説明

超音波流量計

【課題】計測流路に多層の仕切板を有する超音波流量計において、仕切板に磁性体の塵挨が付着するのを防止すること。
【解決手段】超音波流量計1は矩形断面の計測流路2を有しており、計測流路2は仕切板3により、複数の層に分割されている。また、計測流路2の上流と下流には一対の超音波送受波器7,8が配置され、この超音波送受波器7,8間の伝播時間を測定する計測手段16、伝播時間を計測して流速/流量を求める演算手段17を備えている。そして、この仕切板3を非磁性体にて構成することにより、ダストに含まれる磁性体の塵埃が仕切板3に付着することを防止でき、超音波流量計として計測精度を維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測流路への塵挨付着を防止する超音波流量計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の超音波流量計は、流量計測部内部に設けた整流板に帯電防止手段を設けている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4は、特許文献1に記載された従来の流れ計測装置を示すものである。図4に示すように、計測流路101の内部に配置された整流板102は、計測流路101と電気的に導通する導通手段103を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−85814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、帯電した塵埃は整流板に付着しないが、塵埃の中には磁性体の微粒子も含まれており、整流板が磁性体材料で構成されている場合は、そのような塵埃の付着を防ぐことはできなかった。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、磁性を帯びた塵埃の整流板への付着を防止することにより、超音波が通過する際に整流板により生じる超音波の伝播条件等に変化を来たさないようにして、計測精度の低下をきたすことのない超音波流量計の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の超音波流量計は、矩形断面の計測流路と、前記計測流路を複数の層に分割する仕切板と、前記計測流路の上流と下流に配置された一対の超音波送受波器と、前記一対の超音波送受波器間の伝播時間を測定する計測手段と、前記計測手段で測定された伝播時間から流速/流量を求める演算手段と、を備え、前記仕切板は、非磁性体で構成するようにしたものである。
【0008】
これによって、磁性を帯びた塵埃の仕切板への付着を防止することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の超音波流量計は、計測流路を分割する仕切板を非磁性体で構成することにより、磁性を帯びた塵埃の仕切板への付着が防止されるため、超音波流量計として計測精度の低下をきたすことがない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1における超音波流量計の概略構成図
【図2】本発明の実施の形態1における図1のAA’断面図
【図3】本発明の超音波流量計を組み込んだガスメータの垂直断面図
【図4】従来の流量計測装置の垂直断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の発明は、矩形断面の計測流路と、前記計測流路を複数の層に分割する仕切板と、前記計測流路の上流と下流に配置された一対の超音波送受波器と、前記一対の超音波送受波器間の伝播時間を測定する計測手段と、前記計測手段で測定された伝播時間から流速/流量を求める演算手段と、を備え、前記仕切板を、非磁性体で構成することにより、磁性を帯びた塵埃の仕切板への付着が防止され、超音波流量計として計測精度の低下をきたすことがないものである。
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0013】
(実施の形態1)
実施の形態1について、図1、図2を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態1における超音波流量計の概略構成図、図2は、図1のAA’断面図を示すものである。
【0014】
図1において、超音波流量計1は矩形断面の計測流路2を有しており計測流路2は、仕切板3により、複数の層である流路4と流路5に分割されている。仕切板3は非磁性体材料にて構成されている。計測流路2の上部には超音波送受波器保持部6が形成されている。
【0015】
また、図2に示すように、超音波送受波器保持部6には第1の超音波送受波器7、および第2の超音波送受波器8がそれぞれ、第1の保持部9、第2の保持部10にて保持されている。
【0016】
図2において、計測流路2の内部は上面11、および下面12を有している。上面11は第1の超音波透過窓13、および第2の超音波透過窓14を有している。下面12は超音波の反射面として作用するように構成されている。
【0017】
図において、P1,およびP2で示した矢印は超音波の伝播経路であり、第1の超音波送受波器7から発信された超音波は、下面12に反射し、流路4を横切るように伝播し、第2の超音波送受波器8に到達する。
【0018】
第1の超音波送受波器7、第2の超音波送受波器8、および、流路4の下面12で形成される領域は流量計測部15である。第1の超音波送受波器7、および第2の超音波送受波器8からの信号は計測手段16にて処理され、さらに演算手段17で演算される。
【0019】
以上のように構成された超音波流量計1について、以下、その動作、作用を説明する。
【0020】
図1において計測流路2に流入する矢印F1の流れは矢印F2として流出するまでの間に計測流路2内において超音波による流量計測が行われる。
【0021】
図2において、計測流路2を流れる流体の流速をV、流体中の音速をC、流体の流れる方向と超音波が下面12で反射するまでの超音波伝播方向とのなす角度をθとする。また、第1の超音波送受波器7と第2の超音波送受波器8との間で伝播する超音波の伝播経路の有効長さをLとする。
【0022】
このとき、第1の超音波送受波器7から出た超音波が、もう一方の第2の超音波送受波器8に到達するまでの伝播時間t1は、下式にて示される。
【0023】
t1 = L /(C+Vcosθ) (1)
次に第2の超音波送受波器8から出た超音波が、もう一方の第1の超音波送受波器7に
到達するまでの伝播時間t2は、下式にて示される。
【0024】
t2 = L /(C−Vcosθ) (2)
式(1)と式(2)から流体の音速Cを消去すると、下式が得られる。
【0025】
V = L /(2cosθ((1/t1)−(1/t2))) (3)
式(3)にて分るように、Lとθが既知なら、伝播時間t1、およびt2を用いて、流速Vが求められる。
【0026】
計測手段16は、上記に示した伝播時間t1、およびt2の計測を行い、演算手段17により上記の演算が実施されて流速Vが求められる。この流速Vに超音波が通過する流路4の断面積Sを乗じ、これにさらに、真の全体流量を推測するための係数pを乗じることにより、全体流量Qを求めることができる。
【0027】
この場合、超音波の伝播時間は、仕切板3での反射成分も含んだ波形を有する超音波の伝播を基に行われる。このとき、仕切板3に塵埃が付着すると、その伝播の状況が変化する。
【0028】
すなわち、伝播に減衰が生じたり、位相が変化したりするといった弊害が生じうる。これらの現象は、正確な伝播時間の計測を妨げることになり、計測精度の悪化をもたらし得るものである。
【0029】
しかしながら、本実施の形態では仕切板3が非磁性体で形成されているため、磁性体の塵埃が流入しても、この塵埃が仕切板3に付着して伝播状況を変化するような状態を生じさせることはない。したがって、計測精度の低下を防ぐことができるものである。
【0030】
なお、本実施の形態では、仕切板3が1枚の例を示したが、仕切板3が複数枚あり、その間を超音波が通過する構成のものにおいても、同様の効果が発揮されるものである。
【0031】
次に、この超音波流量計1をガスメータに組み込んだ事例について説明する。
【0032】
図3は、本発明の超音波流量計1を組み込んだガスメータ18の垂直断面図を示すものである。
【0033】
図3において、18はガスメータである。ガスメータ18の筐体19は、流入部20と流出部21を有している。流入部20には流入パイプ22、流出部21には流出パイプ23が接続されている。
【0034】
筐体19の内部において、流入部20には遮断弁24が接続されている。この遮断弁24の入口端25は流入部20に接続され、出口端26は筐体19の内部に開放されている。
【0035】
また、筐体19の内部には、超音波流量計1が、配置されている。超音波流量計1は、入口部28と出口部29を有しており、入口部28は筐体19の内部に開放されており、出口部29は接続部30により流出部21に接続されている。
【0036】
以上のように構成されたガスメータ18について、以下、その動作、作用を説明する。
【0037】
まず、流入パイプ22より流入したガスは、流入部20から遮断弁24の入口端25より入り、その後、出口端26より筐体19の内部空間に放出される。この流れF3はいっ
たん筐体19内の広い空間に放出されるため、流速が低くなり、塵埃は筐体19の底面に落下する。その後、流れはF4、F5の経路を経て超音波流量計1の入口部28より、超音波流量計1に流入する。
【0038】
このとき、この流れの中に磁性体の塵埃が含まれていても、超音波流量計1内部の仕切板3は非磁性体で構成されているため、仕切板3に磁性体の塵埃が付着することはない。
【0039】
以上のように、本実施の形態においては、仕切板3が非磁性体材料で構成されているため、磁性体の塵埃が付着して、計測性能に影響を及ぼすことがない。
【0040】
なお、超音波流量計1が筐体19の内部においてその入口部28が開放されている事例を示したが流入パイプ22と直結されていても、同様の効果は発揮しうるものである。
【0041】
また、超音波の伝播経路として本実施の形態では反射を利用する所謂Vパスタイプの事例を示したが、特許文献1に示されているような反射を利用しないZパスタイプでも、流路に平行な伝播経路を用いたIパスタイプでも、仕切板3を用いる構成であれば、同様の効果が得られるものである。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上のように、本発明にかかる超音波流量計は、ダストに含まれる磁性体の仕切板への付着を防止でき、流量計測部での計測精度を確保することが可能となるので、とりわけ塵埃が入りやすい屋外配管に接続される計測器や家庭用から業務用に至る大型のガスメータ等の幅広い用途に適用できる。
【符号の説明】
【0043】
1 超音波流量計
2 計測流路
3 仕切板
4 流路(層)
5 流路(層)
7 第1の超音波送受波器
8 第2の超音波送受波器
16 計測手段
17 演算手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形断面の計測流路と、
前記計測流路を複数の層に分割する仕切板と、
前記計測流路の上流と下流に配置された一対の超音波送受波器と、
前記一対の超音波送受波器間の伝播時間を測定する計測手段と、
前記計測手段で測定された伝播時間から流速/流量を求める演算手段と、を備え、
前記仕切板は、非磁性体で構成された超音波流量計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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