説明

超音波撮像における造影剤として使用するための粒子の分散調合

第1の流動体(1)に細孔のアレイ(30)を通して第2の流動体(2)を強制的に注入することによって、超音波に応答するのに適した大きさを有する粒子の懸濁液を第1の流動体内に生成する方法において、細孔は実質的に均一な直径を有し、細孔の位置でのせん断力が第2の流動体を実質的に単分散性の粒子として第1の流動体内に懸濁させるように、第2の流動体の圧力と、細孔を横切る第1の流動体の流速とが制御される。これによって、より単分散の懸濁液が実現される。細孔のアレイはエッチングされたシリコンアレイとし得る。懸濁液は造影剤として使用され得るし、あるいは核及びシェルを有するカプセル内に形成される前駆物質の液滴を生成するエマルジョンともし得る。液体の核は気体に変えられることが可能であり、それにより中が空洞のシェルが提供される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子の懸濁液又はエマルジョンを含むコロイド系の分散を生成する方法、コロイド系、懸濁液又はエマルジョンを含む粒子の分散を生成する方法、並びに該方法を実行するカプセル及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波は撮像に基づく医療診断で最も広く使用されている方法である。今まで、超音波撮像はほぼ専ら、形態データの取得に基づいていた。画質、故に診断値は静脈注射によって投与された造影剤の適用によって有意に改善可能である。このような造影剤は、例えばコンピュータ断層撮影法(CT)及び磁気共鳴撮像法(MRI)など、他の撮像に基づく診断においても使用されている。
【0003】
現在入手可能な超音波造影剤は、非常に効率的に音波と相互作用する中が空洞の粒子、気泡又は“所謂”ガス封入リポソームを含んでいる。このような造影剤は大抵、相当に広い大きさ分布を有している。音場との相互作用は粒子の大きさに依存し、故に、造影剤粒子の音響挙動にはかなりのバラつきが存在することになる。気泡状の造影剤を使用する更なる方法は、振動する気泡から放出される高調波信号が検出される高調波イメージングである。この信号は特定の周波数に鋭く位置する。これは、原理的に、自由に流れる造影剤と、狭い毛細血管内の造影剤、又は血管壁若しくは血の塊(blood clot)に付着した造影剤との間の区別を可能にし得る。なぜなら、これは共鳴周波数を変化させるからである。
【0004】
標的を定めた撮像に造影剤を利用すること、すなわち、生物学的な標的薬剤を有する造影剤の使用による病気の分子撮像及び薬物送達に造影剤を利用することが行われ始めている(例えば、非特許文献1及び2、Imarx社の活動(www.imarx.com参照)、並びに特許文献1参照)。上記の利用は、例えば大きさ分布、シェルの機械的係数、及び生分解性などの、造影剤の物理的特性及び化学的特性に強く依存する。現在入手可能な造影剤は大きさ的にはっきりした特徴がなく、大きく変わりやすい機械的特性を有している。例えばふるいを用いて濾過することにより上記の造影剤をより単分散にすることが知られている。特許文献2は例えば例15など、濾過前後の大きさ分布を開示している。これはエマルジョン/懸濁液全体の濾過である。経験則として、全ての分別法は大きな損失をもたらし、多くの望ましい粒子をも除去してしまう。エマルジョン又は懸濁液全体の濾過処理は、粒子又はエマルジョン滴の大きさに関して選択的であり、超音波などの外部場内での特徴にとって重要な他のパラメータに関しては選択的でない。このようなパラメータの1つは造影剤のシェルの厚さである。リポソームの調合では濾過がしばしば用いられ、射出(extrusion)は完全な溶液に実行される濾過に基づく処理である。
【0005】
超音波の別の利用は局所化・標的療法であってもよい。粒子の超音波誘起活性化は特定位置に薬物を放出するために適用され得る。この放出の効果的な制御のためには、特定の大きさと機械的特性とを有する粒子への集中的な超音波照射が必要である。これは例えば非特許文献3にて言及されている。
【0006】
静脈注射に使用される超音波造影剤は超音波撮像において長年にわたって用いられてきた。これらは気泡の使用と、シェルを有する気泡の消滅を遅らせることとに基づいている。シェルはタンパク質、脂質、及び/又は生分解性高分子から成る。気泡の大きさは赤血球程度かそれより僅かに小さく、極めて少量であることが効果的である。多くの種類の超音波造影剤が存在しており、非特許文献4に概説されている。
【0007】
超音波撮像においては、他の医療画像診断法と同様に、例えば造影剤の標的を特定の病気領域に定めることによって、機能性を高める試みが為されてきた。超音波造影剤は通常は血液プールに留まるため、例えば不安定プラーク、血栓症、及び壊れた内皮細胞などの心血管疾患は、例えば抗体、抗体フラグメント、又はペプチド配列などの特定の生物的標的薬剤を担う超音波造影剤を用いて標的に定められることができる。血管形成もまた造影剤を用いて更に詳細に従われ得るプロセスである。新たな血管の視覚化はさておき、それらの表面の特徴は異なり、例えば腫瘍の存在などの病状に依存し得る。最終的に、腫瘍付近の脈管構造はしばしば漏れやすく、造影剤が血液循環から逃れ出ることを可能にする。超音波と造影剤の使用との多くの態様について述べている有用な参照文献に非特許文献5がある。
【0008】
超音波造影剤は治療薬と組み合わせ可能であることも知られている。超音波を当てられると放出される薬物とともに造影剤が搭載される。例えば血栓症又は局所的な血管拡張などを処置する機会を実現し得る局所的な高ドーズ量を供給することができる。
【特許文献1】米国特許第6146657号明細書
【特許文献2】米国特許第6193951号明細書
【非特許文献1】Dayton等、Molecular Imaging 第3巻、2004年、p.125-134
【非特許文献2】Lanza等、Prog. Cardiovascular Dis. 第44巻、2001年、p.13-31
【非特許文献3】Cherry等、Phys. Med. Biol. 第49巻、2004年、R13
【非特許文献4】Klibanov、「Ultrasound contrast agents:Development of the field and current Status」、Contrast Agents II、W.Krause編、Springer、2002年、p.74-103
【非特許文献5】Solbiati等、「Contrast-enhanced Ultrasound of Liver Diseases」、Springer、2003年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、例えば粒子の懸濁液又はエマルジョンなどの分散を生成する方法、及び該方法を実行するカプセル及び装置を提供することを目的とする。本発明は、例えば高調波イメージングなどの超音波診断、治療及び撮像中に、音場へのより均一な応答を与える狭い大きさ分布を有する造影剤を提供可能であるという利点を有する。他の利点は、使用可能な大きさ範囲内にある粒子の損失が、原理的に、より少ない、あるいは存在しないことである。他の利点は、大きさだけでなく組成も均一であり、例えば高調波イメージングなどの超音波診断、治療及び撮像中に、音場へのより均一な応答を与える特定のシェル厚さがもたらされることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1態様に従って提供される、第1の流動体に1つ以上のノズル又は細孔(pore)を通して第2の流動体を強制的に注入することによって、第1の流動体内に分散、例えば第1の流動体内のエマルジョン、を生成する方法においては、粒子は超音波又はその他の診断ツールに応答するのに適した大きさを有し、ノズル又は細孔は実質的に均一な直径を有し、第2の流動体の例えば圧力などの流れのパラメータは、第1の流動体内に実質的に単分散性の液滴として懸濁される第2の流動体の形成を引き起こすようにされる。第2の流動体の圧力は、第1の流動体内に実質的に単分散性の液滴として懸濁される第2の流動体の形成を支援するように制御されてもよい。1つ以上のノズル又は細孔を横切る第1の流動体の流速は、1つ以上のノズル又は細孔の位置でのせん断力が液滴の生成を支援するように制御されてもよい。分散は、例えばエマルジョンのようなコロイド系など、好適な如何なる形態であってもよい。エマルジョンは後処理工程にて懸濁液に変化させられてもよい。第1及び第2の液体の何れもが液体であってもよい。
【0011】
本発明の一態様においては、第1の流動体内への第2の流動体の液浸(submerged)インクジェット印刷が行われ、この場合、第1の流動体の流れは不要とされる。例えば、第2の流動体がキャピラリーを通してパージされる液体である場合、第2の流動体は等しい大きさの液滴状に離脱する。これは、第2の液体を第1の液体内に強制的に注入する液浸インクジェット法を用いる場合である。更なる選択的な特徴は、ノズル出口でのメニスカスを振動させ、それにより離脱させるように、インクジェットインクのチャンバーに周波数又は振動を加えることである。キャピラリーの不安定性は第2の流動体を液滴へと離脱させる。細孔は、例えば、多孔率が制御された薄膜(membrane)の部分であってもよいし、マイクロチャネル又はSPG(シラスポーラスガラス)膜であってもよい。これらの細孔を横切る第1の流動体の流れにより、更に単分散性のエマルジョンがもたらされる。この場合、第1の流動体の流れは形成される液滴に力を及ぼし、その離脱を制御するので有利である。第1の流動体の流れは本発明に不可欠な特徴ではなく、第1の流動体の横断流なしで第2の流動体を第1の流動体内に特定の多孔率を有する表面を通して強制的に注入することも、依然として本発明の範囲内にあり、他の濾過又は定寸化の手段より狭い分布をもたらすことができる。
【0012】
上記方法は、より単分散性の分散を作り出すことを可能にする。これは超音波に対してだけでなく他の撮像技術、並びに超音波及び他の技術を用いる薬物送達に対しても有用となり得る。
【0013】
本発明の更なる特徴は、ノズル又は細孔のアレイは、例えばシリコンのような半導体材料などの好適基板内にエッチングされたアレイを有することである。
【0014】
他の更なる特徴は、細孔は第1の流動体の流れに垂直でない角度に向けられていることである。これは、途中まで形成された例えば液体である第2の流動体の液滴の、例えば液体である第1の流動体による“スナップオフ”に有利となり得る。何故なら、形成される液滴はより大きい曲率を有する領域を有するようになるからである。
【0015】
他の更なる特徴は、分散は画像診断に適した造影剤を含むことである。
【0016】
他の更なる特徴は、ノズル又は細孔は濡れ性(wetting property)を変化させる被覆を有することである。
【0017】
他の更なる特徴は、エマルジョンの液滴をガス封入されたシェル又は気泡に変化させる更なる処理工程である。これにより一般的に、例えばマイクロバブル又はマイクロバルーン等の粒子の懸濁液が生成される。
【0018】
他の更なる特徴は、分散内の液滴は高分子、又は例えばリン脂質、糖脂質若しくはコレステロールなどの脂質を含むことである。
【0019】
他の更なる特徴は、ノズル又は細孔のアレイは第1の基板内にあるとともに、例えば異なる材料から成る、第2の基板に支持されていることである。
【0020】
他の一態様により、上記方法を実行する装置が提供される。具体的には、本発明によって提供される、超音波又はその他の診断ツールに応答するのに適した大きさを有する粒子の分散を第1の流動体内に生成する装置は:
ノズル又は細孔のアレイを通して第1の流動体に第2の流動体を強制的に注入する手段を有し、ノズル又は細孔は実質的に均一な直径を有し、第2の流動体の流れのパラメータは、第2の流動体が第1の流動体内に実質的に単分散性の液滴として懸濁されるようにされる。この装置はまた、第2の流動体が第1の流動体内に実質的に単分散性の液滴として懸濁されることを支援するように、第2の流動体の流れのパラメータを制御する第1の制御手段を含んでいてもよい。
【0021】
ノズル又は細孔の位置でのせん断力が、第2の流動体が第1の流動体内に実質的に単分散性の液滴として懸濁されることを支援するように、ノズル又は細孔を横切る第1の流動体の流速を制御するために、第2の制御手段が設けられてもよい。
【0022】
更なる特徴は、上述に従って、超音波に応答するのに適した大きさのカプセルを前駆物質の実質的に単分散性の液滴から作り出す方法である。この方法は、核とシェルとを有するカプセル内に液滴を形成した後、核を変更することを含んでいる。実質的に単分散性の液滴はエマルジョンとし得る。
【0023】
これは、より一貫した大きさを有するカプセルを実現し得る。更なる利点は、第2の液体の液滴内に最初に存在する全ての物質が最終的に1つの粒子となるので、粒子の組成が制御されることである。これはシェルの厚さ制御をもたらすことに直接的に関係する。
【0024】
本発明の更なる特徴は、粒子が、液体を有する核と、核を気体に変える例えば凍結乾燥である変更工程とを有することである。
【0025】
他の更なる特徴は、液滴が疎水性相を有し、核を変更する工程が疎水性相からの選択的な溶剤除去を有することである。
【0026】
他の更なる特徴は、液滴は、生分解性高分子の溶液である第2の流動体を起源とすることである。この生分解性高分子は、例えば、ハロゲン化溶剤、エステル及びエーテル等の極性有機溶剤内の、ポリ-(乳酸)、ポリ-(グリコール酸)、ポリ-カプロラクトン、ポリ-(アルキル-シアノアクリレート)及びポリ-(アミノ酸)、並びにこれらの共重合体である。また、これらのハロゲン化溶剤、エステル及びエーテルには、エチレングリコール及びイソプロピル-アセテート、ジメチルホルムアミド及びNメチル-ピロリドン又はアセトン、ジクロロメタン、若しくはジクロロエタンが含まれる。この生分解性高分子の溶液に、例えばシクロオクタン及びドデカン等のアルカン並びにフッ素化液体などの、非極性の生分解性高分子の非溶剤が付加される。エマルジョンの形成後、非極性溶剤が連続相内でゆっくりと分解し、エマルジョンの液滴の収縮と、極性溶剤周辺での生分解性高分子の相分離を生じさせる。必要に応じて、生分解性高分子のシェルを有する中が空洞のカプセルを生成する如何なる極性溶剤をも除去するために、凍結乾燥が用いられ得る。
【0027】
他の更なる特徴は、極性溶剤を第1の流動体内の液滴から溶解させる工程である。この工程は、第1の流動体内で小さいながらも有限な溶解度を有し且つその後に例えば蒸発又は抽出などの何らかの好適手段により第1の流動体から除去可能な極性溶剤を選定することによって実現可能である。第1の流動体内での極性溶剤の溶解度を高めたり低下させたりする手段は、温度を変更したり、あるいはイオン強度を変化させたりする後処理を含む。
【0028】
他の固有の工程又は更なる工程は、生分解性高分子と非極性溶剤との相分離であり、それにより生分解性高分子のシェルと、非極性溶剤の核とが得られる。これは、極性溶剤の除去とともに行われ得る。何故なら、除去の或る一定割合にて、高分子は凝結してシェルを形成するからである。
【0029】
他の更なる工程は、非極性溶剤を除去する凍結乾燥である。アルカンは好ましくは過大な分子量を有さず、例えば、アルカンは好ましくはドデカンと同程度以下の分子量を有する。シクロオクタンは15℃で固体であり、急速な初期凍結の間に示す変形が小さくなるので好ましい溶剤である。
【0030】
他の更なる特徴は、カプセルは、20μmより小さく1μmより大きい直径であり好ましくは6μmより小さい直径と、粒子の平均直径に対して15%未満であり好ましくは10%未満、例えば7%未満、の標準偏差とを有することである。
【0031】
本発明の他の一態様によって、上記方法を実行する更なる装置が提供される。具体的には、本発明によって提供される、前駆物質の実質的に単分散性の液滴から、超音波に応答するのに適した大きさのカプセルを作り出す装置は、核とシェルとを有するカプセル内に液滴を形成する手段、及び核を変更する手段を有する。
【0032】
他の更なる特徴は、極性溶剤を第1の流動体内の液滴から溶解させる手段である。この手段は、第1の流動体内で小さいながらも有限な溶解度を有し且つその後に例えば蒸発又は抽出などの何らかの好適手段により第1の流動体から除去可能な極性溶剤を選定することによって実現可能である。第1の流動体内での極性溶剤の溶解度を高めたり低下させたりする手段は、温度を変更したり、あるいはイオン強度を変化させたりする後処理を含む。
【0033】
他の固有の特徴又は更なる特徴は、生分解性高分子と非極性溶剤との相分離のための手段であり、それにより生分解性高分子のシェルと、非極性溶剤の核とが得られる。これは、極性溶剤の除去とともに行われ得る。何故なら、除去の或る一定割合にて、高分子は凝結してシェルを形成するからである。
【0034】
他の更なる特徴は、非極性溶剤を除去する凍結乾燥のための手段である。
【0035】
如何なる更なる特徴も互いに組み合わせ可能であり、如何なる態様とも組み合わせ可能である。他の利点、特にこの他の従来技術に対する利点が当業者に明らかとなろう。本発明の範囲を逸脱することなく、数多の変形及び変更が為され得る。故に、本発明の実施形態は単に例示であり、本発明の範囲を限定するものではないことは明確に理解されるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明が如何にして実施され得るかについて、添付の図面を参照する実施例を用いて説明する。本発明は特定の実施形態に関して、また特定の図面を参照して説明されるが、本発明はそれらに限定されるものではなく、請求項によってのみ定められるものである。記載された図面は単に概略的なものであり限定的なものではない。図面においては、例示目的のため、一部の要素の大きさは誇張されており縮尺通りには描かれていない。本明細書及び特許請求の範囲にて用語“有する”が使用される場合、それは他の要素又は工程を排除するものではない。単数の名詞を参照するときに例えば“ある”又は“その”など(“a”若しくは“an”又は“the”)の不定冠詞又は定冠詞が用いられる場合、他の何かが特に断られない限り、これはその名詞の複数形を含む。
【0037】
請求項内で使用される用語“有する”は、列挙される手段に限定されるものと解釈されるべきではない。すなわち、これは他の要素又は工程を排除するものではない。故に、“手段A及びBを有する装置”という表現の範囲は、構成要素A及びBのみから構成される装置に限定されるべきではなく、本発明に関連する装置の構成要素はA及びBであることを意味しているだけである。
【0038】
さらに、明細書及び請求項内の第1、第2、第3などの用語は同様の要素を区別するために使用されており、必ずしも逐次的な順序や時間的な順序を述べるものではない。このように使用される用語は適当な状況下で相互交換可能であり、ここで説明される実施形態はここで説明又は例示される以外の順序で動作可能であることは理解されるべきである。
【0039】
さらに、明細書及び請求項内の頂部、底部、上方、下方などの用語は説明のために使用されるものであり、必ずしも相対的な位置を述べるものではない。このように使用される用語は適当な状況下で相互交換可能であり、ここで説明される実施形態はここで説明又は例示される以外の向きで動作可能であることは理解されるべきである。
【0040】
本発明は、第1の流動体内に粒子の分散を生成する方法を提供するものであり、粒子は超音波又はその他の診断ツールに応答するのに適した大きさを有する。これは、第2の流動体を1つ以上のノズル又は細孔(pore)を介して、例えば、ノズル又は細孔のアレイを介して、第1の流動体内に強制的に注入することによる。適切な液滴サイズは好ましくは直径で約4μmであり、例えば、1μmより大きく10μmより小さいことが好ましい。この手順は液滴を作り出すものである。
【0041】
液滴の最終形態は懸濁液(suspension)又はエマルジョン(emulsion;乳剤)のようであってもよい。エマルジョンは親水性相中の疎水性相(又は疎水性相中の親水性相)から成る懸濁液である。エマルジョン内では、2つの相は互いに混和することができない、あるいは部分的に非混和性である。後者の場合、例えば界面活性剤、脂質又は更にポリエチレングリコール付加された(pegylated)脂質などの疎水性と親水性との双方を有する物質が乳化剤(emulsifier)として使用されてもよく、すなわち、それらが疎水性相と親水性相との間の境界を決定する。
【0042】
一般的に、懸濁液は固体/液体系であるが、エマルジョンは液体/液体系である。2つの液体を使用する本発明の実施形態においては、先ずエマルジョンが生成され、このエマルジョンが必要に応じて懸濁液に変化させられる。これは、例えば、高分子粒子の場合であり、高分子シェルを有するカプセルに拡張可能である。エマルジョンは液体を包み込む脂質シェルを具備する粒子を有することができる。この場合、脂質によって安定化された液滴が形成される。
【0043】
乳化剤が第1の液体に付加されることができる。乳化剤は、例えば、水溶性高分子又は界面活性剤であってもよい。好適な高分子はポリ-(ビニルアルコール)であり、好ましくは70%より高く90%より低い加水分解度を有する。他の高分子安定剤はポリ-(ビニルピロリドン)、ポリ-(エチレンオキシド)とポリ-(プロピレンオキシド)との共重合体である。安定剤としてポリアミノ酸も使用可能である。界面活性剤、好ましくはエチレンオキシド極性群を有する界面活性剤、も同様に使用可能である。安定剤はまた第2の流動体にも付加されることができる。付加ブロックがポリエチレンオキシドであるリスト化された(listed)生分解性高分子のブロック共重合体は優れた安定剤である。ポリエチレンオキシドブロックは2000ダルトン程度の分子量であることが多い。この後者の選択肢は、後続処理工程で余分な安定剤が除去される必要がないので、特に有利である。生体内分布に影響を及ぼすようにポリエチレングリコール付加(pegylation)も用いられ得る。
【0044】
人体又は動物体の脈管構造内に造影剤が使用されるとき、環境は大抵は親水性である。この点で、第1の流動体は好ましくは水性である。粒子は疎水性相に属することになる。
【0045】
第2の流動体を第1の流動体内に多孔質表面を介して強制的に注入することによる、均一な大きさを有する液滴を作り出す如何なる方法も、本発明とともに使用可能である。非インパクト法によって液滴を作り出す汎用技術が印刷産業によって開発されている。例えばインパルス・インクジェット印刷法又は圧電インクジェット印刷法などのインクジェット印刷法を含む例が、Jerome L. Johnsonによる文献「Principles of Nonimpact printing 第2版」(Palatino出版、1998年)に挙げられている。印刷処理が粒子を生成するために使用され、好ましくは第1の流動体の表面下で液浸にて実行される。
【0046】
本発明の一実施形態においては、非常に正確な大きさ分布を実現するために偏向インクジェット印刷法が使用可能である。偏向インクジェット印刷法においては大抵、ドットを印刷するように、あるいは紙上に印刷しないように、液滴は空気中で偏向される。本発明の一実施形態によれば、液滴は第1の流動体内にあるときに偏向される。これはある状況下でインクジェットヘッドから吐出される微小な液滴であるサテライトを除去する際に有用となり得る。液滴の大きさはインクジェットノズルの出口側で、例えば光学的な方法を用いて測定され、例えばサテライト等の特定容積サイズを満たさない液滴は偏向又は捕獲される。この光学的な方法は、粒子の動作を凍結させ光学測定を可能にするストロボを含んでいてもよいし、入射光の一部を覆い隠す粒子によって引き起こされる光センサーの出力変化などの他の方法を含んでいてもよい。この測定技術は粒子の大きさの測定を提供すべきである。この技術により、非常に均一な液滴の大きさを得ることが可能である。不使用材料はリサイクルされ得る。
【0047】
他の例では、サテライトははっきりと異なる大きさを有しているので該サテライトを高収率で除去するために、インクジェット工程後に分別を行うことが可能である。また、この分別は粒子の組成の均一性には影響を有しない。組成の均一性とは、超音波造影剤にとっては例えばシェル厚さの均一性である。
【0048】
“第2の液体の流れ”という表現はプロセスの巨視的な説明に言及するものであり、第2の液体は微視的なスケールで滴ごとに第1の液体中に持ち込まれる。例えば、液滴はチャネル又はキャピラリーの出口にて形を成し始め、臨界的な大きさを満たして離脱する。この離脱は、第2の液体の流れそのものによってでもよいし、あるいは、例えば高周波振動における、第2の流動体内の圧力の振動又は変調などの液滴を引き離すエネルギーを加えることによってでもよい。液滴当たりの流れは必ずしも一定でなくてもよく、むしろ、核生成(nucleation)と成長プロセスが押し進められ得る。核生成を押し進めるには圧力が必要である。故に、第2の流動体はノズル又は細孔の中を押し進められる。核生成を達成するために必要な圧力は、第1の液体と第2の液体との間の界面張力(γ)に関係する。安定剤の存在下では、30mN/m未満、あるいは更には20mN/m未満といったかなり低い値が得られ得る。界面張力が30mN/m、細孔の直径(d)が2μmである場合、ラプラス圧力は4γ/d=60kPaに等しい。ラプラス圧力はさておき、細孔又はチャネルの上方にはキャピラリーの形状に依存する圧力低下が存在する。105Paより高い圧力が使用可能である。
【0049】
上述の技術は液滴を生成するために機械的又は電気機械的なパルスを用いることができる。パルスは独立した液滴を生成するのに十分である必要はない。ノズルの開口を通らされる第1の流動体の流れのため、より小さいパルスによって凸のメニスカスを形成している第2の液体は、仮に第1の流動体の流れが存在しないとしたときに液滴が離脱するのに十分な大きさに到達していない時点に、第1の流動体の流れによって引き出されることができる。
【0050】
本発明はまた、液滴を生成するための第2の流動体の連続的な流れを使用することを含む。この場合、ノズルの開口を通らされる第1の流動体の流れのため、連続的な流れによって凸のメニスカスを形成している第2の液体は、仮に第1の流動体の流れが存在しないとしたときに液滴が離脱するのに十分な大きさに到達していない時点に、第1の流動体の流れによって引き出されることができる。液滴に適度な力を働かせるため、界面にはかなり高い流速が存在することが好ましい。細孔を取り囲む壁付近のせん断応力が、形成される液滴への力を決定する。この典型値は1Paより高く、好ましくは10Paより高い。細孔の直径が0.8μmであるαアルミナの場合、30Paより高い値は必要でないことが分かっている(シュレーダー及びシューベルト、「Colloids and Surface A」、physicochemical and engineering aspects 152、1999年、p.103-109参照)。
【0051】
液滴を生成するために使用されるノズル又は細孔は、大抵、直径が実質的に均一であり、第2の流動体の例えば圧力などの流れのパラメータと、ノズル又は細孔を横切る第1の流動体の流速とは、好ましくは、第2の液体が第1の流動体中の実質的に単分散性の液滴として懸濁されることを、ノズル又は細孔の位置でのせん断応力が支援するように取り決められる。
【0052】
図1に例示される本発明の第1実施形態は、造影剤として直接的に使用可能な、あるいは造影剤が形成されることができる前駆体を作り出すために使用可能な、単分散性の液滴の懸濁液を作り出す装置を示している。細孔又はノズルを製造するため、非常に規則的な細孔アレイを、例えば半導体基板又はその他の任意の好適基板内に形成するように、基板の異方性ドライ又はウェットエッチングが使用され得る。ここで、半導体基板は例えば単結晶シリコンウェハ又はシリコン・オン・インシュレータ(SOI)ウェハ等であり、その他の好適基板は例えばプラスチック、ガラス、水晶、又は銅などの金属である。細孔を生成するためには異方性エッチングが使用可能であるが、例えばレーザパルスドリル加工を使用するなど、その他の如何なる好適技術によって形成されてもよい。他の例では、例えばインクジェット印刷ヘッド等の、商業的に入手可能な細孔アレイが使用され得る。図1の第1実施形態には、ウェハ表面側のRIEエッチング及びそれに続くウェハ裏面側のKOHエッチングによってSi中にエッチングされた懸濁用の細孔アレイが示されている(縮尺通りではない)。
【0053】
本発明の何れかの実施形態の細孔は、例えば単結晶シリコンウェハ、SOIウェハ、ガラス基板、アルミナ基板、又は金属基板である何らかの好適基板内で、好ましくは、液体/液体系のための0.5μmと5μmとの間の直径、10μmから20μmのピッチ、及び10μmから25μm超の深さを有する。より小さい細孔が用いられてもよく、例えば、核細孔膜(nucleopore membrane)が使用可能である。
【0054】
細い細孔は液体が通ることが可能なマイクロチャネルとして機能する。この液体は第2の流動体として参照される。この液体は裏面側から入り表面側から出て、そこで、第1の流動体と呼ぶ他の液体に流れ込む。第1の流動体は細孔を横切って、すなわち細孔の開口を横断する方向に流れる。そこで、液体又はその組み合わせに固有のせん断力特性により、存在する第2の流動体は高度に単分散性の液滴として懸濁される。この高度に単分散性の液滴は超音波撮像のための造影剤として直接的に使用されたり、あるいは効率的に変換されたりすることができる。これらの細孔アレイの寸法及び形状は、液滴の大きさを調整するために更に調整可能である。また、液滴の大きさ及び形状を更に調整するために細孔又は細孔の出口とその周辺の濡れ性(wetting property)を変化させるように、細孔アレイは完全に、あるいは局所的に被覆されてもよい。この被覆は図1及び2内に符号40を用いて示されている。
【0055】
加えて、本発明は、高度に単分散性の粒子、例えば制御された化学組成から成り且つガス封入されたシェルで構成されるカプセル、の懸濁液を生成する方法を提供するものである。これらは超音波の全く新しい応用のために、すなわち、分子撮像及び標的療法による早期疾患診断のために使用可能である。例えば十分な厚さと機械的強度とを有するシリコン等の基板にエッチングされた細孔群など、細孔アレイを用いることにより、単分散懸濁液を生成する微小デバイスが製造され得る。
【0056】
本発明は、例えば大きさ分布、シェルの機械的係数、及び生分解性などの物理的及び化学的特性が改善された造影剤を提供するものである。何故なら、貪食(phagocytosis)は大きさと表面特性に依存するからである。通常の造影剤としての使用はこれを要求するものではないが、本発明は、例えば単分散など狭い大きさ分布と特定のシェル弾性とを有する指定粒子を要求する分子撮像及び薬物放出を可能にする。
【0057】
高度に単分散性のエマルジョンは、例えばペルフルオロカーボン液が組み込まれる場合には造影剤として直接的に使用可能であり、あるいは、例えば高分子又はリン脂質のシェルを有する微小気泡又はマイクロバルーンを生成するように更に処理可能である。他の例では、このような細孔、ノズル又はマイクロチャネルは、例えばペルフルオロカーボンガスの、小さい気泡を作り出すために用いられてもよく、このような気泡がリン脂質含有溶液中を導かれる場合、例えば、ガス封入されたリポソーム又はマイクロバブルが生成され、これが超音波造影剤として直接的に使用され得る。これは、分子撮像及び標的療法により早期疾患診断における新たな選択肢を可能にする助けとなり得る。マイクロバブルを直接的に作り出すため、より小さい細孔サイズが必要とされてもよい。液体/液体系とは対照的に、収縮が起こる必要はなく、また液体/液体系とは対照的に、第2の流動体を第1の流動体内に強制的に注入するのに圧力を伴う問題が発生しない。直径200nmの細孔を有する核細孔膜はこれによく適している。
【0058】
本発明の一実施形態に従った規則的な注入細孔アレイ30を製造する方法は、例えばシリコン等の基板を使用し、その基板内に、特有な形状を伴う典型的に数ミクロンの直径の微細な細孔のアレイが形成される。特有の形状とは、例えば、円筒形、三角形、正方形、長方形、六角形などである。これらの形状は第2の液体のせん断を促進させることができる。従来からのSi(100)ウェハ内に数十ミクロンの深さまで、例えばRIEエッチング等の異方性エッチング技術が用いられ得る。その後、ウェハ裏面側のバルクのエッチングがウェットエッチング、例えばKOH等のエッチング液を用いる等方性エッチング、によって行われる。このとき、典型的なSiの(111)結晶面に沿う形状が自動的に第2の流動体(液体2)のための先細型の注入口となる。
【0059】
ウェハの裏面は更に、Siウェハの先細型注入口の開口に対応する巨視的な開口を有する堅牢な材料から成る支持体上に多孔性Siウェハを接合することによって機械的に補強されてもよい。
【0060】
上述のデバイスは、例えば、第2の流動体として生分解性高分子の溶液を用いて、形成されるマイクロバブルの前駆体を含有する単分散化されたエマルジョンの液滴を得るために使用可能である。この生分解性高分子は、例えば、ハロゲン化溶剤、エステル及びエーテル等の極性有機溶剤内の、ポリ-(乳酸)、ポリ-(グリコール酸)、ポリ-カプロラクトン、ポリ-(アルキル-シアノアクリレート)及びポリ-(アミノ酸)、並びにこれらの共重合体である。また、これらのハロゲン化溶剤、エステル及びエーテルには、エチレングリコール及びイソプロピル-アセテート、ジメチルホルムアミド及びNメチル-ピロリドン又はアセトン、ジクロロメタンが含まれる。この生分解性高分子の溶液に、例えばシクロオクタン及びドデカン等のアルカン並びにフッ素化液体などの、非極性の生分解性高分子の非溶剤が付加される。エマルジョンの形成後、非極性溶剤が連続相内でゆっくりと溶解し、エマルジョンの液滴の収縮と、極性溶剤周辺での生分解性高分子の相分離を生じさせる。必要に応じて、生分解性高分子のシェルを有する中が空洞のカプセルを生成する如何なる極性溶剤をも除去するために、凍結乾燥が用いられ得る。
【0061】
本発明の特定の一実施形態においては、形成されるマイクロバブルの前駆体を含有する単分散化されたエマルジョンの液滴は、ジクロロメタン及びドデカン内の乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)の溶液を用いて形成される。エマルジョンの形成後、例えばジクロロメタンである極性溶液は連続相でゆっくりと分解し、エマルジョンの液滴の収縮と、PGLA及びドデカンの相分離とを生じさせ、それにより、ドデカンで充填されたカプセルが得られる。凍結乾燥によりドデカンが除去され、PLGAシェルを有する中が空洞のカプセルが生成される。使用される高分子及び溶剤は変えられてもよい。
【0062】
図2に示される本発明の他の一実施形態は、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)60内に、表面側のSi部分のRIEエッチング及びそれに続く裏面側のガラス部分SiO2のHFエッチングによってエッチングされた懸濁用の細孔アレイを示している(縮尺通りではない)。この図においては、エッチングされたSOIウェハは更にフリットガラス70によって補強されている。
【0063】
第1実施形態にて説明された第1のRIEエッチング工程と同様に、同一の寸法及び断面形状を有する微細な細孔のアレイが所謂SOI基板内にエッチングされることができる。SF6/C4F8化学反応を伴う所謂ボッシュ(Bosch)プロセスを用いると、RIEプロセスはSi-SiO2界面に到達したときに選択停止することになる。細孔アレイの下方のSiO2は、液体2が微細な細孔アレイに入り込むことを可能にする大きい開口が作り出されるように、例えばHF内でエッチングされることができる。望まれるのであれば、SOIウェハ全体は、液体2に対して透過性の例えばフリットガラスの支持体などの更なる機械的補強用の支持体に接合されてもよい。この接合は熱圧縮、又は他の何らかの好適な技術によって行われ得る。
【0064】
上述のデバイスは、上述のように更に処理され得る単分散エマルジョンの液滴を生成するために使用可能である。流れの向きが妨げられないように向けられた調節板(バッフル)を頂部側に付加することによって、基板の更なる補強が実現され得る。
【0065】
上述のように作成された洗練された超音波造影剤は、微細な血管についても優れた画像を得ることを可能にする。さらに、本発明により、超音波撮像、特に標的超音波療法における応用が、治療、特に標的を定めた局所療法における応用と同様に提供される。どちらの応用も洗練された粒子を利用できることを当てにするものである。標的超音波撮像の一例として、本発明は、深刻な心臓血管疾患において重大な役割を果たす損傷を受けやすい血管内の動脈プラークのような如何なる具体的な病状においても利用可能である。超音波により補助される局所薬物送達は、ここで提案される粒子製造方法によって可能にされる第2の、しかも非常に重要な応用である。この実施形態によれば、本発明に従って作成されるマイクロバブルには薬物が搭載される。この薬物は、例えば、第2の液体に加えられ得る凍結乾燥によって除去されないパラフィン又は天然油などの油相に溶解されることができる。関連する薬物は、例えば、パクリタキセル及びデオキシルビシンのような抗癌剤である。これらは患者に導入され、体内の所望箇所で超音波破砕によってカプセルが開かれる。化学療法薬剤の局所放出により、これら高度に有害な化学薬品による望ましくない副作用の発生が大いに最小化され得る。
【0066】
第3実施形態は、例えば“油”相などの疎水性相が、例えば“水性”連続相などの親水性連続相に滴ごとに付加され、これら全ての滴が同等の大きさ及びシェル特性を有する乳化法を用いて調合され得る、狭い大きさ分布を有する造影剤を形成するための後処理に関する。続いて、“油相”からの選択的な溶剤除去によって単分散造影剤が調合される。好適な技術は上述のように、例えば、インクジェット印刷法、マイクロチャネル乳化法、シラスポーラスガラスによる濾過、及び例えばシリコンにエッチングされたふるい等のマイクロシーブ(微細なふるい)による濾過である。
【0067】
この実施形態の注目すべき特徴は、液滴を例えば疎水性相として、これを例えば水性相などの親水性相である他の相に強制的に注入することによって、全ての液滴を同一の大きさ、且つ造影剤の前駆物質を含有する同一の組成にする乳化技術が使用されることである。更なる利点は、第2の液体の液滴内に最初に存在する全ての物質が最終的に1つの粒子となるので、粒子の組成が制御されることである。適切に処理することにより、液滴は液体の中心を有するカプセルに変形され、その後、この液体が除去されることにより、選択されたガスを封入され得る中が空洞のカプセルが生成される。エマルジョンの液滴の各々が単一のカプセルに変えられ、且つエマルジョン液滴は同一の大きさから始まるので、形成されるカプセルは狭い大きさ分布、同一のシェル厚さ及びシェル特性を有する。これら大きさ分布、シェル厚さ及びシェル特性は音響挙動を決定するものである。
【0068】
このような単分散性のエマルジョンの液滴を実現するための技術は、例えば液浸インクジェット法、マイクロチャネル乳化法、SPG(シラスポーラスガラス)膜乳化法、及びマイクロシーブによる濾過などの上述の方法の何れかを含む。この滴ごとの方法は特定の大きさ、シェル厚さ及び組成を有する粒子の調合を可能にし、それにより均一な音響挙動を示す超音波造影剤が得られる。
【0069】
図3は、第3実施形態の一例を概略的に示している。生産流動体102すなわち第2の流動体が、全て同一の大きさの、超音波造影剤に所望される寸法の粒子を最終的に生成するのに適した液滴にて、受入流動体101すなわち第1の流動体に持ち込まれる。好適な大きさは直径で約4μmであり、例えば、10μmより小さく1μmより大きいことが好ましい。この図は、エマルジョンの液滴に対する更なる処理工程であるシェル形成工程110を示している。例えば、溶剤が除去された後、例えば相を液体から気体に変えることによって、核120が変更される。最終的に、例えば中が空洞のカプセルであるカプセルが出力される。生産流動体102の容器と受入流動体101の容器との間の界面100は、例えばインクジェットノズル、シラスポーラスガラス膜、微小孔性アルミナ、マイクロチャネル構造、又はマイクロシーブ等の、何らかの好適なノズル又は細孔を含んでいる。どの場合においても、適切に制御された大きさを有するエマルジョンの液滴を実現するためには、第2の流動体の流れが制御される必要がある。故に、本発明は第2の流動体の流れのパラメータ、例えば圧力、の制御を含んでいる。
【0070】
手順の一例を以下に示す:
0.1%のPLGA及び0.3%シクロオクタン(cOct)を含むジクロロエタン溶液を用意し、0.1%のPVA40/88溶液に50μmのノズルを用いて14kHzの周波数でインクジェット注入した。ジクロロエタンを蒸発させ、シクロオクタンで事前に飽和された水で試料を洗浄した後、凍結乾燥した。光学顕微鏡写真の画像解析を用いて定量化したところ、形成されたカプセルの直径は11.2μmであり1.6μmの標準偏差を有していた。大きさ分布を図4に示す。比較のため、シクロオクタンなしで同一レシピに従って調合された固体のPLGA粒子の大きさ分布も示している。SEM写真から推定するに、カプセルは滑らかな表面を有し、単一の空洞を含んでいた。
【0071】
小さい高分子球を生成する他の一手法は、SPG膜を用いることである。これは同様の物質から成る高分子球を生成するために使用されてきた(Kaminski等、5th Int. Conference on the Scientific and Clinical Applications of Magnetic Carriers、2004年5月(仏国)を参照)。これは選択された物質との親和性を実証したものである。SPG膜はまた、例えば4μm程度の大きさの生分解性ではない高分子から成るカプセルを用意するためにも使用されており(LY Chu等、J. Colloid Interface Science、2003年、第265号、p.187-196を参照)、この文献中の図6により、達成可能な大きさ分布の影響が示されている。
【0072】
図5は、本発明の一実施形態に従った粒子を生成する装置を概略的に示している。例えば液体である第2の流動体の流体源が参照符号1を用いて示されている。流体源1内の液体は重力によって、あるいはポンプ(図示せず)によってヘッド3に導かれる。ヘッド3はノズル又は細孔8を有しており、容器9内に位置付けられている。本発明は、各ノズル又はノズル群8が第2の流動体の流体源を別個に有すること、及び各ノズル又はノズル群が別個に制御されることを含む。他の例では、全てのノズルが単一の流体源から供給され、且つ単一の制御器によって制御されてもよい。第2の流動体の流れのパラメータは制御器2によって制御される。制御器2は圧力調整器であってもよい。また、制御器2は開ループ制御器であってもよいし、第2の流動体のループ内の圧力センサー(図示せず)から入力を受け取り、例えばポンプ又は弁を制御してヘッド3への第2の流動体を正しい圧力/流れに調節することによって、第2の流動体の流れを制御する閉ループ制御器であってもよい。第1の流動体は流体源5内に設けられ、重力又はポンプ(図示せず)によってチャンバー9にある別の入力に導かれる。本発明の一部の実施形態においては、第1の流動体の供給により、ノズル8の前端部を横切る第1の流動体の流れが生成される。第1の流動体の流れは制御器6によって制御される。制御器6は開ループ制御器であってもよいし、第1の流動体のループ内の流量センサー(図示せず)から入力を受け取り、例えばポンプ又は弁を制御して容器9への第1の流動体を正しい圧力/流れに調節することによって、第1の流動体の流れを制御する閉ループ制御器であってもよい。粒子はチャンバー7にて収集される。例えば、過大な粒子を阻止する大型のふるいS1、及び/又は過小な粒子をシステムから流し出すことを可能にする小型のふるいS2によって、更なる定寸化が行われてもよい。ふるいS1及びS2に代えて、粒子密度に基づく他の如何なる分別法が用いられてもよい。これはサテライトを除去するために使用され得る。分別の他の一手法は、浮体の速度は粒子の大きさに依存するという事実を利用するものである。
【0073】
必要に応じて、連続相を可能にする、すなわち、第1の流動体が1つ以上の多孔性表面を通ることを可能にするバイパス12が設けられ得る。その流れは一方向流通装置16と、制御器6によって制御されてもよいし別個に制御されてもよい弁14とによって制御されてもよい。斯くして、第1の流動体が薄膜を過ぎ去る通行数は独立して変更され得るので、第1の流動体はより多くのエマルジョンの液滴を収集することができる。
【0074】
ノズル8は本発明の実施形態にて上述されたノズルの何れともし得る。ノズル群又は細孔群は実質的に均一な直径を有し、制御器は、ノズル群又は細孔群の位置でのせん断力が第2の流動体を実質的に単分散性の粒子として第1の流動体内に懸濁させるように、第2の流動体の流れのパラメータと、ノズル群又は細孔群を横切る第1の流動体の流速とを制御する。
【0075】
第2の流動体のノズル群への流れは、液滴を生成するための機械的又は電気機械的なパルスによって決定されてもよい。パルスは独立した液滴を生成するのに十分である必要はない。ノズルの開口を通らされる第1の流動体の流れのため、より小さいパルスによって凸のメニスカスを形成している第2の液体は、仮に第1の流動体の流れが存在しないとしたときに液滴が離脱するのに十分な大きさまでメニスカスが到達していない時点に、第1の流動体の流れによって引き出されることができる。本発明はまた、液滴を生成するために第2の流動体を連続的な流れに制御することを含む。この場合、ノズルの開口を通らされる第1の流動体の流れのため、連続的な流れによって凸のメニスカスを形成している第2の液体は、仮に第1の流動体の流れが存在しないとしたときに液滴が離脱するのに十分な大きさまでメニスカスが到達していない時点に、第1の流動体の流れによって引き出されることができる。
【0076】
この装置はカプセルを生成するために使用されてもよいし、物質の核を生成し、例えば図5に示されるような更なる付属機器を含んでいてもよい。付属機器とは、すなわち、図3を参照して説明されたような、核の周りにシェルを形成する手段、核を変更する手段、及びカプセルを出力する手段などである。
【0077】
この粒子の用途には超音波造影剤、特に標的超音波造影剤が含まれる。様々な超音波応用が、本発明に従って洗練された大きさ分布と一貫したシェル特性とを有する造影剤の有する良好な音響特性により、恩恵を被ることができる。単分散性の超音波造影剤は多くの利点を有する。高調波のピークが多分散性の造影剤と比較して明確となるので、組織(tissue)とのコントラスト比が改善される。明確に異なる大きさを有する2つの単分散性造影剤の混合物が使用される場合、この利点は更に引き出され、2つの高調波ピークの存在により、造影剤を見ていることが明らかになる。超音波のコントラストを用いる圧力測定の性能が実現可能なものとなり、気泡の共鳴周波数はMinnaert周波数により良い近似で与えられる。共振周波数(rad/s)は次式で与えられる:
【0078】
【数1】


但し、pは圧力、Rは気泡の半径、ρは流動体の密度である。断熱的である場合、分子の3は、気体のポリトロープ指数γ(例えば、空気に対して1.4)を用いて、3γで置き換えられなければならない。大気条件、水中で半径2μmの空気の泡の場合、ω0=8.7×106rad/sであり、これは1.37MHzに相当する。
【0079】
大きさの異なる2つの混合体を再び用いると、圧力測定の品質が向上される。
【0080】
標的造影剤において、密な大きさ分布は、付着した造影剤と付着していない造影剤との識別を可能にする。広い大きさ分布を有する造影剤の場合について、このことが非特許文献1に示されている。彼らはαvβ3インテグリンを標的とした造影剤の蓄積を研究しており、付着した造影剤ではエコースペクトルが低周波数側にシフトすることを観測している。Dayton等により観測された方向へのシフトはScottによる文献(「Singular perturbation theory applied to the collective oscillation of gas bubbles in a liquid」、J. Fluid Mech.、1981年、第113号、p.487-511)によって予測されている。この理論はポテンシャル流の計算に基づくものであるが、より小さい気泡に対してもある程度十分に外挿され得る。壁に近い場合の、あるいは等しい大きさにされた2つの気泡について同様な場合の、共振周波数の低下を記述する関数が開示されている。気泡が壁に接触するとき、0.83ω0の共振周波数が求められている。高い表面被覆率では更なる低下が予期され、Duineveld(J. Acoust. Soc. Am.、1996年、第99号、p.622-624)により、2つの等しい大きさの気泡の共鳴周波数の低下の効果が実験的に示されている。単分散性の標的造影剤が使用される場合、束縛された造影剤と束縛されていない造影剤との識別は、Dayton等による結果と比較して遙かに明白になると期待される。単分散性造影剤の使用は、このシフトがより定量的に研究されることを可能にし、臨床に関連する情報を抽出することを潜在的に可能にする。この場合も、例えばVEGF及びαvβ3インテグリンといった異なる指標を標的として、際だって異なる大きさの混合物が用いられ得る。
【0081】
薬物送達では、ここで提案された前処理方法を用いた大きさ分布のより良い制御は、組み込まれる薬物量も良好に制御されるという利点を有する。故に、薬物放出も定量化されることが可能である。造影剤の均一なシェル特性を用いることにより、キャビテーションによる放出も、多分散性の試料を用いる場合より良好に制御される。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1実施形態に従った装置を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に従った装置を示す図である。
【図3】本発明の他の一実施形態を概略的に示す図である。
【図4】所与の直径である粒子の割合を示すグラフである。
【図5】本発明の一実施形態に従ったシステムを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の流動体に1つ以上のノズル又は細孔を通して第2の流動体を強制的に注入することによって、第1の流動体内に分散を生成する方法であって、分散中の粒子は超音波又はその他の診断ツールに応答するのに適した大きさを有し、前記ノズル又は細孔は実質的に均一な直径を有し、第2の流動体が第1の流動体内に実質的に単分散性の液滴として懸濁されるように、第2の流動体の例えば圧力などの流れのパラメータが制御される、方法。
【請求項2】
前記1つ以上のノズル又は細孔の位置でのせん断力が分散の生成を支援するように、第1の流動体は前記1つ以上のノズル又は細孔を横切って流される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液滴を形成する工程は、液浸インクジェット印刷ヘッドを用いること、マイクロチャネル乳化法、シラスポーラスガラスを通した濾過、及びマイクロシーブを通した濾過から選択される1つ以上の工程を用いる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ノズル又は細孔のアレイはエッチングされたシリコン基板内にある、請求項1乃至3の何れかに記載の方法。
【請求項5】
前記ノズル又は細孔は第1の流動体の流れに垂直でない角度に向けられている、請求項2乃至4の何れかに記載の方法。
【請求項6】
前記ノズル又は細孔は濡れ性を変化させる被覆を有する、請求項1乃至5の何れかに記載の方法。
【請求項7】
分散は画像診断に適した造影剤を含む、請求項1乃至6の何れかに記載の方法。
【請求項8】
前記液滴は高分子又はリン脂質を含む、請求項1乃至7の何れかに記載の方法。
【請求項9】
前記ノズル又は細孔のアレイは第1の基板内にあり、且つ第1の基板とは異なる材料から成る第2の基板に支持されている、請求項1乃至8の何れかに記載の方法。
【請求項10】
超音波に応答するのに適した大きさのカプセルを作り出すための請求項1乃至9の何れかに記載の方法であって:
前駆物質から成る実質的に単分散性の液滴を作り出す工程、
該液滴を核とシェルとを有するカプセル内に形成する工程、及びその後、前記核を変更する工程、
を更に有する方法。
【請求項11】
前記液滴をガス封入されたシェルに変化させる工程を更に有する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記核を変更する工程は前記核を気体に変化させることを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記液滴は疎水性相にあり且つ溶剤を含み、前記核を変更する工程は前記液滴からの選択的溶剤除去を有する、請求項10乃至12の何れかに記載の方法。
【請求項14】
前記液滴は極性溶剤中の生分解性高分子と追加量の非極性溶剤とから成る溶液を有する、請求項10乃至13の何れかに記載の方法。
【請求項15】
前記極性溶剤を溶解又は除去する工程を有する請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記生分解性高分子から成るシェル及び前記非極性溶剤から成る核が得られる、生分解性高分子と非極性溶剤との相分離工程を有する請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記非極性溶剤を除去する凍結乾燥工程を有する請求項14乃至16の何れかに記載の方法。
【請求項18】
前記カプセルは20μm未満の平均直径と、平均直径の15%未満の標準偏差とを有する、請求項10乃至17の何れかに記載の方法。
【請求項19】
前記カプセルは6μm未満の平均直径と、平均直径の15%未満の標準偏差とを有する、請求項10乃至17の何れかに記載の方法。
【請求項20】
第1の流動体内に分散を生成する装置であって、分散の粒子は超音波又はその他の診断ツールに応答するのに適した大きさであり、当該装置は:
実質的に均一な直径を有するノズル又は細孔のアレイを通して第1の流動体に第2の流動体を強制的に注入する手段、及び、第2の流動体が第1の流動体内に実質的に単分散性の液滴として懸濁されるように、第2の流動体の流れのパラメータを制御する第1の制御手段、
を有する装置。
【請求項21】
前記ノズル又は細孔の位置でのせん断力が、第2の流動体が第1の流動体内に実質的に単分散性の液滴として懸濁されることを支援するように、前記ノズル又は細孔を横切る第1の流動体の流速を制御する第2の制御手段を更に有する請求項20に記載の装置。
【請求項22】
超音波に応答するのに適した大きさのカプセルを前駆物質の単分散性の液滴から作り出すための請求項20又は21に記載の装置であって:
該液滴を核とシェルとを有するカプセル内に形成する手段、及び
前記核を変更する手段、
を更に有する装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−517997(P2008−517997A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538574(P2007−538574)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【国際出願番号】PCT/IB2005/053486
【国際公開番号】WO2006/046200
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】