説明

超音波診断装置及びその制御プログラム

【課題】被検体の弾性を正確に反映した弾性画像を作成することができる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】被検体の各部における弾性に関する物理量を算出する物理量データ処理部6と、物理量データ処理部6によって算出された前記物理量に基づいて、被検体の弾性画像を作成する弾性画像データ作成部と、を備え、弾性画像データ作成部は、カラードプラデータ処理部5で作成されたカラードプラデータが存在する部分である被検体における液体部分を除いて算出された前記物理量の統計的特徴を用いて前記物理量に基づく弾性画像の作成を行なうことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体における生体組織の硬さ又は軟らかさを表す弾性画像を作成する超音波診断装置及びその制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常のBモード画像と、被検体における生体組織の硬さ又は軟らかさを表す弾性画像とを合成して表示させる超音波診断装置が、例えば特許文献1などに開示されている。この種の超音波診断装置において、弾性画像は以下のようにして作成される。先ず、被検体に超音波を送信して得られたエコー信号に基づいて被検体の弾性に関する物理量を算出する。そして、この物理量に基づいて、弾性に応じた色からなる弾性画像を作成する。この弾性画像の作成にあっては、例えば、被検体における各部の弾性に関する物理量の統計的特徴として平均値を算出し、得られた平均値を基準にして色情報を割り当てている。ちなみに、被検体の弾性に関する物理量としては、例えば生体組織の歪みなどを算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−282932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来においては、前記物理量の平均値の算出にあっては、弾性画像を表示させる領域において算出された全てのデータを用いて平均値の算出を行なっている。しかし、被検体において、血管や嚢胞(Cyst:シスト)などの液体部分においては、エコー信号の強度が小さいため、算出される物理量が実際の物理量よりも小さくなる。従って、このような被検体の液体部分について算出された物理量も含めて前記物理量の平均値の算出を行ない、この平均値を基準にして弾性画像を作成すると、実際の被検体の弾性を正確に反映した弾性画像を得ることができないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決するためになされた第1の観点の発明は、被検体の各部における弾性に関する物理量を算出する物理量算出部と、この物理量算出部によって算出された前記物理量に基づいて、被検体の弾性画像を作成する弾性画像作成部と、を備え、この弾性画像作成部は、被検体における液体部分を除いて算出された前記物理量の統計的特徴を用いて前記物理量に基づく弾性画像の作成を行なうことを特徴とする超音波診断装置である。
【0006】
第2の観点の発明によれば、被検体の各部における弾性に関する物理量を算出する物理量算出部と、この物理量算出部によって算出された前記物理量に基づいて、被検体の弾性画像を作成する弾性画像作成部と、を備え、前記物理量算出部は、被検体における液体部分以外の部分について前記物理量の算出を行なうことを特徴とする超音波診断装置である。
【0007】
第3の観点の発明は、第1又は2の観点の発明において、被検体に送信された超音波に対するエコー信号に基づいて前記液体部分を検出する検出部を備えることを特徴とする超音波診断装置である。
【0008】
第4の観点の発明は、第3の観点の発明において、前記検出部は、エコー信号に基づいて流体情報を取得する流体情報取得部であることを特徴とする超音波診断装置である。
【0009】
第5の観点の発明は、第4の観点の発明において、前記流体情報は、エコー信号に基づいて取得されるカラードプラデータ、Bフローデータ又はエコー信号に含まれる高調波のデータのいずれかであることを特徴とする超音波診断装置である。
【0010】
第6の観点の発明は、第3〜5のいずれか一の観点の発明において、前記弾性画像を作成するためのエコー信号を得る超音波の送受信と、前記液体部分を検出するためのエコー信号を得る超音波の送受信とを共通化して行なう送受信部を備えることを特徴とする超音波診断装置である。
【0011】
第7の観点の発明は、第1〜6のいずれか一の観点の発明において、表示された超音波画像において、前記液体部分を指示する入力部を備えることを特徴とする超音波診断装置である。
【0012】
第8の観点の発明は、第1〜7のいずれか一の観点の発明において、前記弾性画像作成部は、前記物理量を階調化して弾性画像を作成するものであり、階調化する物理量の範囲が前記統計的特徴を用いて設定されることを特徴とする超音波診断装置である。
【0013】
第9の観点の発明は、コンピュータに、被検体の各部における弾性に関する物理量を算出する物理量算出機能と、この物理量算出機能によって算出された前記物理量に基づいて、被検体の弾性画像を作成する弾性画像作成機能と、を実行させ、この弾性画像作成機能にあっては、被検体における液体部分を除いて算出された前記物理量の統計的特徴を用いて前記物理量に基づく弾性画像の作成を行なうことを特徴とする超音波診断装置の制御プログラムである。
【0014】
第10の観点の発明は、コンピュータに、被検体の各部における弾性に関する物理量を算出する物理量算出機能と、この物理量算出機能によって算出された前記物理量に基づいて、被検体の弾性画像を作成する弾性画像作成機能と、を実行させ、前記物理量算出機能にあっては、被検体における液体部分以外の部分について前記物理量の算出を行なうことを特徴とする超音波診断装置の制御プログラムである。
【発明の効果】
【0015】
上記観点の発明によれば、被検体における液体部分を除いて算出された前記物理量の統計的特徴を用いて前記物理量に基づく弾性画像の作成を行なうことにより、被検体の弾性を正確に反映した弾性画像を作成することができる。
【0016】
上記他の観点の発明によれば、被検体における液体部分以外の部分について前記物理量の算出を行ない、この物理量に基づく弾性画像の作成を行なうことにより、被検体の弾性を正確に反映した弾性画像を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る超音波診断装置の実施形態の概略構成の一例を示すブロック図である。
【図2】物理量の算出を説明するための図である。
【図3】図1に示す超音波診断装置における表示制御部の構成を示すブロック図である。
【図4】超音波の送受信を説明するための図である。
【図5】Bモードデータ、カラードプラデータ及び物理量データの作成を説明するための図である。
【図6】弾性画像データの作成を説明するための図である。
【図7】表示部に表示された超音波画像の一例を示す図である。
【図8】カラードプラデータが存在しない部分の歪みの算出を説明するための図である。
【図9】表示部に表示された超音波画像の他例を示す図である。
【図10】表示部に表示された超音波画像の他例を示す図である。
【図11】表示部に表示された超音波画像の他例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態について、図1〜図7に基づいて説明する。図1に示す超音波診断装置1は、超音波プローブ2、送受信部3、Bモードデータ処理部4、カラードプラデータ処理部5、物理量データ処理部6、表示制御部7、表示部8、操作部9、及び制御部10を備える。
【0019】
前記超音波プローブ2は、被検体に対して超音波を送信しそのエコーを受信する。この超音波プローブ2における超音波の送受信面を体表面に当接させた状態で、例えば圧迫と弛緩を繰り返したり、前記超音波プローブ2から音響放射圧を加えたりして、被検体の生体組織を変形させながら超音波の送受信を行なってエコー信号が取得される。
【0020】
前記送受信部3は、前記超音波プローブ2を所定の走査条件で駆動させて音線毎の超音波の走査を行なう。また、前記送受信部3は、前記超音波プローブ2で受信したエコーについて、整相加算処理等の信号処理を行なう。前記送受信部3で信号処理されたエコー信号は、前記Bモードデータ処理部4、カラードプラデータ処理部5及び前記物理量データ処理部6に出力される。前記送受信部3は、本発明における送受信部の実施の形態の一例である。
【0021】
前記Bモードデータ処理部4は、前記送受信部3から出力されたエコー信号に対し、対数圧縮処理、包絡線検波処理等のBモード処理を行い、Bモードデータを作成する。
【0022】
前記カラードプラデータ処理部5は、前記送受信部3から出力されたエコー信号に対し、直交検波処理、MTIフィルタ(Moving Target Indication Filter)処理、自己相関演算処理を行なった後、エコー源(血流)の速度及び分散の演算処理を行ない、カラードプラデータを作成する。従って、このカラードプラデータは、流速及び分散のデータである。ただし、前記カラードプラデータ処理部5は、エコー源のパワーの演算処理を行ない、パワーを含むカラードプラデータを作成してもよい。前記カラードプラデータは、本発明における流体情報の実施の形態の一例であり、前記カラードプラデータ処理部5は、本発明における流体情報を取得する流体情報取得部及び液体部分を検出する検出部の実施の形態の一例である。
【0023】
前記物理量データ処理部6は、前記送受信部3から出力されたエコーデータに基づいて、被検体における各部の弾性に関する物理量を算出して物理量データを作成する(物理量算出機能)。前記物理量データ処理部5は、例えば特開2008−126079号公報に記載されているように、一の走査面における同一音線上の時間的に異なるエコーデータに相関ウィンドウを設定し、この相関ウィンドウ間で相関演算を行なって前記弾性に関する物理量を画素毎に算出し、一フレーム分の物理量データを作成する。前記物理量データ処理部5は、前記弾性に関する物理量として、本例では歪みStを算出する。前記物理量データ処理部5は、本発明における物理量算出部の実施の形態の一例であり、また前記物理量算出機能は本発明における物理量算出機能の実施の形態の一例である。
【0024】
具体的には、前記物理量データ処理部6は、図2に示すようにフレーム(i)に属するエコー信号に相関ウィンドウW1を設定し、フレーム(ii)に属するエコー信号に相関ウィンドウW2を設定する。そして、前記物理量データ処理部6は、前記相関ウィンドウW1,W2間で複素相関関数の虚数部の演算を行なって歪みStを算出する。
【0025】
ここで、図2において、前記フレーム(i),(ii)は、複数本の音線上において取得されたエコー信号からなる。図2では、前記フレーム(i)における複数本の音線の一部として、五本の音線L1a,L1b,L1c,L1d,L1eが示され、また前記フレーム(ii)において前記音線L1a〜L1eに対応する音線として、音線L2a,L2b,L2c,L2d,L2eが示されている。すなわち、前記音線L1a及び前記音線L2a、前記音線L1b及び前記音線L2b、前記音線L1c及び前記音線L2c、前記音線L1d及び前記音線L2d、前記音線L1e及び前記音線L2eは、異なる二つのフレームに属する同一音線に該当する。また、図2においてR(i),R(ii)は、後述するように弾性画像が表示される関心領域Rに対応する領域を示している。
【0026】
例えば、前記音線L1c上のエコー信号に、前記相関ウィンドウW1として相関ウィンドウW1cが設定され、前記音線L2c上のエコー信号に、前記相関ウィンドウW2として相関ウィンドウW2cが設定されたとする。前記物理量データ処理部6は、前記相関ウィンドウW1c,W2c間で相関演算を行ない、歪みStを算出する。前記物理量データ処理部6は、前記音線L1c,L2c上において、前記領域R(i),R(ii)の上端100から下端101まで相関ウィンドウW1c,W2cを順次設定し、歪みStを算出する。また、前記物理量データ処理部6は、前記領域R(i),R(ii)内の他の音線についても同様にして歪みStを算出する。これにより、歪みStのデータからなる一フレーム分の物理量データが得られる。
【0027】
前記表示制御部7には、前記Bモードデータ処理部4からのBモードデータ、前記カラードプラデータ処理部5からのカラードプラデータ及び前記物理量データ処理部6からの物理量データが入力されるようになっている。前記表示制御部7は、図3に示すように、Bモード画像データ作成部71、カラードプラ画像データ作成部72、弾性画像データ作成部73及び合成部74を有している。
【0028】
前記Bモード画像データ作成部71は、前記Bモードデータについてスキャンコンバータ(scan converter)による走査変換を行ない、エコーの信号強度に応じた輝度情報を有するBモード画像データに変換する。前記Bモード画像データは例えば256階調の輝度情報を有する。
【0029】
前記カラードプラ画像データ作成部72は、前記カラードプラデータについてスキャンコンバータによる走査変換を行なってカラードプラ画像データを作成する。カラードプラ画像は、例えば血流の流速と分散とを組み合わせた流速分布画像(CFM(Color Flow Mapping)画像)、パワーを用いたパワードプラ画像などである。
【0030】
前記弾性画像データ作成部73は、スキャンコンバータによる走査変換を行ない、前記物理量データを歪みStに応じた色情報を有するカラー弾性画像データに変換する(弾性画像データ作成機能)。前記カラー弾性画像データは例えば256階調の色情報を有する。前記弾性画像データ作成部73は、物理量データを階調化し、各階調に割り当てられた色情報からなるカラー弾性画像データを作成する。詳細は後述する。前記弾性画像データ作成部62は、本発明における弾性画像作成部の実施の形態の一例であり、前記弾性画像データ作成機能は、本発明における弾性画像作成機能の実施の形態の一例である。
【0031】
前記合成部74は、前記Bモード画像データ、前記カラードプラ画像データ及び前記カラー弾性画像データを合成し、前記表示部8に表示する超音波画像の画像データを作成する。この画像データは、Bモード画像とカラードプラ画像と弾性画像とが合成された超音波画像として前記表示部8に表示される。ちなみに、本例では、後述するように前記カラードプラ画像を作成するカラードプラ画像作成領域及び前記弾性画像を作成する弾性画像作成領域は、関心領域Rであり(図7参照)、前記カラードプラ画像及び弾性画像は、前記関心領域R内に表示される。詳細は後述する。
【0032】
前記表示部8は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)などで構成される。前記操作部9は、操作者が指示や情報を入力するためのキーボード及びポインティングデバイス(図示省略)などを含んで構成されている。
【0033】
前記制御部10は、CPU(Central Processing Unit)で構成され、図示しない記憶部に記憶された制御プログラムを読み出し、前記物理量算出機能や前記弾性画像データ作成機能をはじめとする前記超音波診断装置1の各部における機能を実行させる。
【0034】
さて、本例の超音波診断装置1の作用について説明する。先ず、前記送受信部3は、生体組織を変形させながら前記超音波プローブ2から被検体へ超音波を送信させ、そのエコー信号を取得する。
【0035】
前記送受信部3は、一音線に複数回の送受信を行なわせる。例えば、図4に示すように、音線l上に、第一送受信s1、第二送受信s2、第三送受信s3及び第四送受信s4の4回の送受信を行なわせる。ただし、4回に限られるものではない。
【0036】
前記Bモードデータ処理部4は、図5に示すように、前記第一送受信s1で得られたエコーデータe1に基づいてBモードデータを作成する。また、前記カラードプラデータ処理部5は、前記第一送受信s1〜第四送受信s4で得られたエコーデータe1〜e4に基づいてカラードプラデータを作成する。さらに、前記物理量データ処理部6は、前記第一送受信s1で得られたエコーデータe1及び前記第四送受信s4で得られたエコーデータe4に基づいて物理量データを作成する。このように、Bモードデータ、カラードプラデータ及び物理量データを作成するためのエコーデータを得る超音波の送受信を別々に行なわず共通化して行なうことにより、フレームレートを維持することができる。
【0037】
ここで、前記物理量データは、同一音線上に二回の送受信を行なって得られたエコーデータを用いて作成されるが、送受信の時間間隔が短すぎると、被検体の弾性を正確に反映した物理量データを得ることができない。そこで、上述のようにエコーデータを共通化する場合であっても、第一送受信s1で得られたエコーデータe1及び前記第四送受信s4で得られたエコーデータe4を用いて物理量データを作成することにより、適切な時間間隔を確保することができる。ただし、物理量データを、エコーデータe1,e4を用いて作成する場合に限られるものではない。
【0038】
前記Bモードデータ、前記カラードプラデータ及び前記物理量データが得られると、前記Bモード画像データ作成部71がBモード画像データを作成し、前記カラードプラ画像データ作成部72及び前記弾性画像データ作成部73が、関心領域R(図7参照)内におけるカラードプラ画像データ及び弾性画像データを作成する。
【0039】
前記弾性画像データの作成について詳細に説明する。前記弾性画像データは、前記物理量データを階調化して得られるデータであり、前記弾性画像データ作成部73は、階調化する歪みの範囲を、算出された歪みStの統計的特徴を用いて設定し、弾性画像データを作成する。具体的には、前記弾性画像データ作成部73は、前記統計的特徴として、図6に示すように、前記物理量データに基づいて、先ず関心領域R内の歪みの分布Dにおける平均値StAVを算出する。次に、前記弾性画像データ作成部73は、前記平均値StAVを基準にして前記歪みの分布Dにおいて所定の範囲Xを設定し、この所定の範囲Xを例えば256階調に階調化する。各階調には互いに異なる色情報が割り当てられており、前記弾性画像データ作成部73は、この色情報に基づいて、前記物理量データにおける歪みStに対応する色情報からなる弾性画像データを作成する。
【0040】
ここで、平均値StAVの算出に用いる歪みの分布Dは、エコー源の流速、分散、パワーなどのデータからなるカラードプラデータが存在する部分において算出された歪みStを除外した分布とする。カラードプラデータが存在する部分は、血流などの流体が存在する流体部分(本発明における液体部分)であるため、前記平均値StAVは、流体部分において算出された歪みStが除外された母集団の平均値となる。このような平均値StAVを基準にして、弾性画像における色情報が決定されるので、被検体の弾性をより正確に反映した弾性画像が作成されることになる。
【0041】
ただし、ノイズの影響を排除するため、カラードプラデータにおいて所定の流速以上の流速となっている部分、あるいは所定のパワー以上のパワーとなっている部分において算出された歪みStを除外した分布を前記分布Dとしてもよい。
【0042】
ちなみに、前記弾性画像データ作成部73は、前記歪みStの統計的特徴の一例として歪みの平均値StAVを用いて、階調化する歪みの範囲を設定しているが、前記統計的特徴は平均値に限られるものではない。例えば、前記弾性画像データ作成部73は、前記統計的特徴として歪みの分布Dにおける最小値と最大値を用いてもよい。すなわち、前記弾性画像データ作成部73は、前記歪みの分布Dにおける最小値と最大値の範囲を、階調化する範囲として設定してもよい。
【0043】
前記Bモード画像データ、前記カラードプラ画像データ及び弾性画像データが作成されると、前記合成部74がこれらを合成した画像データを作成し、この画像データに基づく超音波画像Gを図7に示すように前記表示部8に表示させる。この超音波画像Gは、Bモード画像BG上に設定された関心領域R内に、カラードプラ画像DG及び弾性画像EGが表示された画像である。前記カラードプラ画像DGは、前記Bモード画像BG及び弾性画像EGの上に重畳され、前記Bモード画像BG及び弾性画像EGよりも優先して表示される。また、前記弾性画像EGは、前記Bモード画像BGと加算されて背景のBモード画像BGが透けた半透明の状態で表示される。
【0044】
以上説明した超音波診断装置1によれば、カラードプラデータが存在する部分を除いて算出された前記平均値StAVなどの統計的特徴を用いて階調化を行なう歪みの範囲を設定して弾性画像を作成しているので、被検体の弾性を正確に反映した弾性画像を作成することができる。
【0045】
また、前記カラードプラ画像DGが表示された部分は、前記分布Dから除かれた部分であり、前記カラードプラ画像DGが表示されることにより、操作者は前記分布Dから除かれた部分を把握することができる。
【0046】
さらに、前記平均値StAVの算出の際にはカラードプラデータが存在する部分が除かれるので、平均値算出における計算量を低減することができる。
【0047】
次に、第一実施形態の変形例について説明する。先ず、第一変形例について説明する。上述の説明において、前記歪みの分布Dは、カラードプラデータが存在する部分において算出された歪みStを除外した分布になっているが、これに限られるものではない。例えば、操作者が前記操作部9のポインティングデバイスなどを用いて、前記表示部8に表示された超音波画像において、歪みの分布Dに含めない部分として被検体の液体部分を指示するようにしてもよい。この場合、前記弾性画像データ作成部73は、前記操作部9によって指示された部分において算出された歪みStを除外した分布Dの平均値StAVを算出して弾性画像データの作成を行なう。前記操作部9は、本発明における入力部の実施の形態の一例である。
【0048】
例えば操作者は、Bモード画像やカラードプラ画像を見ながら、前記操作部9によって血流部分や嚢胞部分を指示する。これにより、被検体の液体部分において算出された歪みStが除外された分布Dの平均値StAVが算出されるので、この平均値StAVを用いて作成された弾性画像は、被検体の弾性を正確に反映した弾性画像になる。
【0049】
次に、第二変形例について説明する。歪みの分布Dは、カラードプラデータが存在する部分において算出された歪みSt及び操作者が前記操作部9を用いて指示した部分において算出された歪みStを除外した分布であってもよい。例えば、カラードプラデータでは血流などの流体部分を特定することはできるものの、流れのない嚢胞部分はカラードプラデータによって特定できない。従って、操作者がBモード画像などを見ながら指示した嚢胞部分において算出された歪みStと、カラードプラデータによって特定される流体部分において算出された歪みStとを除外した分布Dの平均値StAVを算出して弾性画像データの作成を行なうようにしてもよい。
【0050】
ちなみに、第一、第二変形例にあって、前記超音波画像において、前記操作部9によって指示された部分を色で表示するなど、前記操作部9によって指示された部分を表わす画像が表示されてもよい。
【0051】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について説明する。ただし、第一実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略するものとし、第一実施形態と異なる事項について説明する。
【0052】
前記物理量データ処理部6は、前記カラードプラデータが存在する部分においては、歪みStを算出しないようにしてもよい。例えば、図8に示すように、一つの音線l上において、カラードプラデータが存在する部分dd1、dd2がある場合、これらdd1、dd2を除いた部分lp1,lp2,lp3について歪みStの算出を行なう。そして、前記物理量データ処理部6は、各音線上について、カラードプラデータが存在しない部分の歪みStを算出して一フレーム分の物理量データを作成する。従って、得られる物理量データは、カラードプラデータが存在する部分の歪みのデータを有さない物理量データとなる。
【0053】
そして、弾性画像データ作成部73は、算出された歪みStの統計的特徴として、例えば前記物理量データを構成する全ての歪みのデータの分布Dにおける平均値StAV′を算出し、この平均値StAV′を用いて弾性画像データの作成を行なう。
【0054】
このような本例によっても、歪みの分布Dの平均値StAV′は、流体部分において算出された歪みStが除外された母集団の平均値となるので、第一実施形態と同様に被検体の弾性をより正確に反映した弾性画像を作成することができる。また、本例では、流体部分における歪みStの算出を行なわないので、計算量を低減することができる。
【0055】
ちなみに、本例においても、第一実施形態の第一変形例と同様に、操作者が前記操作部9を用いて超音波画像において被検体の液体部分を指示するようにし、指示した部分以外の部分の歪みStを算出するようにしてもよい。また、第一実施形態の第二変形例と同様に、歪みStの算出を行なわない部分の特定を、操作者が前記操作部9を用いて超音波画像において指示することによる特定と、カラードプラデータによる特定とで行なうようにしてもよい。
【0056】
以上、本発明を前記各実施形態によって説明したが、本発明はその主旨を変更しない範囲で種々変更実施可能なことはもちろんである。例えば、前記流体情報として前記カラードプラデータの代わりに、Bフローデータや造影剤からのエコー信号に含まれる高調波のデータを用いてもよい。
【0057】
また、前記表示部8には、図9に示すようにBモード画像BGと弾性画像EGとを合成した超音波画像G′を表示し、カラードプラデータを有する部分や前記操作部で指定された部分である部分Pには、弾性画像EGで用いられる色以外の色を表示するようにしてもよい。さらに、図10に示すように、前記超音波画像G′において、前記部分Pには、弾性画像EGを表示せず、背景のBモード画像BGのみを表示するようにしてもよい。
【0058】
また、前記表示部8には、図11に示すように前記Bモード画像BG、前記カラードプラ画像DG及び前記弾性画像EGが合成された超音波画像G1と、この超音波画像G1と同一断面についてのBモード画像BGのみからなる超音波画像G0とを表示するようにしてもよい。このようにBモード画像BGのみからなる超音波画像G0も表示することにより、組織形状の観察をより良好に行なうことができる。
【0059】
また、前記物理量データ処理部6は、被検体の弾性に関する物理量として、歪みの代わりに被検体における生体組織の変形による変位や弾性率などを算出してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 超音波診断装置
3 送受信部
5 カラードプラデータ処理部(検出部、流体情報取得部)
6 物理量データ処理部(物理量算出部)
9 操作部(入力部)
73 弾性画像データ作成部(弾性画像作成部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の各部における弾性に関する物理量を算出する物理量算出部と、
該物理量算出部によって算出された前記物理量に基づいて、被検体の弾性画像を作成する弾性画像作成部と、を備え、
該弾性画像作成部は、被検体における液体部分を除いて算出された前記物理量の統計的特徴を用いて前記物理量に基づく弾性画像の作成を行なう
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
被検体の各部における弾性に関する物理量を算出する物理量算出部と、
該物理量算出部によって算出された前記物理量に基づいて、被検体の弾性画像を作成する弾性画像作成部と、を備え、
前記物理量算出部は、被検体における液体部分以外の部分について前記物理量の算出を行なう
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
被検体に送信された超音波に対するエコー信号に基づいて前記液体部分を検出する検出部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記検出部は、エコー信号に基づいて流体情報を取得する流体情報取得部であることを特徴とする請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記流体情報は、エコー信号に基づいて取得されるカラードプラデータ、Bフローデータ又はエコー信号に含まれる高調波のデータのいずれかであることを特徴とする請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記弾性画像を作成するためのエコー信号を得る超音波の送受信と、前記液体部分を検出するためのエコー信号を得る超音波の送受信とを共通化して行なう送受信部を備えることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
表示された超音波画像において、前記液体部分を指示する入力部を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記弾性画像作成部は、前記物理量を階調化して弾性画像を作成するものであり、階調化する物理量の範囲が前記統計的特徴を用いて設定されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
コンピュータに、
被検体の各部における弾性に関する物理量を算出する物理量算出機能と、
該物理量算出機能によって算出された前記物理量に基づいて、被検体の弾性画像を作成する弾性画像作成機能と、を実行させ、
該弾性画像作成機能にあっては、被検体における液体部分を除いて算出された前記物理量の統計的特徴を用いて前記物理量に基づく弾性画像の作成を行なう
ことを特徴とする超音波診断装置の制御プログラム。
【請求項10】
コンピュータに、
被検体の各部における弾性に関する物理量を算出する物理量算出機能と、
該物理量算出機能によって算出された前記物理量に基づいて、被検体の弾性画像を作成する弾性画像作成機能と、を実行させ、
前記物理量算出機能にあっては、被検体における液体部分以外の部分について前記物理量の算出を行なう
ことを特徴とする超音波診断装置の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−61075(P2012−61075A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206423(P2010−206423)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】