説明

超音波探触子及び超音波診断装置

【課題】
参照変形体は柔軟な変形を損なわないように固定具に装着されるとともに、参照変形体の交換を容易に行なうことができる超音波探触子と超音波診断装置を提供する。
【解決手段】参照変形体16と、参照変形体16が装着される固定具17とを超音波送受信面に備えた超音波探触子3において、固定具17は溝部又は凹部を有し、参照変形体16は固定具の溝部又は凹部に装着されている。この参照変形体16は、長方体26と平面体25とで形成されていたり、その外周側面には凸部32又は溝部62を有していたりする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を利用して被検体内の撮像対象部位について断層像、生体組織の硬さまたは軟らかさを示す弾性画像を表示するための超音波探触子及び超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波探触子により被検体内部に超音波を送信し、被検体内部から生体組織の構造に応じた超音波の反射エコー信号を受信し、例えばBード像等の断層像を構成して診断用に表示する。
【0003】
近年、手動又は機械的な方法により超音波探触子で被検体を圧迫して超音波受信信号を計測し、計測時間が異なる二つの超音波受信信号のフレームデータに基づいて圧迫により生じた生体各部の変位を求め、その変位データに基づいて生体組織の弾性を表す弾性画像を生成する。この時、超音波探触子に参照変形体を固定具を介して装着し、超音波送受信により得られるRF信号フレームデータから被検体と参照変形体の境界を検出して、その境界の位置情報から被検体を圧迫する圧力を計測することが開示されている。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】国際公開WO2005/120358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の通り、参照変形体を固定具に固定する際、参照変形体の周囲を締め付けると、参照変形体の自由な変形が困難になり、圧力を正確に計測することができなくなる可能性がある。また、参照変形体は診断毎に使い捨てられる場合があるため、参照変形体の交換が容易に行なわれる必要がある。
【0005】
本発明では、参照変形体は柔軟な変形を損なわないように、超音波探触子に固定される固定具に装着されるとともに参照変形体の交換を容易に行なうことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題を解決するため、参照変形体と、前記参照変形体が装着される固定具とを超音波送受信面に備えた超音波探触子において、前記固定具は溝部又は凹部を有し、前記参照変形体は前記固定具の前記溝部又は凹部に装着されている。
【0007】
前記参照変形体は、長方体と平面体で一体成型されている。前記参照変形体は、その外周側面に凸部又は溝部を有している。前記平面体は穴部を有し、前記固定具は前記平面体の前記穴部に挿通して固定する突起部を有している。前記固定具は、下部固定具と前記下部固定具を覆う上部固定具とからなり、前記参照変形体は前記上部固定具と前記下部固定具との間に挟まれて装着される。前記固定具の上面部と前記参照変形体を覆うカバー部を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、参照変形体は柔軟な変形を損なわないように、超音波探触子に固定される固定具に装着されるとともに参照変形体の交換を容易に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明による超音波診断装置を示すブロック図である。超音波診断装置は、超音波を利用して被検体の診断部位について断層画像を得るとともに生体組織の硬さ又は軟らかさを表す弾性画像を表示するものである。
【0010】
超音波診断装置は、図1に示すように、超音波送受信制御回路1と、送信回路2と、超音波探触子3と、受信回路4と、整相加算回路5と、信号処理部6と、白黒スキャンコンバータ7と、RF信号フレームデータ選択部8と、変位・歪み演算部9と、弾性率演算部10と、弾性データ処理部11と、カラースキャンコンバータ12と、切替加算器13と、画像表示器14と、圧力演算部15と、参照変形体16を具備して構成されている。
【0011】
超音波探触子3は、多数の振動子を短冊状に配列して形成されたものであり、機械式または電子的にビーム走査を行って被検体に超音波を送信及び受信するものであり、図示は省略したがその中には超音波の発生源であるとともに反射エコーを受信する振動子が内蔵されている。
【0012】
各振動子は、一般に、入力されるパルス波、または連続波の送波信号を超音波に変換して発射する機能と、被検体の内部から発射する反射エコーを電気信号(反射エコー信号)に変換して出力する機能を有して形成される。
【0013】
一般に、弾性画像を表示するために行なう圧迫動作は、超音波探触子3で超音波送受信を行なうとともに被検体を圧迫して診断部位の体腔内に応力分布を与える。超音波探触子3の超音波送受信面に参照変形体16が装着されている。参照変形体16を被検体の体表に接触させ、被検体を圧迫する。
【0014】
超音波送受信制御回路1は、超音波を送信及び受信するタイミングを制御するものである。送信回路2は、超音波探触子3を駆動して超音波を発生させるための送波パルスを生成するとともに、内蔵された送波整相加算回路によって送信される超音波の収束点をある深さに設定するものである。
【0015】
受信回路4は、超音波探触子3で受信した反射エコー信号を所定のゲインで増幅するものである。増幅された各振動子の数に対応した数の反射エコー信号が整相加算回路5に入力される。整相加算回路5は、受信回路4で増幅された反射エコー信号の位相を制御し、RF信号フレームデータを形成するものである。
【0016】
信号処理部6は、整相加算回路5からのRF信号フレームデータを入力して、ゲイン補正、ログ補正、検波、輪郭強調、フィルタ処理等の各種信号処理を行なうものである。
【0017】
白黒スキャンコンバータ7は、信号処理部6から出力されるRF信号フレームデータを超音波周期で取得し、このRF信号フレームデータを表示するためテレビジョン方式の周期で読み出すための断層走査手段及びシステムの制御を行うための手段、例えば、信号処理部6からのRF信号フレームデータをディジタル信号に変換するA/D変換器と、このA/D変換器でディジタル化された断層画像データを時系列に記憶する複数枚のフレームメモリと、これらの動作を制御するコントローラなどを含んで構成される。
【0018】
画像表示器14は、白黒スキャンコンバータ7によって得られた時系列の断層画像データすなわち断層画像を表示するものであり、切替加算器13を介して白黒スキャンコンバータ7から出力される画像データをアナログ信号に変換するD/A変換器と、このD/A変換器からアナログビデオ信号を入力して画像として表示するカラーテレビモニタとからなる。
【0019】
また、整相加算回路5の出力側から分岐してRF信号フレームデータ選択部8と、変位・歪み演算部9と、弾性率演算部10が設けられている。また、弾性率演算部10の後段には弾性データ処理部11とカラースキャンコンバータ12が設けられ、白黒スキャンコンバータ7と弾性データ処理部11とカラースキャンコンバータ12との出力側には切替加算器13が設けられている。
【0020】
RF信号フレームデータ選択部8は、整相加算回路5から出力されるRF信号フレームデータをRF信号フレームデータ選択部8内に備えられたフレームメモリ内に順次確保し(現在確保されたRF信号フレームデータをRF信号フレームデータNとする。)、超音波診断装置の制御命令に従って時間的に過去のRF信号フレームデータN−1、N−2、N−3・・・N−Mの中から1つのRF信号フレームデータを選択し(RF信号フレームデータXとする。)、変位・歪み演算部9に1組のRF信号フレームデータNとRF信号フレームデータXを出力する役割を担うものである。整相加算回路5から出力される信号をRF信号フレームデータと記述したが、RF信号を複素復調したI,Q信号の形式になった信号であってもよい。
【0021】
変位・歪み演算部9は、RF信号フレームデータ選択部8によって選択された1組のRF信号フレームデータに基づいて1次元又は2次元の相関処理を実行し、断層画像上の各計測点の変位又は移動ベクトル(変位の方向と大きさ)を計測し、変位フレームデータと相関フレームデータを生成し、変位フレームデータから歪みを演算するものである。歪みの演算については、例えば、その変位を空間微分することによって計算上で求めるものとする。
【0022】
この移動ベクトルの検出法としては、例えば、特許文献1に記載されたようなブロック・マッチング法やグラジェント法がある。ブロック・マッチング法は、画像を例えばN×N画素からなるブロックに分け、現フレーム中の着目しているブロックにもっとも近似しているブロックを前フレームから探索し、これらを参照して符号化を行うものである。
【0023】
弾性率演算部10は、変位・歪み演算部9から出力される歪み情報と圧力演算部15から出力される圧力情報から弾性率を演算して、弾性率の数値データ(弾性フレームデータ)を生成し、弾性データ処理部11とカラースキャンコンバータ12に出力するものである。弾性率の内の一つである、例えばヤング率Ymの演算については、以下の式に示すように、各演算点における応力(圧力)を各演算点における歪みで除することにより求める。下記数式において、i,jの指標は、フレームデータの座標を表す。

{数1}Ymi,j=圧力(応力)i,j/(歪みi,j) (i,j=1,2,3,…)
【0024】
ここで、被検体に加えられた圧力は、圧力演算部15にて計測される。圧力演算部15では、RF信号フレームデータを用いて、被検体と参照変形体16との境界を検出し、検出されたRF信号フレームデータにおける境界の座標を境界座標データとする。そして、圧力演算部15は、境界座標データを用いてRF信号フレームデータにおける参照変形体16からのRF信号を抽出し、被検体と参照変形体16の境界に与えられた圧力を演算により求める。なお、弾性データ処理部11は、算出された弾性フレームデータに座標変面内におけるスムージング処理、コントラスト最適化処理や、フレーム間における時間軸方向のスムージング処理などの様々な画像処理を行なう。
【0025】
また、被検体圧迫機構18は、モータやワイヤなどにより超音波探触子3を上下方向に移動させ、被検体を加圧するものである。なお、操作者が超音波探触子3を上下方向に手動で移動させてもよい。
《第1の実施形態》
【0026】
ここで、参照変形体16が固定具17とともに超音波探触子3に固定される第1の実施形態について図2を用いて説明する。
【0027】
図2(a)に示すように、固定具17は、4辺からなる枠体20と、枠体20の下面から下方向に伸びる一対の把持部21とからなる。枠体20と把持部21は一体に成型されている。把持部21には、超音波探触子3の側部の溝にはまるように突起部(図示しない。)が設けられ、固定具17を超音波探触子3にワンタッチで嵌め込むことができる。また、枠体20の内周面には、参照変形体16を保持するための溝部22が設けられている。溝部22の幅は5mm程度であり、溝部22の深さは3mm程度である。
【0028】
図2(b)に示すように、参照変形体16は、四角形状の平板体25と長方体26とからなる。平板体25上面の中央部には長方体26が設けられている。よって、参照変形体16は平板体25から長方体26が突出した形状になっている。この平板体25と長方体26は一体に成型されている。また、平板体25の厚さは3mm程度である。
【0029】
参照変形体16は、オイル系のゲル素材やアクリルアミドなどの水をベースとしたゲル素材、シリコンなどをベースとして生成されたものである。アクリルアミドは、架橋剤(BIS)を触媒の存在下で重合させるとアクリルアミドゲルとして生成される。これは三次元の網目構造をもった高分子ゲルであり、寒天やゼラチンのような触感を持つ。このように、凝固前は溶液であるが、凝固剤を混入して時間が経過するとゲル状に固まる材料が参照変形体16として好適である。粘性の低いアクリルアミドなどの素材によって構成されていれば、圧迫操作に俊敏に応答するため圧力計測に適する。また、参照変形体16は、例えば水性樹脂ゲル化物をベースにしたような、超音波診断のファントムとして利用される材料であってもよい。
【0030】
図2(c)には、固定具17に参照変形体16を装着させた形態を示す。枠体20の内周面に形成された溝部22に平板体25の端部がそれぞれ挿入され、参照変形体16が固定具17に装着される。参照変形体16である平板体25は弾性体であるため、その弾性力によって、平板体25を溝部22に嵌め込むことができる。このように、固定具17に参照変形体16を装着させると、参照変形体16の長方体26が固定具17の枠体20から突出した状態になる。
なお、参照変形体16を枠体20の溝部22にスライドさせて挿入させてもよい。その場合、挿入される側の枠体20は下側に凹んでいる。
【0031】
図2(d)には、参照変形体16と固定具17が超音波探触子3に固定された状態の長手方向の断面図を示す。図2(c)のように固定具17に参照変形体16を装着させた状態で、固定具17が把持部21を介して超音波探触子3に固定される。固定具17が超音波探触子3に固定されると、超音波探触子3の上部に設けられた振動子19に参照変形体16が接する状態になる。この状態で参照変形体16の上面に被検体を接触させ、振動子19から超音波の送受信を行なう。そして、圧力演算部15は、上述したとおり、得られたRF信号フレームデータから被検体に加えられた圧力を求める。
【0032】
このように、参照変形体16を構成する平板体25の端部を固定具17の溝部22に嵌め込んでいるため、参照変形体16は柔軟な変形を損なわないように固定具17に装着できる。また、参照変形体16が固定具17に着脱可能に装着されているため、参照変形体16の交換を容易に行なうことができる。
《第2の実施形態》
【0033】
参照変形体16が固定具17とともに超音波探触子3に固定される第2の実施形態について図3を用いて説明する。第1の実施形態と異なる点は、固定具17に参照変形体16を装着する形態である。ここでは、第1の実施形態と実質的に等しい形態の説明は省略する。
【0034】
図3(a)に示すように、固定具17は、4辺からなる枠体20と、枠体20の下面から下方向に伸びる一対の把持部21とからなる。枠体20の内周面には、参照変形体16を保持するための筒状の凹部30が複数設けられている。具体的には、枠体20の長手方向の内周面には2つの凹部30、短手方向の内周面には1つの凹部30がそれぞれ設けられている。
【0035】
図3(b)に示すように、参照変形体16は、長方体31と長方体31の外周側面に設けられた筒状の凸部32とからなる。具体的には、長方体31の長手方向の外周側面には2つの凸部32、短手方向の外周側面には1つの凸部32が設けられている。この長方体31と凸部32は一体に成型されている。
【0036】
図3(a)、図3(b)に示した、枠体20に形成された凹部30と長方体31の凸部32の位置が一致している。そのため、枠体20の凸部32を長方体31の凹部30に嵌め込むことができる。
【0037】
図3(c)には、固定具17に参照変形体16を装着させた形態を示す。枠体20の凸部32が長方体31の凹部30に嵌め込まれて、固定具17に参照変形体16が装着される。このように、固定具17に参照変形体16を装着させると、参照変形体16の長方体31が固定具17の枠体20から突出した状態になる。
【0038】
図3(d)には、参照変形体16と固定具17が超音波探触子3に固定された状態の長手方向の断面図を示す。図3(c)のように固定具17に参照変形体16を装着させた状態で、固定具17は把持部21を介して超音波探触子3に固定される。
【0039】
このように、枠体20の凸部32が長方体31の凹部30に嵌め込まれて、固定具17に参照変形体16が装着されるため、参照変形体16は柔軟な変形を損なわないように固定具17に装着できる。また、参照変形体16が固定具17に着脱可能に装着されているため、参照変形体16の交換を容易に行なうことができる。
《第3の実施形態》
【0040】
参照変形体16が固定具17とともに超音波探触子3に固定される第3の実施形態について図4を用いて説明する。第1の実施形態及び第2の実施形態と異なる点は、固定具17に参照変形体16を装着する形態である。ここでは、第1の実施形態及び第2の実施形態と実質的に等しい形態の説明は省略する。
【0041】
図4(a)に示すように、固定具17は、4辺からなる枠体20と、枠体20の下面から下方向に伸びる一対の把持部21とからなる。枠体20の外周端部は上方向に突起している。枠体20の底面には、短手方向に2つの溝部41が形成されている。
【0042】
図4(b)に示すように、参照変形体16は、四角形状の平板体42と長方体43とからなる。平板体42上面の中央部には長方体43が設けられている。よって、参照変形体16は平板体42から長方体43が突出した形状になっている。また、平板体42の左右端部の上面、すなわち長方体43と平板体42との境界部に、短手方向に溝部44がそれぞれ形成されている。参照変形体16の平板体42の厚さと枠体20の外周端部の突起量は、ほぼ同一である。
【0043】
図4(c)には、固定具17に参照変形体16を装着させた形態を示す。参照変形体16の平板体42の厚さと枠体20の外周端部の突起量は、ほぼ同一であるため、参照変形体16の平板体42は枠体20の中に埋め込まれる。この状態で、輪ゴム又はベルトなどのリング状弾性部材45を枠体20の溝部41と参照変形体16の溝部44に巻き付ける。これにより、固定具17に参照変形体16が装着される。
【0044】
図4(d)には、参照変形体16と固定具17が超音波探触子3に固定された状態の長手方向の断面図を示す。図4(c)のように固定具17に参照変形体16を装着させた状態で、固定具17は把持部21を介して超音波探触子3に固定される。
【0045】
このように、輪ゴム又はベルトなどのリング状弾性部材45を介して、参照変形体16が固定具17に装着されるため、参照変形体16は柔軟な変形を損なわないように固定具17に装着できる。また、参照変形体16が固定具17に着脱可能に装着されているため、参照変形体16の交換を容易に行なうことができる。
《第4の実施形態》
【0046】
参照変形体16が固定具17とともに超音波探触子3に固定される第4の実施形態について図5を用いて説明する。第1の実施形態〜第3の実施形態と異なる点は、固定具17に参照変形体16を装着する形態である。ここでは、第1の実施形態〜第3の実施形態と実質的に等しい形態の説明は省略する。
【0047】
図5(a)に示すように、固定具17は、4辺からなる枠体20と、枠体20の下面から下方向に伸びる一対の第1の把持部21と、枠体20の下面から下方向に伸びる一対の第2の把持部50からなる。枠体20と第1の把持部21と第2の把持部50は一体に成型されている。第1の把持部21と第2の把持部50は、その内側に突起部を有している。また、枠体20の内周部は外周部よりも上側に突出しており、枠体20の内周部と外周部の間には傾斜を有している。
【0048】
図5(b)に示すように、参照変形体16は、四角形状の平板体51と長方体52とからなる。平板体51上面の中央部には長方体52が設けられている。よって、参照変形体16は平板体51から長方体52が突出した形状になっている。この平板体51と長方体52は一体に成型されている。また、平板体51の端部周辺には、複数の穴部53が形成されている。
【0049】
図5(c)と図5(d)には、固定具17に参照変形体16を装着させ、固定具17を超音波探触子3に固定した形態を示す。参照変形体16の穴部53が、固定具17に形成された第1の把持部21と第2の把持部50の突起部54に挿通されて掛かり、参照変形体16が固定具17に装着される。また、第1の把持部21と第2の把持部50の突起部55には、平板体51の端部が固定される。
【0050】
固定具17に参照変形体16を装着させると、参照変形体16の長方体52が固定具17の枠体20から突出した状態になる。そして、固定具17に装着された参照変形体16を超音波探触子3の振動子19で押しつけながら、固定具17を超音波探触子3に嵌め込む。この時、超音波探触子3の側面に設けられた突起部56に、第2の把持部50の爪部57が掛かる。このように固定具17を超音波探触子3に固定する。
【0051】
上記の通り、参照変形体16を構成する平板体51の穴部53を固定具17の突起部54に掛けて嵌め込んでいるため、参照変形体16は柔軟な変形を損なわないように固定具17に装着できる。また、参照変形体16が固定具17に着脱可能に装着されているため、参照変形体16の交換を容易に行なうことができる。
《第5の実施形態》
【0052】
参照変形体16が固定具17とともに超音波探触子3に固定される第5の実施形態について図6を用いて説明する。第1の実施形態〜第4の実施形態と異なる点は、固定具17に参照変形体16を装着する形態である。ここでは、第1の実施形態〜第4の実施形態と実質的に等しい形態の説明は省略する。
【0053】
図6(a)に示すように、固定具17は、4辺からなる枠体20と、枠体20の下面から下方向に伸びる一対の把持部21とからなる。枠体20と把持部21は一体に成型されている。
枠体20の内周側面には凸部60が形成されている。
【0054】
図6(b)に示すように、参照変形体16は、長方体61からなる。長方体61の外周側面には、枠体20の凸部60の幅と一致した凹部62が形成されている。
【0055】
図6(c)には、固定具17に参照変形体16を装着させた形態を示す。枠体20の凸部60に参照変形体16の凹部62を嵌め込むことにより、固定具17に参照変形体16を装着させる。このように、固定具17に参照変形体16を装着させると、参照変形体16の長方体26が固定具17の枠体20から突出した状態になる。
【0056】
図6(d)には、参照変形体16と固定具17が超音波探触子3に固定された状態の長手方向の断面図を示す。図6(c)のように固定具17に参照変形体16を装着させた状態で、固定具17は把持部21を介して超音波探触子3に固定される。
【0057】
このように、参照変形体16の凹部62を固定具17の凸部60に嵌め込んでいるため、参照変形体16は柔軟な変形を損なわないように固定具17に装着できる。また、参照変形体16が固定具17に着脱可能に装着されているため、参照変形体16の交換を容易に行なうことができる。
《第6の実施形態》
【0058】
参照変形体16が固定具17とともに超音波探触子3に固定される第6の実施形態について図7を用いて説明する。第5の実施形態と異なる点は、固定具17に参照変形体16を装着する形態である。固定具17の枠体20に参照変形体61を固定する固定部材70が挿通して設置されている。
【0059】
図7(d)に示すように、固定部材70はスプリング71を介して枠体20に設置されている。よって、固定部材70を左右矢印方向に移動させることができる。参照変形体61を固定具17に装着する際、固定部材70を外側に引張り、参照変形体61を枠体20内に収める。そして、固定部材70はスプリング71により発生する力により内側に引っ張られるため、固定部材70が参照変形体61の凹部62に嵌め込まれる。このように、参照変形体61が固定具17に装着される。
《第7の実施形態》
【0060】
参照変形体16が固定具17とともに超音波探触子3に固定される第7の実施形態について図8を用いて説明する。第1の実施形態〜第6の実施形態と異なる点は、固定具17の形態である。ここでは、第1の実施形態〜第6の実施形態と実質的に等しい形態の説明は省略する。
【0061】
図8(a)、図8(c)に示すように、固定具17は、下部固定具80と上部固定具83とからなる。図8(b)に示すように、参照変形体16は、四角形状の平板体81と長方体82とからなる。平板体81上面の中央部には長方体82が設けられている。よって、参照変形体16は平板体81から長方体82が突出した形状になっている。
【0062】
上部固定具83は他の部材に固定するための爪部84を有している。上部固定具83は下部固定具80の枠体の外周部を覆い、上部固定具83の爪部84が下部固定部80の枠体の下面に掛かって固定される。上部固定具83と下部固定具80の間には、参照変形体16の平板体81の厚さの分の隙間が設けられている。
【0063】
上部固定具83の枠体に参照変形体16の長方体82を挿入させた状態で、上部固定具83を下部固定具80に固定する。参照変形体16は上部固定具83と下部固定具80との間に挟まれて装着される。このように、固定具17に参照変形体16を装着させると、参照変形体16の長方体82が上部固定具83の枠体から突出した状態になる。
【0064】
図8(d)には、参照変形体16と固定具17が超音波探触子3に固定された状態の長手方向の断面図を示す。図8(c)のように固定具17に参照変形体16を装着させた状態で、固定具17は把持部21を介して超音波探触子3に固定される。
【0065】
このように、参照変形体16を上部固定具83と下部固定具80によって挟まれて装着されているため、参照変形体16は柔軟な変形を損なわないように固定具17に装着できる。また、参照変形体16が固定具17に着脱可能に装着されているため、参照変形体16の交換を容易に行なうことができる。
《第8の実施形態》
【0066】
参照変形体16が超音波探触子3に固定される第8の実施形態について図9、図10を用いて説明する。第1の実施形態〜第7の実施形態と異なる点は、参照変形体16を超音波探触子3に固定する形態である。ここでは、第1の実施形態〜第7の実施形態と実質的に等しい形態の説明は省略する。
【0067】
図9(a)に示すように、参照変形体16は長方体である。図9(b)に示すように、シート部90は、平板体91と中空長方体92からなる。平板体91上面の中央部には中空長方体92が設けられている。
【0068】
シート部90は平板体91から中空長方体92が突出した形状になっており、中空長方体92内には参照変形体16を有している。参照変形体16は、平板体91と中空長方体92によって包み込まれている。シート部90の材質は、例えば非常に薄い(厚さ0.1ミリ程度)ウレタン製である。
【0069】
なお、中空長方体92内の参照変形体16は液体でもよい。平板体91と中空長方体92とで囲まれる空間に液体を注入することによって実現する。
【0070】
図9(c)には、参照変形体16と固定具17が超音波探触子3に固定された状態の長手方向の断面図を示す。参照変形体16がシート部90の中空長方体92の中空部内に設置される。そして、シート部90の平面体91の端部を超音波探触子3のヘッド部を覆うように被せる。この状態で、輪ゴムやベルト、もしくは両面テープなどの接着部材93でシート部90を超音波探触子3に固定する。このように、シート部90と参照変形体16は、超音波探触子3に固定される。
【0071】
シート部90を介して参照変形体16を超音波探触子3に固定されているため、参照変形体16は柔軟な変形を損なわないように超音波探触子3に装着できる。また、参照変形体16の交換を容易に行なうことができる。
【0072】
上記では、輪ゴムやベルト、もしくは両面テープなどの接着部材93でシート部90を超音波探触子3に固定したが、図10に示すように、他の方法であってもよい。
【0073】
具体的には、図10(b)に示すように、シート部90の平面体91の長手方向両端に穴部100が設けられている。また、図10(c)に示すように、超音波探触子3のヘッド部の長手方向両端に突起部101が設けている。超音波探触子3の突起部101にシート部90の穴部100を係合することにより、シート部90を介して参照変形体16を超音波探触子3に固定させることができる。
《第9の実施形態》
【0074】
参照変形体16が超音波探触子3に固定される第9の実施形態について図11、図12を用いて説明する。第1の実施形態〜第8の実施形態と異なる点は、参照変形体16自体を超音波探触子3に固定する形態である。ここでは、第1の実施形態〜第8の実施形態と実質的に等しい形態の説明は省略する。
【0075】
図11(a)、図11(b)に示すように、参照変形体16は、中空長方体110と長方体111とからなる。中空長方体110の上面中央部には長方体111が設けられている。よって、参照変形体16は中空長方体110から長方体111が突出した形状になっている。この中空長方体110と長方体111は一体に成型されている。
【0076】
また、中空長方体110の下面には開口部114が設けられている。開口部114の大きさは、超音波探触子3のヘッド部と同じ大きさであるか、超音波探触子3のヘッド部よりやや小さい。中空長方体110の外周側面には溝部112が設けられている。参照変形体16である中空長方体110は弾性体であるため、その弾性力によって、中空長方体110を超音波探触子3に嵌め込むことができる。
【0077】
図11(c)には、参照変形体16が超音波探触子3に固定された状態の長手方向の断面図を示す。参照変形体16の開口部114から中空長方体110内に超音波探触子3のヘッド部を差し込まれる。この状態で、中空長方体110の溝部112に輪ゴムやベルトなどのリング状弾性部材113を巻き付け、参照変形体16を超音波探触子3に固定する。中空長方体110の外周側面に溝部112を設けたことにより、巻き付けた輪状弾性部材113がズレないようにすることができる。
【0078】
このように、参照変形体16自体を超音波探触子3に嵌め込んでいるため、参照変形体16は柔軟な変形を損なわないように装着できる。また、参照変形体16の交換を容易に行なうことができる。
【0079】
上記では、輪ゴムやベルトなどのリング状弾性部材113で参照変形体16を超音波探触子3に固定したが、図12に示すように、他の方法であってもよい。
【0080】
具体的には、図12(a)、図12(b)に示すように、参照変形体16の中空長方体110の長手方向両端に穴部120が設けられている。また、図12(c)に示すように、超音波探触子3のヘッド部の長手方向両端に突起部101が設けている。超音波探触子3の突起部101に中空長方体110の穴部120を係合することにより、参照変形体16を超音波探触子3に固定させることができる。
《第10の実施形態》
【0081】
参照変形体16が超音波探触子3に固定される第10の実施形態について図13を用いて説明する。第1の実施形態〜第10の実施形態と異なる点は、参照変形体16と超音波探触子3とを一体にする形態である。図13(a)に示すように、炭素鋼などで形成された金型130の下面には、超音波探触子3のヘッド部が挿入するための開口部131が設けられている。また、金型130の上面には、凝固前の参照変形体16の材料を流し込むための貫通口132が設けられている。なお、金型130はNC旋盤などの工作機械で作成される。
【0082】
図13(b)に示すように、金型130の開口部131から超音波探触子3を嵌め込み、凝固前の参照変形体16の材料をその金型130と超音波探触子3とで形成される空間133に流し込む。そして、図13(c)に示すように、参照変形体16が固形化した後、金型130から超音波探触子3と参照変形体16を取り出すことにより、参照変形体16と一体になった超音波探触子3が形成される。このように、超音波探触子3に対応した金型130を用いて参照変形体16を形成することにより、超音波探触子3と参照変形体16とを密着させ、一体にすることができる。
《第11の実施形態》
【0083】
参照変形体16が固定具17とともに超音波探触子3に固定される第11の実施形態について図14を用いて説明する。第1の実施形態〜第10の実施形態と異なる点は、参照変形体16をカバーする形態である。ここでは、第1の実施形態〜第9の実施形態と実質的に等しい形態の説明は省略する。
【0084】
参照変形体16は、圧迫圧力を求める圧力センサーとしての役割や、硬さの指標(基準)として利用されるため、参照変形体16の硬さの経時変化がないことが望ましいが、現実的には経時変化を免れないため、可能な限り、それを抑制する工夫が必要となる。参照変形体16が例えば水分や酢酸などの揮発成分を含んでいる場合など、経時変化する特性をもつ場合がある(例えばアクリルアミドゲルや水性樹脂ゲル化物など)。
【0085】
また、参照変形体16の表面が空気に触れると、ボコボコになることがあるため、生体との表面を常にフラットに保ち、使用時の生体との接触性が損なわれないようにする必要がある。また、図11と図12に示したキャップ状の参照弾性体は、複雑な形状であるため、保管の際、その形状を保つようにするための特別な梱包が必要である。
【0086】
図14(a)は、第1の実施形態の図2(c)などで記載されているように、固定具17に参照変形体16を装着した状態を示している。
【0087】
図14(b)は、参照変形体16を装着した固定具17をカバー部140で覆った状態を示している。カバー部140は、固定具17の上面部と参照変形体16の突出部とともに覆うことができる空隙と、固定具17に固定するための爪部141を有している。この爪部141は固定具17の下面に掛かるようになっている。
【0088】
そして、超音波探触子3を使用する時は、カバー部140を固定具17から取り外し、図14(d)に示すように参照変形体16を剥きだし状態にする。超音波探触子3を使用しない時は、カバー部140で参照変形体16を覆う。
【0089】
参照変形体16を覆うようにカバー部140を装着することによって、埃や空気などの進入を防ぐことができるため、参照変形体16の劣化を最小限に抑えることができる。
【0090】
また、図14(c)に示すように、超音波探触子3を使用しない時は、参照変形体16をケース142に収める。ケース142は、内部に空隙がある器部143と蓋部142を有している。器部143の上面は蓋部142に連結されている。参照変形体16をケース142に密閉して収めることにより、埃や空気などの進入を防ぐことができるため、参照変形体16の劣化を最小限に抑えることができる。なお、参照変形体16が新品である場合も同様の方式で管理する。このように、参照変形体16の揮発を抑制するため、外部の空気を遮断した密閉された専用のケース142に入れて保管する。
【0091】
さらに、器部143には参照変形体16の揮発を抑えるため、水を浸しておいてもよい。また、参照変形体16の形状が変形しないように参照変形体16の形状にフィットした器部143を用いて保管してもよい。また、参照変形体16の表面の成分が揮発して表面の平滑性が損なわれないように、参照変形体16の表面保護のために、シートを接触させて保管してもよい。
【0092】
上記では、リニア型の超音波探触子3に特化して説明したが、コンベックス型や体内挿入型でもよく、固定具17をその形状に合わせてもよい。例えば、第1の実施形態のリニア型の超音波探触子3にコンベックス型の超音波探触子3を適用する場合、固定具17の枠体30もコンベックス型になっている。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の全体構成を示す図。
【図2】本発明の第1の実施形態を示す図。
【図3】本発明の第2の実施形態を示す図。
【図4】本発明の第3の実施形態を示す図。
【図5】本発明の第4の実施形態を示す図。
【図6】本発明の第5の実施形態を示す図。
【図7】本発明の第6の実施形態を示す図。
【図8】本発明の第7の実施形態を示す図。
【図9】本発明の第8の実施形態を示す図。
【図10】本発明の第8の実施形態を示す図。
【図11】本発明の第9の実施形態を示す図。
【図12】本発明の第9の実施形態を示す図。
【図13】本発明の第10の実施形態を示す図。
【図14】本発明の第11の実施形態を示す図。
【符号の説明】
【0094】
3 超音波探触子、16 参照変形体、17 固定具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
参照変形体と、前記参照変形体が装着される固定具とを超音波送受信面に備えた超音波探触子において、前記固定具は溝部又は凹部を有し、前記参照変形体は前記固定具の前記溝部又は凹部に装着されていることを特徴とする超音波探触子。
【請求項2】
前記参照変形体は、長方体と平面体で一体成型されていることを特徴とする請求項1記載の超音波探触子。
【請求項3】
前記参照変形体は、その外周側面に凸部又は溝部を有していることを特徴とする請求項1記載の超音波探触子。
【請求項4】
前記参照変形体の前記平面体は穴部を有し、前記固定具は前記平面体の前記穴部に挿通して固定する突起部を有していることを特徴とする請求項2乃至3記載の超音波探触子。
【請求項5】
前記固定具は、下部固定具と前記下部固定具を覆う上部固定具とからなり、前記参照変形体は前記上部固定具と前記下部固定具との間に挟まれて装着されることを特徴とする請求項1記載の超音波探触子。
【請求項6】
前記固定具の上面部と前記参照変形体を覆うカバー部を備えることを特徴とする請求項1記載の超音波探触子。
【請求項7】
前記請求項1乃至6に記載された超音波探触子と、前記超音波探触子を介して被検体に超音波を送受信し、前記被検体の断層部位のRF信号フレームデータに基づいて断層画像を生成する断層画像構成手段と、前記RF信号フレームデータに基づいて前記断層部位における組織の歪み又は弾性率を求める弾性情報演算手段と、前記弾性情報演算手段で求めた歪み又は弾性率に基づいて弾性画像を生成する弾性画像構成手段と、前記断層画像及び/又は前記弾性画像を表示する表示手段とを備えた超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−259541(P2008−259541A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−102281(P2007−102281)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】