説明

超音波診断装置、超音波診断装置制御プログラム及び超音波信号処理プログラム

【課題】アーチファクトが少なく、しかも深部においても感度が不足することがない超音波画像を生成できる超音波診断装置等を提供すること。
【解決手段】複数の走査線それぞれに、位相が反転した2種類の超音波を送信し、走査線ごとに前記2種類の超音波に対応した第1、第2のエコー信号EA、EBを受信する送受信部21と、第1、第2のエコー信号EA、EBを走査線ごとに加算して第3のエコー信号ECを生成する第1の加算部23と、第1のエコー信号EAに基づいて第1の処理信号SAを生成し、かつ第3のエコー信号ECに基づいて第2の処理信号SCを生成する第1の信号生成手段と、第1、第2の処理信号SA、SCに基づいて第3の処理信号SDを生成する第2の加算部29と、第3の処理信号SDに基づいて超音波画像を生成する画像処理部30と、超音波画像を表示する表示モニタ33とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
生体組織内における超音波の非線形伝搬に由来するハーモニック成分を抽出して、当該生体組織の断層構造を映像化する超音波診断装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の超音波診断では、生体組織からのエコー信号に含まれる基本波を利用して、当該生体組織の断層構造を映像化する手法がしばしば使用されていた。しかしながら、エコー信号の基本波を利用した手法は、アーチファクト(虚像)が発生することが多く、診断画像の画像品質が低下するという問題があった。
【0003】
そこで近年、生体組織内における超音波の伝搬速度に非線形性があることを利用して、生体組織の断層構造を映像化する、いわゆる組織非線形音響イメージング(Tissue Harmonic Imaging)が使用されるようになった。
【0004】
組織非線形音響イメージングは、生体組織からのエコー信号に含まれるハーモニック成分の2次高調波だけを利用して、生体組織の断層構造を映像化する手法であって、アーチファクトが低減された、抜けの良い高コントラスト画像が得られるという特徴がある。 これにより、現在の超音波診断では、従来よりも画像品質が高い診断画像が得られるようになり、超音波診断における診断能が向上してきた。
【0005】
ハーモニック成分だけを抽出する方法として、いわゆるパルスインバージョン(PI)法が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。このパルスインバージョン法では、複数の走査線それぞれに対して、位相が反転した2種類の超音波を低音圧で送信して、これら2種類に対応する2つのエコー信号を受信する。そして、これらのエコー信号を加算して基本波成分を除去することで、生体組織からのハーモニクス成分のみを抽出する。 また、組織非線形音響イメージングでは、生体組織からのエコー信号に含まれるハーモニクス成分の差音成分だけを利用して、生体組織の断層構造を映像化することもある(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
また、生体組織の断層構造を映像化する手法ではないが、超音波診断で使用される造影剤バブルが非常にデリケートであることを利用して、血流動態を映像化する手法も使用されるようになっている。
【0007】
造影剤バブルからのエコー成分だけを抽出する方法として、いわゆるレートサブストラクション(RS)法が知られている(例えば、特許文献2参照)。このレートサブストラクション法では、複数の走査線それぞれに対して、同じ超音波を高音圧で2回送信して、これら2回の送信に対応した2つのエコー信号を受信する。そして、これら2つのエコー信号を差分して重複成分を除去することで、消失、変形した造影剤バブルからのエコー成分を抽出する。
【0008】
すなわち、超音波診断で使用される造影剤バブルは非常にデリケートであるため、超音波が照射されると、その多くが瞬時に破壊される。そのため、2回目の超音波の送信によって得られるエコー信号は、1回目の超音波の送信によって得られるエコー信号よりも小さくなる。しかしながら、生体組織からのエコー信号は大きく変化することがない。したがって、これら2つのエコー信号から得られる差分信号には、消失、変形した造影剤バブルからのエコー信号が反映される。これにより、レートサブストラクション法を使用すれば、生体組織からのエコー信号が除去されて、血流動態のみの映像化が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−298620号公報
【特許文献2】特開平8−336527号公報
【非特許文献1】阿比留巌、鎌倉友男著「超音波パルスの非線形伝搬」信学技法、US89−23、P53
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、組織非線形音響イメージングは、エコー信号に含まれる基本波から生体組織の断層構造を映像化する手法に比べて、超音波画像の深部において感度が不足するという問題がある。
【0011】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、アーチファクトが少なく、しかも深部においても感度が不足することがない超音波画像を生成できる超音波診断装置、超音波診断装置制御プログラム、超音波信号処理プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0013】
本発明の第1の視点は、複数の走査線それぞれに対して、位相が反転した2種類の超音波を送信し、前記走査線ごとに前記二種類の超音波に対応した第1、第2のエコー信号を受信する送受信ユニットと、前記送受信ユニットにより受信された第1、第2のエコー信号を加算して非線形信号を取得する非線形信号取得ユニットと、前記送受信ユニットにより受信された第1のエコー信号又は第2のエコー信号を含む基本波信号を取得する基本波信号取得ユニットと、前記非線形信号と前記基本波信号とから合成信号を生成する合成信号生成ユニットと、前記合成信号に基づく画像を表示する画像表示ユニットと、を具備することを特徴とする超音波診断装置である。
【0014】
本発明の第2の視点は、複数の走査線それぞれに対して、第1の周波数成分と当該第1の周波数成分より高い第2の周波数成分とを含む超音波の送受信を行う送受信ユニットと、
前記超音波の送受信に基づいて、前記第1、第2の周波数成分の差音成分を含む非線形信号を取得する非線形成分取得ユニットと、前記超音波の送受信に基づいて、前記第1、第2の周波数成分を含む基本波成分を含む基本波信号を取得する基本波信号取得ユニットと、前記非線形信号と前記基本波信号とから合成信号を生成する合成信号生成ユニットと、前記合成信号に基づく画像を表示する表示ユニットと、を具備することを特徴とする超音波診断装置である。
【0015】
本発明の第3の視点は、複数の走査線それぞれに対して、位相が反転した2種類の超音波を送信し、前記走査線ごとに前記二種類の超音波に対応した第1、第2のエコー信号を受信する送受信ユニットと、前記送受信ユニットにより受信された第1、第2のエコー信号を加算して非線形信号を取得する非線形信号取得ユニットと、前記送受信ユニットにより受信された第1、第2のエコー信号を減算して基本波信号を取得する基本波信号取得ユニットと、前記非線形信号と前記基本波信号とから合成信号を生成する合成信号生成ユニットと、前記合成信号に基づく画像を表示する画像表示ユニットと、を具備することを特徴とする超音波診断装置である。
【0016】
本発明の第4の視点は、複数の走査線それぞれに対して、それぞれが第1の周波数成分と当該第1の周波数成分より高い第2の周波数成分とを含み位相が反転する2種類の超音波を送信し、前記走査線ごとに前記二種類の超音波に対応した第1、第2のエコー信号を受信する送受信ユニットと、前記超音波の送受信に基づいて、前記第1、第2の周波数成分の差音成分を含む非線形信号を取得する非線形成分取得ユニットと、前記送受信ユニットにより受信された第1、第2のエコー信号を減算して基本波信号を取得する基本波信号取得ユニットと、前記非線形信号と前記基本波信号とから合成信号を生成する合成信号生成ユニットと、前記合成信号に基づく画像を表示する表示ユニットと、を具備することを特徴とする超音波診断装置である。
【0017】
本発明の第5の視点は、超音波診断装置を制御するためのプログラムであって、前記超音波診断装置に、複数の走査線それぞれに対して、位相が反転した2種類の超音波を送信させる送信機能と、前記走査線ごとに前記二種類の超音波に対応した反射波を受信して得られる第1、第2のエコー信号を加算することで、非線形信号を取得させる非線形信号取得機能と、前記第1のエコー信号又は前記第2のエコー信号を含む基本波信号を取得させる基本波取得機能と、前記非線形信号と前記基本波信号とから合成信号を生成させる生成機能と、前記合成信号に基づく画像を表示させる表示機能と、を実現させることを特徴とする超音波診断装置制御プログラムである。
【0018】
本発明の第6の視点は、超音波信号を処理するためのプログラムであって、コンピュータに、複数の走査線それぞれに対して、第1の周波数成分と当該第1の周波数成分より高い第2の周波数成分とを含む超音波の送受信によって得られるエコー信号から、前記第1、第2の周波数成分の差音成分を含む非線形信号を取得させる非線形信号取得機能と、前記第1、第2の周波数成分を含む基本波成分を含む基本波信号を取得させる基本波信号取得機能と、前記非線形信号と前記基本波信号とから合成信号を生成させる生成機能と、前記合成信号に基づく画像を表示させる表示機能と、を実現させることを特徴とする超音波信号処理プログラムである。
【0019】
本発明の第7の視点は、超音波診断装置を制御するためのプログラムであって、前記超音波診断装置に、複数の走査線それぞれに対して、位相が反転した2種類の超音波を送信させる送信機能と、前記走査線ごとに前記二種類の超音波に対応した反射波を受信して得られる第1、第2のエコー信号を加算することで、非線形信号を取得させる非線形信号取得機能と、前記第1、第2のエコー信号を減算して基本波信号を取得させる基本波信号取得機能と、前記非線形信号と前記基本波信号とから合成信号を生成させる生成機能と、前記合成信号に基づく画像を表示させる表示機能と、を実現させることを特徴とする超音波診断装置制御プログラムである。
【0020】
本発明の第8の視点は、超音波診断装置を制御するためのプログラムであって、前記超音波診断装置に、複数の走査線それぞれに対して、それぞれが第1の周波数成分と当該第1の周波数成分より高い第2の周波数成分とを含み位相が反転する2種類の超音波を送信させる送信機能と、前記走査線ごとに前記二種類の超音波に対応した反射波を受信して得られる第1、第2のエコー信号から、前記第1、第2の周波数成分の差音成分を含む非線形信号を取得させる非線形信号取得機能と、前記第1、第2のエコー信号を減算して基本波信号を取得させる基本波取得機能と、前記非線形信号と前記基本波信号とから合成信号を生成させる生成機能と、前記合成信号に基づく画像を表示させる表示機能と、を実現させることを特徴とする超音波診断装置制御プログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る超音波診断装置のブロック図。
【図2】図2は、同実施形態に係る重み係数のグラフ。
【図3】図3は、本発明の第2実施形態に係る超音波診断装置のブロック図。
【図4】図4は、同実施形態に係る重み係数のグラフ。
【図5】図5は、本発明の第3実施形態に係る超音波診断装置のブロック図。
【図6】図6は、本発明の第4実施形態に係る超音波診断装置のインターフェース部周辺のブロック図。
【図7】図7は、同実施形態に係る重み係数のグラフ。
【図8】図8は、本発明の第5実施形態に係る超音波診断装置の重み係数テーブル周辺のブロック図。
【図9】図9は、第5実施形態に係る重み係数のグラフ。
【図10】図10は、第6実施形態における超音波診断装置のブロック図。
【図11】図11は、第6実施形態における重み係数のグラフ。
【図12】図12は、第6実施形態における重み係数の設定シーケンスが作動しているときの診断画像の生成工程に関するフローチャート。
【図13】図13は、第6実施形態におけるノイズゲインとシグナルゲインのグラフ。
【図14】図14(a)、14(b)は、第6実施形態における0.7[dB/MHz・cm]の減衰率を有するファントムの診断画像。
【図15】図15(a)、(b)は、第6実施形態における0.3[dB/MHz・cm]の減衰率を有するファントムの診断画像。
【図16】図16は、第7実施形態における重み係数の設定シーケンスが作動しているときの診断画像の生成工程に関するフローチャート。
【図17】図17は、第8実施形態におけるテーブルの概念図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の第1〜第8実施形態について詳細に説明する。 (第1実施形態)
まず、図1と図2を用いて本発明の第1実施形態について説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る超音波診断装置のブロック図である。
図1に示すように、この超音波診断装置は、超音波プローブ10と装置本体20とから構成されている。
【0023】
超音波プローブ10は、被検体の体表に当てられて実際に超音波を送受信するものであり、その先端部には圧電セラミック等の圧電振動子が設けられている。これら圧電振動子は所定間隔で並列され、各々がいわゆるチャンネルをなしている。
【0024】
装置本体20は、送受信部(送受信手段)21、第1のメモリ22、第1の加算部(加算手段)23、検波部24、フィルタ部25、エンベロープ部26、Log圧縮部27、第2のメモリ28、第2の加算部(第2の信号処理手段)29、画像処理部(画像生成手段)30、フレームメモリ31、デジタルスキャンコンバータ(以下、「DSC」とする)32、及び表示モニタ(画像表示手段)33を備えている。
【0025】
送受信部21は、超音波を送信するための送信部21aと、生体組織からのエコー信号を受信するための受信部21bとから構成される。生体組織からのエコー信号は、超音波プローブ10を介して、この送受信部21により受信される。
【0026】
第1のメモリ22は、送受信部21により受信されたエコー信号を保存する。第1の加算部23は、送受信部21からエコー信号が入力されたときに、このエコー信号と第1のメモリ22に保存されている別のエコー信号とを加算する。ただし、第1のメモリ22にエコー信号が保存されていない場合、送受信部21からのエコー信号は、第1の加算部23を通過する。
【0027】
検波部24は、第1の加算部23からのエコー信号を、当該エコー信号に応じた周波数で検波処理する。フィルタ部25は、検波部24からのエコー信号に対して、検波処理に応じた周波数フィルタをかけ、ノイズ等の不要な成分を除去する。
【0028】
エンベロープ部26は、フィルタ部25からのエコー信号に対して、エンベロープをかけて、包絡線信号を取り出す。Log圧縮部27は、エンベロープ部26からの包絡線信号をLog圧縮して、処理信号を生成する。
【0029】
すなわち、前記検波部24、フィルタ部25、エンベロープ部26、及びLog圧縮部27は、第1の加算部24からのエコー信号を処理して、画像構築に実際に使用される処理信号を生成するための信号変換部(第1の信号処理手段)36を構成している。
【0030】
第2のメモリ28は、第1の信号処理手段の出力、すなわちLog圧縮部27からの処理信号を保存する。第2の加算部29は、第2のメモリ28に記憶されている処理信号と、Log圧縮部27からの処理信号とに対してそれぞれ重み係数をかけて、これらを加算する。これら重み係数は、後述するように、被検体の深さに応じて予め定められたものであり、超音波診断装置の記憶部(図示しない)に保存されている。
【0031】
画像処理部30は、第2の加算部29からの処理信号に各種の画像処理を施して、画像フレームを生成する。フレームメモリ31は、画像処理部30からの画像フレームを逐次保存する。
【0032】
DSC32は、走査により得られた走査線信号列を、テレビジョン等に代表される一般的なビデオフォーマットの走査線信号列に変換する。表示モニタ33は、DSC32からの画像データを超音波画像として表示する。
【0033】
(超音波診断装置による画像生成)
本実施形態における超音波走査では、走査線ごとに、位相が180度反転した2本の超音波、すなわち第1、第2の超音波が連続して送信される。これら第1、第2の超音波は、被検体内における音響インピーダンスの不連続面で反射して、位相が180度反転した2本のエコー信号、すなわち前記第1、第2の超音波に対応した第1、第2のエコー信号EA、EBとなって送受信部21に受信される。なお、第1、第2のエコー信号EA、EBは、基本波成分とハーモニック成分の両方を含んでいるが、基本波成分に比べてハーモニック成分が極めて小さいため、基本波成分が反映されたエコー信号とみなされる。
【0034】
先に受信された第1のエコー信号EAは、第1のメモリ22に保存されるとともに、第1の加算部23を通過して検波部24に進む。そして、遅れて受信された第2のエコー信号EBが第1の加算部23に到着したら、第1のメモリ22に保存されている第1のエコー信号EAと、この第2のエコー信号EBとが加算され、第3のエコー信号ECが生成される。
【0035】
ところで、前述のように、第1、第2のエコー信号EA、EBは、位相が180度反転している。したがって、第1、第2のエコー信号EA、EBが加算されると、第1、第2のエコー信号EA、EBに含まれる基本波成分が相殺され、ハーモニック成分だけが2倍に強調される。これにより、第3のエコー信号ECは、生体組織からのハーモニック成分が反映されたエコー信号となっている。
【0036】
第3のエコー信号ECが生成されたとき、第1のエコー信号EAは、既に第1の加算部23を通過して先に進んでいる。そして、先行する第1のエコー信号EAと、第1のエコー信号EAを後から追う第3のエコー信号ECは、それぞれ検波部24における検波処理、フィルタ部25におけるフィルタ処理、エンベロープ部26におけるエンベロープ処理、及びLog圧縮部27におけるLog圧縮処理が順次なされ、第1、第2の処理信号SA、SCとなる。なお、第1、第2の処理信号SA、SCは、第1、第3のエコー信号EA、ECに基づいて生成されたものであるため、それぞれ基本波成分、ハーモニック成分が反映された処理信号となっている。
【0037】
Log圧縮部27から出力された第1の処理信号SAは、ひとまず第2のメモリ28に保存される。そして、遅れてLog圧縮部27から出力された第2の処理信号SCが第2の加算部29に到達したら、第2のメモリ28に保存されている第1の処理信号SAに重み係数WAがかけられ、第2の加算部29に到達した第2の処理信号SCに重み係数WCがかけられ、さらにこれらが加算される。これにより、第1の処理信号SAと第2の処理信号SCから構成される第3の処理信号SDが生成される。
【0038】
この第3の処理信号SDは、第1の処理信号SAと第2の処理信号SCとにより、 “SD=SA×WA+SC×WC”
と表現される。
【0039】
なお、重み係数WA、WCは、予め決められたものであって、超音波診断装置の記憶部(図示しない)に記憶されている。
【0040】
ところで、前述のように、第1の処理信号SAは基本波成分を反映した処理信号であり、第2の処理信号SCはハーモニック成分を反映した処理信号である。したがって、第3の処理信号SDは、基本波成分とハーモニック成分の両方により構成された処理信号である。
【0041】
そして、第3の処理信号SDにおける、基本波成分とハーモニック成分の寄与率は、重み係数WAとWCの大小関係により定まる。例えば、重み係数WAが大きく、重み係数WCが小さい場合、第3の処理信号SDは、基本波成分がより反映されたものとなる。また、重み係数WAが小さく、重み係数WCが大きい場合、第3の処理信号SDは、ハーモニック成分がより反映されたものとなる。
【0042】
図2は同実施形態に係る重み係数WA、WCのグラフである。
図2を見ると、重み係数WAは、浅部で小さく、深部に行くにつれて大きくなっている。逆に、重み係数WCは、浅部で大きく、深部に行くにつれて小さくなっている。そして、中間部では、重み係数WAとWCが近い値となっている。したがって、第3の処理信号SDは、浅部でハーモニック成分がより反映され、深部で基本波成分がより反映されていることになる。
【0043】
第3の処理信号SDは、画像処理部30で各種の画像処理が施されて、画像フレームとされたのち、逐次フレームメモリ31に保存されてゆく。そして、フレームメモリ31に蓄積された画像フレームは、DSC32でスキャンコンバートされて、超音波画像として次々と表示モニタ33に表示される。表示方法の選択により、表示モニタ33に被検体の内部構造を動画的に表示することもできる。医師等の操作者は、この超音波画像を見ながら診断を行う。
【0044】
(本実施形態による作用)
本実施形態における第3の処理信号SDは、基本波成分が反映された第1の処理信号SAに重み係数WAをかけ、ハーモニック成分が反映された第2の処理信号SCに重み係数WCをかけ、これらを加算することにより生成されている。そして、第1の処理信号SAの重み係数WAは、被検体の浅部で大きく、かつ深部で小さくなるように設定され、第2の処理信号SCの重み係数WCは、被検体の浅部で小さく、かつ深部で大きくなるように設定されている。
【0045】
したがって、第3の処理信号SDに基づいて生成される超音波画像は、被検体の浅部でハーモニック成分がより反映され、深部で基本波成分がより反映されたものとなる。すなわち、被検体の深部は、基本波成分に基づいて画像化される。これにより、被検体の深部でも超音波画像の感度が不足することがなく、画像全体に亘って診断に十分な感度が得られることになる。
【0046】
また、被検体の浅部は、ハーモニック成分に基づいて画像化されているから、基本波成分だけを利用して画像化した場合に比べて、アーチファクトの発生が飛躍的に抑制される。
【0047】
以上より、本実施形態によれば、アーチファクトが少なく、しかも深部においても十分な感度が得られる超音波画像が得られることになる。
【0048】
なお、本実施形態では、第1、第2の超音波が有している周波数帯域について言及されていない。しかしながら、第1、第2の超音波が第1、第2の周波数成分を備えていることもある。この場合、第3のエコー信号ECに、第1、第2の周波数成分の差音成分が含まれることになる。そこで、例えば第3のエコー信号ECをフィルタにかけて、その中から差音成分だけを抽出する。そして、抽出された差音成分に基づいて第2の処理信号SCを生成する。なお、差音成分がハーモニクス成分の1成分であることは言うまでもない。 このように、差音成分に基づいて第2の処理信号SCが生成された場合でも、第1、第2の処理信号SA、SCは、それぞれ基本波成分、ハーモニクス成分が反映された処理信号となるから、これら第1、第2の処理信号SA、SCに対して、それぞれ重み係数をかけて画像化すれば、前記同様に画像品質が良好な超音波画像を得ることができる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、図3と図4を用いて本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同様の構成及び作用については、その説明を省略する。
【0050】
図3は本発明の第2実施形態に係る超音波診断装置のブロック図である。
図3に示すように、本実施形態では、第1実施形態における第1の加算部23の代わりに、加減算部(加算手段、減算手段)23Aが使用されている。
【0051】
この加減算部23Aは、第1実施形態における第1の加算部23の機能に加え、送受信部21からエコー信号が入力されたときに、このエコー信号と第1のメモリ22に保存されている別のエコー信号とを減算する機能を備えている。なお、減算とは、エコー信号間の差を求めることである。
【0052】
(超音波診断装置による画像生成)
本実施形態における超音波走査では、走査線ごとに、位相が180度反転した2本の超音波、すなわち第1、第2の超音波が連続して送信される。これら第1、第2の超音波は、被検体内における音響インピーダンスの不連続面で反射して、位相が180度反転した2本のエコー信号、すなわち前記第1、第2の超音波に対応した第1、第2のエコー信号EA、EBとなって送受信部21に受信される。
【0053】
先に受信された第1のエコー信号EAは、ひとまず第1のメモリ22に保存される。そして、遅れて受信された第2のエコー信号EBが加減算部23Aに到着したら、第1のメモリ22に保存されている第1のエコー信号EAと、この第2のエコー信号EBとが加算され、第3のエコー信号ECが生成される。これに続いて、第1のメモリ22に保存されている第1のエコー信号EAと、遅れて受信された第2のエコー信号EBが減算され、第4のエコー信号EC´が生成される。
【0054】
ところで、前述のように、第1、第2のエコー信号EA、EBは、位相が180度反転している。したがって、第1、第2のエコー信号EA、EBが加算されると、第1、第2のエコー信号EA、EBに含まれる基本波成分が相殺され、ハーモニック成分だけが2倍に強調される。これにより、第3のエコー信号ECは、生体組織からのハーモニック成分が反映されたエコー信号となる。逆に、第1、第2のエコー信号EA、EBが減算されると、第1、第2のエコー信号EA、EBに含まれているハーモニック成分が相殺され、基本波成分だけが2倍に強調される。これにより、第4のエコー信号EC´は、生体組織からの基本波成分が反映されたエコー信号となっている。
【0055】
第4のエコー信号EC´が生成されたとき、第3のエコー信号ECは、既に加減算部23Aを通過して先に進んでいる。そして、先行する第3のエコー信号ECと、第4のエコー信号EC´は、それぞれ検波部24における検波処理、フィルタ部25におけるフィルタ処理、エンベロープ部26におけるエンベロープ処理、及びLog圧縮部27におけるLog圧縮処理が順次なされ、第1、第2の処理信号SC、SC´となる。なお、第1、第2の処理信号SC、SC´は、第3、第4の処理信号EC、EC´に基づいて生成されたものであるため、それぞれハーモニック成分、基本波成分が反映された処理信号となっている。
【0056】
Log圧縮部27から出力された第1の処理信号SCは、ひとまず第2のメモリ28に保存される。そして、遅れてLog圧縮部27から出力された第2の処理信号SC´が第2の加算部29に到達したら、第2のメモリ28に保存されている第1の処理信号SCに重み係数WCがかけられ、第2の加算部29に到達した第2の処理信号SC´に重み係数WC´がかけられ、さらにこれらが加算される。これにより、第1の処理信号SCと第2の処理信号SC´から構成される第3の処理信号SDが生成される。
【0057】
この第3の処理信号SDは、第1の処理信号SCと第2の処理信号SC´とにより、 “SD=SC×WC+SC´×WC´”
と表現される。
【0058】
なお、重み係数WC、WC´は、予め決められたものであって、超音波診断装置の記憶部(図示しない)に記憶されている。
【0059】
ところで、前述のように、第1の処理信号SCはハーモニック成分を反映した処理信号であり、第2の処理信号SC´は基本波成分を反映した処理信号である。したがって、第3の処理信号SDは、ハーモニック成分と基本波成分により構成された処理信号である。 そして、第3の処理信号SDにおける、ハーモニック成分と基本波成分の寄与率は、重み係数WCとWC´の大小関係により定まる。例えば、重み係数WCが大きく、重み係数WC´が小さい場合、第3の処理信号SDは、ハーモニック成分がより反映されたものとなる。また、重み係数WCが小さく、重み係数WC´が大きい場合、第3の処理信号SDは、基本波成分がより反映されたものとなる。
【0060】
図4は同実施形態に係る重み係数WC、WC´のグラフである。
図4を見ると、重み係数WCは、浅部で大きく、深部に行くにつれて小さくなっている。逆に、重み係数WC´は、浅部で小さく、深部に行くにつれて大きくなっている。そして、中間部では、重み係数WCとWC´が近い値となっている。したがって、第3の処理信号SDは、浅部でハーモニック成分がより反映され、深部で基本波成分がより反映されていることになる。さらに、基本波成分の寄与率を表現している重み係数WC´の曲線は、第1実施形態における重み係数WAの曲線よりも緩やかとなっている。
【0061】
第3の処理信号SDは、画像処理部30で各種の画像処理が施されて、画像フレームとされたのち、逐次フレームメモリ31に保存されてゆく。そして、フレームメモリ31に蓄積された画像フレームは、DSC32でスキャンコンバートされて、超音波画像として表示モニタ33に表示される。表示方法の選択により、表示モニタ33に被検体の内部構造が動画的に表示されることもある。医師等の操作者は、この超音波画像を見ながら診断を行う。
【0062】
(本実施形態による作用)
本実施形態における第2の処理信号SC´は、第1実施形態における第1の処理信号SAと同じく、基本波成分が主に反映された処理信号であるが、基本波成分が2倍に強調された第4のエコー信号EC´に基づいて生成されているので、第1実施形態における第1処理信号SAに対して約2倍の強度を持っていることになる。
【0063】
そのため、基本波成分の寄与率を表現する重み係数WC´のスケールが約1/2まで縮まるから、第1実施形態であれば重み係数WAを最大としても生体組織の深部が十分な明るさとならないような場合でも、本実施形態なら十分に対応することができる。
【0064】
なお、本実施形態でも、第1、第2の超音波が有している周波数帯域について言及されていない。しかしながら、第1、第2の超音波が第1、第2の周波数成分を備えていることもある。この場合、第1実施形態で述べたように、第3のエコー信号ECにフィルタをかけて、その中から差音成分だけを抽出する。そして、抽出された差音成分に基づいて第2の処理信号SCを生成する。
【0065】
このように、差音成分に基づいて第2の処理信号SCが生成された場合でも、第1、第2の処理信号SC、SC´は、それぞれ基本波成分、ハーモニクス成分が反映された処理信号となるから、これら第1、第2の処理信号SC、SC´に対して、それぞれ重み係数をかけて画像化すれば、前記同様に画像品質が良好な超音波画像を得ることができる。(第3実施形態)
次に、図5を用いて本発明の第3実施形態について説明する。なお、以下の説明において、第1、第2実施形態と同様の構成及び作用については、その説明を省略する。
【0066】
図5は本発明の第3実施形態に係る超音波診断装置のブロック図である。
図5に示すように、本実施形態は、第1実施形態における超音波診断装置に対して、いわゆる周波数コンパウンドを適用した例である。そのために、本実施形態における超音波診断装置では、送受信部21の後段が4つのパスP1〜P4に分離され、第2の加算部29の前段で再び連結されている。
【0067】
なお、各パスP1〜P4の構成、すなわち送受信部21と第2の加算部29との間の構成は、第1実施形態と殆んど同じである。異なっているのは、検波部24の周波数とフィルタ部25の周波数だけである。
【0068】
すなわち、本実施形態におけるパスP1〜P4の検波部24は、送受信部21が受信した第1、第2のエコー信号EA、EBを互いに異なる周波数、すなわち1MHz、2MHz、3MHz、4MHzで検波処理する。また、パスP1〜P4のフィルタ部25は、それぞれ検波処理に応じた周波数のフィルタをかける。
【0069】
(超音波診断装置による画像生成)
送受信部21で受信された第1、第2のエコー信号EA、EBは、それぞれパスP1〜P4に分離され、パスごとに信号処理されることになる。例えば、パスP1に送られた第1、第2のエコー信号EA1、EB1は、それぞれ第1実施形態と同じ要領で処理され、基本波成分が反映された第1の処理信号SA1と、ハーモニック成分SC1が反映された第2の処理信号SC1となって、Log圧縮部27から順次出力される。なお、これら第1、第2の処理信号SA1、SC1は、第1実施形態における第1、第2の処理信号SA、SCに対応している。
【0070】
以上のような処理が各パスP1〜P4で実行されることにより、8種類の処理信号、すなわち第1の処理信号SA1〜SA4と第2の処理信号SC1〜SC4とが生成される。なお、第1の処理信号SA1〜SA4は、基本波成分が反映された処理信号であり、第2の処理信号SC1〜SC4は、ハーモニック成分が反映された処理信号である。
【0071】
ところで、前述したように、検波処理の周波数とフィルタ処理の周波数は、パスごとに異なっている。したがって、第1の処理信号SA1〜SA4は、互いに周波数が異なっており、第2の処理信号SC1〜SC4も、互いに周波数が異なっている。
【0072】
各パスP1〜P4のLog圧縮部27から出力された第1の処理信号SA1〜SA4は、ひとまず第2のメモリ28に保存される。そして、遅れてLog圧縮部27から出力された第2の処理信号SC1〜SC4が第2の加算部29に到達したら、第2のメモリ28に保存されている第1の処理信号SA1〜SA4に、それぞれ予め決定された重み係数WA1〜WA4がかけられ、第2の加算部29に到達した第2の処理信号SC1〜SC4に、それぞれ重み係数WB1〜WB4がかけられ、さらにこれら全てが加算される。これにより、第1の処理信号SA1〜SA4と第2の処理信号SC1〜SC4から構成される第3の処理信号SDが生成される。
【0073】
この第3の処理信号SDは、第1の処理信号SA1〜SA4と第2の処理信号SC1〜SC4により、
“SD=SA1×WA1+SA2×WA2+SA3×WA3+SA4×WA4+SC1×WC1+SC2×WC2+SC3×WC3+SC4×WC4”
と表現される。
【0074】
ところで、前述のように、第1の処理信号SA1〜SA4は、基本波成分が反映された処理信号であり、第3の処理信号SC1〜SC4は、ハーモニック成分が反映された処理信号である。また、第1の処理信号SA1〜SA4は、互いに周波数が異なっており、また第3の処理信号SC1〜SC4も、互いに周波数が異なっている。
【0075】
すなわち、第3の処理信号SDは、互いに異なる周波数の4種類の基本波成分と、互いに異なる周波数の4種類のハーモニック成分により構成された処理信号である。
【0076】
第3の処理信号SDは、画像処理部30で各種の画像処理が施されて、画像フレームとされたのち、逐次フレームメモリ31に保存されてゆく。そして、フレームメモリ31に蓄積された画像フレームは、DSC32でスキャンコンバートされて、超音波画像として次々と表示モニタ33に表示される。医師等の操作者は、この超音波画像を見ながら診断を行う。
【0077】
(本実施形態による作用)
本実施形態における第3の処理信号SDは、互いに周波数が異なる4種類の基本波成分と、互いに周波数が異なる4種類のハーモニック成分とから構成されている。したがって、第3の処理信号SDに基づいて生成される超音波画像は、コンパウンド効果によりスペックル感の無い極めて密なものとなる。その結果、超音波画像における生体組織の細部まで詳細に表示されるから、従来よりも診断能が向上することになる。
【0078】
なお、本実施形態では、第1実施形態に係る超音波診断装置に対して、周波数コンパウンドを適用しているが、これに限定されるものではなく、第2実施形態に係る超音波診断装置に対して、周波数コンパウンドを適用してもよい。
【0079】
(第4実施形態)
次に、図6と図7を用いて本発明の第4実施形態について説明する。なお、以下の説明において、第1〜第3実施形態と同様の構成及び作用については、その説明を省略する。 図6は本発明の第4実施形態に係る超音波診断装置のインターフェース部34周辺のブロック図、図7は同実施形態に係る重み係数WCのグラフである。
図6に示すように、本実施形態は、第1実施形態における超音波診断装置に対して、インターフェース部(可変手段)34を付加したものである。このインターフェース部34は、医師等の操作者が指定した重み係数を入力するためのものである。なお、本実施形態における重み係数としては、深さに対してリニアに変化したものが用いられる。また、インターフェース部34としては、例えばダイヤル、スライド式スイッチ、ボタン、タッチパネル式スイッチ等が用いられる。
【0080】
第2の加算部29は、このインターフェース部34から入力された重み係数を用いて重み付けを行い、超音波画像の生成に使用される第3の処理信号SDを生成する。例えば、重み係数WA、WCに“WC=1−WA”という関係である、としておけば、図7に示すように、一方の重み係数WAだけを調整し、その傾きを(1)〜(N)に示すように切り換えることで、超音波画像における基本波成分とハーモニック成分の割合を自由に決定することができる。さらに、インターフェース部34の形態によっては、極めて微妙な重み係数の変化に対応できる。
【0081】
したがって、本実施形態における超音波診断装置によれば、医師等の操作者は、超音波画像を見ながらインターフェース部34を調整するだけで、診断に最適な画像を得ることができるから、従来よりも使用勝手が向上する。
【0082】
なお、本実施形態では、第1実施形態における超音波診断装置に対して、インターフェース部34を付加した例について説明しているが、これに限定されるものではなく、例えば第2、第3実施形態に対して、インターフェース部34を付加しても良い。特に、第3実施形態に係る超音波診断装置では、8種類の重み係数が存在するため、これらの数値を調整することにより、極めて多様な超音波画像が生成される。
【0083】
(第5実施形態)
次に、図8と図9を用いて本発明の第5実施形態について説明する。なお、以下の説明において、第1〜第4実施形態と同様の構成及び作用については、その説明を省略する。 図8は本発明の第5実施形態に係る超音波診断装置の重み係数テーブル35周辺のブロック図、図9は同実施形態に係る重み係数WC、WA(1)、WA(1)、…WA(n)のグラフである。
図8に示すように、本実施形態は、第1実施形態に係る超音波診断装置に対して、インターフェース部(可変手段)34Aと重み係数テーブル35とを付加したものである。 インターフェース部34Aは、超音波の送信周波数や医師等の操作者が指定した重み係数等の各種設定情報を入力するためのものである。重み係数テーブル35は、図9に示すように、重み係数WCと、超音波の送信周波数や表示深さに対応した重み係数WA(1)、WA(2)、…WA(n)を記憶している。
【0084】
インターフェース部34Aから設定情報、すなわち送信周波数と表示深さが入力されると、重み係数テーブル35から設定情報に応じたWA(i)が自動的に選択され、重み係数WCとWA(i)が第2の加算部29に入力される。第2の加算部29は、重み係数テーブル35から入力された重み係数WC、WA(i)に基づいて重み付けを行い、超音波画像の生成に使用される第3の処理信号SDを生成する。
【0085】
したがって、インターフェース部34Aから入力された超音波の送信周波数と表示深さに応じた超音波画像が生成されるから、操作者は感度低下を気にすることなく送信周波数を自由に変えることができる。その結果、設定条件のバリエーションが増えるから、従来よりも診断能が向上することになる。
【0086】
また、インターフェース部34Aから設定条件を入力するだけで、その設定条件に応じた超音波画像が自動的に生成されるから、診断ごとに全ての条件設定を入力しなければならない場合と比べて、操作者の作業負担が飛躍的に軽減される。
【0087】
なお、本実施形態では、第1実施形態における超音波診断装置に対して、インターフェース部34を付加した例について説明しているが、これに限定されるものではなく、例えば第2、第3実施形態に対して、インターフェース部34Aと重み係数テーブル35を付加しても良い。
【0088】
また、前記第1〜第5実施形態では、特にBモード画像に関して述べてきたが、本発明は、Bモード以外の超音波画像の生成に応用することが可能である。例えば、Mモード画像や3次元画像の生成に本発明を適用すれば、表示モードをMモードや3次元モードに切り換えた場合でも、被検体の深部における感度が十分なMモード画像や3次元画像が得られるから、診断時にモード間での対応を行うことができる。
【0089】
(第6の実施形態)
先ず、図10〜図15を用いて第1の実施形態について説明する。
図10は本発明の第6の実施形態における超音波診断装置のブロック図である。
【0090】
図10に示すように、本実施形態における超音波診断装置は、超音波プローブ10と装置本体20とから構成されている。
【0091】
超音波プローブ10は、装置本体20に着脱可能に接続されていて、その先端には、いわゆる2Dアレイ振動子が設けられている。したがって、本実施形態における超音波プローブ10では、3次元的な超音波の送受信が可能である。
【0092】
装置本体20は、送受信部(送受信手段)21、第1のメモリ22、加算部(成分抽出手段)23、検波部24、フィルタ部25、エンベロープ部26、Log圧縮部27、第2のメモリ28、合成部(信号合成手段)29、画像処理部30、ゲイン調整部(ゲイン算出手段)31、重み係数計算部(重み係数算出手段)32、フレームメモリ31、DSC32、モニタ(表示手段)35、及び入力部(指示手段)36を具備している。
【0093】
画像処理部30は、第2の加算部29からの画像信号に種々の画像処理をする。ゲイン調整部42は、画像処理部30からの画像信号に基づき、ゲインを調整する。重み係数計算部40は、ゲイン調整部42からのゲインに基づき、重み係数を算出する。
【0094】
(診断画像の生成)
本実施形態における走査シーケンスでは、走査線ごとに位相が反転した2本の超音波、即ち第1、第2の超音波が連続して送信される。第1、第2の超音波は、被検体内における音響インピーダンスの不連続面で反射して、位相が反転した2本のエコー信号、即ち第1、第2の超音波に対応した第1、第2のエコー信号EA、EBとなって送受信部21に受信される。
【0095】
なお、第1、第2のエコー信号EA、EBは、基本波成分とハーモニック成分の両方を含んでいるが、基本波成分に比べてハーモニック成分が非常に小さいため、基本波成分が反映されているとみなされる。
【0096】
先に受信された第1のエコー信号(第2の成分)EAは、第1のメモリ22に保存されるとともに、第1の加算部23を通過して検波部24に進む。そして、後から受信された第2のエコー信号EBが第1の加算部23に到着したら、第1のメモリ22に保存されている第1のエコー信号EAと、第1の加算部23に到着した第2のエコー信号EBとが加算され、第3のエコー信号(第1の成分)ECが生成される。
【0097】
ところで、前述のように、第1、第2のエコー信号EA、EBは、位相が反転している。したがって、第1、第2のエコー信号EA、EBが加算されると、第1、第2のエコー信号EA、EBに含まれる基本波成分が相殺され、ハーモニック成分だけが2倍に強調される。これにより、第3のエコー信号ECは、生体組織からのハーモニック成分が反映されることになる。
【0098】
第3のエコー信号ECが生成されたとき、第1のエコー信号EAは、既に第1の加算部23より先に進んでいる。そして、先行する第1のエコー信号EAと、第1のエコー信号EAを後行する第3のエコー信号ECは、それぞれ検波部24における検波処理、フィルタ部25におけるフィルタ処理、エンベロープ部26におけるエンベロープ処理、及びLog圧縮部27におけるLog圧縮処理が順次なされて、第1、第2の画像信号SA、SCとなる。なお、第1、第2の画像信号SA、SCは、第1、第3のエコー信号EA、ECに基づいて生成されたものであるため、それぞれ基本波成分、ハーモニック成分が反映されている。
【0099】
Log圧縮部27から出力された第1の画像信号SAは、ひとまず第2のメモリ28に保存される。そして、遅れてLog圧縮部27から出力された第2の画像信号SCが第2の加算部29に到達したら、第2のメモリ28に保存されている第1の画像信号SAに重み係数WAがかけられ、第2の加算部29に到達した第2の画像信号SCに重み係数WCがかけられ、さらに、これらが加算される。これにより、第1の画像信号SAと第2の画像信号SCから構成される第3の画像信号SDが生成される。
【0100】
第3の画像信号SDは、第1の画像信号SAと第2の画像信号SCとによって、
SD=SA×WA+SC×WC
と表現される。なお、重み係数WA、WCは、重み係数計算部40によって算出されたものであるが、その算出方法については、後に詳述することとする。
【0101】
第3の画像信号SDは、画像処理部30で種々の画像処理が施されたのち、逐次フレームメモリ31に保存される。そして、フレームメモリ31に蓄積された第3の画像信号SDは、DSC32でスキャンコンバートされて、診断画像として次々と画像表示部33に表示される。なお、画像表示部33は、表示方法の選択によって、被検体の内部構造を動画的に表示することが可能である。
【0102】
ところで、前述のように、第1の画像信号SAは基本波成分を反映していて、第2の画像信号SCはハーモニック成分を反映している。したがって、第3の画像信号SDは、基本波成分とハーモニック成分によって構成されている。
【0103】
そして、第3の画像信号SDにおける、基本波成分とハーモニック成分の寄与率は、重み係数WAとWCの大小関係により定まる。例えば、重み係数WAが大きく、重み係数WCが小さい場合、第3の画像信号SDは、基本波成分がより反映されたもの、即ち基本波成分がより多くブレンドされたものとなる。また、重み係数WAが小さく、重み係数WCが大きい場合、第3の画像信号SDは、ハーモニック成分がより反映されたもの、即ち基本波成分がより少なくブレンドされたものとなる。
【0104】
図11は同実施形態における重み係数WA、WCのグラフである。
図11に示すように、重み係数WAは、浅部で小さく、深部に行くにつれて大きくなっている。逆に、重み係数WCは、浅部で大きく、深部に行くにつれて小さくなっている。そして、中間部では、重み係数WAとWCが近い値となっている。したがって、第3の画像信号SDは、浅部でハーモニック成分がより反映され、深部で基本波成分がより反映されていることになる。
【0105】
(重み係数WA、WCの設定シーケンス)
図12は同実施形態における重み係数WA、WCの設定シーケンスが作動しているときの診断画像の生成工程に関するフローチャートである。
図12に示すように、入力部36が押されると(ステップS1)、重み係数WA、WCの設定シーケンスが開始される。重み係数WA、WCの設定シーケンスでは、先ず送受信部21によって1フレーム分の空受信が実施される(ステップS2)。なお、空受信とは、超音波の送信を実施することなく、受信だけを実施することである。したがって、送受信部21によって1フレーム分の空受信が実施されると、超音波プローブ10や装置本体20に固有の内部ノイズによって1フレーム分のノイズ信号が生成されることになる。ちなみに、超音波プローブ10や装置本体20からのノイズ信号は、画像表示部33に白く表示されるため、ホワイトノイズと呼ばれることがある。
【0106】
生成されたノイズ信号は、エコー信号と同様の処理がなされたのち、ゲイン調整部42に送られ、ノイズ信号の強度が被検体の深さ方向に一定になるようなノイズゲインGNが算出される(ステップS3)。
【0107】
次に、送受信部21によって被検体に1フレーム分の送受信が実施される(ステップS4)。ここでも、実施される送受信は、前述の走査シーケンスに従っている。したがって、送受信部21によって被検体に1フレーム分の送受信が実施されると、ハーモニック成分が反映された1フレーム分の第2の画像信号SCが生成される。
【0108】
生成された第2の画像信号SCは、ゲイン調整部42に送られ、第2の画像信号SCの強度、即ちハーモニック成分の強度が被検体の深さ方向に一定になるようなシグナルゲインGCが算出される(ステップS5)。
【0109】
算出されたノイズゲインGNとシグナルゲインGCは、重み係数計算部40に送られて、これらノイズゲインGNとシグナルゲインGCに基づき、第1の画像信号SAに関する重み係数WAと、第2の画像信号SCに関するWCとが算出される(ステップS6)。以上で、重み係数WA、WCの設定シーケンスが終了する。
【0110】
重み係数WA、WCの設定シーケンスが終了すると、算出された重み係数WA、WCは、前述のように、第2の加算部29に送られ、それぞれ第1、第2の画像信号SA、SCにかけられる。これにより、基本波成分とハーモニック成分から構成される第3の画像信号SDが生成される(ステップS7)。そして、生成された第3の画像信号SDは、次々と画像表示部33に表示される(ステップS8)。
【0111】
図13は同実施形態におけるノイズゲインGNとシグナルゲインGCのグラフである。
図13に示すように、ノイズゲインGNとシグナルゲインGCは、ある深さで交差していて、その交差ポイントPより深い領域では、ノイズゲインGNがシグナルゲインGCより低くなっている。これは、交差ポイントPより深い領域におけるノイズ信号の強度が第2の画像信号SCの強度より大きいことを示している。
【0112】
したがって、診断画像のゲインがシグナルゲインGCに設定されると、交差ポイントPより深い領域では、ハーモニック成分がホワイトノイズに邪魔されて鮮明に表示されない。逆に、交差ポイントPより浅い領域では、ハーモニック成分がホワイトノイズに邪魔されることなく鮮明に表示される。
【0113】
そこで、本実施形態では、重み係数WA、WCの設定にあたり、ノイズゲインGNとシグナルゲインGCの交差ポイントPが利用される。即ち、交差ポイントPよりも深い領域では、重み係数WAが高く設定され、交差ポイントPよりも浅い領域では、重み係数WAが低く設定される。これにより、交差ポイントPよりも深い領域では基本波成分のブレンド率が高く、交差ポイントPよりも浅い領域では基本波成分のブレンド率が低くなる。 ただし、交差ポイントPを境界にして重み係数WAが急激に高まると、生成される診断画像に不連続部が形成される。そのため、実際には、交差ポイントPより浅い領域から深い領域にわたり徐々に変化するように、基本波成分のブレンド率が設定されている。
【0114】
なお、本実施形態における基本波成分のブレンド率は、交差ポイントPの60%までの深さ領域で0%、交差ポイントPの60%から240%までの深さ領域でリニアに増加して、交差ポイントPの240%より深い領域で100%となる。このようなブレンド率であれば、浅部から深部にかけて画像品質の高い診断画像が生成されることが確認されている。しかしながら、これらのブレンド率の数値は一例に過ぎず、他の数値であっても良い。
【0115】
(ファントムによる実験結果)
図14(a)、図14(b)は同実施形態における0.7[dB/MHz・cm]の減衰率を有するファントムの診断画像である。すなわち、図14(a)は重み係数WA、WCの設定シーケンスが作動していない場合、図14(b)は重み係数WA、WCの設定シーケンスが作動している場合を示している。なお、ファントムの深部には、球形のターゲットTが埋め込まれている。
【0116】
図14(a)に示すように、重み係数WA、WCの設定シーケンスが作動していない場合、ターゲットTが描出されていない。これは、診断画像の深部における感度が低いことを示している。
【0117】
しかしながら、図14(b)に示すように、重み係数WA、WCの設定シーケンスが作動している場合には、診断画像の深部にターゲットTが描出されている。これは、重み係数WA、WCの設定シーケンスが作動したことによって、診断画像の深部における感度が高くなったことを示している。
【0118】
図15(a)、図15(b)は同実施形態における0.3[dB/MHz・cm]の減衰率を有するファントムの診断画像である。すなわち、図15(a)は重み係数WA、WCの設定シーケンスが作動していない場合、図15(b)は重み係数WA、WCの設定シーケンスが作動している場合を示している。なお、ファントムの深部には、球形のターゲットTが埋め込まれている。
【0119】
図15(a)に示すように、重み係数WA、WCの設定シーケンスが作動していない場合、診断画像の深部にはターゲットTが描出されている。これは、診断画像の深部における感度が十分に高いことを示している。
【0120】
そして、図15(b)に示すように、重み係数WA、WCの設定シーケンスが作動している場合にも、診断画像の深部にはターゲットTが描出されている。これは、重み係数WA、WCの設定シーケンスが作動しても、診断画像の深部において元から十分な感度がある場合には、感度が高いまま維持されることを示している。
【0121】
以上の実験によって、本実施形態における超音波診断装置では、被検体や部位ごとに減衰率の違いがあっても、それぞれの減衰率に最適な重み係数WA、WCが設定されることが実証された。
【0122】
(本実施形態による作用)
本実施形態において、第3の画像信号SDは、基本波成分が反映された第1の画像信号SAに重み係数WAをかけ、ハーモニック成分が反映された第2の画像信号SCに重み係数WCをかけ、これらを加算することにより生成されている。そして、第1の画像信号SAの重み係数WAは、被検体の浅部で大きく、かつ深部で小さくなるように設定され、第2の画像信号SCの重み係数WCは、被検体の浅部で小さく、かつ深部で大きくなるように設定されている。
【0123】
これにより、第3の画像信号SDに基づいて生成される診断画像は、被検体の浅部でハーモニック成分がより反映され、深部で基本波成分がより反映されたものとなる。そのため、被検体の深部でも超音波画像の感度が不足することがなく、画像全体に亘って診断に十分な感度が得られることになる。
【0124】
しかも、重み係数WA、WCは、ホワイトノイズが反映されたノイズ信号から生成されたノイズゲインGNと、ハーモニック成分が反映された第2の画像信号SCから生成されたシグナルゲインGCとに基づいて自動で算出されている。
【0125】
そのため、被検体ごとに周波数依存減衰の減衰率に違いがあっても、あるいは被検体の部位ごとに周波数依存減衰の減衰率に違いがあっても、被検体や部位に最適な重み係数WA、WCが確実に設定されるから、被検体や部位の違いに影響を受けることなく、高い画像品質の診断画像が得られる。
【0126】
また、被検体の浅部は、ハーモニック成分に基づいて画像化されているから、基本波成分だけを利用して画像化される場合に比べて、アーチファクトの発生が飛躍的に抑制される。
【0127】
前述のように、本実施形態における超音波診断装置によれば、アーチファクトが少なく、深部においても十分な感度が得られ、被検体や部位の違いによらず、常に高い画像品質の診断画像が得られる。
【0128】
さらに、本実施形態において、装置本体20は、重み係数WA、WCの設定シーケンスを開始させる入力部36を具備している。そのため、極めて簡単に診断画像の画像品質を切り替えられるから、操作者の作業負担が低減する。
【0129】
なお、本実施形態において、基本波成分が反映された第1のエコー信号EAとハーモニック成分が反映された第3のエコー信号ECとを取得するために、第1の加算部23による加算処理が利用されている。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではない。即ち、送受信部21によって受信されたエコー信号から基本波成分が反映された第1のエコー信号EAとハーモニック成分が反映された第3のエコー信号ECが取得されるのであれば、その手法は全く限定されるものではなく、例えば、第1の加算部23の代わりに、送受信部21によって受信されたエコー信号から基本波成分だけを通過させる第1のフィルタとハーモニック成分だけを通過させる第2のフィルタとが利用されても良い。
【0130】
(第7の実施形態)
次に、図16を用いて第2の実施形態について説明する。
図16は本発明の第2の実施形態における重み係数WA、WCの設定シーケンスが作動しているときの診断画像の生成工程に関するフローチャートである。
図16に示すように、本実施形態における診断画像の生成工程は、第1の実施形態における表示シーケンスのステップS7とステップS8の中間に、二点鎖線で示すように、ステップS9〜ステップ13が追加されている。
【0131】
即ち、第3の画像信号SDが生成されたら(ステップS7)、送受信部21によって1フレーム分の空受信が実施され(ステップS9)、ホワイトノイズが反映された1フレーム分のノイズ信号が生成される。そして、生成されたノイズ信号は、ゲイン調整部42に送られ、ノイズゲインGNが算出される(ステップS10)。
【0132】
次に、送受信部21によって被検体に1フレーム分の送受信が実施され(ステップS11)、1フレーム分の第3の画像信号SDが生成される。そして、生成された第3の画像信号SDは、ゲイン調整部42に送られ、シグナルゲイン(第3のゲイン)GDが算出される(ステップS12)。
【0133】
なお、第1の実施形態では、ハーモニック成分が反映された第2の画像信号SCに基づいて、シグナルゲインGC算出されていたのに対し、本実施形態では、ハーモニック成分と基本波成分から構成された第3の画像信号SDに基づいて、シグナルゲインGDが算出されていることに注意されたい。
【0134】
ノイズゲインGNとシグナルゲインGDが算出されたら、これらノイズゲインGNとシグナルゲインGDに基づき、診断画像の表示に最適な表示ゲインGが設定される(ステップS13)。
【0135】
即ち、本実施形態における診断画像の生成工程では、第3の画像信号SDが画像表示部33に表示されるまえに、ゲイン調整部42によって診断画像の表示に最適な表示ゲインGが設定される。換言すれば、本実施形態では、ハーモニック成分に基本波成分がブレンドされたあとで、表示ゲインGが最適化される。そのため、画像表示部33に表示される診断画像は、ホワイトノイズが描出されない、非常に鮮明なものとなる。
【0136】
(第8の実施形態)
次に、図17を用いて第8の実施形態について説明する。
図17は本発明の第8の実施形態におけるテーブルの概念図である。
本実施形態において、装置本体20に搭載されたメモリ(図示しない)は、図17に示すようなテーブルを保存している。テーブルは、交差ポイントPの深さと、それぞれの深さに最適な送信周波数、受信周波数、表示深さ、ダイナミックレンジとを対応づけるものである。
【0137】
超音波診断の最中に交差ポイントPが検出されると、メモリに記憶されているテーブルが参照され、交差ポイントPの深さに最適な送信周波数、受信周波数、表示深さ、ダイナミックレンジが選択される。そのため、被検体や部位に最適な条件下で超音波診断が実施されるから、画像表示部33に表示される診断画像の画像品質は、非常に高いものとなる。
【0138】
なお、本実施形態において、交差ポイントPに対応づけられる条件は、送信周波数、受信周波数、表示深さ、ダイナミックレンジである。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、受信フィルタ特性、送信音圧、ポストプロセスカーブ、送信音圧、表示幅、表示周波数、送信ビーム数、受信ビーム数、同時受信ビーム数、画像処理係数、送信波形、送信波数などを含んでいても良い。
【0139】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0140】
以上本発明によれば、アーチファクトが少なく、しかも深部においても感度が不足することがない超音波画像を生成できる超音波診断装置、超音波診断装置制御プログラム、超音波信号処理プログラムを実現することができる。
【符号の説明】
【0141】
21…送受信部、23…第1の加算部、23A…加減算部、29…第2の加算部、30…画像処理部、33…表示モニタ、34…インターフェース部、34A…インターフェース部、36…信号変換部、EA…第1のエコー信号、EB…第2のエコー信号、EC…第3のエコー信号、SA…第1の処理信号、SC…第2の処理信号、SD…第3の処理信号、WA…重み係数、WC…重み係数、WC´…重み係数、WA(1)…、WA(2)…重み係数、WA(i)…重み係数、WA(n)…重み係数。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の走査線それぞれに対して、位相が反転した2種類の超音波を送信し、前記走査線ごとに前記二種類の超音波に対応した第1、第2のエコー信号を受信する送受信ユニットと、
前記送受信ユニットにより受信された第1、第2のエコー信号を加算して非線形信号を取得する非線形信号取得ユニットと、
前記送受信ユニットにより受信された第1のエコー信号又は第2のエコー信号を含む基本波信号を取得する基本波信号取得ユニットと、
前記非線形信号と前記基本波信号とから合成信号を生成する合成信号生成ユニットと、 前記合成信号に基づく画像を表示する画像表示ユニットと、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記合成信号生成ユニットは、前記非線形信号と前記基本波信号に対し、それぞれ被検体の深さに応じて定められた重み係数を積算した後、これらを加算することで前記合成信号を生成することを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記非線形成分を深さ方向に一定にさせる第1のゲインと、ノイズ成分を深さ方向に一定にさせる第2のゲインとを算出するゲイン算出ユニットと、
前記第1のゲインと、前記第2のゲインの深さ方向に従った大小関係に基づき、前記それぞれの重み係数を算出する重み係数算出ユニットと、
をさらに具備することを特徴とする請求項2記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記第1のゲイン係数と前記第2のゲイン係数とが等しくなる深さよりも深いところでは、浅いところよりも、前記基本波信号の重み係数に対する前記非線形成分の重み係数が相対的に小さいことを特徴とする請求項3記載の超音波診断装置。
【請求項5】
複数の走査線それぞれに対して、第1の周波数成分と当該第1の周波数成分より高い第2の周波数成分とを含む超音波の送受信を行う送受信ユニットと、
前記超音波の送受信に基づいて、前記第1、第2の周波数成分の差音成分を含む非線形信号を取得する非線形成分取得ユニットと、
前記超音波の送受信に基づいて、前記第1、第2の周波数成分を含む基本波成分を含む基本波信号を取得する基本波信号取得ユニットと、
前記非線形信号と前記基本波信号とから合成信号を生成する合成信号生成ユニットと、 前記合成信号に基づく画像を表示する表示ユニットと、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
前記合成信号生成ユニットは、前記非線形信号と前記基本波信号に対し、それぞれ被検体の深さに応じて定められた重み係数を積算した後、これらを加算することで前記合成信号を生成することを特徴とする請求項5記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記非線形成分を深さ方向に一定にさせる第1のゲインと、ノイズ成分を深さ方向に一定にさせる第2のゲインとを算出するゲイン算出ユニットと、
前記第1のゲインと、前記第2のゲインの深さ方向に従った大小関係に基づき、前記それぞれの重み係数を算出する重み係数算出ユニットと、
をさらに具備することを特徴とする請求項6記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記第1のゲイン係数と前記第2のゲイン係数とが等しくなる深さよりも深いところでは、浅いところよりも、前記基本波信号の重み係数に対する前記非線形成分の重み係数が相対的に小さいことを特徴とする請求項7記載の超音波診断装置。
【請求項9】
複数の走査線それぞれに対して、位相が反転した2種類の超音波を送信し、前記走査線ごとに前記二種類の超音波に対応した第1、第2のエコー信号を受信する送受信ユニットと、
前記送受信ユニットにより受信された第1、第2のエコー信号を加算して非線形信号を取得する非線形信号取得ユニットと、
前記送受信ユニットにより受信された第1、第2のエコー信号を減算して基本波信号を取得する基本波信号取得ユニットと、
前記非線形信号と前記基本波信号とから合成信号を生成する合成信号生成ユニットと、 前記合成信号に基づく画像を表示する画像表示ユニットと、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項10】
前記合成信号生成ユニットは、前記非線形信号と前記基本波信号に対し、それぞれ被検体の深さに応じて定められた重み係数を積算した後、これらを加算することで前記合成信号を生成することを特徴とする請求項9記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記非線形成分を深さ方向に一定にさせる第1のゲインと、ノイズ成分を深さ方向に一定にさせる第2のゲインとを算出するゲイン算出ユニットと、
前記第1のゲインと、前記第2のゲインの深さ方向に従った大小関係に基づき、前記それぞれの重み係数を算出する重み係数算出ユニットと、
をさらに具備することを特徴とする請求項10記載の超音波診断装置。
【請求項12】
前記第1のゲイン係数と前記第2のゲイン係数とが等しくなる深さよりも深いところでは、浅いところよりも、前記基本波信号の重み係数に対する前記非線形成分の重み係数が相対的に小さいことを特徴とする請求項11記載の超音波診断装置。
【請求項13】
複数の走査線それぞれに対して、それぞれが第1の周波数成分と当該第1の周波数成分より高い第2の周波数成分とを含み位相が反転する2種類の超音波を送信し、前記走査線ごとに前記二種類の超音波に対応した第1、第2のエコー信号を受信する送受信ユニットと、
前記超音波の送受信に基づいて、前記第1、第2の周波数成分の差音成分を含む非線形信号を取得する非線形成分取得ユニットと、
前記送受信ユニットにより受信された第1、第2のエコー信号を減算して基本波信号を取得する基本波信号取得ユニットと、
前記非線形信号と前記基本波信号とから合成信号を生成する合成信号生成ユニットと、 前記合成信号に基づく画像を表示する表示ユニットと、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項14】
前記合成信号生成ユニットは、前記非線形信号と前記基本波信号に対し、それぞれ被検体の深さに応じて定められた重み係数を積算した後、これらを加算することで前記合成信号を生成することを特徴とする請求項13記載の超音波診断装置。
【請求項15】
前記非線形成分を深さ方向に一定にさせる第1のゲインと、ノイズ成分を深さ方向に一定にさせる第2のゲインとを算出するゲイン算出ユニットと、
前記第1のゲインと、前記第2のゲインの深さ方向に従った大小関係に基づき、前記それぞれの重み係数を算出する重み係数算出ユニットと、
をさらに具備することを特徴とする請求項14記載の超音波診断装置。
【請求項16】
前記第1のゲイン係数と前記第2のゲイン係数とが等しくなる深さよりも深いところでは、浅いところよりも、前記基本波信号の重み係数に対する前記非線形成分の重み係数が相対的に小さいことを特徴とする請求項15記載の超音波診断装置。
【請求項17】
超音波診断装置を制御するためのプログラムであって、
前記超音波診断装置に、
複数の走査線それぞれに対して、位相が反転した2種類の超音波を送信させる送信機能と、
前記走査線ごとに前記二種類の超音波に対応した反射波を受信して得られる第1、第2のエコー信号を加算することで、非線形信号を取得させる非線形信号取得機能と、
前記第1のエコー信号又は前記第2のエコー信号を含む基本波信号を取得させる基本波取得機能と、
前記非線形信号と前記基本波信号とから合成信号を生成させる生成機能と、
前記合成信号に基づく画像を表示させる表示機能と、
を実現させることを特徴とする超音波診断装置制御プログラム。
【請求項18】
超音波信号を処理するためのプログラムであって、
コンピュータに、
複数の走査線それぞれに対して、第1の周波数成分と当該第1の周波数成分より高い第2の周波数成分とを含む超音波の送受信によって得られるエコー信号から、前記第1、第2の周波数成分の差音成分を含む非線形信号を取得させる非線形信号取得機能と、
前記第1、第2の周波数成分を含む基本波成分を含む基本波信号を取得させる基本波信号取得機能と、
前記非線形信号と前記基本波信号とから合成信号を生成させる生成機能と、
前記合成信号に基づく画像を表示させる表示機能と、
を実現させることを特徴とする超音波信号処理プログラム。
【請求項19】
超音波診断装置を制御するためのプログラムであって、
前記超音波診断装置に、
複数の走査線それぞれに対して、位相が反転した2種類の超音波を送信させる送信機能と、
前記走査線ごとに前記二種類の超音波に対応した反射波を受信して得られる第1、第2のエコー信号を加算することで、非線形信号を取得させる非線形信号取得機能と、
前記第1、第2のエコー信号を減算して基本波信号を取得させる基本波信号取得機能と、
前記非線形信号と前記基本波信号とから合成信号を生成させる生成機能と、
前記合成信号に基づく画像を表示させる表示機能と、
を実現させることを特徴とする超音波診断装置制御プログラム。
【請求項20】
超音波診断装置を制御するためのプログラムであって、
前記超音波診断装置に、
複数の走査線それぞれに対して、それぞれが第1の周波数成分と当該第1の周波数成分より高い第2の周波数成分とを含み位相が反転する2種類の超音波を送信させる送信機能と、
前記走査線ごとに前記二種類の超音波に対応した反射波を受信して得られる第1、第2のエコー信号から、前記第1、第2の周波数成分の差音成分を含む非線形信号を取得させる非線形信号取得機能と、
前記第1、第2のエコー信号を減算して基本波信号を取得させる基本波取得機能と、 前記非線形信号と前記基本波信号とから合成信号を生成させる生成機能と、
前記合成信号に基づく画像を表示させる表示機能と、
を実現させることを特徴とする超音波診断装置制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−96095(P2012−96095A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−34377(P2012−34377)
【出願日】平成24年2月20日(2012.2.20)
【分割の表示】特願2006−286981(P2006−286981)の分割
【原出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】