説明

超音波診断装置及び画像生成制御プログラム

【課題】関心領域の方位分解能が常に高くなる超音波画像を生成すること。
【解決手段】実施形態の超音波診断装置は、画像生成部15a、検出部15b、決定部15c及び制御部18を備える。画像生成部15aは、複数の設定音速から算出される各受信遅延時間を用いて加算された超音波の反射波データそれぞれから、複数の設定音速ごとの超音波画像を生成する。検出部15bは、複数の設定音速ごとの超音波画像それぞれを複数の区画に分割し、同一の区画において輝度値、又は、コントラスト値が最適となる設定音速を、複数の区画ごとに検出する。決定部15cは、最適であると検出された複数の区画ごとの設定音速に基づいて、関心領域を描出するために最適となる設定音速を決定する。制御部18は、決定部15cにより決定された設定音速に基づいた超音波画像が画像生成部15aにて生成されるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波診断装置及び画像生成制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波診断装置を用いた画像撮影では、超音波画像の方位分解能を高めるために、ダイナミック集束法が用いられている。超音波を送信してから反射波が受信されるまでの時間は、反射エコー源の深さに比例する。そこで、ダイナミック集束法では、超音波送信からの経過時間に応じて、受信信号を加算(整相加算)するために用いる受信遅延時間を切り替えることで、深さ方向が異なる各集束点からの受信信号を集束させる。具体的には、超音波診断装置は、ダイナミック集束法の実行に際し、異なる集束点ごとに各振動子における受信遅延時間を算出しておき、算出した集束点ごとの受信遅延時間を用いて深さ方向が異なる各集束点からの受信信号を加算することで超音波画像を生成する。
【0003】
ここで、ダイナミック集束法にて各集束点における受信遅延時間を算出する際には、生体内の音速として設定された値(以下、設定音速と記載する)が用いられる。しかし、設定音速と実際の生体音速とに差がある場合は、受信信号の集束点がずれてしまい、ダイナミック集束法を用いても、超音波画像の方位分解能が低下してしまう場合がある。
【0004】
このため、近年、最適な設定音速を求める技術が知られている。かかる技術では、受信遅延時間の計算に用いる設定音速を変えながら各設定音速における超音波画像を取得し、取得した各超音波画像のコントラストや輝度を評価することで、最適となる設定音速(最適音速)を求める。具体的には、超音波診断装置は、各設定音速における超音波画像を複数の区画に分け、例えば、区画ごとに、コントラスト値が最適となる設定音速(最適音速)を求める。そして、超音波診断装置は、区画ごとの最適音速、又は、区画ごとの最適音速から算出した画像全体もしくは深さ方向ごとの最適音速を受信遅延回路へフィードバックする。
【0005】
しかし、上記の技術で求められる設定音速は、必ずしも、関心領域を観察するために最適な値とはならない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−264531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、関心領域の方位分解能が常に高くなる超音波画像を生成することが可能となる超音波診断装置及び画像生成制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の超音波診断装置は、画像生成部と、検出部と、決定部と、制御部とを備える。画像生成部は、撮影対象部位内の音速として設定された複数の設定音速から算出される各受信遅延時間を用いて加算された超音波の反射波データそれぞれから、前記複数の設定音速ごとの超音波画像を生成する。検出部は、前記画像生成部により生成された前記複数の設定音速ごとの超音波画像それぞれを複数の区画に分割し、同一の区画において輝度値、又は、コントラスト値が最適となる設定音速を、前記複数の区画ごとに検出する。決定部は、前記検出部により最適であると検出された前記複数の区画ごとの設定音速に基づいて、関心領域を描出するために最適となる設定音速を決定する。制御部は、前記決定部により決定された設定音速に基づいた超音波画像が前記画像生成部にて生成されるように制御する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成を説明するための図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る画像生成部が生成する超音波画像の一例を説明するための図である。
【図3】図3は、第1の実施形態に係る検出部による処理の一例を説明するための図である。
【図4】図4は、検出部の検出結果を用いた従来の技術を説明するための図である。
【図5】図5は、第1の実施形態に係る決定部を説明するための図(1)である。
【図6】図6は、第1の実施形態に係る決定部を説明するための図(2)である。
【図7】図7は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【図8】図8は、第2の実施形態に係る決定部が用いる設定情報の一例を説明するための図である。
【図9】図9は、第2の実施形態に係る決定部を説明するための図である。
【図10】図10は、第2の実施形態に係る決定部が用いる設定情報の他の一例を説明するための図である。
【図11】図11は、第2の実施形態に係る超音波診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【図12】図12は、第3の実施形態に係る決定部を説明するための図(1)である。
【図13】図13は、第3の実施形態に係る決定部を説明するための図(2)である。
【図14】図14は、第3の実施形態に係る超音波診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【図15】図15は、第4の実施形態に係る決定部を説明するための図である。
【図16】図16は、第4の実施形態に係る超音波診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、超音波診断装置の実施形態を詳細に説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成を説明するための図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブ1と、モニタ2と、入力装置3と、装置本体10とを有する。
【0012】
超音波プローブ1は、装置本体10と着脱自在に接続される。超音波プローブ1は、複数の圧電振動子を有し、これら複数の圧電振動子は、後述する装置本体10が有する送信部11から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ1は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ1は、圧電振動子に設けられる整合層や、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材などを有する。
【0013】
超音波プローブ1から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ1が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁などの表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
【0014】
ここで、本実施形態は、超音波プローブ1による超音波の走査形態が、リニア走査である場合であっても、セクタ走査である場合であっても適用可能である。
【0015】
入力装置3は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボールなどを有し、超音波診断装置の操作者からの各種設定要求を受け付け、装置本体10に対して受け付けた各種設定要求を転送する。なお、第1の実施形態に係る入力装置3が操作者から受け付ける設定の内容については、後に詳述する。
【0016】
モニタ2は、超音波診断装置の操作者が入力装置3を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体10において生成された超音波画像を表示したりする。
【0017】
装置本体10は、超音波プローブ1が受信した反射波に基づいて超音波画像を生成する装置である。装置本体10は、図1に示すように、送信部11と、受信部12と、Bモード処理部13と、ドプラ処理部14と、画像処理部15と、画像メモリ16と、画像合成部17と、制御部18と、内部記憶部19とを有する。
【0018】
送信部11は、トリガ発生回路、送信遅延回路及びパルサ回路などを有し、超音波プローブ1に駆動信号を供給する。パルサ回路は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、送信遅延回路は、超音波プローブ1から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの送信遅延時間を、パルサ回路が発生する各レートパルスに対し与える。また、トリガ発生回路は、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ1に駆動信号(駆動パルス)を印加する。送信遅延回路は、各レートパルスに対し与える送信遅延時間を変化させることで、圧電振動子面からの送信方向を任意に調整する。
【0019】
すなわち、送信遅延回路は、送信遅延時間をパルサ回路が発生する各レートパルスに対し与えることで、超音波送信の深さ方向における集束点(送信フォーカス)の位置を制御する。なお、第1の実施形態は、送信部11が、同一スキャンライン上にて、送信フォーカス点の深度を変えて超音波ビームを複数回送信する多段フォーカス(multi focusing)を実行可能である場合であっても良い。多段フォーカスを行なう場合、送信部11が有する送信遅延回路は、各送信フォーカス点の深度に応じた送信遅延時間を算出してパルサ回路に与える。
【0020】
また、送信部11は、後述する制御部18の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧などを瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0021】
受信部12は、アンプ回路、A/D変換器、受信遅延回路、加算器などを有し、超音波プローブ1が受信した反射波信号に対して各種処理を行なって反射波データを生成する。アンプ回路は、反射波信号をチャンネルごとに増幅してゲイン補正処理を行なう。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をA/D変換する。受信遅延回路は、デジタルデータに受信指向性を決定するのに必要な受信遅延時間を与える。加算器は、受信遅延回路により受信遅延時間が与えられた反射波信号の加算処理を行なって反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。
【0022】
ここで、第1の実施形態に係る受信部12が有する受信遅延回路は、ダイナミック集束法(dynamic focusing)を実行する際に、超音波画像の撮影対象である被検体Pの体内組織の音速として予め設定された「設定音速」に基づいて、複数の集束点ごとに各振動子に与えられる受信遅延時間の分布を算出する。そして、受信遅延回路は、算出した「受信遅延時間の分布」を加算器に与える。加算器は、受信遅延時間の分布に基づいて、時間とともに集束点が連続的に深さ方向に移動するように受信遅延時間制御を行なうことで、集束された領域からの反射波信号(デジタルデータ)の加算処理を行なう。
【0023】
ここで、設定音速は、例えば、超音波診断装置における可変設定可能な可変範囲にて変更することができる。また、送信部11が有する送信遅延回路は、受信遅延時間の算出に用いられた設定音速に基づいて、送信遅延時間を算出することもできる。
【0024】
このように、送信部11及び受信部12は、超音波の送受信における送信指向性と受信指向性とを制御する。
【0025】
Bモード処理部13は、受信部12から反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理などを行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
【0026】
ドプラ処理部14は、受信部12から受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワーなどの移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。
【0027】
画像処理部15は、超音波画像を生成する画像生成部15aと、画像生成部15aが生成した超音波画像の解析を行なう検出部15bと、検出部15bの解析結果を用いて処理を行なう決定部15cとを有する。
【0028】
画像生成部15aは、Bモード処理部13及びドプラ処理部14が生成したデータから超音波画像を生成する。すなわち、画像生成部15aは、Bモード処理部13が生成したBモードデータから反射波の強度を輝度にて表したBモード画像を生成する。また、画像生成部15aは、ドプラ処理部14が生成したドプラデータから移動体情報を表す平均速度画像、分散画像、パワー画像、又は、これらの組み合わせ画像としてのカラードプラ画像を生成する。
【0029】
ここで、画像生成部15aは、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビなどに代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用画像としての超音波画像を生成する。具体的には、画像生成部15aは、超音波プローブ1による超音波の走査形態に応じて座標変換を行なうことで、表示用画像としての超音波画像を生成する。また、画像生成部15aは、スキャンコンバート以外に種々の画像処理として、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)などを行なう。
【0030】
なお、画像生成部15aが生成する超音波画像や、検出部15b及び決定部15cの処理内容については、後に詳述する。
【0031】
画像合成部17は、画像生成部15aが生成した超音波画像に、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマークなどを合成した合成画像を生成する。
【0032】
画像メモリ16は、画像生成部15aが生成した超音波画像や、画像合成部17が生成した合成画像を記憶するメモリである。また、画像メモリ16は、Bモード処理部13やドプラ処理部14が生成したデータを記憶することも可能である。なお、Bモード処理部13やドプラ処理部14が生成したデータは、生データ(Raw Data)とも呼ばれる。
【0033】
内部記憶部19は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見など)や、診断プロトコルや各種ボディーマークなどの各種データを記憶する。また、内部記憶部19は、必要に応じて、画像メモリ16が記憶する画像の保管などにも使用される。また、内部記憶部19が記憶するデータは、図示しないインターフェースを経由して、外部の周辺装置へ転送することができる。
【0034】
制御部18は、超音波診断装置の処理全体を制御する。具体的には、制御部18は、入力装置3を介して操作者から入力された各種設定要求や、内部記憶部19から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送信部11、受信部12、Bモード処理部13、ドプラ処理部14、画像処理部15、画像合成部17の処理を制御する。また、制御部18は、画像メモリ16が記憶する超音波画像や、画像処理部15により行われる各種処理を指定するためのGUI、画像処理部15の処理結果などをモニタ2にて表示するように制御する。
【0035】
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置の全体構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、超音波画像の方位分解能を高めるために、ダイナミック集束法を実行する。具体的には、図1に示す画像生成部15aは、撮影対象部位内の音速として設定された複数の設定音速から算出される各受信遅延時間を用いて加算された超音波の反射波データそれぞれから、複数の設定音速ごとの超音波画像を生成する。なお、以下では、超音波画像としてBモード画像が生成される場合を一例として説明する。ただし、本実施形態は、超音波画像としてドプラ画像が生成される場合であっても適用可能である。図2は、第1の実施形態に係る画像生成部が生成する超音波画像の一例を説明するための図である。
【0036】
例えば、第1の実施形態に係る超音波診断装置における設定音速(単位:m/s)の可変範囲が「1400〜1600」であるとする。かかる場合、一例を挙げると、制御部18は、可変範囲にて「20m/s」おきに設定音速を変更して超音波画像を生成するように、送信部11、受信部12、Bモード処理部13及び画像生成部15aを制御する。すなわち、送信部11は、超音波ビームを超音波プローブ1から送信させ、受信部12は、「設定音速:1400m/s」に基づく「受信遅延時間の分布」を用いて超音波プローブ1が受信した反射波信号の加算処理を行なって反射波データを生成する。そして、Bモード処理部13は、受信部12が生成した「設定音速:1400m/s」の反射波データから、「設定音速:1400m/s」のBモードデータを生成する。
【0037】
そして、画像生成部15aは、図2に示すように、Bモード処理部13が生成した「設定音速:1400m/s」のBモードデータから、「設定音速:1400m/s」のBモード画像を生成する。同様の手順により、画像生成部15aは、図2に示すように、『「設定音速:1420m/s」のBモード画像、「設定音速:1440m/s」のBモード画像、・・・・・・・・、「設定音速:1600m/s」のBモード画像』を生成する。かかる処理により生成された複数の設定音速ごとの超音波画像は、画像生成部15aにより画像メモリ16に格納される。なお、設定音速の変更範囲及び設定音速の間隔は、内部記憶部19に予め格納されている場合であっても、画像生成処理を開始する際に、操作者が設定する場合であっても良い。
【0038】
そして、図1に示す検出部15bは、画像生成部15aにより生成された複数の設定音速ごとの超音波画像それぞれを複数の区画に分割し、同一の区画において輝度値、又は、コントラスト値が最適となる設定音速を、複数の区画ごとに検出する。具体的には、検出部15bは、複数の設定音速ごとの超音波画像それぞれの各区画にて輝度値、又は、コントラスト値が最大となる超音波画像の生成に用いられた設定音速を、該当する区画にて「最適となる設定音速」として検出する。図3は、第1の実施形態に係る検出部による処理の一例を説明するための図である。
【0039】
例えば、超音波プローブ1による超音波の走査形態がセクタ走査である場合、検出部15bは、図3の(A)の左図に示すように、超音波画像を、扇状に送信される超音波ビーム送信方向(深さ方向)に沿って「n」個、圧電振動子の配列方向(方位方向)に沿って「m」個の合計「n×m」個の区画に分割する。かかる場合、各区画の形状は、図3の(A)の左図に示すように、円錐台の展開図のような形状となる。また、超音波プローブ1による超音波の走査形態がリニア走査である場合、検出部15bは、図3の(A)の右図に示すように、超音波画像を、直線状に送信される超音波ビーム送信方向(深さ方向)に沿って「n」個、圧電振動子の配列方向(方位方向)に沿って「m」個の合計「n×m」個の区画に分割する。かかる場合、各区画の形状は、図3の(A)の右図に示すように、矩形となる。
【0040】
なお、「n」及び「m」の値は、例えば、内部記憶部19に予め格納されている場合であっても、検出部15bの処理を開始する際に、操作者が任意の値を設定する場合であっても良い。一例を挙げると、「n」及び「m」により決定される各区画の大きさは、超音波画像のピクセルサイズを基準として設定される。例えば、各区画の大きさは、「5ピクセル×5ピクセル」のサイズに設定される。
【0041】
そして、検出部15bは、例えば、複数の超音波画像それぞれの同一の区画におけるコントラスト値(振幅値の分散値など)を算出する。
【0042】
そして、検出部15bは、区画ごとにコントラスト値が最適となる設定音速(最適音速)を検出する。例えば、検出部15bは、図3の(B)に示すように、複数の設定音速ごとの超音波画像それぞれの「区画:A」において算出した各コントラスト値を、受信遅延時間の算出に用いられた設定音速に対してプロットしたグラフを作成する。すなわち、検出部15bは、図3の(B)に示すようなグラフを、区画ごとに作成する。そして、検出部15bは、作成した各グラフにおいて、コントラスト値が最大となる設定音速を最適音速として検出する。図3の(B)に示す一例の場合、検出部15bは、「区画:A」における最適音速が「1460m/s」であると検出する。
【0043】
なお、検出部15bは、図3の(B)に示す処理を、区画ごとの輝度値を算出することで実行しても良い。各区画の最適音速を検出する際に、コントラスト値を用いるか、輝度値を用いるかは、内部記憶部19に予め格納されている場合であっても、検出部15bの処理を開始する際に、操作者が設定する場合であっても良い。
【0044】
ここで、従来では、検出部15bにより検出された区画ごとの最適音速は、図4に示すように、様々な形態で制御部18を介して受信部12に通知されていた。図4は、検出部の検出結果を用いた従来の技術を説明するための図である。
【0045】
例えば、従来の技術では、図4の(A)に示す各区画の最適音速全てが受信部12に通知されていた。かかる場合、受信部12は、各集束点の受信遅延時間を、各区画の最適音速に基づいて決定していた。
【0046】
或いは、従来の技術では、図4の(B)に示すように、検出部15bが、「n」個の深さ方向の区画ごとに、統計学的に有意な最適音速を算出し、深さ方向ごとの最適音速が受信部12に通知されていた。例えば、検出部15bは、「n」個の深さ方向の区画ごとに、「m」個の最適音速の平均値や、「m」個の最適音速の中で出現頻度が最高となる最適音速を算出していた。かかる場合、受信部12は、各集束点の受信遅延時間を、深さ方向ごとの最適音速に基づいて決定していた。
【0047】
或いは、従来の技術では、図4の(C)に示すように、検出部15bが、検出した区画ごとの最適音速から代表的な1つの最適音速を算出し、代表的な1つの最適音速が受信部12に通知されていた。例えば、検出部15bは、「n×m」個の区画それぞれの最適音速の平均値や、「n×m」個の最適音速の中で出現頻度が最高となる最適音速を、画像全体における最適音速として算出していた。かかる場合、受信部12は、各集束点の受信遅延時間を、1つの最適音速に基づいて決定していた。
【0048】
しかしながら、上記の最適音速を用いて超音波画像を生成したとしても、当該超音波画像において、撮影対象部位の中でも、操作者が特に詳細に観察を行ないたい関心領域(ROI:Region Of Interest)の方位分解能は、必ずしも向上していない場合があった。
【0049】
例えば、各区画で検出された設定音速が空間的に分散していると、図4の(C)を用いて説明した「代表的な1つの最適音速」は、関心領域における最適な設定音速とは必ずしもならない。また、超音波プローブ1から送信される超音波の送信音場の焦域(焦点領域)が関心領域から外れていると、図4の(B)を用いて説明した「深さ方向ごとの最適音速」や、図4の(A)を用いて説明した「各区画の最適音速」は、関心領域における最適な設定音速とは必ずしもならない。
【0050】
なお、「深さ方向ごとの最適音速」や「各区画の最適音速」を用いる場合には、深さ方向に沿って複数の送信フォーカスを設定する多段フォーカスを用いることも考えられる。しかし、スキャンラインにて数ピクセル単位で送信フォーカス段数を設定することは、処理負荷が増大し、フレームレートが低下したりすることから、実用的ではない。また、関心領域が深さ方向において超音波プローブ1から近距離に位置する場合では、送信音場の乱れの影響によるサイドローブの発生に起因する超音波画像のアーチファクトによって、関心領域近傍での最適音速が検出できずに、逆に関心領域の方位分解能が低下する場合もある。
【0051】
そこで、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、関心領域の方位分解能が常に高くなる超音波画像を生成するために、図1に示す決定部15cの処理を実行する。
【0052】
決定部15cは、検出部15bにより最適であると検出された複数の区画ごとの設定音速に基づいて、関心領域を描出するために最適となる設定音速を決定する。具体的には、第1の実施形態に係る決定部15cは、入力装置3を介して操作者が超音波画像上にて設定した関心領域を描出するために最適となる設定音速を決定する。
【0053】
まず、制御部18は、画像生成部15aにより画像メモリ16に格納された超音波画像を読み出して、モニタ2にて表示させる。表示される超音波画像としては、例えば、初期設定されている設定音速(1500m/sなど)のBモード画像などが挙げられる。図5及び図6は、第1の実施形態に係る決定部を説明するための図である。
【0054】
そして、操作者は、モニタ2を参照して、入力装置3が有する描画機能を用いて、例えば、図5に示すように、矩形の関心領域20を設定する。図5に示す一例では、乳房をリニア走査することで生成されたBモード画像がモニタ2に表示されている。なお、関心領域の形状は、矩形に限定されるものではない。関心領域の形状は、入力装置3が有するフリーハンドの描画機能を用いて操作者が超音波画像上をトレースすることで、例えば、図5に示す関心領域21のように、任意の形状に設定される場合であっても良い。
【0055】
そして、第1の実施形態に係る決定部15cは、検出部15bにより検出された複数の区画ごとの最適音速に基づいて、操作者が設定した関心領域を描出するために最適となる設定音速を決定する。以下では、「関心領域を描出するために最適となる設定音速」を「関心領域音速」と記載する場合がある。
【0056】
具体的には、決定部15cは、関心領域を含む全区画それぞれにて「最適となる設定音速(最適音速)」から統計的に有意な値を求めることで、当該関心領域を描出するために最適となる設定音速(関心領域音速)を決定する。例えば、決定部15cは、関心領域20を含む区画をすべて抽出する(図6に示す網掛けされた矩形を参照)。そして、決定部15cは、抽出した全区画それぞれの最適音速から統計的に有意な値を求めることで関心領域音速を決定する。例えば、決定部15cは、図6に示すように、抽出した全区画それぞれの最適音速の平均値を算出し、算出した平均値を関心領域音速として決定する。
【0057】
なお、複数の区画ごとの最適音速から関心領域音速を算出する方法は、上記の平均値算出処理に限定されるものではない。例えば、決定部15cは、抽出した全区画それぞれの最適音速の出現頻度を示すヒストグラムから、出現数が最高となる最適音速を関心領域音速として決定しても良い。或いは、決定部15cは、抽出した全区画それぞれの最適音速の中央値を関心領域音速として決定しても良い。
【0058】
また、上記では、関心領域20を含む区画の最適音速から関心領域音速を決定する場合について説明した。しかし、決定部15cは、関心領域20内にある区画の最適音速から関心領域音速を決定する場合であっても良い。なお、決定部15cが行なう関心領域音速の決定方法は、内部記憶部19に予め格納されている場合であっても、決定部15cの処理を開始する際に、操作者が設定する場合であっても良い。
【0059】
また、関心領域の設定は、画像生成部15aによる複数の設定音速ごとの画像生成処理の前に行なわれる場合であっても、検出部15bによる複数の区画ごとの最適音速の検出処理の後に行なわれる場合であっても良い。
【0060】
そして、図1に示す制御部18は、決定部15cにより決定された設定音速(関心領域音速)に基づいた超音波画像が画像生成部15aにて生成されるように制御する。具体的には、制御部18は、決定部15cにより決定された関心領域音速を、受信部12の受信遅延回路に通知する。これにより、受信部12の受信遅延回路は、関心領域音速を用いて受信遅延時間の分布を算出する。そして、制御部18の制御により、送信部11は、超音波プローブ1から超音波ビームを送信させる。そして、受信部12は、関心領域音速から算出された受信遅延時間の分布を用いることで、関心領域に対して受信フォーカスがかけられた反射波データを生成する。そして、Bモード処理部13は、受信部12から受信した反射波データからBモードデータを生成し、画像生成部15aは、Bモード処理部13から受信したBモードデータからBモード画像を生成する。これにより、制御部18は、Bモード画像をモニタ2に表示させる。
【0061】
次に、図7を用いて、第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理について説明する。図7は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。なお、図7では、関心領域の設定が、画像生成部15aによる複数の設定音速ごとの画像生成処理の前に行なわれる場合について説明する。
【0062】
図7に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、操作者から入力装置3を介して関心領域の設定を受け付けたか否かを判定する(ステップS101)。ここで、関心領域の設定を受け付けない場合(ステップS101否定)、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、待機状態となる。
【0063】
一方、関心領域の設定を受け付けた場合(ステップS101肯定)、関心領域音速設定の要求を受け付けたと判定した制御部18は、複数の設定音速に基づいて、超音波の送受信が実行されるように制御する(ステップS102)。その後、制御部18の制御により、画像生成部15aは、複数の設定音速ごとの超音波画像を生成する(ステップS103)。
【0064】
そして、検出部15bは、各区画の最適音速を検出し(ステップS104)、決定部15cは、関心領域音速を決定する(ステップS105)。例えば、決定部15cは、関心領域20を含む区画すべての最適音速の平均値を算出し、算出した平均値を関心領域音速として決定する。
【0065】
続いて、制御部18は、関心領域音速に基づいて、超音波の送受信が実行されるように制御し(ステップS106)、制御部18の制御により、画像生成部15aは、関心領域音速に基づく超音波画像を生成する(ステップS107)。
【0066】
その後、制御部18の制御により、モニタ2は、ステップS107で生成された超音波画像を表示し(ステップS108)、処理を終了する。
【0067】
上述してきたように、第1の実施形態では、画像生成部15aは、撮影対象部位内の音速として設定された複数の設定音速から算出される各受信遅延時間を用いて加算された超音波の反射波データそれぞれから、複数の設定音速ごとの超音波画像を生成する。検出部15bは、画像生成部15aにより生成された複数の設定音速ごとの超音波画像それぞれを複数の区画に分割し、同一の区画において輝度値、又は、コントラスト値が最適となる設定音速を、複数の区画ごとに検出する。具体的には、検出部15bは、複数の設定音速ごとの超音波画像それぞれの各区画にて輝度値、又は、コントラスト値が最大となる超音波画像の生成に用いられた設定音速を、該当する区画の最適音速として検出する。
【0068】
決定部15cは、検出部15bにより最適であると検出された複数の区画ごとの設定音速に基づいて、関心領域を描出するために最適となる設定音速を決定する。具体的には、決定部15cは、入力装置3を介して操作者が超音波画像上にて設定した関心領域を描出するために最適となる設定音速を決定する。なお、決定部15cは、例えば、関心領域を含む全区画それぞれの最適音速から統計的に有意な値を求めることで、当該関心領域を描出するために最適となる設定音速(関心領域音速)を決定する。制御部18は、決定部15cにより決定された設定音速に基づいた超音波画像が画像生成部15aにて生成されるように制御する。
【0069】
すなわち、第1の実施形態では、操作者が特に詳細に観察を行ないたい関心領域における音速を決定したうえでダイナミック集束法により超音波画像を生成することができる。従って、第1の実施形態では、関心領域の方位分解能が常に高くなる超音波画像を生成することが可能となる。
【0070】
なお、上記では、制御部18が、決定部15cにより決定された関心領域音速を、受信部12の受信遅延回路に通知する場合について説明した。しかし、第1の実施形態に係る制御部18は、決定部15cにより決定された関心領域音速を、更に、送信部11の送信遅延回路にも通知する場合であっても良い。かかる場合、送信部11の送信遅延回路は、関心領域音速を用いて、送信遅延時間を算出する。そして、送信部11は、関心領域音速に基づく送信遅延時間を用いて、送信フォーカスの位置に集束する超音波ビームを送信させる。これにより、超音波の受信だけでなく、超音波送信においても、関心領域を描出するために最適となる音速を用いて遅延時間制御を行なうことができるので、関心領域の方位分解能をより向上させることが可能となる。
【0071】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、関心領域が自動的に設定される場合について説明する。
【0072】
第2の実施形態に係る超音波診断装置は、図1を用いて説明した第1の実施形態に係る超音波診断装置と同様に構成されるが、決定部15cによる処理が第1の実施形態とは異なる。以下、これを中心に説明する。
【0073】
第2の実施形態では、第1の実施形態と同様に、複数の設定音速ごとの超音波画像が生成され、複数の区画ごとの最適音速が検出される。
【0074】
そして、第2の実施形態に係る決定部15cは、関心領域の少なくとも深さ方向における幅が設定された設定情報を用いる。かかる設定情報は、例えば、内部記憶部19に予め格納される。すなわち、内部記憶部19は、関心領域の少なくとも深さ方向における幅が設定された設定情報を記憶する。図8は、第2の実施形態に係る決定部が用いる設定情報の一例を説明するための図である。
【0075】
図8に例示する情報は、リニア走査が行なわれた場合の関心領域に関する設定情報である。図8に示す一例では、超音波画像の方位方向(左右方向)における長さが「X」であり、超音波画像の深さ方向(上下方向)における長さが「Y」とすると、関心領域の方位方向における幅を「X/2」とし、関心領域の深さ方向における幅を「Y/8」とする設定情報が内部記憶部19により記憶されていることを示している。
【0076】
ここで、超音波診断装置により超音波画像を撮像する際、操作者は、超音波の送信条件として、送信フォーカスの位置を設定する。通常、操作者は、自身が詳細に観察したい深さ方向の位置に送信フォーカスを設定する。なお、送信条件としては、送信フォーカスの位置の他に、各スキャンラインにおける超音波ビームを形成するために送信時に用いる圧電振動子の数(送信開口数)や、送信周波数などが設定される。
【0077】
第2の実施形態に係る決定部15cは、入力装置3を介して操作者が設定した送信フォーカスの位置に対して、内部記憶部19が記憶する設定情報を参照して関心領域を設定する。そして、第2の実施形態に係る決定部15cは、設定した関心領域を描出するために最適となる設定音速(関心領域音速)を決定する。図9は、第2の実施形態に係る決定部を説明するための図である。
【0078】
例えば、図9の(A)に示すように、画像合成部17が超音波画像に合成した「深さ方向の目盛り:2」の位置に操作者が送信フォーカスを設定したとする。かかる場合、決定部15cは、例えば、「深さ方向の目盛り:2」を通る方位方向の直線と、超音波画像の方位方向における中心線との交点を抽出する。そして、決定部15cは、抽出した交点を中心として、図9の(A)に示すように、方位方向における幅が「X/2」であり、深さ方向における幅が「Y/8」となる関心領域30を設定する。
【0079】
そして、決定部15cは、第1の実施形態と同様の処理により、関心領域30における関心領域音速を決定する。そして、制御部18の制御により、送信部11は、「深さ方向の目盛り:2」の位置を送信フォーカスとする超音波ビームの送信を実行させ、受信部12は、関心領域音速に基づいて、関心領域30に受信フォーカスがかけられた反射波データを生成する。これにより、画像生成部15aは、関心領域音速に基づく超音波画像を生成し、モニタ2は、当該超音波画像を表示する。
【0080】
なお、第2の実施形態に係る決定部15cは、複数の送信フォーカスの位置に基づいて、複数の関心領域を設定することも可能である。
【0081】
例えば、多段フォーカスが行なわれる場合、操作者は、超音波の送信条件として、送信フォーカス段数及び各送信フォーカスの位置を設定する。
【0082】
例えば、図9の(B)に示すように、画像合成部17が超音波画像に合成した「深さ方向の目盛り:2」及び「深さ方向の目盛り:3」の2つの位置に操作者が送信フォーカスを設定したとする。かかる場合、決定部15cは、図9の(B)に示すように、「深さ方向の目盛り:2」に対する関心領域30を設定する。更に、決定部15cは、「深さ方向の目盛り:3」を通る方位方向の直線と、超音波画像の方位方向における中心線との交点を中心として、図9の(B)に示すように、方位方向における幅が「X/2」であり、深さ方向における幅が「Y/8」となる関心領域31を設定する。
【0083】
そして、決定部15cは、第1の実施形態と同様の処理により、関心領域30における関心領域音速及び関心領域31における関心領域音速をそれぞれ決定する。ここで、多段フォーカスが行なわれる場合、超音波診断装置は、各送信フォーカスにフォーカスされた超音波画像をそれぞれ生成する。
【0084】
従って、図9の(B)に例示した場合、制御部18の制御により、送信部11は、「深さ方向の目盛り:2」の位置を送信フォーカスとする超音波ビームの送信を実行させ、受信部12は、関心領域30の関心領域音速に基づいて、関心領域30に受信フォーカスがかけられた反射波データを生成する。また、制御部18の制御により、送信部11は、「深さ方向の目盛り:3」の位置を送信フォーカスとする超音波ビームの送信を実行させ、受信部12は、関心領域31の関心領域音速に基づいて、関心領域31に受信フォーカスがかけられた反射波データを生成する。これにより、画像生成部15aは、関心領域30における関心領域音速に基づく超音波画像と、関心領域31における関心領域音速に基づく超音波画像とを生成する。以下、関心領域30における関心領域音速に基づく超音波画像を「第1画像」と記載し、関心領域31における関心領域音速に基づく超音波画像を「第2画像」と記載する。すなわち、第1画像は、関心領域30の方位分解能が高い超音波画像となる。また、第2画像は、関心領域31の方位分解能が高い超音波画像となる。
【0085】
ここで、制御部18の制御により、画像合成部17は、関心領域30を含む第1画像の上部領域と、関心領域31を含む第2画像の下部領域とを合成した合成画像を生成する。そして、制御部18の制御により、モニタ2は、画像合成部17が生成した合成画像を表示する。或いは、第1画像と、第2画像とは、制御部18の制御によりモニタ2にて並列表示される。
【0086】
なお、決定部15cは、送信フォーカスが複数設定されることにより、関心領域を複数設定した場合でも、複数の関心領域を1つの関心領域に再設定したうえで、1つの関心領域音速を決定しても良い。例えば、決定部15cは、図9の(C)に示すように、関心領域30と関心領域31とを関心領域32に再設定する。ここで、関心領域32の深さ方向における幅は、関心領域30の上辺と関心領域31の下辺とで挟まれる範囲となる。また、関心領域32の方位方向における幅は、関心領域30及び関心領域31の左辺と右辺とで挟まれる範囲となる。そして、決定部15cは、第1の実施形態と同様の処理により、関心領域32における関心領域音速を決定する。
【0087】
かかる場合、制御部18の制御により、送信部11は、「深さ方向の目盛り:2」の位置を送信フォーカスとする超音波ビームの送信を実行させ、受信部12は、関心領域32の関心領域音速に基づいて、反射波データを生成する。また、制御部18の制御により、送信部11は、「深さ方向の目盛り:3」の位置を送信フォーカスとする超音波ビームの送信を実行させ、受信部12は、関心領域32の関心領域音速に基づいて、反射波データを生成する。これにより、画像生成部15aは、関心領域30の方位分解能が高い超音波画像と、関心領域31の方位分解能が高い超音波画像とを、関心領域32の関心領域音速に基づいて生成する。ここで、複数の関心領域を一つの関心領域に再設定する場合の超音波画像の表示形態は、上述したように、合成画像の単独表示であっても、各超音波画像の並列表示であっても良い。
【0088】
また、第2の実施形態は、複数の関心領域を1つの関心領域に再設定する場合に限定されるものではない。例えば、第2の実施形態は、4つの送信フォーカス位置から設定した4つの関心領域を、深度に応じて、2つずつ統合することで、2つの関心領域に再設定する場合であっても良い。かかる場合、決定部15cは、2つの関心領域それぞれから関心領域音速を決定する。
【0089】
このように、第2の実施形態に係る決定部15cは、複数の送信フォーカス位置に基づいて、複数の関心領域を設定した際には、3つのパターンの処理を行なうことが可能である。すなわち、第1のパターンでは、決定部15cは、複数の関心領域ごとに関心領域音速を決定する。また、第2のパターンでは、決定部15cは、複数の関心領域を1つに再設定した後に、1つの関心領域音速を決定する。また、第3のパターンでは、決定部15cは、複数の関心領域を送信フォーカス数より少ない数の関心領域に再設定した後に、再設定した各関心領域の関心領域音速を決定する。なお、第1〜第3のパターンのいずれかを実行するかの設定は内部記憶部19に予め格納されている場合であっても、決定部15cの処理を開始する際に、操作者が設定する場合であっても良い。また、多段フォーカスにおける表示形態についても、操作者により選択可能である。
【0090】
また、上記では、図8及び図9に例示したように、矩形の関心領域が設定される場合について説明した。しかし、第2の実施形態は、設定情報にて設定される関心領域の形状が、例えば、楕円形など、任意の形状である場合であっても良い。また、上記では、図8に例示したように、送信フォーカスの位置に応じて、同一の大きさの関心領域が設定される場合について説明した。しかし、第2の実施形態は、例えば、送信フォーカスの深度が大きくなるに応じて、関心領域の大きさが大きくなるように設定情報が設定される場合であっても良い。
【0091】
なお、セクタ走査が行なわれる場合の設定情報は、例えば、図10に例示するように設定される。図10は、第2の実施形態に係る決定部が用いる設定情報の他の一例を説明するための図である。
【0092】
例えば、セクタ走査が行なわれる場合は、扇形に走査されるスキャンラインの中で、中央付近の2本のスキャンライン(図10に示す点線を参照)により挟まれる範囲を、関心領域の方位方向の幅とする設定情報が内部記憶部19に格納される。また、セクタ走査が行なわれる場合は、図10に示すように、送信フォーカスの深度が大きくなるに応じて、関心領域の深さ方向の幅が大きくなるように設定された設定情報が内部記憶部19に格納される。
【0093】
また、上記では、関心領域の深さ方向及び方位方向の幅が設定情報にて設定されている場合について説明した。しかし、設定情報にて設定される幅は、関心領域の深さ方向のみである場合であっても良い。かかる場合、関心領域の方位方向の幅は、操作者により設定される。
【0094】
また、送信フォーカスの設定に伴う関心領域の設定は、画像生成部15aによる複数の設定音速ごとの画像生成処理の前に行なわれる場合であっても、検出部15bによる複数の区画ごとの最適音速の検出処理の後に行なわれる場合であっても良い。
【0095】
次に、図11を用いて、第2の実施形態に係る超音波診断装置の処理について説明する。図11は、第2の実施形態に係る超音波診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。なお、図12では、送信フォーカスの設定に伴う関心領域の設定が、画像生成部15aによる複数の設定音速ごとの画像生成処理の前に行なわれる場合について説明する。
【0096】
図11に示すように、第2の実施形態に係る超音波診断装置は、操作者から入力装置3を介して送信フォーカスの設定を受け付けたか否かを判定する(ステップS201)。ここで、送信フォーカスの設定を受け付けない場合(ステップS201否定)、第2の実施形態に係る超音波診断装置は、待機状態となる。
【0097】
一方、送信フォーカスの設定を受け付けた場合(ステップS201肯定)、決定部15cは、設定情報を参照して、送信フォーカスの位置に関心領域を設定する(ステップS202)。
【0098】
そして、制御部18は、複数の設定音速に基づいて、超音波の送受信が実行されるように制御する(ステップS202)。その後、制御部18の制御により、画像生成部15aは、複数の設定音速ごとの超音波画像を生成する(ステップS204)。
【0099】
そして、検出部15bは、各区画の最適音速を検出し(ステップS205)、決定部15cは、関心領域音速を決定する(ステップS206)。
【0100】
続いて、制御部18は、関心領域音速に基づいて、超音波の送受信が実行されるように制御し(ステップS207)、制御部18の制御により、画像生成部15aは、関心領域音速に基づく超音波画像を生成する(ステップS208)。
【0101】
その後、制御部18の制御により、モニタ2は、ステップS208で生成された超音波画像を表示し(ステップS209)、処理を終了する。
【0102】
上述してきたように、第2の実施形態では、内部記憶部19は、関心領域の少なくとも深さ方向における幅が設定された設定情報を記憶する。そして、決定部15cは、入力装置3を介して操作者が設定した送信フォーカスの位置に対して、内部記憶部19が記憶する設定情報を参照して関心領域を設定し、当該設定した関心領域を描出するために最適となる設定音速を決定する。
【0103】
すなわち、第2の実施形態では、操作者が設定した送信フォーカスの情報に基づいて、関心領域音速を決定するための関心領域を自動的に設定できる。従って、第2の実施形態では、関心領域の方位分解能が高い超音波画像の撮影における操作者の負担を軽減することが可能となる。
【0104】
また、第2の実施形態では、決定部15cは、複数の送信フォーカスの位置に基づいて、複数の関心領域を設定する。具体的には、第2の実施形態では、決定部15cは、多段フォーカスによる撮影要求を受け付けたことにより、複数の関心領域を設定した場合、上述した第1〜第3のパターンのいずれかの処理により、1つ、又は、複数の関心領域音速を決定する。第1〜第3のパターンのいずれかが実行される場合であっても、第2の実施形態によれば、複数の関心領域の方位分解能が高い超音波画像を生成することが可能となる。
【0105】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、第2の実施形態とは異なる方法で、関心領域が自動的に設定される場合について説明する。
【0106】
第3の実施形態に係る超音波診断装置は、図1を用いて説明した第1の実施形態に係る超音波診断装置と同様に構成される。しかし、第3の実施形態に係る決定部15cは、第2の実施形態に係る決定部15cとは異なる方法で、関心領域を設定する。以下、これを中心に説明する。
【0107】
なお、第3の実施形態では、第1の実施形態と同様に、複数の設定音速ごとの超音波画像が生成され、複数の区画ごとの最適音速が検出される。
【0108】
そして、第3の実施形態に係る決定部15cは、送信フォーカスの位置情報を含む超音波の送信条件から計算される送信音場に基づいて超音波プローブから送信される超音波の焦域を決定する。そして、第3の実施形態に係る決定部15cは、決定した焦域内の領域を関心領域として設定する。
【0109】
ここで、上述したように、操作者が設定する超音波の送信条件としては、送信フォーカスの位置情報、送信開口数及び送信周波数が挙げられる。かかる送信条件が設定された場合、超音波プローブ1から送信される超音波ビームのプロファイルは、近似的に計算することができる。図12及び図13は、第3の実施形態に係る決定部を説明するための図である。
【0110】
例えば、操作者が入力装置3を介して設定した送信フォーカスの位置情報から、決定部15cは、送信フォーカスの超音波プローブ1からの距離「F0」を算出する。すなわち、「F0」は、送信フォーカスの深さ方向の距離である。また、操作者が入力装置3を介して設定した送信開口数と、既知の値である「圧電振動子のピッチ幅」とから、送信開口幅「D」を算出する。また、操作者が入力装置3を介して設定した送信周波数から、超音波ビームの波長「λ」を算出する。
【0111】
そして、決定部15cは、例えば、簡易作図法により、図12に示すような、送信音場を近似した簡易音場を作図する。ここで、図12に示す「W」は、「F0」における「−20dB(デシベル)」のビーム幅であり、決定部15cは、「W=2×F0×(λ/D)」を計算する。そして、決定部15cは、図12に示すように、送信開口幅の中心を始点とする深さ方向に平行な半直線40上に、距離「F0」に基づいて送信フォーカス点41を設定する。そして、決定部15cは、送信フォーカス点41を中心に幅が「W」となる線分を設定する(図12に示す両端が矢印の線分を参照)。
【0112】
そして、決定部15cは、図12に示すように、送信開口幅の中心を始点とし、上記で設定した線分の両端それぞれを通る半直線42及び半直線43を設定する。ここで、半直線40と半直線42との角度(及び半直線40と半直線43との角度)は、指向角(directivity angle)となる。
【0113】
そして、決定部15cは、図12に示すように、送信開口の上端を始点とし、送信フォーカス点41を通る半直線44を設定する。また、決定部15cは、図12に示すように、送信開口の下端を始点とし、送信フォーカス点41を通る半直線45を設定する。そして、決定部15cは、半直線42〜半直線45により決定される範囲のうち、外側に位置する線分群(図12に示す太線を参照)を、送信音場を近似した簡易音場とする。
【0114】
そして、決定部15cは、半直線42と半直線44との交点と、半直線43と半直線45との交点とを通る直線を焦域の最浅部として決定し、焦域の最浅部と送信開口幅の中心との距離を「X1」として計算する。また、決定部15cは、半直線42と半直線45との交点と、半直線43と半直線44との交点とを通る直線を焦域の最深部として決定し、焦域の最浅部と送信開口幅の中心との距離を「X2」として計算する。すなわち、決定部15cは、超音波プローブ1からの距離が「X1」から「X2」にある深さ方向の範囲を焦域として決定する。
【0115】
なお、図12に示す簡易音場は、一本の超音波ビームにおける焦域を示している。従って、リニア走査である場合は、圧電振動子が配列される直線からの距離が「X1」から「X2」にある深さ方向の範囲が焦域とされる。また、セクタ走査である場合は、扇状に走査される超音波ビームの送信方向に合わせて、超音波ビームごとの送信開口の中心に位置する圧電振動子からの距離が「X1」から「X2」にある深さ方向の範囲が焦域とされる。
【0116】
そして、決定部15cは、決定した焦域内の領域を関心領域として設定する。例えば、決定部15cは、図13に示すように、圧電振動子が配列される直線からの距離が「X1」から「X2」にある深さ方向の範囲を、関心領域の深さ方向の幅として設定する。なお、関心領域の方位方向の幅については、操作者により任意に設定可能である。例えば、決定部15cは、超音波画像の方位方向における長さが「X」であるならば、関心領域の方位方向における幅を「X/2」として設定する。
【0117】
そして、決定部15cは、関心領域音速を、第1の実施形態と同様に決定し、制御部18は、関心領域音速に基づいて超音波画像が生成されるように制御する。
【0118】
なお、第3の実施形態に係る決定部15cは、第2の実施形態と同様に、複数の送信フォーカスの位置に基づいて、複数の関心領域を設定することも可能である。
【0119】
例えば、送信フォーカスの位置が2つ設定された場合、決定部15cは、各送信フォーカスの位置に基づく簡易音場を作図する。これにより、決定部15cは、2つの送信フォーカスそれぞれにおける焦域を決定し、関心領域を2つ設定する。すなわち、決定部15cは、2つの送信フォーカスのうち、一方の送信フォーカスについて決定した焦域の最浅部と最深部とで挟まれる範囲を、当該送信フォーカスに対応する関心領域の深さ方向の幅として設定する。また、決定部15cは、2つの送信フォーカスのうち、他方の送信フォーカスについて決定した焦域の最浅部と最深部とで挟まれる範囲を、当該送信フォーカスに対応する関心領域の深さ方向の幅として設定する。これにより、決定部15cは、例えば、図9の(B)に示すように、2つの関心領域を設定する。
【0120】
なお、決定部15cは、複数の関心領域を設定した際には、第2の実施形態で説明したように、第1のパターン、第2のパターン、又は、第3のパターンのいずれかを行なう。
【0121】
また、上記では、焦域の最浅部と最深部とで挟まれる範囲を、送信フォーカスに対応する関心領域の深さ方向の幅として設定する場合について説明した。しかし、第2の実施形態に係る決定部15cは、焦域の最浅部と最深部とで挟まれる範囲の一部の範囲を、送信フォーカスに対応する関心領域の深さ方向の幅として設定しても良い。例えば、決定部15cは、「X1+a」から「X2-b」にある深さ方向の範囲を、送信フォーカスに対応する関心領域の深さ方向の幅として設定しても良い。なお、「a」及び「b」は、操作者により任意に設定可能な数値である。
【0122】
また、送信条件の設定に伴う関心領域の設定は、画像生成部15aによる複数の設定音速ごとの画像生成処理の前に行なわれる場合であっても、検出部15bによる複数の区画ごとの最適音速の検出処理の後に行なわれる場合であっても良い。
【0123】
次に、図14を用いて、第3の実施形態に係る超音波診断装置の処理について説明する。図14は、第3の実施形態に係る超音波診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。なお、図14では、送信条件の設定に伴う関心領域の設定が、画像生成部15aによる複数の設定音速ごとの画像生成処理の前に行なわれる場合について説明する。
【0124】
図14に示すように、第3の実施形態に係る超音波診断装置は、操作者から入力装置3を介して送信条件の設定を受け付けたか否かを判定する(ステップS301)。ここで、送信条件の設定を受け付けない場合(ステップS301否定)、第3の実施形態に係る超音波診断装置は、待機状態となる。
【0125】
一方、送信条件の設定を受け付けた場合(ステップS301肯定)、決定部15cは、送信条件から送信音場を計算し、焦域を決定する(ステップS302)。そして、決定部15cは、焦域内の領域を関心領域として設定する(ステップS303)。
【0126】
そして、制御部18は、複数の設定音速に基づいて、超音波の送受信が実行されるように制御する(ステップS304)。その後、制御部18の制御により、画像生成部15aは、複数の設定音速ごとの超音波画像を生成する(ステップS305)。
【0127】
そして、検出部15bは、各区画の最適音速を検出し(ステップS306)、決定部15cは、関心領域音速を決定する(ステップS307)。
【0128】
続いて、制御部18は、関心領域音速に基づいて、超音波の送受信が実行されるように制御し(ステップS308)、制御部18の制御により、画像生成部15aは、関心領域音速に基づく超音波画像を生成する(ステップS309)。
【0129】
その後、制御部18の制御により、モニタ2は、ステップS309で生成された超音波画像を表示し(ステップS310)、処理を終了する。
【0130】
上述してきたように、第3の実施形態では、決定部15cは、送信フォーカスの位置情報を含む超音波の送信条件から計算される送信音場に基づいて超音波プローブから送信される超音波の焦域を決定し、当該決定した焦域内の領域を関心領域として設定する。
【0131】
このように、第3の実施形態では、送信フォーカスの位置に基づいて、単純に関心領域を設定するのではなく、関心領域の設定時に送信フォーカスがかかる焦域を決定し、決定した焦域内に関心領域の深さ方向の幅を設定する。すなわち、第3の実施形態では、送信フォーカスされている関心領域の関心領域音速を決定することができる。従って、第3の実施形態では、関心領域の方位分解能をより向上させることが可能となる。
【0132】
また、第3の実施形態では、決定部15cは、複数の送信フォーカスの位置に基づいて、複数の関心領域を設定する。具体的には、第3の実施形態では、決定部15cは、多段フォーカスによる撮影要求を受け付けた場合、各送信フォーカス点の焦域を決定したうえで、複数の関心領域を設定する。従って、第3の実施形態によれば、複数の関心領域の方位分解能が高い超音波画像を生成することが可能となる。
【0133】
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、第1の実施形態や第2の実施形態において設定された関心領域に基づいて、最適音速の検出に用いられる超音波画像を生成する際の送信条件を決定する場合について説明する。
【0134】
第4の実施形態に係る超音波診断装置は、図1を用いて説明した第1の実施形態に係る超音波診断装置と同様に構成される。しかし、第4の実施形態に係る決定部15cは、第1の実施形態、又は、第2の実施形態で説明した処理に加えて、更に、以下の処理を実行する。
【0135】
例えば、第4の実施形態では、第1の実施形態で説明したように、操作者が手動で関心領域を設定する。
【0136】
そして、第4の実施形態に係る決定部15cは、複数の設定音速ごとの超音波画像を生成する際に、超音波プローブ1から送信される超音波の焦域が関心領域を含むように超音波の送信条件を決定する。図15は、第4の実施形態に係る決定部を説明するための図である。
【0137】
例えば、図15に示すように、操作者が超音波画像上に関心領域50を設定したとする。かかる場合、決定部15cは、第3の実施形態で説明した簡易音場の作図法を用いることで、焦域が関心領域50の深さ方向の範囲内に含まれるように、送信フォーカス段数、送信フォーカスの位置及び送信開口を決定する。すなわち、決定部15cは、送信周波数から算出される波長「λ」を固定したうえで、「D」及び「F0」を変化させた簡易音場を作図する。これにより、決定部15cは、例えば、図15に示すように、送信開口幅「D53」及び送信フォーカス点「F51」による第1焦域の深さ方向の範囲と、送信開口幅「D54」及び送信フォーカス点「F52」による第2焦域の深さ方向の範囲とを重ねることで、関心領域50の深さ方向の範囲が網羅されることを求める。換言すると、決定部15cは、第1焦域の最浅部と第2焦域の最深部とで挟まれる範囲が、関心領域50の深さ方向の範囲と一致すると決定する。
【0138】
かかる場合、決定部15cは、送信フォーカス段数を「2」と決定する。そして、決定部15cは、送信開口幅「D53」に基づく送信開口と、送信フォーカス点「F51」の位置とに基づく送信フォーカスの位置とを第1送信条件として決定する。また、決定部15cは、送信開口幅「D54」に基づく送信開口と、送信フォーカス点「F52」の位置とに基づく送信フォーカスの位置とを第2送信条件として決定する。なお、送信フォーカスの深度を送信開口幅で除算した値は、送信フォーカスの強さを示す値として用いられ、例えば、「送信Fnumber」と呼ばれる。
【0139】
第1送信条件及び第2送信条件は、決定部15cから制御部18に通知され、制御部18は、第1送信条件及び第2送信条件を送信部11に通知する。これにより、送信部11は、各設定音速の超音波画像を生成する際に、第1送信条件及び第2送信条件に基づいて、超音波ビームの送信制御をそれぞれ行なう。そして、受信部12は、第1送信条件の反射波データと、第2送信条件の反射波データとを、該当する設定音速を用いた受信遅延時間の分布により生成する。これにより、画像生成部15aは、複数の設定音速ごとに、第1送信条件の超音波画像と、第2送信条件の超音波画像とを生成する。そして、画像合成部17は、複数の設定音速ごとに、第1送信条件の超音波画像と第2送信条件の超音波画像とを合成した合成画像を生成する。
【0140】
そして、検出部15bは、複数の設定音速ごとの合成画像それぞれを複数の区画に分割し、同一の区画において輝度値、又は、コントラスト値が最適となる設定音速(最適音速)を、複数の区画ごとに検出する。
【0141】
そして、決定部15cは、検出部15bの検出結果から、関心領域50を描出するために最適となる設定音速(関心領域音速)を決定し、制御部18は、決定部15cにより決定された設定音速に基づいた超音波画像が画像生成部15aにて生成されるように制御する。
【0142】
なお、関心領域50の大きさによっては、送信フォーカスの位置は、1つとなる場合もあり、かかる場合は、1つの送信条件により複数の設定音速ごとの超音波画像から、各区画の最適音速が検出される。
【0143】
また、第4の実施形態に係る決定部15cは、送信フォーカスの位置と、設定情報とに基づいて決定した関心領域に基づいて、設定音速ごとの超音波画像を生成する際の送信条件を決定して良い。かかる場合、決定部15cは、操作者が設定した送信フォーカスの位置を固定したうえで、例えば、「D」や「λ」を変化させた簡易音場を作図することで、送信条件を決定する。また、操作者が複数の送信フォーカスの位置を設定した場合、決定部15cは、複数の関心領域それぞれの送信条件を決定する。
【0144】
次に、図16を用いて、第4の実施形態に係る超音波診断装置の処理について説明する。図16は、第4の実施形態に係る超音波診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。なお、図16では、関心領域が操作者により手動で設定される場合について説明する。
【0145】
図16に示すように、第4の実施形態に係る超音波診断装置は、操作者から入力装置3を介して関心領域の設定を受け付けたか否かを判定する(ステップS401)。ここで、関心領域の設定を受け付けない場合(ステップS401否定)、第4の実施形態に係る超音波診断装置は、待機状態となる。
【0146】
一方、関心領域の設定を受け付けた場合(ステップS401肯定)、決定部15cは、焦域が関心領域を含むように超音波の送信条件を決定する(ステップS402)。具体的には、送信音場の深さ方向の焦域が関心領域の深さ方向の幅を網羅するように、送信条件を決定する。
【0147】
そして、制御部18は、決定部15cにより決定された送信条件及び複数の設定音速に基づいて、超音波の送受信が実行されるように制御する(ステップS403)。その後、制御部18の制御により、画像生成部15aは、複数の設定音速ごとの超音波画像を生成する(ステップS404)。
【0148】
そして、検出部15bは、各区画の最適音速を検出し(ステップS407)、決定部15cは、関心領域音速を決定する(ステップS406)。なお、送信条件が多段フォーカスである場合、検出部15bの最適音速検出処理に用いられる画像は、合成画像となる。
【0149】
続いて、制御部18は、関心領域音速に基づいて、超音波の送受信が実行されるように制御し(ステップS407)、制御部18の制御により、画像生成部15aは、関心領域音速に基づく超音波画像を生成する(ステップS408)。
【0150】
その後、制御部18の制御により、モニタ2は、ステップS408で生成された超音波画像を表示し(ステップS409)、処理を終了する。
【0151】
上述してきたように、第4の実施形態では、決定部15cは、複数の設定音速ごとの超音波画像を生成する際に、超音波プローブ1から送信される超音波の焦域が関心領域を含むように超音波の送信条件を決定する。
【0152】
すなわち、第4の実施形態では、関心領域が超音波ビームの焦域となるように送信条件を設定したうえで、最適音速を検出するための超音波画像群を生成する。第4の実施形態では、かかる超音波画像群を用いることで、各区画の最適音速の検出精度が向上し、その結果、決定部15cにより決定される関心領域音速の信頼性を向上させることが可能となる。
【0153】
なお、第1の実施形態〜第4の実施形態で説明した超音波診断装置が実行する画像生成制御方法は、あらかじめ用意された画像生成制御プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することによって実現することができる。この画像生成制御プログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、この画像生成制御プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0154】
以上、説明したとおり、第1の実施形態〜第4の実施形態によれば、関心領域の方位分解能が常に高くなる超音波画像を生成することが可能となる。
【0155】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0156】
1 超音波プローブ
2 モニタ
3 入力装置
10 装置本体
11 送信部
12 受信部
13 Bモード処理部
14 ドプラ処理部
15 画像処理部
15a 画像生成部
15b 検出部
15c 決定部
16 画像メモリ
17 画像合成部
18 制御部
19 内部記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影対象部位内の音速として設定された複数の設定音速から算出される各受信遅延時間を用いて加算された超音波の反射波データそれぞれから、前記複数の設定音速ごとの超音波画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部により生成された前記複数の設定音速ごとの超音波画像それぞれを複数の区画に分割し、同一の区画において輝度値、又は、コントラスト値が最適となる設定音速を、前記複数の区画ごとに検出する検出部と、
前記検出部により最適であると検出された前記複数の区画ごとの設定音速に基づいて、関心領域を描出するために最適となる設定音速を決定する決定部と、
前記決定部により決定された設定音速に基づいた超音波画像が前記画像生成部にて生成されるように制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記決定部は、所定の入力部を介して操作者が超音波画像上にて設定した関心領域を描出するために最適となる設定音速を決定することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記複数の設定音速ごとの超音波画像それぞれの各区画にて輝度値、又は、コントラスト値が最大となる超音波画像の生成に用いられた設定音速を、該当する区画にて最適となる設定音速として検出することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記決定部は、前記関心領域を含む全区画それぞれにて最適となる設定音速から統計的に有意な値を求めることで、当該関心領域を描出するために最適となる設定音速を決定することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記関心領域の少なくとも深さ方向における幅が設定された設定情報を記憶する設定情報記憶部を更に備え、
前記決定部は、所定の入力部を介して操作者が設定した送信フォーカスの位置に対して、前記設定情報記憶部が記憶する前記設定情報を参照して関心領域を設定し、当該設定した関心領域を描出するために最適となる設定音速を決定することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記決定部は、送信フォーカスの位置情報を含む超音波の送信条件から計算される送信音場に基づいて超音波プローブから送信される超音波の焦域を決定し、当該決定した焦域内の領域を前記関心領域として設定することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記決定部は、複数の送信フォーカスの位置に基づいて、複数の関心領域を設定することを特徴とする請求項5又は6に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記決定部は、前記複数の設定音速ごとの超音波画像を生成する際に、超音波プローブから送信される超音波の焦域が前記関心領域を含むように超音波の送信条件を決定することを特徴とする請求項2又は5に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
撮影対象部位内の音速として設定された複数の設定音速から算出される各受信遅延時間を用いて加算された超音波の反射波データそれぞれから生成された前記複数の設定音速ごとの超音波画像を複数の区画に分割し、同一の区画において輝度値、又は、コントラスト値が最適となる設定音速を、前記複数の区画ごとに検出する検出手順と、
前記検出手順により最適であると検出された前記複数の区画ごとの設定音速に基づいて、関心領域を描出するために最適となる設定音速を決定する決定手順と、
前記決定手順により決定された設定音速に基づいた超音波画像が生成されるように制御する制御手順と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする画像生成制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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