説明

超音波胎児モニタにおける信号強度インジケータの使用法

【課題】ドップラー超音波胎児心拍数モニタのトランスデューサを妊娠中の患者の腹部上の最適な位置に位置決めするための方法及びシステムを提供する。
【解決手段】本方法は、妊娠中の患者の腹部上に位置決めされたトランスデューサ(10)を使用することを含む。ドップラー超音波モニタ(14)の音響増幅器を駆動する通常の音響包絡線を使用する。該音響包絡線は、或る期間に亘って信号強度の平均最大及び最小値を決定するために使用される。それらの値は最大限の範囲を設定し、且つ監視を行っているときに連続的に更新することができる。平均最大及び最小強度値は、患者からの特定の一組の信号の視覚的表示(18)を生成するために使用され、該視覚的表示は、腹部内の患者の皮膚に接触する最適な位置にトランスデューサ(10)を位置決めするために医療提供者によって使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波胎児モニタにおけるトランスデューサの最適な位置を決定するためのシステムに関するものであり、より具体的には、超音波トランスデューサを患者上の最適な位置に位置決めするための信号強度インジケータの使用法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
分娩室内で胎児の心拍数を監視する一般的な手段の1つは、ドップラー超音波を使用するものである。このようなシステムでは、患者の皮膚に押し付けて配置されたトランスデューサによって超音波が発生され、該超音波は胎児へ差し向けられ、そこから同じトランスデューサへ戻される。戻るエコーは、ドップラー偏移によって得られる情報を担持していて、医療提供者に胎児の心拍数を提供し、また該情報は心拍数モニタで表示することができる。
【0003】
しかしながら、ドップラー超音波を使用する現在のモニタが遭遇する問題の1つは、トランスデューサへ送られて該トランスデューサによって検出されるエコー信号が胎児の動きにより消失することであり、その結果として監視機能の損失を生じる。このような場合、医療提供者は典型的には、監視を継続するためにトランスデューサを位置決めし直さなければならない。
【0004】
胎児心拍数を再度捕捉するために位置決めし直す1つの現在の方法は、患者の皮膚を横切るようにトランスデューサを動かして、モニタから最も強い音響信号が得られるように聴音することを含む。しかしながら、超音波音響は大きく、しばしば妊娠中の患者の睡眠を妨げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/2414125号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、信号の消失後に、静かであって且つ患者を邪魔しないように音響信号の使用に依存しないトランスデューサを医療提供者が再位置決めできるようにすることができるシステム及び方法があれば有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明では、患者の腹部の皮膚に沿って接触するようにドップラー超音波モニタの超音波トランスデューサを位置決めするための方法及びシステムを提供する。
【0008】
本発明では、ドップラー超音波モニタの音響増幅器を駆動する通常の音響包絡線を使用する。本発明では、或る期間に亘って信号強度の平均最大及び最小値を決定する。これらの値は最大限の範囲を設定し、また監視を行っているときに連続的に更新することができる。このように平均最大及び最小強度値を得ることによって、音響包絡線の任意の特定の信号強度を、フルスケール包絡線の百分率で表現して視覚的に表示することができる。
【0009】
このようなとき、医療提供者は信号強度を示す表示を視覚的に監視して、患者の腹部に接触するトランスデューサについて適切な位置を見付けることができる。
【0010】
従って、本発明の方法の面では、トランスデューサを患者の皮膚上に位置決めして、超音波信号を患者内の胎児へ向けて患者内に内向きに差し向け、次いでエコー信号をトランスデューサで受信する。この戻り信号の強度を監視し、該信号の強度に従ってトランスデューサを位置決めし直す、すなわち、トランスデューサによって強い信号が受信される位置へトランスデューサを動かすことができる。
【0011】
模範的な実施態様では、エコー又は戻り信号を処理して、平均最大レベル及び平均最小レベルを計算することにより、患者からの信号の音響包絡線のフルスケールを求める。トランスデューサによって受信された特定の信号の強度を示すために、フルスケール包絡線の百分率を使用することができる。
【0012】
本発明のシステムの面では、超音波信号を患者内へ導入するためのシステムと、戻りのエコー信号を受信するための受信器と、トランスデューサによって受信される戻り信号の強度の視覚的表示を与える信号強度インジケータとが設けられる。信号強度は、トランスデューサの位置についての良好な強度信号の位置に関して医療提供者への視覚的な表示として用いられる。その視覚的な表示は、該表示を連続的に監視するために医療提供者の視野内に容易に目に入るようにすることができ、またとりわけ心拍数モニタ又はトランスデューサ自身の上に配置することができる。
【0013】
本発明のこれらの及び他の特徴及び利点は、図面と共に以下の詳しい説明を見るとより一層容易に明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明を用いる胎児心拍数モニタ・システムの概略図である。
【図2】図2は、本発明の方法を例示する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に図1について説明すると、本発明の概略図が示されており、その中にあるトランスデューサ10は、妊娠中の患者の腹部と接触して位置決めするように構成されている。通常のように、トランスデューサ10は患者の子宮の中へ超音波信号を差し向けて、該超音波信号が胎児から反射されて戻り又はエコー信号を生成するようにし、該戻り又はエコー信号は、胎児の心拍数を表すドップラー偏移を持っていて、トランスデューサ10で受信される。
【0016】
胎児からのエコー信号はケーブル12を介して胎児心拍数モニタ14へ送られ、胎児心拍数モニタ14は、医療提供者が胎児心拍数を視覚的に知覚して連続して監視することができるように表示部16を含む。また通常のように、戻り音響エコー信号は、その中に音響信号が含まれている超音波音響包絡線を形成する。
【0017】
従って図から分かるように、好ましくは一連のバーの形態である信号強度インジケータ18も設けられ、信号強度インジケータ18は、本発明に従って、トランスデューサ10で受信した戻りエコー信号の強度の視覚的表示を与える。信号強度インジケータ18は胎児心拍数モニタ14の表示部16の一部として配置することができ、又はトランスデューサ10に組み込むことができる。
【0018】
いずれの場合でも、医療提供者に信号強度の視覚的表示を提供する、すなわち、医療提供者がトランスデューサ10を患者の腹部に沿って信号強度が充分に強くなる位置に再配置することができるようにする手段を提供する。
【0019】
次に図2について説明すると、本発明の方法を実行する諸段階を例示する流れ図を示す。図示のように、本方法は開始ブロック20で開始される。ブロック22には、平均段階があり、平均段階では、ドップラー超音波胎児心拍数モニタによって通常のように生成された音響包絡線を監視し、ブロック12で、包絡線の生成の際に発生される最大音響信号を平均して、音響信号の平均最大強度を生成するようにする。ブロック24で、同じ種類の平均段階を実行するが、しかしながら、ブロック24では、最小信号を平均して、平均最小信号を計算する。このように、この時点で、本方法は、通常の音響包絡線を取得して、平均最大強度信号及び平均最小強度信号を計算し終えている。
【0020】
次に、ブロック26で、平均最大及び最小信号を用いて、トランスデューサで受信した胎児からのエコー信号の信号強度についてフルスケールを生成する。平均最大及び最小値は、図1の信号強度インジケータ18に示されているように、強度バーの範囲を設定する。
【0021】
従って、各々の新しい音響信号をトランスデューサ10で受信する度に、ブロック28で、その信号の強度を、バーに沿った位置に対して関連付けることができ、そこで、医療提供者は、バーの数の形態で平均最小及び最大音響信号に対して関連付けられるように実時間信号の相対的強度の視覚的表示を得ることができる。
【0022】
最後にブロック30で、本方法は、信号強度インジケータ18が連続的に更新されるように、最初の平均段階へ戻る。
【0023】
従って、信号強度インジケータの使用によって、医療提供者は、聴覚ではなく、視覚的なインジケータを持ち、これにより、妊娠中の患者を煩わすことのある大きな雑音を生じることなく強い信号に従って患者の腹部に沿ったトランスデューサの位置決めが可能になる。
【0024】
当業者には、結果として改良された装置及びその使用方法を生じさせ、しかもその全てが「特許請求の範囲」の請求項に記載されている本発明の精神及び範囲内に入るような多数の改変及び変更を、本発明に対して為し得ることが容易に認められよう。従って、本発明は「特許請求の範囲」の請求項の記載及びその等価物によって制限されるべきである。
【符号の説明】
【0025】
10 トランスデューサ
12 ケーブル
14 胎児心拍数モニタ
16 表示部
18 信号強度インジケータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
妊娠中の患者の皮膚に沿って胎児心拍数モニタの超音波トランスデューサを位置決めするための方法であって、
(a)患者の皮膚上にトランスデューサを置く段階と、
(b)胎児へ向けて患者内へ超音波信号を導入して、患者内の胎児の心拍数に関する情報を与えるエコー音響信号を受け取る段階と、
(c)エコー音響信号の強度を監視する段階と、
(d)エコー音響信号を、該エコー音響信号の強度の視覚的表現に変換する段階と、
を有する方法。
【請求項2】
音響信号を変換する前記段階が、平均最大信号強度及び平均最小信号強度のレベルを決定し、これらの決定された最大及び最小信号強度からフルスケール音響レベルを計算する段階を含んでいる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
音響信号を変換する前記段階が、フルスケールの所定の百分率を決定することを含んでいる、請求項2記載の方法。
【請求項4】
妊娠中の患者の皮膚に沿って超音波トランスデューサを位置決めするためのシステムであって、
胎児へ向けて妊娠中の患者内へ超音波信号を導入するように超音波トランスデューサを励起するシステムと、
胎児から戻るエコー信号を受信する受信器と、
胎児から戻るエコー信号の強度の視覚的表示を与える信号強度インジケータと、
を有するシステム。
【請求項5】
前記システムは更に、エコー信号を、該エコー信号の強度の視覚的表現に変換する回路を含んでいる、請求項4記載のシステム。
【請求項6】
前記回路は、エコー信号の平均最大及び平均最小強度を決定する電子手段を含んでいる、請求項4記載のシステム。
【請求項7】
前記視覚的表現は、平均最大及び平均最小強度エコー信号に対して実時間エコー信号を示している、請求項4記載のシステム。
【請求項8】
妊娠中の患者の皮膚に沿って超音波トランスデューサを位置決めし直すための監視システムであって、
患者の腹部の皮膚と接触して位置決めされるように構成されている超音波トランスデューサと、
超音波トランスデューサに超音波を胎児へ向けて妊娠中の患者内に放出させる出力源と、
患者からの戻り音響信号を音響包絡線の形態で受信して、それらの信号を処理するように構成されているモニタと、
音響包絡線内の信号を視覚的信号に変換する回路と、
変換された信号を受け取って、患者から戻る音響信号の強度の視覚的表示を与える信号強度インジケータと、
を有する監視システム。
【請求項9】
前記回路は、エコー信号の平均最大及び平均最小強度を決定する電子手段を含んでいる、請求項8記載の監視システム。
【請求項10】
前記信号強度インジケータはエコー信号を平均最大及び最小強度エコー信号に対して表示する、請求項8記載の監視システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−189812(P2009−189812A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28625(P2009−28625)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】