説明

超音波洗浄装置及び方法

【課題】均等、かつ、効率よく洗浄物を洗浄することができ、これにより、洗浄物の品質の向上及び低コスト化を図ることができる超音波洗浄装置を提供すること。
【解決手段】洗浄液を収容する洗浄槽と、洗浄物を保持して洗浄液に浸漬される洗浄物保持手段と、洗浄槽内の洗浄液に対して超音波振動を印加する振動印加手段と、を備えた超音波洗浄装置であって、振動印加手段は、平面状の振動板と、この振動板上に規則的に配置された複数の超音波振動子と、を備えると共に、洗浄物保持手段は、複数の洗浄物を振動板に対して平行に配置して保持する保持面を有し、振動板と保持面とが相対的に平行に移動するよう、振動印加手段及び/又は洗浄物保持手段を可動する可動手段を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波洗浄装置にかかり、特に、洗浄液中に放射させた超音波の振動エネルギーにて洗浄物に付着した汚れを除去して洗浄する超音波洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップにて構成される電子部品やサイズの小さい精密部品などは、その用途によっては高い清浄度が求められ、製造された後に製品として出荷あるいは装置に組み込まれる前に洗浄が行われる。例えば、磁気ディスクに対して低浮上化が要求されている磁気ヘッドスライダは、磁気ディスク装置に組み込まれることから高い清浄度が要求されており、さらに、その位置決め精度も高度に要求される部品であるため、より確実な洗浄が要求される。
【0003】
そして、上述したような電子部品等を洗浄する装置として、従来より、超音波洗浄装置が用いられている。この超音波洗浄は、超音波振動子の振動を振動板に伝え、その振動を洗浄液中に放射させ、振動によるエネルギー、つまり、キャビテーションによる衝撃波で、洗浄対象物に付着した汚れを除去する、という方法にて行われている。ここで、超音波振動により洗浄液中に発生するキャビテーションについて、図22を参照して説明する。なお、超音波洗浄装置は、図21(a)に示すように、洗浄液210が収容された洗浄槽201の底面に超音波振動子202を配置し、この超音波振動子の上方に洗浄物131を保持した洗浄物ホルダ103を備えた構成を採っている。
【0004】
図22(a)は、超音波振動によって洗浄液中に発生した定在波Uの理論上の波形を示している。このように、定在波Uは、理論的には、洗浄槽の底面から水面に向かって減衰することなく液深方向(上方)に伝達する。しかし、現実的には、定在波Uは、図22(b)に示すように、溶液中の残存酸素や他のガスが超音波のエネルギーを吸収するため、発信元つまり底面から離れるに伴いエネルギーが低くなる。つまり、洗浄槽の底面付近の洗浄効果は高いが、底面から離れるにつれて洗浄効果が低下する、という問題が生じる。特に、洗浄槽内に洗浄物を載置する載置台を複数段設ける場合には、上述したように溶液によって上層の載置台付近ほど超音波エネルギーが弱くなると共に、下層の載置台によっても超音波エネルギーが減衰されるため、上方に行けば行くほどさらに洗浄効果が低下する、という問題が生じる。さらには、定在波Uの腹の部分と節の部分とでも洗浄力が異なる。以上のことから、洗浄物に対する均一な洗浄を実施することができない、という問題があった。
【0005】
これに対し、特許文献1には、洗浄槽の底面に超音波振動子を配置すると共に、図21(b)の矢印101に示すように、洗浄液中の洗浄物131を支持する洗浄物ホルダ103を、超音波振動子202に対して上下動させる、という構成の超音波洗浄装置が開示されている。これにより、洗浄物は、上述した超音波振動による定在波Uの腹部分と節部分とに交互に位置することとなり、均等なエネルギーを供給し、均一な洗浄を実現することを目的としている。
【0006】
しかしながら、上述した洗浄エネルギーのムラの発生、つまり、キャビテーションが不均一に発生することは、超音波振動の伝播方向、つまり、上記例では、液深方向だけではなく、同一液深面においても発生しうる。例えば、後述する図11,図12等に示すように、超音波振動子の中心からの距離が離れるほどエネルギーが弱くなる。従って、洗浄液中の所定の液深において、同一平面上で均等な超音波エネルギーとするために、超音波振動子を隙間無く張り合わせることが考えられるが、隣り合う振動子が振動を抑制し合うという不都合が生じるため、適切な振動を得ることができない。さらには、隣り合う振動子が互いにストレスを受け易いため、振動子の寿命や腐食を進行させてしまう、という問題が生じる。
【0007】
また、特許文献2,3には、超音波振動子を洗浄液中で遥動させたり、あるいは、洗浄物を載置した載置台を、水平面に平行に回転させる、という構成の洗浄装置が開示されている。かかる構成によると、超音波振動子と洗浄物との上下方向、あるいは、水平方向への位置関係が変化されるため、様々な強度の超音波が洗浄物に照射されることになり、均一な洗浄を図っている。
【0008】
【特許文献1】特開平8−267029号公報
【特許文献2】特許第3641383号公報
【特許文献3】特開平5−50047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来例では、超音波振動子が発生させる超音波の強度には当該超音波振動子の形状や配置によってばらつきがあるため、依然として均等かつ効率的な洗浄を実施することができない。例えば、特許文献2では、超音波振動子を遥動させているため、場所によっては超音波振動子と洗浄物との距離が離れてしまい、洗浄効果が低下しうる。また、特許文献3では、回転する載置台に対して半径方向に延びる超音波振動子を配置しているため、内周側と外周側とでは洗浄効果が異なり、また、振動子の配置も少なく、均等かつ効率よく洗浄を実行することができない、という問題が生じていた。
【0010】
このため、本発明では、上記従来例の有する不都合を改善し、特に、均等、かつ、効率よく洗浄物を洗浄することができ、これにより、洗浄物の品質の向上及び低コスト化を図ることができる超音波洗浄装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明の一形態は、
洗浄液を収容する洗浄槽と、洗浄物を保持して洗浄液に浸漬される洗浄物保持手段と、洗浄槽内の洗浄液に対して超音波振動を印加する振動印加手段と、を備えた超音波洗浄装置であって、
振動印加手段は、平面状の振動板と、この振動板上に規則的に配置された複数の超音波振動子と、を備えると共に、
洗浄物保持手段は、複数の洗浄物を振動板に対して平行に配置して保持する保持面を有し、
振動板と保持面とが相対的に平行に移動するよう、振動印加手段及び/又は洗浄物保持手段を可動する可動手段を備えた、
ことを特徴としている。
【0012】
上記発明によると、まず、振動印加手段の振動板に規則的に配置された超音波振動子の振動により、洗浄液に対して超音波振動が印加される。そして、この超音波振動が洗浄液を介して洗浄物に供給されることで、当該洗浄物の汚れを振動させて除去し、これにより、超音波洗浄が行われる。このとき、振動板と保持面とが相対的に平行に移動するよう少なくとも一方が可動される。すると、洗浄液の同一液深の平面において強度がばらついて発生している超音波振動のエネルギーが、振動印加手段に対する洗浄物の相対的な平行移動によって、均等に供給されることとなり、かつ、一定値以上のエネルギーが供給される。従って、洗浄物の洗浄のムラを抑制し、効率よく洗浄物を洗浄することができ、洗浄物の品質の向上及び低コスト化を図ることができる。
【0013】
また、振動印加手段の振動板を、当該振動板の平面が前記洗浄槽に収容された洗浄液の液面と平行になるよう配置した、ことを特徴としている。これにより、振動板から発生された超音波振動が液面と空気との界面で反射するため、洗浄液中にエネルギーの高い超音波振動を発生させることができ、超音波洗浄の効率化を図ることができる。
【0014】
また、可動手段は、振動板にて形成される平面に対して平行な相互に直交する2軸方向、及び、当該平面に対して垂直な軸周りの回転方向、の3方向のうち少なくとも1方向に振動印加手段及び/又は洗浄物保持手段を可動する、ことを特徴としている。このとき、可動手段は、振動印加手段と洗浄物保持手段とが同時に同一の方向に可動しないよう制御すると望ましい。そして、特に、可動手段による振動印加手段と洗浄物保持手段との相対的な可動距離は、可動手段による可動方向に隣接して配置されている超音波振動子の相互間における距離と同一の距離以下であり、その半分の距離以上である、となお望ましい。
【0015】
上記構成により、振動印加手段及び/又は洗浄物保持手段を平行な状態に保ったまま、当該平行方向におけるX,Y方向や回転方向に可動することで、洗浄液の同一液深における平面上において、超音波振動の強度のばらつきをより均等化して洗浄物に供給ことができ、洗浄のムラを抑制することができる。特に、隣り合う超音波振動子との距離に応じて可動距離を設定することで、超音波振動子間の強度のばらつきを補うことができ、より均等化することができる。
【0016】
また、上記振動印加手段は、超音波振動子を複数列に配置すると共に、隣り合う列に配置された超音波振動子同士を当接させず、上記複数列を列同士の隙間をあけずに配列した、ことを特徴としている。そして、上記振動印加手段は、超音波振動子がそれぞれ同一の間隔で配置された第一の列と第二の列とを交互に配列して備え、第一の列における超音波振動子の間に、第二の列における超音波振動子が位置するよう、第一及び第二の列に超音波振動子をそれぞれ配置した、ことを特徴としている。また、上記振動印加手段には、各超音波振動子の外縁同士が4mm以上離れて配置されている、ことを特徴としている。これにより、超音波振動子が適切に振動すると共に、当該振動子の間隔が狭く配置されていて上述したように洗浄物を平行に可動しているため、洗浄に適した強度のエネルギーの超音波振動をより均等に洗浄物に供給することができる。
【0017】
また、上記超音波振動子は、ランジュバン型振動子であると望ましく、特に、振動板にスタットボルトにて取り付け可能なスタットボルト式ランジュバン型振動子である、となお望ましい。このように、超音波振動子として、ボルトにて中央部分が締め付けられて構成されているランジュバン型振動子を用いることで、その中央部分における振動素子の存在が少なく、当該中央部分から発生する振動の振幅が低くなる。特に、スタットボルト式のものを用いることで、さらにスタットボルトが挿通される中央部分に振動素子が存在せず、振幅を減少させることができる。従って、洗浄液に印加する振動の低周波成分を低減させることができ、洗浄物を振動させずに汚れのみを振動させる高周波成分を多く発生させ、洗浄物に供給させることができる。その結果、洗浄効果を維持しつつ、洗浄物へのダメージを軽減することができ、洗浄物の品質の向上を図ることができる。
【0018】
また、本発明の他の形態である超音波洗浄方法は、
洗浄液を収容する洗浄槽と、
平面状の振動板と、当該振動板上に規則的に配置され洗浄槽内の洗浄液に対して超音波振動を印加する複数の超音波振動子と、を備えた振動印加手段と、
複数の洗浄物を振動板に対して平行に配置して保持する保持面を有し、洗浄物を保持して洗浄液に浸漬される洗浄物保持手段と、
を備えた超音波洗浄装置による超音波洗浄方法であって、
振動印加手段にて洗浄液に対して超音波振動を印加して洗浄物の洗浄を行う洗浄工程と、
この洗浄工程中に、振動板と保持面とが相対的に平行に移動するよう、振動印加手段及び/又は洗浄物保持手段を可動する可動工程と、
を有することを特徴としている。
【0019】
そして、可動工程は、振動板にて形成される平面に対して平行な相互に直交する2軸方向、及び、当該平面に対して垂直な軸周りの回転方向、の3方向のうち少なくとも1方向に振動印加手段及び/又は洗浄物保持手段を可動する、ことを特徴としている。このとき、可動工程は、振動印加手段と洗浄物保持手段とが同時に同一の方向に可動しないよう制御する、と望ましく、また、可動工程は、当該可動工程による可動方向に隣接して配置されている超音波振動子の相互間における距離と同一の距離以下、かつ、その半分の距離以上に、振動印加手段及び/又は洗浄物保持手段を相対的に可動する、となお望ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、以上のように構成され機能するので、これによると、洗浄液の同一液深において強度がばらついて発生している超音波振動が、少なくとも洗浄物の保持面付近における所定の範囲では、一定値以上のエネルギーを有し、かつ、均等となり、洗浄物に供給される。従って、洗浄物の洗浄のムラを抑制し、また、効率よく洗浄物を洗浄することができ、洗浄物の品質の向上及び低コスト化を図ることができる、という従来にない優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明における超音波洗浄装置は、振動装置と平行に配置された洗浄物に供給される超音波振動の強度が均等となるよう構成されている点に特徴を有する。以下、具体的な構成及び動作を、実施例にて説明する。
【実施例1】
【0022】
本発明の第1の実施例を、図1乃至図9を参照して説明する。図1は、超音波振動装置の構成を示す概略図であり、図2は、その動作を示す説明図である。図3乃至図9は、超音波振動子の配置及びこれによる超音波振動の強度についての説明図である。
【0023】
[構成]
本実施例における超音波洗浄装置は、図1に示すように、洗浄液10を収容する洗浄槽1と、洗浄物31を保持して洗浄液10に浸漬される洗浄物ホルダ3(洗浄物保持手段)と、洗浄槽1内の洗浄液10に対して超音波振動を印加する振動装置2(振動印加手段)と、を備えている。そして、洗浄液10は、例えば、純水、イソプロピルアルコール、グレーコールフタレート、中性洗剤、などである。また、洗浄物ホルダ3に保持される洗浄物31は、磁気ヘッドスライダなどの電子部品や他の部品である。そして、振動装置2の構成については後述するが、洗浄液10が収容されている洗浄槽1の底面に載置されており、その上方つまり洗浄液10中に、洗浄物31が保持された洗浄物ホルダ3が、図示しない支持装置にて所定の液深位置に支持されて配置されている。
【0024】
さらに、本実施例では、洗浄物ホルダ3が洗浄槽1内で可動する駆動装置4と、この駆動装置4による可動状態を制御するコントローラ5と、が装備されている(可動手段)。なお、駆動装置4は、図1では洗浄槽1の外に装備されているよう図示しているが、洗浄槽1内に装備されており、洗浄物ホルダ3を所定の液深位置にて洗浄液10中に支持する図示しない支持装置が駆動装置4を兼ねて構成されていてもよい。
【0025】
ここで、上記振動装置2についてさらに詳述する。図3(a)に示すように、本実施例における振動装置2は、平面状の振動板21と、この振動板21上に規則的に配置された複数の超音波振動子22と、を備えている。そして、振動板21は、洗浄液10が収容された洗浄槽1の底面に載置されて配備されるため、底面と液面に平行に配置された状態となる。これにより、超音波振動子22及び振動板21から発生された超音波振動が、液面と空気との界面で反射するため、洗浄液10中にエネルギーの高い超音波振動を発生させることができる。なお、超音波振動子22は、洗浄槽1の底面に直接設けられていてもよい。つまり、洗浄槽1の底面が振動装置2の一部である上記振動板21として機能していてもよい。
【0026】
そして、本実施例における振動装置2には、図3(a)に示すように、超音波振動子22が振動板21上に配置されている。但し、超音波振動子22は、振動板21の上面側に装備されていてもよく、裏面側に装備されていてもよい。ここで、超音波振動子22の配置について、図4を参照して説明する。図4(a)は、振動装置2の振動板21上に配置された超音波振動子22の一部を示す簡略図であり、図示するように、超音波振動子22は、複数列L1,L2に配置されている。具体的には、超音波振動子22が等間隔に1列に配置された第一の列L1と、同じく等間隔に一列に配置された第二の列L2とが、それぞれ隣り合って各列同士の隙間を空けずに、交互に配列されている。つまり、隣り合う第一の列L1と第2の列L2において、第一の列L1に配置された超音波振動子22の外縁を結ぶ直線(点線)と、第二の列L2に配置された超音波振動子22の外縁を結ぶ直線(点線)とが重なるよう、隣接して配置されている。そして、各列L1,L2における超音波振動子22の間隔は、それぞれ同一であるが、隣り合う列L1,L2に配置された各超音波振動子22が相互に当接しないよう、各列L1,L2にて超音波振動子22の位置がずらされて配置されている。具体的には、第一の列L1に一列に配置された各超音波振動子22の間に、第二の列L2に一列に配置された各超音波振動子22が位置するよう配置されている。ここで、超音波振動子22の直径φは、一例として45mmであるが、各超音波振動子22の外縁間はそれぞれD=4mm以上離間するよう配置されている。このように、超音波振動子22間の距離Dを4mm以上とした理由は、超音波振動子22が振動しても隣接する超音波振動子に当接しないようにするためである。
【0027】
そして、超音波振動子22が上述したように配置されている場合の同一液深における超音波振動の強度分布を、図3(b)に示す。このように、同一液深における平面上では、超音波振動の強度にばらつきが生じることとなる。特に、超音波振動子22の中心付近における強度が強く、その周辺が弱くなり、上述したように超音波振動子22間の隙間を小さく設定して規則的に配置しているにも関わらず、強度にばらつきが生じうる。但し、本実施例では、さらに、以下に説明するように洗浄物ホルダ3を可動するよう構成することで、上記問題を解決している。
【0028】
次に、洗浄物ホルダ3及びその駆動装置4について説明する。洗浄物ホルダ3は、図2に示すように、複数の洗浄物31が載置される保持面を有しており、この保持面は略平面状である。そして、この保持面が上述した洗浄槽1の底面及び洗浄液10の液面に平行に配置されており、つまり、振動装置2の振動板21に平行に配置されている。なお、洗浄物ホルダ3は、洗浄液10が多く洗浄物31に触れるようメッシュ部材で押さえて保持する構造を採っていたり、さらには、振動装置2と対向する下面側で洗浄物31を保持している。
【0029】
また、洗浄物ホルダ3は、図2に示すように、駆動装置4にて洗浄槽1の底面(振動板21)に平行な相互に直交する2軸方向、つまり、洗浄物ホルダ3の保持面に沿った横方向(X軸方向(図2のY11方向))、当該横方向に直行する保持面に沿った縦方向(Y軸方向(図2のY12方向))、保持面に対して垂直な軸周りの回転方向(Z軸周りの回転方向(図2のY13方向))、のうち少なくとも1方向に、可動装置4にて可動されるよう構成されている。このとき、洗浄物ホルダ3の可動状態は、コントローラ5にて制御される。例えば、図2(a)の矢印Y11に示すように、X軸方向にのみ往復可動されてもよく、図2(b)に示すように、X軸方向とY軸方向とに交互に往復可動されてもよい。さらには、図2(c)に示すように、略長方形の洗浄物ホルダ3の対角線の交点を中心としてZ軸周りに回転往復可動されてもよい。
【0030】
このとき、振動装置2に対する相対的な洗浄物ホルダ3のX軸方向(Y11方向)への可動距離は、図4(b)に示すように、上述した超音波振動子22の配置に対応して、X軸方向に隣接して配置されている超音波振動子22の相互間における距離A2(第一の列L1から隣の第二の列L2を挟んでさらに隣の第一の列までの距離)と同一の距離、あるいは、その半分の距離A1(第一の列L1から隣の第二の列L2までの距離)に設定される。つまり、上述したように、超音波振動子22の各列L1,L2が隙間無く交互に配列されている場合には、超音波振動子を二個分(距離A2)、あるいは、超音波振動子を一個分(距離A1)、の距離だけ往復移動される。なお、距離A2以下であり距離A1以上で往復移動されてもよい。また、洗浄物ホルダ3のY軸方向(Y12方向)への可動距離は、上記同様に、Y軸方向に隣接して配置されている超音波振動子22の相互間における距離と同一の距離B2、あるいは、その半分の距離B1に設定される。つまり、各列方向に配置されている超音波振動子22の1ピッチ分(距離B2)、あるいは、半ピッチ分(距離B1)だけ往復移動される。なお、距離B2以下であり距離B1以上で往復移動されてもよい。
【0031】
以上のように、洗浄物ホルダ3を振動装置2に対して相対的に往復可動させた場合において洗浄物ホルダ3に供給される超音波振動の強度を、図6(a),(b)を参照して説明する。この図に示すように、超音波振動子22の中心付近の強度を100%としたときに、まず、洗浄物ホルダ3を可動させずに固定していた場合には、超音波振動子22間に位置する場所つまり超音波振動子間の上方の箇所における強度は、最小値となり70%である。一方で、上述したように、X方向に距離A1あるいは距離A2だけ往復可動させた場合には、所定の洗浄物31に対しては、隣り合う超音波振動子22の振動が重なり合って供給されるため、最小でも85%となる。同様に、Y方向については、洗浄物ホルダ3を可動させずに固定の場合は最小で83%の強度であるが、距離B1あるいは距離B2だけ洗浄物ホルダ3を往復可動させた場合には、最小でも92%となる。
【0032】
ここで、超音波振動子22の他の配置について、図5を参照して説明する。この例では、上記図4で説明した配置と同様に、超音波振動子22は複数列L1,L2にそれぞれ配置されている。そして、超音波振動子22が等間隔に1列に配置された第一の列L11と、同じく等間隔に一列に配置された第二の列L12とが、列同士の隙間を空けずに、交互に配列されている。但し、各列L11,L12とも、列方向には超音波振動子22が1つ分の隙間をあけて配置されている。そして、第一の列L11に一列に配置された各超音波振動子22の間に、第二の列L12に一列に配置された各超音波振動子22が位置するよう配置されている。
【0033】
上記配置において、図5(b)の距離A11に示すように、洗浄物ホルダ3を振動装置2に対して相対的に往復可動させた場合に、洗浄物ホルダ3に供給される超音波振動の強度は、図6(c)に示すようになる。この図に示すように、超音波振動子22の中心付近の強度を100%としたときに、洗浄物ホルダ3を可動せず固定の場合には、超音波振動子22が存在しない箇所の上方における強度は、最小値となり50%である。一方で、上述したように、X方向に距離A11だけ往復可動させた場合には、隣り合う超音波振動子22の振動が重なり合って、最小でも75%となる。このように、超音波振動子22が図4の場合を比較して隙間が広く配置されていたとしても、超音波振動子22の各列が隙間をあけずに配置されることで、洗浄に適した強度のエネルギーの超音波振動を、より均等に洗浄物31に供給することができる。
【0034】
一方で、図7(a),(b)は、上記とは異なり、超音波振動子22の列同士が隙間を空けて配列されている例である。具体的には、図7(a)の例では、超音波振動子22の列L21とL22とが、ほぼ超音波振動子1つ分の隙間(点線の円形状を参照)を空けて配列されている。また、図7(b)の例では、超音波振動子22の列L31とL32とが、図7(a)ほどの隙間ではないが、若干の隙間を空けて配列されている。そして、それぞれの場合における洗浄物ホルダ3に供給される超音波振動の強度を、図8(a)、(b)に示す。すると、図8(a)に示すように、図7(a)の場合には、洗浄物ホルダ3を可動させても隣り合う列には超音波振動子が配置されていないため、最小で30%の強度となる。また、図8(b)に示すように、図7(b)の場合には、若干の隙間の存在のため、洗浄物ホルダ3を可動させた場合には、最小の強度が70%となり、上記図4,5の場合と比べて若干効果が低いことがわかる。但し、上述したように、超音波振動子22を規則的に配置して当該振動子22に対して相対的に洗浄物31を可動させることで、上述したように本発明の効果は発揮されうる。なお、上述したそれぞれの配置状態における超音波エネルギーの最小値、最大値、平均値の一覧を図9に示す。
【0035】
[動作]
次に、超音波洗浄装置の動作について説明する。まず、上述したような超音波洗浄装置を構成するが、特に、上述した図4,5に示すように超音波振動子22を配置して、振動装置2を設定する。そして、洗浄槽1内に洗浄液10を収容すると共に、振動装置2を洗浄槽1の底面に配置し、かつ、洗浄物31をセットした洗浄物ホルダ3を、振動装置2の上方に、当該洗浄装置2と平行になるよう洗浄液10に浸漬して配置する。
【0036】
その後、超音波振動子22を作動させて超音波振動を洗浄液10に印加する。すると、図1の矢印Y1に示すように、洗浄物ホルダ3にて保持されている洗浄物31に対して超音波振動が供給され、これにより、洗浄物31の汚れが振動にて除去され、超音波洗浄が行われる(洗浄工程)。
【0037】
そして、上記洗浄中に、コントローラ5からの指令により駆動装置4を駆動して、洗浄物ホルダ3を、振動装置2の振動板21に対して平行に可動させる(可動工程)。例えば、上述したように、洗浄物ホルダ3の保持面に沿って、X,Y方向に往復移動させたり、回転させる(図2の矢印Y11,Y12,Y13参照)。
【0038】
すると、図3(b)に示すように、洗浄液10の同一液深において超音波振動は強度がばらついて発生しているが、洗浄物ホルダ3を振動装置に対して平行に可動していることで、洗浄物31が保持されている保持面付近においては、図6及び図9の表に示すように、一定値以上のエネルギーの振動が効率よく均等に供給される。従って、洗浄物の洗浄のムラを抑制し、また、効率よく洗浄物を洗浄することができ、洗浄物の品質の向上及び低コスト化を図ることができる。
【実施例2】
【0039】
次に、本発明の第2の実施例を、図10乃至図15を参照して説明する。本実施例における超音波洗浄装置は、上述した実施例1におけるものとほぼ同様の構成を採っているが、超音波振動子22の構成が異なる。
【0040】
まず、図10(a)は、超音波振動子22の中心Cから距離Dの取り方を示しており、図10(b),(c),(d)は、上記距離Dに応じた各周波数特性を有する超音波振動子のエネルギーの変化を示している。なお、各線図は、超音波振動子から垂直方向への距離毎に示している。さらに、図11は、直径45mmの超音波振動子22の中心Cからの距離Dmmに対する振動の強度Sを図示しており、図12(a)は、中心CからD=0mmだけ離れた箇所つまり振動中心における洗浄液中に放射された振動エネルギーと周波数との関係を示している。また、図12(b)には、D=0,15,30,45mmだけ離れた箇所における周波数毎の振動エネルギーをグラフ化したものを示している。そして、まず図12(a)を参照すると、周波数100kHz、200kHz付近にエネルギーのピークがあり、また、50kHz,150kHz付近にも小さなピークがあることがわかる。また、図12(b)を参照すると、超音波振動子の中心Cからの距離Dが、0〜15mmまででエネルギーが高く、その外周はエネルギーが小さくなっていることがわかる。一方で、超音波洗浄では、エネルギーが高く、振動に低周波成分が存在すると、洗浄物も振動させてしまい、当該洗浄物にダメージを与えてしまう場合もある。つまり、超音波洗浄には、洗浄物を振動させずに汚れのみを振動させる高周波エネルギーが多く発生していることが望ましく、かかる高周波エネルギーは、洗浄物へのダメージを軽減することができる。
【0041】
以上のことから、本実施例では、超音波振動子に、積層された振動素子などが中央部分でボルトにて締め付けられて構成されているランジュバン型振動子22’を用いる。その一例を、図13に示す。なお、図13(a)は断面図であり、図13(b)は振動板21への取り付け面を示している。この場合には、ランジュバン型振動子22’を接着剤などで振動板21に取り付けることで、振動装置2を構成することができる。
【0042】
このようにランジュバン型振動子22’を用いることで、中央部分にボルト22’aが配置されており、振動素子が存在していないため、当該中央部分から発生する振動の振幅が低くなる。従って、洗浄液に印加する振動の低周波成分を低減させることができ、洗浄物を振動させずに汚れのみを振動させる高周波成分を多く発生させ、洗浄物に供給させることができる。
【0043】
また、さらに洗浄効果を維持しつつ洗浄物へのダメージを軽減させるために、振動板21にスタットボルトにて取り付け可能なスタットボルト式ランジュバン型振動子を用いるとなお望ましい。その構成例を図14に示す。なお、図14(a)は断面図であり、図14(b)は振動板21への取り付け面を示している。この図に示すように、積層された振動素子などがボルト22”aにて中央部分が締め付けられて構成されていると共に、さらに、締め付けボルト22”aの先端側には、振動板21に対する取り付け用のスタットボルト穴22”bが形成されており、中央部分に振動素子が全く存在していない。従って、上記図13に開示したものよりもさらに中央部分から発生する振動の振幅が低くなり、洗浄液に印加する振動の低周波成分を低減させることができ、洗浄物を振動させずに汚れのみを振動させる高周波成分を多く発生させ、洗浄物に供給させることができる。その結果、洗浄物へのダメージを軽減することができ、洗浄物の品質の向上を図ることができる。
【0044】
さらに、図15(a)は、スタットボルトがない振動板21に上記ランジュバン型振動子22”を接着剤などで取り付けた場合に発生した振動波形W1を示し、図15(b)は、スタットボルト21aが形成された振動板21の当該スタットボルト21aに、上記ランジュバン型振動子22”を取り付けた場合に発生した振動波形W2を示す。すると、スタットボルト21aを介して振動子を取り付けた方が、均等に振動が分散することがわかる。これにより、よりムラのない洗浄を実現することができる。
【実施例3】
【0045】
次に、本発明の第3の実施例を、図16乃至図17を参照して説明する。図16に示すように、本実施例における超音波洗浄装置は、上述した実施例1におけるものとほぼ同一の構成を採っているが、実施例1では洗浄物ホルダ3を可動する構成であったのに対し、本実施例では、振動装置2を可動する構成を採っている。
【0046】
具体的には、図16に示すように、上述同様に超音波振動子22が配置された振動装置2を駆動する駆動装置6が設けられており、この駆動装置6による振動装置2の駆動状態を制御するコントローラ5が装備されている。そして、駆動装置6は、振動装置2を、図17に示すように、洗浄槽1の底面に対して平行な相互に直交する2軸方向、つまり、振動板21の平面に沿った横方向(X軸方向(図16のY21方向))、当該横方向に直行する振動板に沿った縦方向(Y軸方向(図16のY22方向))、振動板21に対して垂直な軸周りの回転方向(Z軸周りの回転方向(図16のY23方向))、のうち少なくとも1方向に可動する。例えば、図17(a)の矢印Y21に示すように、X軸方向にのみ往復可動してもよく、図17(b)に示すように、X軸方向とY軸方向とに交互に往復可動してもよい。さらには、図17(c)に示すように、略長方形の振動装置2の対角線の交点を中心としてZ軸周りに回転往復可動してもよい。
【0047】
このとき、振動装置2のX軸方向(Y21方向)、Y軸方向(Y22方向)への可動距離、つまり、超音波振動子22に対する洗浄物31の相対的な可動距離は、上述した実施例1と同様に、超音波振動子22の配置に対応して、可動方向に隣接して配置されている超音波振動子22の相互間における距離A2以下であり、その半分の距離A1以上であると望ましい。
【0048】
これにより、振動装置2が、洗浄物ホルダ3に対して平行に可動させることとなり、換言すると、洗浄物31が洗浄中に超音波振動子22に対して相対的に往復移動することとなる。従って、上述同様に、洗浄液10の同一液深における平面上において強度がばらついて発生している超音波振動が、洗浄物31が保持されている保持面付近においては、一定値以上のエネルギーの振動が効率よく均等に供給されることとなる。従って、洗浄物の洗浄のムラを抑制し、また、効率よく洗浄物を洗浄することができ、洗浄物の品質の向上及び低コスト化を図ることができる。
【実施例4】
【0049】
次に、本発明の第4の実施例を、図18乃至図19を参照して説明する。図18に示すように、本実施例における超音波洗浄装置は、上述した実施例1におけるものとほぼ同一の構成を採っているが、本実施例では洗浄物ホルダ3及び振動装置2を両方とも可動する、という構成を採っている。
【0050】
具体的には、図18に示すように、洗浄物ホルダ31を駆動する駆動装置4と、上述したように超音波振動子22が配置された振動装置2を駆動する駆動装置6と、が設けられており、これら駆動装置4,6による洗浄物ホルダ3及び振動装置2の駆動状態を制御するコントローラ5が装備されている。そして、コントローラ5は、各駆動装置4,6を介して、洗浄物ホルダ3と振動装置2とが、同時に同一の方向に可動しないよう可動制御する。例えば、図19(a)に示すように洗浄物ホルダ3をY方向(矢印Y12)に可動する場合には、同時に振動装置2をX方向(矢印Y21)に可動する。また、図19(b)に示すように洗浄物ホルダ3を時計回り方向(矢印Y13)に可動する場合には、振動装置2を同時に反時計回り方向(矢印Y23)に可動する。また、図19(c)に示すように洗浄物ホルダ3を時計回り方向(矢印Y13)に可動する場合には、同時に、振動装置2をX方向(矢印Y21)とY方向(矢印Y22)に交互に可動する。また、その逆で、図19(d)に示すように洗浄物ホルダ3をX方向(矢印Y11)とY方向(矢印Y12)に交互に可動する場合には、同時に振動装置2を時計回り方向(矢印Y23)に可動する。
【0051】
このとき、超音波ホルダ3及び振動装置2のX軸方向(Y21方向)、Y軸方向(Y22方向)への相対的な可動距離は、上述した実施例1と同様に、超音波振動子22の配置に対応して、可動方向に隣接して配置されている超音波振動子22の相互間における距離A2以下であり、その半分の距離A1以上であると望ましい。
【0052】
このように、振動装置2と洗浄物ホルダ3とを相対的に平行に可動させることによって、上述同様に、洗浄液10の同一液深における平面上において強度がばらついて発生している超音波振動が、洗浄物31が保持されている保持面付近においては、一定値以上のエネルギーの振動が効率よく均等に供給されることとなる。従って、洗浄物の洗浄のムラを抑制し、また、効率よく洗浄物を洗浄することができ、洗浄物の品質の向上及び低コスト化を図ることができる。なお、上記では、洗浄物ホルダ3と振動装置2とをそれぞれ異なる方向に可動させる場合を例示したが、同一の方向であっても、可動速度が相互に異なり相対的に移動しているようであれば、本発明の範囲に属する。
【実施例5】
【0053】
ここで、上述したように、振動装置2を構成する振動板21に配置される超音波振動子22は、規則的に配置されていればいかなる形状であってもよい。例えば、図20(a)に示すように、帯状の超音波振動子121を複数本平行に振動板21に配置してもよい。すると、かかる構成の振動装置2つまり超音波振動子121からは、図20(b)に示すようなばらついた超音波振動が発生するが、上述したように、振動装置2及び/又は洗浄物ホルダ3を相対的に可動させることで、洗浄物31が保持されている保持面付近においては、一定値以上のエネルギーの振動が効率よく均等に供給されることとなる。従って、上述同様に、洗浄物の洗浄のムラを抑制し、また、効率よく洗浄物を洗浄することができ、洗浄物の品質の向上及び低コスト化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、磁気ヘッドスライダなどの電子部品といった製造品を洗浄するために利用することができ、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施例1における超音波洗浄装置の構成を示す概略図である。
【図2】図1に開示した洗浄物ホルダの可動状態を示す説明図である。
【図3】図1に開示した振動装置の構成及び超音波振動を示す図である。
【図4】超音波振動子の配置を示す説明図である。
【図5】超音波振動子の配置を示す説明図である。
【図6】図4及び図5に開示した配置の超音波振動子による超音波振動の強度を示す説明図である。
【図7】超音波振動子の配置を示す説明図である。
【図8】図7に開示した配置の超音波振動子による超音波振動の強度を示す説明図である。
【図9】図6及び図8に開示した超音波振動の強度をまとめた表である。
【図10】実施例2において超音波振動子による超音波振動の強度を説明する図である。
【図11】実施例2において超音波振動子による超音波振動の強度を説明する図である。
【図12】実施例2において超音波振動子による超音波振動の強度を説明する図である。
【図13】実施例2における超音波振動子の構成を示す図である。
【図14】実施例2における超音波振動子の構成を示す図である。
【図15】実施例2における超音波振動子による振動波形を示す図である。
【図16】実施例3における超音波洗浄装置の構成を示す概略図である。
【図17】図16に開示した振動装置の可動状態を示す説明図である。
【図18】実施例4における超音波洗浄装置の構成を示す概略図である。
【図19】図18に開示した洗浄物ホルダ及び振動装置の可動状態を示す説明図である。
【図20】実施例5における超音波振動子の構成及び超音波振動を示す図である。
【図21】従来例における超音波洗浄装置の構成及び動作を示す概略図である。
【図22】超音波振動波形を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1 洗浄槽
2 振動装置
3 洗浄物ホルダ
4,6 駆動装置
5 コントローラ
10 洗浄液
21 振動板
22 超音波振動子
31 洗浄物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液を収容する洗浄槽と、洗浄物を保持して前記洗浄液に浸漬される洗浄物保持手段と、前記洗浄槽内の洗浄液に対して超音波振動を印加する振動印加手段と、を備えた超音波洗浄装置であって、
前記振動印加手段は、平面状の振動板と、この振動板上に規則的に配置された複数の超音波振動子と、を備えると共に、
前記洗浄物保持手段は、複数の前記洗浄物を前記振動板に対して平行に配置して保持する保持面を有し、
前記振動板と前記保持面とが相対的に平行に移動するよう、前記振動印加手段及び/又は前記洗浄物保持手段を可動する可動手段を備えた、
ことを特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項2】
前記振動印加手段の振動板を、当該振動板の平面が前記洗浄槽に収容された洗浄液の液面と平行になるよう配置した、
ことを特徴とする請求項1記載の超音波洗浄装置。
【請求項3】
前記可動手段は、前記振動板にて形成される平面に対して平行な相互に直交する2軸方向、及び、当該平面に対して垂直な軸周りの回転方向、の3方向のうち少なくとも1方向に前記振動印加手段及び/又は前記洗浄物保持手段を可動する、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の超音波洗浄装置。
【請求項4】
前記可動手段は、前記振動印加手段と前記洗浄物保持手段とが同時に同一の方向に可動しないよう制御する、
ことを特徴とする請求項3記載の超音波洗浄装置。
【請求項5】
前記可動手段による前記振動印加手段と前記洗浄物保持手段との相対的な可動距離は、前記可動手段による可動方向に隣接して配置されている前記超音波振動子の相互間における距離と同一の距離以下であり、その半分の距離以上である、
ことを特徴とする請求項3又は4記載の超音波洗浄装置。
【請求項6】
前記振動印加手段は、前記超音波振動子を複数列に配置すると共に、隣り合う列に配置された前記超音波振動子同士を当接させず、前記複数列を列同士の隙間をあけずに配列した、
ことを特徴とする請求項1,2,3,4又は5記載の超音波洗浄装置。
【請求項7】
前記振動印加手段は、前記超音波振動子がそれぞれ同一の間隔で配置された第一の列と第二の列とを交互に配列して備え、
前記第一の列における前記超音波振動子の間に、前記第二の列における前記超音波振動子が位置するよう、前記第一及び第二の列に前記超音波振動子をそれぞれ配置した、
ことを特徴とする請求項6記載の超音波洗浄装置。
【請求項8】
前記振動印加手段には、前記各超音波振動子の外縁同士が4mm以上離れて配置されている、
ことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6又は7記載の超音波洗浄装置。
【請求項9】
前記超音波振動子は、ランジュバン型振動子である、
ことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7又は8記載の超音波洗浄装置。
【請求項10】
前記超音波振動子は、前記振動板にスタットボルトにて取り付け可能なスタットボルト式ランジュバン型振動子である、
ことを特徴とする請求項9記載の超音波洗浄装置。
【請求項11】
洗浄液を収容する洗浄槽と、
平面状の振動板と、当該振動板上に規則的に配置され前記洗浄槽内の洗浄液に対して超音波振動を印加する複数の超音波振動子と、を備えた振動印加手段と、
複数の洗浄物を前記振動板に対して平行に配置して保持する保持面を有し、前記洗浄物を保持して前記洗浄液に浸漬される洗浄物保持手段と、
を備えた超音波洗浄装置による超音波洗浄方法であって、
前記振動印加手段にて前記洗浄液に対して超音波振動を印加して前記洗浄物の洗浄を行う洗浄工程と、
この洗浄工程中に、前記振動板と前記保持面とが相対的に平行に移動するよう、前記振動印加手段及び/又は前記洗浄物保持手段を可動する可動工程と、
を有することを特徴とする超音波洗浄方法。
【請求項12】
前記可動工程は、前記振動板にて形成される平面に対して平行な相互に直交する2軸方向、及び、当該平面に対して垂直な軸周りの回転方向、の3方向のうち少なくとも1方向に前記振動印加手段及び/又は前記洗浄物保持手段を可動する、
ことを特徴とする請求項11記載の超音波洗浄方法。
【請求項13】
前記可動工程は、前記振動印加手段と前記洗浄物保持手段とが同時に同一の方向に可動しないよう制御する、
ことを特徴とする請求項12記載の超音波洗浄方法。
【請求項14】
前記可動工程は、当該可動工程による可動方向に隣接して配置されている前記超音波振動子の相互間における距離と同一の距離以下、かつ、その半分の距離以上に、前記振動印加手段及び/又は前記洗浄物保持手段を相対的に可動する、
ことを特徴とする請求項12又は13記載の超音波洗浄方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−259998(P2008−259998A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106399(P2007−106399)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(500393893)新科實業有限公司 (361)
【氏名又は名称原語表記】SAE Magnetics(H.K.)Ltd.
【住所又は居所原語表記】SAE Technology Centre, 6 Science Park East Avenue, Hong Kong Science Park, Shatin, N.T., Hong Kong
【Fターム(参考)】