動信号の遅延量を調節して複数のトランスデューサ11に供給する。
【0020】
各チャンネルの受信信号処理部12は、受信制御部17の制御の下で、対応するトランスデューサ11から出力される受信信号に対して直交検波処理又は直交サンプリング処理を施すことにより複素ベースバンド信号を生成し、複素ベースバンド信号をサンプリングすることにより、組織のエリアの情報を含むサンプルデータを生成する。受信信号処理部12は、複素ベースバンド信号をサンプリングして得られるデータに高能率符号化のためのデータ圧縮処理を施すことによりサンプルデータを生成してもよい。
パラレル/シリアル変換部13は、複数チャンネルの受信信号処理部12によって生成されたパラレルのサンプルデータを、シリアルのサンプルデータに変換する。
【0021】
無線通信部14は、シリアルのサンプルデータに基づいてキャリアを変調して伝送信号を生成し、伝送信号をアンテナに供給してアンテナから電波を送信することにより、シリアルのサンプルデータを送信する。変調方式としては、例えば、ASK(Amplitude Shift Keying)、PSK(Phase Shift Keying)、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation)等が用いられる。
無線通信部14は、診断装置本体10との間で無線通信を行うことにより、サンプルデータを診断装置本体10に送信すると共に、診断装置本体10から各種の制御信号を受信して、受信された制御信号を通信制御部18に出力する。通信制御部18は、プローブ制御部19によって設定された送信電波強度でサンプルデータの送信が行われるように無線通信部14を制御すると共に、無線通信部14が受信した各種の制御信号をプローブ制御部19に出力する。
【0022】
プローブ制御部19は、診断装置本体10から伝送される各種の制御信号に基づいて、プローブ本体1の各部の制御を行う。なお、プローブ制御部19は、圧迫板2の下部に配置されている圧力センサ9の出力信号が入力されるように構成されている。
バッテリ5は、プローブ本体1の電源として機能し、プローブ本体1内の電力を必要とする各部に電力を供給する。バッテリ制御部20は、バッテリ5からプローブ本体1内各部への電力供給を制御する。
また、プローブ本体1は、リニアスキャン方式、セクタスキャン方式等の走査方式が採用される。
【0023】
一方、診断装置本体10は、無線通信部21を有し、この無線通信部21にシリアル/パラレル変換部22を介してデータ格納部23が接続され、データ格納部23に画像生成部24が接続されている。さらに、画像生成部24に表示制御部25を介して表示部26が接続されている。また、無線通信部21に通信制御部27が接続され、シリアル/パラレル変換部22、画像生成部24、表示制御部25および通信制御部27に本体制御部28が接続されている。さらに、本体制御部28には、オペレータが入力操作を行うための操作部29および動作プログラムを格納する格納部30がそれぞれ接続されている。
【0024】
無線通信部21は、プローブ本体1との間で無線通信を行うことにより、各種の制御信号をプローブ本体1に送信する。また、無線通信部21は、アンテナによって受信される信号を復調することにより、シリアルのサンプルデータを出力する。
通信制御部27は、本体制御部28によって設定された送信電波強度で各種の制御信号の送信が行われるように無線通信部21を制御する。
シリアル/パラレル変換部22は、無線通信部21から出力されるシリアルのサンプルデータを、パラレルのサンプルデータに変換する。データ格納部23は、メモリまたはハードディスク等によって構成され、シリアル/パラレル変換部22によって変換された少なくとも1フレーム分のサンプルデータを格納する。
画像生成部24は、データ格納部23から読み出される1フレーム毎のサンプルデータに受信フォーカス処理を施して、超音波診断画像を表す画像信号を生成する。画像生成部24は、整相加算部31と画像処理部32とを含んでいる。
【0025】
整相加算部31は、本体制御部28において設定された受信方向に応じて、予め記憶されている複数の受信遅延パターンの中から1つの受信遅延パターンを選択し、選択された受信遅延パターンに基づいて、サンプルデータによって表される複数の複素ベースバンド信号にそれぞれの遅延を与えて加算することにより、受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理により、超音波エコーの焦点が絞り込まれたベースバンド信号(音線信号)が生成される。
【0026】
画像処理部32は、整相加算部31によって生成される音線信号に基づいて、被検体内の組織に関する断層画像情報であるBモード画像信号を生成する。画像処理部32は、STC(sensitivity time control)部と、DSC(digital scan converter:デジタル・スキャン・コンバータ)とを含んでいる。STC部は、音線信号に対して、超音波の反射位置の深度に応じて、距離による減衰の補正を施す。DSCは、STC部によって補正された音線信号を通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号に変換(ラスター変換)し、階調処理等の必要な画像処理を施すことにより、Bモード画像信号を生成する。
表示制御部25は、画像生成部24によって生成される画像信号に基づいて、表示部26に超音波診断画像を表示させる。表示部26は、例えば、LCD等のディスプレイ装置を含んでおり、表示制御部25の制御の下で、超音波診断画像を表示する。
【0027】
また、画像生成部24の整相加算部31に弾性情報演算部33が接続され、この弾性情報演算部33に表示制御部25と本体制御部28が接続されている。
本体制御部28は、プローブ本体1から送信される各種の制御信号等に基づいて、診断装置本体10内の各部の制御を行うものである。本体制御部28は、無線通信を介して超音波プローブ1のプローブ制御部19と接続されており、超音波プローブ1を圧迫板2に取り付けて弾性画像診断を行う場合に、無線通信およびプローブ制御部19を介して圧力センサ9の出力信号を入力し、弾性情報演算部33へ出力する。
弾性情報演算部33は、本体制御部28の制御の下で、画像生成部24の整相加算部31で生成された音線信号と、本体制御部28から入力された圧力センサ9の出力信号とに基づき、応力分布と歪みデータから関心領域の弾性情報を演算すると共に弾性情報を画像化して表示制御部25へ出力する。
【0028】
このような診断装置本体10において、シリアル/パラレル変換部22、画像生成部24、表示制御部25、通信制御部27、本体制御部28および弾性情報演算部33は、CPUと、CPUに各種の処理を行わせるための動作プログラムから構成されるが、それらをデジタル回路で構成してもよい。上記の動作プログラムは、格納部30に格納される。格納部30における記録媒体としては、内蔵のハードディスクの他に、フレキシブルディスク、MO、MT、RAM、CD−ROMまたはDVD−ROM等を用いることができる。
【0029】
なお、図1に示すプローブ本体1の無線通信基板4には、無線通信部14および通信制御部18が搭載され、送受信基板6には、受信信号処理部12、パラレル/シリアル変換部13、送信駆動部15、送信制御部16、受信制御部17、プローブ制御部19およびバッテリ制御部20が搭載されている。
【0030】
また、実施の形態1に係る超音波プローブの重量は、特に限定されるものではないが、各部材の重量が、例えば、筐体3は40g、無線通信基板4は10g、バッテリ5は40g、受信処理基板6は30g、振動子ユニット7は20g、圧迫板2は40g、重りWは1個7gであるような超音波プローブが挙げられる。
【0031】
次に、実施の形態1の動作について説明する。
まず、弾性画像診断を行う場合には、操作者は、圧迫板が取り付けられた超音波プローブを片手で持ち、圧迫板2の下面を被検体の表面に当接し、押圧しながら測定を行う。プローブ本体1の送信駆動部15から供給される駆動信号に従って複数のトランスデューサ11から超音波が送信され、被検体からの超音波エコーを受信した各トランスデューサ11から出力された受信信号がそれぞれ対応する受信信号処理部12に供給されてサンプルデータが生成され、パラレル/シリアル変換部13でシリアル化された後に無線通信部14から診断装置本体10へ無線伝送される。診断装置本体10の無線通信部21で受信されたサンプルデータは、シリアル/パラレル変換部22でパラレルのデータに変換され、データ格納部23に格納される。さらに、データ格納部23から1フレーム毎のサンプルデータが読み出され、画像生成部24へ送られる。これと同時に、圧迫板2の下部に配置された圧力センサ9の出力信号がプローブ制御部19を介して、無線通信部14から診断装置本体10へ無線伝送され、診断装置本体10の無線通信部21で受信された後、本体制御部28を介して弾性情報演算部33に入力される。弾性情報演算部33により、画像生成部24の整相加算部31で生成された音線信号と、圧力センサ9の出力信号とに基づき、応力分布と歪みデータから関心領域の弾性情報が演算され、弾性情報が画像化されて表示制御部25へ出力される。そして、表示制御部25により、弾性画像が表示部9に表示される。
【0032】
このような超音波プローブであれば、プローブの重心Gの位置が振動子アレイの配列方向および振動子アレイの配列方向に対して直交する方向に関して振動子アレイの配列のほぼ中心線C上に存在しているため、操作者は、被検体に対して圧迫板2を安定した姿勢で押圧し位置固定することができる。
また、振動子アレイの配列方向に対して直交する方向で且つ振動子アレイの両側にそれぞれ重りWが配置されているため、振動子アレイの配列方向に垂直な面内における傾き、いわゆる「あおり」を生じにくく、圧迫板2を安定した姿勢に保持することができる。このため、正確に且つ容易に弾性画像診断を行うことが可能となる。
さらに、圧迫板2に複数の重りWを埋設するため、振動子アレイの超音波受信面を水平にしたときの重心Gの位置は、筐体3の高さHの1/2の高さH/2より下方に存在させることができ、超音波プローブをより安定した姿勢で操作することができる。
【0033】
なお、実施の形態1では、圧迫板2の上面側に重りWを埋設したが、これに限定されず、圧迫板2の下面側に重りWを埋設してもよい。
【0034】
実施の形態2
図3に実施の形態2に係る超音波プローブを示す。この超音波プローブは、実施の形態1の装置において、バッテリ5を、振動子アレイの配列のほぼ中心線C上に配置する代わりに、バッテリ5を、振動子アレイのほぼ中心線C上よりも振動子アレイの配列方向にずれた位置に配置し、且つ、圧迫板2に埋設された重りWを、振動子アレイの配列の中心線Cに対してバッテリ5とは反対側で且つ振動子アレイの配列方向の両側に、それぞれ配置したものである。
【0035】
長時間使用するために必要な電力を供給する目的で、バッテリ5の形状および重量がさらに大きいものを使用する必要がある場合等、筐体内の配置の都合上、図3に示されるように、バッテリ5が振動子アレイの配列の中心線Cに対してずれた位置に配置されるときには、重心Gの位置は、振動子アレイの配列のほぼ中心線Cに対してバッテリ5側にずれてしまう。
しかしながら、この超音波プローブでは、バッテリ5との重量バランスを取るために図3(A)および(B)に示されるように、バッテリ5とは反対側で且つ振動子アレイの配列方向の両側に、それぞれ重りWが圧迫板2の上面に埋設されているので、振動子アレイの超音波送受信面を水平にしたときの重心Gの位置も振動子アレイの配列方向および振動子アレイの配列方向に直交する方向に関して振動子アレイの配列のほぼ中心線C上に存在させることができる。
【0036】
このように、プローブ本体1内のバッテリ5を振動子アレイのほぼ中心線C上よりも振動子アレイの配列方向にずれた位置に配置したものであっても、実施の形態1と同様に、操作者は、プローブの重心Gの位置が振動子アレイの配列方向および振動子アレイの配列方向に直交する方向に関して振動子アレイの配列のほぼ中心線C上に存在する超音波プローブを用いることになるため、被検体に対して圧迫板2を安定した姿勢で押圧することができ、正確に且つ容易に弾性画像診断を行うことができる。
【0037】
実施の形態3
実施の形態1では、振動子アレイの配列方向に対して直交する方向で且つ振動子アレイの両側にそれぞれ重りWが埋設された圧迫板2を用いたが、重りWの数は限定されるものではなく、例えば図4に示されるように、振動子アレイの両側にそれぞれ複数の重りWを配置してもよい。
また、実施の形態2においても同様に、振動子アレイの配列の中心線Cに対してバッテリ5とは反対側で且つ振動子アレイの配列方向の両側に、それぞれ重りWが埋設された圧迫板2を用いたが、重りWの数は限定されるものではなく、例えば、図4に示されるように、振動子アレイの両側にそれぞれ複数の重りWを配置してもよい。
【0038】
実施の形態4
実施の形態1では、プローブの重量バランスを取るために圧迫板2の上面に埋設された重りWを用いたが、これに限定されるものでなく、図5(A)および図5(B)に示されるように圧迫板2に着脱可能な重りを用いることもできる。
【0039】
図5(A)に示すように、圧迫板2の上面に形成されたねじ孔34にねじ込む形式の重りWであってもよい。このようなねじ孔34および重りWを用いれば、重りWを圧迫板2に確実に固定することができ、且つ、取り外しが容易であり、弾性画像診断の環境等に応じて重りWの重量を適宜調整することができる。
また、図5(B)に示すように、圧迫板2の上面に溝35を形成し、重りWの下半部を溝35に嵌入させることで重りWを圧迫板2に取り付けるようにしてもよい。このような形態の重りWであれば、圧迫板2への着脱が容易となる。
【0040】
実施の形態5
実施の形態1では、プローブ本体1の筐体3と圧迫板2とが一体となった超音波プローブを用いたが、これに限定されるものではなく、圧迫板がプローブ本体から取り外し可能な超音波プローブを用いることもできる。
【0041】
実施の形態5に係る超音波プローブは、図6に示すような、筐体3に圧迫板36を脱着させるための脱着手段37を有している。
圧迫板36は、プローブ本体1の下部を挿入するための開口部38を有すると共に、開口部38に連通する溝39を有しており、脱着手段37は、圧迫板36の溝39内にスライド可能に挿入された固定部材41と、この固定部材41を圧迫板36の開口部38の方向へ付勢するバネ40から構成されている。固定部材41には、圧迫板36の開口部38の方向を向いた凸部42と、溝39から圧迫板36の上面に突出するつまみ43が形成されている。また、プローブ本体1の側部には、固定部材41の凸部42に対応した凹部44が形成されている。
圧迫板36にプローブ本体1を装着する際には、プローブ本体1の下部が圧迫板36の開口部38に挿入されるに従って、プローブ本体1の下部により固定部材41が一旦溝39の内部へ押し込まれ、プローブ本体1の凹部44が固定部材41の凸部42に対応する位置に達すると、バネ40の付勢力によって固定部材41がプローブ本体1の方向へ移動し、固定部材41の凸部42がプローブ本体1の凹部44に嵌合する。これにより、圧迫板36へのプローブ本体1の装着が完了する。
つまみ43に手を掛けて固定部材41をプローブ本体1から離れる方向へ移動させることで、固定部材41の凸部42とプローブ本体1の凹部44との嵌合が解除され、圧迫板36をプローブ本体1から取り外すことができる。
【0042】
なお、プローブ本体1を圧迫板36に取り付けたときに、プローブ本体1に配設されている図示しない電極と圧迫板36に配置された図示しない電極とが互いに接触する、等の手段により、プローブ制御部19には、圧迫板36の圧迫面に配置されている圧力センサ9の出力信号が入力されるように構成されている。
【0043】
このような超音波プローブであれば、弾性画像診断を伴わない通常の超音波診断においても、プローブ本体1から圧迫板36を容易に取り外し、プローブ本体1のみを使用して診断を行うことができる。
【符号の説明】
【0044】
1 プローブ本体、2、36 圧迫板、3 筐体、4 無線通信基板、5 バッテリ、6 送受信基板、7 振動子ユニット、9 圧力センサ、10 診断装置本体、11 トランスデューサ、12 受信信号処理部、13 パラレル/シリアル変換部、14 無線通信部、15 送信駆動部、16 送信制御部、17 受信制御部、18 通信制御部、19 プローブ制御部、20 バッテリ制御部、21無線通信部、22 シリアル/パラレル変換部、23 データ格納部、24 画像生成部、25 表示制御部、26 表示部、27 通信制御部、28 本体制御部、29 操作部、30 格納部、31 弾性情報演算部、32 整相加算部、33 画像処理部、34 ねじ孔、35 溝、37 脱着手段、38 開口部、39 溝、40 バネ、41 固定部材、42 凸部、43 つまみ、44 凹部、G 重心、W 重り。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動信号に基づいて振動子アレイから超音波ビームを送信すると共に被検体による超音波エコーを前記振動子アレイで受信して受信信号を生成する超音波プローブであって、
前記振動子アレイと、
前記振動子アレイの送受信回路を有する送受信基板と、
診断装置本体と無線通信を行う無線通信回路を有する無線通信基板と、
前記送受信回路および前記無線通信回路に電源供給するバッテリ
を収容する筐体と、
前記筐体に固定され且つ前記振動子アレイの超音波受信面とほぼ同一面の圧迫面を有する圧迫板と
を備え、前記振動子アレイの超音波送受信面を水平にしたときの重心位置が前記振動子アレイの配列方向および前記振動子アレイの配列方向に対して直交する方向に関して前記振動子アレイの配列のほぼ中心線上に存在することを特徴とする超音波プローブ。
【請求項2】
前記圧迫板は、前記振動子アレイの配列方向に対して直交する方向で且つ前記振動子アレイの両側に位置するように配置された複数の重りを備える請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項3】
前記複数の重りは、それぞれ前記圧迫板に着脱可能に配置されている請求項2に記載の超音波プローブ。
【請求項4】
前記バッテリは、前記振動子アレイの配列のほぼ中心線上に配置されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の超音波プローブ。
【請求項5】
前記バッテリは、前記振動子アレイの配列のほぼ中心線上よりも前記振動子アレイの配列方向にずれた位置に配置されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の超音波プローブ。
【請求項6】
前記振動子アレイの超音波送受信面を水平にした時の重心位置は、前記筐体の高さの1/2より下方に存在する請求項1〜5のいずれか1項に記載の超音波プローブ。
【請求項7】
前記圧迫板は、前記振動子アレイの配列方向に対して直交する方向で且つ前記振動子アレイの両側に複数の圧迫センサを有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の超音波プローブ。
【請求項8】
前記圧迫板は、前記筐体に着脱可能である請求項1〜7のいずれか1項に記載の超音波プローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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