超音波診断装置
【課題】生体組織の弾性を従来よりも正確に把握することができる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】生体組織に対する超音波の送受信により得られた同一音線上の時間的に異なる二つのエコー信号に基づいて生体組織における各部の弾性に関する物理量を算出する物理量算出部を有する弾性画像処理部5と、前記物理量に基づいて作成された弾性画像を表示する表示部7と、この表示部7における弾性画像の表示を制御する表示制御部6と、前記物理量の平均をフレーム毎に算出する物理量平均部8と、予め設定された物理量の平均値に対する物理量平均部8による算出値の比を算出する比算出部9と、を備え、前記表示制御部6は、前記比算出部9による比較結果に基づいて所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像を表示させないことを特徴とする。
【解決手段】生体組織に対する超音波の送受信により得られた同一音線上の時間的に異なる二つのエコー信号に基づいて生体組織における各部の弾性に関する物理量を算出する物理量算出部を有する弾性画像処理部5と、前記物理量に基づいて作成された弾性画像を表示する表示部7と、この表示部7における弾性画像の表示を制御する表示制御部6と、前記物理量の平均をフレーム毎に算出する物理量平均部8と、予め設定された物理量の平均値に対する物理量平均部8による算出値の比を算出する比算出部9と、を備え、前記表示制御部6は、前記比算出部9による比較結果に基づいて所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像を表示させないことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関し、特に生体組織の硬さ又は軟らかさを表す弾性画像を表示する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常のBモード画像と、生体組織の硬さ又は軟らかさを表す弾性画像とを合成して表示させる超音波診断装置が、例えば特許文献1などに開示されている。この種の超音波診断装置において、弾性画像は次のようにして作成される。先ず、生体組織に対し、超音波プローブによって体表面からの圧迫とその弛緩を繰り返しながら超音波の送受信を行い、エコー信号を取得する。そして、得られたエコー信号に基づいて、生体組織の弾性に関する物理量を算出し、この物理量を色相情報に変換してカラーの弾性画像を作成する。ちなみに、生体組織の弾性に関する物理量としては、例えば生体組織の変形による変位(以下、単に「変位」と云う)などを算出している。
【0003】
前記物理量の算出手法の一例についてもう少し説明すると、先ず時間的に異なる同一音線上の二つのエコー信号に、所定のデータ数分の幅を有する相関ウィンドウをそれぞれ設定し、この相関ウィンドウ間で相関演算を行なって前記物理量を算出する。例えば特許文献2では、相関ウィンドウ間で相関演算を行なうことによって、両エコー信号の波形のずれを算出し、この波形のずれを変位とみなしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−118152号公報
【特許文献2】特開2008−126079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、圧迫動作から弛緩動作に変わるとき、あるいはその反対に弛緩動作から圧迫動作に変わるときは、圧迫動作も弛緩動作もなされない瞬間が存在することがある。また、特に慣れていない操作者が操作を行なう場合には圧迫及びその弛緩が弱いことがある。このように圧迫又は弛緩の度合いが足りず、生体組織の変形が不十分な場合には、相関演算の算出値が生体組織の弾性の違いに応じた差となって現れないことがある。この場合、算出された物理量は、生体組織の弾性を正確に反映したものとならない。
【0006】
一方、圧迫とその弛緩の度合いが過剰である場合には、生体組織に横ずれが生じることがある。このような場合に取得されたエコー信号には横ずれによるノイズが含まれ、相関演算における相関係数が低くなるおそれがある。また、圧迫とその弛緩の度合いが過剰であると、生体組織の変形が大きすぎ、二つのエコー信号に設定される相関ウィンドウのマッチングがとれずに相関係数が低くなるおそれがある。ここで、相関演算における相関係数が低くなると、生体組織の弾性を正確に反映した物理量を得ることができない。
【0007】
また、超音波の反射体が少ない領域や送信超音波が減衰によって到達しにくい生体組織の深部などにおいては、エコー信号の強度が不十分となる。このように信号強度が不十分なエコー信号についての相関演算の相関係数は低くなる。また、前記超音波プローブの圧迫とその弛緩の方向が超音波の音線方向と一致していない場合、上述の横ずれが生じるため、このような状態で取得されたエコー信号についての相関演算の相関係数も低くなる。従って、これらの場合にも、生体組織の弾性を正確に反映した物理量を得ることができない。
【0008】
以上のように、生体組織の弾性を正確に反映していない物理量が得られ、このような物理量に基づいて作成された弾性画像は、実際の生体組織の弾性を反映した画像になっていない。従って、生体組織の弾性を正確に把握することができないおそれがある。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、生体組織の弾性を従来よりも正確に把握することができる超音波診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、第1の観点の発明は、生体組織に対する超音波の送受信により得られた同一音線上の時間的に異なる二つのエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって生体組織における各部の弾性に関する物理量を算出する物理量算出部と、前記物理量に基づいて、生体組織の弾性画像データを、超音波の送受信面における弾性画像作成領域について作成する弾性画像データ作成部と、前記弾性画像データに基づく弾性画像を表示する表示部と、該表示部における弾性画像の表示を制御する表示制御部と、前記弾性画像作成領域における前記物理量の平均をフレーム毎に算出する物理量平均部と、該物理量平均部による算出値を、予め設定された前記物理量の平均値と比較する比較部と、を備え、前記表示制御部は、前記比較部による比較結果に基づいて所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像を表示させないことを特徴とする超音波診断装置である。
【0011】
第2の観点の発明によれば、第1の観点の発明において、前記物理量平均部は、所定の閾値以上の相関係数の相関演算が行なわれた相関ウィンドウについて得られた物理量の平均算出を行なうことを特徴とする超音波診断装置である。
【0012】
第3の観点の発明は、第1又は2の観点の発明において、前記比較部は、前記比較結果として、予め設定された前記物理量の平均値に対する前記物理量平均部による算出値の比を算出することを特徴とする超音波診断装置である。
【0013】
第4の観点の発明は、第1〜3のいずれか一の観点の発明において、前記比較部による比較結果を報知する報知部を備えることを特徴とする超音波診断装置である。
【0014】
第5の観点の発明は、生体組織に対する超音波の送受信により得られた同一音線上の時間的に異なる二つのエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって生体組織における各部の弾性に関する物理量を算出する物理量算出部と、前記物理量に基づいて、生体組織の弾性画像データを、超音波の送受信面における弾性画像作成領域について作成する弾性画像データ作成部と、前記弾性画像データに基づく弾性画像を表示する表示部と、該表示部における弾性画像の表示を制御する表示制御部と、前記相関ウィンドウ間の相関演算における相関係数の前記弾性画像作成領域における平均をフレーム毎に算出する相関係数平均部と、とを備え、前記表示制御部は、前記相関係数平均部の算出結果に基づいて所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像を表示させないことを特徴とする超音波診断装置である。
【0015】
第6の観点の発明は、第5の観点の発明において、前記相関係数平均部による算出結果を報知する報知部を備えることを特徴とする超音波診断装置である。
【0016】
第7の観点の発明は、生体組織に対する超音波の送受信により得られた同一音線上の時間的に異なる二つのエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって生体組織における各部の弾性に関する物理量を算出する物理量算出部と、前記物理量に基づいて、生体組織の弾性画像データを、超音波の送受信面における弾性画像作成領域について作成する弾性画像データ作成部と、前記弾性画像データに基づく弾性画像を表示する表示部と、該表示部における弾性画像の表示を制御する表示制御部と、所定の閾値以上の相関係数の相関演算が行なわれた相関ウィンドウについて得られた物理量の前記弾性画像作成領域における平均をフレーム毎に算出する物理量平均部と、予め設定された前記物理量の平均値に対する前記物理量平均部による算出値の比を算出する比算出部と、前記相関ウィンドウ間の相関演算における相関係数の前記弾性画像作成領域における平均をフレーム毎に算出する相関係数平均部と、前記比算出部の算出値と、前記相関係数平均部の算出値とを乗算する乗算部と、を備え、前記表示制御部は、前記乗算部の算出結果に基づいて所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像を表示させないことを特徴とする超音波診断装置である。
【0017】
第8の観点の発明は、第7の観点の発明において、前記乗算部は、前記比算出部の算出値と、前記相関係数平均部の算出値との重み付け演算を行なうことを特徴とする超音波診断装置である。
【0018】
第9の観点の発明は、第7,8の観点の発明において、前記乗算部による乗算結果を報知する報知部を備えることを特徴とする超音波診断装置である。
【0019】
第10の観点の発明は、生体組織に対する超音波の送受信により得られた同一音線上の時間的に異なる二つのエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって生体組織における各部の弾性に関する物理量を算出する物理量算出部と、前記物理量に基づいて、生体組織の弾性画像データを、超音波の送受信面における弾性画像作成領域について作成する弾性画像データ作成部と、前記弾性画像データに基づく弾性画像を表示する表示部と、該表示部における弾性画像の表示を制御する表示制御部と、所定の閾値以上の相関係数の相関演算が行なわれた相関ウィンドウについて得られた物理量の前記弾性画像作成領域における平均をフレーム毎に算出する物理量平均部と、予め設定された前記物理量の平均値に対する前記物理量平均部による算出値の比を算出する比算出部と、前記相関ウィンドウ間の相関演算における相関係数の前記弾性画像作成領域における平均をフレーム毎に算出する相関係数平均部と、前記比算出部の算出値と、前記相関係数平均部の算出値とを乗算する乗算部と、前記比算出部の算出結果、前記相関係数平均部の算出結果又は前記乗算部の算出結果のうちのいずれかを選択するための指示入力を行なう操作部と、を備え、前記表示制御部は、前記操作部において選択された算出結果に基づいて所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像を表示させないことを特徴とする超音波診断装置である。
【0020】
第11の観点の発明は、第10の観点の発明において、前記比算出部の算出結果、前記相関係数平均部の算出結果又は前記乗算部の算出結果のうち、前記操作部において選択された算出結果を報知する報知部を備えることを特徴とする超音波診断装置である。
【0021】
第12の観点の発明は、生体組織に対する超音波の送受信により得られた同一音線上の時間的に異なる二つのエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって生体組織における各部の弾性に関する物理量を算出する物理量算出部と、前記物理量に基づいて、生体組織の弾性画像データを、超音波の送受信面における弾性画像作成領域について作成する弾性画像データ作成部と、前記弾性画像データに基づく弾性画像を表示する表示部と、該表示部における弾性画像の表示を制御する表示制御部と、所定の閾値以上の相関係数の相関演算が行なわれた相関ウィンドウについて得られた物理量の前記弾性画像作成領域における平均をフレーム毎に算出する物理量平均部と、予め設定された前記物理量の平均値に対する前記物理量平均部による算出値の比を算出する比算出部と、前記相関ウィンドウ間の相関演算における相関係数の前記弾性画像作成領域における平均をフレーム毎に算出する相関係数平均部と、を備え、前記表示制御部は、前記比算出部の算出結果及び前記相関係数平均部の算出結果に基づいて所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像を表示させないことを特徴とする超音波診断装置である。
【0022】
第13の観点の発明は、第12の観点の発明において、前記比算出部の算出結果又は前記相関係数平均部の算出結果のいずれかを報知する報知部を備えることを特徴とする超音波診断装置である。
【0023】
第14の観点の発明は、第12の観点の発明において、前記比算出部の算出値と、前記相関係数平均部の算出値とを乗算する乗算部と、該乗算部の算出結果を報知する報知部と、を備えることを特徴とする超音波診断装置である。
【0024】
第15の観点の発明は、生体組織に対する圧迫とその弛緩を行ないながら超音波を送受信して得られた同一音線上の時間的に異なる二つのエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって、生体組織における各部の弾性に関する物理量を、圧迫とその弛緩に応じた正負の符号を伴って算出する物理量算出部と、前記物理量に基づいて、生体組織の弾性画像データを、超音波の送受信面における弾性画像作成領域について作成する弾性画像データ作成部と、前記弾性画像データに基づく弾性画像を表示する表示部と、該表示部における弾性画像の表示を制御する表示制御部と、前記表示制御部は、一のフレームにおける前記正負の符号の割合に基づいて所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像を表示させないことを特徴とする超音波診断装置である。
【0025】
第16の観点の発明は、生体組織に対する超音波の送受信により得られた同一音線上の時間的に異なる二つのエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって生体組織における各部の弾性に関する物理量を算出する物理量算出部と、前記物理量に基づいて、生体組織の弾性画像データを、超音波の送受信面における弾性画像作成領域について作成する弾性画像データ作成部と、前記弾性画像データに基づく弾性画像を表示する表示部と、該表示部における弾性画像の表示を制御する表示制御部と、を備え、前記表示制御部は、所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像に代えて所定の代替弾性画像を表示させることを特徴とする超音波診断装置である。
【0026】
第17の観点の発明は、第16の観点の発明において、前記代替弾性画像は、前記エラーフレーム以前の数フレーム分の弾性画像データを重み付け加算処理して作成された弾性画像であることを特徴とする超音波診断装置である。
【0027】
第18の観点の発明は、第16の観点の発明において、前記代替弾性画像は、直前のフレームで表示された弾性画像のデータと、前記エラーフレームではない最新のフレームの弾性画像データとを重み付け加算処理して作成された弾性画像であることを特徴とする超音波診断装置である。
【0028】
第19の観点の発明は、第16の観点の発明において、前記直前のフレームで表示された弾性画像のデータは、エラーフレームの弾性画像データを含まない過去の数フレームの弾性画像データを重み付け加算処理して得られたデータであることを特徴とする超音波診断装置である。
【0029】
第20の観点の発明は、第16の観点において、前記代替弾性画像は、前記エラーフレームの弾性画像データと該エラーフレーム以前の弾性画像データとを重み付け加算処理して作成された弾性画像であることを特徴とする超音波診断装置である。
【0030】
第21の観点の発明は、第16の観点の発明において、前記代替弾性画像は、前記エラーフレームの直前に表示されたフレームの弾性画像であることを特徴とする超音波診断装置である。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、前記生体組織における各部の物理量の前記弾性画像作成領域における平均値と、予め設定された前記物理量の平均値とを比較した比較結果に基づいて所定の基準を満たさないエラーフレームの弾性画像は表示されない。ここで、生体組織に対する圧迫とその弛緩の度合いが足りなかったり、また過剰であったりする場合、前記比較結果に反映される。従って、前記比較結果に基づいて所定の基準を満たさないエラーフレームの弾性画像を表示させないことにより、生体組織の弾性をより正確に反映した弾性画像のみを表示することができる。これにより、生体組織の弾性を従来よりも正確に把握することができる。
【0032】
また、前記物理量平均部により、所定の閾値以上の相関係数の相関演算が行なわれた相関ウィンドウについて得られた物理量の平均値は、エコー信号の強度が不十分な部分、生体組織の横ずれが生じている部分など、相関係数が低い部分の変位が除かれて得られた平均値である。従って、このような平均値と予め設定された前記物理量の平均値との比較結果は、生体組織に対する圧迫とその弛緩が適切な強さで行なわれているか否かをより正確に示すものとなる。以上より、前記比較結果に基づいて所定の基準を満たさないエラーフレームの弾性画像を表示させないようにすることで、生体組織に対する圧迫とその弛緩が適切な強さで行なわれている状態で取得されたエコー信号に基づく弾性画像のみをより確実に表示させることができる。
【0033】
また、他の発明によれば、前記相関ウィンドウ間の相関演算における相関係数の前記弾性画像作成領域における平均が算出され、その算出結果に基づいて所定の基準を満たさないエラーフレームの弾性画像は表示されない。ここで、例えば生体組織に対する圧迫とその弛緩が過剰であったり、エコー信号の強度が不十分であったりすると相関係数の平均は低くなる。従って、相関係数の平均に基づいて所定の基準を満たさないエラーフレームの弾性画像を表示させないようにすることにより、生体組織の弾性をより正確に反映した弾性画像のみを表示させることができる。これにより、生体組織の弾性を従来よりも正確に把握することができる。
【0034】
また、他の発明によれば、所定の閾値以上の相関係数の相関演算が行なわれた相関ウィンドウについて得られた物理量の平均値を用いて前記比算出部によって算出された算出値と、前記相関係数平均部によって算出された算出値とを前記乗算部によって乗算し、この算出結果に基づいて所定の基準を満たさないエラーフレームの弾性画像は表示されない。ここで、前記乗算によって得られた算出結果は、生体組織への圧迫とその弛緩の度合いの要素と、相関係数の要素とが加味されたものである。従って、このような算出結果に基づいて所定の基準を満たさないエラーフレームの弾性画像が表示されないので、生体組織の弾性をより正確に反映した弾性画像のみを表示させることができ、生体組織の弾性を従来よりも正確に把握することができる。
【0035】
また、他の発明によれば、前記比算出部の算出結果、前記相関係数平均部の算出結果又は前記乗算部の算出結果のうち選択された算出結果に基づいて所定の基準を満たさないエラーフレームの弾性画像は表示されないので、生体組織の弾性をより正確に反映した弾性画像のみを表示させることができる。また、前記比算出部の算出結果、前記相関係数平均部の算出結果又は前記乗算部の算出結果を選択することができるので、エラーフレームに該当するか否かを異なる基準で判定することができ、より適切な弾性画像を表示させることができる。
【0036】
また、他の発明によれば、前記比算出部の算出結果及び前記相関係数平均部の算出結果に基づいて所定の基準を満たさないエラーフレームの弾性画像は表示されないので、生体組織の弾性をより正確に反映した弾性画像のみの表示をより確実にすることができる。
【0037】
また、他の発明によれば、生体組織に対する圧迫とその弛緩に応じた正負の符号の割合に基づいて所定の基準を満たさないエラーフレームの弾性画像は表示されない。ここで、圧迫とその弛緩が適切になされている場合、一のフレームにおける物理量は、同一符号の割合が高くなる。一方で、圧迫とその弛緩が適切になされていない場合、一のフレームにおける物理量は、同一符合に偏ることはない。従って、一のフレームにおける前記正負の符号の割合に基づいて、所定の基準を満たさないエラーフレームの弾性画像を表示させないことにより、生体組織の弾性をより正確に反映した弾性画像のみを表示させることができる。
【0038】
さらに、他の発明によれば、エラーフレームの弾性画像に代えて所定の代替弾性画像を表示させることにより、生体組織の弾性をより正確に反映した弾性画像を表示させつつ、弾性画像が表示されないフレームがあることによる断続的な弾性画像の表示となることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る超音波診断装置の第一実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す超音波診断装置における一部の構成を示すブロック図である。
【図3】Bモード画像データ及び弾性画像データの作成の説明図である。
【図4】図1に示す超音波診断装置における表示部の表示の一例を示す図である。
【図5】弾性画像データを作成する際における物理量の算出を説明するための図である。
【図6】比算出部で用いられる関数のグラフを示す図である。
【図7】エラーフレームにおいて、Bモード画像のみからなる超音波画像が表示された表示部を示す図である。
【図8】第一実施形態の第一変形例の説明図である。
【図9】第一実施形態の第一変形例において、フレームF4がエラーフレームではない場合の説明図である。
【図10】第一実施形態の第一変形例において、フレームF4がエラーフレームである場合の説明図である。
【図11】第一実施形態の第一変形例において、代替弾性画像の作成手法の他例を説明するための図である。
【図12】第一実施形態の第二変形例の概略構成を示すブロック図である。
【図13】クオリティ表示が表示された表示部を示す図である。
【図14】表示部の表示の一例を示し、時間の経過とともにクオリティ表示が左から右へ流れるように表示されることを説明するための図である。
【図15】表示部の表示の一例を示し、時間の経過とともにクオリティ表示が左から右へ流れるように表示されることを説明するための図である。
【図16】表示部の表示の一例を示し、時間の経過とともにクオリティ表示が左から右へ流れるように表示されることを説明するための図である。
【図17】表示部の表示の一例を示し、クオリティ表示の他例を示す図である。
【図18】本発明に係る超音波診断装置の第二実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図19】図18に示す超音波診断装置における一部の構成を示すブロック図である。
【図20】第二実施形態の変形例における超音波診断装置の概略構成を示すブロック図である。
【図21】本発明に係る超音波診断装置の第三実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図22】図21に示す超音波診断装置における一部の構成を示すブロック図である。
【図23】第三実施形態の変形例における超音波診断装置の概略構成を示すブロック図である。
【図24】本発明に係る超音波診断装置の第四実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図25】図24に示す超音波診断装置における一部の構成を示すブロック図である。
【図26】第四実施形態の変形例における超音波診断装置の概略構成を示すブロック図である。
【図27】本発明に係る超音波診断装置の第五実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図28】本発明に係る超音波診断装置の第六実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図29】図28に示す超音波診断装置における弾性画像処理部の構成を示すブロック図である。
【図30】クオリティ表示の他例を示す図である。
【図31】クオリティ表示の他例が表示された表示部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態について図1〜図7に基づいて説明する。図1に示す超音波診断装置1は、超音波プローブ2、送受信部3、Bモード画像処理部4、弾性画像処理部5、表示制御部6、表示部7、物理量平均部8、比算出部9を備え、さらに制御部10及び操作部11を備える。
【0041】
前記超音波プローブ2は、生体組織に対して超音波を送信しそのエコーを受信する。この超音波プローブ2を生体組織の表面に当接させた状態で圧迫と弛緩を繰り返しながら超音波の送受信を行なって取得されたエコー信号に基づいて、後述のように弾性画像が作成される。
【0042】
前記送受信部3は、前記超音波プローブ2を所定の走査条件で駆動させて音線毎の超音波の走査を行なう。また、前記超音波プローブ2で受信したエコー信号について、整相加算処理等の信号処理を行なう。前記送受信部3で信号処理されたエコー信号は、前記Bモード画像処理部4及び前記弾性画像処理部5に出力される。
【0043】
ちなみに、前記送受信部3は、Bモード画像を作成するための走査と、弾性画像を作成するための走査とを別に行なう。弾性画像を作成するための走査としては、被検体における弾性画像を作成する領域において、同一音線上に二回の走査を行なう。
【0044】
前記Bモード画像処理部4は、前記送受信部3から出力されたエコー信号に対し、対数圧縮処理、包絡線検波処理等のBモード処理を行ってBモードデータを作成し、さらにこのBモードデータに基づいて、エコー信号の強度に応じた輝度情報を有するBモード画像データを作成する。
【0045】
ここで、Bモード処理後のBモードデータは、図示しない記憶部にローデータ(Raw Data)として記憶されるようになっていてもよい。前記Bモード画像処理部4は、前記記憶部に記憶されたBモードデータに基づいて前記Bモード画像データを作成してもよい。
【0046】
前記弾性画像処理部5は、前記送受信部3から出力されたエコー信号に基づいて、弾性画像データを作成する。詳しく説明すると、前記弾性画像処理部5は、図2に示すように、物理量算出部51と弾性画像データ作成部52とを有している。前記物理量算出部51は、生体組織における各部の弾性に関する物理量として、前記超音波プローブ2による圧迫とその弛緩によって生じた生体組織における各部の変形による変位(以下、単に「変位」と云う)を算出する。前記物理量算出部51は、図3に示すように時間的に異なる二つのフレーム(i),(ii)に属する同一音線上における二つのエコー信号に基づいて画素毎に変位を算出する。より具体的には、前記物理量算出部51は、後述するように前記エコー信号に相関ウィンドウW1,W2を設定し(図5参照)、これら相関ウィンドウW1,W2間で相関演算を行なって変位を算出する。そして、この変位データに基づいて、前記弾性画像データ作成部52によって一画素分の弾性画像データが作成される。前記物理量算出部51は本発明における物理量算出部の実施の形態の一例である。
【0047】
ここで、前記物理量算出部51によって算出される変位は、生体組織に対する圧迫とその弛緩に応じた正負の符号を伴って算出される。例えば、圧迫時には主に負の符号の変位が算出され、弛緩時には主に正の符号の変位が算出される。
【0048】
前記弾性画像データ作成部52は、前記物理量算出部51によって算出された変位を色相情報に変換し、超音波の送受信面における弾性画像作成領域(本例では後述の関心領域R)についての弾性画像データを作成する。前記弾性画像データ作成部52は本発明における弾性画像データ作成部の実施の形態の一例である。
【0049】
ちなみに、図3に示すように、異なる二つのフレーム(i),(ii)に属するエコー信号から一フレーム分の弾性画像データが作成される。一方で、Bモード画像データは、前記フレーム(i),(ii)のいずれかのエコー信号から作成される。
【0050】
本例では、図4に示すように前記表示部7に表示されたBモード画像BG上に関心領域(ROI:Region Of Interest)Rが設定され、この関心領域Rについて前記弾性画像データが作成される。前記関心領域Rは本発明における弾性画像作成領域の実施の形態の一例である。ただし、本発明は、このように前記Bモード画像BGの一部について弾性画像を作成する場合に限られるものではなく、前記Bモード画像BGの全体について前記弾性画像データを作成してもよい。
【0051】
ここで、前記物理量算出部51によって得られた変位データは、ローデータとして図示しない記憶部に記憶されていてもよい。前記弾性画像データ作成部52は、前記記憶部に記憶された変位データに基づいて弾性画像データを作成してもよい。
【0052】
前記Bモード画像処理部4で作成されたBモード画像データと、前記弾性画像処理部5で作成された弾性画像データは、前記表示制御部6で合成される。具体的には、この表示制御部6は、一フレーム分の前記Bモード画像データと前記弾性画像データとを加算処理し、前記表示部7に表示する一フレーム分の超音波画像データを作成する。そして、前記表示制御部6は、得られた超音波画像データに基づく超音波画像Gを前記表示部7に表示させる。超音波画像Gは、図4に示すように白黒のBモード画像BGとカラーの弾性画像EGとが合成された画像である。本例では、前記弾性画像EGは、前記関心領域R内に半透明で(背景のBモード画像が透けた状態で)表示される。前記表示制御部6は本発明における表示制御部の実施の形態の一例であり、また前記表示部7は本発明における表示部の実施の形態の一例である。
【0053】
ただし、前記表示制御部6は、前記比算出部9によって後述するようにして算出される算出値Yに基づいて所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像EGを表示させない。この場合、前記表示制御部6はBモード画像データと弾性画像データとを合成せず、Bモード画像BGのみからなる超音波画像を表示させる(図7参照)。詳細は後述する。
【0054】
前記物理量平均部8は、一画素毎に算出された変位の前記関心領域Rにおける平均をフレーム毎に算出する。前記物理量平均部8の算出値を平均値XrAVとする。前記物理量平均部8は、本発明における物理量平均部の実施の形態の一例である。
【0055】
前記比算出部9は、変位の平均の理想値XiAVに対する前記平均値XrAVの比Raを算出し、さらに後述するように(式1)の演算を行なう。前記比算出部9は、本発明における比較部及び比算出部の実施の形態の一例である。また、前記理想値XiAVは、本発明における予め設定された物理量の平均値の実施の形態の一例である。
【0056】
ここで、前記理想値XiAVは、生体組織の弾性をより正確に反映した弾性画像を得ることができる強さで、超音波の送受信時に前記超音波プローブ2による生体組織への圧迫とその弛緩が行なわれた場合に、任意に設定される領域において得られる変位の平均値である。この理想値XiAVは、例えば腫瘍と同じ硬さの部分や正常組織と同じ硬さの部分などからなるファントム等を対象として実験を行ない、経験上得られる値である。また、この理想値XiAVは、操作者が前記操作部11において設定できるようになっていてもよいし、デフォルトとして装置に記憶されていてもよい。
【0057】
前記制御部10は、CPU(Central Processing Unit)で構成され、図示しない記憶部に記憶された制御プログラムを読み出し、前記超音波診断装置1の各部における機能を実行させる。また、前記操作部11は、操作者が指示や情報を入力するためのキーボード及びポインティングデバイス(図示省略)などを含んで構成されている。
【0058】
さて、本例の超音波診断装置1の作用について説明する。先ず、前記送受信部3は、前記超音波プローブ2から被検体の生体組織へ超音波を送信させ、そのエコー信号を取得する。このとき、前記超音波プローブ2により、被検体への圧迫とその弛緩を繰り返しながら超音波の送受信を行う。
【0059】
そして、前記Bモード画像処理部4は、前記エコー信号に基づいてBモード画像データを作成する。また、前記弾性画像処理部5は、前記エコー信号に基づいて弾性画像データを作成する。前記Bモード画像データと前記弾性画像データは、前記表示制御部6で合成され、図4に示すようにBモード画像BGと弾性画像EGとが合成された超音波画像Gが前記表示部7に表示される。ただし、エラーフレームの弾性画像EGについては表示されない。
【0060】
前記弾性画像処理部5における弾性画像データの作成及び弾性画像EGの表示について詳細に説明する。前記弾性画像データを作成するにあたり、前記物理量算出部51は、フレーム(i),(ii)に属するエコー信号のそれぞれに相関ウィンドウを設定する。具体的には、前記物理量算出部51は、図5に示すようにフレーム(i)に属するエコー信号に相関ウィンドウW1を設定し、フレーム(ii)に属するエコー信号に相関ウィンドウW2を設定する。これら相関ウィンドウW1,W2は位置画素に対応する。そして、前記物理量算出部51は、前記相関ウィンドウW1,W2間で相関演算を行なって変位を算出する。
【0061】
具体的に説明すると、図5において、前記フレーム(i),(ii)は、複数本の音線上において取得されたエコー信号からなる。図5では、前記フレーム(i)における複数本の音線の一部として、五本の音線L1a,L1b,L1c,L1d,L1eが示され、また前記フレーム(ii)において前記音線L1a〜L1eに対応する音線として、音線L2a,L2b,L2c,L2d,L2eが示されている。すなわち、前記音線L1a及び前記音線L2a、前記音線L1b及び前記音線L2b、前記音線L1c及び前記音線L2c、前記音線L1d及び前記音線L2d、前記音線L1e及び前記音線L2eは、異なる二つのフレームに属する同一音線に該当する。また、図5においてR(i),R(ii)は、前記関心領域Rに対応する領域を示している。
【0062】
例えば、前記音線L1c上のエコー信号に、前記相関ウィンドウW1として相関ウィンドウW1cが設定され、前記音線L2c上のエコー信号に、前記相関ウィンドウW2として相関ウィンドウW2cが設定されたとする。前記物理量算出部51は、前記相関ウィンドウW1c,W2c間で相関演算を行ない、変位を算出する。前記物理量算出部51は、前記音線L1c,L2c上において、前記領域R(i),R(ii)の上端100から下端101まで相関ウィンドウW1c,W2cを順次設定し、変位を算出する。また、前記物理量算出部51は、前記領域R(i),R(ii)内の他の音線についても同様にして変位を算出する。そして、このようにして前記物理量算出部51によって変位が算出されると、この変位に基づいて前記弾性画像データ作成部52が弾性画像データを作成する。
【0063】
次に、弾性画像EGの表示について説明する。前記表示制御部6は、前記比算出部9の算出値Yに基づいて所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像EGについては表示させない。詳しく説明すると、先ず前記物理量平均部8が、前記関心領域R(前記領域R(i),R(ii))における変位の平均値XrAVを算出する。ちなみに、変位は負になることもあることから、前記平均値XrAVは負になることもあるものとする。次に、前記比算出部9が、XrAV/XiAVの演算を行ない、前記比Raを算出する。さらに、前記比算出部9は、前記比Raを次の(式1)に代入し、数値Yを得る。
Y=1.0−|log10|Ra||・・・(式1)
ここで、Yは、フレーム毎に得られる算出値である。この算出値Yは、本発明において比較部による比較結果及び比算出部の算出値の実施の形態の一例である。
【0064】
ちなみに、この(式1)は、前記比Raを0から1までの範囲にするためのものであり、この(式1)で得られるYは、前記理想値XiAVに対する平均値XrAVの比と同等である。この(式1)で表される関数をグラフで表すと、図6に示すグラフとなる。この図6に示すように、0≦Y≦1となる。
【0065】
また、0.1≦|Ra|≦10であるものとし、|Ra|がこの範囲を超えた場合、Yは零とする。
【0066】
前記比算出部9の算出値Yは、弾性画像のクオリティを表す数値である。算出値Yが1に近くなるほど、弾性画像のクオリティとしては良好であることを意味し、一方で算出値Yが0に近くなるほど、弾性画像のクオリティとしては悪くなることを意味する。ここで、弾性画像のクオリティが良好であるとは、生体組織の弾性をより正確に反映した弾性画像であることを意味し、一方で弾性画像のクオリティが悪いとは、生体組織の弾性を正確に反映した弾性画像ではないことを意味する。
【0067】
算出値Yと弾性画像のクオリティとの関係についてより詳細に説明すると、図6のグラフから分かるように、前記平均値XrAVが前記理想値XiAVと等しい場合(すなわち、|Ra|が1)、算出値Yは1となる。従って、算出値Yが1、または1に近い値であれば、前記超音波プローブ2による生体組織に対する圧迫とその弛緩の度合いが適切であり、生体組織の弾性を正確に反映した弾性画像EGが得られていることになる。
【0068】
一方で、前記平均値XrAVが前記理想値XiAVと離れた値になるほど(すなわち、|Ra|が1から離れた値になるほど)、算出値Yは零に近づく。ここで、前記平均値XrAVが前記理想値XiAVと離れた値になるということは、前記超音波プローブ2による生体組織に対する圧迫やその弛緩の度合いが足りない、または過剰であることを意味する。従って、算出値Yが零に近づくほど、生体組織に対する圧迫やその弛緩の度合いが足りないか、または過剰である結果、生体組織の弾性を正確に反映した弾性画像EGが得られていないことになる。
【0069】
前記算出値Yは、前記表示制御部6に入力される。この表示制御部6は、前記算出値Yに基づいて所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像EGを前記表示部7に表示させない。具体的には、前記表示制御部6は、算出値Yが閾値YTH以下であるフレームを所定の基準を満たさないエラーフレームであると判定し、その弾性画像EGを表示させない。
【0070】
ここで、算出値Yが閾値YTH以下であるエラーフレームの弾性画像EGを表示させないとは、エラーフレームにおいては、図7に示すようにBモード画像BGのみからなる超音波画像Gが表示されるという意味である。従って、エラーフレームについては、前記表示制御部6はBモード画像データと弾性画像データとを合成せず、Bモード画像データをBモード画像BGとしてそのまま表示させる。
【0071】
前記閾値YTHについて説明する。0≦Y≦1であるため、閾値YTHも0以上1以下の範囲で設定される。閾値YTHが高すぎると、生体組織の弾性をできるだけ正確に反映した弾性画像EGのみを表示させることができるものの、弾性画像EGのフレームレートが低下しすぎる恐れがある。一方で、閾値YTHが低すぎると弾性画像EGのフレームレートは良好であるものの、生体組織の弾性を正確に反映していない弾性画像EGが表示される割合が高くなる。従って、閾値YTHは、生体組織の弾性をある程度の度合いで正確に反映した弾性画像EGを、フレームレートが低下しすぎないように表示させることができる値に設定される。
【0072】
閾値YTHは、図示しない記憶部に予め記憶されていてもよいし、前記操作部11において入力することによって設定されてもよい。
【0073】
本例の超音波診断装置1によれば、前記理想値XiAVに対する前記平均値XrAVの比Raに基づいて算出される算出値Yが所定の閾値YTH以下であるエラーフレームの弾性画像EGは表示されない。従って、生体組織に対する圧迫とその弛緩の度合いが足りなかったり、また過剰であったりする状態で取得されたエコー信号に基づく弾性画像EGが表示されないことになる。これにより、クオリティの高い弾性画像EGのみを表示することができるので、生体組織の弾性を従来よりも正確に把握することができる。
【0074】
次に、第一実施形態の変形例について説明する。先ず、第一変形例について説明する。この第一変形例では、エラーフレームの弾性画像EGに代えて、代替弾性画像を表示させる補完処理を行ってもよい。具体的に説明する。図8に示すように、過去にフレームF1,F2,F3についての超音波画像データD1,D2,D3に基づく超音波画像Gが表示され、次にフレームF4の超音波画像Gが表示される時点を例に挙げて説明する。ちなみに、前記超音波画像データD1はBモード画像データBD1及び弾性画像データED1からなり、前記超音波画像データD2はBモード画像データBD2及び弾性画像データED2からなり、前記超音波画像データD3はBモード画像データBD3及び弾性画像データED3からなる。
【0075】
フレームF4について得られたBモード画像データ及び弾性画像データを、Bモード画像データBD4及び弾性画像データED4とする。フレームF4についての前記比算出部9の算出値Yが閾値YTHを超えている場合、すなわちフレームF4がエラーフレームではない場合、前記表示制御部6は、図9に示すように前記BモードデータBD4と前記弾性画像データED4とを合成して超音波画像データD4を作成し、この超音波画像データD4に基づく超音波画像Gを表示させる。
【0076】
一方、フレームF4についての前記比算出部9の算出値Yが閾値YTH以下である場合、すなわちフレームF4がエラーフレームである場合、フレームF4よりも前に表示されたフレームF1,F2,F3についての弾性画像を重み付け加算処理して得られた代替弾性画像を表示させる。
【0077】
前記重み付け加算処理についてより詳細に説明する。前記表示制御部6は、図10に示すように、フレームF1,F2,F3についての弾性画像データED1,ED2,ED3を重み付け加算処理して弾性画像データED4′を作成する。すなわち、前記表示制御部6は、前記弾性画像データED1,ED2,ED3における対応画素値を重み付け加算し、得られた画素値からなる弾性画像データED4′を作成する。ただし、重み付け加算処理として、前記物理量算出部51で得られたフレームF1,F2,F3の弾性データについて、対応画素の変位を重み付け加算し、得られた変位からなるデータを前記弾性画像データ作成部52が色相情報に変換して弾性画像データED4′を作成してもよい。すなわち、本発明における弾性画像データについての重み付け加算処理には、物理量算出部51で得られた弾性データの重み付け加算処理も含まれるものとする。
【0078】
重み付け加算処理で用いる重み付け係数は、フレームF1,F2,F3で等しくてもよいし、異なっていてもよい。
【0079】
前記表示制御部6は、得られた弾性画像データED4′とBモード画像データBD4とを合成して超音波画像データD4を作成し、この超音波画像データD4に基づく超音波画像Gを表示させる。これにより、弾性画像データED4に基づく弾性画像に代えて、弾性画像データED4′に基づく弾性画像が代替弾性画像として表示される。前記弾性画像データED4′に基づく弾性画像は、本発明における所定の代替弾性画像の実施の形態の一例である。
【0080】
前記弾性画像データED4′に基づく弾性画像EGは、算出値Yが閾値YTHを超えているとして表示されたフレームF1〜F3における弾性画像EGのデータを重み付け加算処理して得られたデータであるため、閾値YTHを超えた算出値Yが得られた弾性画像と同等のクオリティを有する弾性画像となる。従って、クオリティの高い弾性画像EGを常に表示させることができ、しかも弾性画像EGが表示されないフレームを無くすことができるので断続的な弾性画像EGの表示となることを防止することができる。
【0081】
ただし、前記表示制御部6は、算出値Yが閾値YTH以下であるエラーフレームが所定数連続した場合、補完処理を中止して代替弾性画像を表示させないようにしてもよい。
【0082】
なお、エラーフレームであるフレームF4を含めた重み付け加算処理、すなわち、フレームF1〜F4について重み付け加算処理を行なってもよい。
【0083】
また、代替弾性画像は、エラーフレームであるフレームF4の直前に表示されたフレームF3の弾性画像であってもよい。
【0084】
なお、代替弾性画像の作成は上述の手法に限られるものではない。代替弾性画像の作成手法の他例について図11に基づいて説明する。
【0085】
この図11に示すフレームF1〜F5において、フレームF1〜F3はエラーフレームではないものとし、フレームF4,F5はエラーフレームであるものとする。そして、フレームF1〜F5においては、超音波画像データD1〜D5に基づく超音波画像Gが表示されるものとする。前記超音波画像データD1は、Bモード画像データBD1及び表示弾性画像データED1dからなり、前記超音波画像データD2は、Bモード画像データBD2及び表示弾性画像データED2dからなる。また、前記超音波画像データD3は、Bモード画像データBD3及び表示弾性画像データED3dからなり、前記超音波画像データD4は、Bモード画像データBD4及び表示弾性画像データED4dからなる。さらに、前記超音波画像データD5は、Bモード画像データBD5及び表示弾性画像データED5dからなる。
【0086】
フレームF2〜F5において、前記弾性画像データ作成部52で得られたデータを、弾性画像データED2,ED3,ED4,ED5とする。ここでは、弾性画像データ作成部52で得られた弾性画像データをそのまま弾性画像EGとして表示するわけではなく、直前に表示された弾性画像のデータと重み付け加算することにより得られたデータに基づく弾性画像EGが表示される。これにより、過去のフレームが考慮された弾性画像が表示される。従って、ここでは、表示された弾性画像のデータを表示弾性画像データとし、前記弾性画像データ作成部52で得られた弾性画像データとは区別するものとする。
【0087】
詳しく説明すると、フレームF2において表示される弾性画像EGは、表示弾性画像データED2dに基づく画像である。この表示弾性画像データED2dは、フレームF2において、前記弾性画像データ作成部52で得られた弾性画像データED2と直前のフレームF1における表示弾性画像データED1dとを重み付け加算して得られたデータである。すなわち、表示弾性画像データED2dは、下記の(式2)に基づいて作成される。
ED2d=k×ED2+(1−k)ED1d・・・(式2)
ただし、0<k<1とする。
【0088】
また、フレームF3において表示される弾性画像EGは、表示弾性画像データED3dに基づく画像である。この表示弾性画像データED3dは、下記(式3)に基づいて作成される。
ED3d=k×ED3+(1−k)ED2d・・・(式3)
【0089】
すなわち、エラーフレームではないフレームについては、下記の(式4)に基づいて表示弾性画像データEDmdが作成される。
EDmd=k×EDm+(1−k)ED(m−1)d・・・(式4)
ここで、(式4)において、mはフレームの番号を表す自然数である。
【0090】
次に、フレームF4について説明する。仮に、フレームF4についても前記(式4)を用いるとすると、下記の(式5)に基づいて表示弾性画像データED4d′が作成されることになる。
ED4d′=k×ED4+(1−k)ED3d・・・(式5)
【0091】
しかし、フレームF4はエラーフレームであり、前記(式5)から得られた前記表示弾性画像データED4d′は、生体組織の弾性を正確に反映していない弾性画像データED4を含むため、前記表示弾性画像データED4d′に基づく弾性画像EGはクオリティが低い画像になる。そこで、エラーフレームであるフレームF4については、下記の(式6)に基づいて表示弾性画像データED4dが作成され、この表示弾性画像データED4dに基づく弾性画像EGが表示されるものとする。
ED4d=k×ED3+(1−k)ED3d・・・(式6)
【0092】
従って、前記表示弾性画像データED4d′に基づく弾性画像EGに代えて、表示弾性画像データED4dに基づく弾性画像EGが表示されることになる。前記表示弾性画像データED4d′に基づく弾性画像EGは、本発明におけるエラーフレームの弾性画像EGの実施の形態の一例である。また、表示弾性画像データED4dに基づく弾性画像EGは、本発明における所定の代替弾性画像の実施の形態の一例である。
【0093】
同様に、エラーフレームであるフレームF5については、下記の(式7)に基づいて表示弾性画像データED5dが作成され、この表示弾性画像データED5dに基づく弾性画像EGが表示される。
ED5d=k×ED3+(1−k)ED4d・・・(式7)
【0094】
この(式7)から得られた表示弾性画像データED5に基づく弾性画像EGは、本発明における所定の代替弾性画像の実施の形態の一例である。
【0095】
すなわち、エラーフレームについては、下記の(式8)に基づいて表示弾性画像データEDmdが作成される。
EDmd=k×EDz+(1−k)ED(m−1)d・・・(式8)
この(式8)において、zはフレームの番号を表す自然数である。
【0096】
ここで、(式8)において、EDzはエラーフレームではない最新のフレームにおいて、前記弾性画像データ作成部52で得られた弾性画像データである。また、表示弾性画像データED(m−1)dは、直前のフレームで表示された弾性画像のデータであって、エラーフレームの弾性画像データを含まない過去の数フレームの弾性画像データを重み付け加算処理して得られたデータである。
【0097】
以上より、表示弾性画像データは、エラーフレームの弾性画像データを含まないで作成されるため、弾性画像EGのクオリティを維持することができる。
【0098】
また、エラーフレームである場合、(式8)に示すように、直前のフレームの表示弾性画像データED(m−1)dと、エラーフレームではない最新のフレームの弾性画像データEDz(この例では弾性画像データED3)とが重み付け加算して得られた表示弾性画像データに基づく弾性画像EGが表示される。従って、エラーフレームが連続した場合であっても、エラーフレームではない最新のフレームの弾性画像データの割合が少しずつ高まるような表示弾性画像データEDmdが得られ、弾性画像EGがフリーズしたような表示になることを防止できる。
【0099】
ちなみに、上記図11で説明した手法による代替弾性画像の作成では、弾性画像データの段階において重み付け加算処理を行なっているが、前記物理量算出部51で得られた弾性データの段階において重み付け加算処理を行なってもよい。
【0100】
次に、第二変形例について説明する。図12に示すように、この第二変形例の超音波診断装置1′は、クオリティ表示作成部12を備えている。このクオリティ表示作成部12には、前記比算出部9の算出値Yが入力される。そして、前記クオリティ表示作成部12は、フレーム毎の前記算出値Yを弾性画像EGのクオリティ値Qnとしてプロットし、横軸が時間、縦軸が前記クオリティ値Qnを表すグラフgrからなるクオリティ表示QG(図13参照)を作成する。この時、前記クオリティ表示作成部12は、前記クオリティ値Qnの複数フレーム分の平均を算出し、この平均値をプロットしていってもよい。これにより、数値のばらつきのない安定したグラフgrを得ることができる。
【0101】
前記クオリティ表示作成部12によって作成されたクオリティ表示QGは、前記表示制御部6において前記超音波画像Gと合成される。これにより、前記表示部7には前記超音波画像Gの下方に前記クオリティ表示QGが表示される。前記表示部7は、本発明における報知部の実施の形態の一例である。
【0102】
前記クオリティ表示QGについてさらに詳細に説明すると、前記超音波画像Gが動画で表示される場合、前記クオリティ表示作成部12は、現在表示されている超音波画像Gにおけるクオリティ値Qnをフレーム毎にプロットすることにより、前記グラフgrを作成する。従って、前記表示部7において、前記グラフgrは、図14、図15、図16に示すように、時間の経過とともに左から右へ流れるように表示される。
【0103】
ただし、例えば前記超音波画像Gが、前記記憶部(図示省略)に記憶されたデータに基づいて作成される動画である場合、前記クオリティ表示作成部10は、再生の初めから終わりまでのグラフgrを作成し、これを前記表示部7に表示させてもよい。この場合、図17に示すように、前記クオリティ表示QGは、前記グラフgrのほかに、現在表示されている超音波画像Gがどの時間のフレームのものであるかを示す縦方向の線分bを含んでいてもよい。この線分bは、前記超音波画像Gの再生中に、左から右へ移動する(図中矢印の方向)。
【0104】
ちなみに、前記線分bの長さは、フレーム毎に算出される前記クオリティ値Qnの最小値と最大値の間の長さになっている。
【0105】
この第二変形例によれば、前記理想値XiAVに対する前記平均値XrAVの比Raに基づいて算出される前記クオリティ値Qnの時間変化を表すグラフgrからなるクオリティ表示QGが表示されるので、操作者は、前記超音波プローブ2による生体組織に対する圧迫とその弛緩の度合いが足りなかったり、また過剰であったりしないかどうかを容易に判断することができる。
【0106】
また、操作者は、前記グラフgrを見ることにより、クオリティ値Qnが高い所で前記超音波画像Gをフリーズし、この超音波画像Gを印刷等によって出力してもよい。これにより、生体組織の弾性をより正確に反映した超音波画像を印刷等によって出力することができる。さらに、前記超音波画像Gがリアルタイムで表示されている場合、操作者は、前記グラフgrを見ることによって前記超音波プローブ2による生体組織への圧迫とその弛緩の度合いを調節することもできる。
【0107】
ちなみに、第一変形例において代替弾性画像を表示する場合に、前記クオリティ表示QGを表示させてもよい。このようにすることで、算出値Yであるクオリティ値Qnが閾値YTHより低い場合は、前記表示部7に表示された弾性画像EGは代替弾性画像であることを把握することができる。
【0108】
次に、第三変形例について説明する。この第三変形例では、前記物理量平均部8は、相関係数C(0≦C≦1)が所定の閾値CTH以上である相関演算が行なわれた相関ウィンドウを選択してその変位の平均算出を行ない、平均値XrAV′を得る。そして、前記比算出部9が、前記平均値XrAV′を用いて前記比Raを算出し、また(式1)を用いてYを算出する。さらに、前記クオリティ表示作成部12が、前記算出値Yを用いて前記クオリティ表示QGを作成してもよい。
【0109】
前記平均値XrAV′は、エコー信号の強度が不十分な部分、生体組織の横ずれが生じている部分など、相関係数が低い部分の変位が除かれて得られた平均値である。仮に、相関係数が低い相関演算で得られた変位を含めて前記平均値XrAVの算出を行った場合、前記超音波プローブ2による生体組織への圧迫とその弛緩の度合いが適切であっても、例えばエコー信号の強度が弱い場合は、前記平均値XrAVが小さくなり、前記算出値Yが低くなるおそれがある。従って、この第三変形例のように、相関係数が低い部分の変位を除いて算出された平均値を用いて得られた算出値Yは、前記超音波プローブ2による生体組織への圧迫とその弛緩の度合いが適切であれば1に近い値になる。以上より、この第三変形例によれば、前記超音波プローブ2による生体組織への圧迫とその弛緩が適切な強さで行なわれていれば、前記算出値Yが閾値YTHを超える可能性が高くなる。従って、前記超音波プローブ2による圧迫とその弛緩が適切な強さで行なわれているにも拘わらず、弾性画像EGが表示されないということを防止することができる。また、操作者は弾性画像EGの表示の有無を頼りに前記超音波プローブ2による圧迫とその弛緩の強さを調節することができる。
【0110】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について図18及び図19に基づいて説明する。なお、第一実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0111】
本例の超音波診断装置20は、前記物理量平均部8及び比算出部9を備えておらず、代わりに相関係数平均部21を備えている。この相関係数平均部21は、本発明における相関係数平均部21の実施の形態の一例である。
【0112】
本例の超音波診断装置20の作用について説明する。本例において、前記相関係数平均部21は、前記物理量算出部51によって行なわれた各相関演算における相関係数Cの関心領域R(領域R(i),R(ii))における平均値Cavをフレーム毎に算出する。ここで、0≦C≦1であるので、0≦Cav≦1である。相関演算における相関係数は、1に近づくほど生体組織の弾性をより正確に反映した変位を得ることができ、一方で零に近づくほど生体組織の弾性を正確に反映した変位を得ることができなくなる。従って、前記平均値Cavが1に近づくほど弾性画像EGのクオリティが良好になり、一方で前記平均値Cavが零に近づくほど弾性画像EGのクオリティが悪くなる。
【0113】
前記平均値Cavは、前記表示制御部6に入力される。この表示制御部6は、前記平均値Cavが閾値CavTH以下であるフレームを所定の基準を満たさないエラーフレームであると判定し、その弾性画像EGを表示させない。
【0114】
前記閾値CavTHは、前記第一実施形態の閾値YTHと同様に、生体組織の弾性をある程度の度合いで正確に反映した弾性画像EGを、フレームレートが低下しすぎないように表示させることができる値に設定される。前記閾値CavTHは、図示しない記憶部に予め記憶されていてもよいし、前記操作部11において入力することによって設定されてもよい。
【0115】
本例の超音波診断装置20によれば、相関係数Cの平均値Cavが閾値CavTH以下であるエラーフレームの弾性画像EGは表示されないので、生体組織に対する圧迫とその弛緩が過剰であったり、エコー信号の強度が不十分であったりすることなどに起因して相関係数が低い相関演算で得られた変位に基づいて作成された弾性画像EGが表示されないことになる。従って、クオリティの高い弾性画像EGのみを表示することができるので、生体組織の弾性を正確に把握することができる。
【0116】
次に、第二実施形態の変形例について説明する。図20に示すように、この変形例の超音波診断装置20′は、第一実施形態の第二変形例と同様にクオリティ表示作成部22を有している。このクオリティ表示作成部22は、前記平均値CAVを前記クオリティ値Qnとしてプロットし、前記グラフgrからなるクオリティ表示QGを作成する。この時、前記クオリティ表示作成部22は、前記クオリティ値Qnの複数フレーム分の平均を算出し、この平均値をプロットしていってもよい。前記クオリティ表示作成部22は、本発明における報知部の実施の形態の一例である。
【0117】
本例においても、前記クオリティ表示QGを構成するグラフgrは、第一実施形態と同様に、時間の経過とともに左から右へ流れるように表示されてもよい。また、前記クオリティ表示QGは、前記グラフgrのほかに縦方向の線分bを含んでいてもよい。
【0118】
この変形例によれば、相関係数Cの平均値CAVであるクオリティ値Qnの時間変化を表すグラフgrからなるクオリティ表示QGが表示されるので、操作者は、表示されている弾性画像について、例えば生体組織に対する圧迫とその弛緩が過剰であったり、エコー信号の強度が不十分であったりすることなどに起因して相関係数が低い相関演算で得られた変位に基づいて作成された弾性画像データの画像であるか否かを把握することができる。
【0119】
(第三実施形態)
次に、第三実施形態について図21及び図22に基づいて説明する。なお、第一、第二実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0120】
本例の超音波診断装置30は、前記物理量平均部8、前記比算出部9、前記相関係数平均部21等を備え、さらに乗算部31を備えている。前記乗算部31は、本発明における乗算部の実施の形態の一例である。
【0121】
本例の超音波診断装置30の作用について説明する。本例においても、前記物理量平均部8は、第一実施形態の第三変形例と同様に、相関係数Cが所定の閾値CTH以上である相関演算が行なわれた相関ウィンドウを選択してその変位の平均値XrAV′を算出し、また前記比算出部9が、前記平均値XrAV′を用いて前記比Raを算出し、前記(式1)からYを算出する。また、第二実施形態と同様に、前記相関係数平均部21が相関係数Cの平均値Cavを算出する。
【0122】
そして、前記乗算部31は、前記比算出部9で得られた算出値Yと、前記相関係数平均部21で得られた相関係数Cの平均値Cavとを乗算し、乗算値Mを算出する。この乗算値Mはフレーム毎に算出される。
【0123】
ここで、前記乗算部31は、前記算出値Yと前記相関係数Cの平均値Cavとを乗算する時に、重み付けをして乗算してもよい。
【0124】
ここで、0≦Y≦1、0≦Cav≦1であるので、0≦M≦1となる。前記乗算値Mは、前記算出値Yと前記相関係数Cの平均値Cavとの乗算値であるため、乗算値Mが1に近づくほど弾性画像EGのクオリティが良好になり、一方で乗算値Mが零に近づくほど弾性画像EGのクオリティが悪くなる。
【0125】
前記乗算値Mは、前記表示制御部6に入力される。この表示制御部6は、前記乗算値Mが閾値MTH以下であるフレームを所定の基準を満たさないエラーフレームであると判定し、その弾性画像EGを表示させない。
【0126】
前記閾値MTHは、前記第一、第二実施形態の閾値YTH及び閾値CavTHと同様に、生体組織の弾性をある程度の度合いで正確に反映した弾性画像EGを、フレームレートが低下しすぎないように表示させることができる値に設定される。前記閾値MTHは、図示しない記憶部に予め記憶されていてもよいし、前記操作部11において入力することによって設定されてもよい。
【0127】
ここで、第一実施形態の第三変形例のように、所定の閾値CTH以上の相関係数の相関演算で得られた変位の平均値XrAV′から算出された算出値Yのみに基づいて弾性画像EGを表示させるか否かを判断すると、相関係数は弾性画像のクオリティの評価の要素として反映されないことになる。一方で、第二実施形態のように、相関係数Cの平均値Cavのみに基づいて弾性画像EGを表示させるか否かを判断すると、前記超音波プローブ2による生体組織への圧迫とその弛緩の度合いが足りなかったとしても、相関係数Cとしては高くなるために、前記平均値Cavが高くなり、弾性画像EGが表示されてしまうおそれがある。しかし、本例では、前記平均値XrAV′を用いて算出された前記比Raを用いて得られる算出値Yと前記相関係数Cの平均値Cavとを乗算して得られた乗算値Mは、生体組織への圧迫とその弛緩の度合いの要素と相関係数の要素とを加味したものである。従って、前記乗算値Mに基づいて弾性画像EGを表示させるか否かを判断することにより、弾性画像EGのクオリティが高いか否かの判断をより適切に行うことができる。
【0128】
次に、第三実施形態の変形例について説明する。図23に示すように、この変形例の超音波診断装置30′は、クオリティ表示作成部32を有している。このクオリティ表示作成部32は、前記乗算値Mを前記クオリティ値Qnとしてプロットし、前記クオリティ表示QGを作成する。この時、前記クオリティ表示作成部32は、前記クオリティ値Qnの複数フレーム分の平均を算出し、この平均値をプロットしていってもよい。
【0129】
本例においても、前記クオリティ表示QGを構成するグラフgrは、時間の経過とともに左から右へ流れるように表示されてもよい。また、前記クオリティ表示QGは、前記グラフgrのほかに縦方向の線分bを含んでいてもよい。
【0130】
この変形例によれば、算出値Yと相関係数Cの平均値Cavとを乗算した乗算値Mを、クオリティ値Qnとしてプロットして得られるクオリティ表示QGが表示されるので、クオリティが高い弾性画像EGであるか否かを、従来よりも幅広い観点から評価することができる。
【0131】
(第四実施形態)
次に、第四実施形態について図24及び図25に基づいて説明する。なお、第一〜第三実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0132】
本例の超音波診断装置40は、第三実施形態の超音波診断装置30と基本的構成は同じであるが、前記比算出部9で得られる算出値Y、前記相関係数平均部21で得られる相関係数の平均値Cav及び前記乗算部31で得られる乗算値Mのうち、選択されたものを用いてエラーフレームの判定が行なわれる。
【0133】
具体的には、前記操作部11において、前記算出値Y、前記相関係数Cの平均値Cav及び前記乗算値Mのうち、いずれを用いてエラーフレームの判定を行なうかが操作者により入力される。そして、この操作部11における指示入力に基づいて、前記制御部10が制御を行なって、前記比算出部9による算出値Yの算出、前記相関係数平均部21による相関係数Cの平均値Cavの算出及び前記乗算部31による乗算値Mの算出のいずれかを行なわせる。表示制御部6は、得られた値に基づいてエラーフレームの判定を行なう。具体的には、前記算出値Yが選択された場合、前記表示制御部6は、前記算出値Yが閾値YTH以下であるフレームをエラーフレームであると判定する。また、前記平均値Cavが選択された場合、前記表示制御部6は、前記平均値Cavが閾値CavTH以下であるフレームをエラーフレームであると判定する。さらに、前記乗算値Mが選択された場合、前記表示制御部6は、前記乗算値Mが閾値MTH以下であるフレームをエラーフレームであると判定する。
【0134】
操作者は、前記操作部11の指示入力を行なって、前記算出値Y、前記相関係数Cの平均値Cav及び前記乗算値Mの中から一旦選択した値の種類を変更してもよい。このように、前記操作部11によって切替の指示入力を行なうことにより、新たに選択された種類の値を用いてエラーフレームの判定が行なわれる。
【0135】
本例の超音波診断装置40によれば、前記各実施形態と同様に生体組織の弾性をより正確に反映した弾性画像のみを表示させることができるほか、エラーフレームの判定にあたり、前記比算出部9で得られる算出値Y、前記相関係数平均部21で得られる相関係数Cの平均値Cav、前記乗算部31で得られる乗算値Mを選択することができるので、エラーフレームに該当するか否かを異なる基準で判定することができ、よりクオリティが高い弾性画像EGが表示されるようにすることができる。
【0136】
次に第四実施形態の変形例について説明する。図26に示すように、この変形例の超音波診断装置40′は、クオリティ表示作成部41を有している。このクオリティ表示作成部41は、前記算出値Y、前記相関係数Cの平均値Cav及び乗算値Mのうち、いずれかがクオリティ値Qnとして選択されると、これを用いてクオリティ表示QGを作成する。また、クオリティ値Qnとして選択されたものが変更された場合、変更されたクオリティ値Qnに基づいてクオリティ表示QGを作成する。
【0137】
この変形例によれば、算出値Yを用いて作成されたクオリティ表示QG、前記相関係数Cの平均値CAVを用いて作成されたクオリティ表示QG、前記乗算値Mを用いて作成されたクオリティ表示QGを切り替えて表示させることができるので、生体組織の弾性を正確に反映した弾性画像であるか否かを、幅広い観点から評価することができる。
【0138】
(第五実施形態)
次に、第五実施形態について図27に基づいて説明する。なお、第一〜第四実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0139】
本例の超音波診断装置50は、物理量平均部8、比算出部9及び相関係数平均部21を備えている。前記比算出部9で得られた算出値Y及び前記相関係数平均部21で得られた相関係数Cの平均値Cavは、前記表示制御部6へ入力される。
【0140】
前記表示制御部6は、前記算出値Y及び相関係数Cの平均値Cavに基づいて所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像EGを表示させない。具体的には、前記表示制御部6は、前記算出値Yが閾値YTH以下であるという条件と、前記平均値Cavが閾値CavTH以下であるという条件のうち、いずれか一方の条件満たす場合、所定の基準を満たさないエラーフレームであると判定し、その弾性画像EGを表示させない。
【0141】
本例の超音波診断装置50によれば、算出値Y及び平均値Cavのうち、いずれか一方でも閾値YTH又は閾値CavTH以下であれば、弾性画像EGが表示されないので、クオリティがより高い弾性画像EGのみの表示をより確実にすることができる。
【0142】
なお、本例においても、クオリティ表示QGを表示させるようにしてもよい。この場合、算出値Y又は平均値Cavのうち、いずれかをクオリティ値Qnとしてもよいし、算出値Y及び平均値Cavを乗算して得られた乗算値Mをクオリティ値Qnとしてもよい。
【0143】
(第六実施形態)
次に、第六実施形態について図28及び図29に基づいて説明する。なお、第一〜第五実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0144】
本例の超音波診断装置60は、物理量平均部8、比算出部9、相関係数平均部21、乗算部31を有さず、また前記表示制御部6には、前記物理量算出部51において、画素毎に正負の符号を伴って算出された変位も入力される。
【0145】
前記表示制御部6は、一のフレームにおける変位の正負の符号の割合に基づいて所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像EGを表示させない。具体的には、前記表示制御部6は、先ず前記物理量算出部51において、一のフレームにおいて、画素毎に算出された変位について、正と負の個数を求める。そして、以下の(式9)又は(式10)のいずれか一方の条件を満たせば、そのフレームの弾性画像EGを表示させる。一方、(式9)及び(式10)のいずれの条件も満たさない場合、そのフレームをエラーフレームであると判定し、その弾性画像EGを表示させない。
正の個数>n×負の個数・・・(式9)
負の個数>n×正の個数・・・(式10)
ただし、(式9)及び(式10)において、n≧1である。
【0146】
ここで、一のフレームにおける変位の正負の符号の割合と弾性画像EGのクオリティとの関係について説明する。例えば、前記超音波プローブ2による圧迫とその弛緩が適切になされていれば、一のフレームにおける変位の符合の割合としては、正又は負のいずれか一方の符合の割合が大きくなる。しかし、前記超音波プローブ2による圧迫とその弛緩の方向が適切でなく、生体組織に横ずれなどが生じている場合には、一のフレームにおける変位の符合の割合は、正又は負のいずれか一方に偏らず、双方の符号の割合が拮抗したものになってくる。従って、(式9)及び(式10)のいずれの条件も満たさない場合には、正負の符号の割合が拮抗するものになることから、そのフレームをエラーフレームと判定することにしたものである。
【0147】
(式9)及び(式10)におけるnは前記操作部11において入力され設定される。そして、このnにより、エラーフレームとするか否かを判定する基準となる正負の符合の割合を設定することができる。nの値を大きくするほど、正又は負のいずれか一方の符号の割合が大きくてもエラーフレームと判定されることになり、フレームレートが低下するおそれがあるが、表示される弾性画像EGのクオリティを維持できる。一方で、nの値を小さくするほど、双方の符合の割合の差が少なくなってきてもエラーフレームと判定されないことになるので、フレームレートは維持できるが、表示される弾性画像EGのクオリティが低下するおそれがある。従って、弾性画像のクオリティとフレームレートとを考慮して、nが設定される。例えば、nは、1≦n≦2の範囲で適宜設定される。
【0148】
本例の超音波診断装置60によれば、例えば超音波プローブ2による圧迫とその弛緩の方向が適切でない状況などで取得されたエコー信号に基づいて作成され、クオリティが低い弾性画像EGは表示されない。従って、生体組織の弾性をより正確に反映した弾性画像のみを表示させることができる。
【0149】
以上、本発明を前記各実施形態によって説明したが、本発明はその主旨を変更しない範囲で種々変更実施可能なことはもちろんである。例えば、第二実施形態〜第六実施形態においても、第一実施形態の第一変形例と同様に、エラーフレームの弾性画像EGに代えて、代替弾性画像を表示させる補完処理を行なってもよい。
【0150】
また、前記比算出部9では、前記比Raのみを算出し、(式1)の演算を行わなくてもよい。この場合、前記表示制御部6は、前記比Raに基づいて所定の基準を満たさないフレームをエラーフレームとし、その弾性画像EGを表示させない。また、第一実施形態の第二変形例で示したクオリティ表示作成部12を備える場合、このクオリティ表示作成部12は、前記比|Ra|を前記クオリティ値Qnとしてプロットしてなるグラフgrを、前記クオリティ表示QGとして作成してもよい。
【0151】
前記比|Ra|を前記クオリティ値Qnとしてプロットして作成され、前記表示部7に表示されるクオリティ表示QGの一例を図30に示す。図30において、横軸は時間、縦軸は比|Ra|である。この図30に示すように、a≦|Ra|≦bの範囲に、帯状の部分Oを表示してもよい。この帯状の部分Oは、|Ra|=1を含む範囲、すなわちa<1、b>1を満たす範囲であって、クオリティが良好である弾性画像EGが得られる比|Ra|の範囲に設定される。このような帯状の部分Oを表示することにより、クオリティ表示QGがこの帯状の部分Oに入るように、操作者が前記超音波プローブ2による生体組織への圧迫と弛緩を行なえば、生体組織の弾性を正確に反映した弾性画像を得ることができる。
【0152】
前記表示制御部6は、a≦|Ra|≦bである場合、そのフレームの弾性画像EGを表示させる。ここで、一方、前記表示制御部6は、|Ra|<a又は|Ra|>bである場合、そのフレームを所定の基準を満たさないエラーフレームであると判定し、その弾性画像EGを表示させない。
【0153】
また、前記クオリティ表示QGは、グラフgrからなるものに限られず、例えば図31に示すように、バーBからなるものであってもよい。このバーBは、縦方向の長さが前記クオリティ値Qnの値(0≦Qn≦1)に相当し、クオリティ値Qnの変化とともに、縦方向に伸縮する。
【0154】
また、バーBは、クオリティ値Qnに応じて縦方向に伸縮するものではなく、クオリティ値Qnに応じて色が変化するものであってもよい。
【0155】
その他、クオリティ表示QGは、前記表示部7に数値で表示されてもよい。さらに、前記クオリティ値Qnをクオリティ表示QGとして表示するものに限られない。例えば、クオリティ値Qnを音として発するためのスピーカー(図示省略)を備えていてもよい。このスピーカーは、本発明における報知部の実施の形態の一例である。この場合には、クオリティ値Qnの高低を、音の高低で表すようにする。
【0156】
また、前記物理量算出部51は、生体組織の弾性に関する物理量として、生体組織の変形による変位の代わりに生体組織の歪みや弾性率を算出してもよい。
【符号の説明】
【0157】
1,1′,20,20′,30,30′,40,40′,50,60 超音波診断装置
6 表示制御部
7 表示部
8 物理量平均部
9 比算出部(比較部)
12 操作部
21 相関係数平均部
31 乗算部
51 物理量算出部
52 弾性画像データ作成部
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関し、特に生体組織の硬さ又は軟らかさを表す弾性画像を表示する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常のBモード画像と、生体組織の硬さ又は軟らかさを表す弾性画像とを合成して表示させる超音波診断装置が、例えば特許文献1などに開示されている。この種の超音波診断装置において、弾性画像は次のようにして作成される。先ず、生体組織に対し、超音波プローブによって体表面からの圧迫とその弛緩を繰り返しながら超音波の送受信を行い、エコー信号を取得する。そして、得られたエコー信号に基づいて、生体組織の弾性に関する物理量を算出し、この物理量を色相情報に変換してカラーの弾性画像を作成する。ちなみに、生体組織の弾性に関する物理量としては、例えば生体組織の変形による変位(以下、単に「変位」と云う)などを算出している。
【0003】
前記物理量の算出手法の一例についてもう少し説明すると、先ず時間的に異なる同一音線上の二つのエコー信号に、所定のデータ数分の幅を有する相関ウィンドウをそれぞれ設定し、この相関ウィンドウ間で相関演算を行なって前記物理量を算出する。例えば特許文献2では、相関ウィンドウ間で相関演算を行なうことによって、両エコー信号の波形のずれを算出し、この波形のずれを変位とみなしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−118152号公報
【特許文献2】特開2008−126079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、圧迫動作から弛緩動作に変わるとき、あるいはその反対に弛緩動作から圧迫動作に変わるときは、圧迫動作も弛緩動作もなされない瞬間が存在することがある。また、特に慣れていない操作者が操作を行なう場合には圧迫及びその弛緩が弱いことがある。このように圧迫又は弛緩の度合いが足りず、生体組織の変形が不十分な場合には、相関演算の算出値が生体組織の弾性の違いに応じた差となって現れないことがある。この場合、算出された物理量は、生体組織の弾性を正確に反映したものとならない。
【0006】
一方、圧迫とその弛緩の度合いが過剰である場合には、生体組織に横ずれが生じることがある。このような場合に取得されたエコー信号には横ずれによるノイズが含まれ、相関演算における相関係数が低くなるおそれがある。また、圧迫とその弛緩の度合いが過剰であると、生体組織の変形が大きすぎ、二つのエコー信号に設定される相関ウィンドウのマッチングがとれずに相関係数が低くなるおそれがある。ここで、相関演算における相関係数が低くなると、生体組織の弾性を正確に反映した物理量を得ることができない。
【0007】
また、超音波の反射体が少ない領域や送信超音波が減衰によって到達しにくい生体組織の深部などにおいては、エコー信号の強度が不十分となる。このように信号強度が不十分なエコー信号についての相関演算の相関係数は低くなる。また、前記超音波プローブの圧迫とその弛緩の方向が超音波の音線方向と一致していない場合、上述の横ずれが生じるため、このような状態で取得されたエコー信号についての相関演算の相関係数も低くなる。従って、これらの場合にも、生体組織の弾性を正確に反映した物理量を得ることができない。
【0008】
以上のように、生体組織の弾性を正確に反映していない物理量が得られ、このような物理量に基づいて作成された弾性画像は、実際の生体組織の弾性を反映した画像になっていない。従って、生体組織の弾性を正確に把握することができないおそれがある。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、生体組織の弾性を従来よりも正確に把握することができる超音波診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、第1の観点の発明は、生体組織に対する超音波の送受信により得られた同一音線上の時間的に異なる二つのエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって生体組織における各部の弾性に関する物理量を算出する物理量算出部と、前記物理量に基づいて、生体組織の弾性画像データを、超音波の送受信面における弾性画像作成領域について作成する弾性画像データ作成部と、前記弾性画像データに基づく弾性画像を表示する表示部と、該表示部における弾性画像の表示を制御する表示制御部と、前記弾性画像作成領域における前記物理量の平均をフレーム毎に算出する物理量平均部と、該物理量平均部による算出値を、予め設定された前記物理量の平均値と比較する比較部と、を備え、前記表示制御部は、前記比較部による比較結果に基づいて所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像を表示させないことを特徴とする超音波診断装置である。
【0011】
第2の観点の発明によれば、第1の観点の発明において、前記物理量平均部は、所定の閾値以上の相関係数の相関演算が行なわれた相関ウィンドウについて得られた物理量の平均算出を行なうことを特徴とする超音波診断装置である。
【0012】
第3の観点の発明は、第1又は2の観点の発明において、前記比較部は、前記比較結果として、予め設定された前記物理量の平均値に対する前記物理量平均部による算出値の比を算出することを特徴とする超音波診断装置である。
【0013】
第4の観点の発明は、第1〜3のいずれか一の観点の発明において、前記比較部による比較結果を報知する報知部を備えることを特徴とする超音波診断装置である。
【0014】
第5の観点の発明は、生体組織に対する超音波の送受信により得られた同一音線上の時間的に異なる二つのエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって生体組織における各部の弾性に関する物理量を算出する物理量算出部と、前記物理量に基づいて、生体組織の弾性画像データを、超音波の送受信面における弾性画像作成領域について作成する弾性画像データ作成部と、前記弾性画像データに基づく弾性画像を表示する表示部と、該表示部における弾性画像の表示を制御する表示制御部と、前記相関ウィンドウ間の相関演算における相関係数の前記弾性画像作成領域における平均をフレーム毎に算出する相関係数平均部と、とを備え、前記表示制御部は、前記相関係数平均部の算出結果に基づいて所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像を表示させないことを特徴とする超音波診断装置である。
【0015】
第6の観点の発明は、第5の観点の発明において、前記相関係数平均部による算出結果を報知する報知部を備えることを特徴とする超音波診断装置である。
【0016】
第7の観点の発明は、生体組織に対する超音波の送受信により得られた同一音線上の時間的に異なる二つのエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって生体組織における各部の弾性に関する物理量を算出する物理量算出部と、前記物理量に基づいて、生体組織の弾性画像データを、超音波の送受信面における弾性画像作成領域について作成する弾性画像データ作成部と、前記弾性画像データに基づく弾性画像を表示する表示部と、該表示部における弾性画像の表示を制御する表示制御部と、所定の閾値以上の相関係数の相関演算が行なわれた相関ウィンドウについて得られた物理量の前記弾性画像作成領域における平均をフレーム毎に算出する物理量平均部と、予め設定された前記物理量の平均値に対する前記物理量平均部による算出値の比を算出する比算出部と、前記相関ウィンドウ間の相関演算における相関係数の前記弾性画像作成領域における平均をフレーム毎に算出する相関係数平均部と、前記比算出部の算出値と、前記相関係数平均部の算出値とを乗算する乗算部と、を備え、前記表示制御部は、前記乗算部の算出結果に基づいて所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像を表示させないことを特徴とする超音波診断装置である。
【0017】
第8の観点の発明は、第7の観点の発明において、前記乗算部は、前記比算出部の算出値と、前記相関係数平均部の算出値との重み付け演算を行なうことを特徴とする超音波診断装置である。
【0018】
第9の観点の発明は、第7,8の観点の発明において、前記乗算部による乗算結果を報知する報知部を備えることを特徴とする超音波診断装置である。
【0019】
第10の観点の発明は、生体組織に対する超音波の送受信により得られた同一音線上の時間的に異なる二つのエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって生体組織における各部の弾性に関する物理量を算出する物理量算出部と、前記物理量に基づいて、生体組織の弾性画像データを、超音波の送受信面における弾性画像作成領域について作成する弾性画像データ作成部と、前記弾性画像データに基づく弾性画像を表示する表示部と、該表示部における弾性画像の表示を制御する表示制御部と、所定の閾値以上の相関係数の相関演算が行なわれた相関ウィンドウについて得られた物理量の前記弾性画像作成領域における平均をフレーム毎に算出する物理量平均部と、予め設定された前記物理量の平均値に対する前記物理量平均部による算出値の比を算出する比算出部と、前記相関ウィンドウ間の相関演算における相関係数の前記弾性画像作成領域における平均をフレーム毎に算出する相関係数平均部と、前記比算出部の算出値と、前記相関係数平均部の算出値とを乗算する乗算部と、前記比算出部の算出結果、前記相関係数平均部の算出結果又は前記乗算部の算出結果のうちのいずれかを選択するための指示入力を行なう操作部と、を備え、前記表示制御部は、前記操作部において選択された算出結果に基づいて所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像を表示させないことを特徴とする超音波診断装置である。
【0020】
第11の観点の発明は、第10の観点の発明において、前記比算出部の算出結果、前記相関係数平均部の算出結果又は前記乗算部の算出結果のうち、前記操作部において選択された算出結果を報知する報知部を備えることを特徴とする超音波診断装置である。
【0021】
第12の観点の発明は、生体組織に対する超音波の送受信により得られた同一音線上の時間的に異なる二つのエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって生体組織における各部の弾性に関する物理量を算出する物理量算出部と、前記物理量に基づいて、生体組織の弾性画像データを、超音波の送受信面における弾性画像作成領域について作成する弾性画像データ作成部と、前記弾性画像データに基づく弾性画像を表示する表示部と、該表示部における弾性画像の表示を制御する表示制御部と、所定の閾値以上の相関係数の相関演算が行なわれた相関ウィンドウについて得られた物理量の前記弾性画像作成領域における平均をフレーム毎に算出する物理量平均部と、予め設定された前記物理量の平均値に対する前記物理量平均部による算出値の比を算出する比算出部と、前記相関ウィンドウ間の相関演算における相関係数の前記弾性画像作成領域における平均をフレーム毎に算出する相関係数平均部と、を備え、前記表示制御部は、前記比算出部の算出結果及び前記相関係数平均部の算出結果に基づいて所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像を表示させないことを特徴とする超音波診断装置である。
【0022】
第13の観点の発明は、第12の観点の発明において、前記比算出部の算出結果又は前記相関係数平均部の算出結果のいずれかを報知する報知部を備えることを特徴とする超音波診断装置である。
【0023】
第14の観点の発明は、第12の観点の発明において、前記比算出部の算出値と、前記相関係数平均部の算出値とを乗算する乗算部と、該乗算部の算出結果を報知する報知部と、を備えることを特徴とする超音波診断装置である。
【0024】
第15の観点の発明は、生体組織に対する圧迫とその弛緩を行ないながら超音波を送受信して得られた同一音線上の時間的に異なる二つのエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって、生体組織における各部の弾性に関する物理量を、圧迫とその弛緩に応じた正負の符号を伴って算出する物理量算出部と、前記物理量に基づいて、生体組織の弾性画像データを、超音波の送受信面における弾性画像作成領域について作成する弾性画像データ作成部と、前記弾性画像データに基づく弾性画像を表示する表示部と、該表示部における弾性画像の表示を制御する表示制御部と、前記表示制御部は、一のフレームにおける前記正負の符号の割合に基づいて所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像を表示させないことを特徴とする超音波診断装置である。
【0025】
第16の観点の発明は、生体組織に対する超音波の送受信により得られた同一音線上の時間的に異なる二つのエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって生体組織における各部の弾性に関する物理量を算出する物理量算出部と、前記物理量に基づいて、生体組織の弾性画像データを、超音波の送受信面における弾性画像作成領域について作成する弾性画像データ作成部と、前記弾性画像データに基づく弾性画像を表示する表示部と、該表示部における弾性画像の表示を制御する表示制御部と、を備え、前記表示制御部は、所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像に代えて所定の代替弾性画像を表示させることを特徴とする超音波診断装置である。
【0026】
第17の観点の発明は、第16の観点の発明において、前記代替弾性画像は、前記エラーフレーム以前の数フレーム分の弾性画像データを重み付け加算処理して作成された弾性画像であることを特徴とする超音波診断装置である。
【0027】
第18の観点の発明は、第16の観点の発明において、前記代替弾性画像は、直前のフレームで表示された弾性画像のデータと、前記エラーフレームではない最新のフレームの弾性画像データとを重み付け加算処理して作成された弾性画像であることを特徴とする超音波診断装置である。
【0028】
第19の観点の発明は、第16の観点の発明において、前記直前のフレームで表示された弾性画像のデータは、エラーフレームの弾性画像データを含まない過去の数フレームの弾性画像データを重み付け加算処理して得られたデータであることを特徴とする超音波診断装置である。
【0029】
第20の観点の発明は、第16の観点において、前記代替弾性画像は、前記エラーフレームの弾性画像データと該エラーフレーム以前の弾性画像データとを重み付け加算処理して作成された弾性画像であることを特徴とする超音波診断装置である。
【0030】
第21の観点の発明は、第16の観点の発明において、前記代替弾性画像は、前記エラーフレームの直前に表示されたフレームの弾性画像であることを特徴とする超音波診断装置である。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、前記生体組織における各部の物理量の前記弾性画像作成領域における平均値と、予め設定された前記物理量の平均値とを比較した比較結果に基づいて所定の基準を満たさないエラーフレームの弾性画像は表示されない。ここで、生体組織に対する圧迫とその弛緩の度合いが足りなかったり、また過剰であったりする場合、前記比較結果に反映される。従って、前記比較結果に基づいて所定の基準を満たさないエラーフレームの弾性画像を表示させないことにより、生体組織の弾性をより正確に反映した弾性画像のみを表示することができる。これにより、生体組織の弾性を従来よりも正確に把握することができる。
【0032】
また、前記物理量平均部により、所定の閾値以上の相関係数の相関演算が行なわれた相関ウィンドウについて得られた物理量の平均値は、エコー信号の強度が不十分な部分、生体組織の横ずれが生じている部分など、相関係数が低い部分の変位が除かれて得られた平均値である。従って、このような平均値と予め設定された前記物理量の平均値との比較結果は、生体組織に対する圧迫とその弛緩が適切な強さで行なわれているか否かをより正確に示すものとなる。以上より、前記比較結果に基づいて所定の基準を満たさないエラーフレームの弾性画像を表示させないようにすることで、生体組織に対する圧迫とその弛緩が適切な強さで行なわれている状態で取得されたエコー信号に基づく弾性画像のみをより確実に表示させることができる。
【0033】
また、他の発明によれば、前記相関ウィンドウ間の相関演算における相関係数の前記弾性画像作成領域における平均が算出され、その算出結果に基づいて所定の基準を満たさないエラーフレームの弾性画像は表示されない。ここで、例えば生体組織に対する圧迫とその弛緩が過剰であったり、エコー信号の強度が不十分であったりすると相関係数の平均は低くなる。従って、相関係数の平均に基づいて所定の基準を満たさないエラーフレームの弾性画像を表示させないようにすることにより、生体組織の弾性をより正確に反映した弾性画像のみを表示させることができる。これにより、生体組織の弾性を従来よりも正確に把握することができる。
【0034】
また、他の発明によれば、所定の閾値以上の相関係数の相関演算が行なわれた相関ウィンドウについて得られた物理量の平均値を用いて前記比算出部によって算出された算出値と、前記相関係数平均部によって算出された算出値とを前記乗算部によって乗算し、この算出結果に基づいて所定の基準を満たさないエラーフレームの弾性画像は表示されない。ここで、前記乗算によって得られた算出結果は、生体組織への圧迫とその弛緩の度合いの要素と、相関係数の要素とが加味されたものである。従って、このような算出結果に基づいて所定の基準を満たさないエラーフレームの弾性画像が表示されないので、生体組織の弾性をより正確に反映した弾性画像のみを表示させることができ、生体組織の弾性を従来よりも正確に把握することができる。
【0035】
また、他の発明によれば、前記比算出部の算出結果、前記相関係数平均部の算出結果又は前記乗算部の算出結果のうち選択された算出結果に基づいて所定の基準を満たさないエラーフレームの弾性画像は表示されないので、生体組織の弾性をより正確に反映した弾性画像のみを表示させることができる。また、前記比算出部の算出結果、前記相関係数平均部の算出結果又は前記乗算部の算出結果を選択することができるので、エラーフレームに該当するか否かを異なる基準で判定することができ、より適切な弾性画像を表示させることができる。
【0036】
また、他の発明によれば、前記比算出部の算出結果及び前記相関係数平均部の算出結果に基づいて所定の基準を満たさないエラーフレームの弾性画像は表示されないので、生体組織の弾性をより正確に反映した弾性画像のみの表示をより確実にすることができる。
【0037】
また、他の発明によれば、生体組織に対する圧迫とその弛緩に応じた正負の符号の割合に基づいて所定の基準を満たさないエラーフレームの弾性画像は表示されない。ここで、圧迫とその弛緩が適切になされている場合、一のフレームにおける物理量は、同一符号の割合が高くなる。一方で、圧迫とその弛緩が適切になされていない場合、一のフレームにおける物理量は、同一符合に偏ることはない。従って、一のフレームにおける前記正負の符号の割合に基づいて、所定の基準を満たさないエラーフレームの弾性画像を表示させないことにより、生体組織の弾性をより正確に反映した弾性画像のみを表示させることができる。
【0038】
さらに、他の発明によれば、エラーフレームの弾性画像に代えて所定の代替弾性画像を表示させることにより、生体組織の弾性をより正確に反映した弾性画像を表示させつつ、弾性画像が表示されないフレームがあることによる断続的な弾性画像の表示となることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る超音波診断装置の第一実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す超音波診断装置における一部の構成を示すブロック図である。
【図3】Bモード画像データ及び弾性画像データの作成の説明図である。
【図4】図1に示す超音波診断装置における表示部の表示の一例を示す図である。
【図5】弾性画像データを作成する際における物理量の算出を説明するための図である。
【図6】比算出部で用いられる関数のグラフを示す図である。
【図7】エラーフレームにおいて、Bモード画像のみからなる超音波画像が表示された表示部を示す図である。
【図8】第一実施形態の第一変形例の説明図である。
【図9】第一実施形態の第一変形例において、フレームF4がエラーフレームではない場合の説明図である。
【図10】第一実施形態の第一変形例において、フレームF4がエラーフレームである場合の説明図である。
【図11】第一実施形態の第一変形例において、代替弾性画像の作成手法の他例を説明するための図である。
【図12】第一実施形態の第二変形例の概略構成を示すブロック図である。
【図13】クオリティ表示が表示された表示部を示す図である。
【図14】表示部の表示の一例を示し、時間の経過とともにクオリティ表示が左から右へ流れるように表示されることを説明するための図である。
【図15】表示部の表示の一例を示し、時間の経過とともにクオリティ表示が左から右へ流れるように表示されることを説明するための図である。
【図16】表示部の表示の一例を示し、時間の経過とともにクオリティ表示が左から右へ流れるように表示されることを説明するための図である。
【図17】表示部の表示の一例を示し、クオリティ表示の他例を示す図である。
【図18】本発明に係る超音波診断装置の第二実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図19】図18に示す超音波診断装置における一部の構成を示すブロック図である。
【図20】第二実施形態の変形例における超音波診断装置の概略構成を示すブロック図である。
【図21】本発明に係る超音波診断装置の第三実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図22】図21に示す超音波診断装置における一部の構成を示すブロック図である。
【図23】第三実施形態の変形例における超音波診断装置の概略構成を示すブロック図である。
【図24】本発明に係る超音波診断装置の第四実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図25】図24に示す超音波診断装置における一部の構成を示すブロック図である。
【図26】第四実施形態の変形例における超音波診断装置の概略構成を示すブロック図である。
【図27】本発明に係る超音波診断装置の第五実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図28】本発明に係る超音波診断装置の第六実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図29】図28に示す超音波診断装置における弾性画像処理部の構成を示すブロック図である。
【図30】クオリティ表示の他例を示す図である。
【図31】クオリティ表示の他例が表示された表示部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態について図1〜図7に基づいて説明する。図1に示す超音波診断装置1は、超音波プローブ2、送受信部3、Bモード画像処理部4、弾性画像処理部5、表示制御部6、表示部7、物理量平均部8、比算出部9を備え、さらに制御部10及び操作部11を備える。
【0041】
前記超音波プローブ2は、生体組織に対して超音波を送信しそのエコーを受信する。この超音波プローブ2を生体組織の表面に当接させた状態で圧迫と弛緩を繰り返しながら超音波の送受信を行なって取得されたエコー信号に基づいて、後述のように弾性画像が作成される。
【0042】
前記送受信部3は、前記超音波プローブ2を所定の走査条件で駆動させて音線毎の超音波の走査を行なう。また、前記超音波プローブ2で受信したエコー信号について、整相加算処理等の信号処理を行なう。前記送受信部3で信号処理されたエコー信号は、前記Bモード画像処理部4及び前記弾性画像処理部5に出力される。
【0043】
ちなみに、前記送受信部3は、Bモード画像を作成するための走査と、弾性画像を作成するための走査とを別に行なう。弾性画像を作成するための走査としては、被検体における弾性画像を作成する領域において、同一音線上に二回の走査を行なう。
【0044】
前記Bモード画像処理部4は、前記送受信部3から出力されたエコー信号に対し、対数圧縮処理、包絡線検波処理等のBモード処理を行ってBモードデータを作成し、さらにこのBモードデータに基づいて、エコー信号の強度に応じた輝度情報を有するBモード画像データを作成する。
【0045】
ここで、Bモード処理後のBモードデータは、図示しない記憶部にローデータ(Raw Data)として記憶されるようになっていてもよい。前記Bモード画像処理部4は、前記記憶部に記憶されたBモードデータに基づいて前記Bモード画像データを作成してもよい。
【0046】
前記弾性画像処理部5は、前記送受信部3から出力されたエコー信号に基づいて、弾性画像データを作成する。詳しく説明すると、前記弾性画像処理部5は、図2に示すように、物理量算出部51と弾性画像データ作成部52とを有している。前記物理量算出部51は、生体組織における各部の弾性に関する物理量として、前記超音波プローブ2による圧迫とその弛緩によって生じた生体組織における各部の変形による変位(以下、単に「変位」と云う)を算出する。前記物理量算出部51は、図3に示すように時間的に異なる二つのフレーム(i),(ii)に属する同一音線上における二つのエコー信号に基づいて画素毎に変位を算出する。より具体的には、前記物理量算出部51は、後述するように前記エコー信号に相関ウィンドウW1,W2を設定し(図5参照)、これら相関ウィンドウW1,W2間で相関演算を行なって変位を算出する。そして、この変位データに基づいて、前記弾性画像データ作成部52によって一画素分の弾性画像データが作成される。前記物理量算出部51は本発明における物理量算出部の実施の形態の一例である。
【0047】
ここで、前記物理量算出部51によって算出される変位は、生体組織に対する圧迫とその弛緩に応じた正負の符号を伴って算出される。例えば、圧迫時には主に負の符号の変位が算出され、弛緩時には主に正の符号の変位が算出される。
【0048】
前記弾性画像データ作成部52は、前記物理量算出部51によって算出された変位を色相情報に変換し、超音波の送受信面における弾性画像作成領域(本例では後述の関心領域R)についての弾性画像データを作成する。前記弾性画像データ作成部52は本発明における弾性画像データ作成部の実施の形態の一例である。
【0049】
ちなみに、図3に示すように、異なる二つのフレーム(i),(ii)に属するエコー信号から一フレーム分の弾性画像データが作成される。一方で、Bモード画像データは、前記フレーム(i),(ii)のいずれかのエコー信号から作成される。
【0050】
本例では、図4に示すように前記表示部7に表示されたBモード画像BG上に関心領域(ROI:Region Of Interest)Rが設定され、この関心領域Rについて前記弾性画像データが作成される。前記関心領域Rは本発明における弾性画像作成領域の実施の形態の一例である。ただし、本発明は、このように前記Bモード画像BGの一部について弾性画像を作成する場合に限られるものではなく、前記Bモード画像BGの全体について前記弾性画像データを作成してもよい。
【0051】
ここで、前記物理量算出部51によって得られた変位データは、ローデータとして図示しない記憶部に記憶されていてもよい。前記弾性画像データ作成部52は、前記記憶部に記憶された変位データに基づいて弾性画像データを作成してもよい。
【0052】
前記Bモード画像処理部4で作成されたBモード画像データと、前記弾性画像処理部5で作成された弾性画像データは、前記表示制御部6で合成される。具体的には、この表示制御部6は、一フレーム分の前記Bモード画像データと前記弾性画像データとを加算処理し、前記表示部7に表示する一フレーム分の超音波画像データを作成する。そして、前記表示制御部6は、得られた超音波画像データに基づく超音波画像Gを前記表示部7に表示させる。超音波画像Gは、図4に示すように白黒のBモード画像BGとカラーの弾性画像EGとが合成された画像である。本例では、前記弾性画像EGは、前記関心領域R内に半透明で(背景のBモード画像が透けた状態で)表示される。前記表示制御部6は本発明における表示制御部の実施の形態の一例であり、また前記表示部7は本発明における表示部の実施の形態の一例である。
【0053】
ただし、前記表示制御部6は、前記比算出部9によって後述するようにして算出される算出値Yに基づいて所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像EGを表示させない。この場合、前記表示制御部6はBモード画像データと弾性画像データとを合成せず、Bモード画像BGのみからなる超音波画像を表示させる(図7参照)。詳細は後述する。
【0054】
前記物理量平均部8は、一画素毎に算出された変位の前記関心領域Rにおける平均をフレーム毎に算出する。前記物理量平均部8の算出値を平均値XrAVとする。前記物理量平均部8は、本発明における物理量平均部の実施の形態の一例である。
【0055】
前記比算出部9は、変位の平均の理想値XiAVに対する前記平均値XrAVの比Raを算出し、さらに後述するように(式1)の演算を行なう。前記比算出部9は、本発明における比較部及び比算出部の実施の形態の一例である。また、前記理想値XiAVは、本発明における予め設定された物理量の平均値の実施の形態の一例である。
【0056】
ここで、前記理想値XiAVは、生体組織の弾性をより正確に反映した弾性画像を得ることができる強さで、超音波の送受信時に前記超音波プローブ2による生体組織への圧迫とその弛緩が行なわれた場合に、任意に設定される領域において得られる変位の平均値である。この理想値XiAVは、例えば腫瘍と同じ硬さの部分や正常組織と同じ硬さの部分などからなるファントム等を対象として実験を行ない、経験上得られる値である。また、この理想値XiAVは、操作者が前記操作部11において設定できるようになっていてもよいし、デフォルトとして装置に記憶されていてもよい。
【0057】
前記制御部10は、CPU(Central Processing Unit)で構成され、図示しない記憶部に記憶された制御プログラムを読み出し、前記超音波診断装置1の各部における機能を実行させる。また、前記操作部11は、操作者が指示や情報を入力するためのキーボード及びポインティングデバイス(図示省略)などを含んで構成されている。
【0058】
さて、本例の超音波診断装置1の作用について説明する。先ず、前記送受信部3は、前記超音波プローブ2から被検体の生体組織へ超音波を送信させ、そのエコー信号を取得する。このとき、前記超音波プローブ2により、被検体への圧迫とその弛緩を繰り返しながら超音波の送受信を行う。
【0059】
そして、前記Bモード画像処理部4は、前記エコー信号に基づいてBモード画像データを作成する。また、前記弾性画像処理部5は、前記エコー信号に基づいて弾性画像データを作成する。前記Bモード画像データと前記弾性画像データは、前記表示制御部6で合成され、図4に示すようにBモード画像BGと弾性画像EGとが合成された超音波画像Gが前記表示部7に表示される。ただし、エラーフレームの弾性画像EGについては表示されない。
【0060】
前記弾性画像処理部5における弾性画像データの作成及び弾性画像EGの表示について詳細に説明する。前記弾性画像データを作成するにあたり、前記物理量算出部51は、フレーム(i),(ii)に属するエコー信号のそれぞれに相関ウィンドウを設定する。具体的には、前記物理量算出部51は、図5に示すようにフレーム(i)に属するエコー信号に相関ウィンドウW1を設定し、フレーム(ii)に属するエコー信号に相関ウィンドウW2を設定する。これら相関ウィンドウW1,W2は位置画素に対応する。そして、前記物理量算出部51は、前記相関ウィンドウW1,W2間で相関演算を行なって変位を算出する。
【0061】
具体的に説明すると、図5において、前記フレーム(i),(ii)は、複数本の音線上において取得されたエコー信号からなる。図5では、前記フレーム(i)における複数本の音線の一部として、五本の音線L1a,L1b,L1c,L1d,L1eが示され、また前記フレーム(ii)において前記音線L1a〜L1eに対応する音線として、音線L2a,L2b,L2c,L2d,L2eが示されている。すなわち、前記音線L1a及び前記音線L2a、前記音線L1b及び前記音線L2b、前記音線L1c及び前記音線L2c、前記音線L1d及び前記音線L2d、前記音線L1e及び前記音線L2eは、異なる二つのフレームに属する同一音線に該当する。また、図5においてR(i),R(ii)は、前記関心領域Rに対応する領域を示している。
【0062】
例えば、前記音線L1c上のエコー信号に、前記相関ウィンドウW1として相関ウィンドウW1cが設定され、前記音線L2c上のエコー信号に、前記相関ウィンドウW2として相関ウィンドウW2cが設定されたとする。前記物理量算出部51は、前記相関ウィンドウW1c,W2c間で相関演算を行ない、変位を算出する。前記物理量算出部51は、前記音線L1c,L2c上において、前記領域R(i),R(ii)の上端100から下端101まで相関ウィンドウW1c,W2cを順次設定し、変位を算出する。また、前記物理量算出部51は、前記領域R(i),R(ii)内の他の音線についても同様にして変位を算出する。そして、このようにして前記物理量算出部51によって変位が算出されると、この変位に基づいて前記弾性画像データ作成部52が弾性画像データを作成する。
【0063】
次に、弾性画像EGの表示について説明する。前記表示制御部6は、前記比算出部9の算出値Yに基づいて所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像EGについては表示させない。詳しく説明すると、先ず前記物理量平均部8が、前記関心領域R(前記領域R(i),R(ii))における変位の平均値XrAVを算出する。ちなみに、変位は負になることもあることから、前記平均値XrAVは負になることもあるものとする。次に、前記比算出部9が、XrAV/XiAVの演算を行ない、前記比Raを算出する。さらに、前記比算出部9は、前記比Raを次の(式1)に代入し、数値Yを得る。
Y=1.0−|log10|Ra||・・・(式1)
ここで、Yは、フレーム毎に得られる算出値である。この算出値Yは、本発明において比較部による比較結果及び比算出部の算出値の実施の形態の一例である。
【0064】
ちなみに、この(式1)は、前記比Raを0から1までの範囲にするためのものであり、この(式1)で得られるYは、前記理想値XiAVに対する平均値XrAVの比と同等である。この(式1)で表される関数をグラフで表すと、図6に示すグラフとなる。この図6に示すように、0≦Y≦1となる。
【0065】
また、0.1≦|Ra|≦10であるものとし、|Ra|がこの範囲を超えた場合、Yは零とする。
【0066】
前記比算出部9の算出値Yは、弾性画像のクオリティを表す数値である。算出値Yが1に近くなるほど、弾性画像のクオリティとしては良好であることを意味し、一方で算出値Yが0に近くなるほど、弾性画像のクオリティとしては悪くなることを意味する。ここで、弾性画像のクオリティが良好であるとは、生体組織の弾性をより正確に反映した弾性画像であることを意味し、一方で弾性画像のクオリティが悪いとは、生体組織の弾性を正確に反映した弾性画像ではないことを意味する。
【0067】
算出値Yと弾性画像のクオリティとの関係についてより詳細に説明すると、図6のグラフから分かるように、前記平均値XrAVが前記理想値XiAVと等しい場合(すなわち、|Ra|が1)、算出値Yは1となる。従って、算出値Yが1、または1に近い値であれば、前記超音波プローブ2による生体組織に対する圧迫とその弛緩の度合いが適切であり、生体組織の弾性を正確に反映した弾性画像EGが得られていることになる。
【0068】
一方で、前記平均値XrAVが前記理想値XiAVと離れた値になるほど(すなわち、|Ra|が1から離れた値になるほど)、算出値Yは零に近づく。ここで、前記平均値XrAVが前記理想値XiAVと離れた値になるということは、前記超音波プローブ2による生体組織に対する圧迫やその弛緩の度合いが足りない、または過剰であることを意味する。従って、算出値Yが零に近づくほど、生体組織に対する圧迫やその弛緩の度合いが足りないか、または過剰である結果、生体組織の弾性を正確に反映した弾性画像EGが得られていないことになる。
【0069】
前記算出値Yは、前記表示制御部6に入力される。この表示制御部6は、前記算出値Yに基づいて所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像EGを前記表示部7に表示させない。具体的には、前記表示制御部6は、算出値Yが閾値YTH以下であるフレームを所定の基準を満たさないエラーフレームであると判定し、その弾性画像EGを表示させない。
【0070】
ここで、算出値Yが閾値YTH以下であるエラーフレームの弾性画像EGを表示させないとは、エラーフレームにおいては、図7に示すようにBモード画像BGのみからなる超音波画像Gが表示されるという意味である。従って、エラーフレームについては、前記表示制御部6はBモード画像データと弾性画像データとを合成せず、Bモード画像データをBモード画像BGとしてそのまま表示させる。
【0071】
前記閾値YTHについて説明する。0≦Y≦1であるため、閾値YTHも0以上1以下の範囲で設定される。閾値YTHが高すぎると、生体組織の弾性をできるだけ正確に反映した弾性画像EGのみを表示させることができるものの、弾性画像EGのフレームレートが低下しすぎる恐れがある。一方で、閾値YTHが低すぎると弾性画像EGのフレームレートは良好であるものの、生体組織の弾性を正確に反映していない弾性画像EGが表示される割合が高くなる。従って、閾値YTHは、生体組織の弾性をある程度の度合いで正確に反映した弾性画像EGを、フレームレートが低下しすぎないように表示させることができる値に設定される。
【0072】
閾値YTHは、図示しない記憶部に予め記憶されていてもよいし、前記操作部11において入力することによって設定されてもよい。
【0073】
本例の超音波診断装置1によれば、前記理想値XiAVに対する前記平均値XrAVの比Raに基づいて算出される算出値Yが所定の閾値YTH以下であるエラーフレームの弾性画像EGは表示されない。従って、生体組織に対する圧迫とその弛緩の度合いが足りなかったり、また過剰であったりする状態で取得されたエコー信号に基づく弾性画像EGが表示されないことになる。これにより、クオリティの高い弾性画像EGのみを表示することができるので、生体組織の弾性を従来よりも正確に把握することができる。
【0074】
次に、第一実施形態の変形例について説明する。先ず、第一変形例について説明する。この第一変形例では、エラーフレームの弾性画像EGに代えて、代替弾性画像を表示させる補完処理を行ってもよい。具体的に説明する。図8に示すように、過去にフレームF1,F2,F3についての超音波画像データD1,D2,D3に基づく超音波画像Gが表示され、次にフレームF4の超音波画像Gが表示される時点を例に挙げて説明する。ちなみに、前記超音波画像データD1はBモード画像データBD1及び弾性画像データED1からなり、前記超音波画像データD2はBモード画像データBD2及び弾性画像データED2からなり、前記超音波画像データD3はBモード画像データBD3及び弾性画像データED3からなる。
【0075】
フレームF4について得られたBモード画像データ及び弾性画像データを、Bモード画像データBD4及び弾性画像データED4とする。フレームF4についての前記比算出部9の算出値Yが閾値YTHを超えている場合、すなわちフレームF4がエラーフレームではない場合、前記表示制御部6は、図9に示すように前記BモードデータBD4と前記弾性画像データED4とを合成して超音波画像データD4を作成し、この超音波画像データD4に基づく超音波画像Gを表示させる。
【0076】
一方、フレームF4についての前記比算出部9の算出値Yが閾値YTH以下である場合、すなわちフレームF4がエラーフレームである場合、フレームF4よりも前に表示されたフレームF1,F2,F3についての弾性画像を重み付け加算処理して得られた代替弾性画像を表示させる。
【0077】
前記重み付け加算処理についてより詳細に説明する。前記表示制御部6は、図10に示すように、フレームF1,F2,F3についての弾性画像データED1,ED2,ED3を重み付け加算処理して弾性画像データED4′を作成する。すなわち、前記表示制御部6は、前記弾性画像データED1,ED2,ED3における対応画素値を重み付け加算し、得られた画素値からなる弾性画像データED4′を作成する。ただし、重み付け加算処理として、前記物理量算出部51で得られたフレームF1,F2,F3の弾性データについて、対応画素の変位を重み付け加算し、得られた変位からなるデータを前記弾性画像データ作成部52が色相情報に変換して弾性画像データED4′を作成してもよい。すなわち、本発明における弾性画像データについての重み付け加算処理には、物理量算出部51で得られた弾性データの重み付け加算処理も含まれるものとする。
【0078】
重み付け加算処理で用いる重み付け係数は、フレームF1,F2,F3で等しくてもよいし、異なっていてもよい。
【0079】
前記表示制御部6は、得られた弾性画像データED4′とBモード画像データBD4とを合成して超音波画像データD4を作成し、この超音波画像データD4に基づく超音波画像Gを表示させる。これにより、弾性画像データED4に基づく弾性画像に代えて、弾性画像データED4′に基づく弾性画像が代替弾性画像として表示される。前記弾性画像データED4′に基づく弾性画像は、本発明における所定の代替弾性画像の実施の形態の一例である。
【0080】
前記弾性画像データED4′に基づく弾性画像EGは、算出値Yが閾値YTHを超えているとして表示されたフレームF1〜F3における弾性画像EGのデータを重み付け加算処理して得られたデータであるため、閾値YTHを超えた算出値Yが得られた弾性画像と同等のクオリティを有する弾性画像となる。従って、クオリティの高い弾性画像EGを常に表示させることができ、しかも弾性画像EGが表示されないフレームを無くすことができるので断続的な弾性画像EGの表示となることを防止することができる。
【0081】
ただし、前記表示制御部6は、算出値Yが閾値YTH以下であるエラーフレームが所定数連続した場合、補完処理を中止して代替弾性画像を表示させないようにしてもよい。
【0082】
なお、エラーフレームであるフレームF4を含めた重み付け加算処理、すなわち、フレームF1〜F4について重み付け加算処理を行なってもよい。
【0083】
また、代替弾性画像は、エラーフレームであるフレームF4の直前に表示されたフレームF3の弾性画像であってもよい。
【0084】
なお、代替弾性画像の作成は上述の手法に限られるものではない。代替弾性画像の作成手法の他例について図11に基づいて説明する。
【0085】
この図11に示すフレームF1〜F5において、フレームF1〜F3はエラーフレームではないものとし、フレームF4,F5はエラーフレームであるものとする。そして、フレームF1〜F5においては、超音波画像データD1〜D5に基づく超音波画像Gが表示されるものとする。前記超音波画像データD1は、Bモード画像データBD1及び表示弾性画像データED1dからなり、前記超音波画像データD2は、Bモード画像データBD2及び表示弾性画像データED2dからなる。また、前記超音波画像データD3は、Bモード画像データBD3及び表示弾性画像データED3dからなり、前記超音波画像データD4は、Bモード画像データBD4及び表示弾性画像データED4dからなる。さらに、前記超音波画像データD5は、Bモード画像データBD5及び表示弾性画像データED5dからなる。
【0086】
フレームF2〜F5において、前記弾性画像データ作成部52で得られたデータを、弾性画像データED2,ED3,ED4,ED5とする。ここでは、弾性画像データ作成部52で得られた弾性画像データをそのまま弾性画像EGとして表示するわけではなく、直前に表示された弾性画像のデータと重み付け加算することにより得られたデータに基づく弾性画像EGが表示される。これにより、過去のフレームが考慮された弾性画像が表示される。従って、ここでは、表示された弾性画像のデータを表示弾性画像データとし、前記弾性画像データ作成部52で得られた弾性画像データとは区別するものとする。
【0087】
詳しく説明すると、フレームF2において表示される弾性画像EGは、表示弾性画像データED2dに基づく画像である。この表示弾性画像データED2dは、フレームF2において、前記弾性画像データ作成部52で得られた弾性画像データED2と直前のフレームF1における表示弾性画像データED1dとを重み付け加算して得られたデータである。すなわち、表示弾性画像データED2dは、下記の(式2)に基づいて作成される。
ED2d=k×ED2+(1−k)ED1d・・・(式2)
ただし、0<k<1とする。
【0088】
また、フレームF3において表示される弾性画像EGは、表示弾性画像データED3dに基づく画像である。この表示弾性画像データED3dは、下記(式3)に基づいて作成される。
ED3d=k×ED3+(1−k)ED2d・・・(式3)
【0089】
すなわち、エラーフレームではないフレームについては、下記の(式4)に基づいて表示弾性画像データEDmdが作成される。
EDmd=k×EDm+(1−k)ED(m−1)d・・・(式4)
ここで、(式4)において、mはフレームの番号を表す自然数である。
【0090】
次に、フレームF4について説明する。仮に、フレームF4についても前記(式4)を用いるとすると、下記の(式5)に基づいて表示弾性画像データED4d′が作成されることになる。
ED4d′=k×ED4+(1−k)ED3d・・・(式5)
【0091】
しかし、フレームF4はエラーフレームであり、前記(式5)から得られた前記表示弾性画像データED4d′は、生体組織の弾性を正確に反映していない弾性画像データED4を含むため、前記表示弾性画像データED4d′に基づく弾性画像EGはクオリティが低い画像になる。そこで、エラーフレームであるフレームF4については、下記の(式6)に基づいて表示弾性画像データED4dが作成され、この表示弾性画像データED4dに基づく弾性画像EGが表示されるものとする。
ED4d=k×ED3+(1−k)ED3d・・・(式6)
【0092】
従って、前記表示弾性画像データED4d′に基づく弾性画像EGに代えて、表示弾性画像データED4dに基づく弾性画像EGが表示されることになる。前記表示弾性画像データED4d′に基づく弾性画像EGは、本発明におけるエラーフレームの弾性画像EGの実施の形態の一例である。また、表示弾性画像データED4dに基づく弾性画像EGは、本発明における所定の代替弾性画像の実施の形態の一例である。
【0093】
同様に、エラーフレームであるフレームF5については、下記の(式7)に基づいて表示弾性画像データED5dが作成され、この表示弾性画像データED5dに基づく弾性画像EGが表示される。
ED5d=k×ED3+(1−k)ED4d・・・(式7)
【0094】
この(式7)から得られた表示弾性画像データED5に基づく弾性画像EGは、本発明における所定の代替弾性画像の実施の形態の一例である。
【0095】
すなわち、エラーフレームについては、下記の(式8)に基づいて表示弾性画像データEDmdが作成される。
EDmd=k×EDz+(1−k)ED(m−1)d・・・(式8)
この(式8)において、zはフレームの番号を表す自然数である。
【0096】
ここで、(式8)において、EDzはエラーフレームではない最新のフレームにおいて、前記弾性画像データ作成部52で得られた弾性画像データである。また、表示弾性画像データED(m−1)dは、直前のフレームで表示された弾性画像のデータであって、エラーフレームの弾性画像データを含まない過去の数フレームの弾性画像データを重み付け加算処理して得られたデータである。
【0097】
以上より、表示弾性画像データは、エラーフレームの弾性画像データを含まないで作成されるため、弾性画像EGのクオリティを維持することができる。
【0098】
また、エラーフレームである場合、(式8)に示すように、直前のフレームの表示弾性画像データED(m−1)dと、エラーフレームではない最新のフレームの弾性画像データEDz(この例では弾性画像データED3)とが重み付け加算して得られた表示弾性画像データに基づく弾性画像EGが表示される。従って、エラーフレームが連続した場合であっても、エラーフレームではない最新のフレームの弾性画像データの割合が少しずつ高まるような表示弾性画像データEDmdが得られ、弾性画像EGがフリーズしたような表示になることを防止できる。
【0099】
ちなみに、上記図11で説明した手法による代替弾性画像の作成では、弾性画像データの段階において重み付け加算処理を行なっているが、前記物理量算出部51で得られた弾性データの段階において重み付け加算処理を行なってもよい。
【0100】
次に、第二変形例について説明する。図12に示すように、この第二変形例の超音波診断装置1′は、クオリティ表示作成部12を備えている。このクオリティ表示作成部12には、前記比算出部9の算出値Yが入力される。そして、前記クオリティ表示作成部12は、フレーム毎の前記算出値Yを弾性画像EGのクオリティ値Qnとしてプロットし、横軸が時間、縦軸が前記クオリティ値Qnを表すグラフgrからなるクオリティ表示QG(図13参照)を作成する。この時、前記クオリティ表示作成部12は、前記クオリティ値Qnの複数フレーム分の平均を算出し、この平均値をプロットしていってもよい。これにより、数値のばらつきのない安定したグラフgrを得ることができる。
【0101】
前記クオリティ表示作成部12によって作成されたクオリティ表示QGは、前記表示制御部6において前記超音波画像Gと合成される。これにより、前記表示部7には前記超音波画像Gの下方に前記クオリティ表示QGが表示される。前記表示部7は、本発明における報知部の実施の形態の一例である。
【0102】
前記クオリティ表示QGについてさらに詳細に説明すると、前記超音波画像Gが動画で表示される場合、前記クオリティ表示作成部12は、現在表示されている超音波画像Gにおけるクオリティ値Qnをフレーム毎にプロットすることにより、前記グラフgrを作成する。従って、前記表示部7において、前記グラフgrは、図14、図15、図16に示すように、時間の経過とともに左から右へ流れるように表示される。
【0103】
ただし、例えば前記超音波画像Gが、前記記憶部(図示省略)に記憶されたデータに基づいて作成される動画である場合、前記クオリティ表示作成部10は、再生の初めから終わりまでのグラフgrを作成し、これを前記表示部7に表示させてもよい。この場合、図17に示すように、前記クオリティ表示QGは、前記グラフgrのほかに、現在表示されている超音波画像Gがどの時間のフレームのものであるかを示す縦方向の線分bを含んでいてもよい。この線分bは、前記超音波画像Gの再生中に、左から右へ移動する(図中矢印の方向)。
【0104】
ちなみに、前記線分bの長さは、フレーム毎に算出される前記クオリティ値Qnの最小値と最大値の間の長さになっている。
【0105】
この第二変形例によれば、前記理想値XiAVに対する前記平均値XrAVの比Raに基づいて算出される前記クオリティ値Qnの時間変化を表すグラフgrからなるクオリティ表示QGが表示されるので、操作者は、前記超音波プローブ2による生体組織に対する圧迫とその弛緩の度合いが足りなかったり、また過剰であったりしないかどうかを容易に判断することができる。
【0106】
また、操作者は、前記グラフgrを見ることにより、クオリティ値Qnが高い所で前記超音波画像Gをフリーズし、この超音波画像Gを印刷等によって出力してもよい。これにより、生体組織の弾性をより正確に反映した超音波画像を印刷等によって出力することができる。さらに、前記超音波画像Gがリアルタイムで表示されている場合、操作者は、前記グラフgrを見ることによって前記超音波プローブ2による生体組織への圧迫とその弛緩の度合いを調節することもできる。
【0107】
ちなみに、第一変形例において代替弾性画像を表示する場合に、前記クオリティ表示QGを表示させてもよい。このようにすることで、算出値Yであるクオリティ値Qnが閾値YTHより低い場合は、前記表示部7に表示された弾性画像EGは代替弾性画像であることを把握することができる。
【0108】
次に、第三変形例について説明する。この第三変形例では、前記物理量平均部8は、相関係数C(0≦C≦1)が所定の閾値CTH以上である相関演算が行なわれた相関ウィンドウを選択してその変位の平均算出を行ない、平均値XrAV′を得る。そして、前記比算出部9が、前記平均値XrAV′を用いて前記比Raを算出し、また(式1)を用いてYを算出する。さらに、前記クオリティ表示作成部12が、前記算出値Yを用いて前記クオリティ表示QGを作成してもよい。
【0109】
前記平均値XrAV′は、エコー信号の強度が不十分な部分、生体組織の横ずれが生じている部分など、相関係数が低い部分の変位が除かれて得られた平均値である。仮に、相関係数が低い相関演算で得られた変位を含めて前記平均値XrAVの算出を行った場合、前記超音波プローブ2による生体組織への圧迫とその弛緩の度合いが適切であっても、例えばエコー信号の強度が弱い場合は、前記平均値XrAVが小さくなり、前記算出値Yが低くなるおそれがある。従って、この第三変形例のように、相関係数が低い部分の変位を除いて算出された平均値を用いて得られた算出値Yは、前記超音波プローブ2による生体組織への圧迫とその弛緩の度合いが適切であれば1に近い値になる。以上より、この第三変形例によれば、前記超音波プローブ2による生体組織への圧迫とその弛緩が適切な強さで行なわれていれば、前記算出値Yが閾値YTHを超える可能性が高くなる。従って、前記超音波プローブ2による圧迫とその弛緩が適切な強さで行なわれているにも拘わらず、弾性画像EGが表示されないということを防止することができる。また、操作者は弾性画像EGの表示の有無を頼りに前記超音波プローブ2による圧迫とその弛緩の強さを調節することができる。
【0110】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について図18及び図19に基づいて説明する。なお、第一実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0111】
本例の超音波診断装置20は、前記物理量平均部8及び比算出部9を備えておらず、代わりに相関係数平均部21を備えている。この相関係数平均部21は、本発明における相関係数平均部21の実施の形態の一例である。
【0112】
本例の超音波診断装置20の作用について説明する。本例において、前記相関係数平均部21は、前記物理量算出部51によって行なわれた各相関演算における相関係数Cの関心領域R(領域R(i),R(ii))における平均値Cavをフレーム毎に算出する。ここで、0≦C≦1であるので、0≦Cav≦1である。相関演算における相関係数は、1に近づくほど生体組織の弾性をより正確に反映した変位を得ることができ、一方で零に近づくほど生体組織の弾性を正確に反映した変位を得ることができなくなる。従って、前記平均値Cavが1に近づくほど弾性画像EGのクオリティが良好になり、一方で前記平均値Cavが零に近づくほど弾性画像EGのクオリティが悪くなる。
【0113】
前記平均値Cavは、前記表示制御部6に入力される。この表示制御部6は、前記平均値Cavが閾値CavTH以下であるフレームを所定の基準を満たさないエラーフレームであると判定し、その弾性画像EGを表示させない。
【0114】
前記閾値CavTHは、前記第一実施形態の閾値YTHと同様に、生体組織の弾性をある程度の度合いで正確に反映した弾性画像EGを、フレームレートが低下しすぎないように表示させることができる値に設定される。前記閾値CavTHは、図示しない記憶部に予め記憶されていてもよいし、前記操作部11において入力することによって設定されてもよい。
【0115】
本例の超音波診断装置20によれば、相関係数Cの平均値Cavが閾値CavTH以下であるエラーフレームの弾性画像EGは表示されないので、生体組織に対する圧迫とその弛緩が過剰であったり、エコー信号の強度が不十分であったりすることなどに起因して相関係数が低い相関演算で得られた変位に基づいて作成された弾性画像EGが表示されないことになる。従って、クオリティの高い弾性画像EGのみを表示することができるので、生体組織の弾性を正確に把握することができる。
【0116】
次に、第二実施形態の変形例について説明する。図20に示すように、この変形例の超音波診断装置20′は、第一実施形態の第二変形例と同様にクオリティ表示作成部22を有している。このクオリティ表示作成部22は、前記平均値CAVを前記クオリティ値Qnとしてプロットし、前記グラフgrからなるクオリティ表示QGを作成する。この時、前記クオリティ表示作成部22は、前記クオリティ値Qnの複数フレーム分の平均を算出し、この平均値をプロットしていってもよい。前記クオリティ表示作成部22は、本発明における報知部の実施の形態の一例である。
【0117】
本例においても、前記クオリティ表示QGを構成するグラフgrは、第一実施形態と同様に、時間の経過とともに左から右へ流れるように表示されてもよい。また、前記クオリティ表示QGは、前記グラフgrのほかに縦方向の線分bを含んでいてもよい。
【0118】
この変形例によれば、相関係数Cの平均値CAVであるクオリティ値Qnの時間変化を表すグラフgrからなるクオリティ表示QGが表示されるので、操作者は、表示されている弾性画像について、例えば生体組織に対する圧迫とその弛緩が過剰であったり、エコー信号の強度が不十分であったりすることなどに起因して相関係数が低い相関演算で得られた変位に基づいて作成された弾性画像データの画像であるか否かを把握することができる。
【0119】
(第三実施形態)
次に、第三実施形態について図21及び図22に基づいて説明する。なお、第一、第二実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0120】
本例の超音波診断装置30は、前記物理量平均部8、前記比算出部9、前記相関係数平均部21等を備え、さらに乗算部31を備えている。前記乗算部31は、本発明における乗算部の実施の形態の一例である。
【0121】
本例の超音波診断装置30の作用について説明する。本例においても、前記物理量平均部8は、第一実施形態の第三変形例と同様に、相関係数Cが所定の閾値CTH以上である相関演算が行なわれた相関ウィンドウを選択してその変位の平均値XrAV′を算出し、また前記比算出部9が、前記平均値XrAV′を用いて前記比Raを算出し、前記(式1)からYを算出する。また、第二実施形態と同様に、前記相関係数平均部21が相関係数Cの平均値Cavを算出する。
【0122】
そして、前記乗算部31は、前記比算出部9で得られた算出値Yと、前記相関係数平均部21で得られた相関係数Cの平均値Cavとを乗算し、乗算値Mを算出する。この乗算値Mはフレーム毎に算出される。
【0123】
ここで、前記乗算部31は、前記算出値Yと前記相関係数Cの平均値Cavとを乗算する時に、重み付けをして乗算してもよい。
【0124】
ここで、0≦Y≦1、0≦Cav≦1であるので、0≦M≦1となる。前記乗算値Mは、前記算出値Yと前記相関係数Cの平均値Cavとの乗算値であるため、乗算値Mが1に近づくほど弾性画像EGのクオリティが良好になり、一方で乗算値Mが零に近づくほど弾性画像EGのクオリティが悪くなる。
【0125】
前記乗算値Mは、前記表示制御部6に入力される。この表示制御部6は、前記乗算値Mが閾値MTH以下であるフレームを所定の基準を満たさないエラーフレームであると判定し、その弾性画像EGを表示させない。
【0126】
前記閾値MTHは、前記第一、第二実施形態の閾値YTH及び閾値CavTHと同様に、生体組織の弾性をある程度の度合いで正確に反映した弾性画像EGを、フレームレートが低下しすぎないように表示させることができる値に設定される。前記閾値MTHは、図示しない記憶部に予め記憶されていてもよいし、前記操作部11において入力することによって設定されてもよい。
【0127】
ここで、第一実施形態の第三変形例のように、所定の閾値CTH以上の相関係数の相関演算で得られた変位の平均値XrAV′から算出された算出値Yのみに基づいて弾性画像EGを表示させるか否かを判断すると、相関係数は弾性画像のクオリティの評価の要素として反映されないことになる。一方で、第二実施形態のように、相関係数Cの平均値Cavのみに基づいて弾性画像EGを表示させるか否かを判断すると、前記超音波プローブ2による生体組織への圧迫とその弛緩の度合いが足りなかったとしても、相関係数Cとしては高くなるために、前記平均値Cavが高くなり、弾性画像EGが表示されてしまうおそれがある。しかし、本例では、前記平均値XrAV′を用いて算出された前記比Raを用いて得られる算出値Yと前記相関係数Cの平均値Cavとを乗算して得られた乗算値Mは、生体組織への圧迫とその弛緩の度合いの要素と相関係数の要素とを加味したものである。従って、前記乗算値Mに基づいて弾性画像EGを表示させるか否かを判断することにより、弾性画像EGのクオリティが高いか否かの判断をより適切に行うことができる。
【0128】
次に、第三実施形態の変形例について説明する。図23に示すように、この変形例の超音波診断装置30′は、クオリティ表示作成部32を有している。このクオリティ表示作成部32は、前記乗算値Mを前記クオリティ値Qnとしてプロットし、前記クオリティ表示QGを作成する。この時、前記クオリティ表示作成部32は、前記クオリティ値Qnの複数フレーム分の平均を算出し、この平均値をプロットしていってもよい。
【0129】
本例においても、前記クオリティ表示QGを構成するグラフgrは、時間の経過とともに左から右へ流れるように表示されてもよい。また、前記クオリティ表示QGは、前記グラフgrのほかに縦方向の線分bを含んでいてもよい。
【0130】
この変形例によれば、算出値Yと相関係数Cの平均値Cavとを乗算した乗算値Mを、クオリティ値Qnとしてプロットして得られるクオリティ表示QGが表示されるので、クオリティが高い弾性画像EGであるか否かを、従来よりも幅広い観点から評価することができる。
【0131】
(第四実施形態)
次に、第四実施形態について図24及び図25に基づいて説明する。なお、第一〜第三実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0132】
本例の超音波診断装置40は、第三実施形態の超音波診断装置30と基本的構成は同じであるが、前記比算出部9で得られる算出値Y、前記相関係数平均部21で得られる相関係数の平均値Cav及び前記乗算部31で得られる乗算値Mのうち、選択されたものを用いてエラーフレームの判定が行なわれる。
【0133】
具体的には、前記操作部11において、前記算出値Y、前記相関係数Cの平均値Cav及び前記乗算値Mのうち、いずれを用いてエラーフレームの判定を行なうかが操作者により入力される。そして、この操作部11における指示入力に基づいて、前記制御部10が制御を行なって、前記比算出部9による算出値Yの算出、前記相関係数平均部21による相関係数Cの平均値Cavの算出及び前記乗算部31による乗算値Mの算出のいずれかを行なわせる。表示制御部6は、得られた値に基づいてエラーフレームの判定を行なう。具体的には、前記算出値Yが選択された場合、前記表示制御部6は、前記算出値Yが閾値YTH以下であるフレームをエラーフレームであると判定する。また、前記平均値Cavが選択された場合、前記表示制御部6は、前記平均値Cavが閾値CavTH以下であるフレームをエラーフレームであると判定する。さらに、前記乗算値Mが選択された場合、前記表示制御部6は、前記乗算値Mが閾値MTH以下であるフレームをエラーフレームであると判定する。
【0134】
操作者は、前記操作部11の指示入力を行なって、前記算出値Y、前記相関係数Cの平均値Cav及び前記乗算値Mの中から一旦選択した値の種類を変更してもよい。このように、前記操作部11によって切替の指示入力を行なうことにより、新たに選択された種類の値を用いてエラーフレームの判定が行なわれる。
【0135】
本例の超音波診断装置40によれば、前記各実施形態と同様に生体組織の弾性をより正確に反映した弾性画像のみを表示させることができるほか、エラーフレームの判定にあたり、前記比算出部9で得られる算出値Y、前記相関係数平均部21で得られる相関係数Cの平均値Cav、前記乗算部31で得られる乗算値Mを選択することができるので、エラーフレームに該当するか否かを異なる基準で判定することができ、よりクオリティが高い弾性画像EGが表示されるようにすることができる。
【0136】
次に第四実施形態の変形例について説明する。図26に示すように、この変形例の超音波診断装置40′は、クオリティ表示作成部41を有している。このクオリティ表示作成部41は、前記算出値Y、前記相関係数Cの平均値Cav及び乗算値Mのうち、いずれかがクオリティ値Qnとして選択されると、これを用いてクオリティ表示QGを作成する。また、クオリティ値Qnとして選択されたものが変更された場合、変更されたクオリティ値Qnに基づいてクオリティ表示QGを作成する。
【0137】
この変形例によれば、算出値Yを用いて作成されたクオリティ表示QG、前記相関係数Cの平均値CAVを用いて作成されたクオリティ表示QG、前記乗算値Mを用いて作成されたクオリティ表示QGを切り替えて表示させることができるので、生体組織の弾性を正確に反映した弾性画像であるか否かを、幅広い観点から評価することができる。
【0138】
(第五実施形態)
次に、第五実施形態について図27に基づいて説明する。なお、第一〜第四実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0139】
本例の超音波診断装置50は、物理量平均部8、比算出部9及び相関係数平均部21を備えている。前記比算出部9で得られた算出値Y及び前記相関係数平均部21で得られた相関係数Cの平均値Cavは、前記表示制御部6へ入力される。
【0140】
前記表示制御部6は、前記算出値Y及び相関係数Cの平均値Cavに基づいて所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像EGを表示させない。具体的には、前記表示制御部6は、前記算出値Yが閾値YTH以下であるという条件と、前記平均値Cavが閾値CavTH以下であるという条件のうち、いずれか一方の条件満たす場合、所定の基準を満たさないエラーフレームであると判定し、その弾性画像EGを表示させない。
【0141】
本例の超音波診断装置50によれば、算出値Y及び平均値Cavのうち、いずれか一方でも閾値YTH又は閾値CavTH以下であれば、弾性画像EGが表示されないので、クオリティがより高い弾性画像EGのみの表示をより確実にすることができる。
【0142】
なお、本例においても、クオリティ表示QGを表示させるようにしてもよい。この場合、算出値Y又は平均値Cavのうち、いずれかをクオリティ値Qnとしてもよいし、算出値Y及び平均値Cavを乗算して得られた乗算値Mをクオリティ値Qnとしてもよい。
【0143】
(第六実施形態)
次に、第六実施形態について図28及び図29に基づいて説明する。なお、第一〜第五実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0144】
本例の超音波診断装置60は、物理量平均部8、比算出部9、相関係数平均部21、乗算部31を有さず、また前記表示制御部6には、前記物理量算出部51において、画素毎に正負の符号を伴って算出された変位も入力される。
【0145】
前記表示制御部6は、一のフレームにおける変位の正負の符号の割合に基づいて所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像EGを表示させない。具体的には、前記表示制御部6は、先ず前記物理量算出部51において、一のフレームにおいて、画素毎に算出された変位について、正と負の個数を求める。そして、以下の(式9)又は(式10)のいずれか一方の条件を満たせば、そのフレームの弾性画像EGを表示させる。一方、(式9)及び(式10)のいずれの条件も満たさない場合、そのフレームをエラーフレームであると判定し、その弾性画像EGを表示させない。
正の個数>n×負の個数・・・(式9)
負の個数>n×正の個数・・・(式10)
ただし、(式9)及び(式10)において、n≧1である。
【0146】
ここで、一のフレームにおける変位の正負の符号の割合と弾性画像EGのクオリティとの関係について説明する。例えば、前記超音波プローブ2による圧迫とその弛緩が適切になされていれば、一のフレームにおける変位の符合の割合としては、正又は負のいずれか一方の符合の割合が大きくなる。しかし、前記超音波プローブ2による圧迫とその弛緩の方向が適切でなく、生体組織に横ずれなどが生じている場合には、一のフレームにおける変位の符合の割合は、正又は負のいずれか一方に偏らず、双方の符号の割合が拮抗したものになってくる。従って、(式9)及び(式10)のいずれの条件も満たさない場合には、正負の符号の割合が拮抗するものになることから、そのフレームをエラーフレームと判定することにしたものである。
【0147】
(式9)及び(式10)におけるnは前記操作部11において入力され設定される。そして、このnにより、エラーフレームとするか否かを判定する基準となる正負の符合の割合を設定することができる。nの値を大きくするほど、正又は負のいずれか一方の符号の割合が大きくてもエラーフレームと判定されることになり、フレームレートが低下するおそれがあるが、表示される弾性画像EGのクオリティを維持できる。一方で、nの値を小さくするほど、双方の符合の割合の差が少なくなってきてもエラーフレームと判定されないことになるので、フレームレートは維持できるが、表示される弾性画像EGのクオリティが低下するおそれがある。従って、弾性画像のクオリティとフレームレートとを考慮して、nが設定される。例えば、nは、1≦n≦2の範囲で適宜設定される。
【0148】
本例の超音波診断装置60によれば、例えば超音波プローブ2による圧迫とその弛緩の方向が適切でない状況などで取得されたエコー信号に基づいて作成され、クオリティが低い弾性画像EGは表示されない。従って、生体組織の弾性をより正確に反映した弾性画像のみを表示させることができる。
【0149】
以上、本発明を前記各実施形態によって説明したが、本発明はその主旨を変更しない範囲で種々変更実施可能なことはもちろんである。例えば、第二実施形態〜第六実施形態においても、第一実施形態の第一変形例と同様に、エラーフレームの弾性画像EGに代えて、代替弾性画像を表示させる補完処理を行なってもよい。
【0150】
また、前記比算出部9では、前記比Raのみを算出し、(式1)の演算を行わなくてもよい。この場合、前記表示制御部6は、前記比Raに基づいて所定の基準を満たさないフレームをエラーフレームとし、その弾性画像EGを表示させない。また、第一実施形態の第二変形例で示したクオリティ表示作成部12を備える場合、このクオリティ表示作成部12は、前記比|Ra|を前記クオリティ値Qnとしてプロットしてなるグラフgrを、前記クオリティ表示QGとして作成してもよい。
【0151】
前記比|Ra|を前記クオリティ値Qnとしてプロットして作成され、前記表示部7に表示されるクオリティ表示QGの一例を図30に示す。図30において、横軸は時間、縦軸は比|Ra|である。この図30に示すように、a≦|Ra|≦bの範囲に、帯状の部分Oを表示してもよい。この帯状の部分Oは、|Ra|=1を含む範囲、すなわちa<1、b>1を満たす範囲であって、クオリティが良好である弾性画像EGが得られる比|Ra|の範囲に設定される。このような帯状の部分Oを表示することにより、クオリティ表示QGがこの帯状の部分Oに入るように、操作者が前記超音波プローブ2による生体組織への圧迫と弛緩を行なえば、生体組織の弾性を正確に反映した弾性画像を得ることができる。
【0152】
前記表示制御部6は、a≦|Ra|≦bである場合、そのフレームの弾性画像EGを表示させる。ここで、一方、前記表示制御部6は、|Ra|<a又は|Ra|>bである場合、そのフレームを所定の基準を満たさないエラーフレームであると判定し、その弾性画像EGを表示させない。
【0153】
また、前記クオリティ表示QGは、グラフgrからなるものに限られず、例えば図31に示すように、バーBからなるものであってもよい。このバーBは、縦方向の長さが前記クオリティ値Qnの値(0≦Qn≦1)に相当し、クオリティ値Qnの変化とともに、縦方向に伸縮する。
【0154】
また、バーBは、クオリティ値Qnに応じて縦方向に伸縮するものではなく、クオリティ値Qnに応じて色が変化するものであってもよい。
【0155】
その他、クオリティ表示QGは、前記表示部7に数値で表示されてもよい。さらに、前記クオリティ値Qnをクオリティ表示QGとして表示するものに限られない。例えば、クオリティ値Qnを音として発するためのスピーカー(図示省略)を備えていてもよい。このスピーカーは、本発明における報知部の実施の形態の一例である。この場合には、クオリティ値Qnの高低を、音の高低で表すようにする。
【0156】
また、前記物理量算出部51は、生体組織の弾性に関する物理量として、生体組織の変形による変位の代わりに生体組織の歪みや弾性率を算出してもよい。
【符号の説明】
【0157】
1,1′,20,20′,30,30′,40,40′,50,60 超音波診断装置
6 表示制御部
7 表示部
8 物理量平均部
9 比算出部(比較部)
12 操作部
21 相関係数平均部
31 乗算部
51 物理量算出部
52 弾性画像データ作成部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織に対する超音波の送受信により得られた同一音線上の時間的に異なる二つのエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって生体組織における各部の弾性に関する物理量を算出する物理量算出部と、
前記物理量に基づいて、生体組織の弾性画像データを、超音波の送受信面における弾性画像作成領域について作成する弾性画像データ作成部と、
前記弾性画像データに基づく弾性画像を表示する表示部と、
該表示部における弾性画像の表示を制御する表示制御部と、
前記弾性画像作成領域における前記物理量の平均をフレーム毎に算出する物理量平均部と、
該物理量平均部による算出値を、予め設定された前記物理量の平均値と比較する比較部と、を備え、
前記表示制御部は、前記比較部による比較結果に基づいて所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像を表示させない
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記物理量平均部は、所定の閾値以上の相関係数の相関演算が行なわれた相関ウィンドウについて得られた物理量の平均算出を行なうことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記比較部は、前記比較結果として、予め設定された前記物理量の平均値に対する前記物理量平均部による算出値の比を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記比較部による比較結果を報知する報知部を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
生体組織に対する超音波の送受信により得られた同一音線上の時間的に異なる二つのエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって生体組織における各部の弾性に関する物理量を算出する物理量算出部と、
前記物理量に基づいて、生体組織の弾性画像データを、超音波の送受信面における弾性画像作成領域について作成する弾性画像データ作成部と、
前記弾性画像データに基づく弾性画像を表示する表示部と、
該表示部における弾性画像の表示を制御する表示制御部と、
前記相関ウィンドウ間の相関演算における相関係数の前記弾性画像作成領域における平均をフレーム毎に算出する相関係数平均部と、とを備え、
前記表示制御部は、前記相関係数平均部の算出結果に基づいて所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像を表示させない
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
前記相関係数平均部による算出結果を報知する報知部を備えることを特徴とする請求項5に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
生体組織に対する超音波の送受信により得られた同一音線上の時間的に異なる二つのエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって生体組織における各部の弾性に関する物理量を算出する物理量算出部と、
前記物理量に基づいて、生体組織の弾性画像データを、超音波の送受信面における弾性画像作成領域について作成する弾性画像データ作成部と、
前記弾性画像データに基づく弾性画像を表示する表示部と、
該表示部における弾性画像の表示を制御する表示制御部と、
所定の閾値以上の相関係数の相関演算が行なわれた相関ウィンドウについて得られた物理量の前記弾性画像作成領域における平均をフレーム毎に算出する物理量平均部と、
予め設定された前記物理量の平均値に対する前記物理量平均部による算出値の比を算出する比算出部と、
前記相関ウィンドウ間の相関演算における相関係数の前記弾性画像作成領域における平均をフレーム毎に算出する相関係数平均部と、
前記比算出部の算出値と、前記相関係数平均部の算出値とを乗算する乗算部と、を備え、
前記表示制御部は、前記乗算部の算出結果に基づいて所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像を表示させない
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項8】
前記乗算部は、前記比算出部の算出値と、前記相関係数平均部の算出値との重み付け演算を行なうことを特徴とする請求項7に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記乗算部による乗算結果を報知する報知部を備えることを特徴とする請求項7又は8に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
生体組織に対する超音波の送受信により得られた同一音線上の時間的に異なる二つのエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって生体組織における各部の弾性に関する物理量を算出する物理量算出部と、
前記物理量に基づいて、生体組織の弾性画像データを、超音波の送受信面における弾性画像作成領域について作成する弾性画像データ作成部と、
前記弾性画像データに基づく弾性画像を表示する表示部と、
該表示部における弾性画像の表示を制御する表示制御部と、
所定の閾値以上の相関係数の相関演算が行なわれた相関ウィンドウについて得られた物理量の前記弾性画像作成領域における平均をフレーム毎に算出する物理量平均部と、
予め設定された前記物理量の平均値に対する前記物理量平均部による算出値の比を算出する比算出部と、
前記相関ウィンドウ間の相関演算における相関係数の前記弾性画像作成領域における平均をフレーム毎に算出する相関係数平均部と、
前記比算出部の算出値と、前記相関係数平均部の算出値とを乗算する乗算部と、
前記比算出部の算出結果、前記相関係数平均部の算出結果又は前記乗算部の算出結果のうちのいずれかを選択するための指示入力を行なう操作部と、を備え、
前記表示制御部は、前記操作部において選択された算出結果に基づいて所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像を表示させない
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項11】
前記比算出部の算出結果、前記相関係数平均部の算出結果又は前記乗算部の算出結果のうち、前記操作部において選択された算出結果を報知する報知部を備えることを特徴とする請求項10に記載の超音波診断装置。
【請求項12】
生体組織に対する超音波の送受信により得られた同一音線上の時間的に異なる二つのエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって生体組織における各部の弾性に関する物理量を算出する物理量算出部と、
前記物理量に基づいて、生体組織の弾性画像データを、超音波の送受信面における弾性画像作成領域について作成する弾性画像データ作成部と、
前記弾性画像データに基づく弾性画像を表示する表示部と、
該表示部における弾性画像の表示を制御する表示制御部と、
所定の閾値以上の相関係数の相関演算が行なわれた相関ウィンドウについて得られた物理量の前記弾性画像作成領域における平均をフレーム毎に算出する物理量平均部と、
予め設定された前記物理量の平均値に対する前記物理量平均部による算出値の比を算出する比算出部と、
前記相関ウィンドウ間の相関演算における相関係数の前記弾性画像作成領域における平均をフレーム毎に算出する相関係数平均部と、を備え、
前記表示制御部は、前記比算出部の算出結果及び前記相関係数平均部の算出結果に基づいて所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像を表示させない
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項13】
前記比算出部の算出結果又は前記相関係数平均部の算出結果のいずれかを報知する報知部を備えることを特徴とする請求項12に記載の超音波診断装置。
【請求項14】
前記比算出部の算出値と、前記相関係数平均部の算出値とを乗算する乗算部と、
該乗算部の算出結果を報知する報知部と、
を備えることを特徴とする請求項12に記載の超音波診断装置。
【請求項15】
生体組織に対する圧迫とその弛緩を行ないながら超音波を送受信して得られた同一音線上の時間的に異なる二つのエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって、生体組織における各部の弾性に関する物理量を、圧迫とその弛緩に応じた正負の符号を伴って算出する物理量算出部と、
前記物理量に基づいて、生体組織の弾性画像データを、超音波の送受信面における弾性画像作成領域について作成する弾性画像データ作成部と、
前記弾性画像データに基づく弾性画像を表示する表示部と、
該表示部における弾性画像の表示を制御する表示制御部と、
前記表示制御部は、一のフレームにおける前記正負の符号の割合に基づいて所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像を表示させない
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項16】
生体組織に対する超音波の送受信により得られた同一音線上の時間的に異なる二つのエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって生体組織における各部の弾性に関する物理量を算出する物理量算出部と、
前記物理量に基づいて、生体組織の弾性画像データを、超音波の送受信面における弾性画像作成領域について作成する弾性画像データ作成部と、
前記弾性画像データに基づく弾性画像を表示する表示部と
該表示部における弾性画像の表示を制御する表示制御部と、を備え、
前記表示制御部は、所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像に代えて所定の代替弾性画像を表示させる
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項17】
前記代替弾性画像は、前記エラーフレーム以前の数フレーム分の弾性画像データを重み付け加算処理して作成された弾性画像であることを特徴とする請求項16に記載の超音波診断装置。
【請求項18】
前記代替弾性画像は、直前に表示された弾性画像のデータと、前記エラーフレームではない最新のフレームの弾性画像データとを重み付け加算処理して作成された弾性画像であることを特徴とする請求項16に記載の超音波診断装置。
【請求項19】
前記直前に表示された弾性画像のデータは、エラーフレームの弾性画像データを含まない過去の数フレームの弾性画像データを重み付け加算処理して得られたデータであることを特徴とする請求項16に記載の超音波診断装置。
【請求項20】
前記代替弾性画像は、前記エラーフレームの弾性画像データと該エラーフレーム以前の弾性画像データとを重み付け加算処理して作成された弾性画像であることを特徴とする請求項16に記載の超音波診断装置。
【請求項21】
前記代替弾性画像は、前記エラーフレームの直前に表示されたフレームの弾性画像であることを特徴とする請求項16に記載の超音波診断装置。
【請求項1】
生体組織に対する超音波の送受信により得られた同一音線上の時間的に異なる二つのエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって生体組織における各部の弾性に関する物理量を算出する物理量算出部と、
前記物理量に基づいて、生体組織の弾性画像データを、超音波の送受信面における弾性画像作成領域について作成する弾性画像データ作成部と、
前記弾性画像データに基づく弾性画像を表示する表示部と、
該表示部における弾性画像の表示を制御する表示制御部と、
前記弾性画像作成領域における前記物理量の平均をフレーム毎に算出する物理量平均部と、
該物理量平均部による算出値を、予め設定された前記物理量の平均値と比較する比較部と、を備え、
前記表示制御部は、前記比較部による比較結果に基づいて所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像を表示させない
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記物理量平均部は、所定の閾値以上の相関係数の相関演算が行なわれた相関ウィンドウについて得られた物理量の平均算出を行なうことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記比較部は、前記比較結果として、予め設定された前記物理量の平均値に対する前記物理量平均部による算出値の比を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記比較部による比較結果を報知する報知部を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
生体組織に対する超音波の送受信により得られた同一音線上の時間的に異なる二つのエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって生体組織における各部の弾性に関する物理量を算出する物理量算出部と、
前記物理量に基づいて、生体組織の弾性画像データを、超音波の送受信面における弾性画像作成領域について作成する弾性画像データ作成部と、
前記弾性画像データに基づく弾性画像を表示する表示部と、
該表示部における弾性画像の表示を制御する表示制御部と、
前記相関ウィンドウ間の相関演算における相関係数の前記弾性画像作成領域における平均をフレーム毎に算出する相関係数平均部と、とを備え、
前記表示制御部は、前記相関係数平均部の算出結果に基づいて所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像を表示させない
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
前記相関係数平均部による算出結果を報知する報知部を備えることを特徴とする請求項5に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
生体組織に対する超音波の送受信により得られた同一音線上の時間的に異なる二つのエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって生体組織における各部の弾性に関する物理量を算出する物理量算出部と、
前記物理量に基づいて、生体組織の弾性画像データを、超音波の送受信面における弾性画像作成領域について作成する弾性画像データ作成部と、
前記弾性画像データに基づく弾性画像を表示する表示部と、
該表示部における弾性画像の表示を制御する表示制御部と、
所定の閾値以上の相関係数の相関演算が行なわれた相関ウィンドウについて得られた物理量の前記弾性画像作成領域における平均をフレーム毎に算出する物理量平均部と、
予め設定された前記物理量の平均値に対する前記物理量平均部による算出値の比を算出する比算出部と、
前記相関ウィンドウ間の相関演算における相関係数の前記弾性画像作成領域における平均をフレーム毎に算出する相関係数平均部と、
前記比算出部の算出値と、前記相関係数平均部の算出値とを乗算する乗算部と、を備え、
前記表示制御部は、前記乗算部の算出結果に基づいて所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像を表示させない
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項8】
前記乗算部は、前記比算出部の算出値と、前記相関係数平均部の算出値との重み付け演算を行なうことを特徴とする請求項7に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記乗算部による乗算結果を報知する報知部を備えることを特徴とする請求項7又は8に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
生体組織に対する超音波の送受信により得られた同一音線上の時間的に異なる二つのエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって生体組織における各部の弾性に関する物理量を算出する物理量算出部と、
前記物理量に基づいて、生体組織の弾性画像データを、超音波の送受信面における弾性画像作成領域について作成する弾性画像データ作成部と、
前記弾性画像データに基づく弾性画像を表示する表示部と、
該表示部における弾性画像の表示を制御する表示制御部と、
所定の閾値以上の相関係数の相関演算が行なわれた相関ウィンドウについて得られた物理量の前記弾性画像作成領域における平均をフレーム毎に算出する物理量平均部と、
予め設定された前記物理量の平均値に対する前記物理量平均部による算出値の比を算出する比算出部と、
前記相関ウィンドウ間の相関演算における相関係数の前記弾性画像作成領域における平均をフレーム毎に算出する相関係数平均部と、
前記比算出部の算出値と、前記相関係数平均部の算出値とを乗算する乗算部と、
前記比算出部の算出結果、前記相関係数平均部の算出結果又は前記乗算部の算出結果のうちのいずれかを選択するための指示入力を行なう操作部と、を備え、
前記表示制御部は、前記操作部において選択された算出結果に基づいて所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像を表示させない
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項11】
前記比算出部の算出結果、前記相関係数平均部の算出結果又は前記乗算部の算出結果のうち、前記操作部において選択された算出結果を報知する報知部を備えることを特徴とする請求項10に記載の超音波診断装置。
【請求項12】
生体組織に対する超音波の送受信により得られた同一音線上の時間的に異なる二つのエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって生体組織における各部の弾性に関する物理量を算出する物理量算出部と、
前記物理量に基づいて、生体組織の弾性画像データを、超音波の送受信面における弾性画像作成領域について作成する弾性画像データ作成部と、
前記弾性画像データに基づく弾性画像を表示する表示部と、
該表示部における弾性画像の表示を制御する表示制御部と、
所定の閾値以上の相関係数の相関演算が行なわれた相関ウィンドウについて得られた物理量の前記弾性画像作成領域における平均をフレーム毎に算出する物理量平均部と、
予め設定された前記物理量の平均値に対する前記物理量平均部による算出値の比を算出する比算出部と、
前記相関ウィンドウ間の相関演算における相関係数の前記弾性画像作成領域における平均をフレーム毎に算出する相関係数平均部と、を備え、
前記表示制御部は、前記比算出部の算出結果及び前記相関係数平均部の算出結果に基づいて所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像を表示させない
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項13】
前記比算出部の算出結果又は前記相関係数平均部の算出結果のいずれかを報知する報知部を備えることを特徴とする請求項12に記載の超音波診断装置。
【請求項14】
前記比算出部の算出値と、前記相関係数平均部の算出値とを乗算する乗算部と、
該乗算部の算出結果を報知する報知部と、
を備えることを特徴とする請求項12に記載の超音波診断装置。
【請求項15】
生体組織に対する圧迫とその弛緩を行ないながら超音波を送受信して得られた同一音線上の時間的に異なる二つのエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって、生体組織における各部の弾性に関する物理量を、圧迫とその弛緩に応じた正負の符号を伴って算出する物理量算出部と、
前記物理量に基づいて、生体組織の弾性画像データを、超音波の送受信面における弾性画像作成領域について作成する弾性画像データ作成部と、
前記弾性画像データに基づく弾性画像を表示する表示部と、
該表示部における弾性画像の表示を制御する表示制御部と、
前記表示制御部は、一のフレームにおける前記正負の符号の割合に基づいて所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像を表示させない
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項16】
生体組織に対する超音波の送受信により得られた同一音線上の時間的に異なる二つのエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって生体組織における各部の弾性に関する物理量を算出する物理量算出部と、
前記物理量に基づいて、生体組織の弾性画像データを、超音波の送受信面における弾性画像作成領域について作成する弾性画像データ作成部と、
前記弾性画像データに基づく弾性画像を表示する表示部と
該表示部における弾性画像の表示を制御する表示制御部と、を備え、
前記表示制御部は、所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像に代えて所定の代替弾性画像を表示させる
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項17】
前記代替弾性画像は、前記エラーフレーム以前の数フレーム分の弾性画像データを重み付け加算処理して作成された弾性画像であることを特徴とする請求項16に記載の超音波診断装置。
【請求項18】
前記代替弾性画像は、直前に表示された弾性画像のデータと、前記エラーフレームではない最新のフレームの弾性画像データとを重み付け加算処理して作成された弾性画像であることを特徴とする請求項16に記載の超音波診断装置。
【請求項19】
前記直前に表示された弾性画像のデータは、エラーフレームの弾性画像データを含まない過去の数フレームの弾性画像データを重み付け加算処理して得られたデータであることを特徴とする請求項16に記載の超音波診断装置。
【請求項20】
前記代替弾性画像は、前記エラーフレームの弾性画像データと該エラーフレーム以前の弾性画像データとを重み付け加算処理して作成された弾性画像であることを特徴とする請求項16に記載の超音波診断装置。
【請求項21】
前記代替弾性画像は、前記エラーフレームの直前に表示されたフレームの弾性画像であることを特徴とする請求項16に記載の超音波診断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2011−87782(P2011−87782A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−244114(P2009−244114)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】
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