説明

超音波診断装置

【課題】所定のエコー強度未満の低エコー領域に対する生体組織の硬化領域の広がり具合をより容易に観察することができる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】エコー強度を表す情報を一軸とし、弾性を表す情報を他の一軸とする二次元マップMPであって、所定のエコー強度に相当する第一閾値未満の第一区画D1と前記第一閾値以上の区画とに分割され、さらにこの第一閾値以上の区画は、所定の弾性に相当する第二閾値未満の第二区画D2と前記第二閾値以上の第三区画D3とに分割されてなり、前記各区画D1,D2,D3には、互いに異なる表示形態の表示画像が作成されるような画像作成情報が設定されており、なおかつ前記第一区画D1にあっては、前記弾性に関する情報に応じた弾性画像が表示画像として作成されるような画像作成情報が設定されている二次元マップMPに基づいて表示画像を作成する表示画像作成部6を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関し、特に生体組織の硬さ又は軟らかさを表す弾性画像を表示することができる超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体の生体組織に超音波を送信して得られたエコー信号に基づいて生体組織における各部の弾性に関する物理量を算出して弾性情報を求めて生体組織の弾性画像を作成する超音波診断装置がある。この種の超音波診断装置において、被検体のどの部分の弾性画像を観察しているのかを容易に分かるようにするため、エコー信号の強度を輝度で表すことにより、生体組織の形態を表示するBモード画像上に弾性画像を重畳して表示する超音波診断装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、Bモード画像上に弾性画像が重ねられた重畳領域において、どちらか一方の画像を優先して表示するようにするのではなく、生体組織の弾性と、生体組織の形態とを同一画像上で相互に対比するため、重畳領域においても、Bモード画像と弾性画像とを両方観察したい場合がある。例えば、腫瘍については、周りの正常な組織と比べてエコー信号の強度が小さく、Bモード画像において低輝度で表示されるが、このような低エコー領域に対し、弾性画像における生体組織の硬化領域がどのように広がっているかを観察することにより、腫瘍の良悪性の診断を行なう診断法がある。このような診断法では、低エコー領域に対し、弾性画像における生体組織の硬化領域が小さいのか大きいのか、或いは同じ大きさなのかを観察するため、重畳領域においてBモード画像と弾性画像を両方観察できるようになっている必要がある。そこで、弾性画像とBモード画像とを同一画像上で相互に対比できる超音波診断装置として、Bモード画像と弾性画像とを所定の割合で加算した画像を表示する超音波診断装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−60853号公報
【特許文献2】特許第3932482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献2に記載された超音波診断装置によれば、Bモード画像と弾性画像とを所定の割合で加算することにより、弾性画像がBモード画像上に透過的に重ねて表示されることになる。しかし、Bモード画像は、弾性画像と加算される際に色相情報に変換されて表示されるため、低エコー領域がはっきりと認識できるわけではない。従って、低エコー領域よりも弾性画像における硬化領域が小さくなっていて、低エコー領域の中に、周りの組織と同じ弾性になっている非硬化領域が含まれる場合、この領域と周りの組織との区別が依然としてつきにくい。また、低エコー領域よりも弾性画像における硬化領域が大きくなっていて、低エコー領域の周りに広がる組織が低エコー領域と同様に硬化している硬化領域を有する場合、この領域と低エコー領域との区別が依然としてつきにくい。すなわち、上記特許文献2に記載された超音波診断装置においては、同じ弾性であるが輝度が異なる領域を区別することが困難であり、この結果Bモード画像における低エコー領域に対する弾性画像における生体組織の硬化領域の広がり具合を観察することには、依然として困難を伴っていた。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、所定のエコー強度未満の低エコー領域に対する生体組織の硬化領域の広がり具合をより容易に観察することができる超音波診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、第1の観点の発明は、被検体の生体組織に超音波を送信して得られたエコーの強度を表す情報を生体組織の各部について求めるエコー情報処理手段と、前記エコー信号に基づいて生体組織における各部の弾性を表す情報を求める弾性情報処理手段と、前記エコー強度を表す情報を一軸とし、前記弾性を表す情報を他の一軸とする二次元マップであって、前記エコー強度を表す情報と前記弾性を表す情報とに対応する画像作成情報が設定された二次元マップに基づいて表示画像を作成する表示画像作成手段と、を備え、前記二次元マップは、第一閾値を境界として所定のエコー強度未満の第一区画と前記所定のエコー強度以上の区画とに分割され、さらに前記所定のエコー強度以上の区画は、第二閾値を境界として所定の弾性以上の第二区画と前記所定の弾性未満の第三区画とに分割されてなり、前記各区画には、互いに異なる表示形態の表示画像が作成されるような画像作成情報が設定されており、なおかつ前記第一区画にあっては、前記弾性に関する情報に応じた弾性画像が表示画像として作成されるような画像作成情報が設定されていることを特徴とする超音波診断装置である。
【0007】
第2の観点の発明は、第1の観点の発明において、前記第一閾値及び前記第二閾値を設定する閾値設定手段を備えることを特徴とする超音波診断装置である。
【0008】
第3の観点の発明は、第1又は2の観点の発明において、前記第一区画の画像作成情報は、前記弾性を表す情報に応じて異なるように設定された色相情報であり、前記第二区画の画像作成情報は、前記第一区画と異なるように設定された色相情報であり、前記第三区画の画像作成情報は、前記エコー強度を表す情報に応じて異なるように設定されたグレースケール情報であることを特徴とする超音波診断装置である。
【0009】
第4の観点の発明は、第1〜3の観点の発明において、前記エコー情報処理手段として、前記エコーの強度を表す信号の振幅を輝度値としてBモード画像データを作成するBモード画像処理手段を備え、また、前記弾性情報処理手段として、前記弾性を表す情報を求めて弾性画像データを作成する弾性画像処理手段を備え、さらに、Bモード画像データと弾性画像データとを所定の割合で加算して合成画像を作成する合成画像作成手段を備えており、前記表示画像作成手段は、前記二次元マップに基づいて作成された画像と前記合成画像のいずれかを選択して表示画像とする表示画像選択部を有することを特徴とする超音波診断装置である。
【0010】
第5の観点の発明は、第4の観点の発明において、前記表示選択手段によって選択される画像には、さらにBモード画像が含まれることを特徴とする超音波診断装置である。
【0011】
第6の観点の発明は、第4,5のいずれか一の観点の発明において、前記エコー強度を表す情報は、Bモード画像処理手段によって得られるBモード画像の輝度情報であることを特徴とする超音波診断装置である。
【0012】
第7の観点の発明は、第1〜6のいずれか一の観点の発明において、前記弾性を表す情報は、生体組織の弾性を表す物理量である生体組織の変位、歪み又は弾性率のいずれかであることを特徴とする超音波診断装置である。
【0013】
第8の観点の発明は、被検体の生体組織に超音波を送信して得られたエコーの強度を表す情報を生体組織の各部について求めるエコー情報処理手段と、前記エコー信号に基づいて生体組織における各部の弾性を表す情報を求める弾性情報処理手段と、前記エコー強度を表す情報を一軸とし、前記弾性を表す情報を他の一軸とする二次元マップであって、前記エコー強度を表す情報と前記弾性を表す情報とに対応する画像作成情報が設定された二次元マップに基づいて表示画像を作成する表示画像作成手段と、を備え、前記二次元マップは、所定の弾性未満の区画と、所定の弾性以上の区画とに分割されてなり、さらに前記所定の弾性以上の区画は、所定のエコー強度未満の区画と前記所定のエコー強度以上の区画とに分割されてなり、前記三つの各区画には、互いに異なる表示形態の表示画像が作成されるような画像作成情報が設定されていることを特徴とする超音波診断装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、前記所定のエコー強度未満になっている低エコー領域については、前記二次元マップにおける第一区画の画像作成情報に基づいて弾性画像が作成される。また、非低エコー領域については、前記所定の弾性以上の硬化領域は、第二区画の画像作成情報に基づいて表示画像が作成され、前記所定の弾性未満の非硬化領域は、第三区画の画像作成情報に基づいて表示画像が作成される。ここで、前記低エコー領域の一部に生体組織の硬化領域が存在している場合、すなわち前記低エコー領域に、周りの非低エコー領域と同じ弾性になっている非硬化領域が含まれる場合、第一区画の画像作成情報と第三区画の画像作成情報は、異なる表示形態の表示画像が作成される画像作成情報になっているため、前記低エコー領域の非硬化領域と、前記非低エコー領域の非硬化領域とが、異なる表示形態で表示される。さらに、低エコー領域については、第一区画の画像作成情報に基づいて、前記弾性に関する情報に応じた弾性画像が作成されるので、低エコー領域における硬化領域と非硬化領域とが把握される。このようなことから、低エコー領域に硬化領域と非硬化領域とが存在することを容易に観察することができる。
【0015】
一方、生体組織の硬化領域が、前記低エコー領域に加えて前記非低エコー領域にも存在する場合、前記非低エコー領域における硬化領域については、前記二次元マップの第二区画の画像作成情報に基づいて表示画像が作成される。また、低エコー領域については第一区画の画像作成情報に基づいて表示画像が作成される。ここで、第一区画の画像作成情報と第二区画の画像作成情報も、異なる表示形態の表示画像が作成される画像作成情報になっているため、低エコー領域における硬化領域と、非低エコー領域における硬化領域とが、異なる表示形態で表示される。さらに、非低エコー領域において前記所定の弾性未満の非硬化領域については、第三区画の画像作成情報に基づいて表示画像が作成される。ここで、第三区画の画像作成情報と第二区画の画像作成情報も、異なる表示形態の表示画像が作成される画像作成情報になっている。従って、非低エコー領域における硬化領域と非硬化領域とが異なる表示形態で表示される。このようなことから、非低エコー領域、すなわち低エコー領域外に、硬化領域が存在することを容易に観察することができる。
【0016】
以上により、低エコー領域に対する生体組織の硬化領域の広がり具合をより容易に観察することができる。
【0017】
また、前記二次元マップとして、所定の弾性以上の区画と、前記所定の弾性未満の区画とに分割されてなり、さらに前記所定の弾性以上の区画は、所定のエコー強度未満の区画と前記所定のエコー強度以上の区画とに分割されてなる二次元マップを有する他の発明によれば、前記硬化領域が、前記低エコー領域に加えて前記非低エコー領域にも存在する場合、前記非低エコー領域における硬化領域については、前記二次元マップにおける前記所定の弾性以上であって前記所定のエコー強度以上の区画の画像作成情報に基づいて表示画像が作成される。また、前記硬化領域になっている前記低エコー領域については、前記所定の弾性以上であって前記所定のエコー強度未満の区画の画像作成情報に基づいて表示画像が作成される。さらに、前記非低エコー領域において前記非硬化領域については、前記所定の弾性未満の区画の画像作成情報に基づいて表示画像が作成される。従って、前記二次元マップにおける各区画には互いに異なる表示形態の表示画像が作成されるような画像作成情報が設定されているので、非低エコー領域、すなわち低エコー領域外に、硬化領域が存在することを容易に観察することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態について説明する。図1は、本発明の第一実施形態における超音波診断装置の構成を示すブロック図、図2は、二次元マップの一例を示す図、図3〜図5は、表示画像の一例を示す図である。
【0019】
図1に示す超音波診断装置1は、超音波の送受信を行う超音波プローブ2と、この超音波プローブ2を駆動させてスキャン面を走査し、また前記超音波プローブ2で得られたエコー信号について、整相加算処理等の信号処理を行う送受信部3とを備えている。また、前記超音波診断装置1は、エコー情報処理部4、弾性情報処理部5、表示画像作成部6、表示部7を備える。さらに、前記超音波診断装置1は、装置各部を制御する制御部8と、操作者が指示を入力する操作部9とを備える。
【0020】
前記エコー情報処理部4は、前記送受信部3からの音線毎のエコー信号に対し、対数圧縮、包絡線検波等の信号処理を行って生体組織の各部についてのエコー強度を求める。そして、前記エコー情報処理部4は、生体組織の各部について得られたエコー強度を前記表示画像作成部6へ出力する。前記エコー情報処理部4は、本発明におけるエコー情報処理手段の実施の形態の一例である。また、本発明におけるエコー強度を表す情報は、本例ではエコー強度そのものである。
【0021】
前記弾性情報処理部5は、前記送受信部3からの音線毎のエコー信号に基づいて生体組織の弾性を表す情報として、生体組織における各部の変形による変位を算出する。具体的には、同一音線上における時間的に異なる2つのエコー信号の相関処理を行って各部の変位を算出する。そして、前記弾性情報処理部5は、算出された生体組織における各部の変位を前記表示画像作成部6へ出力する。前記弾性情報処理部5は、本発明における弾性情報処理手段の実施の形態の一例である。
【0022】
前記表示画像作成部6は、前記エコー情報処理部4から入力されたエコー強度と、前記弾性情報処理部5から入力された変位とから、図2に示す二次元マップMPに基づいて、前記表示部7に表示する表示画像を作成する。この二次元マップMPは、横軸がエコー強度であり、縦軸が変位となっている。そして、前記二次元マップMPは、所定のエコー強度である第一閾値TH1未満の第一区画D1と、前記第一閾値TH1以上の区画とに分割されている。第一区画D1は、本発明における第一区画に相当する。さらに、前記二次元マップMPは、前記第一閾値TH1以上の区画が、所定の変位である第二閾値TH2以下の第二区画D2と前記第二閾値TH2よりも大きい第三区画D3とに分割されている。ちなみに、変位が小さいと弾性は大きく(硬い)、一方で変位が大きいと弾性は小さい(軟らかい)。第二区画D2は、本発明における所定の弾性以上の第二区画に相当し、また第三区画D3は本発明における所定の弾性未満の第三区画に相当する。
【0023】
前記各区画D1〜D3には、互いに異なる表示形態の表示画像が作成されるような画像作成情報が設定されている。具体的には、前記第一区画D1の画像作成情報は、変位に応じて異なるように設定された色相情報であり、変位が小さい(すなわち弾性大)部分は青、変位が大きい(すなわち弾性小)部分は黄、変位が中間の部分は緑の色相情報が設定されている。ちなみに、この色相情報は、青から次第に緑に変化し、さらに緑から次第に黄に変化している。また、前記第二区画D2の画像作成情報は、第一区画D1と異なるように設定された色相情報であり、赤の色相情報が設定されている。さらに、前記第三区画D3の画像作成情報は、エコー強度に応じて異なるように設定されたグレースケール情報であり、エコー強度が小さくなるほど輝度が小さくなり、エコー強度が大きくなるほど輝度が大きくなるグレースケール情報が設定されている。
【0024】
前記表示画像作成部6で作成された表示画像は、前記表示部7に表示される。この表示部7に表示される表示画像は、前記第一閾値TH1未満のエコー強度になっている領域については、変位に応じて青、緑、黄の色相が付与された画像であり、前記第一閾値TH1以上のエコー強度になっている領域については、前記第二閾値TH2よりも大きな変位になっている領域については白黒画像であり、また第二閾値TH2以下の変位になっている領域については赤の色相が付与された画像である。
【0025】
前記制御部8は、前記送受信部3、前記エコー情報処理部4、前記弾性情報処理部5、前記表示画像作成部6及び前記表示部7を制御する。また、前記操作部9では、操作者によって各種の指示が入力されるようになっており、この操作部9からの指示信号に基づいて、前記制御部8による制御が行なわれる。
【0026】
前記第一閾値TH1及び第二閾値TH2は、前記操作部9において入力され、前記制御部8によって前記表示画像作成部6に設定される。これにより、低エコーと判断するエコー強度の閾値及び硬化していると判断する変位の閾値を自由に設定することができるようになっている。前記制御部8及び前記操作部9は、本発明における閾値設定手段の実施の形態の一例である。
【0027】
さて、本例の超音波診断装置1の作用について説明すると、前記送受信部3は、前記超音波プローブ2から被検体の生体組織に超音波を送信させ、エコー信号を取得する。前記超音波プローブ2からの超音波の送受信時には、前記超音波プローブ2を生体組織の表面に当接させた状態で、前記超音波プローブ2による圧迫とその弛緩を繰り返す。
【0028】
前記エコー情報処理部4は、前記送受信部3からのエコー信号の処理を行ってエコー強度を求め、これを前記表示画像作成部6へ出力する。また、前記弾性情報処理部5は、前記送受信部3からの同一音線上における時間的に異なる2つのエコー信号に基づいて、生体組織における各部の変位を算出し、これを前記表示画像作成部6へ出力する。
【0029】
前記表示画像作成部6は、生体組織の各部について、前記エコー情報処理部4からのエコー強度と前記弾性情報処理部5からの変位とに対応する画像作成情報を特定し、表示画像を作成する。例えば、エコー強度が前記第一閾値TH1未満である場合は、前記第一区画D1の画像作成情報を用いて表示画像が作成される。具体的には、変位に対応する色相情報が特定され、表示画像が作成される。また、エコー強度が前記第一閾値TH1以上である場合は、変位が第二閾値TH2以下である場合は第二区画D2の画像作成情報を用いて表示画像が作成される。具体的には、赤の色相情報が付与され表示画像が作成される。一方、エコー強度が前記第一閾値TH1以上である場合に、変位が第二閾値TH2よりも大きい場合は第三区画D3の画像作成情報を用いて表示画像が作成される。具体的には、エコー強度に対応する輝度情報が特定され、表示画像が作成される。
【0030】
前記表示画像作成部6で作成された表示画像は、前記表示部7に表示される。表示画像の具体例について、図3〜図5に基づいて説明する。図3〜図5は、表示画像の一例を示す図である。
【0031】
先ず、図3に基づいて説明する。図3は、前記第一閾値TH1未満のエコー強度になっている低エコー領域よりも、生体組織の硬化領域が小さくなっている場合(低エコー領域の一部に生体組織の硬化領域が存在している場合)の表示画像を示す図である。符号RDで示す大きな楕円が前記第一閾値TH1未満のエコー強度になっている低エコー領域であり、符合RDHで示す小さな楕円が硬化領域である。また、低エコー領域RDの中において、硬化領域RDHを除いた領域は、前記第二閾値TH2よりも大きな変位が算出された非硬化領域RDSである。さらに、低エコー領域RDの外側の領域RBは、前記第一閾値TH1以上のエコー強度になっている非低エコー領域である。この非低エコー領域RBは、図3においては、前記第二閾値TH2よりも大きな変位が算出されて非硬化領域RDSと同じ弾性を有し、硬化していない組織である。
【0032】
図3では、低エコー領域RDは、前記第一閾値TH1未満のエコー強度になっているため、前記二次元マップMPの第一区画D1の画像作成情報に基づいて表示画像が作成されている。具体的には、硬化領域RDHについては青で表示され、非硬化領域RDSについては緑で表示されている。また、非低エコー領域RBは、前記第一閾値TH1以上のエコー強度になっており、なおかつ前記第二閾値TH2よりも大きな変位が算出されているため、前記二次元マップMPの第三区画D3の画像作成情報に基づいて表示画像が作成され、エコー強度に応じた白黒表示がされている。このように、低エコー領域RDの中における非硬化領域RDSと、この非硬化領域RDSと同じ弾性で輝度が異なる非低エコー領域RBとが異なる表示形態で表示されるので、両者を明確に区別することができる。また、低エコー領域R1の中は弾性に応じた画像が表示され、硬化領域R2を把握することができる。従って、低エコー領域よりも生体組織の硬化領域が小さくなっていることを容易に観察することができる。
【0033】
一方、図3と同様の輝度分布と弾性分布を有する場合に、従来のようにBモード画像と弾性画像とを所定の割合で加算した場合、非硬化領域RDSと非低エコー領域RBとは、同じ弾性を有するために似た色調になって区別しずらい。例えば、非硬化領域RDS及び非低エコー領域RBにおける変位が緑に相当する場合、非硬化領域RDSは、非低エコー領域RBよりも低輝度であるために、非低エコー領域RBの緑よりもやや黒っぽい緑で表示されるが、両者をはっきりと区別しずらい。従って、低輝度領域よりも生体組織の硬化領域が小さくなっていることが分かりずらい。
【0034】
次に、図4に基づいて説明する。図4は、低エコー領域R1と生体組織の硬化領域が同じ大きさになっている場合の表示画像を示す図である。この場合、非硬化領域RDSは存在しない。この図4では、低エコー領域RDの全体が青で表示され、また非低エコー領域RBは、白黒表示がされる。
【0035】
次に、図5に基づいて説明する。図5は、低エコー領域RDよりも生体組織の硬化領域が大きくなっている場合(生体組織の硬化領域が低エコー領域RDに加えて、前記非低エコー領域にも存在する場合)の表示画像を示す図である。この図5において、低エコー領域RDよりも大きな楕円が、前記第二閾値TH2以下の変位が算出された硬化領域RHである。この硬化領域RHには、非低エコー領域RBが含まれており、硬化領域RHに含まれる非低エコー領域RB(硬化領域RHのうち、低エコー領域RDを除いた領域)を、硬化非低エコー領域RBHとする。また、非低エコー領域RBの中で、硬化非低エコー領域RBH以外の領域を非硬化非低エコー領域RBSとする。この非硬化非低エコー領域RBSは、前記第二閾値TH2よりも大きな変位が算出された領域である。
【0036】
図5では、低エコー領域RDは、上記と同様に前記二次元マップMPの第一区画D1の画像作成情報に基づいて表示画像が作成され、低エコー領域RDの全体が青で表示される。また、硬化非低エコー領域RBHについては、前記第一閾値TH1以上のエコー強度になっており、なおかつ前記第二閾値TH2以下の変位が算出されているため、前記二次元マップMPの第二区画D2の画像作成情報に基づいて表示画像が作成され、赤で表示されている。さらに、非硬化非低エコー領域RBSについては、前記第一閾値以上のエコー強度になっており、なおかつ前記第二閾値TH2よりも大きな変位が算出されているため、前記二次元マップMPの第三区画D3の画像作成情報に基づいて表示画像が作成され、エコー強度に応じた白黒表示がされている。このように、硬化領域RHの中における低エコー領域RDと、この低エコー領域RDと同じ弾性で輝度が異なる硬化非低エコー領域RBHとが異なる表示形態で表示されるので、両者を明確に区別することができる。また、硬化非低エコー領域RBHと非硬化非低エコー領域RBSも異なる表示形態で表示され、両者を明確に区別することができる。従って、低エコー領域よりも生体組織の硬化領域が大きくなっていることを容易に観察することができる。
【0037】
一方、図5と同様の輝度分布と弾性分布を有する場合に、従来のようにBモード画像と弾性画像とを所定の割合で加算した場合、低エコー領域RDと硬化非低エコー領域RBHとは、同じ弾性を有するために似た色調になって区別しずらい。例えば、低エコー領域RD及び硬化非低エコー領域RBHにおける変位が青に相当する場合、低エコー領域RDは、硬化非低エコー領域RBHよりも低輝度であるために、硬化非低エコー領域RBHの青よりもやや黒っぽい青で表示されるが、両者をはっきりと区別しずらい。従って、低輝度領域よりも生体組織の硬化領域が大きくなっていることが分かりずらい。
【0038】
以上説明した本例の超音波診断装置1によれば、低エコー領域に対する生体組織の硬化領域の広がり具合を容易に観察することができる。
【0039】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について説明する。図6は、本発明の第二実施形態における超音波診断装置の構成を示すブロック図、図7は、図6に示す超音波診断装置における弾性画像処理部の詳細構成を示すブロック図、図8は、図6に示す超音波診断装置における表示画像作成部の詳細構成を示すブロック図である。図6において、前記第一実施形態と同一の構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0040】
図6に示す超音波診断装置20は、前記送受信部3からのエコー信号に基づいてBモード画像データを作成するBモード画像処理部21と、前記送受信部3からのエコー信号に基づいて、弾性画像データを作成する弾性画像処理部22とを有する。
【0041】
前記Bモード画像処理部21は、前記送受信部3からの音線毎のエコー信号に対し、対数圧縮、包絡線検波等の信号処理を行って生体組織の各部についてのエコー強度を表す信号を得て、この信号の振幅を輝度値としてBモード画像データを作成する。前記Bモード画像処理部21は、本発明におけるBモード画像処理手段の実施の形態の一例であり、またエコー情報処理手段の実施の形態の他例である。さらに、本発明におけるエコー強度を表す情報は、本例では輝度情報である。
【0042】
前記弾性画像処理部22は、本発明における弾性画像処理手段の実施の形態の一例であり、図7に示すように、変位算出部221と弾性画像作成部222とを有する。前記変位算出部221は、前記送受信部3からの音線毎のエコー信号に基づいて生体組織の弾性を表す情報として、生体組織における各部の変形による変位を算出する。具体的には、第一実施形態と同様に、同一音線上における時間的に異なる2つのエコー信号の相関処理を行って各部の変位を算出する。
【0043】
また、前記弾性画像作成部222は、前記変位算出部221によって算出された生体組織における各部の変位を色相情報に変換し、変位(弾性)に応じて異なる色相で表される弾性画像データを作成する。
【0044】
本例の表示画像作成部6は、図8に示すように、メモリ601、第一画像作成部602、第二画像作成部603、表示画像選択部604を有する。前記メモリ601には、前記Bモード画像処理部21からのBモード画像データと、前記弾性画像処理部22からの弾性画像データとが記憶される。前記第一画像作成部601は、前記メモリ601に記憶されたBモード画像データと弾性画像データとを所定の割合で加算して、両画像データが合成された合成画像を作成する。前記第一画像作成部602は、本発明における合成画像作成手段の実施の形態の一例である。
【0045】
前記第二画像作成部603は、Bモード画像データにおける輝度情報と、弾性画像データにおける変位情報とから、図2に示す二次元マップMPに基づいて、第一実施形態と同様にして画像を作成する。ただし、本例では、図2に示す二次元マップMPの横軸は輝度情報になり、前記第一閾値TH1は輝度値になる。
【0046】
前記表示画像選択部604は、前記第一画像作成部602によって作成された合成画像と、前記第二画像作成部603によって作成された画像と、前記メモリ601に記憶されたBモード画像のいずれかを選択して表示画像とする。そして、前記表示画像選択部604によって選択された表示画像が前記表示部7に表示される。
【0047】
本例の超音波診断装置20によっても、第一実施形態と同様の効果を得ることができるほか、前記二次元マップMPに基づいて作成された画像と、Bモード画像及び弾性画像とが合成された合成画像と、Bモード画像とを任意に選択して表示することができ、多様な診断ニーズに応えることができる。
【0048】
以上、本発明を前記実施形態によって説明したが、この発明はその主旨を変更しない範囲で種々変更実施可能なことはもちろんである。例えば、生体組織の弾性を表す情報としては、生体組織の変位の他、生体組織の歪みや弾性率があり、生体組織からのエコー信号に基づいて、生体組織における各部の歪み又は弾性率を算出して上記と同様に弾性画像を作成してもよい。
【0049】
また、前記表示画像作成部6は、図2に示す前記二次元マップMPの代わりに、図9に示す二次元マップMP′に基づいて前記表示部7に表示する表示画像を作成してもよい。この二次元マップMP′は、前記第二閾値TH2よりも大きい区画D3′と、前記第二閾値TH2以下の区画とに分割され、さらにこの第二閾値TH2以下の区画は、前記第一閾値TH1未満の区画D1′と、前記第一閾値TH1以上の区画D2′とに分割されている。前記区画D3′は、本発明における所定の弾性未満の区画に相当し、前記区画D1′は、本発明における所定の弾性以上であって所定のエコー強度未満の区画に相当し、前記区画D2′は、本発明における所定の弾性以上であって所定のエコー強度以上の区画に相当する。
【0050】
前記各区画D1′〜D3′には、互いに異なる表示形態の表示画像が作成されるような画像作成情報が設定されている。具体的には、前記区画D1′の画像作成情報は、青の色相情報であり、前記区画D2′の画像作成情報は、赤の色相情報である。また、前記区画D3′の画像作成情報は、エコー強度に応じて異なるように設定されたグレースケール情報であり、エコー強度が小さくなるほど輝度が小さくなり、エコー強度が大きくなるほど輝度が大きくなるグレースケール情報が設定されている。
【0051】
前記二次元マップMP′に基づいて表示画像を作成することにより、低エコー領域よりも生体組織の硬化領域が大きくなっている場合に、図5に示すような表示画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第一実施形態における超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【図2】二次元マップの一例を示す図である。
【図3】表示画像の一例を示す図である。
【図4】表示画像の一例を示す図である。
【図5】表示画像の一例を示す図である。
【図6】本発明の第二実施形態における超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【図7】図6に示す超音波診断装置における弾性画像処理部の詳細構成を示すブロック図である。
【図8】図6に示す超音波診断装置における表示画像作成部の詳細構成を示すブロック図である。
【図9】二次元マップの他例を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1,20 超音波診断装置
4 エコー情報処理部
5 弾性情報処理部
6 表示画像作成部
8 制御部(閾値設定手段)
9 操作部(閾値設定手段)
21 Bモード画像処理部
22 弾性画像処理部
602 第一画像作成部(合成画像作成手段)
604 表示画像選択部
MP,MP′ 二次元マップ
D1 第一区画
D2 第二区画
D3 第三区画

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の生体組織に超音波を送信して得られたエコーの強度を表す情報を生体組織の各部について求めるエコー情報処理手段と、
前記エコー信号に基づいて生体組織における各部の弾性を表す情報を求める弾性情報処理手段と、
前記エコー強度を表す情報を一軸とし、前記弾性を表す情報を他の一軸とする二次元マップであって、前記エコー強度を表す情報と前記弾性を表す情報とに対応する画像作成情報が設定された二次元マップに基づいて表示画像を作成する表示画像作成手段と、を備え、
前記二次元マップは、第一閾値を境界として所定のエコー強度未満の第一区画と前記所定のエコー強度以上の区画とに分割され、さらに前記所定のエコー強度以上の区画は、第二閾値を境界として所定の弾性以上の第二区画と前記所定の弾性未満の第三区画とに分割されてなり、前記各区画には、互いに異なる表示形態の表示画像が作成されるような画像作成情報が設定されており、なおかつ前記第一区画にあっては、前記弾性に関する情報に応じた弾性画像が表示画像として作成されるような画像作成情報が設定されている
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記第一閾値及び前記第二閾値を設定する閾値設定手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記第一区画の画像作成情報は、前記弾性を表す情報に応じて異なるように設定された色相情報であり、前記第二区画の画像作成情報は、前記第一区画と異なるように設定された色相情報であり、前記第三区画の画像作成情報は、前記エコー強度を表す情報に応じて異なるように設定されたグレースケール情報であることを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記エコー情報処理手段として、前記エコーの強度を表す信号の振幅を輝度値としてBモード画像データを作成するBモード画像処理手段を備え、
また、前記弾性情報処理手段として、前記弾性を表す情報を求めて弾性画像データを作成する弾性画像処理手段を備え、
さらに、Bモード画像データと弾性画像データとを所定の割合で加算して合成画像を作成する合成画像作成手段を備えており、
前記表示画像作成手段は、前記二次元マップに基づいて作成された画像と前記合成画像のいずれかを選択して表示画像とする表示画像選択部を有する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記表示選択手段によって選択される画像には、さらにBモード画像が含まれることを特徴とする請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記エコー強度を表す情報は、Bモード画像処理手段によって得られるBモード画像の輝度情報であることを特徴とする請求項4又は5に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記弾性を表す情報は、生体組織の弾性を表す物理量である生体組織の変位、歪み又は弾性率のいずれかであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
被検体の生体組織に超音波を送信して得られたエコーの強度を表す情報を生体組織の各部について求めるエコー情報処理手段と、
前記エコー信号に基づいて生体組織における各部の弾性を表す情報を求める弾性情報処理手段と、
前記エコー強度を表す情報を一軸とし、前記弾性を表す情報を他の一軸とする二次元マップであって、前記エコー強度を表す情報と前記弾性を表す情報とに対応する画像作成情報が設定された二次元マップに基づいて表示画像を作成する表示画像作成手段と、を備え、
前記二次元マップは、所定の弾性以上の区画と、前記所定の弾性未満の区画とに分割されてなり、さらに前記所定の弾性以上の区画は、所定のエコー強度未満の区画と前記所定のエコー強度以上の区画とに分割されてなり、前記三つの各区画には、互いに異なる表示形態の表示画像が作成されるような画像作成情報が設定されている
ことを特徴とする超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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