説明

超音波診断装置

【課題】所定のプロトコルに従ってフラッシュスキャンを行うFEIモードにおいて、任意のタイミングで簡便にフラッシュスキャンを実行し、高輝度領域が組織か造影剤による染影領域であるかを適宜判断することができる超音波診断装置を提供すること。
【解決手段】FEIのベースプロトコル実行中において、割り込みプロトコルを任意のタイミングで実行させる。例えば、フラッシュスキャン実行プロトコルを割り込みプロトコルとすることで、撮影領域に存在する造影剤バブルを任意のタイミングで簡単且つ迅速に破壊することができる。その結果、操作者は、造影剤流入開始から染影までの状況を所望のタイミングで観察することができ、高輝度領域が組織であるのか造影剤による染影であるのかを、簡単且つ迅速に判断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のプロトコルに従ってフラッシュスキャン(間歇送信)を行うフラッシュエコーイメージング(FEI:Flash Echo Imaging)において、任意のタイミングでフラッシュスキャンが実行可能な超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は超音波パルス反射法により、体表から生体内の軟組織の断層像を無侵襲に得る医療用画像機器である。この超音波診断装置は、他の医療用画像機器に比べ、小型で安価、X線などの被爆がなく安全性が高い、血流イメージングが可能等の特長を有し、心臓、腹部、泌尿器、および産婦人科などで広く利用されている。
【0003】
この超音波画像診断装置においては、種々の撮影法による生体情報の映像化が可能である。例えばコントラストエコー法は、被検体の血管内に微小気泡(マイクロバブル)等からなる超音波造影剤を投与することで、超音波散乱エコーの増強を図るものである。また、このコントラストエコー法では、FEI法に代表されるように、高音圧で造影剤を破壊したときに発生する非線形エコー信号を映像化する場合がある(例えば、特許文献1参照)。この様な手法においては、高音圧で造影剤を破壊させるフレームを間歇的に制御するモード(間歇送信モード、FEIモード)が必須となっている。通常この間歇送信モードは、予め設定されたベースプロトコルに従って実行される。
【0004】
例えばECGを利用した心筋のFEIにおいては、まず、モニタスキャンによってモニタリングをし、被検体のECG波形のR波で同期をとりながら心筋収縮末期の数心拍に一回のトリガをかけてフレーム走査を実行し、被検体の所定断面を映像化する。続いて、モニタリングを継続しつつ造影剤を投与すると、撮影断面が次第に染影され、組織にバブルが充満されたことが認識できるようになる。
【0005】
造影剤投与後しばらく経つと撮影領域に造影剤が充満することになる。図9に示すように、この状況をBモード画像で観察すると、多くの領域が染影されているため、高輝度領域が高輝度のエコー(陳旧性の心筋梗塞部位)によるものであるのか、又は造影剤によるものであるのかを判断できない場合がある。また、疑似ドプラ法による観察においても、モーションアーティファクトと造影剤による染影とを区別できない場合がある。
【0006】
そこで、通常のFEIにおいては、図10に示すように、限られた造影剤の量で間歇送信を変化させて、高音圧送信により走査面内のバブルを破壊し、再度造影剤の流入による染影の濃淡の変化を確認する。これにより、高輝度領域が組織であるか、造影剤による染影領域であるかを判断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−70304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した手法によれば、予め設定されたベースプロトコルに従って実行されるため、任意のタイミングで確認することができない。従って、操作者は、次のフラッシュスキャンまで待機する必要がある。また、複数回の確認を希望する場合には、その回数に相当するフラッシュエコーを実現する必要があり、その分の待機を余儀なくされ、効率の点で問題がある。
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、所定のプロトコルに従ってフラッシュスキャンを行うFEIモードにおいて、任意のタイミングで簡便にフラッシュスキャンを実行し、高輝度領域が組織か造影剤による染影領域であるかを適宜判断することができる超音波診断装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0011】
請求項1に記載の発明は、造影剤バブルが投与された被検体の所定部位を超音波で走査し超音波画像を取得する超音波診断装置において、前記被検体に対し超音波を送信し、当該超音波に基づくエコー信号を受信する超音波プローブと、前記超音波プローブを駆動する駆動信号を生成し、前記超音波プローブに印加する駆動信号生成手段と、前記エコー信号に基づいて、超音波画像を生成する画像生成手段と、前記超音波画像を表示する表示手段と、前記造影剤バブルを崩壊させる第1の音圧による第1の超音波送信と、前記造影剤バブルを壊さない音圧であって血流の環流を画像化するための第2の音圧による第2の超音波送信と、がそれぞれ所定の周期で繰り返される第1のプロトコルと、前記第1のプロトコルとは異なるプロトコルであって少なくとも一回の前記第1の超音波送信を含む第2のプロトコルと、が実行されるように、前記駆動信号生成手段を制御する制御手段と、前記第2のプロトコルに従う制御を割り込み動作として指示するための指示手段と、を具備し、前記制御手段は、前記第1のプロトコルが前記被検体の心臓の収縮末期において実行されるように、前記被検体の心電図信号のR波をトリガとして所定の遅延時間経過後に前記第1のプロトコルを実行すると共に、前記第2のプロトコルに従う制御が指示された場合には、前記第2のプロトコルが前記所定の遅延時間内における割り込み動作として実行されるように、前記駆動信号生成手段を制御すること、を特徴とする超音波診断装置である。
【発明の効果】
【0012】
以上本発明によれば、所定のプロトコルに従ってフラッシュスキャンを行うFEIモードにおいて、任意のタイミングで簡便にフラッシュスキャンを実行し、高輝度領域が組織か造影剤による染影領域であるかを適宜判断することができる超音波診断装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本実施形態に係る超音波診断装置10の構成を示した図である。
【図2】図2は、プロトコル開始ボタン26の外観の一例を示した図である。
【図3】図3は、FEIにおけるスキャンシーケンスを説明するため図である。
【図4】図4は、FEIを実行するプロトコルを説明するための図である。
【図5】図5は、プロトコル割り込み機能に基づくプロトコル割り込みを含むスキャンシーケンス図、ECG波形図等を示したものである。
【図6】図6は、プロトコル割り込み機能について説明するための概念図である。
【図7】図7は、本超音波診断装置が有する表示機能によってモニター29に表示されたフラッシュ前段画像A(静止画像)と現在撮影中のリアルタイム画像B(動画像)とを示した図である。
【図8】図8は、本超音波診断装置が有する表示機能によってモニター29に同時に表示されたフラッシュ前段画像A(静止画像)、リアルタイム画像B(動画像)、フラッシュ後段画像C(静止画像)を示している。
【図9】図9は、FEIを説明するための図である。
【図10】図10は、FEIを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第1実施形態及び第2実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。なお、以下の説明において、造影剤バブルを崩壊させるための高音圧による超音波走査をフラッシュスキャンと呼び、造影剤バブルを壊さない音圧であって血流の再環流(replenishment)を画像化するための低音圧による超音波走査をモニタリングスキャンと呼ぶ。
【0015】
(第1の実施形態)
まず、本実施形態に係る超音波診断装置10の構成を、図1を参照しながら説明する。図1に示すように、本超音波診断装置10は、超音波プローブ11、送受信部13、信号処理部15、画像生成部17、ホストCPU19、記憶部21、プロトコルメモリ23、入力装置24、当該入力装置24に設けられたプロトコル設定UI25及びプロトコル開始ボタン26、モニター29、ECG30を具備している。
【0016】
超音波プローブ11は、パルサからの駆動信号に基づき超音波を発生し、被検体からの反射波を電気信号に変換する複数の圧電振動子、当該圧電振動子に設けられる整合層、当該圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有している。当該超音波プローブ11から被検体に送信された超音波は、体内組織や血流、造影剤バブル等の音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、エコー信号として超音波プローブ12に受信される。
【0017】
送受信部13は、FEIにおいて、モニタリングスキャン用の低音圧超音波を発生するための駆動パルス、及びフラッシュスキャン用の高音圧超音波を発生するための駆動パルスの二種類を発生する。このモニタリングスキャン用とフラッシュスキャン用との二種類の超音波送信を実現するため、送受信部13は、それぞれの送信に対応するレートパルス発生回路、遅延回路およびパルサ回路(図示せず)を有している。レートパルス発生回路では、所定のレート周波数fr Hz(周期;1/fr秒)で、送信超音波を形成するためのレートパルスが繰り返し発生される。遅延回路では、チャンネル毎に超音波をビーム状に集束し且つ送信指向性を決定するのに必要な遅延時間Tが、各レートパルスに与えられる。パルサ回路は、レートパルスを所定の駆動電圧にまで増幅した駆動パルスを生成し、与えられた遅延時間に基づくタイミングで、プローブ11に駆動パルスを印加する。
【0018】
なお、モニタリングスキャン用及びフラッシュスキャン用の各超音波を発生するための駆動パルスは、ECG30によって検出されるR波をトリガとし、遅延時間Tを心臓の収縮末期に合わせて生成される。さらに、後述する割り込みプロトコルに対応するフラッシュスキャン用の超音波送信は、遅延時間Tにおいて複数フレーム分実行されるものとする。
【0019】
また、送受信部13は、プロトコル開始ボタン26の操作に応答して、フラッシュスキャン用の駆動パルスを任意のタイミング(すなわち、心拍相)で発生させる。すなわち、送受信部13は、プロトコル開始ボタン26からの指示に基づくホストCPU19からの制御に応答して、送信系をモニタリングスキャン用からフラッシュスキャン用に切り替え、高音圧超音波を発生するための駆動パルスを超音波プローブ11に印加する。
【0020】
さらに、送受信部13は、図示していないアンプ回路、A/D変換器、加算器等を有している。アンプ回路では、プローブ11を介して取り込まれたエコー信号をチャンネル毎に増幅する。A/D変換器では、増幅されたエコー信号に対し受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与え、その後加算器において加算処理を行う。この加算により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
【0021】
信号処理部15は、Bモード処理系とドプラ処理系とを有している。Bモード処理系では、送受信部13から受けとった受信信号に対して対数増幅等が施される。増幅された信号は、画像生成部17に送られ、反射波の強度を輝度にて表したBモード画像としてモニター29にカラー表示される。ドプラ処理系では、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分が抽出され、平均速度、分散、パワー等の血流情報を多点について求める。血流情報は画像生成部17に送られ、平均速度画像、分散画像、パワー画像、これらの組み合わせ画像としてモニター29にカラー表示される。
【0022】
画像生成部17は、信号処理部15から入力した超音波スキャンの走査線信号列を、空間情報に基づいた直交座標系のデータに変換し、さらにビデオフォーマット変換を行う。また、画像生成部17は、後述するフラッシュ前段画像を静的にリアルタイム画像と同時にモニター29に表示するための制御を行う。
【0023】
ホストCPU19は、情報処理装置(計算機)としての機能を持ち、本超音波診断装置本体の動作を制御する制御手段である。ホストCPU19は、記憶部21からFEI、及び割り込みプロトコルに基づく処理等を実行するための制御プログラムを読み出して図示していない一時記憶メモリ上に展開し、各種処理に関する演算・制御等を実行する。
【0024】
記憶部21は、画像データ、予めプログラムされたFEIスキャンシーケンスを実行するためのベースプロトコル、診断情報(患者ID、医師の所見等)、診断プロトコル、送受信条件、その他のデータ群を記憶する。この記憶部21内のデータ、又はプロトコルメモリ23内のデータは、図示していないインタフェース回路を経由して外部周辺装置へ転送することも可能となっている。
【0025】
プロトコルメモリ23は、現在実行中のベースプロトコルに対し、任意のタイミングで割り込み処理を実行させる種々の割り込みプロトコルを記憶している。このプロトコルメモリ23内の割り込みプロトコルは、プロトコル設定UI25からの所定の操作により、新たに設定(登録)することも可能である。
【0026】
入力装置24は、オペレータからの各種指示・命令・情報を装置10にとりこむためのUI、関心領域(ROI)の設定などを行うための(マウスやトラックボール、モード切替スイッチ、キーボード等)UI等が設けられている。
【0027】
プロトコル設定UI25は、割り込みプロトコルを設定・編集等するためのユーザインタフェースである。
【0028】
プロトコル開始ボタン26は、プロトコルメモリ23に記憶されている各プロトコルに割り当てられる図2に示すような複数のボタンである。当該プロトコル開始ボタン26を任意のタイミングで操作することで、当該ボタンに対応する割り込みプロトコルが、現在実行中のベースプロトコルに対する割り込み処理として任意のタイミングで実行される。
【0029】
モニター29は、画像生成部17からのビデオ信号に基づいて、生体内の形態学的情報や、血流情報を画像として表示する。また、造影剤を用いた場合には、造影剤の空間的分布、つまり血流或いは血液の存在している領域を求めた定量的な情報量に基づいて、輝度画像やカラー画像として表示する。
【0030】
ECG(ElectroCardioGram)30は、被検体の心臓の電気現象に基づいて電気信号を発生し、その波形の時間変化をグラフ化する。この電気信号の波形にはP,Q,R,S,T,Uと命名されたピークがある。本超音波診断装置10では、ピークRにおける電気信号(R波)に応答して超音波送信のトリガかかけられる。
【0031】
(FEI:Flash Echo Imaging)
次に、FEIについて説明する。このFEIは、造影剤を使用するコントラストエコー撮影において実行されるものであり、使用する造影剤は、気泡を崩壊、消失させることによって非線形エコー信号を収集するための従来型造影剤、又は気泡を崩壊、消滅させなくても、強い非線形エコー信号を発生する次世代型造影剤のいずれであってもよい。
【0032】
例えば、前者の従来型造影剤を使用するFEIの場合には、図3に示すように、ECGと同期をとりながら、モニタリングスキャンによって診断部位への造影剤流入状況をモニタリングし、造影剤が超音波走査面に充満したタイミングにおいてフラッシュスキャンにより微小気泡を崩壊、消失させ非線形エコー信号(高調波)を取得するための超音波送信と、を繰り返し実行する。一方、後者の次世代型造影剤を使用するFEIの場合には、ECGと同期をとりながら所定のタイミングでトリガをかけて低音圧スキャンを実行し、非線形エコー信号を取得する超音波送信を繰り返し実行する。なお、次世代型造影剤を使用するFEIの低音圧スキャンにおいてトリガをかけるのは、スキャンする際の心時相を制御するため、及び前回の低音圧スキャンによって造影剤は(高音圧スキャンに比して少ないが)ある程度破壊、消滅しており、これを補うためである。
【0033】
なお、以下においては話を具体的にするため、従来型造影剤を使用するFEIを例に説明する。しかし、いずれの造影剤を使用するFEI法であっても、図4に示すように、予めプログラムされたベースプロトコルに従って実行される点は同様である。
【0034】
(プロトコル割り込み機能)
次に、本超音波診断装置10が有するプロトコル割り込み機能について説明する。
【0035】
図5は、プロトコル割り込み機能に基づくプロトコル割り込みを含むスキャンシーケンス図、ECG波形図等を示したものである。同図における矢印は、一フレーム分のスキャンを示している。また、図6は、当該プロトコル割り込み機能について説明するための概念図である。
【0036】
まず、図5、図6に示す様に、ベースプロトコルに従って通常のFEIが実行されているとする。このとき、操作者は、図5に示すように時間の経過に従って、造影剤による心筋染影の様子を観察することができる。
【0037】
ここで、例えば時刻tにおいてある高輝度領域が組織であるのか、又は造影剤によって染影された血流であるのかの判断が困難になったとする。この場合、操作者は、所望のタイミング(図5ではt)で「スラッシュスキャン実行」に対応するプロトコル開始ボタン26aを操作する。
【0038】
ホストCPU19は、この操作に応答して送受信部13を制御して送信系を現行のモニタリングスキャン用からスラッシュスキャン用に切り替え、の高音圧超音波を発生するための駆動パルスをプローブ11に印加する。なお、図5には、3フレーム分のフラッシュスキャンを実行する例を示してある。
【0039】
超音波プローブ11は、印加された駆動パルスに基づいて、造影剤を破壊させるための高音圧超音波を、被検体に送信する。造影剤は、当該高音圧超音波によって、図5に示すように破壊されることになる(時刻t乃至時刻t)。従って、例えば時刻tでの超音波送信によって得られる超音波画像は、造影剤によって染影されていない画像(今の場合、心筋組織画像)となる。従って、時刻tにおいて観察された高輝度領域は、組織によるものであったことがわかる。さらに、操作者は、時刻tから以降、例えば時刻tまで、再び造影剤の流入状況を観察することができる。
【0040】
なお、図5において、造影剤を破壊させるための高音圧超音波は、プロトコル開始ボタン26aが操作された時刻t3から、しばらく時間が経過した時刻t4に開始している。しかしながら、この時間経過は必須ではなく、造影剤を破壊させるための高音圧超音波の送信は、設定により、プロトコル開始ボタン26aの操作後任意のタイミング、例えばプロトコル開始ボタン26aの操作直後(すなわち、時刻t直後)に実行する構成であってもよい。
【0041】
また、以後のベースプロトコルに従ったFEIにおいて、再度任意のタイミングで造影剤を破壊したい場合には、同様の操作を行えばよい。
【0042】
上記プロトコル開始ボタン26aの操作に応答したスラッシュスキャン実行は、図6に示すように、動作制御の観点からすれば、ベースプロトコルに対する新たなプロトコル(又はそれに対応する動作モード)の割り込みと捉えることができる。上記例では、割り込みプロトコルとして、プロトコル開始ボタン26aに割り当てられたフラッシュスキャンを割り込み処理として実行した。しかしこれに限定する趣旨ではなく、他の処理をプロトコル開始ボタン26b、26c等に割り当て、これを操作することで任意のタイミングで実行する構成であってもよい。他の処理の例としては、例えば、フラッシュスキャンを所定の時間間隔で複数回実行する処理、プロトコル開始ボタン26aとはフレーム数が異なるフレッシュスキャンを実行する処理等が挙げられる。
【0043】
なお、この割り込みプロトコルの進捗度は、例えばタクスバー等によって表示されることが好ましい。これにより、現在の処理が割り込み処理であるのか否かを容易に判断することができる。
【0044】
本超音波診断装置は、以上述べた様に、FEIのベースプロトコル実行中において、他の割り込みプロトコルを任意のタイミングで実行することができる。従って、フラッシュスキャン実行プロトコルを割り込みプロトコルとすることで、撮影領域に存在する造影剤バブルを任意のタイミングで簡単且つ迅速に破壊することができる。その結果、操作者は、造影剤流入開始から染影までの状況(再環流状況)を所望のタイミングで観察することができ、高輝度領域が組織であるのか造影剤による染影であるのかを、簡単且つ迅速に判断することができる。
【0045】
また、本超音波診断装置は、割り込みプロトコルの実行指示が割り当てられたプロトコル開始ボタンを有している。従って、操作者は、当該プロトコル開始ボタン26aを操作するだけで、フラッシュスキャンの実行を簡単且つ迅速に指示することができる。
【0046】
(表示機能)
次に、本超音波診断装置10の表示機能について説明する。上記割り込み処理によるフラッシュスキャンにより、操作者は任意のタイミングで対象部位への造影剤流入開始タイミングを制御することができる。本機能は、当該タイミング制御に基づく造影剤流入状況を効果的に観察するためのものであり、異なるプロトコルによって収集された複数の画像を同時に表示するものである。
【0047】
図7は、本表示機能によってモニター29に表示されるフラッシュ前段画像A(静止画像)と現在撮影中のリアルタイム画像B(動画像)とを示した図である。ここで、フラッシュ前段画像とは、過去に実行されたフラッシュスキャンの前段に、望ましくは直近のフラッシュスキャンの直前に収集されたフレームに対応する画像であって、造影剤によって染影されている画像を意味する。なお、本装置10では、どのフレームの画像をフラッシュ前段画像とするかは、任意に設定することができる。
【0048】
この表示形態により、上述したフラッシュスキャンを割り込み処理として実行した場合には、次の様にして造影剤流入状況を観察することができる。すなわち、まず、モニター29にフラッシュ前段画像Aと現在撮影中のリアルタイム画像Bとが表示される。このとき、撮影部位に造影剤が流入している状態であれば、リアルタイム画像Bは当該流入を反映した染影画像となっている。
【0049】
次に、操作者は、所望のタイミングにてプロトコル開始ボタン26aを操作し、割り込み処理としてのフラッシュスキャンを実行する。このスキャンによって造影剤は破壊され、リアルタイム画像Bは組織のみを表示する画像となる。以後、リアルタイム画像Bは、時間の経過とともに造影剤の流入に従って造影され、次第に同時に表示されているフラッシュ前段画像Aに近づいて行き、最終的には、フラッシュ前段画像Aと同じ様に染影された画像になる。
【0050】
すなわち、操作者は、プロトコル開始ボタン26aの操作によってリアルタイム画像Bの造影状況を任意のタイミングで初期化し、当該リアルタイム画像Bがフラッシュ前段画像Aの様に造影されるまで変化していく様子を、両画像を同時に観察しながら確認することができる。従って、操作者は、常にリアルタイム画像Bとフラッシュ前段画像Aとを比較・観察することができ、フラッシュ前段画像Aにおいて造影されている領域が組織であるのか造影剤によるものであるのかを、容易に判断することができる。
【0051】
本表示機能おいては、他の表示形態も可能である。図8は、本表示機能によって実現される表示形態の変形例を示しており、モニター29に同時に表示されたフラッシュ前段画像A、リアルタイム画像B、フラッシュ後段画像C(静止画像)を示している。ここで、フラッシュ後段画像とは、過去に実行されたフラッシュスキャンの後段に、望ましくは直近のフラッシュスキャンの直後に収集されたフレームに対応する画像であって、造影剤による染影を含まない画像(組織画像)を意味する。なお、本装置10では、どのフレームの画像をフラッシュ項段画像とするかについても、任意に設定することができる。
【0052】
図8に示す表示形態により、上述したフラッシュスキャンを割り込み処理として実行した場合には、次の様にして造影剤流入状況を観察することができる。すなわち、まず、モニター29にフラッシュ前段画像A及びフラッシュ後段画像Cと、現在撮影中のリアルタイム画像Bとが表示される。
【0053】
次に、操作者は、所望のタイミングにてプロトコル開始ボタン26aを操作し、割り込み処理としてのフラッシュスキャンを実行する。このスキャンによって造影剤は破壊され、リアルタイム画像Bは、フラッシュ後段画像Cと同様に組織のみを表示する画像となる。以後、リアルタイム画像Bは、時間の経過とともに造影剤の流入に従って造影され、次第に同時に表示されているフラッシュ前段画像Aに近づいて行き、最終的には、フラッシュ前段画像Aと同じ様に造影された画像になる。
【0054】
すなわち、プロトコル開始ボタン26aの操作によってリアルタイム画像Bの造影状況を初期化した以後において、フラッシュ後段画像Cはリアルタイム画像B最初の状態に、フラッシュ前段画像Aはリアルタイム画像Bの最後の状態に、それぞれ対応している。従って、操作者は、造影剤流入の初期状態を表すフラッシュ後段画像C、中間状態を動画的に表すリアルタイム画像B、終期状態を表すフラッシュ前段画像Aとを常に比較・観察することができ、フラッシュ前段画像Aにおいて造影されている領域が組織であるのか造影剤によるものであるのかを、容易に判断することができる。
【0055】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本第2の実施形態に係る超音波診断装置10は、第1の実施形態とは異なり、送受信部13において、一つの送信系によってモニタリングスキャン用の低音圧超音波を発生するための駆動パルス、及びフラッシュスキャン用の高音圧超音波を発生するための駆動パルスの発生を実現するものである。
【0056】
すなわち、例えばモニタリングスキャン用の低音圧超音波送信中においてプロトコル開始ボタン26aが操作された場合には、送受信部13は、ホストCPU19の制御に基づいて、パルサ回路におけるレートパルスの増幅率を、モニタリングスキャン用からフラッシュスキャン用に切り替える。パルサ回路は、この切り替えに応答して、レートパルスをフラッシュスキャン用の高電圧にまで増幅した駆動パルスを生成し、与えられた遅延時間に基づくタイミングで、プローブ11に駆動パルスを印加する。
【0057】
また、割り込み処理としてのフラッシュスキャンが終了した場合には、送受信部13は、ホストCPU19の制御に基づいて、パルサ回路におけるレートパルスの増幅率を、フラッシュスキャン用からモニタリングスキャン用に切り替える。パルサ回路は、レートパルスをモニタリングスキャン用の低電圧にまで増幅した駆動パルスを生成し、与えられた遅延時間に基づくタイミングで、プローブ11に駆動パルスを印加する。
【0058】
この様な構成によれば、第1の実施形態と同様の効果に加えて、送信系を一系統とすることによる装置の小型化、低価格化を実現することができる。また、送信系を二系統有する場合と比較して、その動作制御を簡便にすることができる。
【0059】
以上、本発明を実施形態に基づき説明したが、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上本発明によれば、所定のプロトコルに従ってフラッシュスキャンを行うFEIモードにおいて、任意のタイミングで簡便にフラッシュスキャンを実行し、高輝度領域が組織か造影剤による染影領域であるかを適宜判断することができる超音波診断装置を実現できる。
【符号の説明】
【0061】
10…超音波診断装置、11…超音波プローブ、13…送受信部、15…信号処理部、17…画像生成部、19…ホストCPU、21…記憶部、23…プロトコルメモリ、24…入力装置、25…プロトコル設定UI、26a、26b、26c…プロトコル開始ボタン、27…入力装置、29…モニター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
造影剤バブルが投与された被検体の所定部位を超音波で走査し超音波画像を取得する超音波診断装置において、
前記被検体に対し超音波を送信し、当該超音波に基づくエコー信号を受信する超音波プローブと、
前記超音波プローブを駆動する駆動信号を生成し、前記超音波プローブに印加する駆動信号生成手段と、
前記エコー信号に基づいて、超音波画像を生成する画像生成手段と、
前記超音波画像を表示する表示手段と、
前記造影剤バブルを崩壊させる第1の音圧による第1の超音波送信と、前記造影剤バブルを壊さない音圧であって血流の環流を画像化するための第2の音圧による第2の超音波送信と、がそれぞれ所定の周期で繰り返される第1のプロトコルと、前記第1のプロトコルとは異なるプロトコルであって少なくとも一回の前記第1の超音波送信を含む第2のプロトコルと、が実行されるように、前記駆動信号生成手段を制御する制御手段と、
前記第2のプロトコルに従う制御を割り込み動作として指示するための指示手段と、を具備し、
前記制御手段は、前記第1のプロトコルが前記被検体の心臓の収縮末期において実行されるように、前記被検体の心電図信号のR波をトリガとして所定の遅延時間経過後に前記第1のプロトコルを実行すると共に、前記第2のプロトコルに従う制御が指示された場合には、前記第2のプロトコルが前記所定の遅延時間内における割り込み動作として実行されるように、前記駆動信号生成手段を制御すること、
を特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第2のプロトコルに従う制御が完了した場合には、再び前記第1のプロトコルに従う制御を実行することを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記制御手段は、第2のプロトコルに従う制御が完了した場合には、前記第1のプロトコルが中止された時点から当該第1のプロトコルに従う制御を実行することを特徴とする請求項1又は2記載の超音波診断装置。
【請求項4】
ユーザからの入力に従って、前記第2のプロトコルに含まれる前記第1の超音波送信の回数及び周期の少なくとも一方を登録するための登録手段をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記表示手段は、前記第1の超音波送信直前の前記第2の超音波送信によるエコー信号に基づく第1の超音波画像を静的に、前記第1の超音波送信に基づくエコー信号又は前記第1の超音波送信後の前記第2の超音波送信によるエコー信号の少なくとも一方に基づく第2の超音波画像をリアルタイムで動的に、同時に表示することを特徴とする請求項3記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記表示手段は、前記第1の超音波送信直前の前記第2の超音波送信によるエコー信号に基づく第1の超音波画像を静的に、前記第1の超音波送信に基づくエコー信号又は前記第1の超音波送信後の前記第2の超音波送信によるエコー信号の少なくとも一方に基づく第2の超音波画像をリアルタイムで動的に、前記第1の超音波送信直後の前記第2の超音波送信によるエコー信号に基づく第3の超音波画像を静的に、同時に表示することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−29727(P2010−29727A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261151(P2009−261151)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【分割の表示】特願2003−310270(P2003−310270)の分割
【原出願日】平成15年9月2日(2003.9.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】