説明

超音波診断装置

【課題】超音波プローブの内部温度の上昇を抑制しながらも高画質の超音波画像を得ることができる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】超音波プローブ内に配置され、振動子アレイから出力された受信信号を処理する信号処理手段と、超音波プローブに電力を供給するバッテリと、バッテリの電池残量を検出する電池残量検出手段と、信号処理手段を冷却する蓄熱手段と、蓄熱手段の蓄熱残容量を検出する蓄熱残容量検出手段とを有し、電池残量検出手段および蓄熱残容量検出手段の検出結果に応じて、超音波プローブの動作モードを変更することにより、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を送受信することにより生体内の臓器等の撮像を行って、診断のために用いられる超音波診断画像を生成する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療分野において、超音波画像を利用した超音波診断装置が実用化されている。一般に、この種の超音波診断装置は、振動子アレイを内蔵した超音波プローブと、この超音波プローブに接続された装置本体とを有しており、超音波プローブから被検体に向けて超音波を送信し、被検体からの超音波エコーを超音波プローブで受信して、その受信信号を装置本体で電気的に処理することにより超音波画像が生成される。
【0003】
このような超音波診断装置では、振動子アレイから超音波を送信することで、振動子アレイから発熱が生じる。
ところが、通常、操作者が片手で超音波プローブを把持して振動子アレイの超音波送受信面を被検体の表面に当接しつつ診断を行うので、超音波プローブは操作者が片手で容易に把持し得る程度の小さな筺体内に収容されることが多い。このため、振動子アレイからの発熱により超音波プローブの筺体内が温度上昇することがある。
【0004】
また、近年、超音波プローブに信号処理のための回路基板を内蔵し、振動子アレイから出力された受信信号をデジタル処理した上で無線通信あるいは有線通信により装置本体に伝送することにより、ノイズの影響を低減して高画質の超音波画像を得るようにした超音波診断装置が提案されている。
この種のデジタル処理を行う超音波プローブでは、受信信号の処理時においても回路基板からの発熱が生じ、回路基板の各回路の安定した動作を保証するために筺体内の温度上昇を抑制する必要がある。
また、デジタル処理を行なう超音波プローブでは、回路基板に電力を供給するために、バッテリを内蔵する場合もある。バッテリで電力を供給する場合には、回路基板からの発熱の抑制に加えて、超音波プローブの駆動時間延長のためにも、省電力化することが求められる。
【0005】
例えば、特許文献1には、バッテリと、バッテリの電力残量を測定するバッテリ電力残量測定部と、電力残量が閾値以下の場合、省力モードに変更・設定するモード設定部と、省力モードに従って超音波プローブ及び装置本体に対して供給される電力を制限する供給電力制御部とを有する超音波診断装置が記載されている。
また、基板回路の冷却の例として、特許文献2には、電池パックが、蓄熱材量で形成された冷却部を有し、電池パックを電子機器に装着することで、冷却部が電子機器の電子部品を冷却すると共に、電池パックを電子機器から取り外してバッテリを充電する際に、冷却部を冷却することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−167083号公報
【特許文献2】特開2006−092894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のように、バッテリの電力残量が閾値以下となった場合に、省力モードに変更するのみでは、省力モード以外のモードで動作する際には、発熱を低減することはできず、超音波プローブの温度が上昇する。
また、特許文献2のように、電池パックが、蓄熱材量で形成された冷却部を有し、この冷却部が、装置の電子部品を冷却する場合には、バッテリの電力が尽きるタイミングと、冷却部の蓄熱残容量が尽きるタイミングが異なるおそれがある。そのため、例えば、冷却部の蓄熱残容量が尽きて、バッテリの電力が十分に残っている場合には、装置の電子部品を冷却することができないため、発熱を低減することができず、超音波プローブの温度が上昇してしまう。逆に、冷却部の蓄熱残容量が十分に残っていても、バッテリの電力が尽きた場合には、超音波プローブを動作させることができなくなってしまう。
【0008】
本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解決することにあり、超音波プローブの内部温度の上昇を抑制しながらも高画質の超音波画像を得ることができる超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は、超音波プローブの振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームを送信すると共に、被検体からの超音波エコーを受信した前記振動子アレイから出力された受信信号に基づいて超音波画像を生成する超音波診断装置において、前記超音波プローブ内に配置され、前記振動子アレイから出力された受信信号を処理する信号処理手段と、前記超音波プローブに配置され、前記超音波プローブに電力を供給するバッテリと、前記バッテリの電池残量を検出する電池残量検出手段と、前記超音波プローブに配置され、前記信号処理手段を冷却する蓄熱手段と、前記蓄熱手段の蓄熱残容量を検出する蓄熱残容量検出手段とを有し、前記電池残量検出手段および前記蓄熱残容量検出手段の検出結果に応じて、前記超音波プローブの動作モードを変更することを特徴とする超音波診断装置を提供する。
【0010】
さらに、前記超音波プローブの動作モードとして、通常モードと、前記通常モードよりもエネルギの消費が少ない省電力モードとが設定されており、前記蓄熱部の蓄熱残容量が、所定の蓄熱残容量以下となった場合、あるいは、前記バッテリの電池残量が、所定の電池残量以下となった場合に、前記超音波プローブの動作モードを、前記省電力モードに変更することが好ましい。
また、前記省電力モードでは、撮像の繰り返し間隔を大きくすることが好ましい。
また、前記省電力モードでは、前記振動子アレイの送受信チャンネル数を少なくすることが好ましい。
また、前記省電力モードでは、前記信号処理手段に供給する電流を小さくすることが好ましい。
【0011】
また、前記蓄熱残容量検出手段が、前記蓄熱手段の温度を測定するものであり、前記蓄熱手段の温度が所定の温度を超えた場合に、前記超音波プローブの動作モードを前記省電力モードに切り替えることが好ましい。
また、前記バッテリが、前記超音波プローブに着脱可能に設けられていることが好ましい。
また、前記蓄熱手段が、前記超音波プローブに着脱可能に設けられていることが好ましい。
あるいは、前記バッテリと前記蓄熱手段とが、一体的に、前記超音波プローブに着脱可能に設けられていることが好ましい。
【0012】
また、前記蓄熱手段の蓄熱残容量と、前記超音波プローブの消費電力とから、前記蓄熱残容量が前記所定の蓄熱残容量に達するまでの残時間を算出し、かつ、前記バッテリの電池残量と、前記超音波プローブの消費電力とから、前記電池残量が前記所定の電池残量に達するまでの残時間を算出して、短い方の残時間を表示手段に表示することが好ましい。
また、前記蓄熱手段の材料の相変化温度が40〜50℃であることが好ましい。
また、前記超音波プローブが、無線通信によって、診断装置本体との間で、前記受信信号の送受信を行なうことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
上記構成を有する本発明の超音波画像生成方法によれば、振動子アレイから出力された受信信号を処理する信号処理手段と、超音波プローブに電力を供給するバッテリと、バッテリの電池残量を検出する電池残量検出手段と、信号処理手段を冷却する蓄熱手段と、蓄熱手段の蓄熱残容量を検出する蓄熱残容量検出手段とを有し、電池残量検出手段および蓄熱残容量検出手段の検出結果に応じて、超音波プローブの動作モードを変更するので、超音波プローブ内の発熱を抑制することができ、高画質の超音波画像を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(A)は、本発明の超音波診断装置の超音波プローブの一例を概念的に示すブロック図であり、(B)は、(A)の電池パックと充電装置とを概念的に示すブロック図である。
【図2】図1に示す超音波プローブの構成を表すブロック図である。
【図3】本発明の超音波診断装置の診断装置本体の構成を表すブロック図である。
【図4】(A)は、温度と消費蓄熱量との関係を概念的に示す図であり、(B)は、電圧と消費電力量との関係を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の超音波診断装置について、添付の図面に示される好適実施例を基に、詳細に説明する。
【0016】
図1(A)は、本発明の超音波診断装置の超音波プローブの一例を概念的に表すブロック図をであり、図2は、本発明の超音波診断装置の超音波プローブの構成を概念的に示すブロック図であり、図3は、本発明の超音波診断装置の診断装置本体の構成を概念的に示すブロック図である。
図1(A)、図2および図3に示す超音波診断装置10は、超音波プローブ12と、診断装置本体14とを有する。超音波プローブ12と診断装置本体14とは、超音波プローブ12の通信手段20と、診断装置本体14の無線通信部60との無線通信によって接続される。
【0017】
図1(A)および図2に示すように、超音波プローブ12は、超音波の送受信を行なう振動子ユニット16と、振動子ユニット16が受信した超音波の受信信号を処理する信号処理手段18と、診断装置本体14との間で無線通信を行なうことにより、信号処理手段18が処理した受信信号を診断装置本体14に送信すると共に、診断装置本体14からの各種の制御信号を受信する通信手段20と、超音波プローブ12の各部に電力を供給する電源部22と、バッテリ52を備える電池パック24とを有する。電池パック24は、超音波プローブ12の各部を冷却するための蓄熱部54を有しており、超音波プローブ12は、蓄熱部54と超音波プローブ12の各部を熱的に接続する熱伝導体26を有する。
また、電池パック24は、超音波プローブ12と着脱可能に設けられており、図1(B)に示すように、電池パック24を超音波プローブ12から取り外して、充電手段と冷却手段とを有する充電装置に装着することによって、バッテリ52に充電すると共に、蓄熱部54を冷却することができる。
【0018】
振動子ユニット16は、超音波の送信および受信を行なうためのものであり、1次元又は2次元のトランスデューサアレイを構成する複数のトランスデューサ30と、送信駆動部32と、送信制御部34とを有している。
【0019】
複数のトランスデューサ30は、それぞれ送信駆動部32から供給される駆動信号に従って超音波を送信すると共に被検体からの超音波エコーを受信して受信信号を出力する。各トランスデューサ30は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミックや、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電素子、PMN−PT(マグネシウムニオブ酸・チタン酸鉛固溶体)に代表される圧電単結晶等からなる圧電体の両端に電極を形成した振動子によって構成される。
このような振動子の電極に、パルス状又は連続波の電圧を印加すると、圧電体が伸縮し、それぞれの振動子からパルス状又は連続波の超音波が発生して、それらの超音波の合成により超音波ビームが形成される。また、それぞれの振動子は、伝搬する超音波を受信することにより伸縮して電気信号を発生し、それらの電気信号は、超音波の受信信号として出力される。
【0020】
送信駆動部32は、例えば、複数の送信回路として複数のパルサを含んでおり、送信制御部34によって選択された送信遅延パターンに基づいて、複数のトランスデューサ30から送信される超音波が被検体内の組織のエリアをカバーする幅広の超音波ビームを形成するように複数の駆動信号の遅延量を調節して複数のトランスデューサ30に供給する。
なお、複数のトランスデューサ16から送信される超音波ビームの形状を幅広の形状とする方式に限定はされず、ビームを絞った通常の方式としてもよい。
【0021】
信号処理手段18は、複数チャンネルの受信信号処理部36と、受信制御部38と、パラレル/シリアル変換部40と、プローブ制御部42と、モード選択部58とを有している。
【0022】
受信制御部38は、複数チャンネルの受信信号処理部36の動作を制御する。各チャンネルの受信信号処理部36は、対応するトランスデューサ30から出力される受信信号に対して直交検波処理又は直交サンプリング処理を施すことにより複素ベースバンド信号を生成し、複素ベースバンド信号をサンプリングすることにより、組織のエリアの情報を含む生データ(サンプルデータ)を生成して、生データをパラレル/シリアル変換部40に供給する。さらに、受信信号処理部36は、複素ベースバンド信号をサンプリングして得られるデータに高能率符号化のためのデータ圧縮処理を施すことにより生データを生成しても良い。データ圧縮処理としては、ランレングス圧縮やハフマン符号化等を用いることができる。
【0023】
パラレル/シリアル変換部40は、複数チャンネルの受信信号処理部36によって生成されたパラレルのサンプルデータを、シリアルのサンプルデータに変換する。
【0024】
モード選択部58は、後述する電圧計53によるバッテリ52の電圧測定結果、および、温度センサ56による蓄熱部54の温度測定結果に応じて、すなわち、バッテリ52の電池残量および蓄熱部54の蓄熱残容量に応じて、超音波プローブ12の動作モードを変更する。
【0025】
超音波プローブ12の動作モードとしては、通常の撮像条件で超音波画像の撮像を行なう通常モードに加えて、通常モードよりも消費電力が低い撮像条件で超音波画像の撮像を行なう省電力モードとが設定されている。
モード選択部58は、電圧計53から供給された電圧の測定結果が、所定の電圧閾値以下の場合、あるいは、温度センサ56から供給された温度の測定結果が、所定の温度閾値以上の場合に、超音波プローブ12の動作モードを省電力モードに変更する。すなわち、バッテリ52の電池残量が所定の閾値以下、あるいは、蓄熱部54の蓄熱残容量が所定の閾値以下の場合に、超音波プローブ12の動作モードを省電力モードに変更する。
【0026】
本実施例においては、省電力モードは、通常モードよりも、撮像の繰り返し間隔を大きく、すなわち、フレームレートを小さくして、超音波画像の撮像を行なうモードである。例えば、通常モードのフレームレートが30fpsに設定され、省電力モードのフレームレートが5fpsに設定される。従って、省電力モードにおいては、振動子ユニット16の超音波の送受信の頻度が少なくなり、また、信号処理手段18が行なう信号処理の頻度も少なくなる。
なお、モード選択部58が、超音波プローブ12の動作モードを変更した際には、動作モードを変更した旨の通知を行なうことが好ましい。例えば、動作モード変更の信号を診断装置本体14に供給し、診断装置本体14の表示部70に、動作モードを変更した旨の表示を行なうようにしてもよい。
【0027】
このように、本発明においては、バッテリ52と、超音波プローブ12内の各部を冷却する蓄熱部54を有し、バッテリ52の電池残量が所定の閾値以下、あるいは、蓄熱部54の蓄熱残容量が所定の閾値以下の場合に、超音波プローブ12の動作モードを省電力モードに変更するので、通常モードで動作する際にも、超音波プローブ12内の発熱を低減して、超音波プローブ12の温度が上昇することを防止できる。また、蓄熱部54の蓄熱残容量が所定の閾値以下となり、バッテリ52の電力が十分に残っている場合には、発熱の少ない省電力モードで動作するので、超音波プローブ12の温度上昇を抑制することができ、また、バッテリの電池残量が所定の閾値以下となった場合にも、省電力モードで動作するので、超音波プローブ12の駆動時間を長くすることができる。
モード選択部58は、モード変更の指示をプローブ制御部42に供給する。
【0028】
プローブ制御部42は、診断装置本体14から伝送される各種の制御信号、および、モード選択部58からのモード変更の指示信号に基づいて、超音波プローブ12の各部の制御を行う。
【0029】
通信手段20は、無線通信部44と、通信制御部46とを有している。
無線通信部44は、シリアルのサンプルデータに基づいてキャリアを変調して伝送信号を生成し、伝送信号をアンテナに供給してアンテナから電波を送信することにより、シリアルのサンプルデータを送信する。変調方式としては、例えば、ASK(Amplitude Shift Keying)、PSK(Phase Shift Keying)、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation)等が用いられる。
無線通信部44は、診断装置本体14との間で無線通信を行うことにより、サンプルデータを診断装置本体14に送信すると共に、診断装置本体14から各種の制御信号を受信して、受信された制御信号を通信制御部46に出力する。
通信制御部46は、プローブ制御部42によって設定された送信電波強度でサンプルデータの送信が行われるように無線通信部44を制御すると共に、無線通信部44が受信した各種の制御信号をプローブ制御部42に出力する。
【0030】
電源部22は、電力制御部48と、電力供給部50とを有している。
電力供給部50は、電力制御部48の制御に応じて、バッテリ52に充電された電力を、送信駆動部32や受信信号処理部36等の超音波プローブ12の各部に供給する。
電力制御部40は、プローブ制御部28からの指示に応じて、超音波プローブ12の各部に所望の電力を供給するように電力供給部42を制御する。
【0031】
電池パック24は、バッテリ52と、電圧計53と、蓄熱部54と、温度センサ56とを有している。
バッテリ52は、電源部22を介して、超音波プローブ12の各部に電力を供給する。
電圧計53は、バッテリ52の電圧を測定する。
図4(B)は、バッテリ52の電圧と消費電力量との関係を概念的に表す図である。
図4(B)に示すように、バッテリ52の電圧を測定することで、バッテリ52の電池残量を求めることができる。
電圧計53は、測定結果をモード選択部58に供給する。
【0032】
蓄熱部54は、熱伝導体26を介して、信号処理手段18、通信手段20および電源部22のそれぞれの回路に、熱的に接続されて、信号処理手段18、通信手段20および電源部22の各回路を冷却する。
蓄熱部54の材料としては、特に限定はなく、信号処理手段18、通信手段20および電源部22を好適に冷却できればよい。信号処理手段18、通信手段20および電源部22の回路に用いられる半導体デバイスの熱的制限から、融点が40〜50℃程度の材料を蓄熱部54として用いることが好ましい。例えば、ウッドメタル等の低融点合金や、パラフィン等を用いることができる。
【0033】
図4(A)は、蓄熱部54の温度と消費蓄熱量との関係を概念的に表す図である。
図4(A)に示すように、蓄熱部54の温度を測定することで、蓄熱部54の蓄熱残容量を求めることができる。
なお、蓄熱部54の材料の融点で一定となる領域においては、超音波プローブ12の消費電力から発熱量を算出して積算し、蓄熱部54の蓄熱残容量を算出するようにしてもよい。
温度センサ56は、蓄熱部54の温度を測定し、測定結果をモード選択部58に供給する。
【0034】
熱伝導体26は、蓄熱部54と、信号処理手段18、通信手段20および電源部22とを熱的に接続する。
熱伝導体26としては、蓄熱部54と、信号処理手段18、通信手段20および電源部22との間で好適に伝熱できれば、特に限定はなく、例えば、ヒートパイプや伝熱シート等を用いればよい。
【0035】
以上において、送信制御部34、受信制御部38、パラレル/シリアル変換部40、通信制御部46、プローブ制御部42、モード選択部58、及び、電力制御部48等は、CPUと、CPUに各種の処理を行わせるための動作プログラムから構成されるが、それらをデジタル回路で構成してもよい。
【0036】
一方、診断装置本体14は、無線通信部60を有し、この無線通信部60にシリアル/パラレル変換部62を介してデータ格納部64が接続され、データ格納部64に画像生成部66が接続されている。さらに、画像生成部66に表示制御部68を介して表示部70が接続されている。
また、無線通信部60に通信制御部72が接続され、シリアル/パラレル変換部62、画像生成部66、表示制御部68および通信制御部72に本体制御部74が接続されている。さらに、本体制御部74には、オペレータが入力操作を行うための操作部76が接続されている。
【0037】
操作部76は、撮影メニュー、撮影条件などを設定し、被検体の撮像を指示する入力操作を行なうためのものである。操作部76は、操作者が入力操作を行なうための、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパネル等から形成することができる。
【0038】
無線通信部60は、超音波プローブ12との間で無線通信を行うことにより、各種の制御信号を超音波プローブ12に送信する。また、無線通信部60は、アンテナによって受信される信号を復調することにより、シリアルのサンプルデータを出力する。
通信制御部72は、本体制御部74によって設定された送信電波強度で各種の制御信号の送信が行われるように無線通信部60を制御する。
シリアル/パラレル変換部62は、無線通信部60から出力されるシリアルのサンプルデータを、パラレルのサンプルデータに変換する。データ格納部64は、メモリまたはハードディスク等によって構成され、シリアル/パラレル変換部62によって変換された少なくとも1フレーム分のサンプルデータを格納する。
【0039】
画像生成部66は、データ格納部64から読み出される1フレーム毎のサンプルデータに受信フォーカス処理を施して、超音波診断画像を表す画像信号を生成する。画像生成部66は、整相加算部78と画像処理部80とを含んでいる。
整相加算部78は、本体制御部74において設定された受信方向に応じて、予め記憶されている複数の受信遅延パターンの中から1つの受信遅延パターンを選択し、選択された受信遅延パターンに基づいて、サンプルデータによって表される複数の複素ベースバンド信号にそれぞれの遅延を与えて加算することにより、受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理により、超音波エコーの焦点が絞り込まれたベースバンド信号(音線信号)が生成される。
【0040】
画像処理部80は、整相加算部78によって生成される音線信号に基づいて、被検体内の組織に関する断層画像情報であるBモード画像信号を生成する。画像処理部80は、STC(sensitivity time control)部と、DSC(digital scan converter:デジタル・スキャン・コンバータ)とを含んでいる。STC部は、音線信号に対して、超音波の反射位置の深度に応じて、距離による減衰の補正を施す。DSCは、STC部によって補正された音線信号を通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号に変換(ラスター変換)し、階調処理等の必要な画像処理を施すことにより、Bモード画像信号を生成する。
【0041】
表示制御部68は、画像生成部66によって生成される画像信号に基づいて、表示部70に超音波診断画像を表示させる。表示部70は、例えば、LCD等のディスプレイ装置を含んでおり、表示制御部68の制御の下で、超音波診断画像を表示する。
【0042】
本体制御部74は、操作部76を用いたオペレータの操作に従って、超音波診断装置10の各部を制御する。
このような診断装置本体14において、シリアル/パラレル変換部62、画像生成部66、表示制御部68、通信制御部72および本体制御部74は、CPUと、CPUに各種の処理を行わせるための動作プログラムから構成されるが、それらをデジタル回路で構成してもよい。
【0043】
次に、超音波診断装置10の動作について説明する。
操作者が、超音波プローブ12を被検体の表面に当接し、撮像を開始すると、本体制御部74からの制御信号に基づいて、送信制御部34が送信駆動部32を制御する。送信駆動部32が、制御信号に基づいてトランスデューサ30を駆動し、各トランスデューサ30から超音波ビームが送信され、被検体内からの超音波エコーを、各トランスデューサ30が受信し、受信信号を出力する。
【0044】
被検体からの超音波エコーを受信した各トランスデューサ30から出力された受信信号がそれぞれ対応する受信信号処理部36に供給される。受信信号処理部36に供給された受信信号はサンプルデータに順次変換され、パラレル/シリアル変換部40でシリアル化された後に無線通信部44から診断装置本体14へ無線伝送される。診断装置本体14の無線通信部60で受信されたサンプルデータは、シリアル/パラレル変換部62でパラレルのデータに変換され、データ格納部64に格納される。さらに、データ格納部64から1フレーム毎のサンプルデータが読み出され、画像生成部66で画像信号が生成され、この画像信号に基づいて表示制御部68により超音波診断画像が表示部70に表示される。
【0045】
ここで、本発明においては、バッテリ52と、超音波プローブ12内の各部を冷却する蓄熱部54を有し、バッテリ52の電圧を測定し、かつ、蓄熱部54の温度を測定して、バッテリ52の電池残量が所定の閾値以下、あるいは、蓄熱部54の蓄熱残容量が所定の閾値以下の場合に、超音波プローブ12の動作モードを省電力モードに変更する。
従って、通常モードで動作する際には、超音波プローブ12内の発熱を低減して、超音波プローブ12の温度が上昇することを防止できる。また、蓄熱部54の蓄熱残容量が所定の閾値以下となり、バッテリ52の電力が十分に残っている場合には、発熱の少ない省電力モードで動作するので、超音波プローブ12の温度上昇を抑制することができ、また、バッテリの電池残量が所定の閾値以下となった場合にも、省電力モードで動作するので、超音波プローブ12の駆動時間を長くすることができる。
【0046】
本発明は、基本的に以上のようなものである。
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【0047】
例えば、図示例の超音波診断装置においては、省電力モードは、フレームレートを小さくするものとしたが、これに限定はされず、超音波プローブ12の消費電力が、通常モードよりも低くなればよい。例えば、超音波の送受信時のチャンネル数(振動子ユニットの開口サイズ)を少なくする設定としてもよい。あるいは、受信信号処理部が、トランスデューサからの受信信号を増幅する低雑音増幅器を有する構成において、低雑音増幅器に供給するバイアス電流を小さくする設定としてもよい。また、これらを組み合わせた設定としてもよい。
【0048】
また、電圧計53が測定したバッテリ52の電圧から、電池残量を求め、求めた電池残量と、超音波プローブ12の消費電力とから、電池残量が所定の閾値に達するまでの稼働時間を算出し、診断装置本体の表示部に表示する構成としてもよい。
あるいは、温度センサ56が測定した蓄熱部54の温度から、蓄熱残容量を求め、求めた蓄熱残容量と、超音波プローブ12の消費電力とから、蓄熱残容量が所定の閾値に達するまでの稼働時間を算出し、診断装置本体の表示部に表示する構成としてもよい。
また、電池残量から求めた稼働時間と、蓄熱残容量から求めた稼働時間とをそれぞれ表示するようにしてもよく、あるいは、稼働時間が短い方を表示するようにしてもよい。
稼働時間を表示することにより、より効率的に超音波プローブ12を使用することができる。
【0049】
また、図示例においては、バッテリ52と蓄熱部54とは、電池パック24として、一体で、超音波プローブ12と着脱可能に設けられる構成としたが、本発明はこれに限定はされず、バッテリ52と蓄熱部54とが、別々に超音波プローブ12と着脱可能に設けられる構成としてもよく、あるいは、超音波プローブ12に一体的に設けられていてもよい。
バッテリ52と蓄熱部54と一体とすることにより、管理が容易となる。一方、バッテリ52と蓄熱部54とを別々とすることにより、より効率的にバッテリ52および蓄熱部54を交換/充電(蓄熱)することができる。
【0050】
また、図示例においては、バッテリ52の電圧を測定して、電池残量を求める構成としたが、これに限定はされず、種々の公知の電池残量の測定方法が利用できる。
同様に、図示例においては、蓄熱部54の温度を測定して、蓄熱残容量を求める構成としたが、これに限定はされず、種々の公知の蓄熱残容量の測定方法が利用できる。
【0051】
また、図示例においては、モード選択部58が超音波プローブ12に配置される構成としたが、これに限定はされず、モード選択部58が診断装置本体14に配置される構成としてもよい。
また、省電力モードで動作中であっても、操作者からの入力指示に応じて、通常モードで動作する構成としてもよい。
【0052】
また、図示例においては、超音波プローブ12と診断装置本体14とは、無線通信によって信号の送受信を行なう構成としたが、これに限定はされず、有線の通信手段によって、信号の送受信を行なう構成としても良い。
【符号の説明】
【0053】
10 超音波診断装置
12 超音波プローブ
14 診断装置本体
16 振動子ユニット
18 信号処理手段
20 通信手段
22 電源部
24 電池パック
26 熱伝導体
30 トランスデューサ
32 送信駆動部
34 送信制御部
36 受信信号処理部
38 受信制御部
40 パラレル/シリアル変換部
42 プローブ制御部
44、60 無線通信部
46、72 通信制御部
48 電力制御部
50 電力供給部
52 バッテリ
53 電圧計
54 蓄熱部
56 温度センサ
58 モード選択部
62 シリアル/パラレル変換部
64 データ格納部
66 画像生成部
68 表示制御部
70 表示部
74 本体制御部
76 操作部
78 整相加算部
80 画像処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波プローブの振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームを送信すると共に、被検体からの超音波エコーを受信した前記振動子アレイから出力された受信信号に基づいて超音波画像を生成する超音波診断装置において、
前記超音波プローブ内に配置され、前記振動子アレイから出力された受信信号を処理する信号処理手段と、
前記超音波プローブに配置され、前記超音波プローブに電力を供給するバッテリと、
前記バッテリの電池残量を検出する電池残量検出手段と、
前記超音波プローブに配置され、前記信号処理手段を冷却する蓄熱手段と、
前記蓄熱手段の蓄熱残容量を検出する蓄熱残容量検出手段とを有し、
前記電池残量検出手段および前記蓄熱残容量検出手段の検出結果に応じて、前記超音波プローブの動作モードを変更することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記超音波プローブの動作モードとして、通常モードと、前記通常モードよりもエネルギの消費が少ない省電力モードとが設定されており、
前記蓄熱部の蓄熱残容量が、所定の蓄熱残容量以下となった場合、あるいは、前記バッテリの電池残量が、所定の電池残量以下となった場合に、前記超音波プローブの動作モードを、前記省電力モードに変更する請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記省電力モードでは、撮像の繰り返し間隔を大きくする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記省電力モードでは、前記振動子アレイの送受信チャンネル数を少なくする請求項2または3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記省電力モードでは、前記信号処理手段に供給する電流を小さくする請求項2〜4のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記蓄熱残容量検出手段が、前記蓄熱手段の温度を測定するものであり、前記蓄熱手段の温度が所定の温度を超えた場合に、前記超音波プローブの動作モードを前記省電力モードに切り替える請求項2〜5のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記バッテリが、前記超音波プローブに着脱可能に設けられている請求項1〜6のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記蓄熱手段が、前記超音波プローブに着脱可能に設けられている請求項1〜7のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記バッテリと前記蓄熱手段とが、一体的に、前記超音波プローブに着脱可能に設けられている請求項1〜8のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記蓄熱手段の蓄熱残容量と、前記超音波プローブの消費電力とから、前記蓄熱残容量が前記所定の蓄熱残容量に達するまでの残時間を算出し、かつ、前記バッテリの電池残量と、前記超音波プローブの消費電力とから、前記電池残量が前記所定の電池残量に達するまでの残時間を算出して、短い方の残時間を表示手段に表示する請求項2〜9のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記蓄熱手段の材料の相変化温度が40〜50℃である請求項1〜10のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項12】
前記超音波プローブが、無線通信によって、診断装置本体との間で、前記受信信号の送受信を行なう請求項1〜11のいずれかに記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−228425(P2012−228425A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99429(P2011−99429)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】