説明

超音波診断装置及び超音波トランスデューサ接続関係判定方法

【課題】各々の超音波トランスデューサと各々のコネクタの端子との間でランダムに配線作業を行うことにより配線作業工程を大幅に簡素化することができる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】この超音波診断装置は、駆動信号を超音波トランスデューサに供給し、超音波トランスデューサから出力される検出信号を受信する送受信回路と、超音波トランスデューサと送受信回路との間の接続関係を切り換える接続選択スイッチと、超音波プローブにおける超音波トランスデューサと端子との間の接続関係を表す接続関係データを格納する格納部と、超音波プローブが超音波診断装置本体に接続された際に、接続関係データが格納部に存在しない場合に、音源から発生される試験音波信号を受信する超音波トランスデューサの受信タイミングを計測することにより接続関係データを生成する制御部とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を送受信することにより生体内の臓器等の撮像を行って、診断のために用いられる超音波画像を生成する超音波診断装置に関する。さらに、本発明は、そのような超音波診断装置において用いられる超音波トランスデューサ接続関係判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用に用いられる超音波診断装置においては、通常、超音波プローブを用いて、複数の超音波を合波することにより形成される超音波ビームによって被検体を走査し、被検体内部において反射された超音波エコーを受信することにより、超音波エコーの強度に基づいて被検体の組織に関する画像情報が得られる。超音波診断装置によれば、超音波を利用して音響的に生体を計測するので、生体内の臓器の組織性状を非侵襲的に診断することができる。
【0003】
超音波診断装置において使用される超音波プローブは、超音波の送受波を行う複数の超音波トランスデューサが1次元または2次元に配列されたアレイトランスデューサで構成される。このアレイトランスデューサと超音波診断装置とは、複数の細径同軸ケーブルを含むプローブケーブルを介してアレイトランスデューサに接続された専用コネクタを用いて接続される。
【0004】
アレイトランスデューサと、専用コネクタに設けられた複数の端子とを接続する同軸ケーブルの配線工程は、テスタで測定しながら超音波トランスデューサの番号と端子の番号との間で順番を対応させながら行うので、手間と時間を要するものであった。そこで、この配線工程は、特許文献1に記載される同軸ケーブルの色分けによって改善されてきた。
【特許文献1】特開2003−61954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、超音波診断技術の高度化の進展により、近年、アレイトランスデューサにおける素子数が益々増加する傾向にあり、それに伴って同軸ケーブルは年々細くなると共に多芯化が進んでいる。このようななかで、特許文献1に示す同軸ケーブルの色分けの方法を採用しても、超音波トランスデューサの番号と端子の番号との間で順番を対応させながら行う同軸ケーブルの配線工程は多大の手間と時間を要するもので、その解決が課題となっていた。
【0006】
本発明は、上記のような事情を考慮してなされたものであり、同軸ケーブルの配線工程において、テスタ等を使用して超音波トランスデューサの番号と端子の番号との間で順番を対応させながら行う配線作業を不要とし、各々の超音波トランスデューサと各々のコネクタの端子との間でランダムに配線作業を行うことにより配線作業工程を大幅に簡素化することができる超音波診断装置、及び、そのような超音波診断装置において用いられる超音波トランスデューサ接続関係判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の1つの観点に係る超音波診断装置は、複数の超音波トランスデューサと、複数の超音波トランスデューサを超音波診断装置本体に接続するために用いられるコネクタに設けられ、複数の超音波トランスデューサに電気的に接続された複数の端子とを具備する超音波プローブを用いる超音波診断装置であって、複数の駆動信号を複数の超音波トランスデューサにそれぞれ供給することにより、複数の超音波トランスデューサに超音波を送信させ、超音波エコーを受信した複数の超音波トランスデューサからそれぞれ出力される複数の検出信号を受信する送受信回路と、超音波プローブに接続されるコネクタに設けられた複数の端子と送受信回路との間に接続され、複数の超音波トランスデューサと送受信回路との間の接続関係を切り換える接続選択スイッチと、超音波プローブにおける複数の超音波トランスデューサと複数の端子との間の接続関係を表す接続関係データを格納する格納部と、超音波プローブが超音波診断装置本体に接続された際に、超音波プローブに対応する接続関係データを格納部において検索し、接続関係データが格納部に存在しない場合に、音源から発生される試験音波信号を受信する複数の超音波トランスデューサの受信タイミングを計測することにより接続関係データを生成して格納部に格納すると共に、生成された接続関係データに基づいて複数の超音波トランスデューサと送受信回路とを接続し、接続関係データが格納部に存在する場合に、格納部から読み出された接続関係データに基づいて複数の超音波トランスデューサと送受信回路とを接続するように接続選択スイッチを制御する制御部とを具備する。
【0008】
また、本発明の1つの観点に係る超音波トランスデューサ接続関係判定方法は、複数の超音波トランスデューサと、複数の超音波トランスデューサを超音波診断装置本体に接続するために用いられるコネクタに設けられた複数の端子とを具備する超音波プローブを用いる超音波診断装置において、複数の超音波トランスデューサと複数の端子との接続関係を判定する方法であって、超音波プローブが超音波診断装置本体に接続された際に、超音波プローブに対応する接続関係データを超音波診断装置本体の格納部において検索する工程(a)と、接続関係データが格納部に存在しない場合に、音源から発生される試験音波信号を受信する複数の超音波トランスデューサの受信タイミングを計測することにより接続関係データを生成して格納部に格納すると共に、生成された接続関係データに基づいて複数の超音波トランスデューサと送受信回路とを接続する工程(b)と、接続関係データが格納部に存在する場合に、格納部から読み出された接続関係データに基づいて複数の超音波トランスデューサと送受信回路とを接続する工程(c)とを具備する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、トランスデューサの番号とコネクタの端子番号との間で順番を対応させることなく、ランダムに配線作業を行うことにより、配線作業工程を大幅に簡素化して、超音波診断装置において、そのようなランダムに配線された超音波プローブを使用することできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
以下の実施形態においては、説明を簡略化するために、27個の超音波トランスデューサを一次元状に配列したリニアアレイを用いて、同時に11個の超音波トランスデューサを駆動して超音波ビームを形成する場合について説明するが、本発明は、超音波トランスデューサの数やアレイの形状に依存せず、複数の超音波トランスデューサが2次元状に配列されたアレイを用いる場合についても適用することが可能である。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、超音波診断装置1は、超音波プローブ2と、接続コネクタ3を介して超音波プローブ2に接続される超音波診断装置本体4とを有している。接続コネクタ3は、超音波プローブ側の接続コネクタ3aと、超音波診断装置本体側の接続コネクタ3bとによって構成され、接続コネクタ3a及び3bには、複数の端子が設けられている。
【0012】
超音波プローブ2は、供給される駆動信号に従って超音波を送信すると共に、超音波エコーを受信して検出信号を出力する複数の超音波トランスデューサ24と、超音波トランスデューサ24と接続コネクタ3aとを接続する複数の同軸ケーブルを含むプローブケーブル23とを有している。
【0013】
超音波トランスデューサとしては、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛:Pb(lead) zirconate titanate)に代表される圧電セラミックや、PVDF(ポリフッ化ビニリデン:polyvinyl difluoride)等の高分子圧電素子が用いられる。また、近年において、超音波トランスデューサの感度及び帯域向上に寄与するとして期待が寄せられているPZNT(鉛、亜鉛、ニオブ、チタンを含む酸化物)単結晶を含む圧電素子を用いても良い。
【0014】
超音波診断装置本体4は、接続選択スイッチ41と、送受信部42と、信号処理部43と、システム制御部44と、画像処理部45と、DSC46と、D/A変換器47と、表示部48とを有しており、超音波プローブ2から出力される検出信号を処理して画像信号を生成することにより、超音波画像を表示部48に表示する。
【0015】
接続選択スイッチ41は、超音波トランスデューサ24を選択して送受信部42に接続する。送受信部42は、複数の送信回路421と、複数の受信回路422と、複数のA/D変換器423とを備えている。複数の送信回路421は、システム制御部44の制御の下で、それぞれの超音波トランスデューサに対応する遅延量を有する複数の駆動信号を生成して、超音波トランスデューサ24に供給する。これにより、送信ビーム形成が行われて、超音波プローブ2から所望の方向に向けて超音波ビームが送信される。また、複数の受信回路422は、超音波トランスデューサ24から出力される複数の検出信号に対して、増幅等の処理を施す。
【0016】
送信回路421は、Tx1からTxmまでmチャンネル分設けられ、受信回路422は、Rx1からRxnまでnチャンネル分設けられており、本発明の一実施形態においては、m=n=11の場合を例として説明する。A/D変換器423は、受信回路422から出力されるアナログ信号をディジタル信号に変換して、信号処理部43に入力する。
【0017】
信号処理部43は、複数のA/D変換器423から出力される検出信号に遅延処理を施して、遅延処理が施された検出信号を加算する。これにより、受信ビーム形成が行われる。また、信号処理部43は、加算された検出信号に基づいて、包絡線データを生成して出力する。
【0018】
画像処理部45は、包絡線データに基づいて、Bモード画像データを生成して出力する。DSC46は、Bモード画像データを通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像データに変換(ラスター変換)し、階調処理等の必要な画像処理を施すことにより、表示用の画像データを生成する。D/A変換器47は、表示用の画像データをアナログの画像信号に変換して表示部48に出力する。
【0019】
超音波診断装置1における電子スキャン方法は、複数の超音波トランスデューサに所望の遅延を与えた駆動信号を供給して時間差を有する送信動作をさせることにより、1つの焦点に収束する超音波ビームを形成すると共に、複数の超音波トランスデューサから出力される複数の検出信号に所望の遅延を与えてから足し合わせることにより、受信される超音波エコーにおいて1つの焦点を形成するものである。この焦点を移動させることにより、被検体の撮像領域全体がスキャンされる。なお、超音波ビーム形成動作においては、複数の超音波検出素子の中から一部の超音波検出素子のみを使用する「疎のアレイ」(スパースアレイ:sparse array)を用いるようにしても良い。
【0020】
図2は、27チャンネルアレイを11チャンネルの送信回路で同時駆動する場合における超音波ビームの形成動作を説明するための図である。その場合には、1回の送受信に使用する超音波トランスデューサは、アレイ全体の一部である。超音波診断装置本体4には、接続される超音波トランスデューサの数と同じ数の送受信回路を搭載し、送受信毎に超音波トランスデューサと送受信回路との接続を切り換えながら走査が行われる。そのために、図1に示すように、超音波プローブ接続コネクタ3と送受信部42の間に、クロスポイントスイッチ等の接続選択スイッチ41を設置し、接続選択スイッチ41が接続関係データに基づいて送受信部42と超音波トランスデューサ24との接続を切り換えながら、超音波の送受信が行われる。
【0021】
図3は、本発明の一実施形態に係る超音波診断装置に使用される超音波プローブの構成を示す概略図である。超音波プローブ2は、被検体に当接させて用いられる超音波プローブ先端部21と、超音波診断装置本体4(図1)に接続される超音波プローブ接続部22と、超音波プローブ先端部21と超音波プローブ接続部22との間を接続するプローブケーブル23とを有する。
【0022】
超音波プローブ先端部21は、超音波の送受信を行う超音波トランスデューサ24と、超音波トランスデューサ24とプローブケーブル23とを接続するフレキシブル基板(FPC)25とを有する。超音波プローブ先端部21は、超音波トランスデューサ24の先端に、音響レンズ26をさらに有しても良い。
【0023】
超音波プローブ接続部22は、超音波診断装置本体4に接続される接続コネクタ3aを有する。さらに、超音波プローブ接続部22は、接続コネクタ3aとプローブケーブル23とを接続するための中継基板27を有しても良く、接続コネクタ3aと中継基板27との間に中間コネクタ28を有しても良い。
【0024】
次に、図3に示す超音波プローブ2の同軸ケーブル29の配線接続作業工程について説明する。同軸ケーブル29の長さは、体表用超音波プローブで2.5m程度、内視鏡用超音波プローブで3m以上となるので、配線作業時に同軸ケーブルの配線順序を管理するためには煩雑な工程を必要とする。
【0025】
そこで、本実施形態においては、この煩雑な工程を簡素化するために、複数の超音波トランスデューサ24と接続コネクタ3aの複数の端子とを接続する複数の同軸ケーブル29は、超音波トランスデューサ24の番号と端子の番号との間で1対1の対応を取ることなく、規則性無くランダムに接続される。
【0026】
具体的には、まず、複数の超音波トランスデューサ24が接続されたフレキシブル基板25の信号取出し部に、複数の同軸ケーブル29の第1の端子を、色や順番等を意識せずに、半田付けによりランダムに接続する。次に、複数の同軸ケーブル29の第2の端子を、同軸ケーブル29の第1の端子が何番目の超音波トランスデューサ24に接続されているかを考慮せずに、接続コネクタ3aの複数の端子にランダムに接続する。なお、実際には、同軸ケーブル29を接続コネクタ3aの端子に直接接続するのではなく、同軸ケーブル接続用の中継基板27及び中間コネクタ28を使用するのが一般的である。
【0027】
図1に示す超音波診断装置本体4は、超音波プローブの種類及び/又は識別番号毎にコネクタ端子番号と超音波トランスデューサ24との対応、すなわち、ランダムに接続された複数の超音波トランスデューサ24と接続コネクタ3aの複数の端子が、実際にどのように接続されているかを表す接続関係データを格納部49のテーブル50に格納する。
【0028】
超音波プローブ2が超音波診断装置本体4に接続された際に、超音波診断装置本体4は、接続された超音波プローブの種類及び/又は識別番号を特定し、特定された超音波プローブに対応する接続関係データを格納部49において検索する。プローブの種類及び/又は識別番号の特定は、プローブの種類及び/又は識別番号を一義的に定義する端子の接続情報等を超音波プローブから読み取るようにしても良く、超音波プローブ内に記憶部を設け、この記憶部からプローブの種類及び/又は識別番号を読み取るようにしても良い。
【0029】
格納部49を検索した際に、対応する接続関係データが存在する場合には、超音波プローブ2の送受信動作を実行することができる。格納部49を検索した際に、対応する接続関係データが存在しない場合には、以下に記載する接続関係の測定を実行して、ランダムに接続された複数の超音波トランスデューサ24と接続コネクタ3aの複数の端子が、実際にどのように接続されているかを表す接続関係データを作成して、超音波診断装置本体4の格納部49に記憶することが行われる。
【0030】
以下に、超音波トランスデューサの接続関係データの生成について説明する。超音波診断装置本体4は、超音波診断において通常行われる超音波の送受信及び診断画像形成動作に加えて、超音波トランスデューサの接続関係を判定することができる。接続関係の判定は、図1に示す送受信部42と制御部44とによって実行される。従って、超音波診断装置本体4に、新たな構成部品を追加する必要がないので、コストアップを生じない。
【0031】
図4は、固定点音源を用いて超音波トランスデューサの接続関係を判定する方法を説明するための図である。図4に示すように、超音波トランスデューサの接続関係が判定される超音波プローブ2が、接続コネクタを介して超音波診断装置本体4に接続されている。超音波プローブ2内の超音波トランスデューサは、超音波診断装置本体内部の接続選択スイッチ41を介して、送受信部42と制御部44とによって構成される接続関係検査判定部51に接続される。
【0032】
超音波トランスデューサの接続関係を判定するために、超音波プローブ2の全面の音響媒体中に点音源57を設置する。接続関係検査判定部51は、音響媒体中に点音源57を設置したファントムと、点音源57から送信される試験音波信号(パルス状の超音波)を受信する個々の超音波トランスデューサ24から出力される検出信号を増幅する増幅器(AMP)53と、増幅器53から出力される増幅された検出信号をA/D変換して検出データを出力するA/D変換器(ADC)54と、A/D変換器54から出力される検出データを記憶するメモリ等の記憶装置(MEMO)55と、計測した信号を処理する制御部(CPU)56とを有している。
【0033】
本発明の一実施形態においては、27個の超音波トランスデューサを一次元状に配列したリニアアレイを用いて、同時に11個の超音波トランスデューサを駆動して超音波ビームを形成する場合について説明するが、その場合には、27個の超音波トランスデューサの受信タイミングを11チャンネルの受信回路で計測するので、接続関係データを作成するために3回の計測が必要となる。また、本実施形態における受信タイミングの計測は、超音波トランスデューサの数やアレイの形状に依存せず、複数の超音波トランスデューサが2次元状に配列されたアレイについても適用することが可能である。
【0034】
制御部56は、記憶装置55に記憶されている検出データに基づいて、複数の超音波トランスデューサ24における受信タイミングを検出し、検出された受信タイミングに基づいて、複数の超音波トランスデューサ24の接続関係を判定することにより、複数の超音波トランスデューサ24と接続コネクタ3a(図2)の複数の端子との間の接続関係を表す接続関係データを生成して、超音波受信装置本体内の格納部49(図1)に接続関係データを書き込む。
【0035】
図4に示すように、点音源57がアレイトランスデューサの上端に設置されているので、試験音波信号の受信タイミングが最も早い下から1番目の端子が、超音波トランスデューサT1に接続されていると判断できる。続いて、試験音波信号の受信タイミングが2番目に早い上から1番目の端子が、超音波トランスデューサT2に接続されていると判断できる。このように、全ての端子における受信タイミングを調べることにより、各端子に接続されている超音波トランスデューサの接続関係を特定することが可能となる。
【0036】
隣接する2つの超音波トランスデューサにおいて、超音波トランスデューサと点音源との間の距離の差が大きいほど超音波トランスデューサの受信タイミングの差が大きくなり、接続関係の特定が容易となる。逆に、図4に示す音源位置の場合には、上端付近における超音波トランスデューサの接続関係の特定が困難となる。この問題は、図4に示す音源位置で測定して接続関係を判定した後に、点音源57をアレイトランスデューサの下端に移動させて、複数の超音波トランスデューサ24の受信タイミングを測定して接続関係を判定し、点音源57の位置を異にする複数の接続関係判定結果を複合して判断することにより解決され、正確な接続関係データを得ることができる。
【0037】
以上説明した固定音源方式では、複数の超音波トランスデューサが角度の大きいコンベックス形状で配置されている場合には、超音波が到達しない超音波トランスデューサが生じることがある。また、複数の超音波トランスデューサがリニア形状で配置されていても、超音波トランスデューサの数が多い場合には、音響レンズにおける減衰が大きく、微弱な試験音波信号しか受信できない超音波トランスデューサが生じることがある。そのような場合には、固定音源方式では接続関係の特定が困難である。
【0038】
図5は、移動点音源を用いて超音波トランスデューサの接続関係を判定する方法を説明するための図である。図5に示すように、点音源57をアレイトランスデューサの送信面に沿って移動させ、複数の超音波トランスデューサの配列ピッチの1/N倍(Nは整数)移動するごとに受信タイミングを測定することにより、上記の場合にも正確に受信タイミングを測定することができ、超音波トランスデューサの接続関係の特定が可能となる。
【0039】
以上の説明においては、超音波プローブの外部に設置された点音源を使用したが、点音源の替わりに反射体を設置し、少なくとも1つの超音波トランスデューサからパルス状の超音波を送信し、反射体によって反射された超音波の受信タイミングを測定することにより、超音波トランスデューサの接続関係を特定しても良い。
【0040】
また、図4に示す場合には、超音波トランスデューサT1の受信タイミングが最も早いので、超音波トランスデューサT1を接続する配線が色分け等により既知であれば、超音波トランスデューサT1における受信タイミングを基準として、それ以外の超音波トランスデューサにおける受信タイミングの遅延時間を測定することにより、複数の超音波トランスデューサの接続関係を特定することができる。
【0041】
また、プローブケーブル23に含まれている複数の同軸ケーブルを接続する場合に、上端又は下端に位置する超音波トランスデューサの配線又は両端の超音波トランスデューサの配線のみについて色分け等の区別をしておき、それを識別することによって、特定の配線を特定のコネクタ端子に接続することは、配線工程の妨げにはならず、かえって配線工程の簡素化のために有利となる。
【0042】
このように、ランダムになされたケーブル配線の中で、特定の超音波トランスデューサの配線のみを区別することにより、残りの超音波トランスデューサの接続関係の特定における基準を設定できるので、超音波トランスデューサの接続関係の測定を効率良く行うことが可能となる。
【0043】
また、超音波トランスデューサの接続関係に応じて、それらに接続される複数の同軸ケーブルを複数の群に分割して引き出すようにして、1つの群において隣接する2つの超音波トランスデューサの間の距離を大きくして、接続関係の特定を確実に行うようにしても良い。
【0044】
例えば、図6に示すように、超音波トランスデューサの接続関係が奇数番目か偶数番目かによって、それらに接続される複数の同軸ケーブルが2つの群に分割されている。これにより、隣接する2つの超音波トランスデューサの受信タイミングの違いを正確に測定することが容易となる。その際に、図5に示すように、フレキシブル基板25において、奇数番目の超音波トランスデューサが接続されるパターンを表側に配置し、偶数番目の超音波トランスデューサが接続されるパターンを裏側に配置するようにしても良い。
【0045】
次に、図1を参照しながら、本発明の一実施形態に係る超音波診断装置の動作について説明する。超音波プローブ2において、複数の超音波トランスデューサ24が、複数のケーブル23を介して接続コネクタ3aの複数の端子にランダムに接続されている。この超音波プローブ2が、接続コネクタ3を介して超音波診断装置本体4に接続されている。
【0046】
超音波診断の際に、診断目的に適合した超音波プローブ2が使用されるので、超音波診断装置本体4は、超音波プローブが接続されることで超音波プローブの記憶部から超音波プローブの種類及び/又は識別番号を取得することにより、あるいは、オペレータがシステム制御部44に接続されている情報入力部からプローブ情報を入力する等して超音波診断装置本体4にプローブ情報を与えることにより、これに基づいて超音波プローブの種類及び/又は識別番号を特定し、超音波診断装置本体4の格納部49に記憶されている超音波トランスデューサ24の接続関係データを読み取り、接続関係データに基づいて送受信部42を制御することによって超音波の送受信を行う。
【0047】
図7に示す従来の超音波診断装置101においては、超音波トランスデューサ24の番号と接続コネクタ3aの端子番号との間で順番の対応が取られ、それらがプローブケーブル23により規則正しく接続されているので、超音波診断装置本体104のシステム制御部64が接続選択スイッチ41を設定通りに制御することによって所望の超音波トランスデューサが接続される。
【0048】
一方、図1に示す本発明の一実施形態に係る超音波診断装置1においては、超音波トランスデューサ24の番号と接続コネクタ3aの端子番号との間で順番の対応が取られていなくて、それらがプローブケーブル23によりランダムに接続されていても良いので、超音波診断装置本体4のシステム制御部44は、複数の超音波トランスデューサ24と接続コネクタ3aの複数の端子との間の接続関係を表す接続関係データを入手する必要がある。
【0049】
そこで、図1を参照しながら既に説明したように、超音波診断装置本体4のシステム制御部44は、超音波トランスデューサの番号と端子の番号とを対応させる変換テーブル(TBL)50を作成し、システム制御部44に接続される格納部49に格納する。超音波ビーム走査を実施する際に、システム制御部44が、変換テーブル50の接続関係データを参照して接続選択スイッチ41を制御し、所望の超音波トランスデューサ24と送受信部42とを接続する。
【0050】
本発明は、配線工程の簡素化のために、超音波トランスデューサ24と接続コネクタ3aの端子とがランダムに接続された超音波プローブを積極的に使用することを目的とするものであるが、そのようなランダムに接続された超音波プローブに限らず、超音波トランスデューサ24と接続コネクタ3aの端子との間で1対1の対応を取って作成された従来の超音波プローブを使用しても良い。その場合においても、超音波診断装置本体4のシステム制御部44が、超音波トランスデューサの接続関係データを作成して格納部49に格納し、超音波診断のために超音波ビームを形成する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【図2】超音波ビームの形成動作を説明するための図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る超音波プローブの構成を示す概略図である。
【図4】固定点音源を用いて超音波トランスデューサの接続関係を判定する方法を説明するための図である。
【図5】移動点音源を用いて超音波トランスデューサの接続関係を判定する方法を説明するための図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る2分割配線された超音波プローブの構成を示す概略図である。
【図7】従来の超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0052】
1 超音波診断装置
2 超音波プローブ
3 接続コネクタ
3a 超音波プローブ側の接続コネクタ
3b 超音波診断装置本体側の接続コネクタ
4 超音波診断装置本体
21 超音波プローブ先端部
22 超音波プローブ接続部
23 プローブケーブル
24 超音波トランスデューサ
25 超音波トランスデューサ接続用フレキシブル基板
26 音響レンズ
27 中継基板
28 中間コネクタ
29 同軸ケーブル
41 接続選択スイッチ
42 送受信部
421 送信回路
422 受信回路
423 A/D変換器
43 信号処理部
44 システム制御部
45 画像処理部
46 DSC
47 D/A変換器
48 表示部
49 格納部
50 変換テーブル
51 接続関係検査判定部
53 増幅器
54 A/D変換器
55 記憶部
56 制御部
57 点音源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の超音波トランスデューサと、前記複数の超音波トランスデューサを超音波診断装置本体に接続するために用いられるコネクタに設けられ、前記複数の超音波トランスデューサに電気的に接続された複数の端子とを具備する超音波プローブを用いる超音波診断装置であって、
複数の駆動信号を前記複数の超音波トランスデューサにそれぞれ供給することにより、前記複数の超音波トランスデューサに超音波を送信させ、超音波エコーを受信した前記複数の超音波トランスデューサからそれぞれ出力される複数の検出信号を受信する送受信回路と、
前記超音波プローブに接続されるコネクタに設けられた複数の端子と前記送受信回路との間に接続され、前記複数の超音波トランスデューサと前記送受信回路との間の接続関係を切り換える接続選択スイッチと、
前記超音波プローブにおける前記複数の超音波トランスデューサと前記複数の端子との間の接続関係を表す接続関係データを格納する格納部と、
前記超音波プローブが前記超音波診断装置本体に接続された際に、前記超音波プローブに対応する接続関係データを前記格納部において検索し、接続関係データが前記格納部に存在しない場合に、音源から発生される試験音波信号を受信する前記複数の超音波トランスデューサの受信タイミングを計測することにより接続関係データを生成して前記格納部に格納すると共に、生成された接続関係データに基づいて前記複数の超音波トランスデューサと前記送受信回路とを接続し、接続関係データが前記格納部に存在する場合に、前記格納部から読み出された接続関係データに基づいて前記複数の超音波トランスデューサと前記送受信回路とを接続するように前記接続選択スイッチを制御する制御部と、
を具備する超音波診断装置。
【請求項2】
前記制御部が、前記送受信回路から出力される複数の検出信号に基づいて、前記複数の超音波トランスデューサの受信タイミングを計測する、請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
複数の超音波トランスデューサと、前記複数の超音波トランスデューサを超音波診断装置本体に接続するために用いられるコネクタに設けられた複数の端子とを具備する超音波プローブを用いる超音波診断装置において、前記複数の超音波トランスデューサと前記複数の端子との接続関係を判定する方法であって、
前記超音波プローブが前記超音波診断装置本体に接続された際に、前記超音波プローブに対応する接続関係データを前記超音波診断装置本体の格納部において検索する工程(a)と、
接続関係データが前記格納部に存在しない場合に、音源から発生される試験音波信号を受信する前記複数の超音波トランスデューサの受信タイミングを計測することにより接続関係データを生成して前記格納部に格納すると共に、生成された接続関係データに基づいて前記複数の超音波トランスデューサと前記送受信回路とを接続する工程(b)と、
接続関係データが前記格納部に存在する場合に、前記格納部から読み出された接続関係データに基づいて前記複数の超音波トランスデューサと前記送受信回路とを接続する工程(c)と、
を具備する超音波トランスデューサ接続関係判定方法。
【請求項4】
工程(b)が、前記音源として前記超音波診断装置の外部に存在する外部音源から試験音波信号を送信する工程を含む、請求項3記載の超音波トランスデューサ接続関係判定方法。
【請求項5】
工程(b)が、
前記音源として前記複数の超音波トランスデューサの内の少なくとも1つから試験音波信号を送信する工程と、
前記複数の超音波トランスデューサの送信面の前に設置された反射体によって反射された試験音波信号を前記複数の超音波トランスデューサにおいて受信することにより、前記複数の超音波トランスデューサにおける受信タイミングを計測する工程と、
を含む、請求項3記載の超音波トランスデューサ接続関係判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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