超音波検査装置及び超音波検査方法
【課題】検査対象物を迂回して超音波受信装置に到達する回折波を抑制することで、検査対象物の端部の検査を精度よく行う。
【解決手段】送信側超音波遮蔽キャップ14は、超音波送信面12の周囲を全周に渡って取り囲み、超音波送信面12の周囲より鋼板32の表面端部32aへ全周に渡って突出して設けられている。受信側超音波遮蔽キャップ24は、超音波受信面22の周囲を全周に渡って取り囲み、超音波受信面22の周囲より鋼板34の裏面端部34bへ全周に渡って突出して設けられている。送信側超音波遮蔽キャップ14及び受信側超音波遮蔽キャップ24により、超音波送信面12から送信された超音波が検査対象物30を迂回して超音波受信面22に回折波として到達するのを抑制することができる。
【解決手段】送信側超音波遮蔽キャップ14は、超音波送信面12の周囲を全周に渡って取り囲み、超音波送信面12の周囲より鋼板32の表面端部32aへ全周に渡って突出して設けられている。受信側超音波遮蔽キャップ24は、超音波受信面22の周囲を全周に渡って取り囲み、超音波受信面22の周囲より鋼板34の裏面端部34bへ全周に渡って突出して設けられている。送信側超音波遮蔽キャップ14及び受信側超音波遮蔽キャップ24により、超音波送信面12から送信された超音波が検査対象物30を迂回して超音波受信面22に回折波として到達するのを抑制することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を用いて検査対象物の検査を行う超音波検査装置及び超音波検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
材料の非破壊評価を行うための手段として、放射線や電磁気、超音波等を利用した手法が用途に合わせて利用されている。その中でも超音波は、人体への影響が少なく、材料内部の検査が行えるため、生産現場等において導入しやすい方法として広く活用されている。
【0003】
しかし、超音波を固体材料内へ入射し、固体材料内からの超音波を受信するためには、従来は、材料と超音波センサ間に水やジェル等のカップリング剤を用いなければならなかった。そのため、製造ライン中の検査であっても、検査対象物全体を水に浸したり(水浸法)、超音波センサと検査対象物間のみに水を吹きかけたり(部分水浸法)する必要があり、その適用は一部に鉄鋼ライン等に限られていた。
【0004】
近年、空中に強力な超音波を伝搬させ材料内へ入射し、材料内を伝搬した後、材料から漏洩する超音波を感度よく受信できる空中超音波センサが開発された(空中超音波法に関する下記特許文献1〜6参照)。空中では高周波ほど減衰が大きいため、水浸法等で利用できる周波数帯(1MHz〜100MHz)よりも低い周波数帯に制限されるが、検査分解能を向上させるためにできるだけ高い周波数帯を用いることが望ましく、開発されている空中超音波センサの周波数帯は50kHz〜1MHz程度となっている。水浸法ほどの高い空間分解能は期待できないものの、非接触で検査が可能となるため、ライン中での全数検査への適用が十分期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−128965号公報
【特許文献2】特開2002−195987号公報
【特許文献3】特許第4120969号公報
【特許文献4】特開2006−138818号公報
【特許文献5】特開2009−150692号公報
【特許文献6】特開2010−25817号公報
【特許文献7】特開平8−21892号公報
【特許文献8】特許第3484031号公報
【特許文献9】特許第3036632号公報
【特許文献10】特開平8−313502号公報
【特許文献11】特開昭64−73250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
超音波を用いて検査対象物の検査を行う手法として、例えば特許文献1のように、検査対象物の表面側に配置された超音波送信装置から超音波を送信し、検査対象物中を透過した超音波を検査対象物の裏面側に配置された超音波受信装置で受信する透過法がある。しかし、透過法により検査対象物の端部の検査を行う場合は、超音波受信装置で受信される超音波には、検査対象物中を透過して超音波受信装置に到達する透過波だけでなく、検査対象物を迂回して超音波受信装置に到達する回折波も存在する。この回折波は、透過波とほぼ同時刻に超音波受信装置で受信され、さらに、超音波送信装置及び超音波受信装置を検査対象物の側面に近づけるほど、超音波受信装置での受信レベルが大きくなりやすい。検査対象物の端部の検査を精度よく行うためには、検査対象物中を透過して超音波受信装置に到達する透過波の振幅を超音波受信装置での受信信号から精度よく検出する必要があり、そのためには、検査対象物を迂回して超音波受信装置に到達する回折波を抑制することが望ましい。
【0007】
本発明は、検査対象物を迂回して超音波受信装置に到達する回折波を抑制することで、検査対象物の端部の検査を精度よく行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る超音波検査装置及び超音波検査方法は、上述した目的を達成するために以下の手段を採った。
【0009】
本発明に係る超音波検査装置は、検査対象物の表面端部と対向配置される超音波送信面であって、超音波を検査対象物の表面端部へ送信する超音波送信面を含む超音波送信装置と、検査対象物を介して超音波送信面と対向するよう検査対象物の裏面端部と対向配置される超音波受信面であって、超音波送信面から送信され且つ検査対象物中を透過した超音波を受信する超音波受信面を含む超音波受信装置と、を備える超音波検査装置であって、超音波送信装置は、超音波送信面の周囲を全周に渡って取り囲み、超音波送信面の周囲より検査対象物の表面端部へ全周に渡って突出し、超音波送信面から検査対象物の表面端部へ超音波を空中伝搬させるための貫通穴が超音波送信面側の端部から検査対象物の表面側の端部にかけて形成された送信側超音波遮蔽部材であって、超音波送信面から送信された超音波が検査対象物を迂回して超音波受信面に到達するのを抑制するための送信側超音波遮蔽部材をさらに含むことを要旨とする。
【0010】
本発明の一態様では、超音波送信面は、検査対象物中に焦点が位置する凹曲面形状であり、送信側超音波遮蔽部材に形成された貫通穴の直径は、検査対象物の表面側が超音波送信面側より小さいことが好適である。
【0011】
本発明の一態様では、送信側超音波遮蔽部材の音響インピーダンスが検査対象物の音響インピーダンスより小さいことが好適である。
【0012】
本発明の一態様では、超音波受信装置は、超音波受信面の周囲を全周に渡って取り囲み、超音波受信面の周囲より検査対象物の裏面端部へ全周に渡って突出し、検査対象物の裏面端部から超音波受信面へ超音波を空中伝搬させるための貫通穴が超音波受信面側の端部から検査対象物の裏面側の端部にかけて形成された受信側超音波遮蔽部材であって、超音波送信面から送信された超音波が検査対象物を迂回して超音波受信面に到達するのを抑制するための受信側超音波遮蔽部材をさらに含むことが好適である。
【0013】
また、本発明に係る超音波検査装置は、検査対象物の表面端部と対向配置される超音波送信面であって、超音波を検査対象物の表面端部へ送信する超音波送信面を含む超音波送信装置と、検査対象物を介して超音波送信面と対向するよう検査対象物の裏面端部と対向配置される超音波受信面であって、超音波送信面から送信され且つ検査対象物中を透過した超音波を受信する超音波受信面を含む超音波受信装置と、を備える超音波検査装置であって、超音波受信装置は、超音波受信面の周囲を全周に渡って取り囲み、超音波受信面の周囲より検査対象物の裏面端部へ全周に渡って突出し、検査対象物の裏面端部から超音波受信面へ超音波を空中伝搬させるための貫通穴が超音波受信面側の端部から検査対象物の裏面側の端部にかけて形成された受信側超音波遮蔽部材であって、超音波送信面から送信された超音波が検査対象物を迂回して超音波受信面に到達するのを抑制するための受信側超音波遮蔽部材をさらに含むことを要旨とする。
【0014】
本発明の一態様では、超音波受信面は、検査対象物中に焦点が位置する凹曲面形状であり、受信側超音波遮蔽部材に形成された貫通穴の直径は、検査対象物の裏面側が超音波受信面側より小さいことが好適である。
【0015】
本発明の一態様では、受信側超音波遮蔽部材の音響インピーダンスが検査対象物の音響インピーダンスより小さいことが好適である。
【0016】
本発明の一態様では、検査対象物は、第1板状部材と第2板状部材が端部において接着層を介して接合されており、超音波送信面は、第1板状部材の表面端部と対向配置され、超音波を第1板状部材を介して接着層へ送信し、超音波受信面は、第1板状部材と接着層と第2板状部材を介して超音波送信面と対向するよう第2板状部材の裏面端部と対向配置され、超音波送信面から送信され且つ第1板状部材と接着層と第2板状部材を透過した超音波を受信することが好適である。
【0017】
また、本発明に係る超音波検査方法は、本発明に係る超音波検査装置を用いた超音波検査方法であって、検査対象物に対する超音波透過位置を2次元的に移動走査しながら、超音波送信装置から送信され且つ検査対象物中を透過した超音波を超音波受信装置で受信し、超音波受信装置で受信された、各超音波透過位置に対応する超音波の振幅に基づいて、検査対象物の検査を行うことを要旨とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、検査対象物の端部の検査を行う場合に、超音波送信面から送信された超音波が検査対象物を迂回して超音波受信面に回折波として到達するのを抑制することができるので、検査対象物中を透過して超音波受信面に到達する透過波の振幅を超音波受信面での受信信号から精度よく検出することができる。その結果、検査対象物の端部の検査を精度よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る超音波検査装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る超音波検査装置の概略構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る超音波検査装置の概略構成を示す図である。
【図4】超音波送信面から超音波受信面までにおける超音波の伝搬経路を説明する図である。
【図5】回折波の影響を調べるための超音波の測定条件を説明する図である。
【図6】鋼板を挟んで超音波送信センサ及び超音波受信センサを正対させた場合に超音波受信面で受信された超音波信号の波形を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る超音波検査装置の他の概略構成を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る超音波検査装置の他の概略構成を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る超音波検査装置において超音波受信面で受信された超音波信号の波形を示す図である。
【図10】超音波送信面及び超音波受信面の中心軸を移動させた場合に超音波受信面で受信された超音波信号の振幅の変化を示す図である。
【図11】検査対象物の一例を示す図である。
【図12A】超音波遮蔽キャップがない場合に各超音波透過位置に対応する超音波信号の振幅分布を画像化した結果を示す図である。
【図12B】超音波遮蔽キャップがある場合に各超音波透過位置に対応する超音波信号の振幅分布を画像化した結果を示す図である。
【図13】本発明の実施形態に係る超音波検査装置を用いた、鋼板同士の接着層による密着性の評価方法の一例を説明するフローチャートである。
【図14】本発明の実施形態に係る超音波検査装置の他の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態(以下実施形態という)を図面に従って説明する。
【0021】
図1〜3は本発明の実施形態に係る超音波検査装置の概略構成を示す図であり、図1は装置全体の概略構成を示し、図2,3は超音波送信センサ10及び超音波受信センサ20の概略構成を示す。本実施形態に係る超音波検査装置は、超音波送信センサ10と、超音波受信センサ20と、走査装置40と、超音波信号供給部41と、信号処理部42と、画像処理部44と、表示装置46と、検査判定部48と、を備える。
【0022】
検査対象物30は、板状部材である鋼板32,34と、鋼板32,34同士を端部において接合するための接着層36とを含んで構成され、鋼板32の裏面端部32bと鋼板34の表面端部34aが接着層36を介して接合されている。鋼板32,34間における接着層36が設けられていない領域は空隙となっている。以下の説明では、本実施形態に係る超音波検査装置を用いた検査対象物30の検査の適用例として、鋼板32,34の接着層36による密着性を評価する場合について説明する。
【0023】
超音波送信センサ10は、鋼板32を介して接着層36と対向するよう検査対象物30(鋼板32)の表面端部32aと対向配置される超音波送信面12と、送信側超音波遮蔽キャップ14とを含んで構成される。超音波送信面12は、例えば圧電素子等により構成することが可能である。超音波送信センサ10には、超音波信号供給部41からの超音波信号が供給される。超音波送信センサ10は、超音波信号供給部41から供給された超音波信号に基づいて、超音波送信面12から超音波を鋼板32の表面端部32aへ送信する。超音波送信面12から送信された超音波は、図1の矢印61に示すように、空中を伝搬して鋼板32の表面端部32aに入射する。鋼板32の表面端部32aに入射した超音波は、図1の矢印62に示すように、鋼板32を透過して接着層36に到達し、さらに、接着層36及び鋼板34を透過して検査対象物30(鋼板34)の裏面側に到達する。図1に示す例では、超音波送信センサ10はフォーカス型センサであり、超音波送信面12は、検査対象物30中(接着層36)に焦点38が位置する凹曲面形状であり、超音波送信面12から送信された超音波は、焦点38(接着層36)へ集束する。なお、送信側超音波遮蔽キャップ14の構成の説明については後述する。
【0024】
超音波受信センサ20は、検査対象物30(鋼板32と接着層36と鋼板34)を介して超音波送信面12と対向するよう検査対象物30(鋼板34)の裏面端部34bと対向配置される超音波受信面22と、受信側超音波遮蔽キャップ24とを含んで構成される。超音波受信面22も、例えば圧電素子等により構成することが可能である。検査対象物30(鋼板34)の裏面側に到達した超音波は、図1の矢印63に示すように、空中を伝搬して超音波受信面22に到達する。超音波受信センサ20は、超音波送信面12から送信され且つ検査対象物30(鋼板32と接着層36と鋼板34)を透過した超音波を超音波受信面22で受信する。図1に示す例では、超音波受信センサ20もフォーカス型センサであり、超音波受信面22も、検査対象物30中(接着層36)に焦点38が位置する凹曲面形状であり、焦点38に集束した超音波は、超音波受信面22全体に拡散して到達する。なお、受信側超音波遮蔽キャップ24の構成の説明については後述する。
【0025】
走査装置40は、超音波送信センサ10及び超音波受信センサ20(超音波送信面12及び超音波受信面22)を、鋼板32,34の板面方向と平行に2次元的に移動走査させる。これによって、検査対象物30に対して超音波送信面12及び超音波受信面22の焦点38を鋼板32,34の板面方向と平行に2次元的に移動走査させることができ、検査対象物30に対する超音波透過位置(密着性評価位置)を鋼板32,34の板面方向と平行に2次元的に移動走査させることができる。鋼板32,34の接着層36による密着性を評価する際には、走査装置40により検査対象物30に対する超音波透過位置を2次元的に移動走査しながら、超音波送信装置10から超音波を送信し、検査対象物30中を透過した超音波を超音波受信装置20で受信する。その際に、超音波送信センサ10及び超音波受信センサ20をフォーカス型センサとすることで、検査対象物30に対する密着性評価位置の空間分解能を向上させることが可能となる。
【0026】
信号処理部42は、超音波受信センサ20(超音波受信面22)で受信された、各超音波透過位置(密着性評価位置)に対応する超音波信号の振幅を検出する。画像処理部44は、信号処理部42で検出された超音波信号の振幅を、各超音波透過位置と対応付けて2次元面に画像化し、その2次元画像を表示装置46に表示させる。検査判定部48は、信号処理部42で検出された、各超音波透過位置に対応する超音波信号の振幅に基づいて、鋼板32,34の接着層36による密着性を評価することで、検査対象物30の検査を行う。例えば鋼板32(あるいは鋼板34)と接着層36との界面に剥離がある場合は、剥離が無い場合と比較して、検査対象物30(鋼板32と接着層36と鋼板34)を透過して超音波受信面22で受信される超音波信号のレベルが低下する。したがって、超音波受信面22で受信された、各超音波透過位置に対応する超音波の振幅を調べることで、鋼板32,34の接着層36による密着性を評価することが可能となる。
【0027】
鋼板32,34端部での接着層36による密着性を評価する場合は、超音波送信面12から超音波を鋼板32の表面端部32aへ向けて送信し、鋼板34の裏面端部34bからの超音波を超音波受信面22で受信する。その際に、超音波送信センサ10(フォーカス型センサ)から送信される超音波エネルギーのほとんどは、図4の矢印61,62に示すように、焦点38に向かって集束するが、一部は、図4の矢印64に示すように、センサより広がる方向に空中を伝搬する回折波となり、図4の矢印65,66に示すように、検査対象物30を迂回して超音波受信面22に到達する。その結果、超音波受信面22で受信される超音波には、図4の矢印61〜63に示すように、検査対象物30中(鋼板32と接着層36と鋼板34)を透過して超音波受信面22に到達する透過波だけでなく、実際には、図4の矢印64〜66に示すように、検査対象物30(鋼板32と接着層36と鋼板34)を迂回して超音波受信面22に到達する回折波も存在する。この回折波は、透過波とほぼ同時刻に超音波受信面22で受信され、さらに、超音波送信面12及び超音波受信面22を検査対象物30の側面(鋼板32,34の側面32c,34c)に近づけるほど、超音波受信面22での受信レベルが大きくなりやすい。鋼板32,34端部での接着層36による密着性を精度よく評価するためには、検査対象物30中を透過して超音波受信面22に到達する透過波の振幅を超音波受信面22での受信信号から精度よく検出する必要があり、そのためには、検査対象物30を迂回して超音波受信面22に到達する回折波を抑制することが望ましい。特に、検査対象物30が鋼板32と接着層36と鋼板34のような3層構造では、その領域を透過する超音波のエネルギーが非常に小さくなるため、超音波受信面22での受信信号にわずかなエネルギーの回折波が混入しても、密着性評価に大きな影響を与えることになる。
【0028】
図5に示すように、検査対象物30として一枚の鋼板33(SPC270、厚さ0.8mm)を挟んで、フォーカス型センサである超音波送信センサ10及び超音波受信センサ20(ただし送信側超音波遮蔽キャップ14及び受信側超音波遮蔽キャップ24は設けていない)を鋼板33と垂直に40mmの距離で正対させた場合に、超音波受信面22で受信された超音波信号の波形を図6に示す。鋼板33の側面(端面)33cから超音波送信面12及び超音波受信面22の中心軸までの距離Lが20mmの場合は、図6下の波形に示すように、鋼板33を迂回する回折波の影響をほとんど受けず、鋼板33中を透過する透過波を超音波受信面22での受信信号から検出することが可能である。しかし、鋼板33の側面(端面)33cからの距離Lが5mmの場合は、図6上の波形に示すように、回折波の影響が非常に大きく、信号処理部42の飽和電圧(2V)を超える電圧が測定され、鋼板33中を透過する透過波を超音波受信面22での受信信号から検出することは困難である。
【0029】
そこで、本実施形態では、超音波送信面12から送信された超音波が検査対象物30を迂回して超音波受信面22に回折波として到達するのを抑制するために、送信側超音波遮蔽キャップ14及び受信側超音波遮蔽キャップ24を超音波送信センサ10及び超音波受信センサ20にそれぞれ設けている。以下、超音波を遮蔽するための送信側超音波遮蔽キャップ14及び受信側超音波遮蔽キャップ24の構成例について説明する。
【0030】
図1〜3に示すように、送信側超音波遮蔽キャップ14は、超音波送信面12の周囲を全周に渡って取り囲み、超音波送信面12の周囲より検査対象物30(鋼板32)の表面端部32aへ全周に渡って突出して設けられており、超音波送信面12から鋼板32の表面端部32aへ超音波を空中伝搬させるための貫通穴14cが超音波送信面12側の端部から鋼板32の表面側の端部にかけて形成されている。送信側超音波遮蔽キャップ14の先端面14bと検査対象物30(鋼板32)の表面端部32aとの間には、僅かな(例えば3〜4mm程度の)空隙が形成される。あるいは、送信側超音波遮蔽キャップ14の先端面14bを鋼板32の表面端部32aに接触させることも可能である。
【0031】
広がる回折波成分を抑えて焦点38へ集束する成分のみを超音波受信面22から精度よく取り出すためには、送信側超音波遮蔽キャップ14の厚さを厚くすることで、送信側超音波遮蔽キャップ14中での超音波の減衰量を増加させることが好ましい。さらに、送信側超音波遮蔽キャップ14の貫通穴14cの内周面14aを、焦点38へ集束する成分を遮らないように、超音波送信面12の外周と焦点38とを結ぶ円錐面12aより外周側に配置するとともに、円錐面12aと内周面14aとの距離を短くすることが好ましい。そのためには、送信側超音波遮蔽キャップ14の内径(貫通穴14cの直径)は、検査対象物30(鋼板32)の表面側(図1,3の下側)が超音波送信面12側(図1,3の上側)より小さいことが好ましい。その際には、例えば図1〜3に示すように、超音波送信面12側から検査対象物30の表面側へ向かうにつれて、送信側超音波遮蔽キャップ14の内径(貫通穴14cの直径)を段階的に小さくすることも可能であるし、例えば図7,8に示すように、内周面14aを円錐面12aに近接配置するように、超音波送信面12側から検査対象物30の表面側へ向かうにつれて、送信側超音波遮蔽キャップ14の内径(貫通穴14cの直径)を徐々に小さくすることも可能である。なお、図1〜3に示す例では、送信側超音波遮蔽キャップ14の厚さは、検査対象物30の表面側が超音波送信面12側より厚く、図7に示す例では、送信側超音波遮蔽キャップ14の厚さは、超音波送信方向(鋼板32,34の板面と垂直方向)に関して一定であり、図8に示す例では、超音波送信面12側から検査対象物30の表面側へ向かうにつれて、送信側超音波遮蔽キャップ14の厚さが徐々に厚くなる。
【0032】
また、広がった回折波成分が送信側超音波遮蔽キャップ14の内部(内周面14a)で多重反射するとノイズの原因となる。回折波の内周面14aでの多重反射を抑えるためには、送信側超音波遮蔽キャップ14の音響インピーダンスは、検査対象物30(鋼板32,34)の音響インピーダンスより低いことが好ましい。例えば、送信側超音波遮蔽キャップ14の素材を、金属材料に比べて音響インピーダンスの低い樹脂製(例えばポリアセタール等)やゴム製とすることが可能である。
【0033】
図1〜3に示すように、受信側超音波遮蔽キャップ24は、超音波受信面22の周囲を全周に渡って取り囲み、超音波受信面22の周囲より検査対象物30(鋼板34)の裏面端部34bへ全周に渡って突出して設けられており、超音波受信面22から鋼板34の裏面端部34bへ超音波を空中伝搬させるための貫通穴24cが超音波受信面22側の端部から鋼板34の裏面側の端部にかけて形成されている。受信側超音波遮蔽キャップ24の先端面24bと検査対象物30(鋼板34)の表面端部34bとの間には、僅かな(例えば3〜4mm程度の)空隙が形成される。あるいは、受信側超音波遮蔽キャップ24の先端面24bを鋼板34の表面端部34bに接触させることも可能である。
【0034】
検査対象物30を迂回する回折波成分を抑えて焦点38から拡散する成分のみを超音波受信面22から精度よく取り出すためには、受信側超音波遮蔽キャップ24の厚さを厚くすることで、受信側超音波遮蔽キャップ24中での超音波の減衰量を増加させることが好ましい。さらに、受信側超音波遮蔽キャップ24の貫通穴24cの内周面24aを、焦点38から拡散する成分を遮らないように、超音波受信面22の外周と焦点38とを結ぶ円錐面22aより外周側に配置するとともに、円錐面22aと内周面24aとの距離を短くすることが好ましい。そのためには、受信側超音波遮蔽キャップ24の内径(貫通穴24cの直径)は、検査対象物30(鋼板34)の裏面側(図1,3の上側)が超音波受信面22側(図1,3の下側)より小さいことが好ましい。その際には、例えば図1〜3に示すように、超音波受信面22側から検査対象物30の裏面側へ向かうにつれて、受信側超音波遮蔽キャップ24の内径(貫通穴24cの直径)を段階的に小さくすることも可能であるし、例えば図7,8に示すように、内周面24aを円錐面22aに近接配置するように、受音波送信面22側から検査対象物30の裏面側へ向かうにつれて、受信側超音波遮蔽キャップ24の内径(貫通穴24cの直径)を徐々に小さくすることも可能である。なお、図1〜3に示す例では、受信側超音波遮蔽キャップ24の厚さは、検査対象物30の裏面側が超音波受信面22側より厚く、図7に示す例では、受信側超音波遮蔽キャップ24の厚さは、超音波受信方向(鋼板32,34の板面と垂直方向)に関して一定であり、図8に示す例では、超音波受信面22側から検査対象物30の裏面側へ向かうにつれて、受信側超音波遮蔽キャップ24の厚さが徐々に厚くなる。
【0035】
また、超音波が受信側超音波遮蔽キャップ24の内部(内周面24a)で多重反射するとノイズの原因となる。超音波の内周面24aでの多重反射を抑えるためには、受信側超音波遮蔽キャップ24の音響インピーダンスも、検査対象物30(鋼板32,34)の音響インピーダンスより低いことが好ましい。例えば、受信側超音波遮蔽キャップ24の素材も、金属材料に比べて音響インピーダンスの低い樹脂製(例えばポリアセタール等)やゴム製とすることが可能である。
【0036】
図1〜3に示す構成の送信側超音波遮蔽キャップ14及び受信側超音波遮蔽キャップ24がそれぞれ取り付けられた超音波送信センサ10及び超音波受信センサ20を、図5に示す鋼板33を挟んで正対させた場合に、超音波受信面22で受信された超音波信号の波形を図9に示す。超音波の測定の際には、超音波送信センサ10と超音波受信センサ20との距離を40mmとし、送信側超音波遮蔽キャップ14の先端面14bと鋼板33の表面との距離、及び受信側超音波遮蔽キャップ24の先端面24bと鋼板33の裏面との距離を約3.5mmとしている。図9は、鋼板33の側面(端面)33cから超音波送信面12及び超音波受信面22の中心軸までの距離Lが5mm、20mmの場合における波形に加えて、比較対象のため、送信側超音波遮蔽キャップ14及び受信側超音波遮蔽キャップ24が設けられていない場合(距離Lが20mm)における波形(図6下の波形と同じ)も示している。
【0037】
距離Lが20mmのときの波形は、超音波遮蔽キャップ14,24がある場合(図9中央)とない場合(図9下)とでほぼ同じであり、検査対象物30を透過する波形に超音波遮蔽キャップ14,24が影響しないことが示された。また、超音波遮蔽キャップ14,24がある場合において、距離Lが5mmのときの波形(図9上)と距離Lが20mmのときの波形(図9中央)とでは、約140μs辺りにある最初の波形は、よく似た波形で得られた。しかし、距離Lが5mmのときは、その後の波形は、非常に乱れたものとなっていた。これは、距離Lが5mmのときは、超音波遮蔽キャップ14,24があっても、回折波が測定されたことを示している。しかし、超音波遮蔽キャップ14,24がない場合(図6上の波形)と比べて、回折波が大きく減少しているため、最初に到達する透過波の波形を検出することができた。
【0038】
次に、鋼板33の側面(端面)33cを位置x=0mmとし、超音波送信面12及び超音波受信面22の中心軸を、鋼板33内側へ20mm(x=−20mm)の位置から鋼板33外側へ5mm(x=5mm)の位置まで0.5mmピッチで移動させた場合に、超音波受信面22で受信された超音波信号の振幅の変化を図10に示す。図10は、120μsから150μs間の測定波形の振幅最大値の変化を示しており、縦軸は2Vを基準(0dB)としてデシベル表示している。図10の左端(x=−20mm)の振幅値が図9中央及び下の波形の振幅に対応する。図10に示すように、超音波遮蔽キャップ14,24がない場合は、鋼板33の端面33cから約10mm(x=−10mm)まで回折波の影響を顕著に受けており、鋼板33の端面33cから10mm〜15mm間(x=−10mm〜x=−15mm)では、回折波と透過波との干渉によって起こると考えられる振幅変動が現れた。一方、超音波遮蔽キャップ14,24がある場合は、鋼板33の端面33cから3mm(x=−3mm)程度まで回折波の影響を受け、鋼板33の端面33cから3mm〜6mm間(x=−3mm〜x=−6mm)に干渉による振幅変動が見られるものの、超音波遮蔽キャップ14,24がない場合と比べて回折波の影響を大きく抑えることができた。
【0039】
次に、鋼板32,34端部に接着層36がある検査対象物30を作製し、この検査対象物30を挟んで超音波送信センサ10及び超音波受信センサ20を正対させた場合に、超音波受信面22で受信された超音波信号の振幅分布の画像化を行った。検査対象物30は、板厚0.8mmの鋼板32,34(SPC270)を両面テープ(接着層)36で張り合わせた構造とした。図11に、鋼板32,34の張り合わせの前に両面テープ(接着層)36を設置した状態と各部の寸法を示す。
【0040】
検査対象物30に対する超音波透過位置(密着性評価位置)を走査装置40により2次元的に移動走査させた場合に、各超音波透過位置に対応する超音波信号の振幅分布を画像処理部44により画像化した結果を図12A,12Bに示す。図12Aは超音波遮蔽キャップ14,24がない場合の振幅分布の画像を表し、図12Bは超音波遮蔽キャップ14,24がある場合の振幅分布の画像を表す。図12A,12Bでは、振幅最大値となる2Vを基準(0dB)としてデシベル表示しており、−20dBから−40dBを濃淡で示し、濃いほど振幅が大きい。また、図12A,12B中の白破線は、検査対象物30(鋼板32,34)の側面(端面)32c,34c(図1参照)である。
【0041】
図12Aに示すように、超音波遮蔽キャップ14,24がない場合は、回折波の影響によって振幅の小さい白の領域が狭くなっており、両面テープ36の存在が分かりにくくなっている。また、両面テープ36の存在が確認可能な領域においても、鋼板32,34の端面32c,34cに沿った縞模様が現れており、鋼板32,34と両面テープ36との密着性良否の分布を示しているとは言い難い。これは、図10中のx=−10mm〜x=−15mmに現れた、回折波と透過波との干渉による振幅変動に起因した縞模様である。
【0042】
一方、図12Bに示すように、超音波遮蔽キャップ14,24がある場合は、両面テープ36の接着領域の画像が鮮明に現れており、超音波遮蔽キャップ14,24が接着領域の画像化に大きな効果を与えていることがわかる。鋼板32,34の端面32c,34cから5mm程度までは、図10の結果と同様に、回折波の影響を受け、受信振幅が黒い領域となって現れているものの、端面32c,34cから5mm以上では、図10の結果と同様に、両面テープ36の輪郭が鮮明に現れており、鋼板32,34と両面テープ36との接着分布と考えられる分布も表示できている。両面テープ36における振幅の小さい白の領域は、鋼板32,34と両面テープ36との密着性が不十分な領域であると考えられる。
【0043】
以上説明した本実施形態によれば、鋼板32,34端部での接着層36による密着性を評価する場合に、送信側超音波遮蔽キャップ14及び受信側超音波遮蔽キャップ24により、超音波送信面12から送信された超音波が検査対象物30を迂回して超音波受信面22に回折波として到達するのを抑制することができる。したがって、検査対象物30中(鋼板32と接着層36と鋼板34)を透過して超音波受信面22に到達する透過波の振幅を超音波受信面22での受信信号から精度よく検出することができる。その結果、鋼板32,34端部での接着層36による密着性を精度よく評価することができる。さらに、送信側超音波遮蔽キャップ14を超音波送信センサ10自体、受信側超音波遮蔽キャップ24を超音波受信センサ20自体にそれぞれ設置することで、超音波送信センサ10及び超音波受信センサ20の走査の際には、超音波送信面12及び超音波受信面22とともに超音波遮蔽キャップ14及び受信側超音波遮蔽キャップ24も移動させることができる。その結果、回折波を抑制しながらの超音波送信センサ10及び超音波受信センサ20の走査が容易となる。
【0044】
以下、本実施形態に係る超音波検査装置を用いた超音波検査方法として、鋼板32,34の接着層36による密着性の評価方法について、図13のフローチャートを用いて説明する。まずステップS101では、超音波送信センサ10及び超音波受信センサ20を互いに正対させ、最も大きな超音波エネルギーを取得できるセンサ間距離を予め求めておく。次にステップS102では、超音波が空中を伝搬する距離及び検査対象物30中(鋼板32と接着層36と鋼板34)を伝搬する距離と、それらの音速とを考慮して、超音波受信面22に超音波(透過波)が到達する時間位置を決定する。
【0045】
ステップS103では、超音波受信面22に透過波が到達する時間位置に、ある幅を持たせて時間ゲートを設定し、その時間ゲートにおける超音波信号(透過波)の振幅最大値を信号処理部42により検出する。次にステップS104では、超音波送信センサ10及び超音波受信センサ20を走査装置40により2次元的に移動走査しながら、超音波信号(透過波)の計測を繰り返し、各走査点(密着性評価位置)における超音波信号(透過波)の振幅最大値を記録していく。次にステップS105では、密着性評価位置の走査が完了したか否かが判定される。走査が完了していない場合(ステップS105の判定結果がNOの場合)は、ステップS103に戻る。一方、走査が完了した場合(ステップS105の判定結果がYESの場合)は、ステップS106に進む。
【0046】
ステップS106では、各走査点における超音波信号の振幅最大値の分布を取得し、各走査点のうち、端面近傍の回折波の影響のある領域を密着性評価対象から除外する。次にステップS107では、密着性評価対象領域において、超音波信号の振幅最大値を予め設定された閾値と比較することで、密着性の良否を検査判定部48により判定する。
【0047】
以上の説明では、超音波送信センサ10及び超音波受信センサ20がフォーカス型センサであり、超音波送信面12及び超音波受信面22が検査対象物30中(接着層36)に焦点38を有する凹曲面形状である場合について説明した。ただし、本実施形態では、超音波送信センサ10及び超音波受信センサ20がフォーカス型センサでなくてもよく、例えば図14に示すように、超音波送信面12及び超音波受信面22が平面であってもよい。その場合は、送信側超音波遮蔽キャップ14の貫通穴14cの内周面14aを、検査対象物30に入射する超音波成分を遮らないように、超音波送信面12の外周から延びる円柱面12aより外周側に配置するとともに、内周面14aを円柱面12aに近接配置することが好ましい。同様に、受信側超音波遮蔽キャップ24の貫通穴24cの内周面24aも、超音波受信面22の外周から延びる円柱面22aより外周側に配置するとともに、内周面24aを円柱面22aに近接配置することが好ましい。
【0048】
以上の説明では、送信側超音波遮蔽キャップ14及び受信側超音波遮蔽キャップ24を超音波送信センサ10及び超音波受信センサ20にそれぞれ設けた場合について説明した。ただし、本実施形態では、送信側超音波遮蔽キャップ14だけを超音波送信センサ10に設けることも可能であるし、受信側超音波遮蔽キャップ24だけを超音波受信センサ20に設けることも可能である。その場合でも、超音波送信面12から送信された超音波が検査対象物30を迂回して超音波受信面22に回折波として到達するのを抑制することが可能である。
【0049】
以上の説明では、本実施形態に係る超音波検査装置を用いた検査対象物30の検査の適用例として、鋼板32,34の接着層36による密着性を評価する場合について説明した。ただし、本実施形態に係る超音波検査装置は、鋼板32,34の接着層36による密着性の評価以外に、例えば検査対象物30の内部欠陥の検査等にも適用することが可能である。
【0050】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0051】
10 超音波送信センサ、12 超音波送信面、14 送信側超音波遮蔽キャップ、20 超音波受信センサ、22 超音波受信面、24 受信側超音波遮蔽キャップ、30 検査対象物、32,34 鋼板、36 接着層(両面テープ)、38 焦点、40 走査装置、41 超音波信号供給部、42 信号処理部、44 画像処理部、46 表示装置、48 検査判定部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を用いて検査対象物の検査を行う超音波検査装置及び超音波検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
材料の非破壊評価を行うための手段として、放射線や電磁気、超音波等を利用した手法が用途に合わせて利用されている。その中でも超音波は、人体への影響が少なく、材料内部の検査が行えるため、生産現場等において導入しやすい方法として広く活用されている。
【0003】
しかし、超音波を固体材料内へ入射し、固体材料内からの超音波を受信するためには、従来は、材料と超音波センサ間に水やジェル等のカップリング剤を用いなければならなかった。そのため、製造ライン中の検査であっても、検査対象物全体を水に浸したり(水浸法)、超音波センサと検査対象物間のみに水を吹きかけたり(部分水浸法)する必要があり、その適用は一部に鉄鋼ライン等に限られていた。
【0004】
近年、空中に強力な超音波を伝搬させ材料内へ入射し、材料内を伝搬した後、材料から漏洩する超音波を感度よく受信できる空中超音波センサが開発された(空中超音波法に関する下記特許文献1〜6参照)。空中では高周波ほど減衰が大きいため、水浸法等で利用できる周波数帯(1MHz〜100MHz)よりも低い周波数帯に制限されるが、検査分解能を向上させるためにできるだけ高い周波数帯を用いることが望ましく、開発されている空中超音波センサの周波数帯は50kHz〜1MHz程度となっている。水浸法ほどの高い空間分解能は期待できないものの、非接触で検査が可能となるため、ライン中での全数検査への適用が十分期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−128965号公報
【特許文献2】特開2002−195987号公報
【特許文献3】特許第4120969号公報
【特許文献4】特開2006−138818号公報
【特許文献5】特開2009−150692号公報
【特許文献6】特開2010−25817号公報
【特許文献7】特開平8−21892号公報
【特許文献8】特許第3484031号公報
【特許文献9】特許第3036632号公報
【特許文献10】特開平8−313502号公報
【特許文献11】特開昭64−73250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
超音波を用いて検査対象物の検査を行う手法として、例えば特許文献1のように、検査対象物の表面側に配置された超音波送信装置から超音波を送信し、検査対象物中を透過した超音波を検査対象物の裏面側に配置された超音波受信装置で受信する透過法がある。しかし、透過法により検査対象物の端部の検査を行う場合は、超音波受信装置で受信される超音波には、検査対象物中を透過して超音波受信装置に到達する透過波だけでなく、検査対象物を迂回して超音波受信装置に到達する回折波も存在する。この回折波は、透過波とほぼ同時刻に超音波受信装置で受信され、さらに、超音波送信装置及び超音波受信装置を検査対象物の側面に近づけるほど、超音波受信装置での受信レベルが大きくなりやすい。検査対象物の端部の検査を精度よく行うためには、検査対象物中を透過して超音波受信装置に到達する透過波の振幅を超音波受信装置での受信信号から精度よく検出する必要があり、そのためには、検査対象物を迂回して超音波受信装置に到達する回折波を抑制することが望ましい。
【0007】
本発明は、検査対象物を迂回して超音波受信装置に到達する回折波を抑制することで、検査対象物の端部の検査を精度よく行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る超音波検査装置及び超音波検査方法は、上述した目的を達成するために以下の手段を採った。
【0009】
本発明に係る超音波検査装置は、検査対象物の表面端部と対向配置される超音波送信面であって、超音波を検査対象物の表面端部へ送信する超音波送信面を含む超音波送信装置と、検査対象物を介して超音波送信面と対向するよう検査対象物の裏面端部と対向配置される超音波受信面であって、超音波送信面から送信され且つ検査対象物中を透過した超音波を受信する超音波受信面を含む超音波受信装置と、を備える超音波検査装置であって、超音波送信装置は、超音波送信面の周囲を全周に渡って取り囲み、超音波送信面の周囲より検査対象物の表面端部へ全周に渡って突出し、超音波送信面から検査対象物の表面端部へ超音波を空中伝搬させるための貫通穴が超音波送信面側の端部から検査対象物の表面側の端部にかけて形成された送信側超音波遮蔽部材であって、超音波送信面から送信された超音波が検査対象物を迂回して超音波受信面に到達するのを抑制するための送信側超音波遮蔽部材をさらに含むことを要旨とする。
【0010】
本発明の一態様では、超音波送信面は、検査対象物中に焦点が位置する凹曲面形状であり、送信側超音波遮蔽部材に形成された貫通穴の直径は、検査対象物の表面側が超音波送信面側より小さいことが好適である。
【0011】
本発明の一態様では、送信側超音波遮蔽部材の音響インピーダンスが検査対象物の音響インピーダンスより小さいことが好適である。
【0012】
本発明の一態様では、超音波受信装置は、超音波受信面の周囲を全周に渡って取り囲み、超音波受信面の周囲より検査対象物の裏面端部へ全周に渡って突出し、検査対象物の裏面端部から超音波受信面へ超音波を空中伝搬させるための貫通穴が超音波受信面側の端部から検査対象物の裏面側の端部にかけて形成された受信側超音波遮蔽部材であって、超音波送信面から送信された超音波が検査対象物を迂回して超音波受信面に到達するのを抑制するための受信側超音波遮蔽部材をさらに含むことが好適である。
【0013】
また、本発明に係る超音波検査装置は、検査対象物の表面端部と対向配置される超音波送信面であって、超音波を検査対象物の表面端部へ送信する超音波送信面を含む超音波送信装置と、検査対象物を介して超音波送信面と対向するよう検査対象物の裏面端部と対向配置される超音波受信面であって、超音波送信面から送信され且つ検査対象物中を透過した超音波を受信する超音波受信面を含む超音波受信装置と、を備える超音波検査装置であって、超音波受信装置は、超音波受信面の周囲を全周に渡って取り囲み、超音波受信面の周囲より検査対象物の裏面端部へ全周に渡って突出し、検査対象物の裏面端部から超音波受信面へ超音波を空中伝搬させるための貫通穴が超音波受信面側の端部から検査対象物の裏面側の端部にかけて形成された受信側超音波遮蔽部材であって、超音波送信面から送信された超音波が検査対象物を迂回して超音波受信面に到達するのを抑制するための受信側超音波遮蔽部材をさらに含むことを要旨とする。
【0014】
本発明の一態様では、超音波受信面は、検査対象物中に焦点が位置する凹曲面形状であり、受信側超音波遮蔽部材に形成された貫通穴の直径は、検査対象物の裏面側が超音波受信面側より小さいことが好適である。
【0015】
本発明の一態様では、受信側超音波遮蔽部材の音響インピーダンスが検査対象物の音響インピーダンスより小さいことが好適である。
【0016】
本発明の一態様では、検査対象物は、第1板状部材と第2板状部材が端部において接着層を介して接合されており、超音波送信面は、第1板状部材の表面端部と対向配置され、超音波を第1板状部材を介して接着層へ送信し、超音波受信面は、第1板状部材と接着層と第2板状部材を介して超音波送信面と対向するよう第2板状部材の裏面端部と対向配置され、超音波送信面から送信され且つ第1板状部材と接着層と第2板状部材を透過した超音波を受信することが好適である。
【0017】
また、本発明に係る超音波検査方法は、本発明に係る超音波検査装置を用いた超音波検査方法であって、検査対象物に対する超音波透過位置を2次元的に移動走査しながら、超音波送信装置から送信され且つ検査対象物中を透過した超音波を超音波受信装置で受信し、超音波受信装置で受信された、各超音波透過位置に対応する超音波の振幅に基づいて、検査対象物の検査を行うことを要旨とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、検査対象物の端部の検査を行う場合に、超音波送信面から送信された超音波が検査対象物を迂回して超音波受信面に回折波として到達するのを抑制することができるので、検査対象物中を透過して超音波受信面に到達する透過波の振幅を超音波受信面での受信信号から精度よく検出することができる。その結果、検査対象物の端部の検査を精度よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る超音波検査装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る超音波検査装置の概略構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る超音波検査装置の概略構成を示す図である。
【図4】超音波送信面から超音波受信面までにおける超音波の伝搬経路を説明する図である。
【図5】回折波の影響を調べるための超音波の測定条件を説明する図である。
【図6】鋼板を挟んで超音波送信センサ及び超音波受信センサを正対させた場合に超音波受信面で受信された超音波信号の波形を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る超音波検査装置の他の概略構成を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る超音波検査装置の他の概略構成を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る超音波検査装置において超音波受信面で受信された超音波信号の波形を示す図である。
【図10】超音波送信面及び超音波受信面の中心軸を移動させた場合に超音波受信面で受信された超音波信号の振幅の変化を示す図である。
【図11】検査対象物の一例を示す図である。
【図12A】超音波遮蔽キャップがない場合に各超音波透過位置に対応する超音波信号の振幅分布を画像化した結果を示す図である。
【図12B】超音波遮蔽キャップがある場合に各超音波透過位置に対応する超音波信号の振幅分布を画像化した結果を示す図である。
【図13】本発明の実施形態に係る超音波検査装置を用いた、鋼板同士の接着層による密着性の評価方法の一例を説明するフローチャートである。
【図14】本発明の実施形態に係る超音波検査装置の他の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態(以下実施形態という)を図面に従って説明する。
【0021】
図1〜3は本発明の実施形態に係る超音波検査装置の概略構成を示す図であり、図1は装置全体の概略構成を示し、図2,3は超音波送信センサ10及び超音波受信センサ20の概略構成を示す。本実施形態に係る超音波検査装置は、超音波送信センサ10と、超音波受信センサ20と、走査装置40と、超音波信号供給部41と、信号処理部42と、画像処理部44と、表示装置46と、検査判定部48と、を備える。
【0022】
検査対象物30は、板状部材である鋼板32,34と、鋼板32,34同士を端部において接合するための接着層36とを含んで構成され、鋼板32の裏面端部32bと鋼板34の表面端部34aが接着層36を介して接合されている。鋼板32,34間における接着層36が設けられていない領域は空隙となっている。以下の説明では、本実施形態に係る超音波検査装置を用いた検査対象物30の検査の適用例として、鋼板32,34の接着層36による密着性を評価する場合について説明する。
【0023】
超音波送信センサ10は、鋼板32を介して接着層36と対向するよう検査対象物30(鋼板32)の表面端部32aと対向配置される超音波送信面12と、送信側超音波遮蔽キャップ14とを含んで構成される。超音波送信面12は、例えば圧電素子等により構成することが可能である。超音波送信センサ10には、超音波信号供給部41からの超音波信号が供給される。超音波送信センサ10は、超音波信号供給部41から供給された超音波信号に基づいて、超音波送信面12から超音波を鋼板32の表面端部32aへ送信する。超音波送信面12から送信された超音波は、図1の矢印61に示すように、空中を伝搬して鋼板32の表面端部32aに入射する。鋼板32の表面端部32aに入射した超音波は、図1の矢印62に示すように、鋼板32を透過して接着層36に到達し、さらに、接着層36及び鋼板34を透過して検査対象物30(鋼板34)の裏面側に到達する。図1に示す例では、超音波送信センサ10はフォーカス型センサであり、超音波送信面12は、検査対象物30中(接着層36)に焦点38が位置する凹曲面形状であり、超音波送信面12から送信された超音波は、焦点38(接着層36)へ集束する。なお、送信側超音波遮蔽キャップ14の構成の説明については後述する。
【0024】
超音波受信センサ20は、検査対象物30(鋼板32と接着層36と鋼板34)を介して超音波送信面12と対向するよう検査対象物30(鋼板34)の裏面端部34bと対向配置される超音波受信面22と、受信側超音波遮蔽キャップ24とを含んで構成される。超音波受信面22も、例えば圧電素子等により構成することが可能である。検査対象物30(鋼板34)の裏面側に到達した超音波は、図1の矢印63に示すように、空中を伝搬して超音波受信面22に到達する。超音波受信センサ20は、超音波送信面12から送信され且つ検査対象物30(鋼板32と接着層36と鋼板34)を透過した超音波を超音波受信面22で受信する。図1に示す例では、超音波受信センサ20もフォーカス型センサであり、超音波受信面22も、検査対象物30中(接着層36)に焦点38が位置する凹曲面形状であり、焦点38に集束した超音波は、超音波受信面22全体に拡散して到達する。なお、受信側超音波遮蔽キャップ24の構成の説明については後述する。
【0025】
走査装置40は、超音波送信センサ10及び超音波受信センサ20(超音波送信面12及び超音波受信面22)を、鋼板32,34の板面方向と平行に2次元的に移動走査させる。これによって、検査対象物30に対して超音波送信面12及び超音波受信面22の焦点38を鋼板32,34の板面方向と平行に2次元的に移動走査させることができ、検査対象物30に対する超音波透過位置(密着性評価位置)を鋼板32,34の板面方向と平行に2次元的に移動走査させることができる。鋼板32,34の接着層36による密着性を評価する際には、走査装置40により検査対象物30に対する超音波透過位置を2次元的に移動走査しながら、超音波送信装置10から超音波を送信し、検査対象物30中を透過した超音波を超音波受信装置20で受信する。その際に、超音波送信センサ10及び超音波受信センサ20をフォーカス型センサとすることで、検査対象物30に対する密着性評価位置の空間分解能を向上させることが可能となる。
【0026】
信号処理部42は、超音波受信センサ20(超音波受信面22)で受信された、各超音波透過位置(密着性評価位置)に対応する超音波信号の振幅を検出する。画像処理部44は、信号処理部42で検出された超音波信号の振幅を、各超音波透過位置と対応付けて2次元面に画像化し、その2次元画像を表示装置46に表示させる。検査判定部48は、信号処理部42で検出された、各超音波透過位置に対応する超音波信号の振幅に基づいて、鋼板32,34の接着層36による密着性を評価することで、検査対象物30の検査を行う。例えば鋼板32(あるいは鋼板34)と接着層36との界面に剥離がある場合は、剥離が無い場合と比較して、検査対象物30(鋼板32と接着層36と鋼板34)を透過して超音波受信面22で受信される超音波信号のレベルが低下する。したがって、超音波受信面22で受信された、各超音波透過位置に対応する超音波の振幅を調べることで、鋼板32,34の接着層36による密着性を評価することが可能となる。
【0027】
鋼板32,34端部での接着層36による密着性を評価する場合は、超音波送信面12から超音波を鋼板32の表面端部32aへ向けて送信し、鋼板34の裏面端部34bからの超音波を超音波受信面22で受信する。その際に、超音波送信センサ10(フォーカス型センサ)から送信される超音波エネルギーのほとんどは、図4の矢印61,62に示すように、焦点38に向かって集束するが、一部は、図4の矢印64に示すように、センサより広がる方向に空中を伝搬する回折波となり、図4の矢印65,66に示すように、検査対象物30を迂回して超音波受信面22に到達する。その結果、超音波受信面22で受信される超音波には、図4の矢印61〜63に示すように、検査対象物30中(鋼板32と接着層36と鋼板34)を透過して超音波受信面22に到達する透過波だけでなく、実際には、図4の矢印64〜66に示すように、検査対象物30(鋼板32と接着層36と鋼板34)を迂回して超音波受信面22に到達する回折波も存在する。この回折波は、透過波とほぼ同時刻に超音波受信面22で受信され、さらに、超音波送信面12及び超音波受信面22を検査対象物30の側面(鋼板32,34の側面32c,34c)に近づけるほど、超音波受信面22での受信レベルが大きくなりやすい。鋼板32,34端部での接着層36による密着性を精度よく評価するためには、検査対象物30中を透過して超音波受信面22に到達する透過波の振幅を超音波受信面22での受信信号から精度よく検出する必要があり、そのためには、検査対象物30を迂回して超音波受信面22に到達する回折波を抑制することが望ましい。特に、検査対象物30が鋼板32と接着層36と鋼板34のような3層構造では、その領域を透過する超音波のエネルギーが非常に小さくなるため、超音波受信面22での受信信号にわずかなエネルギーの回折波が混入しても、密着性評価に大きな影響を与えることになる。
【0028】
図5に示すように、検査対象物30として一枚の鋼板33(SPC270、厚さ0.8mm)を挟んで、フォーカス型センサである超音波送信センサ10及び超音波受信センサ20(ただし送信側超音波遮蔽キャップ14及び受信側超音波遮蔽キャップ24は設けていない)を鋼板33と垂直に40mmの距離で正対させた場合に、超音波受信面22で受信された超音波信号の波形を図6に示す。鋼板33の側面(端面)33cから超音波送信面12及び超音波受信面22の中心軸までの距離Lが20mmの場合は、図6下の波形に示すように、鋼板33を迂回する回折波の影響をほとんど受けず、鋼板33中を透過する透過波を超音波受信面22での受信信号から検出することが可能である。しかし、鋼板33の側面(端面)33cからの距離Lが5mmの場合は、図6上の波形に示すように、回折波の影響が非常に大きく、信号処理部42の飽和電圧(2V)を超える電圧が測定され、鋼板33中を透過する透過波を超音波受信面22での受信信号から検出することは困難である。
【0029】
そこで、本実施形態では、超音波送信面12から送信された超音波が検査対象物30を迂回して超音波受信面22に回折波として到達するのを抑制するために、送信側超音波遮蔽キャップ14及び受信側超音波遮蔽キャップ24を超音波送信センサ10及び超音波受信センサ20にそれぞれ設けている。以下、超音波を遮蔽するための送信側超音波遮蔽キャップ14及び受信側超音波遮蔽キャップ24の構成例について説明する。
【0030】
図1〜3に示すように、送信側超音波遮蔽キャップ14は、超音波送信面12の周囲を全周に渡って取り囲み、超音波送信面12の周囲より検査対象物30(鋼板32)の表面端部32aへ全周に渡って突出して設けられており、超音波送信面12から鋼板32の表面端部32aへ超音波を空中伝搬させるための貫通穴14cが超音波送信面12側の端部から鋼板32の表面側の端部にかけて形成されている。送信側超音波遮蔽キャップ14の先端面14bと検査対象物30(鋼板32)の表面端部32aとの間には、僅かな(例えば3〜4mm程度の)空隙が形成される。あるいは、送信側超音波遮蔽キャップ14の先端面14bを鋼板32の表面端部32aに接触させることも可能である。
【0031】
広がる回折波成分を抑えて焦点38へ集束する成分のみを超音波受信面22から精度よく取り出すためには、送信側超音波遮蔽キャップ14の厚さを厚くすることで、送信側超音波遮蔽キャップ14中での超音波の減衰量を増加させることが好ましい。さらに、送信側超音波遮蔽キャップ14の貫通穴14cの内周面14aを、焦点38へ集束する成分を遮らないように、超音波送信面12の外周と焦点38とを結ぶ円錐面12aより外周側に配置するとともに、円錐面12aと内周面14aとの距離を短くすることが好ましい。そのためには、送信側超音波遮蔽キャップ14の内径(貫通穴14cの直径)は、検査対象物30(鋼板32)の表面側(図1,3の下側)が超音波送信面12側(図1,3の上側)より小さいことが好ましい。その際には、例えば図1〜3に示すように、超音波送信面12側から検査対象物30の表面側へ向かうにつれて、送信側超音波遮蔽キャップ14の内径(貫通穴14cの直径)を段階的に小さくすることも可能であるし、例えば図7,8に示すように、内周面14aを円錐面12aに近接配置するように、超音波送信面12側から検査対象物30の表面側へ向かうにつれて、送信側超音波遮蔽キャップ14の内径(貫通穴14cの直径)を徐々に小さくすることも可能である。なお、図1〜3に示す例では、送信側超音波遮蔽キャップ14の厚さは、検査対象物30の表面側が超音波送信面12側より厚く、図7に示す例では、送信側超音波遮蔽キャップ14の厚さは、超音波送信方向(鋼板32,34の板面と垂直方向)に関して一定であり、図8に示す例では、超音波送信面12側から検査対象物30の表面側へ向かうにつれて、送信側超音波遮蔽キャップ14の厚さが徐々に厚くなる。
【0032】
また、広がった回折波成分が送信側超音波遮蔽キャップ14の内部(内周面14a)で多重反射するとノイズの原因となる。回折波の内周面14aでの多重反射を抑えるためには、送信側超音波遮蔽キャップ14の音響インピーダンスは、検査対象物30(鋼板32,34)の音響インピーダンスより低いことが好ましい。例えば、送信側超音波遮蔽キャップ14の素材を、金属材料に比べて音響インピーダンスの低い樹脂製(例えばポリアセタール等)やゴム製とすることが可能である。
【0033】
図1〜3に示すように、受信側超音波遮蔽キャップ24は、超音波受信面22の周囲を全周に渡って取り囲み、超音波受信面22の周囲より検査対象物30(鋼板34)の裏面端部34bへ全周に渡って突出して設けられており、超音波受信面22から鋼板34の裏面端部34bへ超音波を空中伝搬させるための貫通穴24cが超音波受信面22側の端部から鋼板34の裏面側の端部にかけて形成されている。受信側超音波遮蔽キャップ24の先端面24bと検査対象物30(鋼板34)の表面端部34bとの間には、僅かな(例えば3〜4mm程度の)空隙が形成される。あるいは、受信側超音波遮蔽キャップ24の先端面24bを鋼板34の表面端部34bに接触させることも可能である。
【0034】
検査対象物30を迂回する回折波成分を抑えて焦点38から拡散する成分のみを超音波受信面22から精度よく取り出すためには、受信側超音波遮蔽キャップ24の厚さを厚くすることで、受信側超音波遮蔽キャップ24中での超音波の減衰量を増加させることが好ましい。さらに、受信側超音波遮蔽キャップ24の貫通穴24cの内周面24aを、焦点38から拡散する成分を遮らないように、超音波受信面22の外周と焦点38とを結ぶ円錐面22aより外周側に配置するとともに、円錐面22aと内周面24aとの距離を短くすることが好ましい。そのためには、受信側超音波遮蔽キャップ24の内径(貫通穴24cの直径)は、検査対象物30(鋼板34)の裏面側(図1,3の上側)が超音波受信面22側(図1,3の下側)より小さいことが好ましい。その際には、例えば図1〜3に示すように、超音波受信面22側から検査対象物30の裏面側へ向かうにつれて、受信側超音波遮蔽キャップ24の内径(貫通穴24cの直径)を段階的に小さくすることも可能であるし、例えば図7,8に示すように、内周面24aを円錐面22aに近接配置するように、受音波送信面22側から検査対象物30の裏面側へ向かうにつれて、受信側超音波遮蔽キャップ24の内径(貫通穴24cの直径)を徐々に小さくすることも可能である。なお、図1〜3に示す例では、受信側超音波遮蔽キャップ24の厚さは、検査対象物30の裏面側が超音波受信面22側より厚く、図7に示す例では、受信側超音波遮蔽キャップ24の厚さは、超音波受信方向(鋼板32,34の板面と垂直方向)に関して一定であり、図8に示す例では、超音波受信面22側から検査対象物30の裏面側へ向かうにつれて、受信側超音波遮蔽キャップ24の厚さが徐々に厚くなる。
【0035】
また、超音波が受信側超音波遮蔽キャップ24の内部(内周面24a)で多重反射するとノイズの原因となる。超音波の内周面24aでの多重反射を抑えるためには、受信側超音波遮蔽キャップ24の音響インピーダンスも、検査対象物30(鋼板32,34)の音響インピーダンスより低いことが好ましい。例えば、受信側超音波遮蔽キャップ24の素材も、金属材料に比べて音響インピーダンスの低い樹脂製(例えばポリアセタール等)やゴム製とすることが可能である。
【0036】
図1〜3に示す構成の送信側超音波遮蔽キャップ14及び受信側超音波遮蔽キャップ24がそれぞれ取り付けられた超音波送信センサ10及び超音波受信センサ20を、図5に示す鋼板33を挟んで正対させた場合に、超音波受信面22で受信された超音波信号の波形を図9に示す。超音波の測定の際には、超音波送信センサ10と超音波受信センサ20との距離を40mmとし、送信側超音波遮蔽キャップ14の先端面14bと鋼板33の表面との距離、及び受信側超音波遮蔽キャップ24の先端面24bと鋼板33の裏面との距離を約3.5mmとしている。図9は、鋼板33の側面(端面)33cから超音波送信面12及び超音波受信面22の中心軸までの距離Lが5mm、20mmの場合における波形に加えて、比較対象のため、送信側超音波遮蔽キャップ14及び受信側超音波遮蔽キャップ24が設けられていない場合(距離Lが20mm)における波形(図6下の波形と同じ)も示している。
【0037】
距離Lが20mmのときの波形は、超音波遮蔽キャップ14,24がある場合(図9中央)とない場合(図9下)とでほぼ同じであり、検査対象物30を透過する波形に超音波遮蔽キャップ14,24が影響しないことが示された。また、超音波遮蔽キャップ14,24がある場合において、距離Lが5mmのときの波形(図9上)と距離Lが20mmのときの波形(図9中央)とでは、約140μs辺りにある最初の波形は、よく似た波形で得られた。しかし、距離Lが5mmのときは、その後の波形は、非常に乱れたものとなっていた。これは、距離Lが5mmのときは、超音波遮蔽キャップ14,24があっても、回折波が測定されたことを示している。しかし、超音波遮蔽キャップ14,24がない場合(図6上の波形)と比べて、回折波が大きく減少しているため、最初に到達する透過波の波形を検出することができた。
【0038】
次に、鋼板33の側面(端面)33cを位置x=0mmとし、超音波送信面12及び超音波受信面22の中心軸を、鋼板33内側へ20mm(x=−20mm)の位置から鋼板33外側へ5mm(x=5mm)の位置まで0.5mmピッチで移動させた場合に、超音波受信面22で受信された超音波信号の振幅の変化を図10に示す。図10は、120μsから150μs間の測定波形の振幅最大値の変化を示しており、縦軸は2Vを基準(0dB)としてデシベル表示している。図10の左端(x=−20mm)の振幅値が図9中央及び下の波形の振幅に対応する。図10に示すように、超音波遮蔽キャップ14,24がない場合は、鋼板33の端面33cから約10mm(x=−10mm)まで回折波の影響を顕著に受けており、鋼板33の端面33cから10mm〜15mm間(x=−10mm〜x=−15mm)では、回折波と透過波との干渉によって起こると考えられる振幅変動が現れた。一方、超音波遮蔽キャップ14,24がある場合は、鋼板33の端面33cから3mm(x=−3mm)程度まで回折波の影響を受け、鋼板33の端面33cから3mm〜6mm間(x=−3mm〜x=−6mm)に干渉による振幅変動が見られるものの、超音波遮蔽キャップ14,24がない場合と比べて回折波の影響を大きく抑えることができた。
【0039】
次に、鋼板32,34端部に接着層36がある検査対象物30を作製し、この検査対象物30を挟んで超音波送信センサ10及び超音波受信センサ20を正対させた場合に、超音波受信面22で受信された超音波信号の振幅分布の画像化を行った。検査対象物30は、板厚0.8mmの鋼板32,34(SPC270)を両面テープ(接着層)36で張り合わせた構造とした。図11に、鋼板32,34の張り合わせの前に両面テープ(接着層)36を設置した状態と各部の寸法を示す。
【0040】
検査対象物30に対する超音波透過位置(密着性評価位置)を走査装置40により2次元的に移動走査させた場合に、各超音波透過位置に対応する超音波信号の振幅分布を画像処理部44により画像化した結果を図12A,12Bに示す。図12Aは超音波遮蔽キャップ14,24がない場合の振幅分布の画像を表し、図12Bは超音波遮蔽キャップ14,24がある場合の振幅分布の画像を表す。図12A,12Bでは、振幅最大値となる2Vを基準(0dB)としてデシベル表示しており、−20dBから−40dBを濃淡で示し、濃いほど振幅が大きい。また、図12A,12B中の白破線は、検査対象物30(鋼板32,34)の側面(端面)32c,34c(図1参照)である。
【0041】
図12Aに示すように、超音波遮蔽キャップ14,24がない場合は、回折波の影響によって振幅の小さい白の領域が狭くなっており、両面テープ36の存在が分かりにくくなっている。また、両面テープ36の存在が確認可能な領域においても、鋼板32,34の端面32c,34cに沿った縞模様が現れており、鋼板32,34と両面テープ36との密着性良否の分布を示しているとは言い難い。これは、図10中のx=−10mm〜x=−15mmに現れた、回折波と透過波との干渉による振幅変動に起因した縞模様である。
【0042】
一方、図12Bに示すように、超音波遮蔽キャップ14,24がある場合は、両面テープ36の接着領域の画像が鮮明に現れており、超音波遮蔽キャップ14,24が接着領域の画像化に大きな効果を与えていることがわかる。鋼板32,34の端面32c,34cから5mm程度までは、図10の結果と同様に、回折波の影響を受け、受信振幅が黒い領域となって現れているものの、端面32c,34cから5mm以上では、図10の結果と同様に、両面テープ36の輪郭が鮮明に現れており、鋼板32,34と両面テープ36との接着分布と考えられる分布も表示できている。両面テープ36における振幅の小さい白の領域は、鋼板32,34と両面テープ36との密着性が不十分な領域であると考えられる。
【0043】
以上説明した本実施形態によれば、鋼板32,34端部での接着層36による密着性を評価する場合に、送信側超音波遮蔽キャップ14及び受信側超音波遮蔽キャップ24により、超音波送信面12から送信された超音波が検査対象物30を迂回して超音波受信面22に回折波として到達するのを抑制することができる。したがって、検査対象物30中(鋼板32と接着層36と鋼板34)を透過して超音波受信面22に到達する透過波の振幅を超音波受信面22での受信信号から精度よく検出することができる。その結果、鋼板32,34端部での接着層36による密着性を精度よく評価することができる。さらに、送信側超音波遮蔽キャップ14を超音波送信センサ10自体、受信側超音波遮蔽キャップ24を超音波受信センサ20自体にそれぞれ設置することで、超音波送信センサ10及び超音波受信センサ20の走査の際には、超音波送信面12及び超音波受信面22とともに超音波遮蔽キャップ14及び受信側超音波遮蔽キャップ24も移動させることができる。その結果、回折波を抑制しながらの超音波送信センサ10及び超音波受信センサ20の走査が容易となる。
【0044】
以下、本実施形態に係る超音波検査装置を用いた超音波検査方法として、鋼板32,34の接着層36による密着性の評価方法について、図13のフローチャートを用いて説明する。まずステップS101では、超音波送信センサ10及び超音波受信センサ20を互いに正対させ、最も大きな超音波エネルギーを取得できるセンサ間距離を予め求めておく。次にステップS102では、超音波が空中を伝搬する距離及び検査対象物30中(鋼板32と接着層36と鋼板34)を伝搬する距離と、それらの音速とを考慮して、超音波受信面22に超音波(透過波)が到達する時間位置を決定する。
【0045】
ステップS103では、超音波受信面22に透過波が到達する時間位置に、ある幅を持たせて時間ゲートを設定し、その時間ゲートにおける超音波信号(透過波)の振幅最大値を信号処理部42により検出する。次にステップS104では、超音波送信センサ10及び超音波受信センサ20を走査装置40により2次元的に移動走査しながら、超音波信号(透過波)の計測を繰り返し、各走査点(密着性評価位置)における超音波信号(透過波)の振幅最大値を記録していく。次にステップS105では、密着性評価位置の走査が完了したか否かが判定される。走査が完了していない場合(ステップS105の判定結果がNOの場合)は、ステップS103に戻る。一方、走査が完了した場合(ステップS105の判定結果がYESの場合)は、ステップS106に進む。
【0046】
ステップS106では、各走査点における超音波信号の振幅最大値の分布を取得し、各走査点のうち、端面近傍の回折波の影響のある領域を密着性評価対象から除外する。次にステップS107では、密着性評価対象領域において、超音波信号の振幅最大値を予め設定された閾値と比較することで、密着性の良否を検査判定部48により判定する。
【0047】
以上の説明では、超音波送信センサ10及び超音波受信センサ20がフォーカス型センサであり、超音波送信面12及び超音波受信面22が検査対象物30中(接着層36)に焦点38を有する凹曲面形状である場合について説明した。ただし、本実施形態では、超音波送信センサ10及び超音波受信センサ20がフォーカス型センサでなくてもよく、例えば図14に示すように、超音波送信面12及び超音波受信面22が平面であってもよい。その場合は、送信側超音波遮蔽キャップ14の貫通穴14cの内周面14aを、検査対象物30に入射する超音波成分を遮らないように、超音波送信面12の外周から延びる円柱面12aより外周側に配置するとともに、内周面14aを円柱面12aに近接配置することが好ましい。同様に、受信側超音波遮蔽キャップ24の貫通穴24cの内周面24aも、超音波受信面22の外周から延びる円柱面22aより外周側に配置するとともに、内周面24aを円柱面22aに近接配置することが好ましい。
【0048】
以上の説明では、送信側超音波遮蔽キャップ14及び受信側超音波遮蔽キャップ24を超音波送信センサ10及び超音波受信センサ20にそれぞれ設けた場合について説明した。ただし、本実施形態では、送信側超音波遮蔽キャップ14だけを超音波送信センサ10に設けることも可能であるし、受信側超音波遮蔽キャップ24だけを超音波受信センサ20に設けることも可能である。その場合でも、超音波送信面12から送信された超音波が検査対象物30を迂回して超音波受信面22に回折波として到達するのを抑制することが可能である。
【0049】
以上の説明では、本実施形態に係る超音波検査装置を用いた検査対象物30の検査の適用例として、鋼板32,34の接着層36による密着性を評価する場合について説明した。ただし、本実施形態に係る超音波検査装置は、鋼板32,34の接着層36による密着性の評価以外に、例えば検査対象物30の内部欠陥の検査等にも適用することが可能である。
【0050】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0051】
10 超音波送信センサ、12 超音波送信面、14 送信側超音波遮蔽キャップ、20 超音波受信センサ、22 超音波受信面、24 受信側超音波遮蔽キャップ、30 検査対象物、32,34 鋼板、36 接着層(両面テープ)、38 焦点、40 走査装置、41 超音波信号供給部、42 信号処理部、44 画像処理部、46 表示装置、48 検査判定部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の表面端部と対向配置される超音波送信面であって、超音波を検査対象物の表面端部へ送信する超音波送信面を含む超音波送信装置と、
検査対象物を介して超音波送信面と対向するよう検査対象物の裏面端部と対向配置される超音波受信面であって、超音波送信面から送信され且つ検査対象物中を透過した超音波を受信する超音波受信面を含む超音波受信装置と、
を備える超音波検査装置であって、
超音波送信装置は、超音波送信面の周囲を全周に渡って取り囲み、超音波送信面の周囲より検査対象物の表面端部へ全周に渡って突出し、超音波送信面から検査対象物の表面端部へ超音波を空中伝搬させるための貫通穴が超音波送信面側の端部から検査対象物の表面側の端部にかけて形成された送信側超音波遮蔽部材であって、超音波送信面から送信された超音波が検査対象物を迂回して超音波受信面に到達するのを抑制するための送信側超音波遮蔽部材をさらに含む、超音波検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波検査装置であって、
超音波送信面は、検査対象物中に焦点が位置する凹曲面形状であり、
送信側超音波遮蔽部材に形成された貫通穴の直径は、検査対象物の表面側が超音波送信面側より小さい、超音波検査装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の超音波検査装置であって、
送信側超音波遮蔽部材の音響インピーダンスが検査対象物の音響インピーダンスより小さい、超音波検査装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1に記載の超音波検査装置であって、
超音波受信装置は、超音波受信面の周囲を全周に渡って取り囲み、超音波受信面の周囲より検査対象物の裏面端部へ全周に渡って突出し、検査対象物の裏面端部から超音波受信面へ超音波を空中伝搬させるための貫通穴が超音波受信面側の端部から検査対象物の裏面側の端部にかけて形成された受信側超音波遮蔽部材であって、超音波送信面から送信された超音波が検査対象物を迂回して超音波受信面に到達するのを抑制するための受信側超音波遮蔽部材をさらに含む、超音波検査装置。
【請求項5】
検査対象物の表面端部と対向配置される超音波送信面であって、超音波を検査対象物の表面端部へ送信する超音波送信面を含む超音波送信装置と、
検査対象物を介して超音波送信面と対向するよう検査対象物の裏面端部と対向配置される超音波受信面であって、超音波送信面から送信され且つ検査対象物中を透過した超音波を受信する超音波受信面を含む超音波受信装置と、
を備える超音波検査装置であって、
超音波受信装置は、超音波受信面の周囲を全周に渡って取り囲み、超音波受信面の周囲より検査対象物の裏面端部へ全周に渡って突出し、検査対象物の裏面端部から超音波受信面へ超音波を空中伝搬させるための貫通穴が超音波受信面側の端部から検査対象物の裏面側の端部にかけて形成された受信側超音波遮蔽部材であって、超音波送信面から送信された超音波が検査対象物を迂回して超音波受信面に到達するのを抑制するための受信側超音波遮蔽部材をさらに含む、超音波検査装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の超音波検査装置であって、
超音波受信面は、検査対象物中に焦点が位置する凹曲面形状であり、
受信側超音波遮蔽部材に形成された貫通穴の直径は、検査対象物の裏面側が超音波受信面側より小さい、超音波検査装置。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1に記載の超音波検査装置であって、
受信側超音波遮蔽部材の音響インピーダンスが検査対象物の音響インピーダンスより小さい、超音波検査装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1に記載の超音波検査装置であって、
検査対象物は、第1板状部材と第2板状部材が端部において接着層を介して接合されており、
超音波送信面は、第1板状部材の表面端部と対向配置され、超音波を第1板状部材を介して接着層へ送信し、
超音波受信面は、第1板状部材と接着層と第2板状部材を介して超音波送信面と対向するよう第2板状部材の裏面端部と対向配置され、超音波送信面から送信され且つ第1板状部材と接着層と第2板状部材を透過した超音波を受信する、超音波検査装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1に記載の超音波検査装置を用いた超音波検査方法であって、
検査対象物に対する超音波透過位置を2次元的に移動走査しながら、超音波送信装置から送信され且つ検査対象物中を透過した超音波を超音波受信装置で受信し、
超音波受信装置で受信された、各超音波透過位置に対応する超音波の振幅に基づいて、検査対象物の検査を行う、超音波検査方法。
【請求項1】
検査対象物の表面端部と対向配置される超音波送信面であって、超音波を検査対象物の表面端部へ送信する超音波送信面を含む超音波送信装置と、
検査対象物を介して超音波送信面と対向するよう検査対象物の裏面端部と対向配置される超音波受信面であって、超音波送信面から送信され且つ検査対象物中を透過した超音波を受信する超音波受信面を含む超音波受信装置と、
を備える超音波検査装置であって、
超音波送信装置は、超音波送信面の周囲を全周に渡って取り囲み、超音波送信面の周囲より検査対象物の表面端部へ全周に渡って突出し、超音波送信面から検査対象物の表面端部へ超音波を空中伝搬させるための貫通穴が超音波送信面側の端部から検査対象物の表面側の端部にかけて形成された送信側超音波遮蔽部材であって、超音波送信面から送信された超音波が検査対象物を迂回して超音波受信面に到達するのを抑制するための送信側超音波遮蔽部材をさらに含む、超音波検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波検査装置であって、
超音波送信面は、検査対象物中に焦点が位置する凹曲面形状であり、
送信側超音波遮蔽部材に形成された貫通穴の直径は、検査対象物の表面側が超音波送信面側より小さい、超音波検査装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の超音波検査装置であって、
送信側超音波遮蔽部材の音響インピーダンスが検査対象物の音響インピーダンスより小さい、超音波検査装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1に記載の超音波検査装置であって、
超音波受信装置は、超音波受信面の周囲を全周に渡って取り囲み、超音波受信面の周囲より検査対象物の裏面端部へ全周に渡って突出し、検査対象物の裏面端部から超音波受信面へ超音波を空中伝搬させるための貫通穴が超音波受信面側の端部から検査対象物の裏面側の端部にかけて形成された受信側超音波遮蔽部材であって、超音波送信面から送信された超音波が検査対象物を迂回して超音波受信面に到達するのを抑制するための受信側超音波遮蔽部材をさらに含む、超音波検査装置。
【請求項5】
検査対象物の表面端部と対向配置される超音波送信面であって、超音波を検査対象物の表面端部へ送信する超音波送信面を含む超音波送信装置と、
検査対象物を介して超音波送信面と対向するよう検査対象物の裏面端部と対向配置される超音波受信面であって、超音波送信面から送信され且つ検査対象物中を透過した超音波を受信する超音波受信面を含む超音波受信装置と、
を備える超音波検査装置であって、
超音波受信装置は、超音波受信面の周囲を全周に渡って取り囲み、超音波受信面の周囲より検査対象物の裏面端部へ全周に渡って突出し、検査対象物の裏面端部から超音波受信面へ超音波を空中伝搬させるための貫通穴が超音波受信面側の端部から検査対象物の裏面側の端部にかけて形成された受信側超音波遮蔽部材であって、超音波送信面から送信された超音波が検査対象物を迂回して超音波受信面に到達するのを抑制するための受信側超音波遮蔽部材をさらに含む、超音波検査装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の超音波検査装置であって、
超音波受信面は、検査対象物中に焦点が位置する凹曲面形状であり、
受信側超音波遮蔽部材に形成された貫通穴の直径は、検査対象物の裏面側が超音波受信面側より小さい、超音波検査装置。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1に記載の超音波検査装置であって、
受信側超音波遮蔽部材の音響インピーダンスが検査対象物の音響インピーダンスより小さい、超音波検査装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1に記載の超音波検査装置であって、
検査対象物は、第1板状部材と第2板状部材が端部において接着層を介して接合されており、
超音波送信面は、第1板状部材の表面端部と対向配置され、超音波を第1板状部材を介して接着層へ送信し、
超音波受信面は、第1板状部材と接着層と第2板状部材を介して超音波送信面と対向するよう第2板状部材の裏面端部と対向配置され、超音波送信面から送信され且つ第1板状部材と接着層と第2板状部材を透過した超音波を受信する、超音波検査装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1に記載の超音波検査装置を用いた超音波検査方法であって、
検査対象物に対する超音波透過位置を2次元的に移動走査しながら、超音波送信装置から送信され且つ検査対象物中を透過した超音波を超音波受信装置で受信し、
超音波受信装置で受信された、各超音波透過位置に対応する超音波の振幅に基づいて、検査対象物の検査を行う、超音波検査方法。
【図4】
【図5】
【図11】
【図1】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図5】
【図11】
【図1】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−112851(P2012−112851A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263084(P2010−263084)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】
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