説明

超音波観測装置、超音波内視鏡装置、及び、画像処理方法

【課題】 患者の体内に挿入される人工物を強調した超音波断層像を容易に得ることができるようにする。
【解決手段】 超音波観測装置3は、超音波トランスデューサから送信された超音波ビームが被検体及び人工物から反射されて生じる超音波エコーに基づいて得られる受信信号を処理する受信回路14と、受信回路14によって処理された受信信号に基づいて超音波画像を生成する超音波画像生成手段15、17と、超音波画像において人工物を強調するために操作される人工物強調操作手段20と、人工物強調操作手段20の操作に従って、超音波画像生成手段によって生成される超音波画像において人工物を強調するための処理を行う人工物強調処理手段16とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療診断のために患者の体内に挿入される超音波内視鏡に接続して超音波断層像を得るための超音波観測装置、及び、そのような超音波観測装置と超音波内視鏡とによって構成される超音波内視鏡装置に関する。さらに、本発明は,そのような超音波観測装置において用いられる画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、超音波内視鏡を用いた穿刺処理は、患者の体内に挿入された超音波内視鏡の挿入部の先端部から突出される穿刺針の突出状態を、超音波内視鏡の挿入部の先端部に設けられた複数個の超音波トランスデューサ(超音波振動子)を用いて撮影した超音波断層像をリアルタイムで確認しながら行われている。しかし、このような超音波内視鏡を用いた穿刺処理は、非常に難易度が高く、高度な手法を必要とする。
【0003】
例えば、下記の特許文献1は、目的部位が繊維化等により硬くなった組織であっても、穿刺針を穿入する時の反動を抑えることにより穿刺処理の難易度を低減する超音波内視鏡を開示している。この超音波内視鏡によれば、患者の体外に配置した磁場発生装置から磁力を印加すると共に、超音波内視鏡の可撓管部の先端側の湾曲部に近接する位置に設けられた電磁石に電流を流すことにより、超音波内視鏡の可撓管部の先端側の湾曲部に近接する位置が、患者の気管の管腔壁に磁力で吸い付けられて固定される。これにより、超音波内視鏡を用いて穿刺針を体腔内の目的部位に穿入する時に、穿刺の反作用によって超音波内視鏡の挿入部が撓むことを防止して、目的部位が繊維化等により硬くなった組織であっても、容易かつ確実に目的部位に穿刺針を穿入することができるようにしている。
【0004】
また、下記の特許文献2は、生体内における穿刺針を強調して表示する超音波診断装置を開示している。この超音波診断装置によれば、穿刺アダプタに設けられた角度検出器を用いて取得した穿刺針の刺入角度に関する情報と、超音波ビームの反射波の受信信号に基づいて取得した輝度信号とから生体内における穿刺針の位置を判断すると共に、穿刺針からの反射信号がモニタ上において強調して表示されるような処理を施している。しかしながら、このような超音波診断装置においては、特殊なビーム走査が必要であるために制御が難しく、また、穿刺針の刺入角度を取得するための角度検出器が必要であるため、超音波内視鏡に採用するには必ずしも適していないという問題がある。
【0005】
さらに、下記の特許文献3は、超音波(放射線)イメージ装置により患者の体内に挿入されるカテーテルの画像を強調するエコー生成装置を開示している。このエコー生成装置によれば、マトリックス材料製のチューブ部分の上に配置される境界層の音響インピーダンスをマトリックス材料のそれと異なるようにしている。しかしながら、このようなエコー生成装置においては、カテーテルの構成が従来のものとは異なるため、従来のカテーテルには適用できないという問題がある。
【特許文献1】特開2004−105289号公報(段落0022及び0023、図2)
【特許文献2】特開2004−208859号公報(段落0006、0017及び0018、図1)
【特許文献3】特開平5−345015号公報(段落0004、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、上記の点に鑑み、本発明は、患者の体内に挿入される人工物(穿刺針やカテーテル等)を強調した超音波断層像を容易に得ることができる超音波観測装置、超音波内視鏡装置、及び,画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の1つの観点に係る超音波観測装置は、超音波トランスデューサから送信された超音波ビームが被検体及び人工物から反射されて生じる超音波エコーに基づいて得られる受信信号を処理する受信回路と、受信回路によって処理された受信信号に基づいて超音波画像を生成する超音波画像生成手段と、超音波画像において人工物を強調するために操作される人工物強調操作手段と、人工物強調操作手段の操作に従って、超音波画像生成手段によって生成される超音波画像において人工物を強調するための処理を行う人工物強調処理手段とを具備する。
【0008】
また、本発明の1つの観点に係る超音波内視鏡装置は、本発明の超音波観測装置と、超音波観測装置に接続され、超音波を送受信するための超音波トランスデューサ部、及び、人工物を突出させるための孔を備えた超音波内視鏡とを具備する。
【0009】
さらに、本発明の1つの観点に係る画像処理方法は、超音波トランスデューサから送信された超音波ビームが被検体及び人工物から反射されて生じる超音波エコーに基づいて得られる受信信号を処理する第1のステップと、第1のステップにおいて処理された受信信号に基づいて、超音波画像に含まれている人工物を強調するための処理を行う第2のステップと、第2のステップにおいて人工物が強調された超音波画像を生成する第3のステップとを具備する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、穿刺針等の人工物を強調した超音波画像を容易に作成して表示することができるので、穿刺処理等の難易度を低下させることができる。
また、人工物強調操作手段を操作した場合にのみ、人工物を強調した超音波画像を表示することができるので、オペレータは、通常の超音波画像と人工物を強調した超音波画像との切替えを必要に応じて行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る超音波内視鏡装置1は、超音波内視鏡(超音波内視鏡装置において用いられる超音波プローブ)2と、超音波内視鏡2を接続可能な超音波観測装置3と、超音波観測装置3に接続された表示装置4とを含んでいる。
【0012】
超音波観測装置3は、操作卓11と、CPU(中央処理装置)12と、送信回路13と、受信回路14と、Bモード処理部15と、穿刺針強調部16と、ディジタル・スキャン・コンバータ(DSC)17と、画像メモリ18と、ディジタル/アナログ変換器(D/A変換器)19とを含んでいる。
【0013】
図2に示すように、超音波内視鏡2は、挿入部31と、操作部32と、接続コード33と、ユニバーサルコード34とを含んでいる。
超音波内視鏡2の挿入部31は、患者の体内に挿入することができるように細長い可撓性の管状となっている。操作部32は、挿入部31の基端に設けられており、接続コード33を介して超音波観測装置3に接続されていると共に、ユニバーサルコード34を介して図示しない光源装置と接続されている。
【0014】
超音波内視鏡2の挿入部31には、照明窓及び観察窓が設けられている。照明窓には、光源装置からライトガイドを介して供給される照明光を出射させるための照明用レンズが装着されている。これらは、照明光学系を構成する。また、観察窓には、対物レンズが装着されており、この対物レンズの結像位置に、イメージガイドの入力端又はCCDカメラ等の固体撮像素子が配置されている。これらは、観察光学系を構成する。
【0015】
超音波内視鏡2の挿入部31の先端には、複数の超音波トランスデューサが配置されたコンベックス型の超音波トランスデューサ部40が設けられている。超音波トランスデューサ部40は、図1に示す超音波観測装置3の送信回路13から接続コード33を介して供給される複数の駆動信号に従って超音波ビームを送信すると共に、目的部位等から反射された超音波エコーを受信して、複数の受信信号を超音波観測装置3の受信回路14に接続コード33を介して出力する。また、超音波内視鏡2の挿入部31の先端には、操作部32に設けられた処置具挿入口35から挿入された、穿刺針36等の人工物が突出される孔が形成されている。
【0016】
図1に示す超音波観測装置3の操作卓11は、オペレータの操作に基づいて、超音波内視鏡2を用いた超音波撮像動作の開始/停止を制御するための制御信号AをCPU12に出力する。また、操作卓11は、オペレータが穿刺針強調ボタン20を操作すると、穿刺針強調部16及びDSC17における穿刺針強調動作の開始/停止を制御するための穿刺針強調指示信号BをCPU12に出力する。
【0017】
CPU12は、操作卓11から入力される制御信号Aに基づいて、送信回路13の動作を制御するための送信制御信号A1を送信回路13に出力すると共に、受信回路14の動作を制御するための受信制御信号A2を受信回路14に出力する。また、CPU12は、操作卓11から入力される穿刺針強調指示信号Bに基づいて、穿刺針強調部16及びDSC17の動作を制御するための穿刺針強調制御信号B1を穿刺針強調部16及びDSC17に出力する。
【0018】
送信回路13は、送信制御信号A1に基づいて複数の駆動信号を生成し、これらの駆動信号を超音波内視鏡2に出力する。これらの駆動信号に従って、超音波内視鏡2の超音波トランスデューサ部40から超音波ビームが送信され、被検体が走査される。
【0019】
一方、受信回路14は、超音波内視鏡2の超音波トランスデューサ部40から入力される受信信号を所定の増幅度で増幅した後、アナログ/ディジタル変換(A/D変換)を行うことにより、増幅された受信信号をディジタル受信信号に変換する。
【0020】
図3に示すように、Bモード処理部15は、位相整合部51と、音線メモリ52と、検波部53とを備える。位相整合部51は、受信回路14から入力されるディジタル受信信号に対して位相整合を行って受信フォーカス処理を施し、超音波エコーの焦点が絞り込まれた音線データを形成する。音線メモリ52は、位相整合部51によって形成された音線データを格納する。検波部53は、音線メモリ52から読み出した音線データに対して、超音波ビームの反射位置の深度に応じて距離による減衰の補正を行った後、包絡線検波処理を行うことにより、Bモード画像用データを生成する。
【0021】
穿刺針強調部16は、相関値算出部61と、相関値メモリ62と、参照信号メモリ63とを備える。相関値算出部61は、Bモード処理部15の位相整合部51から出力される位相整合された音線データによって表される波形と、参照信号メモリ63に格納されている参照信号データによって表される波形との相関値を算出する。参照信号メモリ62は、穿刺針36から反射された超音波エコーに基づく受信信号を予め計測して得られたデータである参照信号データを格納する。
【0022】
ここで、参照信号データは、穿刺針36だけからの反射信号を計測して得るために、例えば以下のようにして作成される。
超音波内視鏡2における穿刺角でもって穿刺針36を水中に突出させた後に、この穿刺針36に向けて超音波ビームを送信して、図4に黒点で示す穿刺針36の第1から第4の位置P1〜P4に向けて送信される4つの超音波ビーム(音線k、音線l、音線m及び音線n)のエコー信号を計測する。この計測した4つのエコー信号から得られる音線データを、第1から第4の参照信号データRef1〜Ref4とする。相関値メモリ62は、相関値算出部61において算出された、音線データによって表される波形と参照信号データによって表される波形との相関値を表す相関値データを格納する。
【0023】
以上において、Bモード処理部15〜DSC17(但し、メモリを除く)は、ディジタル回路で構成しても良いし、あるいは、CPU12と、CPU12に各種の処理を行わせるためのソフトウェア(画像処理プログラム)とによって構成しても良い。その場合には、CPU12が、記録媒体に記録されている画像処理プログラムに基づいて、音線データによって表される波形と参照信号によって表される波形との相関値を算出する。記録媒体としては、ハードディスク、フレキシブルディスク、MO、MT、RAM、CD−ROM、又は、DVD−ROM等を用いることができる。
【0024】
DSC17は、RGB処理部71と、走査変換部72とを備える。RGB処理部71は、通常動作時には、Bモード処理部15から入力されるBモード画像用データに基づいて、3つの色信号(R信号、G信号及びB信号)の振幅を0〜255階調(8ビット)でそれぞれ表す。なお、Bモード処理部15とDSC17とは、受信信号に基づいて超音波画像を生成する超音波画像生成手段を構成している。
【0025】
また、RGB処理部71は、穿刺針強調動作時には、穿刺針36(図2)の先端ほど赤色で示すために、図5に示すように、Bモード画像用データの3つの色信号(R信号、G信号及びB信号)の各々の振幅を0〜200階調で表すと共に、穿刺針強調部16から入力される第1から第4の相関値CRef1〜CRef4に応じてR信号の振幅を最大で255階調まで大きくする。このとき、RGB処理部71は、第1から第4の相関値CRef1〜CRef4に対して重み付けをもってR信号の振幅を大きくしている。即ち、RGB処理部71は、第1の相関値CRef1に比例してR信号の振幅を最大で35階調まで大きくし、第2の相関値CRef2に比例してR信号の振幅を最大で15階調まで大きくし、第3の相関値CRef3に比例してR信号の振幅を最大で10階調まで大きくし、第4の相関値CRef4に比例してR信号の振幅を最大で5階調まで大きくする。
【0026】
走査変換部72は、Bモード処理部15において生成されたBモード画像用データが通常のテレビジョン信号の走査方式と異なる走査方式によって得られたものであるため、RGB処理部71から出力されるBモード画像用データを通常の画像データに変換(ラスター変換)する。
【0027】
再び図1を参照すると、画像メモリ18は、DSC17の走査変換部72から入力される画像データを格納する。D/A変換器19は、画像メモリ18から読み出したディジタルの画像データをアナログの画像信号に変換して表示装置4に出力する。これにより、表示装置4において、超音波内視鏡2により撮影された超音波断層像が表示される。
【0028】
次に、本実施形態に係る超音波内視鏡装置1の動作について説明するが、通常動作時の動作については通常の超音波内視鏡装置と同様であるので、穿刺針強調動作時の動作についてのみ説明する。また、穿刺針強調部16の参照信号メモリ63には、図4に示す第1から第4の参照信号データRef1〜Ref4が格納されているものとする。
【0029】
図2に示す超音波内視鏡2を用いて超音波断層像を撮影する際に、オペレータは、ユニバーサルコード34の一端に接続された光源から光を発して、挿入部31の先端部に設けられた照明窓から患者の体内に照明光を出射すると共に、観察窓から挿入状態を観察しながら、超音波内視鏡2の挿入部31を被検体である患者の体内に挿入して行く。超音波内視鏡2の挿入部31が目的位置に達すると、オペレータは、穿刺針36を処置具挿入口35から挿入して挿入部31の先端の孔から突出させる。
【0030】
その後、オペレータは、図1に示す操作卓11を操作することにより、超音波撮像動作を開始させる制御信号Aを操作卓11からCPU12に出力させる。また、オペレータは、操作卓11の穿刺針強調ボタン20を押すことにより、穿刺針強調動作を開始させる穿刺針強調指示信号Bを操作卓11からCPU12に出力させる。
【0031】
CPU12は、制御信号Aに基づいて、送信回路13の動作の開始とBモード用の駆動信号の生成とを指示する送信制御信号A1を送信回路13に出力すると共に、受信回路14の動作の開始を指示する受信制御信号A2を受信回路14に出力する。また、CPU12は、穿刺針強調指示信号Bに基づいて、穿刺針強調部16の動作を開始させると共にDSC17のRGB処理部71(図3)に穿刺針強調動作を開始させる穿刺針強調制御信号B1を穿刺針強調部16及びDSC17に出力する。
【0032】
送信回路13は、超音波トランスデューサ部40(図2)から超音波ビームを送信するための複数の駆動信号を生成する。生成された複数の駆動信号は、超音波内視鏡2の超音波トランスデューサ部40に出力される。これにより、超音波トランスデューサ部40から、超音波ビームが被検体及び穿刺針36に送信される。
【0033】
超音波ビームが被検体及び穿刺針36から反射されて生じた超音波エコーを受信することによって超音波トランスデューサ部40において得られる複数の受信信号は、超音波内視鏡2から受信回路14に入力されて、ディジタル受信信号に変換される。このディジタル受信信号は、Bモード処理部15の位相整合部51(図3)に出力され、位相整合部51において受信フォーカス処理が施されて、音線データが形成される。位相整合部51において形成された音線データは、音線メモリ52に格納されると共に、穿刺針強調部16の相関値算出部61(図3)に出力される。
【0034】
穿刺針強調部16の相関値算出部61においては、Bモード処理部15の位相整合部51から入力される音線データによって表される波形と、参照信号メモリ63から読み出した第1から第4の参照信号データRef1〜Ref4によって表される波形との相関値が算出される。
【0035】
ここで、図6の(A)に示すような、穿刺針36の第1の位置P1(図4参照)に向けて送信された超音波ビーム(音線n)のエコー信号に相当する音線データについては、図6の(B)から(E)に示すように、第1の参照信号データRef1によって表される波形との相関値CRef1が最大となり、第2の参照信号データRef2によって表される波形との相関値CRef2、第3の参照信号データRef3によって表される波形との相関値CRef3、及び、第4の参照信号データRef4によって表される波形との相関値CRef4の順番で小さくなる。
【0036】
これに対して、穿刺針36の第2の位置P2(図4参照)に向けて送信された超音波ビーム(音線m)のエコー信号に相当する音線データについては、第2の参照信号データRef2によって表される波形との相関値CRef2が最大となり、穿刺針36の第3の位置P3に向けて送信された超音波ビーム(音線l)のエコー信号に相当する音線データについては、第3の参照信号データRef3によって表される波形との相関値CRef3が最大となり、穿刺針36の第4の位置P4に向けて送信された超音波ビーム(音線k)のエコー信号に相当する音線データについては、第4の参照信号データRef4によって表される波形との相関値CRef4が最大となる。
【0037】
相関値算出部61において算出された相関値CRef1〜CRef4を表す相関値データは、相関値メモリ62に格納される。
DSC17のRGB処理部71は、Bモード処理部15から入力されるBモード用画像データの3つの色信号(R信号、G信号及びB信号)の各々の振幅を0〜200階調で表すと共に、穿刺針強調部16の相関値メモリ62から読み出した相関値データに応じてBモード画像のR信号の振幅を大きくする。
【0038】
このとき、図5に示すように、Bモード用画像データのR信号の振幅は第1から第4の相関値CRef1〜CRef4に対して重み付けがされて加算されるため、R信号の振幅は、第1の参照信号データRef1によって表される波形との相関値CRef1が最大となる音線データについて一番大きくなり、第2の参照信号データRef2によって表される波形との相関値CRef2が最大となる音線データ、第3の参照信号データRef3によって表される波形との相関値CRef3が最大となる音線データ、及び、第4の参照信号データRef4によって表される波形との相関値CRef4が最大となる音線データの順番で小さくなる。その結果、DSC17の走査変換部72(図3)においてラスター変換された画像データ(超音波断層像)においては穿刺針36の先端ほど赤色が濃くなるので、穿刺針36の位置に応じて色相を変化させることができる。これにより、オペレータは、表示装置4に表示された超音波断層像において穿刺針36の先端の位置を容易に確認しながら、患者の患部の処理を行うことができる。
【0039】
以上の説明においては、穿刺針36の4つの位置に対応して、参照信号として4つの参照信号(第1から第4の参照信号データRef1〜Ref4)を用いたが、参照信号の数は任意で良い。なお、参照信号の数を1つにする場合には、穿刺針36の先端の位置からの超音波ビームのエコー信号を予め計測して参照信号を得るようにした方が良い。
また、図4に示すように穿刺針36の各位置からのエコー信号を予め計測して参照信号を得る場合には、穿刺針36にメッシュ加工を施すと良い。このとき、穿刺針36の根元ほどメッシュサイズを小さくすることが望ましい。
【0040】
さらに、穿刺針36の刺入角が変わっても対応できるようにするために、超音波ビームと穿刺針36との間の複数種類の角度毎の反射信号を予め計測して参照信号を得るようにしても良い。
また、穿刺針36が強調される場合について説明したが、血管内ステントやカテーテルのような人工物についても、超音波ビームの人工物からの反射信号を予め計測して得た参照信号を表す参照信号データを参照信号メモリ63(図3)に格納しておくことにより、本発明を適用することができる。
【0041】
次に、本発明の第2の実施形態に係る超音波内視鏡装置について図7及び図8を参照しながら説明する。
図7に示すように、本実施形態に係る超音波内視鏡装置は、図1に示す穿刺針強調部16が、図3に示す相間値算出部61、相間値メモリ62及び参照信号メモリ63の代わりに、閾値処理部81及び処理結果メモリ82を備える点と、DSC17のRGB処理部71が、第1から第4の相間値CRef1〜CRef4に応じてR信号の振幅を大きくする代わりに、穿刺針強調部16の処理結果メモリ82から入力される処理結果データに応じてR信号の振幅を大きくする点において、第1の実施形態と異なっている。
【0042】
図8に示すように、穿刺針強調部16の閾値処理部81は、Bモード処理部15の位相整合部51から入力される音線データによって表される波形の振幅が所定の閾値を超えるとハイレベルになる閾値処理結果データを出力する。処理結果メモリ82は、閾値処理部81から入力される閾値処理結果データを格納する。
【0043】
本実施形態に係る超音波内視鏡装置においては、例えば、図8の(A)に示すような、穿刺針36の第1の位置P1(図4参照)に向けて送信された超音波ビーム(音線n)のエコー信号に相当する音線データについては、図8の(B)に示すように、その振幅が閾値を超える部分が生じる。その結果、この部分がハイレベルとなる閾値処理結果データが、図7に示す閾値処理部81によって作成されて、処理結果メモリ82に格納される。DSC17のRGB処理部71は、Bモード処理部15から入力されるBモード画像の3つの色信号(R信号、G信号及びB信号)の各々の振幅を0〜200階調で表すと共に、処理結果メモリ82から読み出した閾値処理結果データがハイレベルの部分に相当する画素のR信号の振幅を255階調とする。
穿刺針36の第2から第4の位置P2〜P4(図4参照))に向けて送信された超音波ビーム(音線m〜k)のエコー信号に相当する音線データについても、その振幅が閾値を超える部分が生じるため、同様にして、DSC17のRGB処理部71において、閾値処理結果データがハイレベルの部分に相当する画素のR信号の振幅は255階調とされる。
これにより、穿刺針36が赤色とされた超音波断層像が、表示装置4に表示される。
【0044】
本実施形態に係る超音波内視鏡装置においては、音線データによって表される波形と参照信号によって表される波形との相関値を算出する必要がないため、上述した第1の実施形態に係る超音波内視鏡装置よりも低コスト化を実現することができる。また、本実施形態に係る超音波内視鏡装置においては、穿刺針以外の反射率の大きい人工物についても、その部分を赤色にして強調した超音波断層像を表示することができる。
【0045】
次に、本発明の第3の実施形態に係る超音波内視鏡装置について図9を参照しながら説明する。
本実施形態に係る超音波内視鏡装置は、穿刺針強調部16が、閾値処理部92の前段に微分処理部91を備える点において、第2の実施形態と異なっている。
【0046】
微分処理部91は、Bモード処理部15の位相整合部51から入力される音線データによって表される波形を微分することにより、エッジ信号を抽出する。閾値処理部92は、微分処理部91によって抽出されたエッジ信号の振幅が所定の閾値を超えるとハイレベルになる閾値処理結果データを出力する。処理結果メモリ93は、閾値処理部92から入力される閾値処理結果データを格納するためのものである。
【0047】
本実施形態に係る超音波内視鏡装置においては、エッジ信号の振幅が所定の閾値を超えた部分に相当するBモード画像の画素のR信号の振幅を255階調とすることにより、穿刺針36の輪郭線が赤色とされた超音波断層像を表示装置4に表示させることができる。
【0048】
本実施形態に係る超音波内視鏡装置においては、音線データによって表される波形と参照信号によって表される波形との相関値を算出する必要がないため、上述した第1の実施形態に係る超音波内視鏡装置よりも低コスト化を実現することができる。また、本実施形態に係る超音波内視鏡装置においては、穿刺針以外の反射率の大きい人工物についても、その輪郭線を赤色にして強調した超音波断層像を表示することができる。
【0049】
以上の説明においては、DSC17のRGB処理部71が、相関値及び閾値処理結果に応じてR信号の振幅を大きくしたが、G信号又はB信号の振幅を大きくしても良い。また、R信号、G信号及びB信号すべての振幅を、相関値又は閾値処理結果に応じて大きくすることにより、穿刺針36の輝度を大きくした超音波断層像を表示するようにしても良い。
【0050】
また、図1に示すように穿刺針強調ボタン20を超音波観測装置3の操作卓11に設けたが、例えば穿刺針強調ボタン20を超音波内視鏡2の操作部22(図2)に設けて、操作部22から超音波観測装置3のCPU12に穿刺針強調指示信号Bを出力するようにしても良い。
【0051】
さらに、超音波観測装置3は、超音波内視鏡2に接続して使用したが、体外式の超音波プローブに接続して使用しても良い。但し、超音波内視鏡2においては、超音波トランスデューサ部が小さいために画質が低下し易いので、体外式の超音波プローブよりも超音波内視鏡2に接続して使用した場合の方が、穿刺針強調によるメリットは大きい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、患者の体内に挿入された穿刺針等の人工物を強調した超音波断層像を得るための超音波観測装置、及び、そのような超音波観測装置を備えた超音波内視鏡装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る超音波内視鏡装置1の構成を示す図である。
【図2】図1に示す超音波内視鏡2の構成を示す図である。
【図3】図1に示すBモード処理部15、穿刺針強調部16及びDSC17の構成を示す図である。
【図4】参照信号データの作成方法を説明するための図である。
【図5】図3に示すRGB処理部71の動作を説明するための図である。
【図6】図3に示す相関値算出部61の動作を説明するための図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る超音波内視鏡装置1の構成を示す図である。
【図8】図7に示す閾値処理部81の動作を説明するための図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る超音波内視鏡装置1の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1 超音波内視鏡装置
2 超音波内視鏡
3 超音波観測装置
4 表示装置
11 操作卓
12 CPU
13 送信回路
14 受信回路
15 Bモード処理部
16 穿刺針強調部
17 DSC
18 画像メモリ
19 D/A変換器
20 穿刺針強調ボタン
31 挿入部
32 操作部
33 接続コード
34 ユニバーサルコード
35 処置具挿入口
36 穿刺針
40 超音波トランスデューサ部
51 位相整合部
52 音線メモリ
53 検波部
61 相関値算出部
62 相関値メモリ
63 参照信号メモリ
71 RGB処理部
72 走査変換部
81、92 閾値処理部
82、93 処理結果メモリ
91 微分処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波トランスデューサから送信された超音波ビームが被検体及び人工物から反射されて生じる超音波エコーに基づいて得られる受信信号を処理する受信回路と、
前記受信回路によって処理された受信信号に基づいて超音波画像を生成する超音波画像生成手段と、
超音波画像において人工物を強調するために操作される人工物強調操作手段と、
前記人工物強調操作手段の操作に従って、前記超音波画像生成手段によって生成される超音波画像において人工物を強調するための処理を行う人工物強調処理手段と、
を具備する超音波観測装置。
【請求項2】
前記人工物強調処理手段が、
受信信号に対して位相整合処理を行って得られる音線データによって表される波形と、人工物を撮像して得られた少なくとも1つの参照信号の波形との相関値を算出する相関値算出手段と、
参照信号を表す参照信号データを格納するための参照信号メモリと、
前記相関値算出手段によって算出された相関値を表す相関値データを格納するための相関値メモリと、
を備え、前記相関値算出手段によって算出された相関値に基づいて、人工物を強調するための処理を行う、
請求項1記載の超音波観測装置。
【請求項3】
前記参照信号が、人工物の複数の位置からの超音波エコーを予め計測して得られたものである、請求項2記載の超音波観測装置。
【請求項4】
前記参照信号が、超音波ビームと人工物との間の複数種類の角度毎の超音波エコーを予め計測して得られたものである、請求項2記載の超音波観測装置。
【請求項5】
前記超音波画像生成手段が、前記人工物強調処理手段から出力される信号に従って、超音波画像を表示するために用いられる3つの色信号の内の少なくとも1つの色信号の振幅を大きくすることにより人工物を強調する色信号処理手段を含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の超音波観測装置。
【請求項6】
前記色信号処理手段が、音線データによって表される波形と複数の参照信号によって表される波形との相関値に応じて、かつ、複数の参照信号毎に重み付けをして、超音波画像を表示するために用いられる3つの色信号の内の少なくとも1つの色信号の振幅を大きくすることにより人工物を強調する、請求項5記載の超音波観測装置。
【請求項7】
前記人工物強調処理手段が、
受信信号に対して位相整合処理を行って得られる音線データによって表される波形の振幅と所定の閾値とを比較する閾値処理手段と、
前記閾値処理手段における比較結果を表す閾値処理結果データを格納するための処理結果メモリと、
を備え、音線データによって表される波形の振幅が閾値よりも大きい場合に、人工物を強調するための処理を行う、
請求項1記載の超音波観測装置。
【請求項8】
前記人工物強調処理手段が、
受信信号に対して位相整合処理を行って得られる音線データによって表される波形を微分する微分処理手段と、
前記微分処理手段によって得られた微分値と所定の閾値とを比較する閾値処理手段と、
前記閾値処理手段における比較結果を表す閾値処理結果データを格納するための処理結果メモリと、
を備え、微分値が閾値よりも大きい場合に、人工物を強調するための処理を行う、
請求項1記載の超音波観測装置。
【請求項9】
前記人工物が、超音波内視鏡において用いられる穿刺針である、請求項1〜8のいずれか1項記載の超音波観測装置。
【請求項10】
前記穿刺針の位置に応じてメッシュ加工が施されている、請求項9記載の超音波観測装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の超音波観測装置と、
前記超音波観測装置に接続され、超音波を送受信するための超音波トランスデューサ部、及び、人工物を突出させるための孔を備えた超音波内視鏡と、
を具備する超音波内視鏡装置。
【請求項12】
前記人工物強調操作手段が、前記超音波内視鏡に設けられている、請求項11記載の超音波内視鏡装置。
【請求項13】
超音波トランスデューサから送信された超音波ビームが被検体及び人工物から反射されて生じる超音波エコーに基づいて得られる受信信号を処理する第1のステップと、
前記第1のステップにおいて処理された受信信号に基づいて、超音波画像に含まれている人工物を強調するための処理を行う第2のステップと、
前記第2のステップにおいて人工物が強調された超音波画像を生成する第3のステップと、
を具備する画像処理方法。
【請求項14】
前記第2のステップが、前記第1のステップにおいて処理された受信信号に対して位相整合処理を行って得られる音線データによって表される波形と、人工物を撮像して得られた少なくとも1つの参照信号の波形との相関値を算出し、算出した相関値に基づいて、人工物を強調するための処理を行うことを含む、請求項13記載の画像処理方法。
【請求項15】
前記第2のステップが、音線データによって表される波形と複数の参照信号によって表される波形との相関値に応じて、かつ、複数の参照信号毎に重み付けをして、超音波画像を表示するために用いられる3つの色信号の内の少なくとも1つの色信号の振幅を大きくすることにより人工物を強調することを含む、請求項14記載の画像処理方法。
【請求項16】
前記第2のステップが、受信信号に対して位相整合処理を行って得られる音線データによって表される波形の振幅と所定の閾値とを比較し、音線データによって表される波形の振幅が閾値よりも大きい場合に、人工物を強調するための処理を行うことを含む、請求項13記載の画像処理方法。
【請求項17】
前記第2のステップが、受信信号に対して位相整合処理を行って得られる音線データによって表される波形を微分して得た微分値と、所定の閾値とを比較し、微分値が閾値よりも大きい場合に、人工物を強調するための処理を行うことを含む、請求項13記載の画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−175006(P2006−175006A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−371129(P2004−371129)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】