説明

超音波撮像システム、超音波探触子、及び電力消費の低減方法

【課題】超音波探触子の温度を制御する改良型の超音波探触子及びその制御方法を提供すること。
【解決手段】超音波探触子(105)及び超音波撮像システム(100)は、トランスジューサアレイ(104)及びモーションセンサ(107)を含む。モーションセンサ(107)は超音波探触子(105)の運動を検出するように適応させている。超音波探触子(105)及び超音波撮像システム(100)はさらに、モーションセンサ(107)に接続されている、ある時間期間にわたってモーションセンサ(107)によって運動が検出されないことに応答して超音波探触子(105)の電力消費を低減するように構成されたプロセッサ(109)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は全般的には超音波探触子、超音波撮像システム、及び超音波探触子の電力消費の低減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医用超音波撮像の分野では、超音波エネルギーを患者内に送出すると共に、患者から反射された超音波エネルギーを検出するためにトランスジューサアレイを用いるのが典型的である。超音波探触子は典型的には、超音波エネルギーの効率のよい送信及び受信のための良好な音響結合及び患者上への配置を保証するように超音波ジェルでコーティングされる。反射された超音波のエネルギー及びタイミングに基づいて、患者内部の領域に関する詳細な情報を決定することが可能である。この情報を用いて、画像及び/または血流の方向や流速などの定量的データを作成することができる。
【0003】
超音波探触子内部のトランスジューサアレイは典型的には、多数のトランスジューサ素子を含んでおり、このトランスジューサ素子は素子両端への電圧印加に応答して形状が変化する。トランスジューサ素子は、PZTなどある種の圧電材料とするのが典型的である。トランスジューサ素子両端の電圧に対する高速の切替え並びに素子の発射のタイミング調整によって、指定の周波数の超音波ビームを発生させることができる。能動的な走査(すなわち、超音波エネルギーの送信及び受信)の際に超音波探触子は、様々な発生元から熱を生成するのが典型的である。先ず、圧電素子の機械的な動きが熱を発生させ、また次に超音波探触子内部の電子回路もまた熱を発生させる傾向がある。超音波探触子は患者から超音波ジェルの薄い層だけしか隔てられていないため、超音波探触子内部からのこうした熱はすべて患者に伝導性に転送されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願第20050193820号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
患者及び臨床医の快適性や安全性に関する懸念のために、超音波探触子の温度が過度に高いことは望ましくない。大部分の国では、規制当局によって超音波探触子の許容温度に関して厳しいガイドラインが設定されている。高温過ぎる超音波探触子に触れると患者及び/または臨床医は不快となったり、また危険となる可能性もある。特に2Dアレイ探触子など超音波探触子の新たな設計は、追加の素子及びチャンネルを有しており、このため従来の超音波探触子設計と比べてさらに多くの熱を発生させる。
【0006】
これらの理由や別の理由から、超音波探触子の温度を制御する改良型の超音波探触子及びその制御方法に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書では上述の短所、欠点及び問題点に対して、明細書の以下を読みかつ了解することによって理解されるようにして対処している。
【0008】
一実施形態による超音波撮像システムは、トランスジューサアレイ及びモーションセンサを含んだ超音波探触子を含む。このモーションセンサは、超音波探触子の運動を検出するように適応させている。本超音波撮像システムはさらに、モーションセンサに接続されたプロセッサを含む。このプロセッサは、ある時間期間にわたってモーションセンサによって運動が検出されないことに応答して超音波探触子の電力消費を低減するように構成されている。
【0009】
別の実施形態による超音波探触子は、探触子ハウジングと、探触子ハウジング内に配置させたトランスジューサアレイと、探触子ハウジング内に配置させたモーションセンサと、探触子ハウジング内に配置させたプロセッサと、を含む。このモーションセンサは超音波探触子の運動を検出するように適応させており、かつこのプロセッサはある時間期間にわたってモーションセンサによって運動が検出されないことに応答して超音波探触子の電力消費を低減するように構成されている。
【0010】
別の実施形態による超音波探触子を制御する方法は、超音波探触子に取り付けられたモーションセンサからある時間期間にわたって超音波探触子が無運動を継続中であることを示すデータを受け取り、このデータの受け取りに応答して超音波探触子の電力消費を低減するステップを含む。
【0011】
本発明に関する様々な別の特徴、目的及び利点については添付の図面及びその詳細な説明から当業者には明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態による超音波撮像システムの概要図である。
【図2】一実施形態による超音波探触子を表した概要図である。
【図3】一実施形態による超音波探触子を表した概要図である。
【図4】一実施形態による方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の詳細な説明では、実施し得る特定の実施形態を一例として示している説明の一部を形成する添付の図面を参照している。これらの実施形態については当業者による該実施形態の実施を可能とさせるように十分詳細に説明していると共に、別の実施形態も利用し得ること並びに該実施形態の趣旨を逸脱することなく論理的、機械的、電気的及び別の変更を実施し得ることを理解されたい。以下の詳細な説明はしたがって、本発明の範囲の限定と見なすべきではない。
【0014】
図1は、一実施形態による超音波撮像システム100の概要図である。超音波撮像システム100は、送信ビーム形成器103に信号を送る送信器102を含んでおり、この送信ビーム形成器は一方、患者(図示せず)などの構造内にパルス状の超音波信号を放出するためにトランスジューサアレイ104の内部でトランスジューサ素子(図示せず)を駆動している。超音波探触子105は、トランスジューサアレイ104、トランスジューサ素子、モーションセンサ107及びプロセッサ109を含む。プロセッサ109は例えば、中央処理ユニット、マイクロプロセッサ、ディジタル信号プロセッサ、または論理命令に従うように適応させた別の任意の電気構成要素とすることがある。2Dアレイ、リニアアレイ、湾曲リニアアレイ、コンベックス型アレイを含めトランスジューサアレイについて多種多様な幾何学構成を用いることができる。パルス状の超音波信号は血球や筋肉組織などの身体内の構造で後方散乱され、トランスジューサアレイ104に戻されるエコーを発生させる。このエコーはトランスジューサアレイ104内のトランスジューサ素子によって電気信号または超音波データになるように変換されると共に、この電気信号は受信器108により受け取られる。本開示の目的において超音波データという用語は、超音波撮像システムによって収集及び/または処理されるデータを含むことがある。受信したエコーを表す電気信号は、超音波データを出力する受信ビーム形成器110内を通過させる。患者データの入力の制御、走査パラメータや表示パラメータの変更その他を含む超音波撮像システム100の動作を制御するために、ユーザインタフェース115が使用されることがある。
【0015】
超音波撮像システム100はさらに、超音波データを処理し、表示デバイス118上に表示するためのフレームまたは画像を作成するためにプロセッサ116を含む。プロセッサ116は、超音波データに関する選択可能な複数の超音波モダリティに従って1つまたは複数の処理操作を実行するように適応させることがある。プロセッサ116はさらに、超音波探触子105による超音波データの収集を制御するように適応させることがある。この超音波データはエコー信号を受信しながら走査セッション中にリアルタイムで処理されることがある。本開示の目的において「リアルタイム」という用語は意図的なラグや遅延を伴うことなく実行される過程を含むものと規定する。一実施形態は、表示させる超音波画像を毎秒20回を超える速度で更新することがある。画像は、ライブ画像の一部として表示させることがある。本開示の目的において「ライブ画像」という語は、超音波データの追加のフレームを収集しながら更新されるようなダイナミック画像を含むように規定している。例えば、以前の収集データに基づいて画像を作成する一方でライブ画像を表示させている際であっても超音波データが収集されることがある。次いで、一実施形態では、追加の超音波データが収集されるに連れて、直近に収集した超音波データから作成した追加のフレームまたは画像が引き続いて表示されている。追加としてまたは代替としてこの超音波データは、走査セッションの間にバッファ(図示せず)内に一時的に保存され、ライブ動作またはオフライン動作でリアルタイム性がより低い処理を受けることがある。本発明の幾つかの実施形態は処理タスクを取り扱うために複数のプロセッサ(図示せず)を含むことがある。例えば第1のプロセッサが超音波信号の復調及びデシメーション(decimate)のために利用されることがある一方、第2のプロセッサはそのデータを画像の表示前にさらに処理するために使用されることがある。
【0016】
さらに図1を参照すると超音波撮像システム100は、例えば20Hz〜150Hzなどのフレームレートで超音波データを連続して収集することがある。しかし別の実施形態は、異なるレートで超音波データを収集することがある。直ちに表示させる予定がない収集超音波データの処理済みフレームを保存するためにメモリ120を含めている。例示的な一実施形態ではそのメモリ120は、少なくとも数秒間分の超音波データフレームを保存するのに十分な容量をもつ。この超音波データフレームは、その収集順序や収集時刻に従ったその取り出しを容易にするような方式で保存される。本明細書の上で記載したように、この超音波データはライブ画像の作成及び表示の間に取り出されることがある。メモリ120は、周知の任意のデータ記憶媒体を含むことがある。
【0017】
任意選択では、本発明の実施形態をコントラスト剤を利用して実現させることがある。コントラスト撮像によれば、マイクロバブルを含む超音波コントラスト剤を用いた場合に身体内の解剖学構造や血流に関する強調画像が作成される。コントラスト剤を用いながら超音波データを収集した後の画像解析には、高調波成分と線形成分の分離、高調波成分の強調、並びに高調波成分の強調を利用した超音波画像の作成が含まれる。受信信号からの高調波成分の分離は適当なフィルタを用いて実行される。超音波撮像に関するコントラスト剤の利用については当業者によく知られており、したがってこれ以上詳細に記載しないことにする。
【0018】
本発明の様々な実施形態では、別のまたは様々なモード関連のモジュール(例えば、Bモード、カラードプラ、パワードプラ、Mモード、スペクトルドプラ、解剖学的Mモード、歪み、歪み率、その他)によって超音波データを処理し、画像フレームその他からなる2Dや3Dのデータ組を形成することがある。例えば1つまたは複数のモジュールは、Bモード、カラードプラ、パワードプラ、Mモード、解剖学的Mモード、歪み、歪み率、スペクトルドプラの画像フレーム、及びこれらを組み合わせたもの、その他を作成することがある。この画像フレームは保存されると共に、画像フレームをメモリ内に収集した時点を示すタイミング情報が各画像フレームと一緒に記録されることがある。このモジュールは例えば、画像フレームを極座標からデカルト座標に変換するための走査変換演算を実行するための走査変換モジュールを含むことがある。患者に対して手技を実施しながらメモリから画像フレームを読み取りその画像フレームをリアルタイムで表示するようなビデオプロセッサモジュールを設けることがある。ビデオプロセッサモジュールはこの画像フレームを、そこから画像を読み出し表示させる画像メモリ内に保存することがある。超音波撮像システム100は、コンソール型システム、カート式システム、または可搬型システム(ハンドへルド式やラップトップ式のシステムなど)として構成されることがある。
【0019】
図2は、一実施形態による超音波探触子150を表した概要図である。超音波探触子150は、図1に示した超音波撮像システム100などの超音波撮像システム内で超音波探触子105の代わりに用いられることがある。超音波探触子150は探触子ハウジング152を含む。探触子ハウジング152は一実施形態ではプラスチック製とすることがあり、また臨床医による人間工学的な利用を可能にするような形状とすることがある。例えば探触子ハウジング152を、臨床医の親指と人差し指の間でしっくりと保持されるような形状とすることがある。探触子ハウジング152に対してコード154が取り付けられており、これを用いて超音波探触子150と超音波撮像システムの残りの部分との間でデータが転送される。一実施形態ではその超音波探触子150は、複数のトランスジューサ素子158を含んだトランスジューサアレイ156を含む。上に記載したようにトランスジューサ素子158は、患者内部にある構造に関する画像の形成及び/またはデータの収集のために超音波エネルギーを送信及び受信するように構成されている。超音波探触子150はさらに、送信電子回路160、受信電子回路162及びプロセッサ164を含む。
【0020】
送信電子回路160は、超音波エネルギーの送信時に用いられる1つまたは複数の電気構成要素を含むことがある。例えば送信電子回路160は、高電圧源、波形生成器、時間遅延線素子及び後置増幅器素子のうちの1つまたは幾つかを含むことがある。超音波ビームを患者内に能動的に送るために、送信電子回路160を非ゼロ電圧にバイアスすることを必要とすることがある。受信電子回路162は、前置増幅器素子、時間遅延線素子及び信号加算ユニットのうちの1つまたは幾つかを含むことがある。反射した超音波を能動的に受け取るために、受信電子回路162を非ゼロ電圧にバイアスすることを必要とすることがある。
【0021】
超音波探触子150はさらにモーションセンサ166を含む。例示的な一実施形態ではそのモーションセンサ166は、加速度の検出が可能な加速度計を含むことがある。例えばモーションセンサ166は、3つの加速度計を互いに直交するように装着した3軸加速度計とすることがある。これにより3軸加速度計は、加速度の任意の方向の成分を検出するように適応している。別の実施形態では別のタイプのモーションセンサを使用し得ることは当業者であれば理解されよう。例えば実施形態によっては、モーションセンサとしてジャイロスコープセンサを用いることがある。ジンバル式のジャイロスコープは、周囲の物体(また一実施形態では、超音波探触子)の位置に関わらずスピンを同じ向きに維持する傾向がある。したがってスピンするジャイロスコープを基準とした変位を計測することによって、超音波探触子が動いているのか静止しているのかを判定することが可能である。スピンしている間にジャイロスコープは歳差運動する傾向があることを理解されたい。この歳差運動は、ジャイロスコープセンサからのデータを解釈する際に考慮に入れることが必要となることがある。別の実施形態では、別のタイプのモーションセンサが用いられることもある。例えば、静磁場に対するセンサの位置を検出するように構成された電磁式センサが用いられることがある。光学式センサを用いたものを含む別のタイプのモーションセンサが用いられることもある。
【0022】
モーションセンサ107は、一実施形態ではプロセッサ109に接続されている。プロセッサ109はモーションセンサ107からデータを受け取ると共に、このデータに基づいて超音波探触子105が運動状態にあることまた超音波探触子105が運動状態にないことを判定する。別の実施形態ではモーションセンサに接続させたプロセッサを超音波探触子の外部に位置決めすることがある。例えばモーションセンサを、超音波探触子105の外部に配置させたプロセッサ116などのプロセッサに接続させることがある。一実施形態ではそのプロセッサ116が超音波撮像システムのコンソール内部にあることがある。したがって別の実施形態では、超音波探触子105の外部に配置させたプロセッサ116や別のプロセッサは、モーションセンサからデータを受け取ると共に、そのデータが超音波探触子105が動いていないことを示す場合に超音波探触子の起動停止を制御することが可能である。超音波探触子の起動停止については本明細書の以下でより詳細に説明することにする。
【0023】
図3は、一実施形態による超音波探触子170を表した概要図である。超音波探触子170は、多くの構成要素が超音波探触子150(図2参照)と共通である。簡略とするために、実質的に同じ構成要素を特定するために図2と図3の間で共通の参照番号を用いることにする。超音波探触子170はさらに、ワイヤレス送信器172、ワイヤレス受信器174及び電池176を含む。幾つかの実施形態では、ワイヤレス送信器172及びワイヤレス受信器174を単一のワイヤレス送信器/受信器(図示せず)によって置き換えることがある。図3では、ワイヤレス送信器172、ワイヤレス受信器174及び電池176がすべてプロセッサ164に接続されるように表している。しかし別の実施形態では、これらの構成要素を別の方式で接続することがある。例えば送信電子回路160をトランスジューサアレイ156に直接接続させることがあり、また受信電子回路162をワイヤレス送信器172に直接接続させることがある。
【0024】
図4は、一実施形態による方法200の流れ図である。個々のブロックは、方法200に従って実行し得る各ステップを表している。方法200の技術的効果は、モーションセンサからの無運動の期間を示すデータの受け取りに応答して超音波探触子が起動停止されることである。
【0025】
図1及び4を参照すると、ステップ202においてプロセッサ109がモーションセンサ107からデータを受け取る。モーションセンサ107は、プロセッサ109に対して一定間隔でデータをプッシュすることがあり、またモーションセンサ107はリアルタイムで連続してデータを送ることがある。ステップ204においてプロセッサ109は、そのデータが超音波探触子105が運動状態にあることを示すか否かを判定する。典型的には使用時に超音波探触子105は概ね一定の運動状態にある。モーションセンサ107は、臨床医が超音波探触子105を静止状態に保持しようとしているときであっても生じるような小さな移動さえも検出するように十分な感度をもつ。例えばモーションセンサ107からのデータが超音波探触子105が運動状態にあることを示した場合、本方法はステップ202に戻って追加のデータを受け取る。しかしモーションセンサ107からのデータが超音波探触子105が運動を受けていないことを示した場合、方法200はステップ206に進む。
【0026】
ステップ206においてプロセッサ109は、超音波探触子105が無運動状態にある時間期間が所定の時間期間を超えるか否かを判定する。例えば一実施形態では、その所定の時間期間を2秒間とすることがある。プロセッサ109によって超音波探触子105が2秒を超えて無運動状態を継続していると判定されると、方法200はステップ208に進む。別の実施形態では2秒以外の所定時間期間を用いることがある。別の実施形態ではその時間期間をユーザ構成可能とさせることができる。換言するとユーザまたは臨床医に対して、最も適当な所定の時間期間を選択可能とさせることがある。さらに幾つかの実施形態は、ステップ204及び206の処置を1つのステップに合成させることがある。例えばプロセッサ109は、超音波探触子105が無運動状態を継続する時間期間が所定の時間期間を超える場合にだけ本方法を前進可能とさせることがある。
【0027】
次にステップ208において、プロセッサ109は超音波探触子105を起動停止させる。一実施形態ではプロセッサ109は、超音波探触子105の電力消費を低減することによって超音波探触子105を起動停止させることがある。超音波探触子105の電力消費を低減することは、超音波探触子105の外部温度の低下に役立つため有益である。これによれば、超音波探触子105を安全な動作限界内に保つことが容易となる。さらに図3に示した超音波探触子170など超音波探触子がワイヤレス式であるような実施形態では、超音波探触子が静止しており使用中でないときに電力消費を低減することが電池176のパワーの節約に役立つ。超音波探触子105の起動停止のための様々な方法に関する追加の情報について、本明細書の以下で詳細に説明することにする。
【0028】
一実施形態ではプロセッサ109は、ステップ206及び208の間にモーションセンサ107からのデータ受け取りを継続する。しかし超音波探触子105が動くと、ステップ210においてプロセッサ109はモーションセンサ107から超音波探触子105が運動状態に戻ったことを示すデータを受け取ることになる。次いでステップ212においてプロセッサは、臨床医が超音波データを再度収集できるように超音波探触子105を再起動させる。
【0029】
上に記載したようにプロセッサ109はステップ208において超音波探触子を起動停止させることがある。ステップ208において超音波探触子を起動停止するためには異なる多くの方式が存在する。一実施形態では、起動停止の過程には、連続して実行される複数のステップを含むことがある。例えば起動停止の最初の段階は、超音波データを収集するフレームレートの低減を含むことがある。超音波データのフレームレート低減によってパワーが節約されることになる一方、モーションセンサ107によって移動が検出された場合の超音波探触子105の極めて迅速な再起動が可能になる。次に、さらに運動が無い時間があった後にプロセッサ109は、送信電子回路160(図2参照)に対する電圧を低下させるまたは電圧を与えなくすることがある。このことによって、電力使用がさらに低減されることになる。次に、モーションセンサ107による運動検出が無い時間がまたさらに経過した後に、プロセッサ109は超音波探触子105をフリーズさせることがある。超音波探触子のフリーズには、走査過程の停止を含むが、走査の再開を可能とするように超音波探触子は「生きた状態(alive)」に保持させている。例えば、超音波探触子内部のクロック信号を依然として起動状態にしておくことがあり、また送信電子回路160(図2参照)及び受信電子回路162(図2参照)に依然として電圧を加えておくことがある。超音波探触子105をフリーズさせると、超音波エネルギーが能動的には送信されないために電力消費は低減されるが、送信電子回路160(図2参照)及び受信電子回路162(図2参照)に対しては依然として電圧が加えられているため、超音波探触子による走査の再開を希望する場合のタイムラグが極めて小さい。最後に、十分な時間が経過した場合は、超音波探触子を全体的に選択解除することが望ましいことがある。これには、超音波探触子内のすべての電子デバイスに対する電圧のオフ切替えを含むことがある。この最後の技法の結果として電力消費の低減は最大となる、ただし超音波探触子を再起動するためには最も長い時間を要する。したがって、超音波探触子に運動を生じないである長い時間期間(例えば、数分間)が経過した後にだけ、超音波探触子を全体的に選択解除することが望ましい。別の実施形態では、上述した起動停止の段階のうちの1つまたは幾つかだけを利用することがある。別の実施形態では、方法200の中でプロセッサ109の代わりに、探触子の外部に配置した1つまたは複数のプロセッサを用いることがある。例えば、探触子の外部で超音波システム上に配置させたプロセッサ(例えば、プロセッサ116)がモーションセンサ107からデータを受け取ると共に、方法200の中で探触子を起動停止にすべきか否かを判定することがある。さらに別の実施形態では、超音波探触子105の外部にあるプロセッサによって超音波探触子105の起動停止を制御することがある。
【0030】
この記載では、本発明(最適の形態を含む)を開示するため、並びに当業者による任意のデバイスやシステムの製作と使用及び組み込んだ任意の方法の実行を含む本発明の実施を可能にするために例を使用している。本発明の特許性のある範囲は本特許請求の範囲によって規定していると共に、当業者により行われる別の例を含むことができる。こうした別の例は、本特許請求の範囲の文字表記と異ならない構造要素を有する場合や、本特許請求の範囲の文字表記と実質的に差がない等価的な構造要素を有する場合があるが、本特許請求の範囲の域内にあるように意図したものである。
【符号の説明】
【0031】
(図1)
100 超音波撮像システム
102 送信器
103 送信ビーム形成器
104 トランスジューサアレイ
105 超音波探触子
107 モーションセンサ
108 受信器
109 プロセッサ
110 受信ビーム形成器
115 ユーザインタフェース
116 プロセッサ
118 表示デバイス
120 メモリ
(図2)
150 超音波探触子
152 探触子ハウジング
154 コード
156 トランスジューサアレイ
158 トランスジューサ素子
160 送信電子回路
162 受信電子回路
164 プロセッサ
166 モーションセンサ
(図3)
170 超音波探触子
172 ワイヤレス送信器
174 ワイヤレス受信器
176 電池
(図4)
200 方法
202 モーションセンサからデータを受け取る
204 データが運動を示しているか?
206 無運動の時間が所定の時間期間より長いか?
208 超音波探触子を起動停止させる
210 モーションセンサから運動を示すデータを受け取る
212 超音波探触子を再起動させる

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスジューサアレイ(104)及びモーションセンサ(107)を備えた超音波探触子(105)であって、該モーションセンサ(107)は該超音波探触子(105)の運動を検出するように適応させている超音波探触子(105)と、
モーションセンサ(107)に接続されたプロセッサ(109)であって、ある時間期間にわたってモーションセンサ(107)によって運動が検出されないことに応答して超音波探触子(105)の電力消費を低減するように構成されたプロセッサ(109)と、
を備える超音波撮像システム(100)。
【請求項2】
前記モーションセンサ(107)は加速度計を含む、請求項1に記載の超音波撮像システム(100)。
【請求項3】
前記モーションセンサ(107)はジャイロスコープセンサを含む、請求項1に記載の超音波撮像システム(100)。
【請求項4】
前記プロセッサ(109)はさらに、超音波探触子(105)内の電気構成要素への電圧を低下させることによって超音波探触子(105)の電力消費を低減するように構成されている、請求項1に記載の超音波撮像システム(100)。
【請求項5】
前記プロセッサ(109)はさらに、モーションセンサ(107)からの運動の検出に応答して前記電気構成要素への電圧を回復させることによって超音波探触子(105)を再起動させるように構成されている、請求項4に記載の超音波撮像システム(100)。
【請求項6】
前記電気構成要素は、前置増幅器素子、時間遅延線素子または信号加算ユニットを含む、請求項5に記載の超音波撮像システム(100)。
【請求項7】
超音波探触子(105)であって、
探触子ハウジング(152)と、
探触子ハウジング(152)内に配置させたトランスジューサアレイ(104)と、
探触子ハウジング(152)内に配置させている、該超音波探触子(105)の運動を検出するように適応させたモーションセンサ(107)と、
探触子ハウジング(152)内に配置させた、モーションセンサ(107)と電気的に結合されているプロセッサ(109)であって、ある時間期間にわたってモーションセンサ(107)によって運動が検出されないことに応答して該超音波探触子(105)の電力消費を低減するように構成されたプロセッサ(109)と、
を備える超音波探触子(105)。
【請求項8】
前記モーションセンサ(107)は加速度計を含む、請求項7に記載の超音波探触子(105)。
【請求項9】
前記モーションセンサ(107)は3軸加速度計を含む、請求項8に記載の超音波探触子(105)。
【請求項10】
前記モーションセンサ(107)はジャイロスコープセンサを含む、請求項7に記載の超音波探触子(105)。
【請求項11】
前記プロセッサ(109)はさらに、該超音波探触子(105)内の電気構成要素への電圧を低下させることによって該超音波探触子(105)の電力消費を低減するように構成されている、請求項7に記載の超音波探触子(105)。
【請求項12】
前記プロセッサ(109)はさらに、モーションセンサ(107)からの運動の検出に応答して前記電気構成要素への電圧を回復させることによって該超音波探触子(105)を再起動させるように構成されている、請求項11に記載の超音波探触子(105)。
【請求項13】
ワイヤレス超音波探触子(105)を含む請求項7に記載の超音波探触子(105)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−43086(P2013−43086A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−180306(P2012−180306)
【出願日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】